説明

画像読取装置および画像読取方法

【課題】一辺が綴じられた紙文書にダメージを与えることなく、紙文書に印刷された内容を良好な状態で読み取ることのできる画像読取装置を提供する。
【解決手段】一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラス111と、見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラス112であって、第1平面ガラス111と当該第2平面ガラス112の断面がV字状になるように配置された第2平面ガラス112とを有するV字型コンタクトガラス110と、第1ミラーユニットおよび第2ミラーユニットを第1平面ガラス111から第2平面ガラス112に向かう副走査方向に移動させる移動制御部と、第2ミラーユニットにより反射された光を受光し、受光した光に基づいて、ページの画像データを得る画像センサとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製本された文書から電子書籍データを得る方法としては、紙に印刷された内容を、スキャナを用いてスキャンしてデータ化する方法がある。本のように背表紙が綴じられた文書をスキャンする方法としては、背表紙を裁断し、ページをばらして、各ページをスキャンする方法や、本を開いた状態でフラットベッド(原稿台)に載せ、見開きページ毎にスキャンする方法がある。
【0003】
しかしながら、背表紙を裁断した場合には、本は、破壊し元に戻せなくなってしまうという問題がある。また、本を開いた状態でフラットベッドに載せる場合にも、本の綴じ部付近まで精度よくスキャンするためには本を180度まで開いた状態でフラットベッドに押し付ける必要があるため、本に少なからずダメージを与えてしまうという問題があった。さらに、厚みのある本では、180度完全に開くことが難しいことから、見開きの状態でフラットベッドに載せて、綴じ部付近まで精度よくスキャンするには限界があるという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1には、本を見開きの状態でスキャンする際に本の綴じ部付近とフラットベッドの間に生じる空間を矯正する目的で、スキャナの構成に矯正レンズを採用する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、矯正レンズにより良好な複写物を得ることはできるものの、本を開いた状態でフラットベッドに押し付けるため、本へのダメージは解消しないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、一辺が綴じられた紙文書にダメージを与えることなく、紙文書に印刷された内容を良好な状態で読み取ることのできる画像読取装置および画像読取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像読取装置であって、一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスと、前記V字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する光源と、前記光源からの光を反射する第1ミラーユニットおよび第2ミラーユニットと、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを前記第1平面ガラスから前記第2平面ガラスに向かう副走査方向に移動させる移動制御部と、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットが前記副走査方向に移動する度に、前記第2ミラーユニットにより反射された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る画像センサとを備え、前記移動制御部は、前記ページにより反射された光が入射する前記V字型コンタクトガラスの位置から前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを経由して前記画像センサに到達するまでの第1光路であって、前記V字型コンタクトガラスの異なる各位置それぞれにおいて定まる各第1光路の距離が一定になるように、前記副走査方向における各位置において、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットの位置を制御する第1移動制御を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、画像読取装置であって、一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスと、前記V字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する光源と、前記光源からの光を反射するミラーユニットと、前記ミラーユニットにより反射された光のフォーカスを調整するフォーカスユニットと、前記フォーカスユニットによりフォーカスが調整された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る画像センサとを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、画像読取装置において実行される画像読取方法であって、一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する照射ステップと、前記光源からの光を反射する第1ミラーユニットおよび第2ミラーユニットを前記第1平面ガラスから前記第2平面ガラスに向かう副走査方向に移動させる移動制