説明

画像読取装置、その制御方法及びプログラム

【課題】複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを取り込む画像読取装置において、本来回転させる必要のない画像データを回転させてしまうのを防止する。
【解決手段】透過原稿読取ルーチンでは、推定した被写体の上部が表示画面の上部とも表示画面の下部とも一致していないと判定され、且つ、推定結果の確信度合いが所定の高確信度範囲に入るとき(S150,S160で共にYES)、被写体の上部が表示画面の上部と一致するようプレスキャンデータを自動回転させ(ステップS170)、その後自動回転後のプレスキャンデータを表示画面に表示する(ステップS220)。一方、推定した被写体の上部が表示画面の上部か下部のいずれかと一致したときや推定結果の確信度合いが所定の高確信度範囲に入らないときには、プレスキャンデータを回転させずに表示画面に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写体の上部を所定の基準に合わせる技術が開示されている。例えば特許文献1には、画像データ中の被写体の上部を複数の解析方法(例えば色相情報に基づく解析方法、輝度情報に基づく解析方法、構図情報に基づく解析方法)の組合せによって検出し、その被写体の上部が所定の基準に合うように画像データを回転させる技術が開示されている。一方、画像読取装置としては、複数のコマが連なっている銀塩写真のストリップフィルムを読み取って画像データを取り込む場合に、フィルムホルダのストリップフィルム固定部にストリップフィルムを横長になるように固定し、そのフィルムホルダを原稿台であるガラス板に載せ、ストリップフィルムの上から下へ照射する光源を利用して画像データを取り込み、ディスプレイに表示するものが知られている。なお、こうしたフィルムホルダは例えば特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2001−14455号公報
【特許文献2】特開2004−241838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した画像読取装置において、例えば図9に示すように6つのコマA〜Fが連なっているストリップフィルムをフィルムホルダに固定して読み取る場合、各コマの長手方向はストリップフィルムの長手方向と一致している。このため、カメラを横向きにして撮影した画像(例えば図9のコマAの画像)については、被写体の上部が表示画面の上部と一致するから、画像データを回転させる必要はない。一方、カメラを縦向きにして撮影した画像(例えば図9のコマBの画像)については、被写体の上部が表示画面の上部と一致しないため、画像データを回転させる必要がある。こうした場合に、特許文献1の技術を利用することが考えられるが、特許文献1では被写体の上部を検出する精度が必ずしも高くないため、本来回転させる必要のない画像データを回転させてしまうことがあった。具体的には、あるコマに写っている被写体の上部が表示画面の上部と一致しているにもかかわらず、逆さまであると誤判定して画像データを回転させてしまうことがあった。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを取り込む画像読取装置において、本来回転させる必要のない画像データを回転させてしまうのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の画像読取装置は、
複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを生成し、該生成した画像データを取り込む画像読取装置であって、
前記フィルムを横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部が所定の表示画面の上部と一致する所定の向きで固定するようユーザに促す指示が表示された指示表示部と前記フィルムを前記所定の向きで固定可能なフィルム固定部とを有する固定手段と、
前記固定手段のフィルム固定部に固定されたフィルムを読み取ったあと、該フィルムの各コマに写っている被写体につき該被写体の上部が前記表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定する推定手段と、
前記推定手段によって得られた推定結果の正否の度合いを表す確信度合いを数値として導出する確信度合い導出手段と、
前記推定手段によって前記被写体の上部が前記表示画面の上部とも下部とも一致していないと判定され、且つ、前記確信度合い導出手段によって導出された確信度合いが所定の高確信度範囲に入るとき、前記被写体の上部が前記表示画面の上部と一致するよう前記画像データを自動回転させたあと該自動回転後の画像データを前記表示画面に表示する制御手段と、
を備えたものである。
【0007】
この画像読取装置では、固定手段のフィルム固定部に固定されたフィルムを読み取ったあと、該フィルムの各コマに写っている被写体につきその上部が所定の表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定し、その推定結果の正否の度合いを表す確信度合いを数値として導出する。そして、被写体の上部が表示画面の上部とも下部とも一致していないと判定され、且つ、確信度合いが所定の高確信度範囲に入るとき、被写体の上部が表示画面の上部と一致するよう画像データを自動回転させたあと該自動回転後の画像データを表示画面に表示する。ここで、ユーザは固定手段のフィルム固定部にフィルムを固定する際、指示表示部の指示にしたがってフィルムを所定の向き、つまり横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部が表示画面の上部と一致する向きとなるように固定する。こうした状況で被写体の上部が表示画面の上部と一致するという推定結果が得られた場合には、回転させる必要がないため、画像データを回転させない。また、被写体の上部が表示画面の下部と一致するという推定結果が得られた場合には、カメラを上下逆さまに構えて横長画像を撮影したことを意味するが、そのようなことはほとんどあり得ないから、その推定結果は確信度合いにかかわらず誤りであるとみなし、画像データを回転させない。一方、被写体の上部が表示画面の左右いずれかと一致するという推定結果が得られた場合には、カメラを縦に構えて縦長画像を撮影したことを意味するが、そうしたことはあり得るから、確信度合いが高確信度範囲に入ることを条件に画像データを回転させる。こうすることにより、複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを取り込む画像読取装置において、本来回転させる必要のない画像データを回転させてしまうのを防止することができる。
