説明

画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取プログラム

【課題】データ処理量の増大を抑制しつつ、精度良く汚れ画素の画素値を補正するための補正情報を生成する。
【解決手段】裏面画像読取部28により基準板46を読み取った基準板読取データを取得し、裏面EEPROM88に記憶された初期データを読み込む。基準板読取データに注目画素iを設定し、注目画素iの画素値と初期値iとを比較して汚れ画素を抽出する処理をk=kmaxとなるまで繰り返す。全画素の処理終了前に汚れ画素数kが上限値kmaxを超えた場合には、初期データをシェーディング補正情報として設定し、汚れ画素数kが上限値kmaxを超えることなく全画素の処理が終了した場合には、基準板読取データにおける汚れ画素の画素値を、初期データの同じ画素位置の初期値を用いた補正値で置き換えたシェーディング補正情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基準板を測光することで得られた画素情報が示す基準板画素値と、記憶された補正用画素情報が示す補正用画素値との比を、各々の画素毎に導出し、導出された複数の比のうち、予め定められた範囲外の比が導出された基準板画素値を補正用画素値を用いて補正し、補正された基準板画素値を用いて、測光手段により原稿を測光することで得られた画素値情報が示す原稿画素値を補正する画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−11297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、データ処理量の増大を抑制しつつ、精度良く汚れ画素の画素値を補正するための補正情報を生成することができる画像読取装置、画像形成装置、及び画像読取プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の画像読取装置は、複数の光電変換素子を備え、原稿及び基準板を読み取って、前記光電変換素子各々に対応する画素毎の画素値で表される読取情報を出力する読取手段と、前記読取手段で基準板を読み取って出力された基準板読取情報の画素を注目画素に設定し、該注目画素の画素値と予め画素位置に応じて大きさが設定された初期値との比が予め定めた範囲を超える場合に、該注目画素を対象画素として抽出する処理を、該対象画素の数が予め定めた値を超えるまで繰り返す抽出手段と、前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われた場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えた補正情報を生成し、前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われていない場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えると共に、前記注目画素に設定されていない画素の画素値を前記初期値に置き換えた補正情報を生成するか、または、全画素の画素値を前記初期値とする補正情報を生成する生成手段と、を含んで構成されている。
また、本発明の画像読取情報は、前記複数の光電変換素子の配列方向に対応する前記原稿の領域を検知する検知手段を含んで構成することができ、前記抽出手段は、前記基準板読取情報の画素のうち、前記原稿の領域に対応する画素から順に前記注目画素に設定し、前記生成手段は、前記基準板読取情報の少なくとも前記原稿の領域に対応する画素について前記抽出手段の処理が行われていない場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えると共に、前記注目画素に設定されていない画素であって、少なくとも前記原稿の領域に対応する画素の画素値を前記初期値に置き換えた補正情報を生成することができる。
【0006】
また、本発明の画像読取装置は、前記読取手段により前記原稿を読み取って出力される原稿読取情報を、前記生成手段で生成された補正情報に基づいて補正する補正手段を含んで構成することができる。
また、本発明の画像形成装置は、上記画像読取装置と、前記補正手段により補正された原稿読取情報に基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、を含んで構成されている。
