説明

画像読取装置

【課題】キャリッジの副走査位置を精度よく検出する。
【解決手段】画像読取装置(スキャナ13)は、原稿を光学的に読み取った画像情報を光電変換するCCD9と、CCD9を原稿に対して副走査方向に移動させるキャリッジ6と、原稿読取領域外の主走査方向の端部(図中の符号32)に、副走査方向の絶対位置に応じて光学的属性が変化する部材33と、前記部材の画像を前記イメージセンサにより読み取って得られた画像データに基づいて前記キャリッジの位置を検出する位置検出回路70と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関し、特に、画像読取部に走行体を有し、走行体を駆動することにより画像を読み取る画像読取装置に関し、特にステッピングモータで駆動制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリッジの位置と移動方向を検出する従来の技術として、一般的に特許文献1のようにリニアスケールやエンコーダ等に代表される精密部品のセンサを装着して直線状の位置情報と、複数の信号の位相差から回転方向を検出する方法が公知となっている。小型のリニアスケールは光学式であり、ガラス状の板に設けられた微細な光学パターンを読み取って位置測定を行う原理のため、内部構造が複雑な精密部品である。それ故、製作時に高度な光学技術と薄膜形成、実装技術を要することからセンサとしては高価であり、ガラス状の透明板を用いる構造のため衝撃に弱いことから搬送や装置の組付時に注意を要するため、装置の組立生産性と保守サービスの向上を阻害させるといった欠点を持っている。
【0003】
特許文献1には、リニアスケールに新たな規定の光学パターンを設けて信号を発生させることで、原点と減速開始の位置検出をする技術が記載されている。しかしながら、リニアスケール自体に光学パターンを追加しているので従来技術に係る部品より高価な部品となり、規定された以外の場所では信号を発生しないので現在位置を検知することはできず、原点位置から遠く離れたところに位置している場合には対応できない問題がある。
【0004】
上記リニアスケールやエンコーダ等の専用部品を用いず、ステッピングモータ駆動の異常を検知する手段の従来技術としては、特許文献2のようにパルス数を比較したり、特許文献3のように装置の筐体に白黒交互に並べたビットパターンを形成したりする例がある。
【0005】
特許文献2には、ホームポジション帰還時にステッピングモータの駆動パルス数を画像読取装置の内部でカウントするパルス積算手段を設け、往路時のパルス数設定値とホームポジションのセンサがONするまでのパルスカウント値とを比較し、比較した結果が許容範囲を逸脱しているとステッピングモータの脱調を検出する技術が記載されている。しかしながら、特許文献2には、装置内部の駆動パルスを用いて往路(原稿読取中)での設定値と比較しているので、装置が原稿読取を開始してホームポジションに帰還するまでの間は対処できない問題がある。
【0006】
特許文献3には、主走査方向の端部に一定間隔の白黒マークが形成されており、これを読取原稿と共に画像読取装置で読取走査する。読取走査の速度が変化すると白黒マークの読取間隔も変動するので、これを監視することでステッピングモータの脱調を検出する。しかしながら、特許文献3には、マークを副走査方向に一列だけ並べているので回転方向の検出ができない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の課題は、キャリッジ(走行体)の副走査位置を精度よく検出できていないことにある。
【0008】
そこで本発明は、上記実情に鑑みて、キャリッジの副走査位置を精度よく検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像読取装置は、原稿を光学的に読み取った画像情報を光電変換するイメージセンサと、前記イメージセンサを原稿に対して副走査方向に移動させるキャリッジと、原稿読取領域外の主走査方向の端部に、副走査方向の絶対位置に応じて光学的属性が変化する部材と、前記部材の画像を前記イメージセンサにより読み取って得られた画像データに基づいて前記キャリッジの位置を検出する位置検出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャリッジの副走査位置を精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用しうる画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の読取部12の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1の読取部12の駆動パターンを説明するための概念図である。
