画像読取装置および画像形成装置
【課題】簡単な構成でガイドユニットの開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる画像読取装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】原稿トレイ上の原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送するADFと、ADFの下方に配置され、搬送される原稿の画像を読み取る画像読取部と、原稿の搬送経路の一部を構成するとともに、ADFに対して回転軸122を中心に下方に回転することにより搬送経路を外部に対して開放するガイドユニットと、ガイドユニットの開放動作に抵抗を付与する抵抗付与機構150とを備え、抵抗付与機構150が、回転軸122と平行な方向に突出するようADFに設けられたピン151と、ガイドユニットに設けられ、ピン151に接触するとともにガイドユニットの開放動作に連動して弾性変形する弾性部材152とを有する。
【解決手段】原稿トレイ上の原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送するADFと、ADFの下方に配置され、搬送される原稿の画像を読み取る画像読取部と、原稿の搬送経路の一部を構成するとともに、ADFに対して回転軸122を中心に下方に回転することにより搬送経路を外部に対して開放するガイドユニットと、ガイドユニットの開放動作に抵抗を付与する抵抗付与機構150とを備え、抵抗付与機構150が、回転軸122と平行な方向に突出するようADFに設けられたピン151と、ガイドユニットに設けられ、ピン151に接触するとともにガイドユニットの開放動作に連動して弾性変形する弾性部材152とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像形成装置に関し、特に、原稿を読取位置に自動で搬送する自動原稿搬送手段が画像読取手段のコンタクトガラス上部に開閉自在に取り付けられた画像読取装置およびこの画像読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の画像読取装置に搭載される自動原稿搬送手段(以下、単にADFという)は、原稿載置台に積載された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して読取位置に向かって搬送するようになっている。ADFにより搬送された原稿は、読取位置にて下方に配置された画像読取手段により読み取られる。
【0003】
従来、ADFを搭載した画像読取装置において、両面原稿を読み取る場合には、表面を読取位置にて読み取った後、原稿をスイッチバックさせて再度、同一の読取位置に搬送し、裏面を読み取る方式が主流であった。近年では、ADF内の搬送経路上に裏面専用の読取部(以下、第2読取部という)を設けて、原稿のスイッチバックを行うことなく、一度の原稿搬送で原稿の表面および裏面の両面を読取可能とした、いわゆる1パス方式を採用するADFが増えてきている。
【0004】
このような1パス方式のADFにおける第2読取部は、原稿の表面の読み取りを行う第1読取搬送部から排紙部までの搬送経路上に設けられることが多く、読取面を下方に向けて配置している。ここで、第2読取部の読取面にゴミなどの異物が付着すると、第2読取部で読み取った画像に縦スジなどが生じ、画像劣化につながる。このため、1パス方式のADFでは、第2読取部の読取面を清掃できるよう、読取面の下方の搬送経路を構成するガイド板や第2読取部の近傍に配置された各種ローラなどが一体となったガイドユニットを、ADFの下面に対して開閉可能としている。具体的には、このガイドユニットは、ADF内のフレームに回転可能に支持された軸を中心に、所定角度範囲内で回転可能に構成されている。また、このガイドユニットは、清掃などを行わない通常時は開放動作しないようロック機構によりロックされている。したがって、第2読取部の読取面を清掃する際には、ロックを解除してガイドユニットを下方に回転(開放動作)させる。これにより、第2読取部の読取面を外部に露出させることができ、該読取面を容易に清掃することができる。また、ガイドユニットを開放動作することによりジャム処理の作業も容易に行うことができる。
【0005】
ところが、このようなガイドユニットは、ロックを外すと自重により落下しながら開放動作するため、開放速度が速くなってしまう。ガイドユニットの開放速度が速いと、例えば、ガイドユニットが予期せずユーザと接触したり、画像読取手段上面のコンタクトガラスに接触するおそれがある。このため、ユーザは、ガイドユニットを手で押さえながら開放動作する必要があり、煩わしいという不具合があった。
【0006】
そこで、このような不具合を防止するため、ガイドユニットの開放速度を緩和させることが望まれており、以下のようなダンパあるいは緩衝機構を応用することが考えられる。
【0007】
例えば、技術分野は異なるが、開閉可能な部材の開放速度を緩和せる機構としては、食器洗浄機の開閉扉に用いられるダンパが知られている(例えば、特許文献1参照)。このダンパは、円筒状のハウジングと、ハウジング内に圧入したゴムなどの高摩擦部材からなる円筒状のブッシュと、ブッシュ内に圧入されるとともに開閉扉の回転中心軸に連結されるシャフトとから構成されている。このダンパによれば、開閉扉の開閉動に連動してブッシュ内に圧入されたシャフトが回転したとき、シャフト外周面とブッシュ内周面との間に摩擦力が働くことにより、開閉扉の開閉動に抵抗を与えることができる。これにより、開閉扉の開閉速度が緩和される。
【0008】
また、画像形成部が内蔵される本体フレームに対してスキャナやADFからなる上ユニットが開閉可能な構成の画像形成装置に適用される緩衝機構として、上ユニットの閉動作時の衝撃を緩和する緩衝機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。この緩衝機構は、上ユニットに一端が回転可能に支持されたアームと、アームの回転軸に設けられたトーションスプリングと、本体フレームに設けられ、アームの他端がスライド可能に接続されるスライドレールとを備えている。ここで、トーションスプリングは、上ユニットに対して開放する方向(上方向)に弾性力を付与する。この緩衝機構によれば、上ユニットを閉動作したときには、トーションスプリングの弾性力によりアームの他端が本体フレームに押し付けられる。このため、上ユニットは、その反力を受けることにより閉動作時の衝撃が緩和される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のダンパは、ハウジングやブッシュおよびシャフトなど、その構成部品が多いばかりでなく、開閉扉の回転中心軸をシャフトに連結したり、ハウジング内にブッシュを圧入してこれにさらにシャフトを圧入するなど、複雑な構成となっている。
【0010】
また、特許文献2に記載の緩衝機構にあっても、アームやトーションスプリングおよびスライドレールなどといった構成部品が多い上に、アームに確実に弾性力を付与できるようトーションスプリングをアームの回転軸に取り付けたり、アームをスライドレールにスライド可能に接続させるなど、複雑な構成となっている。
【0011】
このように、従来のダンパや緩衝機構は、部品点数が多い上に構成が複雑であるため、これをガイドユニットの開放速度を緩和させる機構として採用しようとすると、部品コストや製造コストが増大してしまう。
【0012】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成でガイドユニットの開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる画像読取装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る画像読取装置は、上記目的を達成するため、原稿載置台に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送する自動原稿搬送手段と、前記自動原稿搬送手段の下方に配置され、搬送される前記原稿の画像を読み取る画像読取手段と、前記原稿の搬送経路の一部を構成するとともに、前記自動原稿搬送手段に対して回転軸を中心に下方に回転することにより前記搬送経路を外部に対して開放するガイドユニットと、前記ガイドユニットの開放動作に抵抗を付与する抵抗付与手段と、を備え、前記抵抗付与手段は、前記回転軸と平行な方向に突出するよう前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか一方に設けられた突起部と、前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか他方に設けられ、前記突起部に接触するとともに前記ガイドユニットの開放動作に連動して弾性変形する弾性部材と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、簡単な構成でガイドユニットの開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる画像読取装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像読取部の概略側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るADFの概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るADFの制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るADFの第2読取部の制御構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るガイドユニットの構成図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るガイドユニットの開放動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るガイドユニットのロック機構を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の側面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の動作を説明する図であって、(a)は、ガイドユニットの閉状態時を示す図であり、(b)は、ガイドユニットの開放動作時を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の作用を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るガイドユニットの開放動作に伴う弾性部材の弾性変形量を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第1の変形例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第2の変形例を示す図であって、(a)は、ガイドユニットの閉状態時を示す図であり、(b)は、ガイドユニットが所定の開放角度にあるときを示す図であり、(c)は、ガイドユニットが所定の開放角度を越えたときの状態を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第3の変形例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の一実施の形態を示す図であり、画像形成装置を電子写真方式の複写機1に適用した例を示している。複写機としては、例えば、一般的な静電作像方法を用いて画像を形成するフルカラーの複写機やモノクロ画像を形成する複写機などが挙げられる。また、作像方式としては、電子写真方式以外にも、例えばインクジェット方式等を用いることも可能である。さらに、上述の本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置は、複写機1として構成される他に、ファクシミリ装置、印刷機または複合機として構成してもよい。