【0008】
ここで、フィルムとは、銀塩写真の現像済みフィルムであり、ネガフィルムであってもよいしポジフィルムであってもよい。また、高確信度範囲とは、例えば、推定された被写体の上部と表示画面の上部とが一致するよう画像データを自動回転させたときに自動回転後の被写体の上部と表示画面の上部とが正しく一致したか否かを統計的に検証し、正しく一致したときの確信度合いの数値に基づいて設定される範囲としてもよい。また、横長画像とは、画像データ中の被写体の上部を表示画面の上部に合わせたときに横方向の辺が縦方向の辺より長くなる画像をいい、縦長画像とは、画像データ中の被写体の上部を表示画面の上部に合わせたときに縦方向の辺が横方向の辺より長くなる画像をいう。なお、複数のコマが連なったフィルムにおいてはコマが横長であることから、横長画像は被写体の上部がコマの上部と一致するが(例えば図9のコマA参照)、縦長画像は被写体の上部がコマの左右いずれかと一致する(例えば図9のコマB参照)。
【0009】
本発明の画像読取装置において、前記確信度合い導出手段は、前記被写体の上部が前記表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定するときの根拠と確信度合いの数値とを予め対応づけた対応関係に基づいて確信度合いを導出してもよい。こうすれば、確信度合いを数値として比較的簡単に導出することができる。ここで、対応関係は、例えば、根拠の内容ごとに確信度合いの数値を対応づけたテーブルとしてもよい。
【0010】
本発明の画像読取装置において、前記制御手段は、前記自動回転後の画像データを前記表示画面に表示したあとユーザが該自動回転後の画像データに対して手動回転を行ったか否かを判定し、手動回転を行った頻度が高頻度範囲に入ったときには前記高確信度範囲の下限値を高くしてもよい。手動回転を行った頻度が高ければ、それまで自動回転を許容しすぎた傾向にあるため、確信度合いの高確信度範囲の下限値を高くして自動回転を実行しにくいようにするのである。こうすることにより、自動回転を適切に実行することができるようになる。
【0011】
本発明の画像読取装置において、前記制御手段は、前記自動回転後の画像データを前記表示画面に表示したあとユーザが該自動回転後の画像データに対して手動回転を行ったか否かを判定し、手動回転を行わなかった頻度が高頻度範囲に入ったときには前記高確信度範囲の下限値を低くしてもよい。手動回転を行わなかった頻度が高ければ、それまで自動回転を制限しすぎた傾向にあるため、確信度合いの高確信度範囲の下限値を低くして自動回転を実行しやすいようにするのである。こうすることにより、自動回転を適切に実行することができるようになる。
【0012】
本発明の画像読取装置の制御方法は、
複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを生成し、該生成した画像データを取り込む機能を有し、前記フィルムを横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部が所定の表示画面の上部と一致する所定の向きで固定するようユーザに促す指示が表示された指示表示部と前記フィルムを前記所定の向きで固定可能なフィルム固定部とを有する固定手段と、を備えた画像読取装置を制御する方法であって、
(a)前記固定手段のフィルム固定部に固定されたフィルムを読み取ったあと、該フィルムの各コマに写っている被写体につき該被写体の上部が前記表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定するステップと、
(b)前記ステップ(a)で得られた推定結果の正否の度合いを表す確信度合いを数値として導出するステップと、
(c)前記ステップ(a)で前記被写体の上部が前記表示画面の上部とも下部とも一致していないと判定され、且つ、前記ステップ(b)で導出された確信度合いが所定の高確信度範囲に入るとき、前記被写体の上部が前記表示画面の上部と一致するよう前記画像データを自動回転させたあと該自動回転後の画像データを前記表示画面に表示するステップと、
を含むものである。
【0013】
この画像読取装置の制御方法では、前提として、ユーザは固定手段のフィルム固定部にフィルムを固定する際、指示表示部の指示にしたがってフィルム固定部にフィルムを所定の向き、つまり横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部が所定の表示画面の上部と一致する向きとなるように固定するものとする。こうした状況で被写体の上部が表示画面の上部と一致するという推定結果が得られた場合には、回転させる必要がないため、画像データを回転させない。また、被写体の上部が表示画面の下部と一致するという推定結果が得られた場合には、カメラを上下逆さまに構えて横長画像を撮影したことを意味するが、そのようなことはほとんどあり得ないから、その推定結果は確信度合いにかかわらず誤りであるとみなし、画像データを回転させない。一方、被写体の上部が表示画面の左右いずれかと一致するという推定結果が得られた場合には、カメラを縦に構えて縦長画像を撮影したことを意味するが、そうしたことはあり得るから、確信度合いが高確信度範囲に入ることを条件に画像データを回転させる。こうすることにより、複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを取り込む画像読取装置において、本来回転させる必要のない画像データを回転させてしまうのを防止することができる。なお、本発明の画像読取装置の制御方法において、上述したいずれかの画像読取装置の機能を実現するステップを追加してもよい。
