説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】 ユーザが面倒な操作を行わずに、適正スキャン解像度にて原稿の読み取りを行える、利便性に優れる原稿読取装置を提供する。
【解決手段】 スキャン解像度を設定する設定部102と、設定された上記スキャン解像度にて原稿を読み取る画像読取部103と、読み取った画像データを格納するデータ格納部104と、上記画像データにおける同一画素の連続数に応じて、上記スキャン解像度に対する推奨解像度を決定する画像処理部106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取り(スキャンし)、画像データを取得する画像読取装置及び画像形成装置に関し、詳しくは、最適スキャン解像度にて画像データを取得できる画像読取装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナ(画像読取装置)、或いはスキャナを搭載した複合機では、原稿を読み取る際に、先ず、ユーザが操作パネルより所望のスキャン解像度を設定するようになっている。
この場合、読み取る原稿画像にも依るが、解像度が低過ぎると、取得した文字や線分等の画像に潰れが生じ、逆に、解像度が必要以上に高いと、スキャン時間が長くなり、且つ、読み取った画像データの容量も大きくなる(この場合、大容量メモリが必要となり、処理時間も増大する)のため、ユーザは、原稿に見合った適正な解像度を試行錯誤して決定するという、手間のかかる操作を余儀なくされており、極めて利便性の悪いものであった。
【0003】
このような、不都合に鑑み、例えば、特許文献1には、一旦、原稿をスキャンし、その画像データより適正な解像度を決定し、適正解像度にて再度スキャンする技術が開示されているが、特許文献1の技術は、装置の最高解像度にてプレスキャンすることから、上記したキャン時間やデータ容量に係わる問題が依然残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−219150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み成されたもので、ユーザが面倒な操作を行わずに適正なスキャン解像度にて素早く原稿の読み取りが行える、利便性に優れた原稿読取装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の画像読取装置は、スキャン解像度を設定する設定部と、設定された上記スキャン解像度にて原稿を読み取る画像読取部と、読み取った画像データを格納する格納部と、上記画像データにおける同一画素の連続数に応じて、上記スキャン解像度に対する推奨解像度を決定する画像処理部とを備えることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の画像形成装置は、上記構成の画像読取装置と、当該画像読取装置が取得した画像データを印刷するプリンタとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが設定したスキャン解像度にて原稿を読み取り、得られた画像データの、同一画素(白画素と黒画素)について、それぞれの連続画素数に応じて、推奨解像度を決定するように構成したので、ユーザは、従来のようにスキャン解像度の設定に手間取ることなく、適正品質の画像データを効率良く取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1によるスキャナの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用された複合機の概観を示す図である。
【図3】スキャン解像度設定画面の表示例を示す図である。
【図4】スキャン解像度判定結果の表示例を示す図である。
【図5】連続画素数の解析方向を示す図である。
【図6】連続画素数の検出例を示す図である。
【図7】連続画素数の計算から除外される画素列の例を示す図である。
【図8】実施例1によるスキャナの動作を示すフローチャートである。
【図9】実施例1による平均連続画素数解析部の動作を示すフローチャートである。
【図10】実施例1による画像処理部の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施例2によるスキャナの構成を示すブロック図である。
