説明

画像読み取り装置および発光素子

【課題】強度を有した発光素子を有する画像読み取り装置等を提供する。
【解決手段】発光素子55は、矩形状且つ平板状に形成された基板60と、基板60に面状に形成された発光部61とを備える。発光部61は、副走査方向において、基板60の一端部側における第1の長尺領域60aに形成される第1の発光領域61aと、この第1の発光領域61aとは所定の間隙をおいて配置され基板60の他端部側における第2の長尺領域60bに形成される第2の発光領域61bとを備える。また、発光素子55には、第1の発光領域61aと第2の発光領域61bとの間、および、第3の発光領域61cと第4の発光領域61dとの間に、基板60により構成される光透過性領域64が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読み取り装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
照明ユニットのコンパクト化を図るため、2つの発光領域が原稿に対して対向しており、且つ両発光領域の挟間部がスリット形状であり、原稿の反射光を透過して反射ミラーに導出する平面光源を備えた原稿読取装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−115470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、EL素子などの発光素子では、例えば反射光の光量を十分に確保するために、その形状を例えばコの字状とし、原稿からの反射光の光路となる領域に基板などの部材が配置されない構成を採用することができるが、かかる場合には、形状が複雑化し発光素子の強度が低下するおそれがある。
本発明の目的は、強度を有した発光素子を有する画像読み取り装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、原稿に対して光を照射する板状の発光素子と、前記発光素子による前記原稿の反射光を受光するセンサと、を備え、前記発光素子は、光透過性領域を有する基板と、前記基板の一端部側に長尺状に形成される第1の発光領域と、前記基板の他端部側に形成され、前記第1の発光領域との間に所定の間隙を有し長尺状に形成される第2の発光領域と、前記所定の間隙と前記基板の前記光透過性領域とにより形成され、前記反射光の光路となるスリット領域と、を備えたことを特徴とする画像読み取り装置である。
請求項2に記載の発明は、電圧の印加により発光を行う前記第1の発光領域および前記第2の発光領域は、共通の電極を有することを特徴とする請求項1記載の画像読み取り装置である。
請求項3に記載の発明は、前記基板は、略矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の画像読み取り装置である。
請求項4に記載の発明は、前記基板の清掃を行う清掃手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の画像読み取り装置である。
請求項5に記載の発明は、駆動源を有し、前記発光素子を移動させることで前記センサによる前記原稿の読み取り位置を副走査方向に移動させる走査手段を更に備え、前記清掃手段は、前記走査手段により移動する前記発光素子の前記基板に接触可能な接触部材により構成されることを特徴とする請求項4記載の画像読み取り装置である。
【0006】
請求項6に記載の発明は、長尺状に光透過性領域を形成する基板と、当該基板の当該光透過性領域の両側に形成される発光領域と、を有するEL素子と、前記EL素子による原稿からの反射光であって前記光透過性領域を透過した光を受光するセンサと、を含む画像読み取り装置である。
請求項7に記載の発明は、前記EL素子および前記センサを内部に収納する筐体を更に備え、前記筐体は、前記EL素子における前記基板の清掃を当該筐体の外部から可能とする開口を備えることを特徴とする請求項6記載の画像読み取り装置である。
請求項8に記載の発明は、前記開口は、前記筐体の所定位置に設けられ搬送される原稿の画像を読み取る際に用いられるプラテンガラスを当該所定位置とは異なる位置に移動させることで形成されることを特徴とする請求項7記載の画像読み取り装置である。
請求項9に記載の発明は、前記EL素子は、前記センサおよび当該センサに前記原稿の反射光を導くミラーを内部に備え当該原稿の画像を読み取る読み取りユニットに取り付けられることを特徴とする請求項6記載の画像読み取り装置である。