【図4】図1のスキャナ13の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4のステッピングモータ63の駆動制御を行うモータ駆動制御回路502の構成を説明するための図である。
【図6】図4の原稿を照明する光源2の点灯駆動制御を行う光源駆動制御回路504の構成を説明するための図である。
【図7】図1のスキャナ13の初期化動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図9】図8の濃度板又は濃度チャート33の特性を説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の構成を示す図である。
【図11】図10のマーク部材34の特性を説明するための図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の機能構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施形態において、図8の構成の場合の動作を説明するための図である。
【図14】本発明の第3の実施形態において、図10の構成の場合の動作を説明するための図である。
【図15】本発明の第4の実施形態の機能構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施形態において、図8の構成の場合の動作を説明するための図である。
【図17】本発明の第4の実施形態において、図10の構成の場合の動作を説明するための図である。
【図18】図15のモータ速度設定部57の構成を説明するための図である。
【図19】本発明の第4の実施形態の初期化動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適に実施した一形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
まず、本発明を適用しうる画像読取装置について説明する。
【0014】
従来より原稿等の画像情報を副走査方向にライン走査し、その画像情報を読取手段としての光電変換手段(CCD)のセンサ面上に結像させ、該光電変換手段から得られる出力信号を利用して、該原稿等の画像情報を読み取るようした画像読取装置が種々と提案されている。図1は、本発明を適用しうる画像読取装置に係るスキャナ13の概略構成を示す図である。
【0015】
図1に示すスキャナ13は、読取部12と、この読取部12の上部に取り付けられたADF(オート・ドキュメント・フィーダ)20を有している。ADF20の構成については当業者によく知られており、本発明の要部ではないため、説明を省略する。
【0016】
読取部12には、原稿台として原稿を載置するコンタクトガラス1と、原稿露光用の照明ランプ2(以下、「光源2」と呼ぶ)と第1反射ミラー3とからなる第1キャリッジ6と、第2反射ミラー4及び第3反射ミラー5からなる第2キャリッジ7と、CCDリニアイメージセンサ9(以後CCD)に結像するためのレンズユニット8と、CCD9を搭載するセンサーボード10と、読み取り光学系等による各種の歪みを補正するためと白レベルを調整するための白基準板32から構成される。コンタクトガラス1に原稿を載置固定して読み取る場合には、第1キャリッジ6が一定の速度で往動(矢印A方向)し、かつ、第2キャリッジ7が第1キャリッジ6の1/2の速度で第1キャリッジ6に追従して往動することにより、コンタクトガラス1上の原稿が光学的に走査される。原稿の読み取り終了後、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、位置Yが、第1キャリッジ6のホームポジション(待機位置)である。なお、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を移動するために図示しないモータ駆動系も読取部12に有している。
【0017】
図2は読取部12の概略構成を示す斜視図である。
【0018】