【図12】実施例2によるスキャナの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図12に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図2は、本発明が適用された画像形成装置としての複合機の概観を示し、後述する本発明の画像読取装置(スキャナ)100(200)、及びプリンタ400、操作パネル300等で構成されている。
【0011】
プリンタ400は、例えば、電子写真方式のプリンタが用いられ、スキャナ100(200)が取得した画像データを入力し、取得した画像データに応じたトナー像を形成して紙面に定着させることで、画像を形成する。
操作パネル300は、スキャン開始ボタン301、スキャンモード設定用ボタン302、液晶等による表示部303等で構成され、ユーザのボタン操作により、原稿の読み取り指示や各種パラメータ(例えば、スキャン解像度、カラーモード等)の設定や表示等を行う。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1によるスキャナ100の構成を示すブロック図である。
実施例1によるスキャナ100は、印刷設定格納部101、操作パネル制御部102、画像読取部103、画像格納部104、メモリカード制御部105、画像処理部106等を備える。
【0013】
印刷設定格納部101は、操作パネル300上で設定された各種設定情報を保存しておくためのメモリ領域である。
【0014】
操作パネル制御部102は、ユーザによる操作パネル300のボタン操作に応じた各種機能の実行や、表示部303における画面表示を制御する機能部である。ユーザのボタン操作に基づく動作指令情報は、画像読取部103に送られる。
表示部303は、タッチパネル式にて構成されており、その画面表示については後述する。
【0015】
画像読取部103は、スキャナ100における原稿の読み取り動作(スキャン)を制御し、画像データを取得する機能部である。取得した画像データは、画像格納部104に送られる。尚、本実施例では、スキャンにより、モノクロ2値画像データ(白を「0」、黒を「1」で表現する)が取得されるものとする。
【0016】
画像格納部104は、取得した画像データを格納しておくためのデータ記憶領域であり、例えば、大容量のハードディスクで構成されている。
【0017】
メモリカード制御部105は、複合機に装備されたメモリカードリーダの動作を制御する機能部である。メモリカードとして、例えば、USBメモリが使用できる。
【0018】
画像処理部106は、画像格納部104に格納されている画像データを読み込んで、画像解析を行う機能部であり、平均連続画素数解析部107を備える。
平均連続画素数解析部107は、スキャナ100が搭載するCPU(図示せず)が画像処理用の制御プログラムを実行することにより実現される機能部であり、画像格納部104より読み込んだモノクロ2値の画像データを解析し、白画素及び黒画素に対する各々連続画素数を検出すると共に、その平均値と標準偏差を算出する。
【0019】
上記画像解析は、図5に示すように、所定の画像を横方向(主走査方向)と縦方向(副走査方向)より、1画素、及び1ライン毎に参照することで行われる。横方向の画像解析による、黒画素「1」と白画素「0」の連続画素数の検出例を図6に示す。
尚、画像解析に際し、処理時間と解析結果の兼ね合で、画像に対する縦方向の解析を省略することも可能である。
【0020】
ここで、上記操作パネル制御部102によるスキャン解像度設定画面の表示制御を、図3に基づいて説明する。図3は、スキャン解像度設定画面の表示例を示す図である。
【0021】
図3に示すように、本実施例では、表示部303上より、75dpi、100dpi、150dpi、200dpi、300dpi、400dpi、600dpiの7種類のスキャン解像度を設定できるようになっている。スキャン開始時、ユーザは、これらスキャン解像度の所望の一つを選択する。図3では、スキャン解像度150dpiが選択された場合を示している。尚、ユーザがスキャン解像度を選択しなかった場合は、デフォルトのスキャン解像度が設定される。
【0022】
また、画面の下段に「品質判定を行う」の機能と「プレスキャンのみ」の機能の有効/無効を指定するチェックボックスが表示されている。ユーザは、タッチパネルの操作により、これらの機能の有効/無効を設定することができる。例えば、上記機能について有効を設定すると、対応するチェックボックスにチェックマークが表示される。
「品質判定を行う」は、ユーザが選択したスキャン解像度が、画像品質やデータ容量の点で適正な解像度であったかどうかを通知する機能である。