請求項10に記載の発明は、光透過性領域を有する基板と、前記基板上の第1の長尺領域に形成される第1の発光領域と、前記基板上であって前記第1の長尺領域から所定の間隙を有した略平行位置である第2の長尺領域に形成される第2の発光領域と、前記所定の間隙にて前記基板の前記光透過性領域によって形成されるスリット領域と、を備えたことを特徴とする発光素子である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べ、強度を有した発光素子を有する画像読み取り装置を提供することができる。
本発明の請求項2によれば、例えば第1の発光領域および第2の発光領域に電力を供給する電源ケーブルの共用化が可能となる。
本発明の請求項3によれば、本発明を採用しない場合に比べ基板の強度を増すことができ、これにより発光素子の強度も増すことができる。
本発明の請求項4によれば、本発明を採用しない場合に比べ、センサにて受光される反射光の光量低下を抑制することができる。
本発明の請求項5によれば、別途駆動源を設けずとも基板の清掃を行うことが可能となる。
【0008】
本発明の請求項6によれば、本発明を採用しない場合に比べ、強度を有したEL素子を有する画像読み取り装置を提供することができる。
本発明の請求項7によれば、基板に付着した埃などの除去が可能となり、センサにて受光される反射光の光量低下を抑制することができる。
本発明の請求項8によれば、筐体の他の箇所に開口を形成する場合に比べ、開口を簡易に形成することができる。
本発明の請求項9によれば、埃等が進入しうる領域に基板が配置されているため、読み取りユニット内部への埃等の進入を抑制することができる。
本発明の請求項10によれば、本発明を採用しない場合に比べ、強度を有しまた位置決めを簡易に行うことが可能な発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について詳細に説明する。
―第1の実施形態―
図1は、第1の実施形態が適用される画像読み取り装置1の構成例を示す図である。同図に示す画像読み取り装置1では、固定された原稿の画像を読み取ることが可能であるとともに、搬送される原稿の画像を読み取ることも可能となっている。そして、この画像読み取り装置1は、積載された原稿束から原稿を順次搬送する原稿送り装置10と、スキャンによって画像を読み込む読み取り装置50とを備えている。
【0010】
原稿送り装置10は、複数枚の原稿からなる原稿束を積載する原稿積載部11、この原稿積載部11の下方に設けられ、読み取りが終了した原稿を積載する排紙積載部12を備える。また、原稿送り装置10は、原稿積載部11の原稿を取り出して搬送するナジャーロール13を備える。さらに、ナジャーロール13の原稿搬送方向下流側には、フィードロールおよびリタードロールによって用紙を一枚ずつに捌く捌き機構14が設けられる。原稿が搬送される第1搬送路31には、原稿搬送方向上流側から順に、プレレジロール15、レジロール16、プラテンロール17、およびアウトロール18が設けられる。また、原稿送り装置10の内部には、CIS(Contact Image Sensor)ユニット80が設けられている。
【0011】
プレレジロール15は、一枚ずつに捌かれた原稿を下流側のロールに向けて搬送すると共に原稿のループ形成を行う。レジロール16は、回転を一旦停止した後にタイミングを合わせて回転を再開し、後述する原稿読み取り部に対してレジストレーション調整を施しながら原稿を供給する。プラテンロール17は、読み取り装置50にて読み込み中の原稿搬送をアシストする。アウトロール18は、読み取り装置50にて読み込まれた原稿をさらに下流に搬送する。また、アウトロール18よりも原稿搬送方向下流側には、原稿を排紙積載部12に導くための第2搬送路32が設けられる。この第2搬送路32には、排出ロール19が設けられる。
【0012】
さらに、この画像読み取り装置1では、原稿の両面に形成された画像を1プロセスで読み取ることができるよう、アウトロール18の出口側とプレレジロール15の入口側との間に第3搬送路33が設けられている。なお、上述した排出ロール19は、原稿を第3搬送路33に反転搬送する機能も有している。
さらにまた、この画像読み取り装置1には、原稿の両面読み取りを行った際、その排出時に原稿を再度反転させて排紙積載部12に排出するための第4搬送路34が設けられている。この第4搬送路34は、第2搬送路32の上部側に設けられている。そして、上述した排出ロール19は、原稿を第4搬送路34に反転搬送する機能も有している。