【0018】
図1に示すように、複写機1は、自動原稿搬送手段としての自動原稿搬送装置(以下、単にADFという)2と、給紙部3と、画像読取手段としての画像読取部4と、画像形成手段としての画像形成部5とから構成されている。また、本実施の形態において、ADF2および画像読取部4は、画像読取装置10を構成する。
【0019】
ADF2は、詳しくは後述するが、原稿載置台としての原稿トレイ11と、各種ローラ等からなる搬送部13とを備えている。ADF2は、原稿トレイ11に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送部13によりスリットガラス7上に搬送する。そして、ADF2は、スリットガラス7を介して画像読取部4により読み取りが終了した原稿を、スリットガラス7上を通過させた後、排紙トレイ12に排紙する。また、ADF2は、画像読取部4に対して図示しない開閉機構を介して開閉自在に取り付けられている。
【0020】
給紙部3は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット3a、3bと、給紙カセット3a、3bに収納された記録媒体としての記録紙Pをそれぞれピックアップして給紙する給紙装置21、22と、これら給紙装置21、22から給紙された記録紙Pを画像形成部5の所定の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる搬送手段23とを有している。
【0021】
画像読取部4は、光源およびミラー部材を搭載した第1キャリッジ25と、ミラー部材を搭載した第2キャリッジ26と、結像レンズ27と、撮像部28とを備えている。画像読取部4は、詳しくは後述するが、ADF2により搬送される原稿の画像を読み取る場合には、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26をスリットガラス7の直下の図1中、Hで示す位置に移動し、その位置で停止させる。そして、第1キャリッジ25に搭載された光源によりスリットガラス7上を通過中の原稿に光を照射し、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26に搭載された各ミラー部材により原稿からの反射光を折り返させ、その反射光を結像レンズ27により結像して撮像部28で読み取らせるようになっている。一方で、コンタクトガラス8上に載置された原稿を読み取る場合には、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26を図1中、左右方向(副走査方向)に移動させる。そして、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26を移動させる過程で、光源により原稿に光を照射し、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26に搭載された各ミラー部材により原稿からの反射光を折り返させ、その反射光を結像レンズ27により結像して撮像部28で読み取らせるようになっている。
【0022】
画像形成部5は、露光装置31と、複数の感光体ドラム32と、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックとそれぞれ異なる色のトナーが充填された現像装置33と、転写ベルト34と、定着装置35とを備えている。画像形成部5は、撮像部28に読み取られた読取画像に基づいて、露光装置31により各感光体ドラム32を露光して各感光体ドラム32に潜像を形成し、各現像装置33により各感光体ドラム32にそれぞれ異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部5は、転写ベルト34により各感光体ドラム32に現像された像を給紙部3から供給された記録紙Pに転写した後、定着装置35により記録紙Pに転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙Pにカラー画像を定着するようになっている。これにより、記録紙Pにフルカラー画像が形成される。
【0023】
次に、図2を参照して、画像読取部4の詳細な構成について説明する。
【0024】
図2に示すように、画像読取部4は、上述した通り、第1キャリッジ25と、第2キャリッジ26と、結像レンズ27と、撮像部28とを備えており、これらの各構成部材は画像読取部4の本体フレーム4aの内部にそれぞれ配置されている。また、本体フレーム4aの内部には、図示しない第1レールおよび第2レールが副走査方向(図2中、左右方向)に延在するよう設けられている。第1レールは、副走査方向と直交する主走査方向に所定の間隔をあけて配置された2本のレールからなる。第2レールについても、第1レールと同様の構成である。
【0025】
第1キャリッジ25は、第1レールに摺動自在に取り付けられ、図示しない駆動モータにより図示しない第1キャリッジ用駆動ワイヤを介して副走査方向に図2中、実線で示す位置と破線で示す位置との間で往復移動可能に構成されている。また、第2キャリッジ26は、第2レールに摺動自在に取り付けられ、図示しない駆動モータにより図示しない第2キャリッジ用駆動ワイヤを介して副走査方向に図2中、実線で示す位置と破線で示す位置との間で往復移動可能に構成されている。ここで、これら第1キャリッジ25および第2キャリッジ26は、2:1の速度比で副走査方向に移動する。このような移動速度の関係により、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26の移動があっても、原稿面から結像レンズ27までの光の光路長が変化しないようになっている。
【0026】
第1キャリッジ25には、光源24と、第1ミラー部材25aとが設けられている。また、第2キャリッジ26には、第2ミラー部材26aと、第3ミラー部材26bとが設けられている。
【0027】
結像レンズ27は、各ミラー部材を介して入射された原稿からの反射光を撮像部28に集光結像する。撮像部28は、CCD等の撮像素子で構成され、結像レンズ27を介して結像された原稿の反射光像を光電変換して読取画像であるアナログ画像信号を出力する。
【0028】
次に、図3を参照して、ADF2の詳細な構成について説明する。
【0029】
図3に示すように、原稿トレイ11は、基端部を支点として図中a、b方向に回動する可動原稿テーブル41と、原稿の給紙方向に対する左右方向を位置決めする一対のサイドガイド板42とを有している。可動原稿テーブル41の回動により、原稿の給送方向前端部が適切な高さに合わせられる。
【0030】
可動原稿テーブル41の先端部の上方には、給紙適正位置センサ87が設けられている。給紙適正位置センサ87は、原稿載置面に載置された原稿の給送方向前端部が適切な高さである給紙適正位置に保持されているかを検知する。
【0031】
可動原稿テーブル41の先端部の下方には、ホームポジションセンサ88が設けられている。ホームポジションセンサ88は、可動原稿テーブル41がホームポジションにあることを検知する。
【0032】
また、原稿トレイ11には、原稿の向きが縦と横のいずれになっているかを検知する原稿長さ検知センサ89、90が給送方向に離隔して設けられている。なお、原稿長さ検知センサ89、90としては、光学的手段により未接触で検知する反射型センサ、または接触式のアクチュエータタイプのセンサを用いてもよい。
【0033】
一対のサイドガイド板42は、片側が給紙方向に対する左右方向にスライド自在であり、異なるサイズの原稿が載置可能に構成されている。
【0034】
一対のサイドガイド板42の固定側には、原稿の載置により回動するセットフィラー46が設けられている。また、セットフィラー46の先端部の移動軌跡上の最下部には、原稿トレイ11に原稿が載置されたことを検知する原稿セットセンサ82が設けられている。つまり、原稿セットセンサ82は、セットフィラー46が回動して原稿セットセンサ82から外れたか否かにより、ADF2にセットされた原稿の有無を検知する。
【0035】
ADF2の搬送部13(図1参照)は、分離給送部51と、プルアウト部52と、ターン部53と、第1読取搬送部54と、第2読取搬送部55と、排紙部56とにより構成されている。
【0036】
分離給送部51は、給紙口の近傍に配置されたピックアップローラ61と、搬送経路を挟んで対向するように配置された給紙ベルト62およびリバースローラ63とを有している。
【0037】
ピックアップローラ61は、給紙ベルト62に取り付けられた支持アーム部材64により支持されており、図示しないカム機構を介して原稿束に接触する接触位置と原稿束から離れた離隔位置との間で図中c、d方向に上下動する。ピックアップローラ61は、接触位置において原稿トレイ11上に積載された原稿のうち、数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。
【0038】
給紙ベルト62は、給送方向に回転し、リバースローラ63は、給送方向と逆方向に回転する。また、リバースローラ63は、原稿が重送された場合に、給紙ベルト62に対して逆方向に回転するが、リバースローラ63が給紙ベルト62に接している場合、または原稿を1枚のみ搬送している場合には、図示しないトルクリミッタの働きにより、給紙ベルト62に連れ回りする。これにより、原稿の重送が防止される。
【0039】
プルアウト部52は、搬送経路を挟むように配置された一対のローラからなるプルアウトローラ65を有している。プルアウト部52は、プルアウトローラ65とピックアップローラ61の駆動タイミングにより、送り出された原稿を一次突当整合(いわゆる、スキュー補正)し、整合後の原稿を引き出し搬送する。
【0040】
ターン部53は、搬送経路の上から下に向けて湾曲した搬送経路を挟むように配置された一対のローラからなる中間ローラ66および読取入口ローラ67を有している。ターン部53は、中間ローラ66により引き出し搬送された原稿を、湾曲した搬送経路を搬送することによりターンさせて、読取入口ローラ67により原稿の表面を下方に向けてスリットガラス7の近傍まで搬送する。
【0041】
ここで、プルアウト部52からターン部53への原稿の搬送速度は、第1読取搬送部54における搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、第1読取搬送部54に搬送される原稿の搬送時間の短縮が図られている。
【0042】
第1読取搬送部54は、スリットガラス7に対向するよう配置された第1読取ローラ68と、読取終了後の搬送経路55aに配置された第1読取出口ローラ69とを有している。第1読取搬送部54は、スリットガラス7の近傍まで搬送された原稿の表面を第1読取ローラ68によりスリットガラス7に接触させながら搬送し、読取終了後の原稿を第1読取出口ローラ69によりさらに搬送する。
【0043】
第2読取搬送部55は、原稿の裏面を読み取る第2読取部101と、搬送経路55aを挟んで第2読取部101に対向するよう配置された第2読取ローラ70と、第2読取部101の搬送方向下流に配置された第2読取出口ローラ71とを有している。第2読取搬送部55では、表面読取後の原稿の裏面が第2読取部101により読み取られる。裏面が読み取られた原稿は、第2読取出口ローラ71により排紙口に向けて搬送される。第2読取ローラ70は、第2読取部101における原稿の浮きを抑えると同時に、第2読取部101におけるシェーディングデータを取得する為の基準白部を兼ねるものである。両面読取を行わない場合には、原稿は第2読取部101を素通りするようになっている。
