説明

画像読取り装置

【課題】省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を光源として利用しつつ、放熱効率が良好で、高輝度化を達成できる画像読取り装置を得る。
【解決手段】CCDラインセンサによって原稿画像を1ラインずつ読み取る画像読取り装置。原稿を照明するための光源としてエレクトロルミネッセンス素子20を用いる。エレクトロルミネッセンス素子20を構成する透明基板27及び基板21の外面に半球形状の凸部27a,21aが形成され、放熱効果を上げている。また、凸部27aは集光効果を有し、原稿に対する照明光量が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取り装置、特に、原稿画像を光学的に読み取るための画像読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタに搭載される、あるいは、パソコンなどへの画像入力装置として用いられる画像読取り装置としては、光源にて原稿を照明し、原稿からの反射光をミラーを介して結像レンズに導き、CCD(光電変換素子)からなるラインセンサに結像させるように構成したものが知られている。
【0003】
原稿照明用の光源としては、従来、蛍光灯やハロゲンランプなどが主に使用されていたが、最近では、LEDやエレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子とも記す)が省電力・低発熱な光源として注目を集めている。但し、これらの光源では、画像読取りの高速化が進む現在では大光量を得ることが実用化の条件とされている。EL素子の場合、光量を増大させるためには電流を多く流すことが必要となるが、これに伴って発熱も大きくなり、寿命の短縮化につながる。また、結像レンズを用いると、レンズのコサイン4乗則による1ラインの両端部分での光量低下を補償する必要も生じる。
【0004】
特許文献1には、有機ELパネルにおいて、放熱手段としてEL素子を囲む基板に凹凸を形成することが記載されている。しかし、これはEL素子を直接的に冷却するものではなく、冷却効率が悪く、また、集光性を何ら考慮したものではない。
【特許文献1】特開2006−185643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を光源として利用しつつ、放熱効率が良好で、高輝度化を達成できる画像読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明は、
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、を備えた画像読取り装置において、
前記光源はエレクトロルミネッセンス素子であり、該素子を構成する部材の外面に複数の凸部を設けたこと、
を特徴とする。
【0007】
本発明に係る画像読取り装置においては、エレクトロルミネッセンス素子を構成する部材の外面に複数の凸部を設けたため、放熱効率が向上し、長寿命化を図ることができ、あるいは、電流量を多くできるので輝度が高くなる。この点で、複数の凸部が形成された部材は熱伝導率の高いものであることが好ましい
【0008】
本発明に係る画像読取り装置において、複数の凸部は、球形状の一部をなし、エレクトロルミネッセンス素子の光放射方向の外面に形成されていることが好ましい。最も発熱する箇所である光放射方向の外面に凸部を形成することで良好な放熱効率が期待でき、かつ、凸部が球形状の一部をなして集光効果を有することで、画像読取りの高速化に対応した光量の増大を図ることができる。
【0009】
複数の凸部は、隣り合う凸部が接していてもよく、あるいは、隣り合う凸部が所定距離離れていてもよい。前者であれば、凸部の集光効果が高まり、原稿面の照度が向上する。後者であれば、光源が画像スキャンのために移動する際の空気抵抗が減少する。
【0010】
また、複数の凸部は、エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分において設置密度が高いことが好ましい。長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが光量が多くなり、レンズのコサイン4乗則による両端部分での光量低下を補償することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像読取り装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(画像読取り装置の概略構成、図1参照)
図1に本発明に係る画像読取り装置の概略構成を示す。この画像読取り装置1は、プラテンガラス2上に載置された原稿Dの画像を縮小光学系を用いて読み取るもので、光源ユニット10にてプラテンガラス2上に載置された原稿Dを照射し、原稿面からの反射光をミラー15,16,17を介して結像レンズ18に入射し、該結像レンズ18にてCCDラインセンサ19(光電変換素子)上に結像させる。
【0013】
光源ユニット10とミラー15とは第1スライダ11に搭載され、ミラー16,17は第2スライダ12に搭載され、それぞれ、矢印A方向に図示しないモータによって移動される。CCDラインセンサ19は矢印A方向とは直交する方向(主走査方向B)にライン状に配置され、光源ユニット10やミラー15なども主走査方向Bに延在しており、本明細書ではこの主走査方向Bを長手方向とも称する。
【0014】
(エレクトロルミネッセンス素子の第1例、図2参照)
光源ユニット10は、移動方向Aに並べて配置した二つのエレクトロルミネッセンス素子20を光源として備えている。このEL素子20は、図2に示すように、基板21の凹所に、有機発光層22(無機でもよい)、正孔輸送層23、電子輸送層24を封入したもので、上部に陽極電極25を設け、下部に陰極電極26を設け、基板27で覆われている。陽極電極25及び基板27は透明材からなり、光は発光層22から透明電極25及び透明基板27を通じて放射される。光の放射効率を高めるために、陰極電極26は金属など反射率の高い材料で形成されることが好ましい。
【0015】