【0013】
一方、読み取り装置50は、上述した原稿送り装置10を開閉可能に支持すると共に、この原稿送り装置10を装置フレーム51によって支え、また、原稿送り装置10によって搬送される原稿の画像読み取りを行っている。この読み取り装置50は、筐体を形成する装置フレーム51、画像を読み込むべき原稿を静止させた状態で載置する第1プラテンガラス52A、原稿送り装置10によって搬送される原稿を読み取るための光の開口部を有する第2プラテンガラス52Bを備えている。ここで、第2プラテンガラス52Bは、例えば長尺の板状構造をなす透明なガラスプレートで構成される。
【0014】
また、読み取り装置50は、第2プラテンガラス52Bの下に静止し、あるいは第1プラテンガラス52Aの全体にわたってスキャンして画像を読み込むフルレートキャリッジ53、フルレートキャリッジ53から得られた光を結像部へ供給するハーフレートキャリッジ54を備えている。フルレートキャリッジ53には、原稿に光を照射する板状の発光素子55および原稿から得られた反射光を反射する第1ミラー57Aが設けられている。さらに、ハーフレートキャリッジ54には、第1ミラー57Aから得られた光を結像部へ提供する第2ミラー57Bおよび第3ミラー57Cが設けられている。また、読み取り装置50は、ハーフレートキャリッジ54および発光素子55を備えたフルレートキャリッジ53を、副走査方向に移動させるモータ等の駆動源(不図示)を備えている。この駆動源は、走査手段の1つして機能している。
【0015】
ここで、図2を用いて発光素子55について詳細に説明する。図2は、本実施形態における発光素子55を示したものである。本実施形態における発光素子55は、所謂エレクトロルミネッセンスランプ(ELランプ(EL素子))により構成されている。より詳細に説明すれば、本実施形態における発光素子55は、同図(a)に示すように、矩形状且つ平板状に形成された基板60と、基板60に面状に形成された発光部61とを備える。
【0016】
発光部61は、既存の技術を用いて構成することができ、例えば、基板60側に配置されるとともに透明に形成され光透過性を有する第1の電極611と、第1の電極611の対向位置に配置される第2の電極613と、第1の電極611と第2の電極613との間に配置される発光層612と、を含んで構成される。ここで、第1の電極611、第2の電極613に対しては、電源ケーブル62が接続されており、第1の電極611および第2の電極613に対して電圧を印加可能な構成となっている。
本実施形態における基板60は、ガラスなどの透明な材料にて構成され光透過性を有している。また基板60は、長尺状に形成されるとともに、その長手方向が主走査方向に沿うように配置されている。
【0017】
発光部61は、基板60の裏面側(第1ミラー57A(図1参照)側)に配置されている。但し、発光部61は、基板60の裏面全てを覆うわけではなく、基板60の外縁部に沿うように配置されている。このため、発光部61は、副走査方向において、基板60の一端部側における第1の長尺領域60aに形成される第1の発光領域61aと、この第1の発光領域61aとは所定の間隙をおいて配置され基板60の他端部側における第2の長尺領域60bに形成される第2の発光領域61bとを備える。ここで、第1の長尺領域60aと第2の長尺領域60bとは所定の間隙を有して配置されるとともに、互いに略平行に配置されている。また、第1の長尺領域60aと第2の長尺領域60bは、主走査方向に沿って配置されている。このため、第1の発光領域61aおよび第2の発光領域61bも主走査方向に沿って長尺状に形成される。
【0018】
また、発光部61は、主走査方向において、基板60の一端部側に形成される第3の発光領域61cと、この第3の発光領域61cとは所定の間隙をおいて配置され基板60の他端部側に形成される第4の発光領域61dとを備えている。
なお、発光部61における上記第1の電極611、第2の電極613の各々は、第1の発光領域61a、第2の発光領域61b、第3の発光領域61c、および第4の発光領域61dにおいて個別に設けられているわけではなく、単一の電極として設けられている。換言すれば、第1の発光領域61a、第2の発光領域61b、第3の発光領域61c、および第4の発光領域61dの各々は、共通の第1の電極611および第2の電極613を有している。
【0019】
