画素の焼き付きを防ぐ電子機器
【課題】背景画像の上にカラーの固定パターンを表示する際に発光素子の焼き付けを防止する。
【解決手段】画素マトリクス上に隣接して配置された所定数の画素21、23、25、27がユニット画素群を構成する。ユニット画素群が黄色を表示する複数の画素と青色を表示する画素を含む。ユニット画素群に含まれるすべての画素が同一時間ずつ第2の色を順番に表示する。第2の色を表示する画素以外の画素は第1の色を表示する。各タイミングにおいて、人間は第1の色を感じ、かつ発光素子の輝度劣化量を等しくすることができる。
【解決手段】画素マトリクス上に隣接して配置された所定数の画素21、23、25、27がユニット画素群を構成する。ユニット画素群が黄色を表示する複数の画素と青色を表示する画素を含む。ユニット画素群に含まれるすべての画素が同一時間ずつ第2の色を順番に表示する。第2の色を表示する画素以外の画素は第1の色を表示する。各タイミングにおいて、人間は第1の色を感じ、かつ発光素子の輝度劣化量を等しくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型ディスプレイの画素の焼きつきを防ぐことができる電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
フラット・パネル・ディスプレイ(FPD)の発光方式は、液晶ディスプレイ(LCD)に代表される非自発光型と、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)や有機エレクトロルミネッセンス・ディスプレイ(OELD)などの自発光型に大別することができる。自発光型のFPDでは、画素を形成する発光素子の劣化が、発光時間が経過するとともに進行して、同じエネルギーを供給しても発光当初よりも輝度が低下するいわゆる輝度劣化をきたす。ある画素の発光素子の輝度劣化が周囲の画素の発光素子よりも進行すると、それらの画素に同一の色を表示したときに人間の目で劣化した発行素子の存在を認識できる状態となるいわゆる焼き付きという現象が発生する。たとえば、灰色のデスクトップ画面に、カラー表示のアイコンを静止画像として長時間表示する場合には、その後当該アイコンが表示された領域にデスクトップ画面と同じ灰色を表示するとアイコンを表示していた画素が表示する灰色と当初からデスクトップ画面を表示していた画素との間には焼き付きで明るさの相違が生ずる。
【0003】
焼き付きは、発光素子間の劣化の進行の差により発生する。灰色は赤、緑、青の各発光素子を同じエネルギーで駆動するため1画素における3つの発光素子が同等に劣化する。したがって、デスクトップ画面のような背景画像の全体を輝度が均一な灰色で表示すれば焼き付きの問題は発生しない。しかし、アイコンを表示するための画素は、背景画像より輝度が高かったり、カラー表示のために赤、緑、青を構成する発光素子の輝度に相違があったりして背景画像と同じ時間だけ発光させても輝度劣化の程度に差がでてくる。
【0004】
特許文献1は、有機ELディスプレイに表示する固定パターンにより自発光素子に発生する焼き付きを防止するために、画面に素子の劣化量を均一にする複数の配色パターンを表示する技術を開示する。同文献には、文字部分を表示するR(赤)、G(緑)、B(青)の基本原色を同一の輝度で1/3時間ずつ表示し、背景部分をRGBの1/3の輝度で連続的に表示することで、文字部分の表示に寄与する素子の劣化量と背景部分の表示に寄与する劣化量を一致させる。同文献には、RGB間を切り換えるときにRとG、GとB、BとRをそれぞれ混合することも記載されている。
【0005】
特許文献2は、自動車のインストルメントパネルなどの表示装置における焼付き防止を図るために、表示パネルに静的に表示される情報の表示色を、表示時間の経過に伴って変化させる技術を開示する。特許文献3には、有機EL素子の輝度寿命半減時間(寿命)は、初期輝度の2乗に反比例することが記載されている。非特許文献1には、有機EL素子の輝度劣化曲線は、拡大された指数関数でフィッティングできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−286296号公報
【特許文献2】特開2008−139897号公報
【特許文献3】特許第3687393号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】有機EL素子における輝度劣化メカニズム 石井昌彦 R&D Review of Toyota CRDL Vol.38 No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された方法は、輝度と表示時間との組み合わせで各有機EL素子の劣化量を均一にするものであるが、劣化量を均一にするために固定パターンである文字部分の色が1/3時間ずつ変化する。したがって、固定パターンが色の変化を問題にしない場合はよいが、固定パターンの色を変化させたくない場合は採用できない。たとえば、色の組み合わせで形成されたパターンまたは模様により所定の情報を提供するアイコンは、色が変化するとユーザに誤った情報を伝えたり違和感を与えたりするので色が変化することは好ましくない。また、固定パターンが自動車の計測パネルのシンボルである場合は、運転中に運転者がシンボルをみる時間が短いので色の変化は一層好ましくない。
【0009】
OELDに採用する有機EL発光素子(以下、単に発光素子という。)は、発光時間が長いほどまた初期輝度が高いほど輝度の劣化量が増大する。背景画像を表示する画素と、コンピュータのアイコンやタスクバー、または自動車の計測パネルのシンボルなどのような固定パターンを表示する画素はOELDが動作する間は連続的に発光するため、サブ画素の初期輝度の相違が発光素子の劣化の程度として表れる。
【0010】
そこで本発明の目的は、自発光型のディスプレイにおいて背景画像に重ねて固定パターンを表示する際に、画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、固定パターンの色を変化させないで画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる電子機器は、自発光型のディスプレイの背景画像にカラーの固定パターンを重ねて表示する際に、固定パターンの色を変化させないようにしながら背景画像を表示する画素と固定パターンを表示する画素の輝度劣化量を同等に進行させる。ここに、固定パターンの色が変化しないとは、ユーザが認識する色が実質的に変化しないことを意味し、画素の表示状態が変化しないことを意味するものではない。発光素子は、発光時間が長いほど、また、輝度が高いほど輝度劣化量は多くなる。背景画像を表示する画素も固定パターンを表示する画素もディスプレイが動作している間は連続的に発光するが、発光しているサブ画素の種類と輝度は表示する画像により異なるので、発光時間が同じであったとしても輝度劣化量はサブ画素ごとに変わる。
【0012】
本発明では、固定パターンを表示する画素を時分割発光しながら、背景画像に対して固定パターンを表示する画素の発光時間を短くし、かつ輝度を背景画像よりも高くすることで、背景画像を表示する画素と固定パターンを表示する画素の輝度劣化量を同一にする。固定パターンを表示する画素の発光時間を短くすると、これまでは固定パターンの色を変えざるを得なかったが、本発明では固定パターンを表示する画素を、目的とする色に対応する発光パターンを表示する画素と目的外の色に対応する発光パターンを表示する画素で構成し、発光パターンを画素間で定期的に巡回させる。本発明では、時分割発光と発光パターンの巡回を組み合わせた時分割巡回方式により固定パターンを表示する。
【0013】
発光素子は、発光時間を短くしたときに連続的に発光する発光素子と輝度劣化量を同一にするために、発光時間の短縮の程度に反比例する程度まで初期輝度を低下させる必要がないという性質を備えている。本発明では、この性質を利用して発光時間を短くした画素に人間が感ずる色を支配させて目的とする色を表示する。ディスプレイは電子機器に内蔵されていても、外部に接続されるタイプのものでもよい。ディスプレイには、画素マトリクスが形成され、画素マトリクス上に背景画像と固定パターンが同時に表示される。
【0014】
画素マトリクス上に隣接して配置された複数の画素がユニット画素群を形成する。ユニット画素群は連続的に配置された複数の画素で構成され、複数の画素は好適には水平ライン方向または垂直ライン方向に配置される。ただし、本発明はこのような配置に限定するものではなく、斜め方向に規則正しくユニット画素群を配置してもよい。ユニット画素群は複数の発光パターンを表示する。複数の発光パターンはそれぞれサブ画素の輝度情報で構成され、発光パターンの数はユニット画素群を形成する画素の数に一致している。ユニット画素群に含まれるすべての画素が複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで順番に切り換えて前記固定パターンを表示する。
【0015】
このような表示方法によれば、各画素が所定の発光パターンを表示する回数を設定することで、ユニット画素群が複数の発光パターンの表示を一巡させたときに各発光パターンの相対発光時間を制御することができる。そして、複数の発光パターンの中の2つ以上を同じ輝度情報に設定して輝度の積分効果を発揮させるようにすれば、ユニット画素群が表示する色をいずれのタイミングで表示するときも支配することができる。輝度劣化の同一性の程度を高めるためには発光パターンを切り換えるタイミングを同一経過時間ごとに設定することが望ましい。
【0016】
一例では、複数の発光パターンが、第1の色を表示する複数の第1の発光パターンと第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンとを含み、第1の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が第2の発光パターンを表示する画素の輝度の合計より高くすることで、人間が第1の色を強く感ずるようにすることができる。第1の発光パターンの数を3にして第2の発光パターンの数を1にしたり、第1の発光パターンの数を5にして第2の発光パターンの数を1にしたりすることで、ユニット画素群を空間軸に展開して画素マトリクスを形成したときに、第1の色に対する第2の色の表示位置を空間的にバランスよく設定することができる。
【0017】