御ステップと、画像センサが、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットが前記副走査方向に移動する度に、前記第2ミラーユニットにより反射された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る受光ステップとを含み、前記移動制御ステップにおいては、前記ページにより反射された光が入射する前記V字型コンタクトガラスの位置から前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを経由して前記画像センサに到達するまでの第1光路であって、前記V字型コンタクトガラスの異なる各位置それぞれにおいて定まる各第1光路の距離が一定になるように、前記副走査方向における各位置において、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットの位置を制御する第1移動制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、画像読取装置において実行される画像読取方法であって、一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する照射ステップと、前記光源からの光を反射するミラーユニットにより反射された光のフォーカスを調整するフォーカス調整ステップと、画像センサが、フォーカスが調整された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る受光ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿台をV字型コンタクトガラスとしたので、当該V字型コンタクトガラスに本の見開きページを載せることにより、見開きページの綴じ部付近の領域もV字型コンタクトガラスに密着させることができるので、本の見開きページを原稿台に押し付けることなく、紙文書に印刷された内容を良好な状態で読み取ることができるという効果を奏する。また、本の背表紙を裁断する必要がなく、上述のように本の見開きページを原稿台に押し付ける必要もないので、スキャン処理による本へのダメージを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施の形態にかかる画像読取装置の外観図である。
【図2】図2は、画像読取装置によるスキャンにかかる主要な構成を示す図である。
【図3】図3は、処理部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、基準領域を示す図である。
【図5】図5は、識別情報を示す図である。
【図6】図6は、第1移動制御を説明するための図である。
【図7】図7は、第1移動制御を説明するための図である。
【図8】図8は、第2移動制御を説明するための図である。
【図9】図9は、第2の実施の形態にかかる画像読取装置のスキャンにかかる主要な構成を示す図である。
【図10】図10は、第2の実施の形態にかかる処理部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、画像読取装置および画像読取方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像読取装置10の外観図である。画像読取装置10は、読取対象となる紙面を搭載する平面コンタクトガラス100およびV字型コンタクトガラス110とを備えている。V字型コンタクトガラス110は、平面コンタクトガラス100上に取り外し可能に搭載されている。
【0015】
平面コンタクトガラス100は、平面状に設けられた原稿台であり、読取対象となる紙面を載せるための主面102を有している。
【0016】
V字型コンタクトガラス110は、第1平面ガラス111と、第2平面ガラス112とを有している。第1平面ガラス111と第2平面ガラス112は、両者の一辺が接合し、その断面がV字型になるように形成されている。本実施の形態においては、第1平面ガラス111と第2平面ガラス112の断面における、第1平面ガラス111と第2平面ガラス112のなす角θは、90°に設定されている。
【0017】
読取対象となる紙面は、第1平面ガラス111および第2平面ガラス112の2つの主面のうち、これらの平面の外側の主面、すなわち第1主面113および第2主面114に載せられる。
【0018】
V字型コンタクトガラス110は、例えば本(書籍)など一辺が綴じられた紙文書300の各ページの内容をスキャンする場合に適した原稿台である。紙文書300をスキャンする場合には、ユーザは、紙文書300の綴じ部302を第1平面ガラス111と第2平面ガラス112の接合部に一致させ、紙文書300の見開き2ページのうち一方のページが第1主面113に接し、見開き2ページのうち他方のページが第2主面114に接するように紙文書300をV字型コンタクトガラス110に載せる。
【0019】
V字型コンタクトガラス110は、第1平面ガラス111と第2平面ガラス112の断面がV字型を成しているため、V字型コンタクトガラス110に紙文書300の見開きページを搭載した場合には、紙文書300の綴じ部302付近においても、読取対象の紙面がV字型コンタクトガラス110から浮いてしまうことがなく、各ページの綴じ部302付近の領域をV字型コンタクトガラス110に密着させることができる。
【0020】
なお、V字型コンタクトガラス110は、その断面がV字状になるように形成されていればよく、第1平面ガラス111と第2平面ガラス112の間の角度は、90°に限定されるものではない。すなわち、第1平面ガラス111と第2平面ガラス112の間の角度は、一辺が綴じられた紙文書300の綴じ部302付近においても読取対象面がコンタクトガラス110から浮くことがないような角度であればよい。