また、本実施形態における発光素子55には、第1の発光領域61aと第2の発光領域61bとの間、および、第3の発光領域61cと第4の発光領域61dとの間に、基板60により構成される光透過性領域64が形成される。なお、光透過性領域64は、矩形状に形成され、且つ主走査方向に沿った長尺状に形成されている。ここで、上記第1の発光領域61aと第2の発光領域61bは、副走査方向において、光透過性領域64の両側に配置されていると捉えることができる。なお、図2(a)では、第1の発光領域61a、第2の発光領域61b、第3の発光領域61c、および第4の発光領域61dを設けた例を説明したが、同図(b)に示すように、第4の発光領域61dを設けない構成とすることもできる。
【0020】
また、発光部61は、同図(c)に示すように、副走査方向において分割して配置することもできる。即ち、発光部61は、基板60の副走査方向における一端部側と、基板60の副走査方向における他端部側に配置することができる(以下、一端部側の「発光部61」を「一端部側発光部61」と称し、他端部側の「発光部61」を「他端部側発光部61」と称する)。換言すれば、上記第3の発光領域61cおよび第4の発光領域61dを設けず、上記第1の発光領域61aおよび第2の発光領域61bのみを設ける構成とすることもできる。
【0021】
同図(c)に示す形態の場合、一般的に、一端部側発光部61における第1の電極611および第2の電極613に電源ケーブル62が接続され、また、他端部側発光部61における第1の電極611および第2の電極613に電源ケーブル62が接続される。但し、このような構成に限らず、一端部側発光部61における第1の電極611と他端部側発光部61における第1の電極611とを電気的に接続し、一端部側発光部61における第2の電極613と他端部側発光部61における第2の電極613とを電気的に接続すれば、一方の発光部61にのみ電源ケーブル62を接続することができる。
【0022】
なお、発光素子55は、図3に示すような態様とすることもできる。ここで、図3は、発光素子55の比較例を示したものである。
発光素子55は、同図(a)に示すように、基板60を含め、その形状を略コの字状とすることもできる。しかしながら、この場合、基板60を複雑な形状にカットする必要があるため作成に手間を要すことになる。また、強度が低下し破損しやすくなってしまう。
【0023】
さらに、同図(b)に示すように、発光素子55を、副走査方向に分割して配置された第1の発光素子55Aと第2の発光素子55Bとにより構成することもできる。しかしながら、基板60の幅が小さくなるため、この場合も強度が低下し破損しやすくなってしまう。さらに、第1の発光素子55Aおよび第2の発光素子55Bの各々を位置決めする必要が生じ、手間を要することになる。即ち、フルレートキャリッジ53に対して発光素子55の設置を行う際には、アライメント等の精度を確保しながら取り付けを行う必要があるが、発光素子55が分割され2つ存在する場合には、各々の精度を確保する必要がある。このため、発光素子55が単一である場合に比べ、手間を要するようになる。さらに、発光素子55の分割を行うと、各々の発光素子に対して電源ケーブル62を接続する必要がある。
【0024】
ここで、図1に戻り、読み取り装置50についてさらに説明する。読み取り装置50は、さらに、結像用レンズ58およびCCDイメージセンサ59を備えている。これらのうち、結像用レンズ58は、第3ミラー57Cから得られた光学像を光学的に縮小する。また、CCDイメージセンサ59は、結像用レンズ58によって結像された光学像を光電変換する。つまり、読み取り装置50では、所謂縮小光学系を用いてCCDイメージセンサ59に像を結像させている。また、読み取り装置50は、第1プラテンガラス52Aと第2プラテンガラス52Bとの間に、原稿送り装置10において搬送される原稿を案内するガイド56Aが形成されており、このガイド56Aの下部には、主走査方向に沿って伸びる白基準板56Bが装着されている。
【0025】
また、読み取り装置50は、制御・画像処理ユニット70をさらに備える。制御・画像処理ユニット70は、CISユニット80に設けられるイメージセンサ(不図示)およびCCDイメージセンサ59から入力される原稿の画像データに、所定の処理を施す。また、制御・画像処理ユニット70は、画像読み取り装置(原稿送り装置10、読み取り装置50、およびCISユニット80)の読み取り動作における各部の動作を制御する。
【0026】