「プレスキャンのみ」は、「品質判定を行う」の機能が有効な場合にのみ表示されるもので、画像データをメモリカードに格納せずに画像品質の判定だけを行う機能である。「プレスキャンのみ」の機能を無効にした場合は、読み取った画像データを直接カードメモリに格納する。これをスキャンtoメモリカード機能という。
【0023】
次に、上記構成のスキャナ100の動作を、図8〜図10に基づいて説明する。図8は、スキャナ100の動作を示すフローチャート、図9は、平均連続画素数解析部の動作を示すフローチャート、図10は、画像処理部の動作を示すフローチャートである。
【0024】
図8のS101において、先ず、ユーザは、操作パネル300のボタン操作にて、スキャンの際のモード設定を行う。本実施例では、図3に示すように、スキャン解像度として150dpiが選択され、さらに、スキャンする原稿画像に対して、「品質判定を行う」の機能と「プレスキャンのみ」の機能の双方が「有効」と設定されたものとする。これらの設定情報は、印刷設定格納部101に格納される。
【0025】
次に、S102において、ユーザは、操作パネル300のボタン操作によりスキャンの開始を指示する。
【0026】
次に、S103において、画像読取部103は、操作パネル制御部102からスキャン開始の指示を受けると、スキャナ100にセットされた原稿のスキャン動作(モノクロ2値モード)を開始し、画像データを取得する。
【0027】
次に、S104において、画像読取部103は、スキャンにより取得した画像データ(モノクロ2値データ)を画像格納部104に格納する。
【0028】
次に、S105において、画像読取部103は、印刷設定格納部101に保存されている設定情報より、操作パネル300の「品質判定を行う」の機能が有効か否かを判定し、無効であれば、S111に移行する。有効であれば、S106に進み、S106において、画像処理部106は、平均連続画素数解析部107を起動する。具体的には、CPUが画像処理用の制御プログラムを起動し、以下の処理を実行する。
【0029】
S107において、平均連続画素数解析部107は、画像格納部104に格納されている画像データを解析し、白、黒の連続画素数を検出すると共に、これらの平均連続画素数μと、その標準偏差σを算出する。尚、平均連続画素数μと標準偏差σの算出処理については後述する。
【0030】
次に、S108において、画像処理部106は、平均連続画素数解析部107にて算出された平均連続画素数μと標準偏差σに基づいて、スキャン解像度の適正性を判断して、推奨解像度を決定し、その情報を出力する。尚、スキャン解像度の適正判断と推奨解像度の算出については後述する。
【0031】
次に、S109において、操作パネル制御部102は、出力されたスキャン解像度の適正性についての判断結果(画像品質情報)を操作パネル300の表示部303に表示する(図4参照)。
【0032】
次に、S110において、印刷設定格納部101に保存されている設定情報より、表示部303の「プレスキャンのみ」の機能が有効か否かを判定し、有効であれば本処理を終了する。また、無効であれば、S111に進み、S111において、メモリカード制御部105は、画像格納部104に格納されている画像データをメモリカードに保存し、同時に画像格納部104に格納されている画像データを削除する。
【0033】
次に、図5、図9に基づき、図8のS107で述べた平均連続画素数μと、その標準偏差σの算出処理について説明する。図5は、連続画素数の解析方向を示す図である。
【0034】
先ず、S201において、図5に示すように、全画像データを水平方向と垂直方向の2次元方向について参照し、黒画素の連続数(連続画素数)の平均値μと、その標準偏差(ばらつきの平均)σを算出する。この際のサンプル数をnとする。尚、参照する画像データは、2値の画像データであるから、画像データをビット単位で解析し、ビットの値が「1」なら黒画素、「0」なら白画素であると判断する。
【0035】
ここで、平均値μと標準偏差σの算出につき、具体例を説明する。
図5に示すように、データ解析で検出された黒の連続画素数は、5dot、4dot、3dotである(サンプル数は3)。
従って、その平均値μは、
μ=(5.0+4.0+3.0)/3=4(dot)となる。
【0036】
また、標準偏差は、平均値との差の平均値のことであり、公知の不偏分散の定義式を用いて算出できる。
すなわち、標準偏差σは、(ばらつきの二乗の和)を(サンプル数−1)で除算して二乗平均σを求め、その平方根より算出でき、
σ=((5.0−4.0)+(4.0−4.0)+(3.0−4.0))/(3−1)=1.0
σ=√(σ)=1.0(dot)となる。