背景画像は、3つのサブ画素を同一輝度で表示して各サブ画素の輝度劣化量を同一にできる灰色で表示することができる。あるいは背景画像を表示する領域にユニット画素群を配置し、当該ユニット画素群が固定パターンを表示する発光パターンとは異なる複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで切り換える時分割巡回表示により背景画像を表示するようにしてもよい。複数の発光パターンが第1の色を表示する第3の発光パターンと第2の色を表示する第4の発光パターンと第3の色を表示する第5の発光パターンとを含み、第3の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が、第4の発光パターンを表示する輝度の合計および第5の発光パターンを表示する画素の輝度の合計のいずれよりも高くなるようにしてもよい。このとき、第2の発光パターンがいずれのサブ画素も発光させない非発光状態を示すようにすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、自発光型のディスプレイにおいて背景画像に重ねて固定パターンを表示する際に、画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することができた。さらに本発明により、固定パターンの色を変化させないで画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】OELDに表示する固定パターンの一例を示す図である。
【図2】固定パターンの一部を表示する4つの画素を、比較的周期の長い時間で時分割して発光するときの様子を示す図である。
【図3】図2に示したユニット・パターンを表示するユニット画素群のサブ画素の発光状態を描いた図である。
【図4】サブ画素がさまざまな相対発光時間で発光するときの様子を示す。
【図5】相対発光時間と輝度比の関係を示すグラフである。
【図6】輝度の積分効果を説明する図である。
【図7】調整周期を4にして発光パターン数を2にしたときの固定パターン10の表示方法を説明する図である。
【図8】OELDに表示された固定パターンの画素領域の一部を示す画素マトリクスを示す図である。
【図9】図8の画素マトリクスが表示する画面の様子を示す図である。
【図10】画素マトリクスにさまざまな調整周期のユニット・パターンを適用したときの画像パターンを示す図である。
【図11】図2に示したユニット画素群を、垂直方向の空間軸に複数個隣接して配置した画素マトリクスを示す図である。
【図12】ユニット画素群の色支配画素を構成するサブ画素を異なる輝度で発光させる例を示す図である。
【図13】本実施の形態にかかる固定パターンの表示方法を実行する電子機器の概略の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[相対輝度劣化量]
非特許文献1によれば、有機ELの発光素子を発光させたとき、正規化された経過時間における初期輝度に対して輝度が低下する割合に相当する相対輝度Lrは式(1)となる。ここに、Tnは寿命半減期間を1として正規化した相対発光時間である。所定の経過時間までの間に連続して発光する場合はTnが1となり、75%の時間だけ発光する場合はTnが0.75になる。また、対象とする発光素子に対して係数αは1.85で係数βは0.58となっている。特許文献3によれば、発光素子の寿命は、初期輝度比Liの2乗に反比例するので、所定の経過時間において、初期輝度比Liで相対発光時間Tnだけ発光する発光素子の、連続して発光する発光素子に対する相対輝度劣化量Ldは式(2)となる。初期輝度比Liは、相対発光時間が1の発光素子の初期輝度に対する当該発光素子の初期輝度の比である。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、初期輝度比Lioで連続して所定の経過時間(Tn=1)だけ発光した発光素子Aと、初期輝度比Libで所定の経過時間の75%の時間(Tn=0.75)だけ発光した発光素子Bと、初期輝度比Licで所定の経過時間の25%の時間(Tn=0.25)だけ発光した発光素子Cがあるものとする。式(2)に基づいて発光素子Aと発光素子Bの相対輝度低下量Ldを計算すると、所定の経過時間において両者の相対輝度劣化量Ldを等しくするには、発光素子Bの初期輝度比Libを発光素子Aの初期輝度比Lioに対して、1.06倍にすればよいことがわかる。発光素子Bは、発光素子Aよりも相対発光時間Tnが短いため、初期輝度比を高くすることで相対輝度劣化量Ldを一致させることができる。このときの初期輝度比Libと初期輝度比Lio(=1)の比を輝度比Liという。
【0023】
同様にして、発光素子Cの初期輝度比Licを発光素子Aの初期輝度比Lioに対して輝度比Liが1.37倍になるようにすれば、所定の経過時間における発光素子Cと発光素子Aの相対輝度劣化量Ldを一致させることができる。発光素子Cは発光素子Bよりも相対発光時間が短いので、相対輝度劣化量Ldが発光素子Aと一致する初期輝度比Licは一層高くなる。このとき、発光素子Bと発光素子Cの相対輝度劣化量も一致する。
【0024】
注目すべき点は、発光素子Bは発光素子Cよりも3倍だけ相対発光時間Tnが長いが、相対輝度劣化量Ldを一致させるには、発光素子Bの輝度比を発光素子Cの輝度比の1/3倍まで下げる必要はなく、この場合では77%まで下げるだけでよいということである。本発明は、相対輝度劣化量を同一にする場合に相対発光時間の短縮の割合と初期輝度の増加の割合が反比例しないという発光素子の特質に対する知見に基づいている。
【0025】
[固定パターンの輝度劣化]
図1は、OELDに表示する固定パターンの一例を示す図である。本実施の形態にかかるOELDは、サブ画素に赤、緑、青の発光材料が独立した構造の発光方式を採用している。そして、画素が任意の色を発光する際にはサブ画素を独立した輝度で発光させるため、サブ画素の相対輝度劣化量は相互に独立して増大する。固定パターン10は、背景画像11に重なる状態で表示される。固定パターン10は、色で表現する画像で、星形領域13、十字領域15、および円形領域17の相互に色が異なる3つの領域で形成されている。固定パターン10は、色相が時間的に変化するとユーザにとって不都合を生じる画像を対象にしており、たとえばパーソナル・コンピュータのデスクトップに表示するアイコンやタスクバーなどを例示することができる。あるいは、固定パターン10は、自動車に搭載された表示器に表示される文字やシンボルを例示することができる。
【0026】
背景画像11は灰色で表示される。加法混色で同じ輝度の赤、緑、青を合成して生成する白色、黒色、灰色の無彩色を画素が表示する場合は、各画素を構成する3つのサブ画素を同一の輝度で同一の時間だけ発光することになるため、背景画像11を表示するサブ画素の相対輝度劣化量は相互に等しくなり、相互間では焼き付きの問題は生じない。本発明においては、背景画像11は灰色に限定する必要はなく、背景画像11に以下に説明する時分割巡回方式による固定パターン10を表示する方法を適用して固定パターンとは異なる色相をもたせるようにしてもよい。これに対して固定パターン10の画像の色は、色相、彩度、および明度(輝度)により決定されることになるため、長時間固定パターン10の画像の色が変化しないと固定パターンの中の色の異なる領域を表示する画素間および固定パターンを表示する画素と背景画像を表示する画素間で相対輝度劣化量に差が生じて焼き付きの問題が発生する。
【0027】
したがって、発光素子の焼き付きを防ぐためには、背景画像11および固定パターン10を表示する各画素のサブ画素について、相対輝度劣化量が同一になるように相対発光時間および輝度比を制御する必要がある。固定パターン10を表示する画素は色を表示するため、ある画素の3つのサブ画素は相互に異なる輝度比で発光する。そして、各サブ画素の発光時間と輝度比を輝度劣化量が等しくなるように調整するためには、無彩色を表示しない限り固定パターン10の色を変化させる必要がある。本実施の形態では以下に説明する時分割巡回表示方式を採用して、各サブ画素の相対発光時間と輝度比を輝度劣化量が背景画像11と同じになるように設定して、かつ固定パターンの色を変化させないようにする。
【0028】
[時分割巡回表示方式]
図2は、固定パターン10の一部を表示する4つの画素を、比較的周期の長い時間で時分割巡回方式により発光するときの様子を示す図である。図2には、4つの画素21、23、25、27が空間軸上に隣接して配置されたユニット画素群20を示している。空間軸は画素マトリクスの水平ラインまたは垂直ラインとすることができる。あるいは、空間軸は画素マトリクスの斜めラインにすることもできる。各画素は、赤、緑、青の3つのサブ画素で構成されている。各画素21、23、25、27は、発光するサブ画素の色とその輝度比で特徴付けられる発光パターンA、B、C、Dのいずれかで表示する。
【0029】
ユニット画素群20の任意の画素において、発光パターンA、B、C、Dは時間軸上でA→D→C→Bの順番に遷移しさらにその遷移を繰り返す。たとえば、画素21が表示する発光パターンはA→D→C→B→A→D・・・と遷移する。みかたを変えると、発光パターンA、B、C、Dは、空間軸上のユニット画素群20の中で同様の遷移を繰り返す。ここで、空間軸上に配置されたユニット画素群20が時間軸上の所定のタイミングで表示する4つの発光パターンの組をユニット・パターンという。ユニット・パターンは、時間軸上で発光パターンが遷移する数だけ存在しここでは4個になる。したがって、各ユニット・パターン1〜4において特定の画素の発光パターンは、遷移する順番で空間軸方向に位相が1画素ずつずれている。ユニット・パターン1〜4は、そこに含まれる発光パターンによりユニット画素群20が表示する色を決定する。
【0030】
各ユニット・パターン1〜4は、ユニット画素群20で同一の時間ずつ表示されるものとする。この各ユニット・パターンが表示される時間を単位発光時間ということにする。4つのユニット・パターンは、ユニット・パターン1から順番に単位発光時間ずつ表示されて遷移し、ユニット・パターン4に到達するとユニット・パターン1に戻り、以下このサイクルを繰り返す。すべてのユニット・パターンを1回表示する時間を調整周期という。調整周期は、各画素21、23、25、27の相対輝度劣化量が背景画像11を表示する画素と同一になるまでの時間を表している。
【0031】
空間軸上では、ユニット画素群20が表示するユニット・パターンは、時間軸上で切り換わるごとに1画素分だけ右方向に移動する。ユニット・パターンの数とユニット画素群20の画素の数を一致させると、ユニット画素群20の各画素21、23、25、27は、調整周期の間に各発光パターンA、B、C、Dを同じ単位発光時間だけ表示する。ここで、各ユニット・パターンは単位発光時間で発光することを前提にすれば、調整周期をそこに含まれるユニット・パターンの数で表すことができる。各ユニット・パターンに含まれる4つの発光パターンを適宜選択すると、選択された発光パターンの相対発光時間を調整周期に対して1/4の単位で調整することができる。たとえば、2つの発光パターンを同一にすればそれを表示するサブ画素の相対発光時間は2/4になり、3つの発光パターンを同一にすればそれを発光するサブ画素の相対発光時間は3/4になる。4つの発光パターンを同一にすれば、連続発光になり背景画像を表示する画素と相対輝度劣化量を同一にすることはできない。