さらに、読み取り装置50は、副走査方向における一端部に、発光素子55における上記基板60表面の清掃を行う清掃部(清掃手段)71を備えている。本実施形態では、原稿からの反射光の光路となる部分に光透過性領域64(図2参照)が形成されている。そして、この光透過性領域64は上述のとおり基板60により構成される。このため、この光透過性領域64における基板60に埃等が付着してしまうと、CCDイメージセンサ59に達する光の光量が低下するなどの不具合が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、清掃部71により基板60の清掃を行うこととしている。
【0027】
ここで清掃部71は、装置フレーム51の上部に固定され主走査方向に沿って長尺状に設けられたブラシ部材72により構成されている。接触部材としてのブラシ部材72は、基板60の表面に接触し基板60の表面に付着した埃などの付着物を除去する。なお、ブラシ部材72による清掃は、例えば、図中Aに示す位置までフルレートキャリッジ53を移動させることで行うことができる。なお、本実施形態では、ブラシ部材72を副走査方向における一端部に設けたが、他端部側に設けることも可能であり、その位置は特に問わない。本実施形態では、清掃部71を駆動させる駆動源を別途設けずとも基板60の清掃を行うことが可能となる。
【0028】
なお、清掃部71は、図4に示すような構成とすることもできる。ここで図4は、清掃部71の他の態様を示したものである。
本態様における清掃部71は、駆動源としてのモータ73と、螺旋状に形成された突起74aを外周面に有しモータ73により回転駆動するシャフト74と、シャフト74をその両端で支持する支持部材77と備える。また、基板60に接触するブラシ部材75と、シャフト74が貫通配置されブラシ部材75を支持する支持部材76と、支持部材76のスライドをガイドするガイド部材(不図示)を備える。
ここで、シャフト74は主走査方向に沿って配置されている。また、支持部材76は、主走査方向に沿って貫通配設された貫通孔76aを備えている。さらに、支持部材76は、貫通孔76aの内周面(不図示)に、シャフト74に形成された上記突起74aが嵌り込む螺旋状の溝(不図示)を有している。
【0029】
ここで、基板60の清掃を行う場合には、まず清掃部71の下方にフルレートキャリッジ53(図1参照)を移動させる。そして、モータ73を駆動させシャフト74を一方向に回転駆動させると、突起74aと上記溝(不図示)との噛み合いによって、支持部材76は、例えば、図中Cに示す方向にスライドする。この結果、ブラシ部材75も図中Cに示す方向にスライドし、基板60の表面が清掃される。また、モータ73によりシャフト74を他方向に回転駆動させると、突起74aと上記溝(不図示)との噛み合いによって、支持部材76は、図中Dに示す方向にスライドする。この結果、ブラシ部材75も図中Dに示す方向にスライドし、基板60の表面が清掃される。
【0030】
ここで、図1に戻り、原稿の読み取りを行う場合について説明する。例えば、第1プラテンガラス52Aに置かれた原稿の画像を読み取る場合には、フルレートキャリッジ53とハーフレートキャリッジ54とが、2:1の割合でスキャン方向(矢印方向)に移動する。このとき、フルレートキャリッジ53における発光素子55(発光部61)から原稿の被読み取り面に対して光が照射される。そして、原稿からの反射光が、光透過性領域64(図2参照)を透過するとともに、第1の発光領域61aと第2の発光領域61bとの間の間隙を通過し、第1ミラー57Aにて反射される。
【0031】
その後、反射光は、第2ミラー57B、および第3ミラー57Cの順に反射されて結像用レンズ58に導かれる。そして、結像用レンズ58に導かれた光は、CCDイメージセンサ59の受光面に結像される。CCDイメージセンサ59は1次元のセンサであり、1ライン分を同時に処理している。そして、このライン方向(スキャンの主走査方向)の1ラインの読み取りが終了すると、主走査方向とは直交する方向(副走査方向)にフルレートキャリッジ53は移動し、原稿の次のラインを読み取る。これを原稿サイズ全体に亘って実行することで、1ページの原稿読み取りが完了する。ここで、上記光透過性領域64と、第1の発光領域61aと第2の発光領域61bとの間の上記間隙とは、原稿からの反射光の光路となるスリット領域として捉えることができる。
【0032】
一方、原稿送り装置10によって搬送される原稿の画像を読み取る場合には、原稿送り装置10によって搬送される原稿が第2プラテンガラス52Bの上を通過する。このとき、フルレートキャリッジ53とハーフレートキャリッジ54とは、図1に示す実線の位置に停止した状態にある。そして、原稿送り装置10のプラテンロール17を経た原稿の1ライン目の反射光が、光透過性領域64を透過し、その後第1ミラー57A、第2ミラー57B、および第3ミラー57Cを経て結像用レンズ58に導かれる。