すなわち、図5の例では、黒の連続画素数の平均値は4dotで、±1dotのばらつきが存在すると判断する。
【0037】
ここで、白画素、黒画素の連続画素数について、多数のサンプル値(平均値μと標準偏差σ)を取得した場合、画像品質に影響するような文字や線分の付近における連続画素数の標準偏差は、平均値μを中心とした正規分布曲線で近似できる。
【0038】
また、この正規分布曲線においては、サンプル値が(μ±σ)の範囲(1シグマ区間)に入る確率は68.2%であることが理論上知られている。因みに、(μ±2σ)の範囲(2シグマ区間)では、95.4%、(μ±3σ)の範囲(3シグマ区間)では、99.7%である。
従って、サンプル値が(μ−σ)以上になる確率は、μ以上の確率が50%であるから、(68.2/2)+50≒84%であると判断でき、本実施例では、この判断基準に基づいて、後述するスキャン解像度の適正判断と推奨解像度の算出を行う。
【0039】
次に、S202において、図5に示すように、全画像データを水平方向と垂直方向に参照し、白画素の連続数(連続画素数)の平均値μと、その標準偏差σを算出する。また、この際のサンプル数をnとする。
但し、本実施例では、平均値μと標準偏差σを算出する際、所定数(μ+3σ)を越える白の連続画素数については、サンプルとして除外するようにしている。
【0040】
これは、以下の理由によるものである。
すなわち、正規分布曲線において、サンプル値が(μ±3σ)の範囲(3シグマ区間)に入る確率が理論上99.7%になることは、上述した通りである。
この点を考慮し、S202においては、白の連続画素数が(μ+3σ)を越えるサンプルについては、単なる空白領域(例えば、画像の背景)における白の連続画素数であると判断し、このサンプル値を計算から除外するようにしている。これにより、連続画素数の平均値と標準偏差の算出において、不本意なサンプルを取り込んで計算するといった不都合を回避でき、精度の高い算出結果を得ることができる。
【0041】
この具体例を、図6、図7に基づき説明すれば、S201で算出したように、黒の連続画素数の平均値μは、4.0dot、標準偏差σは、1.0dotであるから、
(μ+3σ)=7.0dotとなる。
従って、白の連続画素数の平均値μと標準偏差σを算出する際に、白の連続画素数が7.0dotを越えるサンプルについては除外される。
【0042】
すなわち、白の連続画素数11dot、2dot、6dot、30dotの内の11dotと30dotを除く、2dotと6dotの2つのサンプリング値を用い、黒画素の場合と同様にして、白の連続画素数の平均値μと標準偏差σを計算する。
μ=(2.0+6.0)/2=4.0
μ=((2.0―4.0)+(6.0−4.0))/(2−1)=4.0
σ=√(σ)=2.0(dot)
【0043】
次に、S203において、黒画素と白画素を含めた連続画素数の平均値μと、その標準偏差σを、下式(1)、(2)により算出する。
μ=r×μ+r×μ・・・・・(1)
σ=r×σ+r×σ・・・・・(2)
尚、rは黒画素に対する重み付け、rは白画素に対する重み付けを示し、黒画素のサンプル数をn、白画素のサンプル数をnとすると、重み付けrとrは、下式(3)、(4)で示される。
=n×(n+n)・・・・・(3)
=n×(n+n)・・・・・(4)
【0044】
ここで、上述したS201、S202の具体例によれば、
黒の連続画素数の平均μは、4.0dot、標準偏差σは、1.0dot、サンプル数nは、3であり、また、白の連続画素数の平均μは、4.0dot、標準偏差σは、2.0dot、サンプル数nは、2であるから、式(3)、(4)より
=n×(n+n)=0.6
=n×(n+n)=0.4
となる。
従って、黒画素と白画素を含めた連続画素数の平均値μと標準偏差σは、式(1)、(2)より以下のように算出できる。
μ=r×μ+r×μ=4.0(dot)
σ=r×σ+r×σ=1.4(dot)
【0045】
次に、図10に基づき、図8のS108で述べたスキャン解像度の適正判断と推奨解像度の算出処理について説明する。
【0046】
先ず、S301において、図8のS107にて算出した平均連続画素数μと、その標準偏差σを用い、品質保証下限画素数nを計算する。
品質保証画素数とは、文字や線の画像品質を維持するための、必要最小限の連続画素数のことであり、本実施例では、品質保証下限画素数をn=μ−σとしている。尚、この品質保証下限画素数nの定義は、図9のS201で述べた判断基準に基づくものであり、図9のS203の具体例によれば、平均連続画素数μは、4.0dot、標準偏差σは、1.4dotであるから、