第1キャリッジ6は、その両端部が2本の対称に張られたワイヤ61に固定されワイヤ61の移動と共に往復移動可能にされており、かつ、第2キャリッジ7はその両端部に第1キャリッジが固定されたワイヤ61が掛け渡されるとともに、それと逆向きには掛け渡されたワイヤ61が掛け渡されたプーリが設けられている。駆動軸67の一端にはタイミングベルトプーリ65が設けられており、モータ63との間にタイミングベルト62が掛け渡されている。以上の構成において、電源スイッチをONにすると、ホーミングのためにステッピングモータ63が始動し、タイミングベルト62を介してその駆動力がタイミングベルトプーリ65に伝達され、かつタイミングベルトプーリ65と一体の駆動軸67がステッピングモータの回転方向に回転する。また、それに伴ってワイヤは移動し、ワイヤ61に固定された第1キャリッジ6はフォワード方向に移動する。第2キャリッジ7は第1キャリッジ6の半分の速度で同方向に移動する。各キャリッジ6,7が一定距離だけ移動するとステッピングモータ63は逆転(リターン)を開始し、第1キャリッジにある検出部66がホームポジションセンサ60内に入ったことを検知し、後述するモータ駆動制御手段により検知後所定距離を移動した時点で停止する。この停止した位置がホームポジションとなり、このホームポジション(待機位置)に第1キャリッジ6を停止させる制御をホーミングと称する。
【0019】
図3は読取部12の駆動パターンを説明するための図である。図3は読取部12の走行制御に用いる代表的な速度線図(スキャナ駆動の基本的な駆動パターン)を示す。
【0020】
ステッピングモータ63は図示の速度線図に従って駆動制御され、原稿の読取は、図示のようにスローアップ動作を経て一定速度で走行させるフォワード期間に行い、この間に原稿の先端から後端まで読み取るので、この間は一番速度を安定させなければならない。原稿の読み取りが完了すると、リターン工程へと移りステッピングモータ63は逆転を開始する。できるだけ短い時間で戻すため、第1キャリッジ6を高速で移動させ、第2のキャリッジ7はその半分の速度で高速リターンさせる。リターン側移動距離はフォワード側で移動した距離分戻ればホームポジション位置に戻ることになる。
【0021】
スキャナ13の機能構成(画像読取装置のシステム構成)について、図4を用いて説明する。
【0022】
CCD9は、RGBのフィルタを被せたCCDセンサが、3列並んでいるカラー3ラインCCDとする。アナログ処理回路43では、CCD9から出力されるアナログ波形の信号部分をサンプリングするとともにアンプを内蔵して信号のゲインを調整する。A/Dコンバータ44では、R、G、B各色のアナログ画像信号を8ビットのカラーデジタル画像情報として画像処理部41に出力する。3ラインCCD9の場合にCCD9から出力される信号は、等倍時4ライン間隔の位置ズレが存在する。すなわち、R−B間では、8ラインの位置ズレが存在しており、ライン間補正部45では、CCDのRGB毎の読取ラインのずれを補正し、読み取った画像の位置合わせを行う。黒補正46では、画像データに加算されているオフセットデータを減算する。シェーディング補正部47において、光学系の濃度ムラ、CCD9の感度バラツキなどの画素毎の出力データばらつきの補正を各RGB信号に対して行う。
【0023】
各RGB信号にはさらにその他の補正処理を行ってもよい。
また、図示のように、読取部12は、各キャリッジを駆動させるためのステッピングモータ63と、光源2を備える。また、スキャナ13は、外部インターフェース60による制御信号等に基づいてステッピングモータ63と光源2の動作を制御する制御部50を有する。制御部50は、ステッピングモータ63の動作を制御するモータ制御部501とモータ駆動制御回路502と、光源2の動作を制御する光源制御部503と光源駆動制御回路504と、を備える。
【0024】
図5はステッピングモータ63の駆動制御を行うモータ駆動制御回路502の構成を説明するための図である。
【0025】
ステッピングモータは制御部50のモータ制御部501からモータ駆動制御回路502にモータ駆動クロック、モータ回転方向の正逆転信号、ステッピングモータ63の各相に流れる駆動電流の切替信号、マイクロステップ駆動(モータ回転角の電気的な分割)を制御する分割数切替信号(励磁設定信号)が入力され、これらに基づいてステッピングモータの各相に流れる駆動電流を制御し、ステッピングモータ63の駆動制御を行う。例えば、モータ回転角の分割数が同じ状態においては、ステッピングモータ63の相切替タイミングは駆動クロック周波数が高いとステッピングモータ63の回転は速くなり、低いと遅くなる。また、モータ回転角の分割数が小さくなるとモータ1回転当たりのキャリッジの移動量が大きくなるので、キャリッジの移動速度を変えない場合には、駆動クロック周波数を低くする。このように駆動クロック周波数を制御することによりステッピングモータ63、したがってキャリッジの多種多様なスローアップ及びスローダウンが可能となる。つまり、駆動電流はスローアップ、スローダウン、読取動作時、リターン時、待機時などの状態により切替制御され、かつステッピングモータ63の位置は駆動クロック数で制御することができる。