【0033】
そして、反射光は結像用レンズ58にて結像され、CCDイメージセンサ59によって画像が読み込まれる。そして、1次元のセンサであるCCDイメージセンサ59によって主走査方向の1ライン分が同時に処理された後、原稿送り装置10によって搬送される原稿の次の主走査方向の1ラインが読み込まれる。その後、原稿の後端が、第2プラテンガラス52Bの読み取り位置を通過することによって、副走査方向に亘って1ページの読み取りが完了する。ここで、本実施の形態では、CCDイメージセンサ59により原稿の第一面の読み取りを行うときに、同時にCISユニット80によって、原稿の第二面の読み取りを行うこともできる。
【0034】
―第2の実施形態―
上記第1の実施形態では、フルレートキャリッジ53およびハーフレートキャリッジ54を備えた画像読み取り装置1について説明した。第2の実施形態では、発光素子、ミラー、結像用レンズおよびCCDイメージセンサが単一のハウジングにより支持されるユニット走査方式を用いた画像読み取り装置1について説明する。
【0035】
ここで、図5は、第2の実施形態における画像読み取り装置1を示したものである。
本実施形態における画像読み取り装置1は、第1の実施形態における画像読み取り装置1と同様に、積載された原稿束から原稿を順次搬送する原稿送り装置10と、スキャンによって画像を読み込む読み取り装置50とを備えている。ここで、原稿送り装置10については、第1の実施形態と同様に構成することができる。このため、第2の実施形態については、読み取り装置50を中心に説明を行う。
【0036】
読み取り装置50は、第1の実施形態と同様に、第1プラテンガラス21Aと、第2プラテンガラス21Bとを備えている。また、読み取り装置50は、第1プラテンガラス21Aに載せられた原稿や原稿送り装置10によって搬送される原稿の読み取りを行う読み取りユニット(画像読み取りユニット)22と、この読み取りユニット22を収容する装置フレーム23とを有している。ここで、装置フレーム23は、発光素子(EL素子)55および後述するCCDイメージセンサ43を内部に収納する筐体として捉えることができる。
【0037】
読み取りユニット22は、第1の実施形態と同様に構成された発光素子55と、原稿から得られた反射光を受光し反射する第1ミラー41Aが設けられている。さらに、読み取りユニット22には、第1ミラー41Aから得られた光を結像部へ提供する第2ミラー41B、第3ミラー41C、および第4ミラー41Dが設けられている。また、読み取りユニット22は、結像用レンズ42およびCCDイメージセンサ43を備えている。これらのうち、結像用レンズ42は、第4ミラー41Dから得られた光学像を光学的に縮小する。また、CCDイメージセンサ43は、結像用レンズ42によって結像された光学像を光電変換する。つまり、本実施形態における読み取り装置50でも、所謂縮小光学系を用いてCCDイメージセンサ43に像を結像させている。
【0038】
また、読み取りユニット22は、発光素子55、第1ミラー41A〜第4ミラー41D、結像用レンズ42、およびCCDイメージセンサ43を保持するハウジング40を備えている。ここで、ハウジング40は、第1ミラー41A〜第4ミラー41D、結像用レンズ42、およびCCDイメージセンサ43を内部に保持する。また、ハウジング40は、発光素子55とともに読み取りユニット22の内部と外部とを遮断し、読み取りユニット22を密閉構造としている。ここで、読み取りユニット22は、図中背面側に位置し図中矢印Xで示す副走査方向に延びるガイドシャフト27によって、副走査方向にガイドされる構成となっている。
【0039】
なお、本実施形態における発光素子55は、上述のとおり、光透過性領域64が基板60により形成される構成となっている。ここで、発光素子55は、図3に示したように、光透過性領域64に相当する部分に基板60が配置されない構成とすることもできる。しかしながら、この場合、読み取りユニット22を密閉構造とすることができず、読み取りユニット22の内部に埃などが進入しやすくなってしまう。
【0040】
装置フレーム23は、第1プラテンガラス21Aおよび第2プラテンガラス21Bを保持する第1の装置フレーム23Aと、第1の装置フレーム23Aとともに読み取りユニット22を収容する第2の装置フレーム23Bと、を有する。そして、第1の装置フレーム23Aと第2の装置フレーム23Bとは、画像読み取り装置1の外観を構成している。ここで、第2の装置フレーム23Bには、ガイドシャフト27の両端をそれぞれ保持する軸受部24が設けられている。