【0032】
ここでは、発光パターンA、B、Cはすべて赤と緑のサブ画素だけを発光し、背景画像11のサブ画素に対するそれらの輝度比を1.06に設定する。また発光パターンDは、青のサブ画素だけを発光し背景画像11のサブ画素に対する輝度比を1.37に設定する。1回の調整周期が終了すると、各画素21、23、25、27の各サブ画素は、発光パターンA、B、Cで3/4の相対発光時間だけ発光し、発光パターンDで1/4の相対発光時間だけ発光する。
【0033】
発光パターンA、B、Cを表示するサブ画素はすべて赤と緑でその輝度比は1.06なので相対輝度劣化量が背景画像を表示する画素と等しくなる。また、発光パターンDを表示するサブ画素も輝度比が1.37なので、相対輝度劣化量が背景画像を表示する画素と等しくなる。このとき、赤と緑で発光するサブ画素を加法混色することで、発光パターンA、B、Cを表示する画素は黄色を表示し、発光パターンDを表示する画素は青色を表示する。その際に、各ユニット・パターンを表示するユニット画素群20に対して人間が感ずる色を検討する。各ユニット・パターンは、黄色を表示する3つの画素と青を表示する1つの画素で構成され、青の画素と黄色の画素の相対位置はユニット・パターン相互間で異なっている。
【0034】
時分割発光の周期がある程度長い場合は、人間は空間軸方向の各画素の積分輝度で明るさを感ずるので、全体的な画面の色も積分輝度の高い画素が表示する色に支配される。積分輝度は、同じ発光パターンで発光する画素の数と輝度比の積で計算することができる。発光パターンA、B、Cを表示する画素の積分輝度は、1.06×3=3.18で、発光パターンDを表示する画素の積分輝度は、1.37であり両者間には2.32倍の差があるので、人間は調整周期の間に表示されるいずれのユニット・パターンにおいても黄色を強く感ずる。
【0035】
調整周期の間に青を表示する画素の位置はユニット画素群20の中で4回変化することになるので、各ユニット・パターンを表示するユニット画素群20は、厳密には同一の色を表示しているとはいえないが、積分輝度の差は変化しないため人間が認識する色はほとんど変化しないので、本明細書ではこのようにして表示した色を同一の色として説明する。発光パターンA、B、Cを発光するような画素はユニット・パターンの色を支配する意義を有しており、以後このような画素を色支配画素ということにする。これに対して、発光パターンDを発光するような画素は、各サブ画素の輝度劣化量を均一にする意義を有しており、色支配画素が目的とする色とは異なる色を表示する。以後このような画素を劣化調整画素ということにする。ユニット画素群20は必ず色支配画素と劣化調整画素を含む。色支配画素は必ず複数の画素で構成されるが、積分輝度に有意な差を設けることができる限り劣化調整画素は1個でも複数個でもよい。
【0036】
図3は、図2に示したユニット・パターンを表示するユニット画素群20のサブ画素の発光状態を描いた図である。図3には、背景画像を表示する画素29も示している。赤(R)、緑(G)、青(B)に対応する棒の長さは輝度比に対応する。
【0037】
[ユニット・パターンの数]
これまで、ユニット・パターンの数およびユニット画素群を構成する画素数が4の場合の時分割巡回表示方式について説明してきたが、本発明は、ユニット・パターンの数がそれ以外の場合にも適用することができる。表1は、さまざまな相対発光時間で表示した画素について、連続して発光する画素と相対輝度劣化量が等しくなる輝度比Liを式(2)に基づいて計算した結果を示す。調整周期Pは、そこに含まれるユニット・パターンの数で表している。発光パターン数Qは、1つの調整周期Pのなかで各画素が発光する同一の発光パターンの数を示している。同一の発光パターンを表示する画素の相対発光時間はQ/Pで計算することができる。また、同一の発光パターンを表示する画素の積分輝度はLi×Qで計算することができる。
【0038】
【表1】
【0039】
図4は、サブ画素がさまざまな相対発光時間で発光するときの様子を示す。図4には、調整周期として3、4、5、6の4つを例示している。単位発光時間は、各ユニット・パターンを表示している時間であり、図4ではいずれの調整周期についても絶対値が等しくなるように描いている。ただし、サブ画素の相対輝度劣化量を同一にするためには、当該調整周期における相対発光時間を調整すればよいので、単位発光時間の絶対値は調整周期に応じて異なる値にしてもよい。たとえば、調整周期の数が3の場合と6の場合では、単位発光時間を同一にすると後者の調整周期は2倍になってしまうので、調整周期を先に決定して単位発光時間をそれに合わせるように設定してもよい。
【0040】
図5は、表1に示した相対発光時間と輝度比の関係を示すグラフである。図5によれば、グラフからいずれかの2点を抽出したときに、相対輝度劣化量を同一にするためには、相対発光時間を短くする割合に比べて輝度比を増加させる割合が小さいことがわかる。色支配画素が表示する色の空間軸方向の積分輝度の効果で人間が当該色を強く感ずるようにするには、劣化調整画素と色支配画素の積分輝度の比が大きいほうが効果的である。調整周期が6の場合に、劣化調整画素の数を1とし色支配画素の数を5とすれば、表1より積分輝度の差は5.20/1.52で3.42倍になる。これに対し、調整周期が3の場合に、劣化調整画素の数を1とし色支配画素の数を2とすれば、表1より積分輝度の差は2.18/1.28で1.70倍になる。したがって、色支配画素の数と劣化調整画素の数の比を大きくしたほうが色支配画素の効果を高めることができるので、人間は色支配画素が表示する色を強く感ずる。
【0041】
ユニット画素群20が同一のユニット・パターンで固定パターンを表示している限りは、人間が固定パターンの色の変化を感ずることはない。ユニット・パターンが遷移すると劣化調整画素の位置が変化するので、人間は若干の色の相違を感ずる場合があるかも知れない。その場合に、1つのユニット・パターンを表示する単位発光時間は比較的長くすることが考えられる。そして、長い単位発光時間を確保しようとすれば、調整周期が長くなるため相対輝度劣化量が等しくなるまでの時間が長くなり、その間に輝度劣化量のアンバランスが生ずる。さらに、図5に示したように、相対発光時間を短くするほど劣化調整画素の輝度比を大きくする必要がある。輝度比を大きくするためには、十分な輝度の余裕がある発光素子を採用したり、背景画像を表示する画素の輝度を下げたりする必要があるので、色支配画素の数と劣化調整画素の数の比はこれらを考慮して選択する必要がある。
【0042】
背景画像を表示するサブ画素と固定パターンを表示するサブ画素との間で、相対輝度劣化量を同一にしながら、積分効果により人間が感ずる固定パターンの色を各ユニット・パターンで同一にできるのは、すでに説明したように、発光素子の相対発光時間に対する輝度劣化量の割合と、輝度比に対する輝度劣化量の割合が異なるからである。図6は、輝度の積分効果を説明する図である。図6で、相対発光時間T1で発光する画素群31の輝度比がaで、相対発光時間T2で発光する画素33の輝度比がbであるとする。画素群31が発光する色を画素33が発光する色よりも人間が強く感ずるには、aT1>bT2の条件が成立する必要がある。したがって、(b/a)×(T2/T1)<1になる必要がある。
【0043】
この不等式は、輝度比の比よりも相対発光時間の比が小さくなればユニット・パターンの中に2種類の色が含まれていても人間は一方の色を感ずることができるということを意味する。具体的に調整周期が4の場合について説明すると、画素群31は相対発光時間T1が3/4のときに輝度比aが4/3であるとする。また、画素33は相対発光時間T2が1/4のときに輝度比bが4であるとする。この場合、画素群31の積分輝度は(4/3)×3=4となり、画素33の積分輝度は4×1=4となって両者は等しくなり(b/a)×(T2/T1)=1となる。このような条件で赤、緑、青の3つのサブ画素を表示したときは、人間が感ずる色は灰色になって色相がなくなるため色を表示することができない。したがって、発光素子が相対発光時間の比と輝度比の比が反比例するように劣化する場合は積分効果を期待することはできない。また、調整周期を2にした場合は、ユニット・パターン数も2になるため、たとえば色支配画素で赤と緑のサブ画素を発光させ劣化調整画素で青を表示させて各サブ画素の相対輝度劣化量が同一に進行するように調整すると、ユニット画素群は灰色を表示するようになるため調整周期の最低値は3にする必要がある。
【0044】
[発光パターン数2の例]
図7は、調整周期を4にして発光パターン数を2にしたときの固定パターン10の表示方法を説明する図である。図7が図2と異なるのは、発光パターンCはいずれのサブ画素も発光させないようにし、かつ、発光パターンA、Bで発光する画素は、赤と緑のサブ画素の輝度比を表1に基づいて1.16にしている点だけである。これは、発光パターンDの相対発光時間は1/4で変化しないが、発光パターンA、Bの相対発光時間は2/4に変化しているために輝度比をそれに応じて変えたためである。したがって、各ユニット・パターンは発光パターンA、Bで表示する色支配画素と発光パターンDで表示する劣化調整画素と発光パターンCで発光する中間画素を含む。中間画素は発光を停止している画素をいう。このように表示させても、1回の調整周期が完了した時点で各画素21、23、25、27は、各発光パターンA、B、C、Dを単位発光時間ずつ表示することになり、表1より各画素21、23、25、27に含まれるサブ画素の相対輝度劣化量は等しくなる。
【0045】
[画素マトリクス]
図8は、OELDに表示された固定パターン10を表示する画素の一部を示す画素マトリクス100を示す図である。画素マトリクス100は、5個の水平ラインと10個の垂直ラインで示している。画素マトリクス100は、各水平ライン上に隣接するように繰り返し配置された複数のユニット画素群20が、図2、図3で説明したユニット・パターンを表示する。偶数の水平ライン上のユニット画素群同士および奇数の水平ライン上のユニット画素群同士は、垂直ライン上の発光パターンが一致している。偶数の水平ライン上のユニット画素群と奇数の水平ライン上のユニット画素群は、水平方向に2画素分だけ位相がずれている。画素マトリクス100の各画素は、調整周期の間に時間軸上で4つの画像パターン1〜4を表示する。図8には、画像パターン1を表示する10×5個の各画素の発光パターンをA〜Dで示している。
【0046】
図9は、図8の画素マトリクス100が表示する画面の様子を示す図である。図9では白塗りの画素は黄色を表示し、模様のついた画素は青色を表示している。この例では、調整周期が4で色支配画素に対する発光パターン数と劣化調整画素に対する発光パターン数が3対1で構成されている。そして、奇数の水平ライン同士および偶数の水平ライン同士では、同一の垂直ライン上にある画素が同じ色を表示している。また、偶数の水平ライン上の画素と奇数の水平ライン上の画素が表示する色は相互に、水平方向に2発光パターンだけ位相がシフトしている。このように表示することで、青を表示する調整画素が画素マトリクス100において平面的に均等に配置され、ユーザが認識する色支配画素が表示する色をより均等にすることができる。