【0026】
図6は原稿を照明する光源2の点灯駆動制御を行う光源駆動制御回路504の構成を説明するための図である。
【0027】
光源2は制御部50の光源制御部503から光源駆動制御回路504に光源駆動クロック、光源点灯信号が入力され、これらに基づいて光源を点灯駆動させ、消費する電力の制御を行う。
【0028】
以上が、スキャナ13の各部の概略構成である。ところで、スキャナ13は、以上に説明したような動作を行う一方で、電源投入時や異常発生後の自動復帰時に装置の初期化動作を行っている。
【0029】
初期化動作の処理では、読取部12において、ホーミング(キャリッジのイニシャライズ処理)、読取画像の信号処理特性の調整が行われる。読取画像の信号処理特性の調整では、画像の光電変換を行うイメージセンサ(通常、CCDリニアイメージセンサ)のアナログ信号処理部の処理特性を調整することにより、出力レベルの一定化を図っている。この調整は、光源の劣化や環境の変動を考慮して行われるもので、このアナログ信号処理部の調整は、黒レベル調整及び白レベル調整からなり、黒レベル調整は、読み取った黒レベル信号を目標値に調整し、白レベル調整は光源で照明された白基準板を読み取った白レベル信号(通常、ピーク値による)を目標値に調整する。
【0030】
図7はスキャナ13の初期化動作の流れを示すフローチャートである。
【0031】
まず、初期値設定を行う(S101)。初期値設定は、スキャナ部の読取走査や読取画像信号の処理に必要な初期値を各回路に設定する。次いで、ホーミングを行う(S102)。ホーミングは、読み取り部を搭載したキャリッジをスキャン制御の基準となるホームポジションに位置付ける(メカ原点を決定する)操作である。この位置が待機状態でのキャリッジの位置になるため、待機位置と称する。この後、黒レベル及び白レベル調整を行うための動作を開始する。CCD9は常時、読み取った画像を光電変換し画像信号出力を行っているので、白基準板11(基準白板)を読みに行くまでの適当な時間に、CCD9の一部に設けたOPB(Optical Black)部、即ち外光を遮断した画素部分からの画像信号出力を読み取ることにより黒レベルを検出し、黒レベル調整を行う。光源2(照明ランプ2)を点灯し(S103)、ホームポジションから基準白板を読みにいくためにキャリッジを移動させる(S104)。基準白板を読み取った白レベル画像信号から白レベルを目標値にするための調整値を決定し、その値をアナログ処理回路のアンプのゲインを調整する値として設定する。この時フィードバックループ動作を繰り返して調整値を求める(S105)。調整処理を終了した後、光源2を消灯し(S106)、キャリッジをスタンバイ位置に移動させ(S107)、シーケンスを終了する。
【0032】
上述した画像読取装置において、ステッピングモータの駆動制御中にモータ制御信号の信号ポートが故障した場合、実際のキャリッジの位置と回転方向を外部で検出する手段がないので本来の設定と判別する事が困難であり、駆動中に異常として検知できない。原稿読取の往路移動時で生じるとキャリッジが装置の筐体に衝突したり、画像データに不良が出たりする可能性がある。
【0033】
また、原稿読取中に異常が生じた場合、復帰を試みるためにユーザが電源をOFFして再投入したり、装置の自動復帰処理が実行されたりすると装置の初期化動作が行われるが、キャリッジの現在位置を検出する手段がなくホームポジションまで戻す距離がわからないため、スローアップ及びスローダウンによる高速駆動ができずにステッピングモータの自起動領域内の低速駆動となり、異常でキャリッジがホームポジションから外れた位置で停止していると、装置が立ち上るまでの待ち時間が長くなり、ユーザに不快感を与えるといった課題がある。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係る画像読取装置について説明する。本発明の実施形態に係る画像読取装置は、前述した図1、図2の構成に準じる。原稿を光学的に読み取った画像情報を光電変換するイメージセンサと、原稿を照明する光源と光源の点灯を駆動制御する装置と、原稿に対して副走査方向にキャリッジを移動するステッピングモータとモータの駆動を制御する装置を搭載し、キャリッジを往復運動させる際、前記ステッピングモータの駆動クロック周波数を回転分解能と速度の設定に応じて設定する駆動制御手段を有する。