【0041】
ここで、第1の装置フレーム23Aの所定位置に配置された第2プラテンガラス21Bは、図中一点鎖線で示すように、第1の装置フレーム23Aから取り外し可能となっている。そして、第1の装置フレーム23Aから第2プラテンガラス21Bを取り外した場合には、装置フレーム23の外部から内部に通じる開口が開成される。このため、読み取りユニット22を移動させ、開口の下方に発光素子55における基板60(図2参照)を位置させれば、この開口を通じ外部から基板60(光透過性領域64)の清掃することが可能となる。
【0042】
なお、本実施形態では、第2プラテンガラス21Bが取り外し可能な場合を説明したが、ヒンジ等を設け、第2プラテンガラス21Bが第1の装置フレーム23Aに対し開閉する構成とすることもできる。第2プラテンガラス21Bは、通常、装置フレーム23とは別部品で構成されており、また、第2プラテンガラス21Bが取り付けられる箇所には光路確保のために開口が予め形成されている。このため、第2プラテンガラス21Bを利用した開口の形成は比較的簡易に行うことができる。
なお、開口の形成は、第2プラテンガラス21Bによらず、例えば、開閉可能な蓋部材28により行うこともできる。本実施形態におけるこの蓋部材28は、第1の装置フレーム23Aの上部にヒンジ28aを介して取り付けられており、第1の装置フレーム23Aに対して開閉可能な構成となっている。
【0043】
一方、第2の装置フレーム23Bには、読み取りユニット22のハウジング40の底部に取り付けられた摺動部材40aと接触して読み取りユニット22を支持するとともに、読み取りユニット22を副走査方向にガイドするガイドレール25が備えられている。なお、このガイドレール25は、図中前面側に位置している。さらに、第2の装置フレーム23Bには、ガイドレール25を保持するレール受部26が設けられている。なお、本実施形態および第1の実施形態における画像読み取り装置1では、原稿送り装置10が設けられた構成を一例に説明したが、原稿送り装置10に替え、第1プラテンガラス21A(第1プラテンガラス52A(図1参照))上に置かれた原稿を押さえるプラテンカバー(不図示)を設ける構成とすることも可能である。
【0044】
本画像読み取り装置1において、第1プラテンガラス21Aに載せられた原稿の画像が読み取られる場合、読み取りユニット22は、駆動モータ(不図示)により駆動される例えばベルト部材(不図示)によって図中X方向に示す副走査方向に移動する。なお、この際読み取りユニット22は、ガイドシャフト27およびガイドレール25によりガイドされる。そして、発光素子55における発光部61(図2参照)からの光が原稿の被読み取り面に照射されるとともに、原稿からの反射光が光透過性領域64(図2参照)を透過する。
【0045】
そして、光透過性領域64を通過した光は、第1ミラー41A、第2ミラー41B、および第3ミラー41C、第4ミラー41Dの順に反射されて結像用レンズ42に導かれる。そして、結像用レンズ42に導かれた光は、CCDイメージセンサ43の受光面に結像される。CCDイメージセンサ43は、第1の実施形態と同様に、1次元のセンサであり、1ライン分を同時に処理している。このライン方向(スキャンの主走査方向)の1ラインの読み取りが終了すると、主走査方向とは直交する方向(副走査方向)に読み取りユニット22は移動し、原稿の次のラインを読み取る。これを原稿サイズ全体に亘って実行することで、1ページの原稿読み取りが完了する。
【0046】
一方、原稿送り装置10によって搬送される原稿の画像を読み取る場合には、原稿送り装置10によって搬送される原稿が第2プラテンガラス21Bの上を通過する。このとき、読み取りユニット22は、第2プラテンガラス21Bの下方に配置される。そして、原稿送り装置10のプラテンロール17(図1参照)を経た原稿の1ライン目の反射光が、光透過性領域64(図2参照)を透過し、その後第1ミラー41A、第2ミラー41B、第3ミラー41C、および第4ミラー41Dを経て結像用レンズ42に導かれる。そして、結像用レンズ42にて結像され、CCDイメージセンサ43によって画像が読み込まれる。
【0047】
