説明

画像読取装置および印刷装置

【課題】安定した速度でプリント物を搬送させながらも、プリント物やコンタクトガラスを傷つけることなく、高速に高精度な画像読取を行うことが可能な画像読取装置を提供する。
【解決手段】自身が搬送ローラとして回転駆動する円筒型のコンタクトガラスを光学系の一部に備える構成を用意する。これにより、安定した速度でプリント物を搬送させながら、プリント物やコンタクトガラスを傷つけることなく、高速に高精度な画像読取を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に形成された画像を高精度且つ高速に読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商業用の写真印刷においてはプリント物そのものを商品とするため、印刷後のプリント物に対し一枚ずつ品質検査を行うのが一般である。このような品質検査は、人が目視で行う場合もあるが、画像読取装置で読み取った画像を解析することにより不良品を摘出する方法もある。近年では、高速出力が可能な写真印刷装置への要求に応じ、印刷部と印刷直後の画像をチェックする画像読取部の両方を備えた写真印刷装置も提供されている。このような写真印刷装置であれば、印刷と品質検査を同時進行させながら、チェック済みの画像を高速に出力することが可能となる。
【0003】
ところで一般の画像読取装置では、コンタクトガラスを記録面に押し当て、このコンタクトガラスを光学的に介した状態で、画像の読み取り動作を行う。この際、画像を正確に読み取るためには、読み取りの対象となるプリント物とセンサの距離(光学経路)が安定していること、およびプリント物とセンサの相対速度が安定していることが求められる。しかし、多くの写真印刷装置では、ロール紙に画像の記録を行った後、これを切断して複数のプリント物を製造するので、画像読取部では、未だカールがとりきれていないプリント物の検査を行う場合も多い。この場合、読取面の浮きによって光学経路の距離が変動してしまったり、プリント物の端部(すなわち切断部)の引っかかり等によって搬送速度が不安定になってしまったり、また高速搬送のために切断部がコンタクトガラスを傷つけてしまったりすることがあった。
【0004】
このような課題に対し、例えば特許文献1には、記録面に押し当てるコンタクトガラスを円筒状にして、このシリンダガラスを駆動ローラの回転に従動回転させるとともに、シリンダガラスの内部に光学系の少なくとも一部を配備させる構成が開示されている。このような特許文献1の構成によれば、光学経路の距離変動を抑え、プリント物を比較的スムーズに送ることが可能な画像読取装置を、軽量小型に実現することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−41778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の画像読取装置では、シリンダガラスが、これとニップを形成する駆動ローラの回転に伴って従動回転する構成である。よって、実際にプリント物をニップした場合には、シリンダガラスとプリント物との間に生じる摩擦力によって、必ずしもシリンダガラスが駆動ローラと同じ速度で回転できない場合があった。このような現象は特に搬送速度が速い場合に顕著になり、プリント物の搬送速度を不安定にしてしまったり、摩擦によって記録面やシリンダガラスを傷つけてしまったりするおそれがあった。
【0007】
また、シリンダガラスの内側に光学系の一部を配備しているため、装置自体が小型になっても、シリンダガラスの外径は大きくなる傾向にある。この場合、シリンダガラスの肉厚をシリンダガラス全域で一定に製造することが難しく、高精細に画像を読み取ることが出来なくなったり、コストが増大したりする。更に、シリンダガラスは駆動ローラの回転に従動して回転するが、その中に配置された光学系は固定された構成である。よって、両者の位置精度が不安定になったり、複雑な支持構成のために装置が大型化したり、組立て構造が複雑になったり、コストがアップしてしまう懸念が生じていた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものである。よってその目的とするところは、安定した速度でプリント物を搬送させながらも、プリント物やコンタクトガラスを傷つけることなく、高速に高精度な画像読取を行うことが可能な画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために本発明は、搬送されるシートに光を照射する光源と、前記シートからの反射光を受光する撮像素子と、該撮像素子からの情報に基づいて前記シートの状態を判断する判断手段と、搬送される前記シートに接触する位置に配置され、駆動手段によって前記シートの搬送の方向に回転する円筒形のコンタクトガラスと、該コンタクトガラスと共に前記シートをニップし、前記コンタクトガラスの回転に伴って従動するコロと、を備え、前記コンタクトガラスは、前記シートへの照射光および反射光を透過することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定した速度でプリント物を搬送させながら、プリント物やコンタクトガラスを傷つけることなく、高速に高精度な画像読取を行うことが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用可能な印刷装置(画像読取装置)の概観斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、印刷装置の機構及び記録媒体の搬送経路を示す図である。