【0035】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の構成及び動作について、図8と図9を参照して説明する。
【0036】
本実施形態に係る画像読取装置の主走査方向の読取範囲は原稿の画像品質を満足するために実際の原稿サイズより広くとられ、原稿読取領域外の範囲も読み取る事が可能である。本実施形態に係る画像読取装置(スキャナ13)の読取部12は、図8に示すように、原稿読取領域外32の主走査方向の端部に濃度板又は濃度チャート33が配置されている。濃度板又は濃度チャート33は、図9に示すように、第1キャリッジ6の副走査方向の絶対位置(以下、副走査位置)によってCCD9に入射される反射光の強度が比例して大きくなる特性を備えている。
【0037】
本実施形態のシステム構成としては、図12又は図15に記載のシステム構成を用いることができる。図12又は図15に示す構成の、より詳細な説明は、第3,第4の実施形態に記載し、ここでは本実施形態に関連する部分を主に説明する。
【0038】
図12又は図15に示すように、CCD9に入射された反射光は光電変換されてアナログ信号波形となり、アナログ処理回路43に入力される。アナログ処理回路43では、CCD9から出力されるアナログ波形の信号部分をサンプリングするとともにアンプを内蔵して信号のゲインを調整する。A/Dコンバータ44では、R、G、B各色のアナログ画像信号を8ビットのカラーデジタル画像情報として画像処理部41に出力する。3ラインCCD9の場合にCCD9から出力される信号は、等倍時4ライン間隔の位置ズレが存在する。すなわち、R−B間では、8ラインの位置ズレが存在しており、ライン間補正部45では、CCD9のRGB毎の読取ラインのずれを補正し、読み取った画像の位置合わせを行う。黒補正46では、画像データに加算されているオフセットデータを減算する。シェーディング補正部47において、光学系の濃度ムラ、CCD9の感度バラツキなどの画素毎の出力データばらつきの補正を各RGB信号に対して行う。
【0039】
読取走査を実行すると、図9の特性に従い、第1キャリッジ6が副走査方向に移動するにつれて、濃度板又は濃度チャート33に反射してCCD9に入射される光の強度が大きくなるので、シェーディング補正後に得られる画像データ出力のレベルは比例して高くなる。即ち、第1キャリッジ6が移動すると画像データ出力のレベルが変化するので、そのときのレベルで第1キャリッジ6の副走査位置を検出する事が可能となり、従来技術のリニアスケールやエンコーダ等の専用部品を用いずに移動しながら第1キャリッジ6の位置を得る事ができる。
【0040】
上記より、第1キャリッジ6の位置を知る事ができるので、実際の第1キャリッジ6の移動速度と移動方向を検出する事が可能となる。制御内部での監視に加えて、制御外部からキャリッジの移動速度と移動方向状態を監視する事ができるため、本来の設定と判別する事が困難なケースの脱調や信号ポート故障時などの異常発生を検知する事が可能となり、ステッピングモータ63の駆動制御における異常検知を強化する事ができる。
【0041】
一方で、第1キャリッジ6の位置を得る事ができると、ホームポジションまで戻す距離がわかるため、ホーミング帰還移動時の速度を従来の低速よりも速いスローアップ及びスルーダウンによる高速設定にする事が可能となる。原稿読取中に発生した異常からの復帰時にキャリッジがホームポジションから外れた位置で停止している場合には、装置が立ち上るまでの待ち時間を大幅に短縮する事が可能となるため、ユーザの不快感を軽減させる事ができる。さらに、ホーミング帰還移動時の待ち時間が短縮できるという事は、ステッピングモータ63の稼働時間の短縮につながるため、稼動時消費電力を低減することが可能となり、環境への配慮という点で有利である。
【0042】
また、マーク又は模様で形成された部材を用いるため複雑な内部構造をもたず耐衝撃性に優れ、既存のイメージセンサを使うことになるのでコストを抑える事が可能となる。
【0043】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の構成及び動作を、図10と図11を参照して説明する。