【0044】
排紙部56は、排紙口の近傍に一対の排紙ローラ72が設けられ、第2読取出口ローラ71により搬送された原稿を排紙トレイ12に排紙する。
【0045】
また、ADF2には、搬送経路に沿って、突き当てセンサ84、読取入口センサ86、レジストセンサ81、排紙センサ83などの各種センサが設けられており、原稿の搬送距離や搬送速度等の搬送制御に用いられる。
【0046】
さらに、プルアウトローラ65と中間ローラ66との間には、原稿幅センサ85が設けられている。原稿幅センサ85は、原稿の幅方向に複数並べた受光素子から構成されており、搬送経路を挟んで対向位置に設けられた照射光からの受光結果に基づき原稿幅を検知する。なお、原稿の搬送方向の長さは、上記突き当てセンサ84での原稿の先端および後端を読み取りによりモータパルスから検知される。
【0047】
次に、図4を参照して、ADF2の制御構成について説明する。
【0048】
図4に示すように、ADF2は、ADF2全体の制御を行うコントローラ100を備えている。ADF2は、コントローラ100に信号を入力するセンサ等として、レジストセンサ81、原稿セットセンサ82、排紙センサ83、突き当てセンサ84、原稿幅センサ85、読取入口センサ86、給紙適正位置センサ87、ホームポジションセンサ88、原稿長さ検知センサ89、90を備えている。読取入口センサ86は、ターン部53(図3参照)の上流側に配置され、ターン部53に進入する原稿の先端および後端を検知する。上記各センサは、コントローラ100に接続され、検知結果を示す信号をコントローラ100に送信する。
【0049】
また、ADF2は、コントローラ100から信号を出力してADF2の各部の駆動制御するモータ等として、ピックアップモータ92、給紙モータ93、読取モータ94、排紙モータ95および底板上昇モータ96を備えている。これら各モータは、コントローラ100に接続されている。
【0050】
底板上昇モータ96は、可動原稿テーブル41を昇降し、ピックアップモータ92は、ピックアップローラ61を上下動する。給紙モータ93は、ピックアップローラ61、給紙ベルト62、リバースローラ63、プルアウトローラ65および中間ローラ66を回転駆動する。読取モータ94は、読取入口ローラ67、第1読取ローラ68、第1読取出口ローラ69および第2読取出口ローラ71を回転駆動する。排紙モータ95は、排紙ローラ72を回転駆動する。
【0051】
各モータは、上記した各センサの検知信号に基づいてコントローラ100によって制御される。また、上述した第2読取部101は、コントローラ100に接続されている。
【0052】
また、複写機1は、装置全体の制御を行う本体制御部105、各種の入力操作や動作指示を行う本体操作部106を備えている。コントローラ100と本体制御部105は、I/F107を介して接続されており、双方間で制御信号等のデータの授受が行われるようになっている。本体操作部106においては、ADF2で行われる原稿読取が、両面モードおよび片面モードのいずれの読取モードで実行するかをユーザが選択可能となっている。ここで、ユーザは、原稿トレイ11に載置された原稿の全てに対して同一の読取モードを設定してもよいし、原稿ごとにそれぞれ異なる読取モードを設定することも可能である。例えば、10枚の原稿からなる原稿束のうち、1枚目と10枚目の原稿に対しては両面モードとし、その他の原稿に対しては片面モードとすることが可能である。
【0053】
このように構成されたADF2においては、第1読取搬送部54に搬送される原稿の先端が読取入口センサ86に検知されると、読取入口ローラ67のニップ部に原稿先端が進入する前に原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にするため、その原稿搬送速度が減速される。これと同時に、読取モータ94を正転(CW)駆動することにより、読取入口ローラ67、第1読取ローラ68、第1読取出口ローラ69および第2読取出口ローラ71を回転駆動する。
【0054】
そして、原稿の先端がレジストセンサ81により検知されると、原稿は、所定の搬送距離をかけて減速され、読取位置7aの手前で一時停止する。このとき、コントローラ100は、本体制御部105にI/F107を介してレジスト停止信号を送信する。続いて本体制御部105より読取開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿は、読取位置7aに原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速されて搬送される。読取モータ94のパルスカウントにより検出された原稿先端が第1読取搬送部54に到達するタイミングで、本体制御部105に対して第1面(表面)の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、第1読取搬送部54を原稿後端が抜けるまで送信される。
【0055】
読取モードが片面モードの場合には、第1読取搬送部54を通過した原稿は、第2読取部101を経て排紙部56へ搬送される。この際、排紙センサ83により原稿の先端が検知されると、排紙モータ95を正転(CW)駆動して排紙ローラ72を反時計方向に回転させる。また、このとき、排紙センサ83による原稿の先端検知からの排紙モータパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ72の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ95の駆動速度を減速させて、排紙トレイ12上に排出される原稿が飛び出さないように制御される。
【0056】
読取モードが両面モードの場合には、排紙センサ83にて原稿先端を検知してから読取モータ94のパルスカウントにより第2読取部101に原稿先端が到達するタイミングで、第2読取部101に対してコントローラ100から副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が、原稿後端が第2読取部101を抜けるまで送信される。
【0057】
次いで、図5を参照して、第2読取部101の制御構成について説明する。
【0058】
図5に示すように、第2読取部101は、光源部111と、センサチップ112と、増幅器113と、A/D114と、画像処理部115と、フレームメモリ116とを備えている。
【0059】
第2読取部101は、光源部111によりコントローラ100からの点灯信号に基づいて原稿に光を照射し、各センサチップ112により原稿からの反射光を受光して、電気信号に変換して出力する。第2読取部101は、各センサチップ112から出力された電気信号を、増幅器113により増幅し、A/D114によりアナログ信号からデジタル信号に変換して画像処理部115により画像処理を行い、画像処理が行われた信号をフレームメモリ116に記憶する。
【0060】
また、第2読取部101は、コントローラ100からのタイミング信号に基づいてフレームメモリ116に記憶された信号の出力制御を行う出力制御回路117と、出力制御回路117から出力される信号を本体制御部105に出力するI/F回路118とを備えている。
【0061】
次に、図6〜図8を参照して、ガイドユニット120について説明する。
【0062】
図6は、ADF2の第2読取部101の近傍を拡大した図である。図6に示すように、ADF2には、第1読取搬送部54の下流側の搬送経路(第2読取搬送部55の搬送経路)55aの一部を構成するガイドユニット120が設けられている。ガイドユニット120は、第2読取部101の下方に配置されている。
【0063】
ガイドユニット120は、上記搬送経路55aの下方部分を構成するガイド板121と、第1読取出口ローラ69に対向してこれに所定のローラ圧で接触するよう配置された対向ローラ69aと、第2読取ローラ70と、第2読取出口ローラ71に対向してこれに所定のローラ圧で接触するよう配置された対向ローラ71aとを、一のユニットとして構成したものである。
【0064】
また、ガイドユニット120は、ADF2内の主走査方向両側に設けられたフレーム2a(図8参照)に回転可能に支持された回転軸122を有している。回転軸122は、対向ローラ71aの下方に配置されている。また、この回転軸122は、図6において図中、正面側のみ示すが、図中、背面側にも同様に設けられている。したがって、図7に示すように、ガイドユニット120は、回転軸122を中心に第1読取部54側の先端が下方に回転することにより、搬送経路55aを外部に対して開放することができるようになっている。以下においては、上述のようにガイドユニット120を下方に回転させる動作を、開放動作という。また、この開放動作に伴うガイドユニット120の回転速度を、ガイドユニット120の開放速度という。
【0065】
このようなガイドユニット120の開放動作は、ゴミや紙粉などの異物が第2読取部101の読取面101aに付着した場合や、搬送経路55a上でジャムが発生した場合等に、ユーザにより適宜行われる。ユーザは、ガイドユニット120の開放動作により読取面101aおよび搬送経路55aを外部に開放することで、読取面101aの清掃やジャム処理を容易に行うことができる。
【0066】
また、図6および図8に示すように、ガイドユニット120は、第1読取部54側の先端にスタッド124を有している。また、ADF2は、ガイドユニット120がADF2に対して閉状態であるとき、スタッド124の位置を固定するロック機構2bを有している。ロック機構2bは、スタッド124を引っ掛けて止める爪部を有する。したがって、ガイドユニット120は、ADF2に対して閉状態にあるときはロック機構2bによりロックされている。
【0067】
ロック機構2bの下方先端には、ADF2の下面から下方(画像読取部4側)に突出する図示しない突起が形成されている。この突起は、ユーザがガイドユニット120を開放動作するときにロック機構2bを解除するために用いられるものである。すなわち、ユーザは、上記突起をつまんでロック機構2bを回転させることにより、爪部をスタッド124から外し、ロック機構2bのロックを解除する。ロック機構2bのロックが解除されると、ガイドユニット120は自重により下方に回転し、開放動作が実行される。このとき、ガイドユニット120の開放動作とともに、第1読取出口ローラ69および第2読取出口ローラ71に対する各対向ローラ69a、71aのローラ圧が解除される。
【0068】
ここで、従来、このようなガイドユニットは、ロックを解除すると自重により落下しながら開放動作するため、開放速度が速くなってしまうという問題があった。ガイドユニットの開放速度が速いと、例えば、ガイドユニットが予期せずユーザと接触したり、画像読取部上面のコンタクトガラスに接触するおそれがある。このため、ユーザは、ガイドユニットを手で押さえながら開放動作する必要があり、煩わしいという不具合があった。
【0069】
そこで、本実施の形態では、このような不具合を防止するため、ガイドユニット120の開放速度を抑制するようガイドユニット120の開放動作に抵抗を付与する抵抗付与機構150を設けた。本実施の形態における抵抗付与機構150は、本発明に係る抵抗付与手段を構成する。
【0070】
図9および図10に示すように、抵抗付与機構150は、ADF2のフレーム2a(図8参照)に設けられた突起部としてのピン151と、ガイドユニット120に設けられた樹脂製の弾性部材152とを含んで構成されている。弾性部材152は、樹脂製に限らず、金属製であってもよい。図9および図10に示すガイドユニット120は、ADF2に対して閉状態である。また、図9および図10においては、図中、正面側の抵抗付与機構150のみを図示しているが、図中、背面側にも同様に抵抗付与機構150を設ける。なお、抵抗付与機構150は、主走査方向のいずれか一方側にのみ設ける構成であってもよい。
【0071】
