説明

画像読取装置

【課題】流し読み原稿読取時の黒筋の発生を防ぐ。
【解決手段】搬送中の原稿の読取中に、光源ユニット23を移動させることによって、位置AとBとの間で、読取位置を副走査方向に同一速度で移動させる。このように読取位置を移動させることによって、黒筋の発生を防止、低減することができる。隣り合う原稿については互いに逆方向に読み取り位置を移動させる。発生する倍率差を補正する変倍部を備える。ユーザの手の届かないところを移動させることで安全性も高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿上の画像から画像データを取得する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動原稿搬送機構を備える画像読取装置において、コンタクトガラスの異物(汚れやゴミ)により、画像データに黒筋が含まれることがある。この黒筋発生を防止するために、これまで種々の提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1では、原稿を搬送しつつコンタクトガラスを移動させている。
【特許文献1】特開2001‐272829号公報(2001年10月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、コンタクトガラスは装置の外側に露出しており、ユーザが触れることのできる部材であるため、コンタクトガラスを移動させることには安全面で問題がある。
【0005】
本発明は、これら従来の課題に鑑み、より安全に、黒筋発生を防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の画像読取装置は、読取位置において主走査ライン上の画像データを取得する読取部と、上記読取部を主走査ラインに直交する副走査方向に平行な方向に移動させる読取位置移動部と、上記副走査方向に、原稿束中の原稿を1枚ずつ移動させる原稿搬送部と、搬送中の上記原稿の画像データを取得中、上記読取位置移動部によって、上記読取部を副走査方向に平行な方向に移動させる読取位置制御部と、を備える。
【0007】
このように、搬送中の原稿読取中に、読取位置を移動させることによって、黒筋の発生が抑えられると共に、黒筋の長さを短くすることができる。また、読取部を移動させることで読取位置を移動させており、ユーザの手が触れる部材を移動させずに済むので、安全性が高い。
【0008】
また、請求項2に記載するように、請求項1の画像読取装置において、上記読取位置制御部は、1枚の原稿についての画像データの取得中は、上記読取位置を同一速度で移動させるようになっていてもよい。
【0009】
また、請求項3に記載するように、請求項1又は2の画像読取装置において、上記読取位置制御部は、複数の連続する原稿に対して、同一方向に上記読取位置を移動させるようになっていてもよい。
【0010】
また、請求項4に記載するように、請求項1又は2の画像読取装置において、上記読取位置制御部は、複数の連続する原稿のうち、互いに隣り合う原稿の一方については上記読取位置を上記搬送方向に対して正方向に移動させ、他方については、逆方向に移動させるようになっていてもよい。
【0011】
また、請求項5に記載するように、請求項4の画像読取装置は、上記一方の原稿から得られた画像を上記搬送方向において縮小する縮小部をさらに備えてもよい。
【0012】
また、請求項6に記載するように、請求項4又は5の画像読取装置は、上記他方の原稿から得られた画像を上記搬送方向において拡大する拡大部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像読取装置は、搬送中の原稿読取中に、読取位置を移動させることによって、黒筋の発生が抑えられると共に、黒筋の長さを短くすることができる。また、読取部を移動させることで読取位置を移動させており、ユーザの手が触れる部材を移動させずに済むので、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
(1)画像読取装置1の構成
図1及び図2を参照して、本発明の実施の一形態である画像読取装置1の構成について説明する。図1は画像読取装置1の要部構成を示す正面図であり、図2は画像読取装置1の要部構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、画像読取装置1は、本体部2と、原稿搬送装置3とを備える。
【0016】
本体部2は、画像読取部20、DF(Document Feeder)用コンタクトガラス21、フラットベッド用コンタクトガラス22を備える。
【0017】
原稿搬送装置3は、本体部2の上方に、本体部2に対して開閉可能に装着される。原稿搬送装置3は、原稿載置トレイ31、原稿排出トレイ32、及び原稿搬送部33を備える。原稿搬送部33は、原稿載置トレイ31上の原稿束から原稿Mを1枚ずつ引き出す給紙ローラ33a、原稿Mを搬送する搬送ローラ33b、搬送中の原稿MをDF用コンタクトガラス21上に導く搬送ガイド33c、読取後の原稿Mを排紙トレイ32に排出する排出ローラ33dを備える。DF用コンタクトガラス21上で、原稿Mは、後述の主走査方向に垂直な方向(副走査方向)に搬送される。
【0018】
本体部2のDF用コンタクトガラス21及びフラットベッド用コンタクトガラス22は、透明のガラス板であり、原稿搬送装置3との対向面に配置される。
【0019】
画像読取部20は、光源ユニット23、ミラー群24、レンズ25、及びイメージセンサ26を備える。
【0020】
光源ユニット23は、光源と、光源からの光をコンタクトガラス21・22へと導くミラー等の光学部材を備える。光源ユニット23は、光源からの光によって、DF用コンタクトガラス21上を通過する原稿M、及びフラットベッド用コンタクトガラス22上に載置された原稿Mを、照明することができる。