また、本発明の画像読取プログラムは、コンピュータを、複数の光電変換素子を備え、原稿及び基準板を読み取って、前記光電変換素子各々に対応する画素毎の画素値で表される読取情報を出力する読取手段で基準板を読み取って出力された基準板読取情報の画素を注目画素に設定し、該注目画素の画素値と予め画素位置に応じて大きさが設定された初期値との比が予め定めた範囲を超える場合に、該注目画素を対象画素として抽出する処理を、該対象画素の数が予め定めた値を超えるまで繰り返す抽出手段、及び前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われた場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えた補正情報を生成し、前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われていない場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えると共に、前記注目画素に設定されていない画素の画素値を前記初期値に置き換えた補正情報を生成するか、または、全画素の画素値を前記初期値とする補正情報を生成する生成手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び5の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、データ処理量の増大を抑制しつつ、精度良く汚れ画素の画素値を補正するための補正情報を生成することができる、という効果が得られる。
【0008】
請求項2の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、無駄な処理を削減することができる、という効果が得られる。
【0009】
請求項3及び4の発明によれば、本構成を有さない場合と比較して、データ処理量の増大を抑制しつつ、精度良く汚れ画素の画素値を補正することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態に係る画像読取装置の全体構成を示す図である。
【図2】画像読取装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】裏面画像読取制御部の詳細を示す図である。
【図4】初期データに対応する曲線と基準板読取データに対応する曲線とを示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係る画像読取装置におけるシェーディング補正情報生成処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】平均値導出区間を説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態に係る画像読取装置におけるシェーディング補正情報生成処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態に係る画像読取装置におけるシェーディング補正情報生成処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】第4の実施の形態に係る画像形成装置の概略を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
まず、図1を参照して、第1の実施の形態に係る画像読取装置10の全体構成を説明する。
【0013】
同図に示すように、画像読取装置10は、裏面画像読取部28を含む原稿搬送部12(DADF:Dual Auto Document Feeder)と表面画像読取部14とを備えている。
【0014】
原稿搬送部12は、画像が記録された原稿18が置かれる原稿台20と、原稿台20に置かれた原稿18を一枚ずつ取り出す取り出しロール22と、複数の搬送ロール対26を備えた搬送路24と、裏面画像読取部28と、裏面画像読取部28に対向配置された基準板46と、読取処理が終了した原稿が排出される排紙部30とを含んで構成されている。
【0015】
裏面画像読取部28は、原稿18及び基準板46に対して照明光を照射する主走査方向に沿って配列された複数の発光素子を備えた光源28Bと、光源28Bにより照明された原稿18及び基準板46を複数の画素に分割して測光し、画素毎に測光した画素値に応じた読取データを出力するラインセンサ28Aとを含んで構成された固定密着型のイメージセンサである。また、裏面画像読取部28は、図示しないロッドレンズアレイを備えており、原稿18または基準板46で反射した光がロッドレンズアレイを介してラインセンサ28Aで測光される。基準板46は、後述するシェーディング補正情報生成処理の際にラインセンサ28Aにより読み取られる基準板で、例えば、白色の樹脂板または白色に塗装された金属板等を用いることができる。
【0016】
一方、表面画像読取部14は、上面に原稿18を置くことが可能とされている透明なプラテンガラス32を備えており、上記表面読取位置はプラテンガラス32の上面に位置している。表面読取位置におけるプラテンガラス32の下側には、原稿18の表面に向けて照明光を照射する光源34と、原稿18の表面で反射した反射光を受ける第1反射ミラー36、第1反射ミラー36で受けた反射光の進行方向を90°曲げるための第2反射ミラー38、第2反射ミラー38で受けた反射光の進行方向をさらに90°曲げるための第3反射ミラー40とが備えられている。また、表面画像読取部14は、レンズ42と、複数の画素を備えた光電変換部44とを備えており、表面画像読取部14は、第3反射ミラー40で反射された反射光を、レンズ42によって光電変換部44に結像させることで、原稿18の表面を読み取る。
【0017】