【0021】
図2は、画像読取装置10によるスキャンにかかる主要な構成を示す図である。図2に示すように、平面コンタクトガラス100は、光源120と、第1ミラーユニット130と、第2ミラーユニット140と、画像センサ150とを備えている。第2ミラーユニット140は、ミラー141,142を有している。
【0022】
光源120は、平面コンタクトガラス100の下に設けられており、読取対象となる紙面に光を照射する。光源120は、図示せぬ光源制御部の制御により平面コンタクトガラス100の面方向に沿って、第1平面ガラス111から第2平面ガラス112の方向(図2における矢印Aの方向)に移動する。以下、この方向を副走査方向と称する。また、平面コンタクトガラス100の面方向に平行で、かつ副走査方向に垂直な方向を、主走査方向と称する。
【0023】
光源120から照射された光は、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140により反射された後、図示せぬレンズユニットを経由して画像センサ150に入射する。なお、光源120、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140は、いずれも主走査方向に延びる形状に形成されている。
【0024】
画像センサ150は、受光した光を光電変換することにより、画像データを得る。画像センサ150は、具体的には、主走査方向に複数の受光素子が配列されたラインセンサであり、CCDセンサや、CMOSセンサなどである。
【0025】
図3は、画像読取装置10が備える処理部160の機能構成を示すブロック図である。処理部160は、画像センサ150により得られた画像データを処理する。処理部160は、ホワイトバランス調整部161と、画像処理部162と、記憶部163と、出力部164と、V字型コンタクトガラス検出部165と、移動制御部166とを有している。
【0026】
ホワイトバランス調整部161は、画像センサ150により得られた各ラインの画像データのホワイトバランスを調整する。図1および図2に示すように、V字型コンタクトガラス110の第1主面113および第2主面114と光源120との距離は、副走査方向の各位置において異なる。このため、副走査方向の各位置において紙面に照射される光の光量が異なり、画像センサ150により得られる画像データの明るさが異なってしまう。ホワイトバランス調整部161はこの明るさの違いをホワイトバランス調整により補正するものである。
【0027】
より具体的には、ホワイトバランス調整部161は、V字型コンタクトガラス110の所定の基準領域から得られる基準画像データを基準として、他の領域から得られた画像データのホワイトバランスを調整する。
【0028】
図4は、基準領域を示す図である。このように、基準領域115は、V字型コンタクトガラス110の端部近傍に設定されている。そして、ホワイトバランス調整部161は、画像センサ150により得られた基準領域115の画像データを基準画像として利用する。なお、基準領域の位置は、実施の形態に限定されるものではなく、V字型コンタクトガラス110の任意の位置であればよい。
【0029】
図3の画像処理部162は、ホワイトバランス調整が施された画像データに対し、所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶部163に記憶する。出力部164は、記憶部163に記憶されている画像データを出力する。
【0030】
V字型コンタクトガラス検出部165は、画像センサ150により得られた画像データに基づいて、V字型コンタクトガラス110を検出する。ここで、V字型コンタクトガラス110を検出する処理について説明する。図5は、識別情報116を示す図である。図5に示すように、V字型コンタクトガラス110の所定の領域には、V字型コンタクトガラス110を識別する識別情報116が印字されている。本実施の形態においては、V字型コンタクトガラス110の端部近傍に識別情報116が印字されているものとするが、識別情報116の位置は任意であり、実施の形態に限定されるものではない。
【0031】
V字型コンタクトガラス検出部165は、識別情報116の画像データと、その印字位置とを記憶している。そして、V字型コンタクトガラス検出部165は、画像センサ150から印字位置において得られた画像データと、予め記憶している識別情報画像データとを照合し、これらが一致する場合に、V字型コンタクトガラス110が搭載されていると判断する。
【0032】
移動制御部166は、光源120、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を副走査方向に移動するための制御を行う。移動制御部166はまた、V字コンタクトガラス検出部165がV字型コンタクトガラス110を検出した場合、すなわち、平面コンタクトガラス100上にV字型コンタクトガラス110が搭載されている場合には、予め定められた第1移動制御を行う。また、移動制御部166は、V字コンタクトガラス検出部165がV字コンタクトガラス110を検出しない場合、すなわち、V字コンタクトガラス110が搭載されていない場合には、予め定められた、第1移動制御と異なる第2移動制御を行う。ここで、第1移動制御および第2移動制御は、光源120、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を副走査方向に移動する際に、第1ミラーユニット130を基準とした第2ミラーユニット140の相対的な位置を調整する処理である。
【0033】