【図3】画像監視部の構成を詳しく説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を具体的に説明する。
【0013】
図1は本発明に使用可能な印刷装置9の概観斜視図である。本実施例の印刷装置9は、複数の写真データに従って内部に収容された帯状の記録媒体Pに連続的に記録を行い、記録後の記録媒体を切断した後、複数のプリント物をグループ別に排紙トレイ6に排出する。
【0014】
図2(a)および(b)は、印刷装置9の内部機構および記録媒体Pあるいはプリント物Prの搬送経路を説明するための断面図である。図2(a)では、記録媒体Pの搬送経路を一続きの太い実線で示しており、同図(b)では、記録媒体Pあるいはプリント物Prを、太い実線で示している。以下、両図を参照しながら説明する。
【0015】
本実施例では、2つの帯状記録媒体Pがロール紙として給紙部1に収容されており、何れか一方のロール紙が記録の進行に伴って、矢印の方向に回転供給される。給紙部1より排出された記録媒体Pは、まずデカール部2に送られる。デカール部2には、1つの駆動ローラに対する2つのピンチローラが配備されており、ロール状に保持されていた記録媒体Pのカール癖を修正するために、当該カールとは反対の方向に記録媒体Pをしごく構成になっている。
【0016】
デカールされた記録媒体Pは、次に斜行補正部3に送られる。斜行補正部3では、ローラ搬送を行いながら、記録媒体Pの一方の端部を基準となるガイド部材に押し付けることにより、搬送方向に対する斜行を補正する。
【0017】
その後記録媒体Pは記録部4に送られる。記録部4では、インクジェット方式の記録ヘッドHが配備されており、搬送中の記録媒体Pに対し画像データに従ってインクを吐出する。これにより、帯状の記録媒体Pに連続的に複数の写真データが記録される。続く切断部5では、画像の切れ目の位置で帯状の記録媒体Pの切断を行う。これにより複数のプリント物Prが生成される。
【0018】
所定サイズとなった複数のプリント物Prは画像監視部7(画像読取装置)に送られ、正常に画像が記録されているか否か、また、正常な位置で正常な切断が行われたかを判断するための監視が行なわれる。判断後のプリント物Prは排紙ソータ部8によって、グループごとにトレイ6に分類して排出される。
【0019】
以上説明した一連工程は、制御部10によってコントロールされている。例えば、制御部10は画像データに従って、搬送速度に見合った周波数でインクが吐出されるように記録部4の記録ヘッドHを駆動する。また、印刷された画像のサイズや搬送速度の情報に基づいて、切断部5におけるカット作業を実行する。更に、画像監視部7から得られる画像情報に基づいて、プリント物の記録や切断が正常に行われたか否かを判断し、その結果に基づいて、排紙ソータ部8でのソータの位置を切り替えたり、不図示のディスプレー等を利用して、監視情報をユーザに告知したりする。
【0020】
図3は、本実施例の画像監視部7の構成を詳しく説明するための断面図である。画像監視部7は、主に、カットされた後のプリント物Prを搬送するための搬送部100、プリント物を光学的に検出するための光学系200、およびコンタクトガラス13、によって構成されている。
【0021】
コンタクトガラス13は、それ自身が無色透明なガラスで構成されており、図の奥行き方向に延在する円筒形状となっている。そして、プリント物Prの搬送を促す方向に回転しながら搬送中のプリント物Prに接触し、これを鉛直方向に押さえると共に、押さえた箇所のプリント物を検出するための光学経路の一部も担っている。
【0022】
搬送部100には、コンタクトガラス13に対し搬送方向における上流と下流の位置に、搬送ローラ対11および12が配置されている。搬送ローラ対11および12は、不図示の搬送モータの駆動力により、プリント物Prを一定の速度で搬送している。本実施例では、コンタクトガラス13についても、その両端は軸受で支持されており、一方の端部は駆動系と接続されている。そして、プリント物Prに対し、搬送ローラ対11および12と同等の搬送速度を生み出せるような速度で、コンタクトガラス13も回転駆動されている。また、コンタクトガラス13と対向する位置には、コンタクトガラス13と共にプリント物Prをニップするためのバックアップコロ14が配置されており、バックアップコロ14は当接バネ15によってコンタクトガラスに付勢されている。このような構成により、プリント物Prに多少のカールが残存していても、バックアップコロ14とコンタクトガラスにニップされた箇所については、水平な平面が維持されるようになっている。
【0023】