【0047】
[他の調整周期に対する画像パターン]
図10は、画素マトリクス100にさまざまな調整周期のユニット・パターンを適用したときの画像パターンを示す図である。図10(A)の画像パターンは、調整周期が3で黄色を表示する2個の発光パターンと青色を表示する1個の発光パターンを含むユニット・パターンで構成されている。青色の発光パターンを表示する画素の間には黄色の発光パターンを表示する2個の画素が挿入されているため水平ラインの位相を順番に1画素ずつシフトしている。その結果、青色の画素は斜め方向のストライプになる。
【0048】
図10(B)の画像パターンは、調整周期が5で黄色を表示する4個の発光パターンと青色を表示する1個の発光パターンで構成されている。青色の発光パターンを表示する画素の間には黄色の発光パターンを表示する4個の画素が挿入されているため
青色の発光パターンを表示する画素の空間密度は部分的に偏っている。図10(C)の画像パターンは、調整周期が6で黄色を表示する5個の発光パターンと青色を表示する1個の発光パターンで構成されている。青色の発光パターンを表示する画素の間には黄色の発光パターンを表示する5個の画素が挿入されているため水平ラインの位相を順番に3画素ずつシフトしている。その結果、偶数の水平ラインと奇数の水平ラインでは垂直ライン上の発光パターンが一致し、青色の画素は空間的にバランスよく配置される。
【0049】
[空間軸を垂直ラインにした画素マトリクス]
図11は、図2に示したユニット画素群を、垂直方向の空間軸に複数個隣接して配置した画素マトリクス200を示す図である。この場合発光パターンA、B、C、Dは、時間軸上で画像パターンが切り換わるごとに垂直ライン上で順番に遷移する。また、偶数の垂直ライン上にある画素と奇数の垂直ライン上にある画素は、同一の水平ライン上において同じ発光パターンを発光する。奇数の垂直ライン上の画素が表示する発光パターンと偶数の垂直ライン上の画素が発光する発光パターンは、垂直方向に2画素分だけ位相がシフトしている。これまで、劣化調整画素は1個の例だけを示したが、色支配画素の積分輝度が劣化調整画素の積分輝度よりも大きくなればよいので、劣化調整画素は1個に限定する必要はない。
【0050】
また、色支配画素では黄色を表示する例を示したが、色支配画素では赤と青のサブ画素を同じ輝度で発光させてマゼンタにし、劣化調整画素を緑色にすることもできる。また、色支配画素で青色と緑色のサブ画素を同じ輝度で発光させてシアンにし、劣化調整画素を赤色にすることもできる。本発明にかかる時分割巡回方式を採用すれば、このように複数の色を表示できるので、図1の固定パターン10について星形領域13を黄色で表示し、十字領域15をマゼンタで表示し、円形領域17をシアンで表示することも可能になる。さらに、色支配画素を構成する各画素では、2つのサブ画素を同じ輝度で発光させる例を説明したが、色支配画素の各画素における2つのサブ画素を異なる輝度で発光させることもできる。
【0051】
[色支配画素が異なる色を表示する例]
図12は、ユニット画素群20の色支配画素を構成するサブ画素を異なる輝度で発光させる例を示す図である。図3の例と同様に調整周期を4にして、赤色のサブ画素は相対発光時間を3/4、輝度比を1.06とし、緑色のサブ画素は相対発光時間を2/4、輝度比を1.16、青色のサブ画素は相対発光時間を1/4、輝度比を1.37にすることで、各サブ画素の相対輝度劣化量と背景画像を表示する画素の相対輝度劣化量を一致させることができる。ここでは一例として、図2に示した発光パターンAとCでは、赤色のサブ画素の輝度比を1.06で緑色のサブ画素の輝度比を1.16にする。発光パターンBでは、赤色のサブ画素の輝度比を1.06にする。発光パターンDでは、青色のサブ画素の輝度比を3.18にする。そして、図12のようにユニット画素群20が各ユニット・パターンを、時分割巡回方式で表示すれば、発光パターンAとCを合成した積分輝度が最も高くなって全体の色を支配し、発光パターンBと発光パターンDはその中に点在して、発光パターンA、B、C、Dを表示するユニット画素群20が全体として図2の色とは異なる色を表示するようになる。
【0052】
[電子機器の構成]
図13は、図1〜図12までを参照して説明した固定パターンの表示方法を実行する電子機器300の概略の機能ブロック図である。電子機器300は、携帯式パーソナル・コンピュータ、携帯電話、自動車の表示パネルなどのようなOELDを含む表示装置とすることができる。あるいは電子機器300は、OLEDを外部接続端子に接続して使用する表示装置とすることができる。電子機器300は、画像データ生成部301、パターン・データ格納部303、切換イベント生成部305、画像データ出力部307、およびOELD309で構成されている。
【0053】
画像データ生成部301は、プロセッサ、メイン・メモリおよびコンピュータ・プログラムなどで構成され、OELD309に固定パターン以外の画像を表示するためのデータを生成して画像データ出力部307に出力する。パターン・データ格納部303は、不揮発性のメモリなどで構成され、固定パターンに対応する複数の画像パターンを表示するためのデータを格納する。固定パターンに格納されるデータは、画素マトリクス上での位置と、背景画像の初期輝度に対して輝度比で調整された初期輝度に関する階調の情報を含む。
【0054】
切換イベント生成部305は、画像パターンを切り換えるタイミングとなる切換イベントを生成してパターン・データ格納部303に通知する。切換イベント生成部305は、時間計測器よりOELDの動作時間に関する情報を取得して、画像パターンを切り換えるタイミングを計算して切換イベントを生成する。本実施形態では、単位発光時間は10時間程度〜数日間といったように比較的長い時間を選定することができる。単位発光時間はさほど厳密に管理する必要がないので、切換イベント生成部305は、電子機器が日常ほぼ一定の時間だけ動作するような携帯式パーソナル・コンピュータの場合には、パワー・オンのタイミングで切換イベントを生成してもよい。
【0055】
パターン・データ格納部303は、切換イベントを受け取るたびに、画像データ出力部307に送出する画像パターンを切り換える。画像データ出力部307はバッファを含み、画像データ生成部301から受け取った画像データおよびパターン・データ格納部303から受け取った画像パターンのデータをバッファに展開して、所定のタイミングで表示の順番にOELDに出力する。OELD309は、画像データ生成部301で生成した画像データおよびパターン・データ格納部303から出力された画像パターンを表示する。これまで、ディスプレイとしてOELDを例示して説明してきたが、本発明はPDP(Plasma Display Panel)などの他の自発光型方式のディスプレイに適用することもできる。
【0056】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0057】
10…固定パターン
11…背景画像
20…ユニット画素群
21、23、25、27…画素
100、200…画素マトリクス
300…電子機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型ディスプレイの画素の焼きつきを防ぐことができる電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
フラット・パネル・ディスプレイ(FPD)の発光方式は、液晶ディスプレイ(LCD)に代表される非自発光型と、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)や有機エレクトロルミネッセンス・ディスプレイ(OELD)などの自発光型に大別することができる。自発光型のFPDでは、画素を形成する発光素子の劣化が、発光時間が経過するとともに進行して、同じエネルギーを供給しても発光当初よりも輝度が低下するいわゆる輝度劣化をきたす。ある画素の発光素子の輝度劣化が周囲の画素の発光素子よりも進行すると、それらの画素に同一の色を表示したときに人間の目で劣化した発行素子の存在を認識できる状態となるいわゆる焼き付きという現象が発生する。たとえば、灰色のデスクトップ画面に、カラー表示のアイコンを静止画像として長時間表示する場合には、その後当該アイコンが表示された領域にデスクトップ画面と同じ灰色を表示するとアイコンを表示していた画素が表示する灰色と当初からデスクトップ画面を表示していた画素との間には焼き付きで明るさの相違が生ずる。
【0003】
焼き付きは、発光素子間の劣化の進行の差により発生する。灰色は赤、緑、青の各発光素子を同じエネルギーで駆動するため1画素における3つの発光素子が同等に劣化する。したがって、デスクトップ画面のような背景画像の全体を輝度が均一な灰色で表示すれば焼き付きの問題は発生しない。しかし、アイコンを表示するための画素は、背景画像より輝度が高かったり、カラー表示のために赤、緑、青を構成する発光素子の輝度に相違があったりして背景画像と同じ時間だけ発光させても輝度劣化の程度に差がでてくる。
【0004】
特許文献1は、有機ELディスプレイに表示する固定パターンにより自発光素子に発生する焼き付きを防止するために、画面に素子の劣化量を均一にする複数の配色パターンを表示する技術を開示する。同文献には、文字部分を表示するR(赤)、G(緑)、B(青)の基本原色を同一の輝度で1/3時間ずつ表示し、背景部分をRGBの1/3の輝度で連続的に表示することで、文字部分の表示に寄与する素子の劣化量と背景部分の表示に寄与する劣化量を一致させる。同文献には、RGB間を切り換えるときにRとG、GとB、BとRをそれぞれ混合することも記載されている。
【0005】
特許文献2は、自動車のインストルメントパネルなどの表示装置における焼付き防止を図るために、表示パネルに静的に表示される情報の表示色を、表示時間の経過に伴って変化させる技術を開示する。特許文献3には、有機EL素子の輝度寿命半減時間(寿命)は、初期輝度の2乗に反比例することが記載されている。非特許文献1には、有機EL素子の輝度劣化曲線は、拡大された指数関数でフィッティングできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−286296号公報
【特許文献2】特開2008−139897号公報