【0014】
本発明のプログラムは、1又は複数のコンピュータに、上述した画像読取装置の制御方法を実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、本発明の画像読取装置の制御方法と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態であるマルチファンクションプリンタ10の斜視図であり、図2はマルチファンクションプリンタ10の電気的接続を表すブロック図であり、図3は、反射原稿を読み取るときの説明図であり、図4はフィルムホルダ20の斜視図である。
【0016】
本実施形態のマルチファンクションプリンタ10は、図1に示すように、筐体12の上面奥側にヒンジ14a,14bを介して開閉自在に取り付けられたカバー16と、筐体12の上面に嵌め込まれたガラス板13の所定の位置に位置決めされるフィルムホルダ20と、ガラス板13に載置された読取対象物をスキャニングするスキャナ部30と、スキャナ部30の下方に配置され筐体12の背面から給紙された用紙Sに印刷を行い筐体12の前面に設けられた排出口18から印刷された用紙Sを排出する印刷部40と、メモリカード52などを挿入可能なカードスロット50と、各種の情報を表示するディスプレイ62のほか電源ボタンやスタートボタンなどのボタン群64が設けられた操作パネル60と、このマルチファンクションプリンタ10の全体の制御を司るコントローラ70(図2参照)とを備えている。なお、本実施形態では印刷媒体を「用紙S」として説明するが、材質を特定する趣旨ではなく、紙のほか透明樹脂板など他の材質も含むものとする。
【0017】
カバー16は、図1に示すように、ガラス板13の上面を覆うことのできる大きさに成形された樹脂板である。このカバー16の裏面には、現像済みのストリップフィルム等の透過原稿を読み取る際に使用する透過原稿用光源19が設けられている。この透過原稿用光源19は、白色LEDや水銀ランプなどにより白色光をガラス板13の上から下に向かって照射するものであり、透過原稿を固定するフィルムホルダ20をガラス板13の上面に位置決めした状態でカバー16を閉じるとフィルムホルダ20のストリップフィルム固定部25又はスライド固定部26のいずれかと対向するようになっている。また、カバー16の裏面には、図3に示すように、ガラス板13と略同じ大きさで白色の保護マット17が取り付け可能になっている。この保護マット17は、カバー16に装着された状態では透過原稿用光源19を覆い隠すと共に、カバー16を閉じることによりガラス板13に載置された紙や写真等の反射原稿を上から押さえる役割を果たす。したがって、図1のようにフィルムホルダ20を使用して透過原稿を読み取るときには保護マット17を取り外して透過原稿用光源19を露出させるが、反射原稿を読み取るときには保護マット17を取り付ける。なお、ガラス板13に読取対象物を載置したとき、ガラス板13の奥側(ヒンジ14a、14bに近い側)がディスプレイ62の表示画面の上部に対応する。
【0018】
フィルムホルダ20は、A4用紙よりも一回り小さな大きさに形成された黒色の樹脂板である。このフィルムホルダ20には、図4に示すように、複数のコマが連なった銀塩写真の現像済みのストリップフィルムを固定するためのストリップフィルム固定部25とスライドを固定するための複数のスライド固定部26とが設けられている。ストリップフィルム固定部25は、フィルムホルダ20の長辺に沿って長く伸びる長方形状の段差付開口25aと、この段差付開口25aの周辺にヒンジ部を介して開閉可能に取り付けられたフレーム状のカバープレート25bとを備えている。ストリップフィルム固定部25にストリップフィルムを固定するには、カバープレート25bを開いた状態で段差付開口25aの段差部分にストリップフィルムを載せたあとカバープレート25bを閉じる。こうすることにより、ストリップフィルムは、段差付開口25aの段差部分とカバープレート25bとで周縁が挟み込まれて固定される。ストリップフィルム固定部25の周囲には、指示表示部29が印刷されている。この指示表示部29は、横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部をディスプレイ62の表示画面の上部(図4では矩形マーク28側)と一致する所定の向きで固定するよう促すと共に被写体を裏返しの状態で固定するよう促す指示が図示されている。これにより、ユーザがストリップフィルムを固定するときに、向きや表裏を誤ってセットすることを防いでいる。なお、ストリップフィルムの各コマのすぐ上にはコマ番号(図9参照)が付されており、このコマ番号が正しく読める面が表となる。各スライド固定部26は、スライド(マウントフィルム)と略同形状の開口26aとその開口の縁に設けられた弾性支持部材26bとを備えている。このスライド固定部26にスライドを固定するには、スライドを開口26aに嵌め込む。このとき、弾性支持部材26bはスライドによって外方向に押されて弾性変形するため、スライドはその弾性力によって固定される。
【0019】
このフィルムホルダ20の一辺の長辺20aには2カ所に突片21a,21bが設けられ、各突片21a,21bの裏面には筐体12に設けられた支持穴12a,12b(図3参照)と係合可能な突起22a,22bが設けられている。そして、フィルムホルダ20をガラス板13に載せて突起22a,22bを支持穴12a,12bと係合させると、ストリップフィルム固定部25が透過原稿用光源19と対向する位置に位置決めされる。また、フィルムホルダ20の他方の長辺20bには2カ所に突片23a,23bが設けられ、各突片23a,23bの裏面には筐体12に設けられた支持穴12a,12bと係合可能な突起24a,24bが設けられている。そして、フィルムホルダ20をガラス板13に載せて突起24a,24bを支持穴12a,12bと係合させると、スライド固定部26が透過原稿用光源19と対向する位置に位置決めされる。また、フィルムホルダ20の裏面であって長辺20bの略中央部には、白色の矩形マーク28が2つ備えられている。後述する反射プレスキャンを行ったとき、この白色の矩形マーク28が認識できたときには、CPU71はフィルムホルダ20がガラス板13に載置されている、つまり、透過原稿の読み取りを行う必要があると認識する。また、白色の矩形マーク28が操作パネル60に遠い位置にあるか近い位置にあるかで、透過原稿用光源19に対向する位置にストリップフィルム固定部25が位置するかスライド固定部26が位置するかを判定する。