【0044】
画像読取装置の主走査方向の読取範囲は原稿の画像品質を満足するために実際の原稿サイズより広くとられ、原稿読取領域外の範囲も読み取る事が可能である。図10の読取部12において、原稿読取領域外32の主走査方向の端部に、マーク部材34を配置する。マーク部材34は、図11に示すように、第1キャリッジ6の副走査方向の絶対位置(以下、副走査位置)によってCCD9に入射される反射光の変化する範囲が比例して大きくなる特性を備えている。
【0045】
図12又は図15に示すように、CCD9に入射された反射光は光電変換されてアナログ信号波形となり、以降の処理については、シェーディング補正の処理まで前述した通りである。
【0046】
読取走査を実行すると、図11の特性に従い、第1キャリッジ6が副走査方向に移動するにつれて、マーク部材34に反射してCCD9に入射される強度が低い光量の範囲が大きくなっていくので、シェーディング補正後に得られる画像データ出力の主走査方向に変化する範囲は比例して大きくなる。即ち、第1キャリッジ6が移動すると画像データ出力の主走査方向に変化する範囲が変化するので、そのときの範囲幅で第1キャリッジ6の副走査位置を検出する事が可能となり、従来技術のリニアスケールやエンコーダ等の専用部品を用いずに移動しながら第1キャリッジ6の現在位置を得る事ができる。
【0047】
上記より、第1キャリッジ6の現在位置を知る事ができるので、前述したようにモータ駆動制御の異常検知の強化と装置初期化時の待ち時間短縮が可能となる。
【0048】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、上記第1,第2の実施形態に係る画像読取装置において、キャリッジの副走査位置をイメージセンサからの出力で得た画像データの主走査方向に変化する範囲によって検出することを実現する。本実施形態のシステム構成は図12に示されている。
【0049】
図12に示すように、CCD9に入射された反射光は光電変換されてアナログ信号波形となり、以降の処理については、シェーディング補正の処理まで前述した通りである。画像処理部41でライン間補正45、黒補正46、シェーディング補正47の処理を施された画像データは位置検出回路70に入力される。
【0050】
図8の装置構成においては、位置検出回路70には図13に示すように画像データの出力を副走査位置に変換処理する機能を有し、位置検出回路70に入力された画像データはモータ駆動クロックの立ち上がり(又は立ち下がり)に同期するタイミングで検出され、検出された画像データの出力は相対する副走査位置に変換される。
【0051】
また、図10の装置構成においては、図8の構成時と同様、位置検出回路70には図14に示すように画像データの主走査方向の変化幅を副走査位置に変換処理する機能を有し、位置検出回路70に入力された画像データはモータ駆動クロックの立ち上がり(又は立ち下がり)に同期するタイミングで検出され、検出された画像データの主走査方向の変化幅は相対する副走査位置に変換される。
【0052】
モータ駆動クロックはステッピングモータの回転分解能と速度の設定に応じて設定されるため、原稿読取の倍率・解像度の設定や規定の動作によって切り替わる等ステッピングモータの駆動制御のパターンが複数ある場合には、タイマカウンタを追加するよりもシンプルに副走査位置を検出する事が可能となる。
【0053】
位置検出回路70で得られた副走査位置のデータはメモリ71に格納され、また移動距離演算部72にも入力される。
【0054】
移動距離演算部72では、現在から1クロック前の副走査位置のデータをメモリ71から読み出し、現在の副走査位置のデータとの差分から移動距離を求める。求めた移動距離はモータ(加)速度検出部51とモータ回転方向検出部53に入力される。
【0055】
モータ(加)速度検出部51では、図13に記載のように、移動距離をモータ駆動クロックの周期時間で割算する事で現在の速度を検出することができる。さらに、現在から1クロック前の速度との差分から速度変化がわかるので、モータ駆動クロックの周期時間で割算する事で加速度を検出することができる。検出された速度と加速度は各々比較回路52に入力され、制御部50内部の設定値と比較される。比較した結果を異常判定部に55に入力する。
【0056】