品質保証下限画素数nは、2.6dotとなる。
【0047】
次に、S302において、画像品質の適正性を判断するための閾値となる適正連続画素数tを設定する。
文字や線の画像品質を保証する場合、連続画素数が1ドットの場合は、明らかに画像品質が劣り、少なくとも2〜3dotは必要である。経験上、例えば、連続画素数1ドットの画像に、連続画素数2ドットの画像が繋がるような画像では、画像品質は低下する。そこで、本実施例では、適正連続画素数tを2.5dotとした。
尚、この適正連続画素数については、各種実験に基づいて最適値を決定することが望ましい。
【0048】
次に、S303において、印刷設定格納部101より、ユーザが選択した現在のスキャン解像度R(例えば、150dpi)を取得する。
【0049】
次に、S304において、設定可能なスキャン解像度の集合を配列a[i]とし、昇順で、int a[]={75、100、150、200、300、400、600}(i=0〜6)と定義する。
【0050】
次に、S305において、下式(5)の条件を満たす最小の解像度a[i]を算出する。
n×(a[i]/R)≧t・・・・・(5)
【0051】
〈具体例1〉
品質保証下限画素数nを2.6dot、適正連続画素数tを2.5dot、スキャン解像度Rを150dpi、配列a[i]を{75、100、150、200、300、400、600}とすると、式(5)より、a[i]=150dpi、i=2と算出され、本算出結果より、ユーザが選択したスキャン解像度R=150dpiは、最適解像度であると判断する。
【0052】
〈具体例2〉
また、同じスキャン解像度R=150dpiにて別の原稿をスキャンした結果、品質保証下限画素数nが5.2dotであったとすると、式(5)より、a[i]=75dpi、i=0が算出される。
本算出結果は、スキャン解像度Rを150dpiの半分の75dpiに落としても、品質保証下限画素数n=5.2の半分の値である2.6dotが適正連続画素数t=2.5dotを越えるため、上述した判断基準(連続画素数が84%)は、適正連続画素数tより大きい値になることを保証できることを意味している。
よって、本原稿のスキャンでは、スキャン解像度を75dpiに設定しても良いと判断する。
【0053】
〈具体例3〉
また、同じスキャン解像度R=150dpiにて、さらに別の原稿をスキャンした結果、品質保証下限画素数nが1.3dotであったとすると、式(5)より、a[i]=300dpi、i=4が算出される。
本算出結果は、スキャン解像度を150dpiの2倍の300dipに上げなければ、品質保証下限画素数n=1.3dotの2倍の値である2.6dotが適正連続画素数t=2.5dotを越えないため、連続画素数が84%は、適正連続画素数tより大きい値になることを保証できないことを意味している。
よって、本原稿のスキャンでは、スキャン解像度として300dpiを選択すべきであると判断する。
尚、品質保証下限画素数nが適正連続画素数tより大きくなるための保証範囲を拡大するため、品質保証下限画素数nを、(μ−2σ)、或いは(μ−3σ)として計算することも可能である。因みに、n=(μ−2σ)の場合は97%、n=(μ−3σ)の場合は99%となる。
【0054】
次に、S306において、上述した式(5)による計算の結果、該当するi(すなわち、スキャン解像度)が存在するか否を判断し、該当するiが存在する場合は、S307に進み、S307において、iに基づく最適解像度a[i]を推奨解像度として出力する。
【0055】
上記具体例1〜3の判断結果は、上述したように、図8のS109において、操作パネル300の表示部303に表示される。
S305の〈具体例1〉の場合は、例えば、図4の(a)に示すように、『スキャン解像度、判定の結果、現在選択中の解像度150dpiが最適でした』と表示される。
〈具体例2〉の場合は、例えば、図4の(b)に示すように、『スキャン解像度、判定の結果、解像度が超過しています。75dpiを推奨します』と表示される。
〈具体例3〉の場合は、例えば、図4の(c)に示すように、『スキャン解像度判定の結果、解像度が不足しています。300dpiを推奨します』と表示される。
【0056】
他方、S306で、該当するiが存在しないと判断した場合は、S308へ進み、S308において、装置の設定可能な最大解像度(本実施例では、600dip)にてスキャンしても、適正な画像品質が得られないと判断する。
換言すれば、ユーザがセットした原稿の画像は、装置の最大解像度600dpiにてスキャンしても、一定以上の画像品質が得られない程の繊細な描画であったと判断できる。