【0020】
スキャナ部30は、図2に示すように、ガラス板13に載置された読取対象物を読み取るキャリッジ31を備えている。キャリッジ31は、ガラス板13の下方に配置されており、読取対象物が反射原稿であるときに光を照射する反射原稿用光源32と、反射原稿に反射した光又は透過原稿を透過した光をミラー33及び集光レンズ34を介して受けることにより画像を読み取るイメージセンサ36とを備えている。反射原稿用光源32は、主走査方向に並んだ複数の白色LEDからの光が線状にガラス板13へ照射されるように構成されている。イメージセンサ36は、複数の撮像素子が主走査方向に直列に配設され、ミラー33及び集光レンズ34を介して受けた光を電荷に変換してアナログ電気信号を出力する。また、キャリッジ31は、筐体12の一端に取り付けられた図示しない駆動モータによって駆動されるのに伴って副走査方向へ移動する。なお、イメージセンサ36としては、CCDイメージセンサを採用してもよいし、CMOS型のイメージセンサを採用してもよい。また、反射原稿用光源32として白色LEDを例示したが、例えば赤色LED、緑色LED、青色LEDや水銀ランプなどにより白色光を照射するものとしてもよい。
【0021】
印刷部40は、筐体12の内部に配置され、図2に示すように、左右方向にループ状に架け渡されたキャリッジベルト41により駆動されガイド42に沿って左右に往復するキャリッジ43と、キャリッジ43にシアン・マゼンダ・イエロー・ライトシアン・ライトマゼンダ・ブラック等の各色のインクを供給するインクカートリッジ44と、各インクカートリッジ44から供給された各インクに圧力をかけてノズルから用紙Sに向かってインクを吐出する印刷ヘッド45と、用紙Sを排出口18へ送り出す搬送ローラ46とを備えている。インクカートリッジ44は印刷部40の下方に取り付けられており、インクカートリッジ44がキャリッジ43上に搭載されていない、いわゆるオフキャリッジタイプである。印刷ヘッド45は、ここでは圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用しているが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。
【0022】
カードスロット50には、図2に示すように、メモリカード52が差し込まれている。メモリカード52には、スキャナ部30で読み取った画像データを保存することができる。
【0023】
操作パネル60は、図2に示すように、その中央にディスプレイ62が配置されており、ディスプレイ62の周囲にはボタン群64を備えている。ボタン群64は、電源ボタン64a、コピーモードやメモリカードモード、フィルムモードなどの多数のモードの中から一つのモードを選択するモード選択ボタン64b、ディスプレイ62に表示された複数の選択肢から一つを選択したり次の画面に進んだり前の画面に戻ったりするときに利用される上下左右ボタン64c及びOKボタン64d、画像の読み取りや印刷を実行するスタートボタン64e、設定をキャンセルしたり動作を途中で止めるストップボタン64fなどの複数のボタンを有している。
【0024】
コントローラ70は、図2に示すように、CPU71を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラム(後述する透過原稿読取処理ルーチンなど)や各種データ、各種テーブルなどを記憶したROM72と、一時的にデータを記憶するRAM73と、電気的に書き換え可能で電源を切ってもデータは保持されるフラッシュメモリ74と、カードスロット50に挿入されたメモリカード52や印刷部40、ユーザPC80などと通信を可能とするインタフェース(以下、I/F)75とを備え、これらはバス76を介して互いに信号のやり取りが可能なように接続されている。このコントローラ70は、スキャナ部30や印刷部40からの各種動作信号や各種検出信号、ユーザPCからの読取指令信号などを入力したり、操作パネル60のボタン群64の操作に応じて発生する操作信号を入力したりする。また、コントローラ70は、操作パネル60のディスプレイ62に表示制御信号を出力したり、スキャナ部30や印刷部40への各種制御信号を出力したりする。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態のマルチファンクションプリンタ10の動作、特に透過原稿読取処理の動作について説明する。図5は、コントローラ70のCPU71により実行される透過原稿読取処理ルーチンの一例を表すフローチャートである。この透過原稿読取処理ルーチンはROM72に記憶されている。コントローラ70のCPU71は、操作パネル60からの読取指令を受信したときにキャリッジ31上の反射原稿用光源32を用いて反射プレスキャンを実行してプレスキャンデータをRAM73に記憶し、そのプレスキャンデータを解析して2つの白色の矩形マーク28が含まれているか否かによってフィルムホルダ20が利用されているか否かつまり透過原稿が読取対象物か否かを判定し、透過原稿が読取対象物だったときに透過原稿読取処理ルーチンを開始する。
【0026】