前記透明基板27の外面(表面)には複数の半球形状の凸部27aが設けられ、前記基板21の外面(裏面)には複数の半球形状の凸部21aが設けられている。これらの凸部27a,21aは隣り合う凸部が接している状態で平面的にマトリクス状に設けられている。
【0016】
以上の構成からなるEL素子20においては、EL素子20を構成する透明基板27の外面及び基板21の外面に複数の凸部27a,21aを設けたため、放熱効率が向上し、EL素子20の長寿命化を図ることができ、あるいは、電流量を多くできるので輝度が高くなる。この点で、複数の凸部27a,21aが形成された基板27,21は熱伝導率の高いものであることが好ましい
【0017】
特に、透明基板27に形成した複数の凸部27aは、EL素子20の光放射方向の外面(最も発熱する箇所である)に形成されているため、良好な放熱効率が期待でき、かつ、凸部27aが球形状の一部をなして集光(レンズ)効果を有することで、画像読取りの高速化に対応した光量の増大を図ることができる。また、複数の凸部27aは、隣り合う凸部が接して密集しているため、凸部27aによる集光効果が高まり、原稿面の照度がより向上する。
【0018】
(EL素子の第2例、図3及び図4参照)
図3及び図4に第2例であるEL素子20を示す。このEL素子20は基本的には図2に示した第1例と同様の構成からなり、異なるのは、基板27,21に設けた凸部27a,21aを隣り合う凸部が所定距離離れて配置した点にある。その作用効果は前記第1例と基本的に同様であり、特に、凸部27a,21aを所定距離離れて配置したため、画像スキャンのために移動する際の空気抵抗が減少する。
【0019】
(EL素子の第3例、図5及び図6参照)
図5に第3例であるEL素子20を示す。このEL素子20は基本的には図2に示した第1例と同様の構成からなり、異なるのは、透明基板27に設けた凸部27aは、EL素子20の長手方向の中央部分よりも両端部分において設置密度を高く配置した点にある。凸部27aの設置密度を高くすれば、集光効果によって放射光量が多くなり、EL素子20から原稿面に向かって放射される光量分布は、図6に曲線C1で示すように、主走査方向B(長手方向)の中央部分よりも両端部分のほうが光量が多くなる。
【0020】
CCDラインセンサ19での光量は、結像レンズ18を介することで、レンズのコサイン4乗則によって主走査方向Bの両端部分の光量が減衰する。しかし、EL素子20からの原稿照射光量が前記曲線C1の分布特性を有するために、主走査方向Bの両端部分での光量減衰を保障することができ、図6に曲線C2で示すように、CCDラインセンサ19への入射光量分布が主走査方向Bの中央部分から両端部分にわたってほぼ均一となる。
【0021】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像読取り装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0022】
例えば、本発明が適用される画像読取り装置としては、光学系が移動して静止原稿の画像を読み取る方式以外に、所定位置で静止する読取り光学系の直上を原稿を所定速度で搬送することにより画像を読み取るスルーシート方式であってもよい。また、前記実施例で示した縮小光学系を用いた画像読取り装置以外に、密着型の等倍光学系を用いた画像読取り装置であってもよい。さらに、EL素子の配置関係、光源ユニットからの照明光を原稿面に導く導光部材の構成、原稿面からの反射光を導くミラーなどの構成は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る画像読取り装置を示す概略構成図である。
【図2】EL素子の第1例を示す断面図である。
【図3】EL素子の第2例を示す断面図である。
【図4】EL素子の第2例を示す平面図である。
【図5】EL素子の第3例の要部を示す断面図である。
【図6】EL素子の第3例による光量分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0024】
1…画像読取り装置
10…光源ユニット
18…結像レンズ
19…CCDラインセンサ
20…エレクトロルミネッセンス素子
21,27…基板
21a,27a…凸部
B…主走査方向(長手方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、を備えた画像読取り装置において、
前記光源はエレクトロルミネッセンス素子であり、該素子を構成する部材の外面に複数の凸部を設けたこと、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
前記複数の凸部は、球形状の一部をなし、前記エレクトロルミネッセンス素子の光放射方向の外面に形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項3】
前記複数の凸部は、隣り合う凸部が接していること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取り装置。
【請求項4】
前記複数の凸部は、隣り合う凸部が所定距離離れていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取り装置。
【請求項5】
前記複数の凸部は、前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分において設置密度が高いこと、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項6】
前記複数の凸部が形成された部材は熱伝導率の高いものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像読取り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−159304(P2009−159304A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335115(P2007−335115)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】