図6および図7は、移動制御部166による第1移動制御を説明するための図である。副走査方向(矢印Bの方向)にスキャンが行われるとする。この場合、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を副走査方向に移動させるにつれて、V字型コンタクトガラス110の第1主面113から第1ミラーユニット130までの距離は離れていく。すなわち、V字コンタクトガラス110の第1主面113から第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を経由し画像センサ150に到達するまでの光路(以下、第1光路と称する)の距離は、副走査方向に移動するにつれて長くなる。このため、B方向に移動すると画像センサ150に入射される光のフォーカスがずれてしまう。
【0034】
そこで、本実施の形態においては、第1光路の距離を一定に保つべく、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を副走査方向に移動するのに対応して、第1ミラーユニット130を基準とした第2ミラーユニット140の相対的な位置を変化させる第1移動制御を行う。具体的には、第1移動制御においては、第1主面113に載せられた紙面をスキャンする際には、第1ミラーユニット130を移動距離lだけ移動させた場合に、第2ミラーユニット140の移動距離mが常にl/2となるように第2ミラーユニット140の位置を調整する。
【0035】
図6上段に示すように、第1主面113の位置Cから第1ミラーユニット130までの距離をc1、第1ミラーユニット130から第2ミラーユニット140のミラー141までの距離をc2、ミラー141からミラー142までの距離をc3、ミラー142から画像センサ150までの距離をc4とすると、第1主面113の位置Cから画像センサ150までの第1光路L1は、(式1)により算出される。
L1=c1+c2+c3+c4 ・・・(式1)
【0036】
また、図6下段に示すように、第1主面113の位置Dから第1ミラーユニット130までの距離をd1、第1ミラーユニット130から第2ミラーユニット140のミラー141までの距離をd2、ミラー141からミラー142までの距離をd3、ミラー142から画像センサ150までの距離をd4とすると、第1主面113の位置Dから画像センサ150までの第1光路L2は、(式2)により算出される。
L2=d1+d2+d3+d4 ・・・(式2)
【0037】
ここで、上述のように、m=l/2の関係を保つように第2ミラーユニット140の位置を調整することにより、(式3)に示すように、副走査方向の位置によらず、常に第1光路の距離を一定に保つことができる。
c1+c2+c3+c4=d1+d2+d3+d4 ・・・(式3)
【0038】
また、第1移動制御において、第2主面114に載せられた紙面をスキャンする際には、第1ミラーユニット130を移動距離lだけ移動させた場合に、第2ミラーユニット140の移動距離mが常にlと等しくなるように移動させる。
【0039】
図7上段に示すように、第2主面114の位置Eから第1ミラーユニット130までの距離をe1、第1ミラーユニット130から第2ミラーユニット140のミラー141までの距離をe2、ミラー141からミラー142までの距離をe3、ミラー142から画像センサ150までの距離をe4とすると、第2主面114の位置Eから画像センサ150までの第1光路L3は、(式4)により算出される。
L3=e1+e2+e3+e4 ・・・(式4)
【0040】
また、図7下段に示すように、第2主面114の位置Fから第1ミラーユニット130までの距離をf1、第1ミラーユニット130から第2ミラーユニット140のミラー141までの距離をf2、ミラー141からミラー142までの距離をf3、ミラー142から画像センサ150までの距離をf4とすると、第1主面113の位置Fから画像センサ150までの第1光路L4は、(式5)により算出される。
L4=f1+f2+f3+f4 ・・・(式5)
【0041】
ここで、上述のように、m=lの関係に保つように第2ミラーユニット140の位置を調整することにより、(式6)に示すように、副走査方向の位置によらず、常に第1光路の距離を一定に保つことができる。
e1+e2+e3+e4=f1+f2+f3+f4 ・・・(式6)
【0042】
このように、第1移動制御においては、移動制御部166は、光源120、第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を副走査方向に移動させるのに対応して、第1ミラーユニット130を基準とした、第2ミラーユニット140の相対的な位置を変化させるので、これにより第1光路の距離の変化分を吸収することができ、副走査方向の位置によらず、画像センサ150に入射する光のフォーカスを常に合わせることができる。
【0043】
次に、移動制御部166による第2移動制御について説明する。図8は、第2移動制御を説明するための図である。第2移動制御においては、平面コンタクトガラス100から第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を経由し画像センサ150に到達するまでの光路(以下、第2光路と称する)の距離を一定に保つための制御である。具体的には、移動制御部166は、第2移動制御においては、平面コンタクトガラス100に載せられた紙面をスキャンする際に、第1ミラーユニット130を移動距離lだけ移動させた場合に、第2ミラーユニット140の移動距離mが常にl/2となるように第2ミラーユニット140の位置を調整する。
【0044】