図5の透過原稿読取処理ルーチンが開始されると、CPU71は、まず、自動回転フラグF1及び手動回転フラグF2をそれぞれ値ゼロにリセットする(ステップS100)。なお、自動回転フラグF1は、各コマごとに設定されるフラグであり、プレスキャンデータを自動回転させたか否かを表すフラグである。また、手動回転フラグF2は、各コマごとに設定されるフラグであり、プレスキャンデータを手動回転させたか否かを表すフラグである。なお、読取対象物がスライドのときにはフィルムホルダ20のスライド固定部26に固定された各スライドを各コマとして取り扱う。続いて、CPU71は、カバー16の裏面に設けられた透過原稿用光源19を用いて透過プレスキャンを実行し、得られた画像データをプレスキャンデータとしてRAM73に保存する(ステップS110)。続いて、CPU71は、読取対象物がストリップフィルムなのかスライドなのかを判定する(ステップS120)。具体的には、矩形マーク28が操作パネル60から遠い位置にあるときには透過原稿用光源19にストリップフィルム固定部25が対向しているためストリップフィルムが読取対象物であると判定し、矩形マーク28が操作パネル60に近い位置にあるときには透過原稿用光源19にスライド固定部26が対向しているためスライドが読取対象物であると判定する。ステップS140で読取対象物がスライドだったときには、各コマのプレスキャンデータを回転させずにディスプレイ62のプレビュー画面に表示する(ステップS220)。すなわち、ユーザがスライドをスライド固定部26に固定する際には、スライドに写された被写体の上下を確認して一つずつセットするため、読み取った画像データを回転させる必要がないことから、ステップS220へスキップするのである。
【0027】
一方、ステップS130で読取対象物がストリップフィルムだったときには、ストリップフィルムの最初のコマを処理対象に設定する(ステップS130)。本実施形態では、コマ番号の最も若いものを最初のコマとする。続いて、CPU71は、処理対象のコマのプレスキャンデータに基づいてそのコマに写された被写体の上部を推定し、この推定結果の正否の度合いを表す確信度合いを導出する(ステップS140)。ここで、被写体の上部を推定する方法は公知技術(例えば特許文献1参照)なので、その詳細な推定方法については省略するが、例えば、輝度情報に基づく解析方法や、色相情報に基づく解析方法や、構図情報に基づく解析方法などによって被写体の上部を推定することができる。輝度情報に基づく解析方法によれば、一般に被写体は上部の方が明るい場合が多いため、輝度値のヒストグラムを解析することにより被写体の上部を推定することができる。具体的には、1つの画像を左右、上下それぞれ2分割した4ブロックの輝度値のヒストグラムを作成し、各ヒストグラムを比較しどの分割ブロックが最も明るいかを判定し、被写体の上部を推定する。なお、ネガフィルムの場合には被写体の明暗を反転させたあとこの判定を実行する。色相情報に基づく解析方法によれば、風景、野外で撮影された画像には空が映っている場合が多いため、青色濃度の分布により被写体の上部を推定することができる。具体的には、輝度情報に基づく解析方法と同様に、1つの画像を分割し、それぞれ分割されたエリア内での青色濃度を比較することによって被写体の上部を推定することができる。構図情報に基づく解析方法によれば、地平線等のように普遍的に1つの方向を示すものや、人物の顔の目、耳、口、鼻などの配置、背景の看板の文字の向き等を判別して被写体の上部を推定することができる。被写体の上部を推定した後、確信度合いを導出する。ここで、確信度合いとは、推定結果の正否の確からしさをゼロから値100までの数値として表したものであり、値が大きければ大きいほど推定した結果が確からしいことを表す。本実施形態では、被写体の上部は、輝度情報に基づいて推定するものとする。また、確信度合いは、推定した上部と下部との輝度値の差を算出し、予め定めた輝度値と確信度合いの数値との対応テーブルに照らしてゼロから値100までのいずれかの数値に決定するものとする。この対応テーブルは、推定した上部と下部との輝度値の差が大きいほど確信度合いの値が大きくなるように設定されている。
【0028】
続いて、CPU71は、ステップS140で導出した確信度合いが高確信度範囲内であるか否かを判定する(ステップS150)。具体的には、確信度合いが所定の下限値(例えば、値70)以上であるか否かの判定を行うが、この下限値は後述する高確信度範囲修正処理ルーチンにより適宜修正されるものである。確信度合いが高確信度範囲内になかったときには、処理対象のコマのプレスキャンデータを回転させることなくそのままRAM73に保存する(ステップS190)。この場合、被写体の上部を推定した推定結果が誤っている可能性が高いため、推定結果に基づいてプレスキャンデータを回転させると、かえってユーザの操作を増やすことになりかねないことから、プレスキャンデータをそのまま保存するのである。一方、ステップS150で確信度合いが高確信度範囲内だったときには、推定した被写体の上部がディスプレイ62の表示画面の上部とも下部とも不一致か否かを判定し(ステップS160)、推定した被写体の上部が表示画面の上部か下部のいずれかと一致していたときには、処理対象のコマのプレスキャンデータを回転させることなくRAM73に保存する(ステップS190)。すなわち、推定した被写体の上部が表示画面の上部と一致していたときには、そもそもプレスキャンデータを回転させる必要がない。また、推定した被写体の上部が表示画面の下部と一致していたときには、カメラを上下逆さまに構えて横長画像を撮影したことを意味するが、そのようなことはほとんどあり得ないから、その推定結果は確信度合いの高低にかかわらず誤りであるとみなし、プレスキャンデータを回転させない。一方、ステップS160で、推定した被写体の上部がディスプレイ62の表示画面の上部とも下部とも不一致だったときつまり表示画面の左右いずれかと一致していたときには、推定した被写体の上部が表示画面の上部と一致するよう処理対象のコマのプレスキャンデータを回転させ、回転後のプレスキャンデータをRAM73に保存し(ステップS170)、今回の処理対象のコマに対応する自動回転フラグF1に値1を設定する(ステップS180)。この場合、カメラを縦に構えて縦長画像を撮影したことを意味するが、そうしたことはあり得るから、確信度合いが高確信度範囲に入ることを条件にプレスキャンデータを回転させるのである。
【0029】