モータ回転方向検出部53では、図13に記載のように、移動距離の値が正のときキャリッジ6、7はフォワード方向に、負のときはリターン方向に移動している事がわかるので、回転方向を検出することができる。検出された回転方向は比較回路54に入力され、制御部50内部の設定方向と比較される。比較した結果は異常判定部55に入力する。異常判定部55では、比較結果が許容値範囲を逸脱していると異常と判定してモータ制御部の動作を停止し、外部インターフェース60を介して上位のシステムに異常通知する。
【0057】
上記より、ステッピングモータの駆動制御の内容に適応したキャリッジ6、7の速度及び加速度と回転方向を検出する事ができるので、設定値との比較でモータ駆動の異常判定が可能となる。即ち、前述したようにモータ駆動制御の異常検知の強化が可能となる。
【0058】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、上記第1,第2の実施形態に係る画像読取装置において、装置初期化時にキャリッジの現在位置を検出し、ホーミング(帰還移動)動作の高速化を実現する。本実施形態のシステム構成は図15に示されている。
【0059】
図15に示すように、CCD9に入射された反射光は光電変換されてアナログ信号波形となり、以降の処理については、シェーディング補正の処理まで前述した通りである。画像処理部41でライン間補正45、黒補正46、シェーディング補正47の処理を施された画像データは位置検出回路70に入力される。
【0060】
図8の装置構成においては、位置検出回路70には図16に示すように画像データの出力を副走査位置に変換処理する機能を有し、位置検出回路70に入力された画像データは光源点灯信号の立ち下がり(又は立ち上がり)に同期するタイミングで検出され、検出された画像データの出力は相対する副走査位置に変換される。
【0061】
また、図10の装置構成においては、図8の構成時と同様、位置検出回路70には図14に示すように画像データの主走査方向の変化幅を相対する副走査位置に変換処理する機能を有し、位置検出回路70に入力された画像データは光源点灯信号の立ち下がり(又は立ち上がり)に同期するタイミングで検出され、検出された画像データの主走査方向の変化幅は相対する副走査位置に変換される。
【0062】
位置検出回路70で得られた副走査位置のデータはホーミング距離演算部73に入力される。
【0063】
ホーミング距離演算部73はホーミング動作の帰還移動時に通常の低速駆動を開始する位置(減速開始位置)の設定データを有し、現在の副走査位置のデータとの差分で距離を求める。求めた距離は比較回路56に入力され、高速駆動が可能な移動量の設定データと比較される。比較した結果をモータ速度設定部57に入力する。モータ速度設定部57では、比較結果が所定の移動量を超えていると、ホーミング帰還移動時の高速駆動が可能と判定し、図18のように減速開始位置までは高速な駆動制御の運転パターンに設定し、モータ制御部に反映する。そのとき、ホーミング距離演算部73で求めた距離はステッピングモータの移動パルス数に変換され移動量として設定される。比較結果が超えていない場合には、高速駆動に必要な移動量が確保できないと判定されるので、モータ制御部では通常の低速駆動の設定が維持される。
【0064】
図19は本実施形態に係る装置の初期化動作の流れを示すフローチャートである。図7と共通する処理には同じ符号を振る。
【0065】
まず、初期値設定を行う(S101)。初期値設定は、スキャナ部の読取走査や読取画像信号の処理に必要な初期値を各回路に設定する。その際には、前回の初期化処理時に得られた調整(S105)の結果が反映されている。次いで、光源2を点灯し(S201)、位置検出回路70に入力されたランプ点灯信号に同期したタイミングで原稿読取領域外の画像データを取得し、得られた画像データからキャリッジの副走査位置を検出する(S202)。
【0066】
キャリッジの位置検出処理を終了した後、ランプを消灯する(S203)。検出した副走査位置から減速開始位置までの差分演算処理により距離を求める(S204)。求めた距離は高速駆動が可能な移動量の設定値と比較され(S205)、超えていれば減速開始位置までホーミング帰還移動時の速度を通常よりも高速化した駆動制御に設定(S206)、超えていなければ通常の低速駆動の設定でホーミング動作を実行する(S102)。ホーミングは、読み取り部を搭載したキャリッジをスキャン制御の基準となるホームポジションに位置付ける(メカ原点を決定する)操作である。この位置が待機状態でのキャリッジの位置になるため、待機位置と称する。
【0067】