このように構成された第1の実施の形態の画像読取装置10によれば、原稿台20に置かれた原稿18は、一枚ずつ取り出しロール22で取り出され、搬送路24へ送られる。搬送路24へ送られた原稿18は、搬送ロール対26によって表面画像読取部14による表面読取位置まで搬送され、表面を表面画像読取部14で読み取られる。その後、原稿18は、表面読取位置よりも搬送方向下流側に設置されている裏面画像読取部28に搬送され、裏面を裏面画像読取部28で読み取られた後、排紙部30に排紙される。
【0018】
なお、第1の実施の形態に係る画像読取装置10は、光源34として蛍光ランプを適用するが、これに限らず、原稿18の搬送方向と交差する方向に沿って配列された複数のLED(Light Emitting Diode)等、他の光源を適用しても良い。
【0019】
また、第1の実施の形態に係る画像読取装置10では、光電変換部44として複数のCCD(Charge Coupled Device)で構成されるCCDラインセンサを適用するが、これに限らず、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像素子を適用しても良い。
【0020】
また、第1の実施の形態に係る画像読取装置10は、光源34、第1反射ミラー36、第2反射ミラー38、及び第3反射ミラー40が図1の矢印A方向に移動可能とされている。これにより、原稿搬送部12が表面画像読取部14の上方へ開けられ、プラテンガラス32の上面に原稿18が置かれた場合に、光源34から照明光を原稿18に向けて照射しつつ、矢印A方向へ光源34、第1反射ミラー36、第2反射ミラー38、及び第3反射ミラー40を移動させることで、上記原稿18に記録された画像を読み取ることが可能とされている。
【0021】
次に、図2を用いて画像読取装置10のハードウェア構成について説明する。画像読取装置10は、主にコントローラ50、画像読取制御部52、DADF制御部54、裏面画像読取制御部56、及びUI(User Interface)60を含んで構成されている。
【0022】
このうち、コントローラ50は、画像読取装置10全体の制御を行う。また、コントローラ50は、画像読取制御部52及び裏面画像読取制御部56各々から読取データを受信する。また、コントローラ50は、UI60から入力されたユーザの指示等を示す信号を受信する。
【0023】
画像読取制御部52は、この画像読取装置10における画像の読取処理全体を制御するもので、具体的にはDADF制御部54、裏面画像読取制御部56、表面画像読取部14、走査制御部72、及び照明制御部76等の制御を行う。また、画像読取制御部52は、表面ROM(Read Only Memory)68、及び表面NVM(Non Volatile Memory)70にアクセス可能となっている。表面ROM68及び表面NVM70には、原稿の表面を読み取るための各種プログラムやそのときに用いられる各種情報等が記憶されている。
【0024】
なお、走査制御部72は、原稿を読み取る際の走査に関する制御を行うものであり、モーター74の制御も行う。このモーター74は、図1で説明した光源34と各種ミラーを一体的に移動させるモーターである。また、照明制御部76は、光源34を制御するものである。
【0025】
DADF制御部54は、DADFを制御するものであり、上述した取り出しロール22や搬送ロール対26を回転させるための各モーター66を制御する各ローラ制御部64、及び各センサ62からの情報を受信する。この各センサ62として、例えば原稿搬送部12が表面画像読取部14の上方へ開いていないか否か等を検出するセンサが挙げられる。
【0026】
裏面画像読取制御部56は、裏面画像読取部28を制御するものである。また、裏面画像読取制御部56は、裏面ROM82、裏面RAM(Random Access Memory)84、裏面NVM86、及び裏面EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)88にアクセス可能となっている。
【0027】
また、裏面ROM82及び裏面NVM86には、には、裏面画像読取制御部56を動作させるためのプログラムや、そのときに用いられる各種情報等が記憶されている。裏面RAM84は、裏面画像読取制御部56が動作する際に使用するメモリである。裏面EEPROM88には、汚れが存在しないラインセンサ28Aにより汚れが存在しない基準板(基準板46とは異なる専用の清浄な白基準板)を測光することで得られた画素毎の画素値(初期値)で表される初期データが記憶されている。ここで、「汚れ」とは、紙粉やトナー粉など、ラインセンサ28Aや基準板46に付着することが想定されるあらゆる汚れを含む。なお、ここでは、清浄な白基準板から得られる初期データを用いる場合について説明するが、初期データは、後述の処理において基準板46を読み取って出力される基準板読取データとの比較により、汚れ画素を判定することができるデータであればよい。
【0028】