そして、ステップS180又はステップS190のあと、未処理のコマがあるか否かを判定し(ステップS200)、未処理のコマがあるときには今回処理対象だったコマの次のコマを処理対象に設定し(ステップS210)、再びステップS140に戻る。一方、ステップS200で未処理のコマがなかったときには、複数のコマが連なったストリップフィルムの各コマのプレスキャンデータをRAM73から読み出してサムネイル画像を生成し、各コマのサムネイル画像を並べて表示するプレビュー画面が表示されるようディスプレイ62を制御する(ステップS220)。ここで、複数のコマが連なったストリップフィルムが読取対象物だったときのプレビュー画面を図6に示す。図6に示すように、プレビュー画面の右側にはプレスキャンによって読み取ったプレスキャンデータがサムネイル画像として一覧表示され、左側には90°右回転ボタン62aや90°左回転ボタン62b、スキャンボタン62cなどが表示される。このとき、ユーザは上下左右ボタン64c及びOKボタン64dによって所定のサムネイル画像を選択し、90°右回転ボタン62aや90°左回転ボタン62bを選択することで、そのサムネイル画像を手動回転させることができる。なお、右端のサムネイル画像の右側に設けられた矢印ボタンを選択すれば、次のコマのサムネイル画像が表示される。
【0030】
続いて、CPU71は、プレビュー画面の各コマのサムネイル画像についてユーザが手動回転を行ったか否かを判定し(ステップS230)、ユーザが手動回転を行ったときにはそのコマの回転角度をRAM73に記憶すると共に(ステップS240)、そのコマに対応する手動回転フラグF2に値1をセットする(ステップS250)。そしてステップS250のあと又はステップS230でユーザが手動回転を行わなかったときには、高解像度での本スキャンの実行を指令するスキャンボタン62cが選択されたか否かを判定し(ステップS260)、スキャンボタン62cが選択されていないときには再びステップS230に戻る。一方、スキャンボタン62cが選択されたときには、透過原稿用光源19及びスキャナ部30に制御指令を出力して本スキャンを実行し、本スキャン後の画像データを本スキャンデータとしてRAM73に一時記憶する(ステップS270)。続いて、すでにRAM73に保存した各コマのプレスキャンデータの回転角度に合わせて各コマの本スキャンデータを回転させ、回転後の各コマの本スキャンデータをRAM73に記憶し(ステップS280)、更に高確信度範囲修正処理を実行し(ステップS290)、本ルーチンを終了する。
【0031】
ここで、プレビュー画面の具体例について図7に基づいて説明する。図7は、プレビュー画面の具体例を示す説明図である。図7(a)のサムネイル画像SN1は、図9のストリップフィルムのコマAのプレスキャンデータを回転させずにそのまま表示したものである。すなわち、コマAのプレスキャンデータは、透過原稿読取処理ルーチンにおいて推定した被写体の上部と画面の上部とが一致したため、回転させずにそのままサムネイル画像SN1として表示されている。サムネイル画像SN2は、図9のストリップフィルムのコマBのプレスキャンデータを90°右回転させたあと表示したものである。すなわち、コマBのプレスキャンデータは、透過原稿読取処理ルーチンにおいて推定した被写体の上部と画面の左部とが一致したため90°右回転させたあとサムネイル画像SN2として表示されている。ここでは、ユーザが意図した回転が行われているため、手動回転は行われない。一方、図7(b)のサムネイル画像sn1は、サムネイル画像SN1と同じであるため、その説明を省略する。サムネイル画像sn2は、図9のストリップフィルムのコマBのプレスキャンデータを回転させずにそのまま表示したものである。すなわち、コマBのプレスキャンデータは、透過原稿読取処理ルーチンにおいて推定した被写体の上部(誤判定)と画面の上部とが一致したためそのまま回転させずにサムネイル画像sn2として表示されている。このため、サムネイル画像sn2については、ユーザが手動で90°右回転させて被写体の上部と画面の上部とを一致させる。
【0032】
次に、高確信度範囲修正処理について詳しく説明する。図8は高確信度範囲修正処理ルーチンの一例を表すフローチャートである。図8の高確信度範囲修正処理が実行されると、CPU71は、今回の読取対象物の最初のコマを処理対象に設定する(ステップS400)。読取対象物がスライドのときにはフィルムホルダ20に固定された各スライドを各コマとして取り扱う。次に、今回の処理対象のコマに対応する自動回転フラグF1に値1が設定されているか否かを判定し(ステップS410)、自動回転フラグF1に値1が設定されていたときには、続いて今回の処理対象のコマに対応する手動回転フラグF2に値1が設定されているか否かを判定する(ステップS420)。そして、手動回転フラグF2に値1が設定されていたときには、そのコマのプレスキャンデータを自動回転させたあとユーザが手動回転させて自動回転の誤りを修正したことになるから、自動回転を規制するために用いられる上昇パラメータの値を1インクリメントする(ステップS430)。一方、手動回転フラグF2に値1が設定されていなかったときには、自動回転に誤りがなかったことになるから、自動回転を許容するために用いられる下降パラメータの値を1インクリメントする(ステップS440)。そして、ステップS430又はS440のあと、上昇パラメータの値が最大値(例えば10)に達したか否かを判定し(ステップS450)、上昇パラメータの値が最大値に達していたときには、高確信度範囲の下限値を上昇(例えば、値1を加算)させ(ステップS460)、上昇パラメータ及び下降パラメータの値をそれぞれゼロにリセットして(ステップS490)、本ルーチンを終了する。上昇パラメータは、被写体の上部を推定した結果に基づいてプレスキャンデータを自動回転させた後にユーザが手動回転させたとき、つまり、誤った推定結果に基づいてプレスキャンデータを回転させてしまったときに上昇するパラメータである。このため、上昇パラメータの値が最大値となったときに高確信度範囲の下限値を上昇させることで、次回から自動回転を実行しにくくする。
【0033】