【0021】
ミラー群24は、原稿Mからの反射光をレンズ25に導くように配置され、レンズ25はミラー群24からの光をイメージセンサ26に導くように配置される。光源ユニット23からイメージセンサ26に至る光路を点線で示す。ミラー群24等の光学部材は、光源ユニット23からの光によって、原稿Mを主走査方向に1ラインずつ走査することができる。
【0022】
イメージセンサ26は、原稿Mからの反射光をアナログの電気信号に変換することで、1走査ラインずつ、画像データを取得することができる。イメージセンサ26としては、CCD、CMOS等、従来公知のイメージセンサを好適に用いることができる。
【0023】
イメージセンサ26により画像が読み取られる位置、つまり、光源ユニット23からの光により照射される位置を、以下、「読取位置」と称する。
【0024】
光源ユニット23及びミラー群24は、後述の読取位置移動部71によって、原稿の搬送方向(副走査方向)に平行に移動可能である。
【0025】
図2に示すように、画像読取装置1はさらに、A/D変換部41、画像処理回路42、読取位置移動部71、原稿搬送駆動部72、表示部73、IF74、CPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM(Random Access Memory)83等を備える。
【0026】
A/D変換部41は、イメージセンサ26によりアナログの電気信号に変換された1走査ライン分の画像データを、さらにデジタルの多値データに変換し、画像処理回路42に出力する。
【0027】
画像処理回路42は、デジタルの多値データに変換された画像データに、各種画像処理を行う。画像処理回路42は、デジタルズーム処理部421を備える。デジタルズーム処理部421は、画像データをデジタル処理により拡大/縮小することができる。
【0028】
読取位置移動部71は、モータやギア等を備え、光源23及びミラー群24を移動させることで、フラットベッド用コンタクトガラス22の静止原稿の副走査方向における走査を行ったり、原稿搬送中に、読み取り位置を調整したりすることができる。
【0029】
原稿搬送駆動部72は、原稿搬送部33の各種ローラ等を駆動して、原稿搬送を行うことができる。
【0030】
表示部73は、液晶表示パネル等を備え、ユーザに各種画像を提示することができる。
【0031】
IF74は、画像データを図示しない印刷装置、又はその他の外部装置に送信することができる。
【0032】
CPU81は、画像読取装置1内の各部の動作を制御する制御装置として機能する。CPU81は、ROM82内のプログラムを読み出して実行することで、制御装置としての種々の機能を実現する。RAM83は、CPU81の作業領域として機能する。特にCPU81は、読取位置移動部71によって、搬送中の原稿Mに対する読取位置を変更することができる。詳細は次欄に述べる
(2)読取位置制御
図3をさらに参照して、原稿読取中の読取位置制御について説明する。
【0033】
図3に示すように、原稿搬送装置3により搬送中の原稿M上の画像を、DF用コンタクトガラス21を介して読み取る場合、CPU81は、読取中つまり原稿がDF用コンタクトガラス21上を通過中に、読取位置移動部71によって光源ユニット23を副走査方向に移動させることができる。光源ユニット23が移動されることによって、読取位置が移動する。なお、光源ユニット23の移動に伴って、イメージセンサ26に反射光が入射するように、ミラー群24も併せて移動される。
【0034】
こうして、原稿読取中に読取位置が副走査方向に移動されることによって、コンタクトガラス21上の異物等による筋発生を防いだり、筋の長さを低減したりすることができる。
【0035】
また、フラットベッド用コンタクトガラス22を介した読取時にも用いられる読取位置移動部を用いるので、新たに複雑な構成を必要としないという利点もある。
【0036】
読取位置の移動速度は特に限定されないが、一定であることで、得られる画像データの副走査方向における倍率が、1枚の原稿中で一定となる。
【0037】
読取位置制御の具体例を、以下に2つ挙げる。
【0038】
(a)例1
図3に示すように、副走査方向における読取位置の可動範囲が、位置Aから位置Bまでであるとする。本例では、図3の(a)に示すように、原稿読取中は原稿搬送方向に沿って読取位置をAからBへ向けて移動させ、原稿非読取時に、読取位置をAに戻すようになっている。
【0039】
複数の原稿を連続して読み取るときは、複数の原稿を読み取る間、読取位置をAからBに向けて移動させてもよいし、1枚の原稿を読み取る間に読取位置をAからBに向けて移動させ、次の原稿を読む前に読取位置をAに戻してもよい。
【0040】
前者、つまり複数の原稿を読み取る間に読取位置をAに戻すことなくBに向けて移動し続ける場合、原稿と原稿との間で読取位置を位置Aに戻す時間が必要ないので、全ての原稿を読み終わるまでの時間が比較的短くて済む。
【0041】
また、後者、つまり1枚読む毎に読取位置をAに戻す場合は、1枚の原稿が通過する間に読取位置を全可動範囲(AからBまで)に渡って移動させることができるので、読取位置の移動速度を比較的大きくすることができる。その結果、黒筋をより短くすることができる。
【0042】
いずれの場合であっても、読取位置を移動させることで、読取位置を静止させているときと比較して、原稿読取位置に対する原稿の相対的な移動速度が変化する。よって、原稿搬送速度及び主走査方向の走査速度を読取位置が静止している状態と同じとすると、同一の原稿であっても、得られる画像は副走査方向において大きくなる。
【0043】