ピン151は、回転軸122と平行な方向(図9中、矢印Aで示す主走査方向)に突出している。より詳細には、ピン151は、ガイドユニット120の主走査方向の側面に形成されたスライド溝150aを貫通し、ガイドユニット120の内方側に向けて突出している。
【0072】
スライド溝150aは、回転軸122を中心とする円弧状に形成されている。スライド溝150aは、ガイドユニット120の開閉に連動してピン151に沿って図10中、上下方向に移動するようになっている。特に、ガイドユニット120の開放動作時、スライド溝150aは、ピン151に対して下方端部が接する図10に示す位置から、ピン151に対して上方端部が接する位置に向けて上方から下方に移動する。このとき、ピン151が通る軌道Oは、図10中、一点鎖線で示す通りである。
【0073】
図10および図11(a)、(b)に示すように、弾性部材152は、下端側で一体化された固定部153を介してガイドユニット120に固定されている。弾性部材152は、ピン151に接触するようガイドユニット120内に配置され、ガイドユニット120の開放動作に連動して弾性変形するようになっている。具体的には、弾性部材152は、ガイドユニット120の開放動作に連動してピン151により押圧されることで弾性変形する板状部材で構成されている。また、弾性部材152は、ガイドユニット120の開放動作に連動してピン151と接触する接触面152aを有している。
【0074】
弾性部材152は、ガイドユニット120が閉状態にあるとき、軌道Oと交差する形状となっている。本実施の形態では、弾性部材152を略円弧状の形状としたが、直線形状や先端側に向かうに従い徐々に曲率半径が大きくなる形状など種々の形状を適用可能である。
【0075】
このように構成された弾性部材152は、図11(a)に示すように、ガイドユニット120が閉状態にあるときは、ピン151により押圧されていない。この状態からガイドユニット120を開放動作させると、図11(b)に示すように、弾性部材152はピン151により押圧され、図中、矢印方向に弾性変形する。このとき、図12に示すように、弾性部材152には、ピン151に対する反力Frが発生する。また、この反力Frによりピン151と弾性部材152の接触面152aとの間に摩擦力Ffが生ずる。したがって、前述した反力Frと摩擦力Ffとは、ガイドユニット120の開放動作に対する抵抗になる。これにより、ガイドユニット120の開放速度が低減される。
【0076】
このように、弾性部材152は、ガイドユニット120の開放角度に応じて変化するピン151との接触位置に対し、弾性変形量を制御する形状にすることで、任意の開放角度に対して開放速度の緩和量を調整することも可能である。
【0077】
また、弾性部材152は、ADF2に対するガイドユニット120の開放角度θが大きいとき、開放角度θが小さいときと比較して弾性変形量δが大きくなるよう配置されている。具体的には、図13に示すように、弾性部材152は、開放角度θがθ1、θ2と大きくなるに従い、弾性変形量δがδ1、δ2と徐々に大きくなるように、軌道O(図11参照)と交差する角度が設定されて配置されている。あるいは、弾性部材152は、開放角度θが大きくなるに従い、弾性変形量δが徐々に大きくなるような形状に設定されている。換言すれば、開放角度θ1より大きな開放角度θ2のときの弾性変形量δ2が開放角度θ1のときの弾性変形量δ1よりも大きくなるように、弾性部材152の配置あるいは形状、もしくはその両方が設定されている。
【0078】
したがって、開放角度θが大きくなるに従い上述した反力Fr(図12参照)が徐々に大きくなるため、ガイドユニット120の開放速度を徐々に減速させることができる。これにより、安全性を保った上で操作性を向上させることが可能となる。なお、図13においては、弾性変形量δの変位を分かりやすくするため、弾性部材152を回転させずにピン151の位置を適宜変更した状態を示している。このため、実際の開放角度θ1、θ2は、ガイドユニット120が閉状態あるとき(図13中、ピン151が最も下方にあるとき)に対して、ガイドユニット120が下方に回転したときの回転角度となる。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係る画像読取装置10は、ガイドユニット120の開放速度を減速させるための抵抗付与機構150を、単純な構造のピン151および弾性部材152により構成した。このため、簡単でかつ安価な構成でガイドユニット120の開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【0080】
なお、本実施の形態においては、特段、弾性部材152の接触面152aに表面処理を施していない例について説明したが、図14に示すように、接触面152aに凹凸加工を施してもよい。この凹凸加工としては、例えば弾性部材152の金型自体に凹凸形状を施し、この凹凸形状を転写するシボ加工などが挙げられる。このようなシボ加工によれば、安価に接触面152aに凹凸を形成することができる。また、凹凸加工としては、シボ加工に限らず、接触面152aに砂粒状の研磨物を吹き付ける、いわゆるサンドブラスト加工など、その他の加工方法を用いてもよい。
【0081】
接触面152aに凹凸加工を施すことにより、凹凸加工を施していない場合と比較して接触面152aの摩擦係数が大きくなる。これにより、上述した摩擦力Ffを増大させることができる。したがって、ガイドユニット120の開放速度をより効率的に抑制することができる。なお、凹凸加工の他、接触面152aに摩擦材を貼り付けることにより摩擦係数を大きくしてもよい。
【0082】
また、本実施の形態に係る抵抗付与機構150では、単一の接触面152aを有する弾性部材152を採用したが、これに限らず、図15(a)に示すように、接触面を複数有する弾性部材162を採用してもよい。具体的には、図15(a)、(b)および図16に示すように、弾性部材162は、ガイドユニット120の開放角度θが所定の開放角度θ3(例えば、θ3=45°)以下のときにピン151と接触する第1の接触面162aと、ガイドユニット120の開放角度θが開放角度θ3より大きいときにピン151と接触する第2の接触面162bとを有する。さらに、弾性部材162において、第1の接触面162aと第2の接触面162bとの間には、段差162cが形成されている。
【0083】
このような弾性部材162を有する抵抗付与機構160によれば、例えばガイドユニット120が開放角度θ3まで開放されたとき、ピン151が段差162cに突き当たることとなる。このとき、さらにガイドユニット120を開放させたいときは、ピン151が段差162cを乗り越える程度の操作力を与える。したがって、ガイドユニット120は、開放動作時、開放角度θ3で一旦停止し、必要に応じてさらにガイドユニット120を回転させる操作力が与えられることで、最大開放角まで開放される。これにより、例えば、ローラ圧の解除のみが必要なジャム処理時には開放角度θ3まで開放し、第2読取部101の読取面101a(図6参照)の清掃時には最大開放角まで開放するといった状況に応じた使い分けができるようになる。この結果、ジャム処理時に誤って読取面101aを汚してしまったり、不用意に読取面101aを露出する機会が低減されるので、ゴミなどによる異常画像を低減させることが可能となる。なお、段差162cは、1つに限らず複数形成してもよい。この場合、使い分けのバリエーションを増やすことができる。
【0084】
また、図17に示すように、第1の接触面162aおよび第2の接触面162bには、本実施の形態と同様、凹凸加工が施されていてもよい。この場合、第1の接触面162aと第2の接触面162bとが互いに異なる摩擦係数μ1、μ2を有するよう凹凸加工を施すのが好ましい。あるいは、第1の接触面162aには凹凸加工を施さず、第2の接触面162bにのみ凹凸加工を施すなど、一方の接触面にのみ凹凸加工を施すことにより摩擦係数を異ならせるようにしてもよい。さらに、第2の接触面162bの摩擦係数μ2は、第1の接触面162aの摩擦係数μ1より高く設定するのが好ましい。このように、第1の接触面162aと第2の接触面162bとで摩擦係数を異ならせた場合には、上述のように段差162cの前後で使用目的を変えた場合にその目的や開放位置による危険度に応じて開放速度を変化させることが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態では、ピン151をADF2のフレーム2a(図8参照)に、弾性部材152をガイドユニット120に設けた例について説明したが、ピン151をガイドユニット120に、弾性部材152をADF2のフレーム2a(図8参照)に設ける構成としてもよい。このとき、図18に示すように、ピン151と弾性部材152との位置関係を本実施の形態と上下逆としてもよい。これらの場合にあっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、上述の各変形例についても同様である。
【符号の説明】
【0086】
1 複写機(画像形成装置)
2 ADF(自動原稿搬送手段)
4 画像読取部(画像読取手段)
5 画像形成部(画像形成手段)
10 画像読取装置
11 原稿トレイ(原稿載置台)
55a 搬送経路
120 ガイドユニット
122 回転軸
150、160 抵抗付与機構(抵抗付与手段)
151 ピン(突起部)
152、162 弾性部材
152a 接触面
162a 第1の接触面
162b 第2の接触面
162c 段差
O 軌道
Fr 反力
Ff 摩擦力
θ、θ1、θ2、θ3 開放角度
δ、δ1、δ2 弾性変形量
μ1、μ2 摩擦係数
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特許第3912998号公報
【特許文献2】特開2009−42721号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像形成装置に関し、特に、原稿を読取位置に自動で搬送する自動原稿搬送手段が画像読取手段のコンタクトガラス上部に開閉自在に取り付けられた画像読取装置およびこの画像読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の画像読取装置に搭載される自動原稿搬送手段(以下、単にADFという)は、原稿載置台に積載された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して読取位置に向かって搬送するようになっている。ADFにより搬送された原稿は、読取位置にて下方に配置された画像読取手段により読み取られる。
【0003】
従来、ADFを搭載した画像読取装置において、両面原稿を読み取る場合には、表面を読取位置にて読み取った後、原稿をスイッチバックさせて再度、同一の読取位置に搬送し、裏面を読み取る方式が主流であった。近年では、ADF内の搬送経路上に裏面専用の読取部(以下、第2読取部という)を設けて、原稿のスイッチバックを行うことなく、一度の原稿搬送で原稿の表面および裏面の両面を読取可能とした、いわゆる1パス方式を採用するADFが増えてきている。
【0004】
このような1パス方式のADFにおける第2読取部は、原稿の表面の読み取りを行う第1読取搬送部から排紙部までの搬送経路上に設けられることが多く、読取面を下方に向けて配置している。ここで、第2読取部の読取面にゴミなどの異物が付着すると、第2読取部で読み取った画像に縦スジなどが生じ、画像劣化につながる。このため、1パス方式のADFでは、第2読取部の読取面を清掃できるよう、読取面の下方の搬送経路を構成するガイド板や第2読取部の近傍に配置された各種ローラなどが一体となったガイドユニットを、ADFの下面に対して開閉可能としている。具体的には、このガイドユニットは、ADF内のフレームに回転可能に支持された軸を中心に、所定角度範囲内で回転可能に構成されている。また、このガイドユニットは、清掃などを行わない通常時は開放動作しないようロック機構によりロックされている。したがって、第2読取部の読取面を清掃する際には、ロックを解除してガイドユニットを下方に回転(開放動作)させる。これにより、第2読取部の読取面を外部に露出させることができ、該読取面を容易に清掃することができる。また、ガイドユニットを開放動作することによりジャム処理の作業も容易に行うことができる。