一方、光学系200には、光源となる露光ランプ17、第1ミラー18、第2ミラー19、レンズ20、フルカラーCCD21等々が図のように配備されている。露光ランプ17から照射された光は、コンタクトガラス13を介して、搬送されつつあるプリント物Prの表面で反射する。その後、反射光は第1ミラー18および第2ミラー19で進路が変向され、レンズ20で集光されて、撮像素子をなるフルカラーCCD21で結像される。フルカラーCCD21は、受光した光を光電変換し、装置内に設けられた不図示の制御部に転送する。制御部は受信する情報を所定のプログラムに従って画像処理することにより、個々のプリント物Prが正常に記録されたか、また正常にカットされたかを判断することが出来る。
【0024】
本実施例のコンタクトガラス13は、プリント物Prの照射光および反射光を透過させることにより光学系における光路の一部を担いながも、さらにプリント物を搬送する搬送ローラの役目も果たしている。これにより、特許文献1と同様、検出される部分のプリント物を安定した位置で平滑に保つことが出来るとともに、プリント物端部の引っ掛かりを回避し、プリント物をスムーズに送ることが出来る。
【0025】
更に、本実施例においては、自重によって駆動ローラの回転に従動するシリンダガラスを備えた特許文献1とは異なり、コンタクトガラス13自身に駆動系が接続されている。よって、各ローラ対とプリント物Prとの間の摩擦力の影響を受けることなく、コンタクトガラス13と、2組の駆動ローラ対11および12とが、同じ速さでプリント物13を搬送することが出来る。そのため、コンタクトガラス13とプリント物との間に速度差が生じにくく、特許文献1の様な搬送速度が不安定になる懸念を低く抑えることが出来る。また、高速搬送する場合であっても、特許文献1のようにコンタクトガラス13やプリント物Prを傷つける恐れも軽減される。更に、特許文献1のようにシリンダガラスの内部に光学系の一部を設置するのではなく、全ての光学系をコンタクトガラスの外側に配置しているので、コンタクトガラスを必要以上に大きく製造する必要がなくなる。その結果、画像の読取精度がシリンダガラスの製造精度のばらつきに影響され難く、比較的安価に構成することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施例においては、自身が搬送ローラとして駆動する円筒型のコンタクトガラスを光学系の一部に備える構成とした。これにより、安定した速度でプリント物を搬送させながら、プリント物やコンタクトガラスを傷つけることなく、高速に高精度な画像読取を行うことが可能となった。
【0027】
以上では、写真データに従って印刷されたプリント物の印刷状態やカッター搬送部におけるカット状態を判断する内容で説明したが本発明はそのような内容に限定されるものではない。本発明の画像読取装置は、搬送されるシート状の対象物の様子を監視することに用いられればよく、例えば印刷が行われないシート状の形状等を監視するためだけに用いることも出来る。
【符号の説明】
【0028】
P 記録媒体
Pr プリント物
10 制御部
11 搬送ローラ対
12 搬送ローラ対
13 コンタクトガラス
14 バックアップコロ
17 露光ランプ
21 フルカラーCCD
100 搬送部
200 光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートに光を照射する光源と、
前記シートからの反射光を受光する撮像素子と、
該撮像素子からの情報に基づいて前記シートの状態を判断する判断手段と、
搬送される前記シートに接触する位置に配置され、駆動手段によって前記シートの搬送の方向に回転する円筒形のコンタクトガラスと、
該コンタクトガラスと共に前記シートをニップし、前記コンタクトガラスの回転に伴って従動するコロと、
を備え、
前記コンタクトガラスは、前記シートへの照射光および反射光を透過することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
搬送手段が前記シートを搬送する速度と、前記コンタクトガラスが前記シートを搬送する速度が等しくなるように、前記駆動手段により前記コンタクトガラスが回転することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記シートを切断する切断手段を更に備え、前記判断手段は前記シートが前記切断手段によって正常に切断されたか否かを判断することを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
シートに印刷を行う印刷手段と、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像読取装置を含み、前記判断手段は前記シートに前記印刷手段によって正常な印刷が行われたか否かを判断することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−16971(P2013−16971A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147323(P2011−147323)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】