【特許文献3】特許第3687393号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】有機EL素子における輝度劣化メカニズム 石井昌彦 R&D Review of Toyota CRDL Vol.38 No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された方法は、輝度と表示時間との組み合わせで各有機EL素子の劣化量を均一にするものであるが、劣化量を均一にするために固定パターンである文字部分の色が1/3時間ずつ変化する。したがって、固定パターンが色の変化を問題にしない場合はよいが、固定パターンの色を変化させたくない場合は採用できない。たとえば、色の組み合わせで形成されたパターンまたは模様により所定の情報を提供するアイコンは、色が変化するとユーザに誤った情報を伝えたり違和感を与えたりするので色が変化することは好ましくない。また、固定パターンが自動車の計測パネルのシンボルである場合は、運転中に運転者がシンボルをみる時間が短いので色の変化は一層好ましくない。
【0009】
OELDに採用する有機EL発光素子(以下、単に発光素子という。)は、発光時間が長いほどまた初期輝度が高いほど輝度の劣化量が増大する。背景画像を表示する画素と、コンピュータのアイコンやタスクバー、または自動車の計測パネルのシンボルなどのような固定パターンを表示する画素はOELDが動作する間は連続的に発光するため、サブ画素の初期輝度の相違が発光素子の劣化の程度として表れる。
【0010】
そこで本発明の目的は、自発光型のディスプレイにおいて背景画像に重ねて固定パターンを表示する際に、画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、固定パターンの色を変化させないで画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる電子機器は、自発光型のディスプレイの背景画像にカラーの固定パターンを重ねて表示する際に、固定パターンの色を変化させないようにしながら背景画像を表示する画素と固定パターンを表示する画素の輝度劣化量を同等に進行させる。ここに、固定パターンの色が変化しないとは、ユーザが認識する色が実質的に変化しないことを意味し、画素の表示状態が変化しないことを意味するものではない。発光素子は、発光時間が長いほど、また、輝度が高いほど輝度劣化量は多くなる。背景画像を表示する画素も固定パターンを表示する画素もディスプレイが動作している間は連続的に発光するが、発光しているサブ画素の種類と輝度は表示する画像により異なるので、発光時間が同じであったとしても輝度劣化量はサブ画素ごとに変わる。
【0012】
本発明では、固定パターンを表示する画素を時分割発光しながら、背景画像に対して固定パターンを表示する画素の発光時間を短くし、かつ輝度を背景画像よりも高くすることで、背景画像を表示する画素と固定パターンを表示する画素の輝度劣化量を同一にする。固定パターンを表示する画素の発光時間を短くすると、これまでは固定パターンの色を変えざるを得なかったが、本発明では固定パターンを表示する画素を、目的とする色に対応する発光パターンを表示する画素と目的外の色に対応する発光パターンを表示する画素で構成し、発光パターンを画素間で定期的に巡回させる。本発明では、時分割発光と発光パターンの巡回を組み合わせた時分割巡回方式により固定パターンを表示する。
【0013】
発光素子は、発光時間を短くしたときに連続的に発光する発光素子と輝度劣化量を同一にするために、発光時間の短縮の程度に反比例する程度まで初期輝度を低下させる必要がないという性質を備えている。本発明では、この性質を利用して発光時間を短くした画素に人間が感ずる色を支配させて目的とする色を表示する。ディスプレイは電子機器に内蔵されていても、外部に接続されるタイプのものでもよい。ディスプレイには、画素マトリクスが形成され、画素マトリクス上に背景画像と固定パターンが同時に表示される。
【0014】
画素マトリクス上に隣接して配置された複数の画素がユニット画素群を形成する。ユニット画素群は連続的に配置された複数の画素で構成され、複数の画素は好適には水平ライン方向または垂直ライン方向に配置される。ただし、本発明はこのような配置に限定するものではなく、斜め方向に規則正しくユニット画素群を配置してもよい。ユニット画素群は複数の発光パターンを表示する。複数の発光パターンはそれぞれサブ画素の輝度情報で構成され、発光パターンの数はユニット画素群を形成する画素の数に一致している。ユニット画素群に含まれるすべての画素が複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで順番に切り換えて前記固定パターンを表示する。
【0015】
このような表示方法によれば、各画素が所定の発光パターンを表示する回数を設定することで、ユニット画素群が複数の発光パターンの表示を一巡させたときに各発光パターンの相対発光時間を制御することができる。そして、複数の発光パターンの中の2つ以上を同じ輝度情報に設定して輝度の積分効果を発揮させるようにすれば、ユニット画素群が表示する色をいずれのタイミングで表示するときも支配することができる。輝度劣化の同一性の程度を高めるためには発光パターンを切り換えるタイミングを同一経過時間ごとに設定することが望ましい。
【0016】
一例では、複数の発光パターンが、第1の色を表示する複数の第1の発光パターンと第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンとを含み、第1の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が第2の発光パターンを表示する画素の輝度の合計より高くすることで、人間が第1の色を強く感ずるようにすることができる。第1の発光パターンの数を3にして第2の発光パターンの数を1にしたり、第1の発光パターンの数を5にして第2の発光パターンの数を1にしたりすることで、ユニット画素群を空間軸に展開して画素マトリクスを形成したときに、第1の色に対する第2の色の表示位置を空間的にバランスよく設定することができる。
【0017】
背景画像は、3つのサブ画素を同一輝度で表示して各サブ画素の輝度劣化量を同一にできる灰色で表示することができる。あるいは背景画像を表示する領域にユニット画素群を配置し、当該ユニット画素群が固定パターンを表示する発光パターンとは異なる複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで切り換える時分割巡回表示により背景画像を表示するようにしてもよい。複数の発光パターンが第1の色を表示する第3の発光パターンと第2の色を表示する第4の発光パターンと第3の色を表示する第5の発光パターンとを含み、第3の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が、第4の発光パターンを表示する輝度の合計および第5の発光パターンを表示する画素の輝度の合計のいずれよりも高くなるようにしてもよい。このとき、第2の発光パターンがいずれのサブ画素も発光させない非発光状態を示すようにすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、自発光型のディスプレイにおいて背景画像に重ねて固定パターンを表示する際に、画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することができた。さらに本発明により、固定パターンの色を変化させないで画素の焼き付きを防ぐことができる電子機器を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】OELDに表示する固定パターンの一例を示す図である。
【図2】固定パターンの一部を表示する4つの画素を、比較的周期の長い時間で時分割して発光するときの様子を示す図である。
【図3】図2に示したユニット・パターンを表示するユニット画素群のサブ画素の発光状態を描いた図である。
【図4】サブ画素がさまざまな相対発光時間で発光するときの様子を示す。
【図5】相対発光時間と輝度比の関係を示すグラフである。
【図6】輝度の積分効果を説明する図である。
【図7】調整周期を4にして発光パターン数を2にしたときの固定パターン10の表示方法を説明する図である。
【図8】OELDに表示された固定パターンの画素領域の一部を示す画素マトリクスを示す図である。
【図9】図8の画素マトリクスが表示する画面の様子を示す図である。
【図10】画素マトリクスにさまざまな調整周期のユニット・パターンを適用したときの画像パターンを示す図である。
【図11】図2に示したユニット画素群を、垂直方向の空間軸に複数個隣接して配置した画素マトリクスを示す図である。
【図12】ユニット画素群の色支配画素を構成するサブ画素を異なる輝度で発光させる例を示す図である。
【図13】本実施の形態にかかる固定パターンの表示方法を実行する電子機器の概略の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[相対輝度劣化量]
非特許文献1によれば、有機ELの発光素子を発光させたとき、正規化された経過時間における初期輝度に対して輝度が低下する割合に相当する相対輝度Lrは式(1)となる。ここに、Tnは寿命半減期間を1として正規化した相対発光時間である。所定の経過時間までの間に連続して発光する場合はTnが1となり、75%の時間だけ発光する場合はTnが0.75になる。また、対象とする発光素子に対して係数αは1.85で係数βは0.58となっている。特許文献3によれば、発光素子の寿命は、初期輝度比Liの2乗に反比例するので、所定の経過時間において、初期輝度比Liで相対発光時間Tnだけ発光する発光素子の、連続して発光する発光素子に対する相対輝度劣化量Ldは式(2)となる。初期輝度比Liは、相対発光時間が1の発光素子の初期輝度に対する当該発光素子の初期輝度の比である。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、初期輝度比Lioで連続して所定の経過時間(Tn=1)だけ発光した発光素子Aと、初期輝度比Libで所定の経過時間の75%の時間(Tn=0.75)だけ発光した発光素子Bと、初期輝度比Licで所定の経過時間の25%の時間(Tn=0.25)だけ発光した発光素子Cがあるものとする。式(2)に基づいて発光素子Aと発光素子Bの相対輝度低下量Ldを計算すると、所定の経過時間において両者の相対輝度劣化量Ldを等しくするには、発光素子Bの初期輝度比Libを発光素子Aの初期輝度比Lioに対して、1.06倍にすればよいことがわかる。発光素子Bは、発光素子Aよりも相対発光時間Tnが短いため、初期輝度比を高くすることで相対輝度劣化量Ldを一致させることができる。このときの初期輝度比Libと初期輝度比Lio(=1)の比を輝度比Liという。
【0023】
同様にして、発光素子Cの初期輝度比Licを発光素子Aの初期輝度比Lioに対して輝度比Liが1.37倍になるようにすれば、所定の経過時間における発光素子Cと発光素子Aの相対輝度劣化量Ldを一致させることができる。発光素子Cは発光素子Bよりも相対発光時間が短いので、相対輝度劣化量Ldが発光素子Aと一致する初期輝度比Licは一層高くなる。このとき、発光素子Bと発光素子Cの相対輝度劣化量も一致する。