この後、黒レベル及び白レベル調整を行うための動作を開始する。CCDは常時、読み取った画像を光電変換し画像信号出力を行っているので、基準白板を読みに行くまでの適当な時間に、CCDの一部に設けたOPB(Optical Black)部、即ち外光を遮断した画素部分からの画像信号出力を読み取ることにより黒レベルを検出し、黒レベル調整を行う。ランプを点灯し(S103)、ホームポジションから基準白板を読みに行くためにキャリッジを移動させる(S104)。基準白板を読み取った白レベル画像信号から白レベルを目標値にするための調整値を決定し、その値をアナログ処理回路のアンプのゲインを調整する値として設定する。この時フィードバックループ動作を繰り返して調整値を求める(S105)。ここで、得られた調整結果の内容は初期設定に反映される。調整処理を終了した後、ランプを消灯し(S106)、キャリッジをスタンバイ位置に移動させ(S107)、シーケンスを終了する。
【0068】
上記より、装置の初期化時にキャリッジ6、7の現在位置を検出する事ができるので、設定値との比較でホーミング帰還移動時の高速駆動が可能となる。即ち、前述したように装置初期化時の待ち時間短縮が可能となる。
【0069】
なお、上述した各実施形態の構成は、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 コンタクトガラス
2 光源(照明用ランプ)
6 第1キャリッジ
7 第2キャリッジ
9 CCD(ライン型CCDセンサ)
10 センサーボード
12 読取部(スキャナ)
32 原稿読取領域外
33 濃度板又は濃度チャート
34 マーク部材
43 アナログ処理回路
50 制御部
501 モータ制御部
502 モータ駆動制御回路
503 光源制御部
504 光源駆動制御回路
51 モータ(加)速度検出部
53 モータ回転方向検出部
52,54,56 比較回路
55 異常判定部
57 モータ速度設定部
63 モータ(ステッピングモータ)
70 位置検出回路
71 メモリ
72 移動距離演算部
73 ホーミング距離演算部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開平02−39208号公報
【特許文献2】特開平09−102850号公報
【特許文献3】特開平04−336854号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を光学的に読み取った画像情報を光電変換するイメージセンサと、
前記イメージセンサを原稿に対して副走査方向に移動させるキャリッジと、
原稿読取領域外の主走査方向の端部に、副走査方向の絶対位置に応じて光学的属性が変化する部材と、
前記部材の画像を前記イメージセンサにより読み取って得られた画像データに基づいて前記キャリッジの位置を検出する位置検出手段と、
を備えることを特徴とする、画像読取装置。
【請求項2】
前記部材は、副走査位置に応じて反射光が同一方向に増加又は減少する特性を備える濃度板又は濃度チャートであることを特徴とする、請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記部材は、副走査位置に応じて形状が変化して反射光の変化する範囲が同一方向に増加又は減少する特性を備えるマークであることを特徴とする、請求項1又は2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記キャリッジを駆動させるステッピングモータと、
前記位置検出手段が前記ステッピングモータの駆動クロック信号に同期して前記キャリッジの副走査位置を検出し、前記キャリッジの位置の変化が所定の許容範囲を逸脱している場合に異常が発生している旨の判断をする異常検出手段と、
を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の画像読取装置。
【請求項5】
装置の初期化時に実行させるホーミング動作の開始前に、光源を起動して前記キャリッジの副走査位置を検出し、前記キャリッジの副走査位置に応じて前記ホーミング動作の駆動制御を調整することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−24029(P2011−24029A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168093(P2009−168093)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】