そこで、主走査及び副走査のタイミング、つまり主走査方向の走査速度及び原稿搬送速度を適宜調整することで、等倍の画像データを得ることができる。例えば、主走査方向の走査速度を読取位置が静止している場合と同一にするのであれば、原稿搬送速度と読取位置の移動速度との差分が、読取位置が静止しているときと同等になるように、原稿搬送速度を速めてもよい。また、原稿搬送速度を読取位置が静止している場合と同一にするのであれば、主走査方向の走査速度を遅くしてもよい。また、原稿搬送速度と主走査方向の走査速度の両方を調整してもよい。
【0044】
(b)例2
他の例として、図3の(b)に示すように、奇数頁の原稿と偶数頁の原稿とで、読取位置の移動方向を変えてもよい。本例では、奇数頁では原稿搬送方向と同方向、つまり位置AからBに向けて読取位置を移動させ、偶数頁では逆方向、つまり位置BからAに向けて読取位置を移動させている。奇数頁と偶数頁とで、移動速度の絶対値は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
この場合、奇数頁と偶数頁とで、読取位置に対する原稿の相対的な移動速度が異なるので、奇数頁と偶数頁とでは副走査方向の倍率が異なる画像データが得られることになる。
【0046】
そこで、等倍の画像が得られるように、デジタルズーム処理部421によるデジタルズーム処理を行う。デジタルズーム処理を利用することで、奇数頁と偶数頁とで原稿搬送速度又は主走査方向の走査速度を切り替えるよりも、制御及び装置を構成することが容易となる。
【0047】
例えば、読取位置が固定されており、原稿搬送速度がVであるときの画像を基準とし、奇数頁についての読取位置の移動速度をkV(0<k<1)とすると、奇数頁の読取位置に対する相対移動速度は(1−k)×Vとなる。そこで、奇数頁については、デジタルズーム処理部421は、副走査方向に(1−k)倍のデジタルズーム処理を行えば、等倍画像が得られる。
【0048】
一方、偶数頁についての読取位置の移動速度が、奇数頁と同一(向きは逆)とすると、相対移動速度は(1+k)×Vとなる。よって、偶数頁については、デジタルズーム処理部421は、副走査方向に(1+k)倍のデジタルズーム処理を行えばよい。
【0049】
また、装置によっては、デジタル拡大処理をおこなうとパフォーマンスが悪化することがある。そのような場合には、偶数頁の相対移動速度(1+k)Vにおいて等倍画像が得られるように、原稿搬送速度及び主走査方向の走査速度が設定されていればよい。そして、奇数頁については、デジタルズーム処理部421が副走査方向に(1−k)/(1+k)倍のデジタル縮小を行うことで、等倍画像が得られる。
【0050】
なお、読取位置の移動速度は、1枚の原稿の先端が読取位置に入ってから後端が通過するまでにかかる時間中の移動距離がA−B間の距離以下であるように設定される。例えば、原稿搬送装置が搬送可能な原稿の最大サイズに合わせて、読取位置の移動速度が設定されていてもよいし、原稿のサイズを検知するセンサを設けて、原稿が読取位置に達する前に原稿の副走査方向の大きさを検知し、これに基づいて移動速度が設定されるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】画像読取装置1の要部構成を示す正面図。
【図2】画像読取装置1の要部構成を示すブロック図。
【図3】黒筋検知の判断対象となる走査ラインA〜Cの位置を示す図面。
【符号の説明】
【0052】
1 画像読取装置
20 画像読取部
3 原稿搬送装置
5 黒筋検出部
6 画像補正部
73 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取位置において主走査ライン上の画像データを取得する読取部と、
上記読取部を主走査ラインに直交する副走査方向に平行な方向に移動させる読取位置移動部と、
原稿束中の原稿を1枚ずつ上記副走査方向に移動させる原稿搬送部と、
搬送中の上記原稿の画像データを取得中、上記読取位置移動部によって、上記読取部を副走査方向に平行な方向に移動させる読取位置制御部と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
上記読取位置制御部は、1枚の原稿についての画像データの取得中は、上記読取位置を同一速度で移動させるようになっている、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記読取位置制御部は、複数の連続する原稿に対して、同一方向に上記読取位置を移動させるようになっている、
請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記読取位置制御部は、複数の連続する原稿のうち、互いに隣り合う原稿の一方については上記読取位置を上記搬送方向に対して正方向に移動させ、他方については逆方向に移動させるようになっている、
請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
上記一方の原稿から得られた画像を上記搬送方向において縮小する縮小部をさらに備える、
請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
上記他方の原稿から得られた画像を上記搬送方向において拡大する拡大部をさらに備える、
請求項4又は5に記載の画像読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−267499(P2009−267499A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111454(P2008−111454)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】