そして、1次元のセンサであるCCDイメージセンサ43によって主走査方向の1ライン分が同時に処理された後、原稿送り装置10によって搬送される原稿の次の主走査方向の1ラインが読み込まれる。そして、原稿の後端が、第2プラテンガラス21Bの読み取り位置を通過することによって、副走査方向に亘って1ページの読み取りが完了する。
なお、上記第1の実施形態および本実施形態に示した構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施形態が適用される画像読み取り装置の構成例を示す図である。
【図2】発光素子を示したものである。
【図3】発光素子の比較例を示したものである。
【図4】清掃部の他の態様を示したものである。
【図5】第2の実施形態における画像読み取り装置を示したものである。
【符号の説明】
【0049】
21B…第2プラテンガラス、22…読み取りユニット、23…装置フレーム、41A…第1ミラー、41B…第2ミラー、41C…第3ミラー、41D…第4ミラー、43…CCDイメージセンサ、55…発光素子、59…CCDイメージセンサ、60…基板、60a…第1の長尺領域、60b…第2の長尺領域、61a…第1の発光領域、61b…第2の発光領域、64…光透過性領域、71…清掃部、72…ブラシ部材、611…第1の電極、613…第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に対して光を照射する板状の発光素子と、
前記発光素子による前記原稿の反射光を受光するセンサと、を備え、
前記発光素子は、
光透過性領域を有する基板と、
前記基板の一端部側に長尺状に形成される第1の発光領域と、
前記基板の他端部側に形成され、前記第1の発光領域との間に所定の間隙を有し長尺状に形成される第2の発光領域と、
前記所定の間隙と前記基板の前記光透過性領域とにより形成され、前記反射光の光路となるスリット領域と、
を備えたことを特徴とする画像読み取り装置。
【請求項2】
電圧の印加により発光を行う前記第1の発光領域および前記第2の発光領域は、共通の電極を有することを特徴とする請求項1記載の画像読み取り装置。
【請求項3】
前記基板は、略矩形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の画像読み取り装置。
【請求項4】
前記基板の清掃を行う清掃手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の画像読み取り装置。
【請求項5】
駆動源を有し、前記発光素子を移動させることで前記センサによる前記原稿の読み取り位置を副走査方向に移動させる走査手段を更に備え、
前記清掃手段は、前記走査手段により移動する前記発光素子の前記基板に接触可能な接触部材により構成されることを特徴とする請求項4記載の画像読み取り装置。
【請求項6】
長尺状に光透過性領域を形成する基板と、当該基板の当該光透過性領域の両側に形成される発光領域と、を有するEL素子と、
前記EL素子による原稿からの反射光であって前記光透過性領域を透過した光を受光するセンサと、
を含む画像読み取り装置。
【請求項7】
前記EL素子および前記センサを内部に収納する筐体を更に備え、
前記筐体は、前記EL素子における前記基板の清掃を当該筐体の外部から可能とする開口を備えることを特徴とする請求項6記載の画像読み取り装置。
【請求項8】
前記開口は、前記筐体の所定位置に設けられ搬送される原稿の画像を読み取る際に用いられるプラテンガラスを当該所定位置とは異なる位置に移動させることで形成されることを特徴とする請求項7記載の画像読み取り装置。
【請求項9】
前記EL素子は、前記センサおよび当該センサに前記原稿の反射光を導くミラーを内部に備え当該原稿の画像を読み取る読み取りユニットに取り付けられることを特徴とする請求項6記載の画像読み取り装置。
【請求項10】
光透過性領域を有する基板と、
前記基板上の第1の長尺領域に形成される第1の発光領域と、
前記基板上であって前記第1の長尺領域から所定の間隙を有した略平行位置である第2の長尺領域に形成される第2の発光領域と、
前記所定の間隙にて前記基板の前記光透過性領域によって形成されるスリット領域と、
を備えたことを特徴とする発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−147404(P2009−147404A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319313(P2007−319313)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】