【0024】
注目すべき点は、発光素子Bは発光素子Cよりも3倍だけ相対発光時間Tnが長いが、相対輝度劣化量Ldを一致させるには、発光素子Bの輝度比を発光素子Cの輝度比の1/3倍まで下げる必要はなく、この場合では77%まで下げるだけでよいということである。本発明は、相対輝度劣化量を同一にする場合に相対発光時間の短縮の割合と初期輝度の増加の割合が反比例しないという発光素子の特質に対する知見に基づいている。
【0025】
[固定パターンの輝度劣化]
図1は、OELDに表示する固定パターンの一例を示す図である。本実施の形態にかかるOELDは、サブ画素に赤、緑、青の発光材料が独立した構造の発光方式を採用している。そして、画素が任意の色を発光する際にはサブ画素を独立した輝度で発光させるため、サブ画素の相対輝度劣化量は相互に独立して増大する。固定パターン10は、背景画像11に重なる状態で表示される。固定パターン10は、色で表現する画像で、星形領域13、十字領域15、および円形領域17の相互に色が異なる3つの領域で形成されている。固定パターン10は、色相が時間的に変化するとユーザにとって不都合を生じる画像を対象にしており、たとえばパーソナル・コンピュータのデスクトップに表示するアイコンやタスクバーなどを例示することができる。あるいは、固定パターン10は、自動車に搭載された表示器に表示される文字やシンボルを例示することができる。
【0026】
背景画像11は灰色で表示される。加法混色で同じ輝度の赤、緑、青を合成して生成する白色、黒色、灰色の無彩色を画素が表示する場合は、各画素を構成する3つのサブ画素を同一の輝度で同一の時間だけ発光することになるため、背景画像11を表示するサブ画素の相対輝度劣化量は相互に等しくなり、相互間では焼き付きの問題は生じない。本発明においては、背景画像11は灰色に限定する必要はなく、背景画像11に以下に説明する時分割巡回方式による固定パターン10を表示する方法を適用して固定パターンとは異なる色相をもたせるようにしてもよい。これに対して固定パターン10の画像の色は、色相、彩度、および明度(輝度)により決定されることになるため、長時間固定パターン10の画像の色が変化しないと固定パターンの中の色の異なる領域を表示する画素間および固定パターンを表示する画素と背景画像を表示する画素間で相対輝度劣化量に差が生じて焼き付きの問題が発生する。
【0027】
したがって、発光素子の焼き付きを防ぐためには、背景画像11および固定パターン10を表示する各画素のサブ画素について、相対輝度劣化量が同一になるように相対発光時間および輝度比を制御する必要がある。固定パターン10を表示する画素は色を表示するため、ある画素の3つのサブ画素は相互に異なる輝度比で発光する。そして、各サブ画素の発光時間と輝度比を輝度劣化量が等しくなるように調整するためには、無彩色を表示しない限り固定パターン10の色を変化させる必要がある。本実施の形態では以下に説明する時分割巡回表示方式を採用して、各サブ画素の相対発光時間と輝度比を輝度劣化量が背景画像11と同じになるように設定して、かつ固定パターンの色を変化させないようにする。
【0028】
[時分割巡回表示方式]
図2は、固定パターン10の一部を表示する4つの画素を、比較的周期の長い時間で時分割巡回方式により発光するときの様子を示す図である。図2には、4つの画素21、23、25、27が空間軸上に隣接して配置されたユニット画素群20を示している。空間軸は画素マトリクスの水平ラインまたは垂直ラインとすることができる。あるいは、空間軸は画素マトリクスの斜めラインにすることもできる。各画素は、赤、緑、青の3つのサブ画素で構成されている。各画素21、23、25、27は、発光するサブ画素の色とその輝度比で特徴付けられる発光パターンA、B、C、Dのいずれかで表示する。
【0029】
ユニット画素群20の任意の画素において、発光パターンA、B、C、Dは時間軸上でA→D→C→Bの順番に遷移しさらにその遷移を繰り返す。たとえば、画素21が表示する発光パターンはA→D→C→B→A→D・・・と遷移する。みかたを変えると、発光パターンA、B、C、Dは、空間軸上のユニット画素群20の中で同様の遷移を繰り返す。ここで、空間軸上に配置されたユニット画素群20が時間軸上の所定のタイミングで表示する4つの発光パターンの組をユニット・パターンという。ユニット・パターンは、時間軸上で発光パターンが遷移する数だけ存在しここでは4個になる。したがって、各ユニット・パターン1〜4において特定の画素の発光パターンは、遷移する順番で空間軸方向に位相が1画素ずつずれている。ユニット・パターン1〜4は、そこに含まれる発光パターンによりユニット画素群20が表示する色を決定する。
【0030】
各ユニット・パターン1〜4は、ユニット画素群20で同一の時間ずつ表示されるものとする。この各ユニット・パターンが表示される時間を単位発光時間ということにする。4つのユニット・パターンは、ユニット・パターン1から順番に単位発光時間ずつ表示されて遷移し、ユニット・パターン4に到達するとユニット・パターン1に戻り、以下このサイクルを繰り返す。すべてのユニット・パターンを1回表示する時間を調整周期という。調整周期は、各画素21、23、25、27の相対輝度劣化量が背景画像11を表示する画素と同一になるまでの時間を表している。
【0031】
空間軸上では、ユニット画素群20が表示するユニット・パターンは、時間軸上で切り換わるごとに1画素分だけ右方向に移動する。ユニット・パターンの数とユニット画素群20の画素の数を一致させると、ユニット画素群20の各画素21、23、25、27は、調整周期の間に各発光パターンA、B、C、Dを同じ単位発光時間だけ表示する。ここで、各ユニット・パターンは単位発光時間で発光することを前提にすれば、調整周期をそこに含まれるユニット・パターンの数で表すことができる。各ユニット・パターンに含まれる4つの発光パターンを適宜選択すると、選択された発光パターンの相対発光時間を調整周期に対して1/4の単位で調整することができる。たとえば、2つの発光パターンを同一にすればそれを表示するサブ画素の相対発光時間は2/4になり、3つの発光パターンを同一にすればそれを発光するサブ画素の相対発光時間は3/4になる。4つの発光パターンを同一にすれば、連続発光になり背景画像を表示する画素と相対輝度劣化量を同一にすることはできない。
【0032】
ここでは、発光パターンA、B、Cはすべて赤と緑のサブ画素だけを発光し、背景画像11のサブ画素に対するそれらの輝度比を1.06に設定する。また発光パターンDは、青のサブ画素だけを発光し背景画像11のサブ画素に対する輝度比を1.37に設定する。1回の調整周期が終了すると、各画素21、23、25、27の各サブ画素は、発光パターンA、B、Cで3/4の相対発光時間だけ発光し、発光パターンDで1/4の相対発光時間だけ発光する。
【0033】
発光パターンA、B、Cを表示するサブ画素はすべて赤と緑でその輝度比は1.06なので相対輝度劣化量が背景画像を表示する画素と等しくなる。また、発光パターンDを表示するサブ画素も輝度比が1.37なので、相対輝度劣化量が背景画像を表示する画素と等しくなる。このとき、赤と緑で発光するサブ画素を加法混色することで、発光パターンA、B、Cを表示する画素は黄色を表示し、発光パターンDを表示する画素は青色を表示する。その際に、各ユニット・パターンを表示するユニット画素群20に対して人間が感ずる色を検討する。各ユニット・パターンは、黄色を表示する3つの画素と青を表示する1つの画素で構成され、青の画素と黄色の画素の相対位置はユニット・パターン相互間で異なっている。
【0034】
時分割発光の周期がある程度長い場合は、人間は空間軸方向の各画素の積分輝度で明るさを感ずるので、全体的な画面の色も積分輝度の高い画素が表示する色に支配される。積分輝度は、同じ発光パターンで発光する画素の数と輝度比の積で計算することができる。発光パターンA、B、Cを表示する画素の積分輝度は、1.06×3=3.18で、発光パターンDを表示する画素の積分輝度は、1.37であり両者間には2.32倍の差があるので、人間は調整周期の間に表示されるいずれのユニット・パターンにおいても黄色を強く感ずる。
【0035】
調整周期の間に青を表示する画素の位置はユニット画素群20の中で4回変化することになるので、各ユニット・パターンを表示するユニット画素群20は、厳密には同一の色を表示しているとはいえないが、積分輝度の差は変化しないため人間が認識する色はほとんど変化しないので、本明細書ではこのようにして表示した色を同一の色として説明する。発光パターンA、B、Cを発光するような画素はユニット・パターンの色を支配する意義を有しており、以後このような画素を色支配画素ということにする。これに対して、発光パターンDを発光するような画素は、各サブ画素の輝度劣化量を均一にする意義を有しており、色支配画素が目的とする色とは異なる色を表示する。以後このような画素を劣化調整画素ということにする。ユニット画素群20は必ず色支配画素と劣化調整画素を含む。色支配画素は必ず複数の画素で構成されるが、積分輝度に有意な差を設けることができる限り劣化調整画素は1個でも複数個でもよい。
【0036】
図3は、図2に示したユニット・パターンを表示するユニット画素群20のサブ画素の発光状態を描いた図である。図3には、背景画像を表示する画素29も示している。赤(R)、緑(G)、青(B)に対応する棒の長さは輝度比に対応する。
【0037】
[ユニット・パターンの数]
これまで、ユニット・パターンの数およびユニット画素群を構成する画素数が4の場合の時分割巡回表示方式について説明してきたが、本発明は、ユニット・パターンの数がそれ以外の場合にも適用することができる。表1は、さまざまな相対発光時間で表示した画素について、連続して発光する画素と相対輝度劣化量が等しくなる輝度比Liを式(2)に基づいて計算した結果を示す。調整周期Pは、そこに含まれるユニット・パターンの数で表している。発光パターン数Qは、1つの調整周期Pのなかで各画素が発光する同一の発光パターンの数を示している。同一の発光パターンを表示する画素の相対発光時間はQ/Pで計算することができる。また、同一の発光パターンを表示する画素の積分輝度はLi×Qで計算することができる。
【0038】
【表1】
【0039】
図4は、サブ画素がさまざまな相対発光時間で発光するときの様子を示す。図4には、調整周期として3、4、5、6の4つを例示している。単位発光時間は、各ユニット・パターンを表示している時間であり、図4ではいずれの調整周期についても絶対値が等しくなるように描いている。ただし、サブ画素の相対輝度劣化量を同一にするためには、当該調整周期における相対発光時間を調整すればよいので、単位発光時間の絶対値は調整周期に応じて異なる値にしてもよい。たとえば、調整周期の数が3の場合と6の場合では、単位発光時間を同一にすると後者の調整周期は2倍になってしまうので、調整周期を先に決定して単位発光時間をそれに合わせるように設定してもよい。
【0040】