【0005】
ところが、このようなガイドユニットは、ロックを外すと自重により落下しながら開放動作するため、開放速度が速くなってしまう。ガイドユニットの開放速度が速いと、例えば、ガイドユニットが予期せずユーザと接触したり、画像読取手段上面のコンタクトガラスに接触するおそれがある。このため、ユーザは、ガイドユニットを手で押さえながら開放動作する必要があり、煩わしいという不具合があった。
【0006】
そこで、このような不具合を防止するため、ガイドユニットの開放速度を緩和させることが望まれており、以下のようなダンパあるいは緩衝機構を応用することが考えられる。
【0007】
例えば、技術分野は異なるが、開閉可能な部材の開放速度を緩和せる機構としては、食器洗浄機の開閉扉に用いられるダンパが知られている(例えば、特許文献1参照)。このダンパは、円筒状のハウジングと、ハウジング内に圧入したゴムなどの高摩擦部材からなる円筒状のブッシュと、ブッシュ内に圧入されるとともに開閉扉の回転中心軸に連結されるシャフトとから構成されている。このダンパによれば、開閉扉の開閉動に連動してブッシュ内に圧入されたシャフトが回転したとき、シャフト外周面とブッシュ内周面との間に摩擦力が働くことにより、開閉扉の開閉動に抵抗を与えることができる。これにより、開閉扉の開閉速度が緩和される。
【0008】
また、画像形成部が内蔵される本体フレームに対してスキャナやADFからなる上ユニットが開閉可能な構成の画像形成装置に適用される緩衝機構として、上ユニットの閉動作時の衝撃を緩和する緩衝機構が知られている(例えば、特許文献2参照)。この緩衝機構は、上ユニットに一端が回転可能に支持されたアームと、アームの回転軸に設けられたトーションスプリングと、本体フレームに設けられ、アームの他端がスライド可能に接続されるスライドレールとを備えている。ここで、トーションスプリングは、上ユニットに対して開放する方向(上方向)に弾性力を付与する。この緩衝機構によれば、上ユニットを閉動作したときには、トーションスプリングの弾性力によりアームの他端が本体フレームに押し付けられる。このため、上ユニットは、その反力を受けることにより閉動作時の衝撃が緩和される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のダンパは、ハウジングやブッシュおよびシャフトなど、その構成部品が多いばかりでなく、開閉扉の回転中心軸をシャフトに連結したり、ハウジング内にブッシュを圧入してこれにさらにシャフトを圧入するなど、複雑な構成となっている。
【0010】
また、特許文献2に記載の緩衝機構にあっても、アームやトーションスプリングおよびスライドレールなどといった構成部品が多い上に、アームに確実に弾性力を付与できるようトーションスプリングをアームの回転軸に取り付けたり、アームをスライドレールにスライド可能に接続させるなど、複雑な構成となっている。
【0011】
このように、従来のダンパや緩衝機構は、部品点数が多い上に構成が複雑であるため、これをガイドユニットの開放速度を緩和させる機構として採用しようとすると、部品コストや製造コストが増大してしまう。
【0012】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成でガイドユニットの開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる画像読取装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る画像読取装置は、上記目的を達成するため、原稿載置台に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送する自動原稿搬送手段と、前記自動原稿搬送手段の下方に配置され、搬送される前記原稿の画像を読み取る画像読取手段と、前記原稿の搬送経路の一部を構成するとともに、前記自動原稿搬送手段に対して回転軸を中心に下方に回転することにより前記搬送経路を外部に対して開放するガイドユニットと、前記ガイドユニットの開放動作に抵抗を付与する抵抗付与手段と、を備え、前記抵抗付与手段は、前記回転軸と平行な方向に突出するよう前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか一方に設けられた突起部と、前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか他方に設けられ、前記突起部に接触するとともに前記ガイドユニットの開放動作に連動して弾性変形する弾性部材と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、簡単な構成でガイドユニットの開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる画像読取装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像読取部の概略側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るADFの概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るADFの制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るADFの第2読取部の制御構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るガイドユニットの構成図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るガイドユニットの開放動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るガイドユニットのロック機構を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の側面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の動作を説明する図であって、(a)は、ガイドユニットの閉状態時を示す図であり、(b)は、ガイドユニットの開放動作時を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の作用を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るガイドユニットの開放動作に伴う弾性部材の弾性変形量を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第1の変形例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第2の変形例を示す図であって、(a)は、ガイドユニットの閉状態時を示す図であり、(b)は、ガイドユニットが所定の開放角度にあるときを示す図であり、(c)は、ガイドユニットが所定の開放角度を越えたときの状態を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第3の変形例を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る抵抗付与機構の第4の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の一実施の形態を示す図であり、画像形成装置を電子写真方式の複写機1に適用した例を示している。複写機としては、例えば、一般的な静電作像方法を用いて画像を形成するフルカラーの複写機やモノクロ画像を形成する複写機などが挙げられる。また、作像方式としては、電子写真方式以外にも、例えばインクジェット方式等を用いることも可能である。さらに、上述の本発明に係る画像読取装置を備えた画像形成装置は、複写機1として構成される他に、ファクシミリ装置、印刷機または複合機として構成してもよい。
【0018】
図1に示すように、複写機1は、自動原稿搬送手段としての自動原稿搬送装置(以下、単にADFという)2と、給紙部3と、画像読取手段としての画像読取部4と、画像形成手段としての画像形成部5とから構成されている。また、本実施の形態において、ADF2および画像読取部4は、画像読取装置10を構成する。
【0019】
ADF2は、詳しくは後述するが、原稿載置台としての原稿トレイ11と、各種ローラ等からなる搬送部13とを備えている。ADF2は、原稿トレイ11に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送部13によりスリットガラス7上に搬送する。そして、ADF2は、スリットガラス7を介して画像読取部4により読み取りが終了した原稿を、スリットガラス7上を通過させた後、排紙トレイ12に排紙する。また、ADF2は、画像読取部4に対して図示しない開閉機構を介して開閉自在に取り付けられている。
【0020】
給紙部3は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット3a、3bと、給紙カセット3a、3bに収納された記録媒体としての記録紙Pをそれぞれピックアップして給紙する給紙装置21、22と、これら給紙装置21、22から給紙された記録紙Pを画像形成部5の所定の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる搬送手段23とを有している。
【0021】
画像読取部4は、光源およびミラー部材を搭載した第1キャリッジ25と、ミラー部材を搭載した第2キャリッジ26と、結像レンズ27と、撮像部28とを備えている。画像読取部4は、詳しくは後述するが、ADF2により搬送される原稿の画像を読み取る場合には、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26をスリットガラス7の直下の図1中、Hで示す位置に移動し、その位置で停止させる。そして、第1キャリッジ25に搭載された光源によりスリットガラス7上を通過中の原稿に光を照射し、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26に搭載された各ミラー部材により原稿からの反射光を折り返させ、その反射光を結像レンズ27により結像して撮像部28で読み取らせるようになっている。一方で、コンタクトガラス8上に載置された原稿を読み取る場合には、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26を図1中、左右方向(副走査方向)に移動させる。そして、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26を移動させる過程で、光源により原稿に光を照射し、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26に搭載された各ミラー部材により原稿からの反射光を折り返させ、その反射光を結像レンズ27により結像して撮像部28で読み取らせるようになっている。
【0022】