一方、ステップS450で上昇パラメータの値が最大値に達していなかったときには、下降パラメータの値が最大値(例えば10)に達したか否かを判定し(ステップS470)、下降パラメータの値が最大値に達していたときには、高確信度範囲の下限値を下降(例えば値1を減算)させ(ステップS480)、上昇パラメータ及び下降パラメータの値をそれぞれゼロにリセットして(ステップS490)、本ルーチンを終了する。下降パラメータは、被写体の上部を推定した結果に基づいてプレスキャンデータを自動回転させた後にユーザが手動回転させなかったとき、つまり、推定結果が正しくユーザの意図した回転を行ったときに上昇するパラメータである。このため、下降パラメータの値が最大値となったときに高確信度範囲の下限値を下降させることで、次回から自動回転を実行しやすくする。
【0034】
一方、ステップ410で処理対象のコマに対応する自動回転フラグF1がゼロだったとき、又はステップS450,S460で上昇パラメータと下降パラメータのいずれも最大値に達していなかったときには、未処理のコマが残っているか否かを判定し(ステップS500)、未処理のコマが残っていたときには今回処理したコマの次のコマを処理対象に設定し(ステップS510)、再びステップS410に戻る。一方、未処理のコマが残っていなかったときには本ルーチンを終了する。
【0035】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のマルチファンクションプリンタ10が本発明の画像読取装置に相当し、フィルムホルダ20のストリップフィルム固定部25が固定手段に相当し、コントローラ70が推定手段、確信度合い導出手段及び制御手段に相当する。なお、本実施形態ではマルチファンクションプリンタ10の動作を説明することにより、画像読取装置の制御方法も併せて説明した。
【0036】
以上詳述した本実施形態のマルチファンクションプリンタ10によれば、複数のコマが連なっているストリップフィルムを読み取ってコマごとにプレスキャンデータを取り込むにあたり、本来回転させる必要のないプレスキャンデータを回転させてしまうのを防止することができる。また、自動回転後に手動回転を行った頻度が高ければ、それまで自動回転を許容しすぎた傾向にあるため、確信度合いの高確信度範囲の下限値を高くして自動回転を実行しにくいようにし、自動回転後に手動回転を行わなかった頻度が高ければ、それまで自動回転を制限しすぎた傾向にあるため、確信度合いの高確信度範囲の下限値を低くして自動回転を実行しやすいようにする。これにより、透過原稿読取処理を繰り返し行うにつれて自動回転をより適切に実行することができるようになる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態の高確信度範囲修正処理ルーチンに代えて、以下のルーチンを採用してもよい。すなわち、自動回転を所定回数行ったときその所定回数のうち手動回転を何回行ったかを導出し、その値が高頻度範囲に入ったときに高確信度範囲の下限値を上昇させ、その値が低頻度範囲に入ったときに高確信度範囲の下限値を下降させてもよい。例えば、自動回転を10回行ったときに手動回転が6回以上行われていた場合を高頻度範囲とし、手動回転を4回以下しか行われなかった場合を低頻度範囲としておき、実際に自動回転を10回行ったときそのうち手動回転が7回行われていたときには高頻度範囲に入るから高確信度範囲の下限値を上昇させ、実際に自動回転を10回行ったときそのうち手動回転が3回行われていたときには低頻度範囲に入るから高確信度範囲の下限値を下降させるとしてもよい。こうしても、透過原稿読取処理を繰り返し行うにつれて自動回転をより適切に実行することができるようになる。
【0039】
上述した実施形態では、ディスプレイ62にプレビュー画面を表示したが、ユーザPC80のモニタ82にプレビュー画面を表示するようにしてもよい。すなわち、ユーザPC80にマルチファンクションプリンタ10のドライバをインストールすると、そのドライバの起動時にモニタ82にマルチファンクションプリンタ10の動作を監視する監視画面が表示されるものとする。そして、CPU71は、適時、ユーザPC80に監視画面の一つであるプレビュー画面を表示するよう指令する。こうしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
上述した実施形態では、フィルムホルダ20のスライド固定部26に固定された複数のスライドについては自動回転しないこととしたが、各スライドにつき、推定した被写体の上部と画面の上部とが一致しているときにはプレスキャンデータをそのままサムネイル画像として表示し、推定した被写体の上部と画面の上部とが一致していないときには両者が一致するようにプレスキャンデータを回転させ該回転後のプレスキャンデータをサムネイル画像として表示してもよい。また、読取対象物が写真だったときにも被写体の上部を推定し、推定した被写体の上部と画面の上部とが一致しているときにはプレスキャンデータをそのままサムネイル画像として表示し、推定した被写体の上部と画面の上部とが一致していないときには両者が一致するようにプレスキャンデータを回転させ該回転後のプレスキャンデータをサムネイル画像として表示してもよい。
【0041】
上述した実施形態では、透過原稿読取ルーチンにおいて、ユーザが各コマのプレスキャンデータの回転を手直しできるようにステップS230〜S250の処理を実行するようにしたが、そのような手直しができないモードを別途設けてもよい。すなわち、ステップS220でプレビュー画面を表示したあとステップS260に進んでもよい。このとき、ステップS290の高頻度範囲修正処理も省略する。なお、この場合、ストップボタン64fを選択すればいつでもこのルーチンを終了することができるとしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、マルチファンクションプリンタ10は印刷部40の下部にインクカートリッジ44を装着するオフキャリッジ式の印刷部40としたが、キャリッジ43にインクカートリッジ44を装着するオンキャリッジ式の印刷機構としてもよい。また、インクジェット方式の印刷部としたが、電子写真方式やドットインパクト方式などのプリンタに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】マルチファンクションプリンタ10の斜視図。
【図2】マルチファンクションプリンタ10の電気的接続を表すブロック図。
【図3】反射原稿を読み取るときの説明図。
【図4】フィルムホルダ20の斜視図。