次に、図3を用いて、裏面画像読取制御部56の詳細について説明する。裏面画像読取制御部56は、同図に示されるように平均化部90を有し、この平均化部90は、ラインメモリ92、平均値導出部96、及びレジスタ94を有する。このうち、ラインメモリ92は、裏面画像読取部28で読み取って出力された読取データから、画素情報(画素値)を記憶するものである。平均値導出部96は、画素情報が示す画素値の平均値を示す画素値平均値を導出する。レジスタ94には、この平均値が記憶される。
【0029】
平均化部90から出力された画素値は、まず定数として例えば3FF(10ビット:16進数)倍される。またシェーディング用メモリ領域98には、各画素値をシェーディング補正するための補正値(シェーディング補正画素値)各々で表されるシェーディング補正画情報が記憶されており、3FF倍された画素値は、対応する乗算係数Kが乗算されたシェーディング補正画素値で割り算され、その値が後段メモリ100に記憶される。後段メモリ100に記憶された補正された画素値は、種々の画像処理が施される。
【0030】
ここで、シェーディング用メモリ領域98に記憶されるシェーディング補正情報について説明する。
【0031】
図4に、初期データを示す曲線Q、及び基準板46を読み取ったことにより得られた基準板読取データを示す曲線Rのグラフを示す。同図において、横軸は主走査方向の画素の位置を示し、縦軸は画素値を示している。更に基準板読取データは、汚れによる影響を受けた画素値が2つほど示されている。この状態で、位置が同じ初期データの画素の画素値(初期値)と基準板読取データの画素の画素値(基準板画素値)のそれぞれの値をα、βとし、それらの比β/αの値を調べる。
【0032】
汚れによる影響を受けていない基準板画素値の場合のβ/αは、曲線Qと曲線Rとがほぼ相似していることから、予め定められた範囲内の値となる。一方、汚れによる影響を受けた基準板画素値の場合のβ/αは、上記予め定められた範囲外の値となる可能性が高い。具体的には、汚れによる影響を受けていない基準板画素値の場合のβ/αはある値(例えば、1.0)の近傍に分布するが、汚れによる影響を受けた基準板画素値の場合のβ/αは、1.0と比較して大きく異なる可能性が高い。このような汚れによる影響を受けた画素を汚れ画素として抽出し、原稿を読み取った読取データが示す画素値から汚れによる影響を除去するためのシェーディング補正画素値を導出しておく。
【0033】
シェーディング補正画素値としては、汚れ画素の基準板画素値を初期値を用いた補正値に置き換える場合や、初期値に置き換える場合が考えられる。しかし、シェーディング補正画素値として初期値を用いる場合には、特許文献1に記載されているようなレンズムラの位置ずれによる縦筋が発生する問題がある。一方、シェーディング補正値として汚れ画素の基準板画素値を初期値を用いた補正値に置き換える場合には、汚れ画素の数に応じて処理量が膨大になる問題がある。そこで、本実施の形態では、汚れ画素の抽出数に応じて、初期値を用いる場合と補正値に置き換える場合とを選択的に用いたシェーディング補正情報を生成する。
【0034】
次に、図5を参照して、第1の実施の形態の画像読取装置において実行される。シェーディング補正情報生成処理ルーチンについて説明する。本ルーチンは、原稿の読取処理の直前に実行される。
【0035】
ステップ100で、裏面画像読取部28により基準板46を読み取った基準板読取データを取得する。
【0036】
次に、ステップ102で、基準板読取データに設定される注目画素の画素位置を表す変数である注目画素位置カウンタi、及び抽出された汚れ画素の数をカウントするための汚れ画素数カウンタkを初期化(“0”にセット)する。画素位置は、例えば、基準板読取データの右端の画素の画素位置を1、次の画素の画素位置を2、・・・左端の画素の画素位置をnとすることができる。
【0037】
次に、ステップ104で、画素位置カウンタiがnより大きいか否かを判定することにより、基準板読取データの全画素について注目画素に設定したか否かを判定する。注目画素位置カウンタiがn以下の場合には、ステップ106へ移行して、注目画素位置カウンタiを1インクリメントして、ステップ108へ移行する。
【0038】
ステップ108では、裏面EEPROM88に記憶された初期データを読み込む。そして、上記ステップ100で取得した基準板読取データの画素位置iの画素を注目画素iに設定し、読み込んだ初期データの画素位置iの画素値(初期値)iと比較する。例えば、注目画素iの画素値/初期値iのような比を算出し、この比と予め定めた範囲とを比較する。
【0039】
次に、ステップ110で、上記ステップ108の比較結果に基づいて、注目画素iが汚れ画素か否かを判定する。例えば、上記の比が予め定めた範囲を超えている場合には、注目画素iは汚れ画素であると判定することができる。注目画素iが汚れ画素の場合には、ステップ112へ移行し、汚れ画素数カウンタkを1インクリメントすると共に、画素位置iを所定の記憶領域に記憶して、ステップ114へ移行する。一方、注目画素iが汚れ画素ではない場合には、そのままステップ114へ移行する。
【0040】