画像形成部5は、露光装置31と、複数の感光体ドラム32と、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックとそれぞれ異なる色のトナーが充填された現像装置33と、転写ベルト34と、定着装置35とを備えている。画像形成部5は、撮像部28に読み取られた読取画像に基づいて、露光装置31により各感光体ドラム32を露光して各感光体ドラム32に潜像を形成し、各現像装置33により各感光体ドラム32にそれぞれ異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部5は、転写ベルト34により各感光体ドラム32に現像された像を給紙部3から供給された記録紙Pに転写した後、定着装置35により記録紙Pに転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙Pにカラー画像を定着するようになっている。これにより、記録紙Pにフルカラー画像が形成される。
【0023】
次に、図2を参照して、画像読取部4の詳細な構成について説明する。
【0024】
図2に示すように、画像読取部4は、上述した通り、第1キャリッジ25と、第2キャリッジ26と、結像レンズ27と、撮像部28とを備えており、これらの各構成部材は画像読取部4の本体フレーム4aの内部にそれぞれ配置されている。また、本体フレーム4aの内部には、図示しない第1レールおよび第2レールが副走査方向(図2中、左右方向)に延在するよう設けられている。第1レールは、副走査方向と直交する主走査方向に所定の間隔をあけて配置された2本のレールからなる。第2レールについても、第1レールと同様の構成である。
【0025】
第1キャリッジ25は、第1レールに摺動自在に取り付けられ、図示しない駆動モータにより図示しない第1キャリッジ用駆動ワイヤを介して副走査方向に図2中、実線で示す位置と破線で示す位置との間で往復移動可能に構成されている。また、第2キャリッジ26は、第2レールに摺動自在に取り付けられ、図示しない駆動モータにより図示しない第2キャリッジ用駆動ワイヤを介して副走査方向に図2中、実線で示す位置と破線で示す位置との間で往復移動可能に構成されている。ここで、これら第1キャリッジ25および第2キャリッジ26は、2:1の速度比で副走査方向に移動する。このような移動速度の関係により、第1キャリッジ25および第2キャリッジ26の移動があっても、原稿面から結像レンズ27までの光の光路長が変化しないようになっている。
【0026】
第1キャリッジ25には、光源24と、第1ミラー部材25aとが設けられている。また、第2キャリッジ26には、第2ミラー部材26aと、第3ミラー部材26bとが設けられている。
【0027】
結像レンズ27は、各ミラー部材を介して入射された原稿からの反射光を撮像部28に集光結像する。撮像部28は、CCD等の撮像素子で構成され、結像レンズ27を介して結像された原稿の反射光像を光電変換して読取画像であるアナログ画像信号を出力する。
【0028】
次に、図3を参照して、ADF2の詳細な構成について説明する。
【0029】
図3に示すように、原稿トレイ11は、基端部を支点として図中a、b方向に回動する可動原稿テーブル41と、原稿の給紙方向に対する左右方向を位置決めする一対のサイドガイド板42とを有している。可動原稿テーブル41の回動により、原稿の給送方向前端部が適切な高さに合わせられる。
【0030】
可動原稿テーブル41の先端部の上方には、給紙適正位置センサ87が設けられている。給紙適正位置センサ87は、原稿載置面に載置された原稿の給送方向前端部が適切な高さである給紙適正位置に保持されているかを検知する。
【0031】
可動原稿テーブル41の先端部の下方には、ホームポジションセンサ88が設けられている。ホームポジションセンサ88は、可動原稿テーブル41がホームポジションにあることを検知する。
【0032】
また、原稿トレイ11には、原稿の向きが縦と横のいずれになっているかを検知する原稿長さ検知センサ89、90が給送方向に離隔して設けられている。なお、原稿長さ検知センサ89、90としては、光学的手段により未接触で検知する反射型センサ、または接触式のアクチュエータタイプのセンサを用いてもよい。
【0033】
一対のサイドガイド板42は、片側が給紙方向に対する左右方向にスライド自在であり、異なるサイズの原稿が載置可能に構成されている。
【0034】
一対のサイドガイド板42の固定側には、原稿の載置により回動するセットフィラー46が設けられている。また、セットフィラー46の先端部の移動軌跡上の最下部には、原稿トレイ11に原稿が載置されたことを検知する原稿セットセンサ82が設けられている。つまり、原稿セットセンサ82は、セットフィラー46が回動して原稿セットセンサ82から外れたか否かにより、ADF2にセットされた原稿の有無を検知する。
【0035】
ADF2の搬送部13(図1参照)は、分離給送部51と、プルアウト部52と、ターン部53と、第1読取搬送部54と、第2読取搬送部55と、排紙部56とにより構成されている。
【0036】
分離給送部51は、給紙口の近傍に配置されたピックアップローラ61と、搬送経路を挟んで対向するように配置された給紙ベルト62およびリバースローラ63とを有している。
【0037】
ピックアップローラ61は、給紙ベルト62に取り付けられた支持アーム部材64により支持されており、図示しないカム機構を介して原稿束に接触する接触位置と原稿束から離れた離隔位置との間で図中c、d方向に上下動する。ピックアップローラ61は、接触位置において原稿トレイ11上に積載された原稿のうち、数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。
【0038】
給紙ベルト62は、給送方向に回転し、リバースローラ63は、給送方向と逆方向に回転する。また、リバースローラ63は、原稿が重送された場合に、給紙ベルト62に対して逆方向に回転するが、リバースローラ63が給紙ベルト62に接している場合、または原稿を1枚のみ搬送している場合には、図示しないトルクリミッタの働きにより、給紙ベルト62に連れ回りする。これにより、原稿の重送が防止される。
【0039】
プルアウト部52は、搬送経路を挟むように配置された一対のローラからなるプルアウトローラ65を有している。プルアウト部52は、プルアウトローラ65とピックアップローラ61の駆動タイミングにより、送り出された原稿を一次突当整合(いわゆる、スキュー補正)し、整合後の原稿を引き出し搬送する。
【0040】
ターン部53は、搬送経路の上から下に向けて湾曲した搬送経路を挟むように配置された一対のローラからなる中間ローラ66および読取入口ローラ67を有している。ターン部53は、中間ローラ66により引き出し搬送された原稿を、湾曲した搬送経路を搬送することによりターンさせて、読取入口ローラ67により原稿の表面を下方に向けてスリットガラス7の近傍まで搬送する。
【0041】
ここで、プルアウト部52からターン部53への原稿の搬送速度は、第1読取搬送部54における搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、第1読取搬送部54に搬送される原稿の搬送時間の短縮が図られている。
【0042】
第1読取搬送部54は、スリットガラス7に対向するよう配置された第1読取ローラ68と、読取終了後の搬送経路55aに配置された第1読取出口ローラ69とを有している。第1読取搬送部54は、スリットガラス7の近傍まで搬送された原稿の表面を第1読取ローラ68によりスリットガラス7に接触させながら搬送し、読取終了後の原稿を第1読取出口ローラ69によりさらに搬送する。
【0043】
第2読取搬送部55は、原稿の裏面を読み取る第2読取部101と、搬送経路55aを挟んで第2読取部101に対向するよう配置された第2読取ローラ70と、第2読取部101の搬送方向下流に配置された第2読取出口ローラ71とを有している。第2読取搬送部55では、表面読取後の原稿の裏面が第2読取部101により読み取られる。裏面が読み取られた原稿は、第2読取出口ローラ71により排紙口に向けて搬送される。第2読取ローラ70は、第2読取部101における原稿の浮きを抑えると同時に、第2読取部101におけるシェーディングデータを取得する為の基準白部を兼ねるものである。両面読取を行わない場合には、原稿は第2読取部101を素通りするようになっている。
【0044】
排紙部56は、排紙口の近傍に一対の排紙ローラ72が設けられ、第2読取出口ローラ71により搬送された原稿を排紙トレイ12に排紙する。
【0045】
また、ADF2には、搬送経路に沿って、突き当てセンサ84、読取入口センサ86、レジストセンサ81、排紙センサ83などの各種センサが設けられており、原稿の搬送距離や搬送速度等の搬送制御に用いられる。
【0046】
さらに、プルアウトローラ65と中間ローラ66との間には、原稿幅センサ85が設けられている。原稿幅センサ85は、原稿の幅方向に複数並べた受光素子から構成されており、搬送経路を挟んで対向位置に設けられた照射光からの受光結果に基づき原稿幅を検知する。なお、原稿の搬送方向の長さは、上記突き当てセンサ84での原稿の先端および後端を読み取りによりモータパルスから検知される。
【0047】
次に、図4を参照して、ADF2の制御構成について説明する。
【0048】
図4に示すように、ADF2は、ADF2全体の制御を行うコントローラ100を備えている。ADF2は、コントローラ100に信号を入力するセンサ等として、レジストセンサ81、原稿セットセンサ82、排紙センサ83、突き当てセンサ84、原稿幅センサ85、読取入口センサ86、給紙適正位置センサ87、ホームポジションセンサ88、原稿長さ検知センサ89、90を備えている。読取入口センサ86は、ターン部53(図3参照)の上流側に配置され、ターン部53に進入する原稿の先端および後端を検知する。上記各センサは、コントローラ100に接続され、検知結果を示す信号をコントローラ100に送信する。
【0049】
また、ADF2は、コントローラ100から信号を出力してADF2の各部の駆動制御するモータ等として、ピックアップモータ92、給紙モータ93、読取モータ94、排紙モータ95および底板上昇モータ96を備えている。これら各モータは、コントローラ100に接続されている。
【0050】
底板上昇モータ96は、可動原稿テーブル41を昇降し、ピックアップモータ92は、ピックアップローラ61を上下動する。給紙モータ93は、ピックアップローラ61、給紙ベルト62、リバースローラ63、プルアウトローラ65および中間ローラ66を回転駆動する。読取モータ94は、読取入口ローラ67、第1読取ローラ68、第1読取出口ローラ69および第2読取出口ローラ71を回転駆動する。排紙モータ95は、排紙ローラ72を回転駆動する。
【0051】
各モータは、上記した各センサの検知信号に基づいてコントローラ100によって制御される。また、上述した第2読取部101は、コントローラ100に接続されている。
【0052】
また、複写機1は、装置全体の制御を行う本体制御部105、各種の入力操作や動作指示を行う本体操作部106を備えている。コントローラ100と本体制御部105は、I/F107を介して接続されており、双方間で制御信号等のデータの授受が行われるようになっている。本体操作部106においては、ADF2で行われる原稿読取が、両面モードおよび片面モードのいずれの読取モードで実行するかをユーザが選択可能となっている。ここで、ユーザは、原稿トレイ11に載置された原稿の全てに対して同一の読取モードを設定してもよいし、原稿ごとにそれぞれ異なる読取モードを設定することも可能である。例えば、10枚の原稿からなる原稿束のうち、1枚目と10枚目の原稿に対しては両面モードとし、その他の原稿に対しては片面モードとすることが可能である。
【0053】
このように構成されたADF2においては、第1読取搬送部54に搬送される原稿の先端が読取入口センサ86に検知されると、読取入口ローラ67のニップ部に原稿先端が進入する前に原稿搬送速度を読取搬送速度と同速にするため、その原稿搬送速度が減速される。これと同時に、読取モータ94を正転(CW)駆動することにより、読取入口ローラ67、第1読取ローラ68、第1読取出口ローラ69および第2読取出口ローラ71を回転駆動する。
【0054】