図8上段に示すように、平面コンタクトガラス100の位置Gから第1ミラーユニット130までの距離をg1、第1ミラーユニット130から第2ミラーユニット140のミラー141までの距離をg2、ミラー141からミラー142までの距離をg3、ミラー142から画像センサ150までの距離をg4とすると、平面コンタクトガラス100の位置Gから画像センサ150までの第2光路L5は、(式7)により算出される。
L5=g1+g2+g3+g4 ・・・(式7)
【0045】
また、図8下段に示すように、平面コンタクトガラス100の位置Hから第1ミラーユニット130までの距離をh1、第1ミラーユニット130から第2ミラーユニット140のミラー141までの距離をh2、ミラー141からミラー142までの距離をh3、ミラー142から画像センサ150までの距離をh4とすると、平面コンタクトガラス100の位置Hから画像センサ150までの第2光路L6は、(式8)により算出される。
L6=h1+h2+h3+h4 ・・・(式8)
【0046】
ここで、上述のように、m=l/2の関係を保つように第2ミラーユニット140の位置を調整することにより、(式9)に示すように、副走査方向の位置によらず、常に第2光路の距離を一定に保つことができる。
g1+g2+g3+g4=h1+h2+h3+h4 ・・・(式9)
【0047】
このように、第2移動制御においても、移動制御部166は、副走査方向に移動するのに対応して、第1ミラーユニット130を基準とした、第2ミラーユニット140の相対的な位置を変化させるので、これにより、第2光路の距離の変化分を吸収することができ、副走査方向の位置によらず、画像センサ150に入射する光のフォーカスを常に合わせることができる。
【0048】
以上のように、本実施の形態にかかる画像読取装置10においては、本のように一辺が綴じられた紙文書を開いた状態に沿った形状のV字型コンタクトガラス110を備えているので、この原稿台としてのV字型コンタクトガラス110に読取対象となる見開きページを載せることにより、開かれたページの綴じ部付近の領域もV字型コンタクトガラス110と密着させることができ、開かれたページの内容を良好な状態で読み取ることができる。
【0049】
さらに、本実施の形態にかかる画像読取装置10においては、紙文書を開いた状態で原稿台に載せるため、背表紙を裁断する必要もなく、また、原稿台としてのV字型コンタクトガラス110は、見開きページの形状に沿った形状に形成されているので、紙文書を原稿台に押し付ける必要もない。このため、紙文書のスキャンによる劣化を防止することができる。
【0050】
本実施の形態の画像読取装置10の第1の変更例について説明する。本実施の形態にかかる画像読取装置10においては、V字型コンタクトガラス検出部165がV字型コンタクトガラス110の有無を検出し、移動制御部166は、この検出結果に基づいて第1移動制御と第2移動制御を切り替えていたが、これにかえて、移動制御部166は、ユーザからの指示に基づいて、第1移動制御と第2移動制御を切り替えてもよい。本例においては、画像読取装置は、ユーザからの入力を受け付ける受付部をさらに備えることとする。なお、この場合、画像読取装置は、V字型コンタクトガラス検出部165を備えなくともよい。
【0051】
ユーザは、V字型コンタクトガラス110に読取対象となる紙面を載せてスキャンを行いたい場合には、V字型コンタクトガラス110を平面コンタクトガラス100上に搭載し、第1移動制御の実行指示を不図示の入力部から入力する。また、ユーザは、平面コンタクトガラス100に読取対象となる紙面を載せてスキャンを行いたい場合には、V字型コンタクトガラス110を取り外し、第2移動制御の実行指示を入力部から入力する。
【0052】
受付部は、入力部に入力された第1移動制御または第2移動制御の実行指示を受け付け、移動制御部は、受付部が受け付けた実行指示に従い第1移動制御または第2移動制御を行う。
【0053】
また、第2の変更例としては、画像読取装置は、平面コンタクトガラス100を備えなくともよい。すなわち、画像読取装置は、原稿台としてV字型コンタクトガラス110のみを備える。これにより、平面コンタクトガラス100を通る際の光源120からの光の光量の減少や光の屈折を軽減することができる。したがって、画像読取装置は、より良好な画像データを得ることができる。また、この場合には、処理部160のV字型コンタクトガラス検出部165を備えなくてもよい。また、移動制御部166は、第1移動制御のみを行えばよい。
【0054】
また、第3の変更例としては、画像読取装置は、3以上のミラーユニットを備えてもよい。この場合においても、移動制御部166は、画像読取装置が備えるミラーユニットを経由する各光路の距離が一定となるような第1移動制御および第2移動制御を行うこととする。
【0055】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態にかかる画像読取装置20のスキャンにかかる主要な構成を示す図である。第2の実施の形態にかかる画像読取装置20は、フォーカスユニット170を備えている。
【0056】
第1の実施の形態にかかる画像読取装置10においては、V字型コンタクトガラス110または平面コンタクトガラス100から第1ミラーユニット130および第2ミラーユニット140を経由する画像センサ150までの光路の距離を調整することにより、画像センサ150に入射する光のフォーカスを調整したが、第2の実施の形態にかかる画像読取装置20においては、フォーカスユニット170により、画像センサ150に入射する光のフォーカスを調整する。画像センサ150は、フォーカスユニット170によりフォーカスが調整された光を受光し、受光した光に基づいて、画像データを得る。
【0057】