ステップ114では、汚れ画素数カウンタkが、予め定めた上限値kmaxとなったか否かを判定する。上限値kmaxは、装置の処理能力やシェーディング補正に求められる精度等に応じて予め定めておく。k≠kmaxの場合には、ステップ104へ戻って、ステップ104〜114の処理を繰り返す。上記ステップ104で肯定判定されることなく、上記ステップ114で肯定判定された場合、すなわち、基準板読取データの全画素について処理が終了する前に汚れ画素数kが上限値kmaxを超えた場合には、ステップ116へ移行する。ステップ116では、初期データをシェーディング補正情報として設定し、シェーディング用メモリ領域98に記憶して、処理を終了する。この場合、レンズムラによる縦筋の問題は生じるが、汚れ画素が残存することによる影響に比べれば小さい。
【0041】
一方、上記ステップ114で肯定判定されることなく、上記ステップ104で肯定判定された場合、すなわち、汚れ画素数kが上限値kmaxを超えることなく、基準板読取データの全画素について処理が終了した場合には、ステップ118へ移行する。ステップ118では、上記ステップ112で所定領域に記憶された汚れ画素の画素位置を読み出し、基準板読取データにおける汚れ画素の画素値を、初期データの同じ画素位置の初期値を用いた補正値で置き換えたシェーディング補正情報を生成し、シェーディング用メモリ領域98に記憶して、処理を終了する。
【0042】
なお、上記ステップ118で置き換えに用いられる補正値は、以下のようにして導出することができる。以下の説明において、A[]と括弧がついた変数は配列であることを示している。またA[]←B[]は、配列Bを配列Aに代入することを示している。すなわち、この代入により添え字が同じものは同一の値となる。また、上述したように、裏面EEPROM88に初期データInitDT[]が記憶されている。更に、初期データInitDT[]の全画素平均値の補正用平均値InitAveが裏面NVM86に記憶されている。
【0043】
まず、上記ステップ100で取得した基準板読取データの基準板画素値がSampAveDT[]に代入される。そして、SampAveDT[]の全てまたは一部の平均値を導出し、画素値平均値SampAveに代入する。ここで、SampAveDT[]の一部の平均値とは、図6に示されるように、主走査方向における中央付近を平均値導出用区間とし、この区間内に存在する画素の画素値だけの平均値を示している。また、SampAveDT[]は上記ラインメモリ92、SampAveはレジスタ94にそれぞれ一旦保持される。
【0044】
また、乗算係数Kに画素値平均値SampAveと補正用平均値InitAveとの比(SampAve/InitAve)を代入する。そして、初期データInitDT[i]に乗算係数Kを乗算したものを、画素位置iの補正値CorInitDT[i]とする。なお、この乗算係数Kによる乗算は、InitDT[]の各値を、SampAveDT[]の各値にほぼ同じくするためのものである。すなわち、CorInitDT[]の各値と、SampAveDT[]の各値との比を1.0前後にするためのものである。
【0045】
すなわち、置換対象の汚れ画素の画素位置iについての基準板画素値SampAveDT[i]を、初期データInitDT[i]に画素値平均値SampAveと補正用平均値InitAveとの比Kが乗算された値(CorInitDT[i])に置き換える。
【0046】
このようにして生成されたシェーディング補正情報を用いて、原稿を読み取った読取データに対してシェーディング補正を行う。
【0047】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の画像読取装置の構成は、第1の実施の形態の画像読取装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
第2の実施の形態の画像読取装置では、シェーディング補正情報生成処理が第1の実施の形態と異なるため、図7を参照して、第2の実施の形態のシェーディング補正情報生成処理ルーチンについて説明する。第2の実施の形態のシェーディング補正情報生成処理では、第1の実施の形態のシェーディング補正情報生成処理のステップ116の処理に替えて、ステップ200の処理を実行する。
【0049】
上記ステップ104で肯定判定されることなく、上記ステップ114で肯定判定された場合、すなわち、基準板読取データの全画素について処理が終了する前に汚れ画素数kが上限値kmaxを超えた場合には、ステップ200へ移行する。ステップ200では、上記ステップ112で所定領域に記憶された汚れ画素の画素位置を読み出し、基準板読取データにおける汚れ画素の画素値を、初期データの同じ画素位置の初期値を用いた補正値で置き換える。補正値は、第1の実施の形態のシェーディング補正情報生成処理のステップ118で用いた補正値と同様の補正値を用いることができる。また、画素位置がi+1以降の画素、すなわち上記ステップ108〜112の処理を行っていない画素の画素値を、初期データの同じ画素位置の初期値に置き換える。このようにしてシェーディング補正情報を生成し、シェーディング用メモリ領域98に記憶して、処理を終了する。