この場合は、例えば、図4の(d)に示すように、『スキャン解像度判定の結果、最大解像度にしても画像品質が保証できないような原稿内容でした』と表示される。
【0057】
以上、実施例1によれば、ユーザが設定したスキャン解像度にて原稿を読み取り、得られた画像データの白画素と黒画素について、それぞれの連続画素数を解析して、推奨解像度を決定するようにしたので、ユーザは、スキャン解像度の設定に手間取ることはなく、適正品質の画像データを効率良く取得することができ、利便性に優れる。
特に、表示部にスキャン解像度の解析結果(画像品質情報)が表示されるので、ユーザは、その解析結果より、再度スキャンする必要があるか、或いは、スキャン結果をそのまま使用できるかが、明確に判断できる。
【実施例2】
【0058】
図11は、実施例2によるスキャナ200の構成を示すブロック図である。
本実施例のスキャナ200は、印刷設定格納部201、操作パネル制御部202、画像読取部203、画像格納部204、メモリカード制御部205、画像処理部206等を備える。
【0059】
上記構成の内、画像処理部206を除く、印刷設定格納部201、操作パネル制御部202、画像読取部203、画像格納部204、メモリカード制御部205については、実施例1(図1)の印刷設定格納部101、操作パネル制御部102、画像読取部103、画像格納部104、メモリカード制御部105と同様であり、それらの説明は省略する。
但し、画像読取部203については、実施例1と相違し、モノクロ2値画像データ、グレイスケール画像データ、カラー画像データの何れかを取得するものとする。
【0060】
ここで、カラー画像データは、1画素がR、G、Bの3成分で構成され、各々成分が1バイト(256階調)の多値データで表現される。また、グレイスケール画像データは、1画素が黒の1成分で構成され、1成分が、1バイト(256階調)の多値データで表現される。
【0061】
画像処理部206は、画像格納部204に格納されている画像データを読み込んで、画像解析を行う機能部であり、平均連続画素数解析部207、グレイスケール画像変換部208、2値画像変換部209等を備える。
【0062】
これら、平均連続画素数解析部207、グレイスケール画像変換部208、2値画像変換部209の各機能部は、スキャナ100が搭載するCPU(図示せず)が画像処理用の制御プログラムを実行することにより実現されるもので、グレイスケール画像変換部208は、カラー画像データをグレイスケール画像データに変換する機能部、2値画像変換部209は、グレイスケール画像データをモノクロ2値画像データに変換する機能部である。
また、平均連続画素数解析部207は、画像格納部204より取得した画像データ(モノクロ2値、カラー、グレイスケール)を解析し、白画素および黒画素に対する各々連続画素数を検出すると共に、その平均値と標準偏差を算出する機能部である。尚、カラー、グレイスケールの各画像データについては、2値データに変換した後に画像解析を行う。
【0063】
次に、上記構成のスキャナ200の動作を、図12に基づいて説明する。図12は、スキャナ200の動作を示すフローチャートである。
【0064】
尚、図12のフローチャートにおいて、S401〜S405の処理は、実施例1(図8)のS101〜S105の処理と同様であり、また、後段のS411〜SS15の処理は、実施例1(図8)のS107〜S111の処理と同様であるため、重複処理の説明は省略し、新規の処理S406〜S410についてのみ説明する。
【0065】
S405において、「品質判定を行う」の機能が有効と判定された場合、S406に進み、S406において、画像処理部206は、グレイスケール画像変換部208、2値画像変換部209、平均連続画素数解析部207を起動する。すなわち、CPUが画像処理用の制御プログラムを起動し、以下の処理を実行する。
【0066】
S407において、画像処理部206は、印刷設定格納部201より設定情報を取得し、入力画像がカラーか否かを判定する。入力画像がカラーでない場合はS408に進み、S408において、入力画像がグレイスケールか否かを判定する。そして、入力画像がグレイスケールの場合は、S410に進み、入力画像がグレイスケールでない場合は、S411に進む。
【0067】
また、S407で、入力画像がカラーであると判定された場合は、S409に進み、S409において、グレイスケール画像変換部208は、画像格納部204に格納されている画像データ(RGB値で成るカラー画像データ)をグレイスケール画像データに変換する。
尚、RGB値をグレイスケールに変換するには、RGB値をYCbCrカラー空間に変換し、その輝度成分であるY成分を利用する。RGB値からの変換式を下式(6)に示す。