そして、原稿の先端がレジストセンサ81により検知されると、原稿は、所定の搬送距離をかけて減速され、読取位置7aの手前で一時停止する。このとき、コントローラ100は、本体制御部105にI/F107を介してレジスト停止信号を送信する。続いて本体制御部105より読取開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿は、読取位置7aに原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速されて搬送される。読取モータ94のパルスカウントにより検出された原稿先端が第1読取搬送部54に到達するタイミングで、本体制御部105に対して第1面(表面)の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、第1読取搬送部54を原稿後端が抜けるまで送信される。
【0055】
読取モードが片面モードの場合には、第1読取搬送部54を通過した原稿は、第2読取部101を経て排紙部56へ搬送される。この際、排紙センサ83により原稿の先端が検知されると、排紙モータ95を正転(CW)駆動して排紙ローラ72を反時計方向に回転させる。また、このとき、排紙センサ83による原稿の先端検知からの排紙モータパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ72の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ95の駆動速度を減速させて、排紙トレイ12上に排出される原稿が飛び出さないように制御される。
【0056】
読取モードが両面モードの場合には、排紙センサ83にて原稿先端を検知してから読取モータ94のパルスカウントにより第2読取部101に原稿先端が到達するタイミングで、第2読取部101に対してコントローラ100から副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が、原稿後端が第2読取部101を抜けるまで送信される。
【0057】
次いで、図5を参照して、第2読取部101の制御構成について説明する。
【0058】
図5に示すように、第2読取部101は、光源部111と、センサチップ112と、増幅器113と、A/D114と、画像処理部115と、フレームメモリ116とを備えている。
【0059】
第2読取部101は、光源部111によりコントローラ100からの点灯信号に基づいて原稿に光を照射し、各センサチップ112により原稿からの反射光を受光して、電気信号に変換して出力する。第2読取部101は、各センサチップ112から出力された電気信号を、増幅器113により増幅し、A/D114によりアナログ信号からデジタル信号に変換して画像処理部115により画像処理を行い、画像処理が行われた信号をフレームメモリ116に記憶する。
【0060】
また、第2読取部101は、コントローラ100からのタイミング信号に基づいてフレームメモリ116に記憶された信号の出力制御を行う出力制御回路117と、出力制御回路117から出力される信号を本体制御部105に出力するI/F回路118とを備えている。
【0061】
次に、図6〜図8を参照して、ガイドユニット120について説明する。
【0062】
図6は、ADF2の第2読取部101の近傍を拡大した図である。図6に示すように、ADF2には、第1読取搬送部54の下流側の搬送経路(第2読取搬送部55の搬送経路)55aの一部を構成するガイドユニット120が設けられている。ガイドユニット120は、第2読取部101の下方に配置されている。
【0063】
ガイドユニット120は、上記搬送経路55aの下方部分を構成するガイド板121と、第1読取出口ローラ69に対向してこれに所定のローラ圧で接触するよう配置された対向ローラ69aと、第2読取ローラ70と、第2読取出口ローラ71に対向してこれに所定のローラ圧で接触するよう配置された対向ローラ71aとを、一のユニットとして構成したものである。
【0064】
また、ガイドユニット120は、ADF2内の主走査方向両側に設けられたフレーム2a(図8参照)に回転可能に支持された回転軸122を有している。回転軸122は、対向ローラ71aの下方に配置されている。また、この回転軸122は、図6において図中、正面側のみ示すが、図中、背面側にも同様に設けられている。したがって、図7に示すように、ガイドユニット120は、回転軸122を中心に第1読取部54側の先端が下方に回転することにより、搬送経路55aを外部に対して開放することができるようになっている。以下においては、上述のようにガイドユニット120を下方に回転させる動作を、開放動作という。また、この開放動作に伴うガイドユニット120の回転速度を、ガイドユニット120の開放速度という。
【0065】
このようなガイドユニット120の開放動作は、ゴミや紙粉などの異物が第2読取部101の読取面101aに付着した場合や、搬送経路55a上でジャムが発生した場合等に、ユーザにより適宜行われる。ユーザは、ガイドユニット120の開放動作により読取面101aおよび搬送経路55aを外部に開放することで、読取面101aの清掃やジャム処理を容易に行うことができる。
【0066】
また、図6および図8に示すように、ガイドユニット120は、第1読取部54側の先端にスタッド124を有している。また、ADF2は、ガイドユニット120がADF2に対して閉状態であるとき、スタッド124の位置を固定するロック機構2bを有している。ロック機構2bは、スタッド124を引っ掛けて止める爪部を有する。したがって、ガイドユニット120は、ADF2に対して閉状態にあるときはロック機構2bによりロックされている。
【0067】
ロック機構2bの下方先端には、ADF2の下面から下方(画像読取部4側)に突出する図示しない突起が形成されている。この突起は、ユーザがガイドユニット120を開放動作するときにロック機構2bを解除するために用いられるものである。すなわち、ユーザは、上記突起をつまんでロック機構2bを回転させることにより、爪部をスタッド124から外し、ロック機構2bのロックを解除する。ロック機構2bのロックが解除されると、ガイドユニット120は自重により下方に回転し、開放動作が実行される。このとき、ガイドユニット120の開放動作とともに、第1読取出口ローラ69および第2読取出口ローラ71に対する各対向ローラ69a、71aのローラ圧が解除される。
【0068】
ここで、従来、このようなガイドユニットは、ロックを解除すると自重により落下しながら開放動作するため、開放速度が速くなってしまうという問題があった。ガイドユニットの開放速度が速いと、例えば、ガイドユニットが予期せずユーザと接触したり、画像読取部上面のコンタクトガラスに接触するおそれがある。このため、ユーザは、ガイドユニットを手で押さえながら開放動作する必要があり、煩わしいという不具合があった。
【0069】
そこで、本実施の形態では、このような不具合を防止するため、ガイドユニット120の開放速度を抑制するようガイドユニット120の開放動作に抵抗を付与する抵抗付与機構150を設けた。本実施の形態における抵抗付与機構150は、本発明に係る抵抗付与手段を構成する。
【0070】
図9および図10に示すように、抵抗付与機構150は、ADF2のフレーム2a(図8参照)に設けられた突起部としてのピン151と、ガイドユニット120に設けられた樹脂製の弾性部材152とを含んで構成されている。弾性部材152は、樹脂製に限らず、金属製であってもよい。図9および図10に示すガイドユニット120は、ADF2に対して閉状態である。また、図9および図10においては、図中、正面側の抵抗付与機構150のみを図示しているが、図中、背面側にも同様に抵抗付与機構150を設ける。なお、抵抗付与機構150は、主走査方向のいずれか一方側にのみ設ける構成であってもよい。
【0071】
ピン151は、回転軸122と平行な方向(図9中、矢印Aで示す主走査方向)に突出している。より詳細には、ピン151は、ガイドユニット120の主走査方向の側面に形成されたスライド溝150aを貫通し、ガイドユニット120の内方側に向けて突出している。
【0072】
スライド溝150aは、回転軸122を中心とする円弧状に形成されている。スライド溝150aは、ガイドユニット120の開閉に連動してピン151に沿って図10中、上下方向に移動するようになっている。特に、ガイドユニット120の開放動作時、スライド溝150aは、ピン151に対して下方端部が接する図10に示す位置から、ピン151に対して上方端部が接する位置に向けて上方から下方に移動する。このとき、ピン151が通る軌道Oは、図10中、一点鎖線で示す通りである。
【0073】
図10および図11(a)、(b)に示すように、弾性部材152は、下端側で一体化された固定部153を介してガイドユニット120に固定されている。弾性部材152は、ピン151に接触するようガイドユニット120内に配置され、ガイドユニット120の開放動作に連動して弾性変形するようになっている。具体的には、弾性部材152は、ガイドユニット120の開放動作に連動してピン151により押圧されることで弾性変形する板状部材で構成されている。また、弾性部材152は、ガイドユニット120の開放動作に連動してピン151と接触する接触面152aを有している。
【0074】
弾性部材152は、ガイドユニット120が閉状態にあるとき、軌道Oと交差する形状となっている。本実施の形態では、弾性部材152を略円弧状の形状としたが、直線形状や先端側に向かうに従い徐々に曲率半径が大きくなる形状など種々の形状を適用可能である。
【0075】
このように構成された弾性部材152は、図11(a)に示すように、ガイドユニット120が閉状態にあるときは、ピン151により押圧されていない。この状態からガイドユニット120を開放動作させると、図11(b)に示すように、弾性部材152はピン151により押圧され、図中、矢印方向に弾性変形する。このとき、図12に示すように、弾性部材152には、ピン151に対する反力Frが発生する。また、この反力Frによりピン151と弾性部材152の接触面152aとの間に摩擦力Ffが生ずる。したがって、前述した反力Frと摩擦力Ffとは、ガイドユニット120の開放動作に対する抵抗になる。これにより、ガイドユニット120の開放速度が低減される。
【0076】
このように、弾性部材152は、ガイドユニット120の開放角度に応じて変化するピン151との接触位置に対し、弾性変形量を制御する形状にすることで、任意の開放角度に対して開放速度の緩和量を調整することも可能である。
【0077】
また、弾性部材152は、ADF2に対するガイドユニット120の開放角度θが大きいとき、開放角度θが小さいときと比較して弾性変形量δが大きくなるよう配置されている。具体的には、図13に示すように、弾性部材152は、開放角度θがθ1、θ2と大きくなるに従い、弾性変形量δがδ1、δ2と徐々に大きくなるように、軌道O(図11参照)と交差する角度が設定されて配置されている。あるいは、弾性部材152は、開放角度θが大きくなるに従い、弾性変形量δが徐々に大きくなるような形状に設定されている。換言すれば、開放角度θ1より大きな開放角度θ2のときの弾性変形量δ2が開放角度θ1のときの弾性変形量δ1よりも大きくなるように、弾性部材152の配置あるいは形状、もしくはその両方が設定されている。
【0078】
したがって、開放角度θが大きくなるに従い上述した反力Fr(図12参照)が徐々に大きくなるため、ガイドユニット120の開放速度を徐々に減速させることができる。これにより、安全性を保った上で操作性を向上させることが可能となる。なお、図13においては、弾性変形量δの変位を分かりやすくするため、弾性部材152を回転させずにピン151の位置を適宜変更した状態を示している。このため、実際の開放角度θ1、θ2は、ガイドユニット120が閉状態あるとき(図13中、ピン151が最も下方にあるとき)に対して、ガイドユニット120が下方に回転したときの回転角度となる。