【0050】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態の画像読取装置の構成は、第1の実施の形態の画像読取装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
第3の実施の形態の画像読取装置では、シェーディング補正情報生成処理が第1の実施の形態と異なるため、図8を参照して、第3の実施の形態のシェーディング補正情報生成処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態のシェーディング補正情報生成処理と同様の処理については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0052】
まず、ステップ300で、本ルーチンの後に実行される原稿の読取処理において読み取られる原稿の幅を検知する。ここでは、説明の簡単のため、原稿の右端とラインセンサ28Aの右端(ラインセンサ28Aの読取開始位置)とが一致するように原稿18がセットされているものとする。すなわち、原稿幅は、ラインセンサ28Aの画素位置に対応する領域として検知される。
【0053】
次に、第1の実施の形態と同様にステップ100〜114を実行する。
【0054】
上記ステップ104で肯定判定されることなく、上記ステップ114で肯定判定された場合、すなわち、基準板読取データの全画素について処理が終了する前に汚れ画素数kが上限値kmaxを超えた場合には、ステップ302へ移行する。
【0055】
ステップ302では、画素位置iが原稿幅より小さいか否かを判定する。例えば、上記ステップ300で検知された原稿幅がm画素分であった場合には、i<mか否かを判定する。i<mの場合には、基準板読取データの原稿幅に対応する領域内の画素について処理が終了する前に汚れ画素数kが上限値kmaxを超えたことを表しているため、ステップ116へ移行する。一方、i≧mの場合には、少なくとも基準板読取データの原稿幅に対応する領域では、汚れ画素数kが上限値kmaxを超えていないことを表しているため、ステップ118へ移行する。この場合には、i+1以降の画素位置に汚れ画素が残存していても、原稿の読取データへの影響はない。
【0056】
なお、第3の実施の形態では、原稿の右端とラインセンサ28Aの右端とを一致させる場合について説明したが、例えば、ラインセンサ28Aの読取可能領域の中央に原稿をセットするような場合にも適用可能である。この場合、原稿の右端に対応する画素位置から左端に対応する画素位置までを原稿幅として検知し、原稿の右端に対応する画素位置から、上記ステップ108〜112の処理を行えばよい。
【0057】
また、第3の実施の形態においても、第2の実施の形態のように、ステップ116に替えてステップ200を実行するようにしてもよい。
【0058】
なお、上記第1〜第3の実施の形態で説明した各フローチャートの処理の流れは一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で処理順序を入れ替えたり、新たなステップを追加したり、不要なステップを削除したりすることができる。
【0059】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、第1〜第3の実施の形態のいずれかの画像読取装置10を備えた画像形成装置11である。
【0060】
図9に示すように、第4の実施の形態の画像形成装置11は、画像読取装置10と、画像形成部80と、用紙給紙部82と、印刷物排紙部84とを含んで構成されている。画像読取装置10の構成は、第1の実施の形態の画像読取装置10の構成と同様である。
【0061】
画像形成部80は、電子写真方式によって原稿画像を用紙に印刷するものであり、無端状の中間転写ベルトと、中間転写ベルトに各色(Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:ブラック)のトナー画像を転写する画像形成ユニットと、画像情報に基づいて変調されたレーザ光で画像形成ユニットの感光体ドラム(後述)を露光することにより感光体ドラム上に静電潜像を形成する光学部とを備えている。
【0062】
画像形成ユニットは、感光体ドラムと、感光体ドラムの表面を一様に帯電する帯電器と、感光体ドラムの表面に光学部によって形成された静電潜像を各色のトナーで現像したトナー画像を形成する現像部と、中間転写ベルトを感光体ドラムに押し付ける転写ローラとを有している。中間転写ベルトは、モータに連結された駆動ローラによって駆動される。
【0063】
また、画像形成部80は、中間転写ベルト上に形成されたトナー画像を用紙給紙部82から給紙された用紙に転写する転写部と、用紙に転写されたトナー画像を用紙上に定着させる定着部と、定着部を通過した用紙を印刷物排紙部84に排出する排出ローラとを備えている。
【0064】
用紙給紙部82は、向き、大きさ、紙質等の異なる用紙をそれぞれ収容する複数の用紙カセットと、各用紙カセットから用紙を取り出し、画像形成部80の転写部へ搬送するための複数のローラとを備える。
【0065】