Y=0.299×R+0.587×G+0.114×B・・・・・(6)
【0068】
次に、S410において、2値画像変換部209は、グレイスケール画像データを更に2値画像データに変換する。本実施例では、2値化の際の閾値を濃度70%に設定し、濃度70%以上を黒画素「1」とし、濃度70%未満を白画素「0」としている。
この閾値70%は、測定結果に基づいて調整しても良い。
【0069】
以上、実施例2によれば、カラー画像データをグレイスケール画像データに変換するグレイスケール画像変換部208と、グレイスケール画像データをモノクロ2値画像データに変換する2値画像変換部209を備えるので、スキャン時に設定されるカラーモードの如何に係わらず、画像解析による推奨解像度の算出が可能であり、実施例1と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、本実施例では、画像形成装置として、本発明の画像読取装置を備えた複合機について説明したが、本発明は、コピー機、FAX等の画像形成装置への適用も勿論可能である。
また、本発明は、複合機のスキャン関連の機能であるScan To USBMemory、Scan To Email、Scan To Server、PC Scan等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
102、202 操作パネル制御部(設定部)
103、203 画像読取部
104、204 画像格納部(格納部)
106、206 画像処理部
100、200 スキャナ(画像読取装置)
209 2値画像変換部(画像変換部)
303 表示部
400 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン解像度を設定する設定部と、
設定された前記スキャン解像度にて原稿を読み取る画像読取部と、
読み取った画像データを格納する格納部と、
前記画像データにおける同一画素の連続数に応じて、前記スキャン解像度に対する推奨解像度を決定する画像処理部とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記画像データにおける同一画素の連続数を解析して、前記スキャン解像度に対する推奨解像度を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、白画素および黒画素に対する各々連続画素数の平均値とその標準偏差より品質保証下限画素数を算出すると共に、当該品質保証下限画素数と所定の閾値との比較により、前記推奨解像度を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
一定数以上連続する白画素については、前記品質保証下限画素数の計算から除外することを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記画像処理部の解析結果に基づき、前記スキャン解像度の適正性に関する画像品質情報を表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記画像品質情報は、前記推奨解像度を含むことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記画像品質情報は、前記推奨解像度と前記スキャン解像度の大小関係の情報を含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
カラー画像データを2値画像データに変換する画像変換部を備えることを特徴とする請求項1から請求項7までの何れかに記載の画像読取装置。
【請求項9】
グレイスケール画像データを2値画像データに変換する画像変換部を備えることを特徴とする請求項1から請求項7までの何れかに記載の画像読取装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までの何れかに記載の画像読取装置と、当該画像読取装置が取得した画像データを印刷するプリンタとを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−245882(P2010−245882A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93127(P2009−93127)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】