図10は、画像読取装置20が備える処理部167の機能構成を示すブロック図である。処理部167は、第1の実施の形態の処理部160の機能構成に加えて、フォーカス制御部168を有している。移動制御部166は、光源120およびミラーユニット180を副走査方向に移動するための処理を行う。
【0058】
フォーカス制御部168は、画像センサ150に入射する光のフォーカスのずれを調整する。フォーカス制御部168は、具体的には、V字コンタクトガラス検出部165がV字型コンタクトガラス110を検出した場合、すなわち、平面コンタクトガラス100上にV字型コンタクトガラス110が搭載されている場合には、予め定められた第1フォーカス制御を行う。また、移動制御部166は、V字コンタクトガラス検出部165がV字コンタクトガラス110を検出しない場合、すなわち、V字コンタクトガラス110が搭載されていない場合には、予め定められた、第1フォーカス制御と異なる第2フォーカス制御を行う。
【0059】
第1フォーカス制御は、第1平面ガラス111または第2平面ガラス112からミラーユニット180を経由して画像センサ150に到達する光路の距離の変化に起因した画像センサ150に入射される光のフォーカスのずれを調整する処理である。第2フォーカス制御は、平面コンタクトガラス100からミラーユニット180を経由して画像センサ150に到達する光路の距離の変化に起因した画像センサ150に入射される光のフォーカスのずれを調整する処理である。
【0060】
このように、本実施の形態においては、第1の実施の形態にかかる画像読取装置10のように光源120からの光の光路の距離を一定に保つように複数のミラーユニットの相対的な位置を調整するのにかえて、フォーカスユニット170により画像センサ150に入射する光のフォーカスを調整する。これにより、画像形成装置20においても、副走査方向の位置によらず、画像センサ150に入射する光のフォーカスを常に合わせることができる。
【0061】
なお、上記実施の形態において説明した画像読取装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用してもよい。また、複写機などの画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10,20 画像読取装置
100 平面コンタクトガラス
110 V字型コンタクトガラス
111 第1平面ガラス
112 第2平面ガラス
120 光源
130 第1ミラーユニット
140 第2ミラーユニット
150 画像センサ
160,167 処理部
161 ホワイトバランス調整部
162 画像処理部
163 記憶部
164 出力部
165 V字型コンタクトガラス検出部
166 移動制御部
168 フォーカス制御部
170 フォーカスユニット
180 ミラーユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特表2005−534062号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスと、
前記V字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する光源と、
前記光源からの光を反射する第1ミラーユニットおよび第2ミラーユニットと、
前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを前記第1平面ガラスから前記第2平面ガラスに向かう副走査方向に移動させる移動制御部と、
前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットが前記副走査方向に移動する度に、前記第2ミラーユニットにより反射された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る画像センサと
を備え、
前記移動制御部は、前記ページにより反射された光が入射する前記V字型コンタクトガラスの位置から前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを経由して前記画像センサに到達するまでの第1光路であって、前記V字型コンタクトガラスの異なる各位置それぞれにおいて定まる各第1光路の距離が一定になるように、前記副走査方向における各位置において、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットの位置を制御する第1移動制御を行うことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記V字型コンタクトガラスと前記光源の間に設けられ、前記V字型コンタクトガラスが搭載された平面コンタクトガラスをさらに備え、
前記V字型コンタクトガラスは、前記平面コンタクトガラスから取り外し可能に設けられ、
ユーザから前記移動制御部による制御を前記第1移動制御から、前記平面コンタクトガラスに搭載されたページにより反射された光が入射する前記平面コンタクトガラスの位置から前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを経由して前記画像センサに到達するまでの第2光路であって、前記平面コンタクトガラスの異なる各位置それぞれにおいて定まる各第2光路の距離が一定になるように、前記副走査方向における各位置において、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットの位置を制御する第2移動制御に切り替える切替指示を受け付ける受付部をさらに備え、
前記移動制御部は、前記受付部が前記第2移動制御への前記切替指示を受け付けた場合に、前記第2移動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記V字型コンタクトガラスと前記光源の間に設けられ、前記V字型コンタクトガラスが搭載された平面コンタクトガラスをさらに備え、