【図5】透過原稿読取処理ルーチンの一例を表すフローチャート。
【図6】プレビュー画面の一例を表す説明図。
【図7】プレビュー画面のサムネイル画像の具体例を表す説明図。
【図8】高確信度範囲修正処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図9】ストリップフィルムの説明図。
【符号の説明】
【0044】
10 マルチファンクションプリンタ、12 筐体、12a,12b 支持穴、13 ガラス板、14a,14b ヒンジ、16 カバー、17 保護マット、18 排出口、19 透過原稿用光源、20 フィルムホルダ、20a,20b 長辺、21a,21b 突片、22a,22b 突起、23a,23b 突片、23a,23b 突片、25 ストリップフィルム固定部、25a 段差付開口、25b カバープレート、26 スライド固定部、26a 開口、26b 弾性支持部材、28 矩形マーク、29 指示表示部、30 スキャナ部、31 キャリッジ、32 反射原稿用光源、33 ミラー、34 集光レンズ、36 イメージセンサ、40 印刷部、41 キャリッジベルト、42 ガイド、43 キャリッジ、44 インクカートリッジ、45 印刷ヘッド、46 搬送ローラ、50 カードスロット、52 メモリカード、60 操作パネル、62 ディスプレイ、62a 90°右回転ボタン、62b 90°左回転ボタン、62c スキャンボタン、64 ボタン群、64a 電源ボタン、64b モード選択ボタン、64c 上下左右ボタン、64d OKボタン、64e スタートボタン、64f ストップボタン、70 コントローラ、71 CPU、72 ROM、73 RAM、74 フラッシュメモリ、75 I/F、76 バス、80 ユーザPC、82 モニタ、A〜F コマ、F1 自動回転フラグ、F2 手動回転フラグ、S 用紙、SN1,SN2,sn1,sn2 サムネイル画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを生成し、該生成した画像データを取り込む画像読取装置であって、
前記フィルムを横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部が所定の表示画面の上部と一致する所定の向きで固定するようユーザに促す指示が表示された指示表示部と前記フィルムを前記所定の向きで固定可能なフィルム固定部とを有する固定手段と、
前記固定手段のフィルム固定部に固定されたフィルムを読み取ったあと、該フィルムの各コマに写っている被写体につき該被写体の上部が前記表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定する推定手段と、
前記推定手段によって得られた推定結果の正否の度合いを表す確信度合いを数値として導出する確信度合い導出手段と、
前記推定手段によって前記被写体の上部が前記表示画面の上部とも下部とも一致していないと判定され、且つ、前記確信度合い導出手段によって導出された確信度合いが所定の高確信度範囲に入るとき、前記被写体の上部が前記表示画面の上部と一致するよう前記画像データを自動回転させたあと該自動回転後の画像データを前記表示画面に表示する制御手段と、
を備えた画像読取装置。
【請求項2】
前記確信度合い導出手段は、前記被写体の上部が前記表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定するときの根拠と確信度合いの数値とを予め対応づけた対応関係に基づいて確信度合いを導出する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記自動回転後の画像データを前記表示画面に表示したあとユーザが該自動回転後の画像データに対して手動回転を行ったか否かを判定し、手動回転を行った頻度が高頻度範囲に入ったときには前記高確信度範囲の下限値を高くする、
請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記自動回転後の画像データを前記表示画面に表示したあとユーザが該自動回転後の画像データに対して手動回転を行ったか否かを判定し、手動回転を行わなかった頻度が高頻度範囲に入ったときには前記高確信度範囲の下限値を低くする、
請求項1〜3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
複数のコマが連なっているフィルムを読み取ってコマごとに画像データを生成し、該生成した画像データを取り込む機能を有し、前記フィルムを横長のコマに横長画像として写っている被写体の上部が所定の表示画面の上部と一致する所定の向きで固定するようユーザに促す指示が表示された指示表示部と前記フィルムを前記所定の向きで固定可能なフィルム固定部とを有する固定手段と、を備えた画像読取装置を制御する方法であって、
(a)前記固定手段のフィルム固定部に固定されたフィルムを読み取ったあと、該フィルムの各コマに写っている被写体につき該被写体の上部が前記表示画面の上下左右のいずれに位置するかを推定するステップと、
(b)前記ステップ(a)で得られた推定結果の正否の度合いを表す確信度合いを数値として導出するステップと、
(c)前記ステップ(a)で前記被写体の上部が前記表示画面の上部とも下部とも一致していないと判定され、且つ、前記ステップ(b)で導出された確信度合いが所定の高確信度範囲に入るとき、前記被写体の上部が前記表示画面の上部と一致するよう前記画像データを自動回転させたあと該自動回転後の画像データを前記表示画面に表示するステップと、
を含む画像読取装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像読取装置の制御方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−244874(P2008−244874A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82894(P2007−82894)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】