【0079】
以上のように、本実施の形態に係る画像読取装置10は、ガイドユニット120の開放速度を減速させるための抵抗付与機構150を、単純な構造のピン151および弾性部材152により構成した。このため、簡単でかつ安価な構成でガイドユニット120の開放速度を効率よく抑制することができ、部品コストおよび製造コストを低減することができる。
【0080】
なお、本実施の形態においては、特段、弾性部材152の接触面152aに表面処理を施していない例について説明したが、図14に示すように、接触面152aに凹凸加工を施してもよい。この凹凸加工としては、例えば弾性部材152の金型自体に凹凸形状を施し、この凹凸形状を転写するシボ加工などが挙げられる。このようなシボ加工によれば、安価に接触面152aに凹凸を形成することができる。また、凹凸加工としては、シボ加工に限らず、接触面152aに砂粒状の研磨物を吹き付ける、いわゆるサンドブラスト加工など、その他の加工方法を用いてもよい。
【0081】
接触面152aに凹凸加工を施すことにより、凹凸加工を施していない場合と比較して接触面152aの摩擦係数が大きくなる。これにより、上述した摩擦力Ffを増大させることができる。したがって、ガイドユニット120の開放速度をより効率的に抑制することができる。なお、凹凸加工の他、接触面152aに摩擦材を貼り付けることにより摩擦係数を大きくしてもよい。
【0082】
また、本実施の形態に係る抵抗付与機構150では、単一の接触面152aを有する弾性部材152を採用したが、これに限らず、図15(a)に示すように、接触面を複数有する弾性部材162を採用してもよい。具体的には、図15(a)、(b)および図16に示すように、弾性部材162は、ガイドユニット120の開放角度θが所定の開放角度θ3(例えば、θ3=45°)以下のときにピン151と接触する第1の接触面162aと、ガイドユニット120の開放角度θが開放角度θ3より大きいときにピン151と接触する第2の接触面162bとを有する。さらに、弾性部材162において、第1の接触面162aと第2の接触面162bとの間には、段差162cが形成されている。
【0083】
このような弾性部材162を有する抵抗付与機構160によれば、例えばガイドユニット120が開放角度θ3まで開放されたとき、ピン151が段差162cに突き当たることとなる。このとき、さらにガイドユニット120を開放させたいときは、ピン151が段差162cを乗り越える程度の操作力を与える。したがって、ガイドユニット120は、開放動作時、開放角度θ3で一旦停止し、必要に応じてさらにガイドユニット120を回転させる操作力が与えられることで、最大開放角まで開放される。これにより、例えば、ローラ圧の解除のみが必要なジャム処理時には開放角度θ3まで開放し、第2読取部101の読取面101a(図6参照)の清掃時には最大開放角まで開放するといった状況に応じた使い分けができるようになる。この結果、ジャム処理時に誤って読取面101aを汚してしまったり、不用意に読取面101aを露出する機会が低減されるので、ゴミなどによる異常画像を低減させることが可能となる。なお、段差162cは、1つに限らず複数形成してもよい。この場合、使い分けのバリエーションを増やすことができる。
【0084】
また、図17に示すように、第1の接触面162aおよび第2の接触面162bには、本実施の形態と同様、凹凸加工が施されていてもよい。この場合、第1の接触面162aと第2の接触面162bとが互いに異なる摩擦係数μ1、μ2を有するよう凹凸加工を施すのが好ましい。あるいは、第1の接触面162aには凹凸加工を施さず、第2の接触面162bにのみ凹凸加工を施すなど、一方の接触面にのみ凹凸加工を施すことにより摩擦係数を異ならせるようにしてもよい。さらに、第2の接触面162bの摩擦係数μ2は、第1の接触面162aの摩擦係数μ1より高く設定するのが好ましい。このように、第1の接触面162aと第2の接触面162bとで摩擦係数を異ならせた場合には、上述のように段差162cの前後で使用目的を変えた場合にその目的や開放位置による危険度に応じて開放速度を変化させることが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態では、ピン151をADF2のフレーム2a(図8参照)に、弾性部材152をガイドユニット120に設けた例について説明したが、ピン151をガイドユニット120に、弾性部材152をADF2のフレーム2a(図8参照)に設ける構成としてもよい。このとき、図18に示すように、ピン151と弾性部材152との位置関係を本実施の形態と上下逆としてもよい。これらの場合にあっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、上述の各変形例についても同様である。
【符号の説明】
【0086】
1 複写機(画像形成装置)
2 ADF(自動原稿搬送手段)
4 画像読取部(画像読取手段)
5 画像形成部(画像形成手段)
10 画像読取装置
11 原稿トレイ(原稿載置台)
55a 搬送経路
120 ガイドユニット
122 回転軸
150、160 抵抗付与機構(抵抗付与手段)
151 ピン(突起部)
152、162 弾性部材
152a 接触面
162a 第1の接触面
162b 第2の接触面
162c 段差
O 軌道
Fr 反力
Ff 摩擦力
θ、θ1、θ2、θ3 開放角度
δ、δ1、δ2 弾性変形量
μ1、μ2 摩擦係数
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特許第3912998号公報
【特許文献2】特開2009−42721号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿載置台に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送する自動原稿搬送手段と、
前記自動原稿搬送手段の下方に配置され、搬送される前記原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記原稿の搬送経路の一部を構成するとともに、前記自動原稿搬送手段に対して回転軸を中心に下方に回転することにより前記搬送経路を外部に対して開放するガイドユニットと、
前記ガイドユニットの開放動作に抵抗を付与する抵抗付与手段と、を備え、
前記抵抗付与手段は、前記回転軸と平行な方向に突出するよう前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか一方に設けられた突起部と、前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか他方に設けられ、前記突起部に接触するとともに前記ガイドユニットの開放動作に連動して弾性変形する弾性部材と、を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ガイドユニットの開放動作に連動して前記突起部により押圧されることで弾性変形する板状部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記抵抗付与手段は、前記自動原稿搬送装置に対する前記ガイドユニットの開放角度が大きいとき、前記開放角度が小さいときと比較して前記弾性部材の弾性変形量が大きくなるよう、前記弾性部材を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記突起に接触する接触面を有し、
前記接触面には、凹凸加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記接触面は、前記開放角度が所定の開放角度以下のときに前記突起と接触する第1の接触面と、前記開放角度が所定の開放角度より大きいときに前記突起と接触する第2の接触面とを含み、
前記第1の接触面と前記第2の接触面との間に段差が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1の接触面と前記第2の接触面とは、互いに異なる摩擦係数を有することを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記第2の接触面は、前記第1の接触面の摩擦係数よりも高い摩擦係数を有することを特徴とする請求項5または6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置により読み取られた画像をシートに形成する画像形成手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
原稿載置台に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して搬送する自動原稿搬送手段と、
前記自動原稿搬送手段の下方に配置され、搬送される前記原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記原稿の搬送経路の一部を構成するとともに、前記自動原稿搬送手段に対して回転軸を中心に下方に回転することにより前記搬送経路を外部に対して開放するガイドユニットと、
前記ガイドユニットの開放動作に抵抗を付与する抵抗付与手段と、を備え、
前記抵抗付与手段は、前記回転軸と平行な方向に突出するよう前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか一方に設けられた突起部と、前記自動原稿搬送手段および前記ガイドユニットのいずれか他方に設けられ、前記突起部に接触するとともに前記ガイドユニットの開放動作に連動して弾性変形する弾性部材と、を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ガイドユニットの開放動作に連動して前記突起部により押圧されることで弾性変形する板状部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記抵抗付与手段は、前記自動原稿搬送装置に対する前記ガイドユニットの開放角度が大きいとき、前記開放角度が小さいときと比較して前記弾性部材の弾性変形量が大きくなるよう、前記弾性部材を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記突起に接触する接触面を有し、
前記接触面には、凹凸加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記接触面は、前記開放角度が所定の開放角度以下のときに前記突起と接触する第1の接触面と、前記開放角度が所定の開放角度より大きいときに前記突起と接触する第2の接触面とを含み、
前記第1の接触面と前記第2の接触面との間に段差が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1の接触面と前記第2の接触面とは、互いに異なる摩擦係数を有することを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記第2の接触面は、前記第1の接触面の摩擦係数よりも高い摩擦係数を有することを特徴とする請求項5または6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置により読み取られた画像をシートに形成する画像形成手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−244483(P2012−244483A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113796(P2011−113796)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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