図5は、表1に示した相対発光時間と輝度比の関係を示すグラフである。図5によれば、グラフからいずれかの2点を抽出したときに、相対輝度劣化量を同一にするためには、相対発光時間を短くする割合に比べて輝度比を増加させる割合が小さいことがわかる。色支配画素が表示する色の空間軸方向の積分輝度の効果で人間が当該色を強く感ずるようにするには、劣化調整画素と色支配画素の積分輝度の比が大きいほうが効果的である。調整周期が6の場合に、劣化調整画素の数を1とし色支配画素の数を5とすれば、表1より積分輝度の差は5.20/1.52で3.42倍になる。これに対し、調整周期が3の場合に、劣化調整画素の数を1とし色支配画素の数を2とすれば、表1より積分輝度の差は2.18/1.28で1.70倍になる。したがって、色支配画素の数と劣化調整画素の数の比を大きくしたほうが色支配画素の効果を高めることができるので、人間は色支配画素が表示する色を強く感ずる。
【0041】
ユニット画素群20が同一のユニット・パターンで固定パターンを表示している限りは、人間が固定パターンの色の変化を感ずることはない。ユニット・パターンが遷移すると劣化調整画素の位置が変化するので、人間は若干の色の相違を感ずる場合があるかも知れない。その場合に、1つのユニット・パターンを表示する単位発光時間は比較的長くすることが考えられる。そして、長い単位発光時間を確保しようとすれば、調整周期が長くなるため相対輝度劣化量が等しくなるまでの時間が長くなり、その間に輝度劣化量のアンバランスが生ずる。さらに、図5に示したように、相対発光時間を短くするほど劣化調整画素の輝度比を大きくする必要がある。輝度比を大きくするためには、十分な輝度の余裕がある発光素子を採用したり、背景画像を表示する画素の輝度を下げたりする必要があるので、色支配画素の数と劣化調整画素の数の比はこれらを考慮して選択する必要がある。
【0042】
背景画像を表示するサブ画素と固定パターンを表示するサブ画素との間で、相対輝度劣化量を同一にしながら、積分効果により人間が感ずる固定パターンの色を各ユニット・パターンで同一にできるのは、すでに説明したように、発光素子の相対発光時間に対する輝度劣化量の割合と、輝度比に対する輝度劣化量の割合が異なるからである。図6は、輝度の積分効果を説明する図である。図6で、相対発光時間T1で発光する画素群31の輝度比がaで、相対発光時間T2で発光する画素33の輝度比がbであるとする。画素群31が発光する色を画素33が発光する色よりも人間が強く感ずるには、aT1>bT2の条件が成立する必要がある。したがって、(b/a)×(T2/T1)<1になる必要がある。
【0043】
この不等式は、輝度比の比よりも相対発光時間の比が小さくなればユニット・パターンの中に2種類の色が含まれていても人間は一方の色を感ずることができるということを意味する。具体的に調整周期が4の場合について説明すると、画素群31は相対発光時間T1が3/4のときに輝度比aが4/3であるとする。また、画素33は相対発光時間T2が1/4のときに輝度比bが4であるとする。この場合、画素群31の積分輝度は(4/3)×3=4となり、画素33の積分輝度は4×1=4となって両者は等しくなり(b/a)×(T2/T1)=1となる。このような条件で赤、緑、青の3つのサブ画素を表示したときは、人間が感ずる色は灰色になって色相がなくなるため色を表示することができない。したがって、発光素子が相対発光時間の比と輝度比の比が反比例するように劣化する場合は積分効果を期待することはできない。また、調整周期を2にした場合は、ユニット・パターン数も2になるため、たとえば色支配画素で赤と緑のサブ画素を発光させ劣化調整画素で青を表示させて各サブ画素の相対輝度劣化量が同一に進行するように調整すると、ユニット画素群は灰色を表示するようになるため調整周期の最低値は3にする必要がある。
【0044】
[発光パターン数2の例]
図7は、調整周期を4にして発光パターン数を2にしたときの固定パターン10の表示方法を説明する図である。図7が図2と異なるのは、発光パターンCはいずれのサブ画素も発光させないようにし、かつ、発光パターンA、Bで発光する画素は、赤と緑のサブ画素の輝度比を表1に基づいて1.16にしている点だけである。これは、発光パターンDの相対発光時間は1/4で変化しないが、発光パターンA、Bの相対発光時間は2/4に変化しているために輝度比をそれに応じて変えたためである。したがって、各ユニット・パターンは発光パターンA、Bで表示する色支配画素と発光パターンDで表示する劣化調整画素と発光パターンCで発光する中間画素を含む。中間画素は発光を停止している画素をいう。このように表示させても、1回の調整周期が完了した時点で各画素21、23、25、27は、各発光パターンA、B、C、Dを単位発光時間ずつ表示することになり、表1より各画素21、23、25、27に含まれるサブ画素の相対輝度劣化量は等しくなる。
【0045】
[画素マトリクス]
図8は、OELDに表示された固定パターン10を表示する画素の一部を示す画素マトリクス100を示す図である。画素マトリクス100は、5個の水平ラインと10個の垂直ラインで示している。画素マトリクス100は、各水平ライン上に隣接するように繰り返し配置された複数のユニット画素群20が、図2、図3で説明したユニット・パターンを表示する。偶数の水平ライン上のユニット画素群同士および奇数の水平ライン上のユニット画素群同士は、垂直ライン上の発光パターンが一致している。偶数の水平ライン上のユニット画素群と奇数の水平ライン上のユニット画素群は、水平方向に2画素分だけ位相がずれている。画素マトリクス100の各画素は、調整周期の間に時間軸上で4つの画像パターン1〜4を表示する。図8には、画像パターン1を表示する10×5個の各画素の発光パターンをA〜Dで示している。
【0046】
図9は、図8の画素マトリクス100が表示する画面の様子を示す図である。図9では白塗りの画素は黄色を表示し、模様のついた画素は青色を表示している。この例では、調整周期が4で色支配画素に対する発光パターン数と劣化調整画素に対する発光パターン数が3対1で構成されている。そして、奇数の水平ライン同士および偶数の水平ライン同士では、同一の垂直ライン上にある画素が同じ色を表示している。また、偶数の水平ライン上の画素と奇数の水平ライン上の画素が表示する色は相互に、水平方向に2発光パターンだけ位相がシフトしている。このように表示することで、青を表示する調整画素が画素マトリクス100において平面的に均等に配置され、ユーザが認識する色支配画素が表示する色をより均等にすることができる。
【0047】
[他の調整周期に対する画像パターン]
図10は、画素マトリクス100にさまざまな調整周期のユニット・パターンを適用したときの画像パターンを示す図である。図10(A)の画像パターンは、調整周期が3で黄色を表示する2個の発光パターンと青色を表示する1個の発光パターンを含むユニット・パターンで構成されている。青色の発光パターンを表示する画素の間には黄色の発光パターンを表示する2個の画素が挿入されているため水平ラインの位相を順番に1画素ずつシフトしている。その結果、青色の画素は斜め方向のストライプになる。
【0048】
図10(B)の画像パターンは、調整周期が5で黄色を表示する4個の発光パターンと青色を表示する1個の発光パターンで構成されている。青色の発光パターンを表示する画素の間には黄色の発光パターンを表示する4個の画素が挿入されているため
青色の発光パターンを表示する画素の空間密度は部分的に偏っている。図10(C)の画像パターンは、調整周期が6で黄色を表示する5個の発光パターンと青色を表示する1個の発光パターンで構成されている。青色の発光パターンを表示する画素の間には黄色の発光パターンを表示する5個の画素が挿入されているため水平ラインの位相を順番に3画素ずつシフトしている。その結果、偶数の水平ラインと奇数の水平ラインでは垂直ライン上の発光パターンが一致し、青色の画素は空間的にバランスよく配置される。
【0049】
[空間軸を垂直ラインにした画素マトリクス]
図11は、図2に示したユニット画素群を、垂直方向の空間軸に複数個隣接して配置した画素マトリクス200を示す図である。この場合発光パターンA、B、C、Dは、時間軸上で画像パターンが切り換わるごとに垂直ライン上で順番に遷移する。また、偶数の垂直ライン上にある画素と奇数の垂直ライン上にある画素は、同一の水平ライン上において同じ発光パターンを発光する。奇数の垂直ライン上の画素が表示する発光パターンと偶数の垂直ライン上の画素が発光する発光パターンは、垂直方向に2画素分だけ位相がシフトしている。これまで、劣化調整画素は1個の例だけを示したが、色支配画素の積分輝度が劣化調整画素の積分輝度よりも大きくなればよいので、劣化調整画素は1個に限定する必要はない。
【0050】
また、色支配画素では黄色を表示する例を示したが、色支配画素では赤と青のサブ画素を同じ輝度で発光させてマゼンタにし、劣化調整画素を緑色にすることもできる。また、色支配画素で青色と緑色のサブ画素を同じ輝度で発光させてシアンにし、劣化調整画素を赤色にすることもできる。本発明にかかる時分割巡回方式を採用すれば、このように複数の色を表示できるので、図1の固定パターン10について星形領域13を黄色で表示し、十字領域15をマゼンタで表示し、円形領域17をシアンで表示することも可能になる。さらに、色支配画素を構成する各画素では、2つのサブ画素を同じ輝度で発光させる例を説明したが、色支配画素の各画素における2つのサブ画素を異なる輝度で発光させることもできる。
【0051】
[色支配画素が異なる色を表示する例]
図12は、ユニット画素群20の色支配画素を構成するサブ画素を異なる輝度で発光させる例を示す図である。図3の例と同様に調整周期を4にして、赤色のサブ画素は相対発光時間を3/4、輝度比を1.06とし、緑色のサブ画素は相対発光時間を2/4、輝度比を1.16、青色のサブ画素は相対発光時間を1/4、輝度比を1.37にすることで、各サブ画素の相対輝度劣化量と背景画像を表示する画素の相対輝度劣化量を一致させることができる。ここでは一例として、図2に示した発光パターンAとCでは、赤色のサブ画素の輝度比を1.06で緑色のサブ画素の輝度比を1.16にする。発光パターンBでは、赤色のサブ画素の輝度比を1.06にする。発光パターンDでは、青色のサブ画素の輝度比を3.18にする。そして、図12のようにユニット画素群20が各ユニット・パターンを、時分割巡回方式で表示すれば、発光パターンAとCを合成した積分輝度が最も高くなって全体の色を支配し、発光パターンBと発光パターンDはその中に点在して、発光パターンA、B、C、Dを表示するユニット画素群20が全体として図2の色とは異なる色を表示するようになる。
【0052】
[電子機器の構成]