前記V字型コンタクトガラスは、前記平面コンタクトガラスから取り外し可能に設けられ、さらに前記第1平面または第2平面ガラスに印字された識別情報を有し、
前記画像センサにより前記識別情報の前記画像データが得られた場合に、前記V字型コンタクトガラスが前記平面コンタクトガラスから取り外されたと判断するV字型コンタクトガラス検出部をさらに備え、
前記移動制御部は、前記V字型コンタクトガラスが取り外された場合に、前記第1移動制御を停止し、前記平面コンタクトガラスに搭載されたページにより反射された光が入射する前記平面コンタクトガラスの位置から前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを経由して前記画像センサに到達するまでの第2光路であって、前記平面コンタクトガラスの異なる各位置それぞれにおいて定まる各第2光路の距離が一定になるように、前記副走査方向における各位置において、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットの位置を制御する第2移動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像センサにより得られた前記画像データのホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記ホワイトバランス調整部は、前記画像センサにより前記V字型コンタクトガラスの所定の基準領域から得られた基準画像データに基づいて、前記V字型コンタクトガラスの前記基準領域以外の領域から得られた前記画像データのホワイトバランスを調整することを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスと、
前記V字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する光源と、
前記光源からの光を反射するミラーユニットと、
前記ミラーユニットにより反射された光のフォーカスを調整するフォーカスユニットと、
前記フォーカスユニットによりフォーカスが調整された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る画像センサと
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
前記画像センサにより得られた前記画像データのホワイトバランスを調整するホワイトバランス調整部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記ホワイトバランス調整部は、前記画像センサにより前記V字型コンタクトガラスの所定の基準領域から得られた基準画像データに基づいて、前記V字型コンタクトガラスの前記基準領域以外の領域から得られた前記画像データのホワイトバランスを調整することを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
画像読取装置において実行される画像読取方法であって、
一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する照射ステップと、
前記光源からの光を反射する第1ミラーユニットおよび第2ミラーユニットを前記第1平面ガラスから前記第2平面ガラスに向かう副走査方向に移動させる移動制御ステップと、
画像センサが、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットが前記副走査方向に移動する度に、前記第2ミラーユニットにより反射された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る受光ステップと
を含み、
前記移動制御ステップにおいては、前記ページにより反射された光が入射する前記V字型コンタクトガラスの位置から前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットを経由して前記画像センサに到達するまでの第1光路であって、前記副V字型コンタクトガラスの異なる各位置それぞれにおいて定まる各第1光路の距離が一定になるように、前記副走査方向における各位置において、前記第1ミラーユニットおよび前記第2ミラーユニットの位置を制御する第1移動制御を行うことを特徴とする画像読取方法。
【請求項10】
画像読取装置において実行される画像読取方法であって、
一辺が綴じられた紙文書の見開き2ページのうち一方のページが搭載される第1平面ガラスと、前記見開き2ページのうち他方のページが搭載される第2平面ガラスであって、前記第1平面ガラスと当該第2平面ガラスの断面がV字状になるように配置された前記第2平面ガラスとを有するV字型コンタクトガラスに搭載されたページに光を照射する照射ステップと、
前記光源からの光を反射するミラーユニットにより反射された光のフォーカスを調整するフォーカス調整ステップと、
画像センサが、フォーカスが調整された光を受光し、受光した光に基づいて、前記ページの画像データを得る受光ステップと
を含むことを特徴とする画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−106058(P2013−106058A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246293(P2011−246293)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】