このように構成された第4の実施の形態の画像形成装置11によれば、画像読取装置10で原稿を読み取り、読み取ったデータを生成されたシェーディング補正情報を用いて補正した読取データに基づいて、画像形成部80において、用紙給紙部58から給紙された用紙に画像が形成される。
【0066】
なお、第4の実施の形態では、電子写真方式の画像形成部を採用した画像形成装置について説明したが、インクジェット方式の画像形成装置にも、本発明を適用可能である。
【0067】
また、上記各実施の形態では、裏面画像読取部について本発明を適用する場合について説明したが、表面画像読取部のシェーディング補正情報の生成にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 画像読取装置
11 画像形成装置
14 表面画像読取部
28 裏面画像読取部
28A ラインセンサ
28B 光源
46 基準板
50 コントローラ
52 画像読取制御部
56 裏面画像読取制御部
80 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子を備え、原稿及び基準板を読み取って、前記光電変換素子各々に対応する画素毎の画素値で表される読取情報を出力する読取手段と、
前記読取手段で基準板を読み取って出力された基準板読取情報の画素を注目画素に設定し、該注目画素の画素値と予め画素位置に応じて大きさが設定された初期値との比が予め定めた範囲を超える場合に、該注目画素を対象画素として抽出する処理を、該対象画素の数が予め定めた値を超えるまで繰り返す抽出手段と、
前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われた場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えた補正情報を生成し、前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われていない場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えると共に、前記注目画素に設定されていない画素の画素値を前記初期値に置き換えた補正情報を生成するか、または、全画素の画素値を前記初期値とする補正情報を生成する生成手段と、
を含む画像読取装置。
【請求項2】
前記複数の光電変換素子の配列方向に対応する前記原稿の領域を検知する検知手段を含み、
前記抽出手段は、前記基準板読取情報の画素のうち、前記原稿の領域に対応する画素から順に前記注目画素に設定し、
前記生成手段は、前記基準板読取情報の少なくとも前記原稿の領域に対応する画素について前記抽出手段の処理が行われていない場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えると共に、前記注目画素に設定されていない画素であって、少なくとも前記原稿の領域に対応する画素の画素値を前記初期値に置き換えた補正情報を生成する
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記読取手段により前記原稿を読み取って出力される原稿読取情報を、前記生成手段で生成された補正情報に基づいて補正する補正手段を含む画像読取装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像読取装置と、
前記補正手段により補正された原稿読取情報に基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を含む画像形成装置。
【請求項5】
コンピュータを、
複数の光電変換素子を備え、原稿及び基準板を読み取って、前記光電変換素子各々に対応する画素毎の画素値で表される読取情報を出力する読取手段で基準板を読み取って出力された基準板読取情報の画素を注目画素に設定し、該注目画素の画素値と予め画素位置に応じて大きさが設定された初期値との比が予め定めた範囲を超える場合に、該注目画素を対象画素として抽出する処理を、該対象画素の数が予め定めた値を超えるまで繰り返す抽出手段、及び
前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われた場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えた補正情報を生成し、前記基準板読取情報の全画素について前記抽出手段の処理が行われていない場合には、前記基準板読取情報において、前記対象画素の画素値を前記初期値を用いた補正値に置き換えると共に、前記注目画素に設定されていない画素の画素値を前記初期値に置き換えた補正情報を生成するか、または、全画素の画素値を前記初期値とする補正情報を生成する生成手段
として機能させるための画像読取プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−70163(P2013−70163A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206119(P2011−206119)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】