図13は、図1〜図12までを参照して説明した固定パターンの表示方法を実行する電子機器300の概略の機能ブロック図である。電子機器300は、携帯式パーソナル・コンピュータ、携帯電話、自動車の表示パネルなどのようなOELDを含む表示装置とすることができる。あるいは電子機器300は、OLEDを外部接続端子に接続して使用する表示装置とすることができる。電子機器300は、画像データ生成部301、パターン・データ格納部303、切換イベント生成部305、画像データ出力部307、およびOELD309で構成されている。
【0053】
画像データ生成部301は、プロセッサ、メイン・メモリおよびコンピュータ・プログラムなどで構成され、OELD309に固定パターン以外の画像を表示するためのデータを生成して画像データ出力部307に出力する。パターン・データ格納部303は、不揮発性のメモリなどで構成され、固定パターンに対応する複数の画像パターンを表示するためのデータを格納する。固定パターンに格納されるデータは、画素マトリクス上での位置と、背景画像の初期輝度に対して輝度比で調整された初期輝度に関する階調の情報を含む。
【0054】
切換イベント生成部305は、画像パターンを切り換えるタイミングとなる切換イベントを生成してパターン・データ格納部303に通知する。切換イベント生成部305は、時間計測器よりOELDの動作時間に関する情報を取得して、画像パターンを切り換えるタイミングを計算して切換イベントを生成する。本実施形態では、単位発光時間は10時間程度〜数日間といったように比較的長い時間を選定することができる。単位発光時間はさほど厳密に管理する必要がないので、切換イベント生成部305は、電子機器が日常ほぼ一定の時間だけ動作するような携帯式パーソナル・コンピュータの場合には、パワー・オンのタイミングで切換イベントを生成してもよい。
【0055】
パターン・データ格納部303は、切換イベントを受け取るたびに、画像データ出力部307に送出する画像パターンを切り換える。画像データ出力部307はバッファを含み、画像データ生成部301から受け取った画像データおよびパターン・データ格納部303から受け取った画像パターンのデータをバッファに展開して、所定のタイミングで表示の順番にOELDに出力する。OELD309は、画像データ生成部301で生成した画像データおよびパターン・データ格納部303から出力された画像パターンを表示する。これまで、ディスプレイとしてOELDを例示して説明してきたが、本発明はPDP(Plasma Display Panel)などの他の自発光型方式のディスプレイに適用することもできる。
【0056】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0057】
10…固定パターン
11…背景画像
20…ユニット画素群
21、23、25、27…画素
100、200…画素マトリクス
300…電子機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光型のディスプレイの背景画像にカラーの固定パターンを表示する電子機器であって、
画素マトリクス上に隣接して配置された複数の画素が前記固定パターンの一部を表示するユニット画素群を構成し、
発光するサブ画素の輝度情報で構成され前記ユニット画素群を形成する画素の数に一致した数の複数の発光パターンを前記ユニット画素群が表示し、
前記ユニット画素群に含まれるすべての画素が前記複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで順番に切り換えて表示する
電子機器。
【請求項2】
前記複数の発光パターンが、第1の色を表示する複数の第1の発光パターンと該第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンとを含み、前記第1の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が前記第2の発光パターンを表示する画素の輝度の合計より高い請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の第1の発光パターンの数が3で前記第2の発光パターンの数が1である請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の発光パターンの数が5で前記第2の発光パターンの数が1である請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
複数の前記ユニット画素群が、前記固定パターンを表示するために前記画素マトリクスの水平ライン上に隣接して配置され、隣接する水平ライン同士で前記第2の発光パターンを表示する画素の位置が所定の画素数だけ水平方向にシフトしている請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
複数の前記ユニット画素群が、前記固定パターンを表示するために前記画素マトリクスの垂直ライン上に隣接して配置され、隣接する垂直ライン同士で前記第2の発光パターンを表示する画素の位置が所定の画素数だけ垂直方向にシフトしている請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子機器
【請求項7】
前記背景画像を表示する画素マトリクスに前記ユニット画素群が配置され、前記ユニット画素群は前記固定パターンを表示する発光パターンとは異なる複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで切り換えて前記背景画像を表示する請求項1から請求項6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記複数の発光パターンが第1の色を表示する第3の発光パターンと第2の色を表示する第4の発光パターンと第3の色を表示する第5の発光パターンとを含み、前記第3の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が、前記第4の発光パターンを表示する画素の輝度の合計および前記第5の発光パターンを表示する画素の輝度の合計のいずれよりも高い請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第4の発光パターンがいずれのサブ画素も発光させない非発光状態を示す請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
自発光型のディスプレイの背景画像にカラーの固定パターンを表示する電子機器であって、
画素マトリクス上に隣接して配置された複数の画素が前記固定パターンの一部を表示するユニット画素群を構成し、
前記ユニット画素群は複数の画素が第1の色を表示し残りの1つの画素が第2の色を表示し、
前記ユニット画素群に含まれるすべての画素が前記第2の色を所定のタイミングで順番に表示する
電子機器。
【請求項1】
自発光型のディスプレイの背景画像にカラーの固定パターンを表示する電子機器であって、
画素マトリクス上に隣接して配置された複数の画素が前記固定パターンの一部を表示するユニット画素群を構成し、
発光するサブ画素の輝度情報で構成され前記ユニット画素群を形成する画素の数に一致した数の複数の発光パターンを前記ユニット画素群が表示し、
前記ユニット画素群に含まれるすべての画素が前記複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで順番に切り換えて表示する
電子機器。
【請求項2】
前記複数の発光パターンが、第1の色を表示する複数の第1の発光パターンと該第1の発光パターンとは異なる第2の発光パターンとを含み、前記第1の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が前記第2の発光パターンを表示する画素の輝度の合計より高い請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の第1の発光パターンの数が3で前記第2の発光パターンの数が1である請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の発光パターンの数が5で前記第2の発光パターンの数が1である請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
複数の前記ユニット画素群が、前記固定パターンを表示するために前記画素マトリクスの水平ライン上に隣接して配置され、隣接する水平ライン同士で前記第2の発光パターンを表示する画素の位置が所定の画素数だけ水平方向にシフトしている請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
複数の前記ユニット画素群が、前記固定パターンを表示するために前記画素マトリクスの垂直ライン上に隣接して配置され、隣接する垂直ライン同士で前記第2の発光パターンを表示する画素の位置が所定の画素数だけ垂直方向にシフトしている請求項2から請求項4のいずれかに記載の電子機器
【請求項7】
前記背景画像を表示する画素マトリクスに前記ユニット画素群が配置され、前記ユニット画素群は前記固定パターンを表示する発光パターンとは異なる複数の発光パターンのそれぞれを所定のタイミングで切り換えて前記背景画像を表示する請求項1から請求項6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記複数の発光パターンが第1の色を表示する第3の発光パターンと第2の色を表示する第4の発光パターンと第3の色を表示する第5の発光パターンとを含み、前記第3の発光パターンを表示する画素の輝度の合計が、前記第4の発光パターンを表示する画素の輝度の合計および前記第5の発光パターンを表示する画素の輝度の合計のいずれよりも高い請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第4の発光パターンがいずれのサブ画素も発光させない非発光状態を示す請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
自発光型のディスプレイの背景画像にカラーの固定パターンを表示する電子機器であって、
画素マトリクス上に隣接して配置された複数の画素が前記固定パターンの一部を表示するユニット画素群を構成し、
前記ユニット画素群は複数の画素が第1の色を表示し残りの1つの画素が第2の色を表示し、
前記ユニット画素群に含まれるすべての画素が前記第2の色を所定のタイミングで順番に表示する
電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−17746(P2011−17746A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160413(P2009−160413)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
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