説明

画素回路

画素駆動回路が、有機発光ダイオード(OLED)をアクティブマトリクス方式で駆動するために提供される。画素回路は、駆動トランジスタを備えている。駆動トランジスタの電流路は、一端が第1の電圧供給ラインに接続され、他端がOLEDに接続されている。駆動トランジスタのゲート端子は、記憶素子に接続されている。記憶素子は、駆動トランジスタのゲートとソースとの間に接続されて、第1のスイッチトランジスタの制御の下で、駆動トランジスタ用の駆動信号を記憶する。第1のスイッチトランジスタは、第1のセレクトラインへのゲート接続部を有する。第1のスイッチトランジスタの電流路は、駆動トランジスタのゲートとドレインとの間に接続されている。第2のスイッチトランジスタは、第2のセレクトラインへのゲート接続部を有する。第2のスイッチトランジスタの電流路は、一端がデータラインに接続され、他端が駆動トランジスタとOLEDとの間にあるノードに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、アクティブマトリクス駆動式の有機ELデバイス用の画素回路に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、特に好ましい形式の電気光学発光装置を構成する。OLEDを用いて製造されるディスプレイは、LCDや他のフラットパネルの技術に優る利点をいくつか提供する。これらのディスプレイは、明るくて、高速スイッチング可能であり(LCDと比較して)、広視野角を実現し、さらに、様々な基板上に容易に、かつ安価に形成することができる。
【0003】
有機(ここでは、有機金属も含む)LEDは、使用される材料に応じた様々な色で、ポリマー、低分子、デンドリマーを含む材料を用いて製造することができる。ポリマーをベースとする有機LEDの例は、国際公開第90/13148号、国際公開第95/06400号、国際公開第99/48160号に記載されている。デンドリマーをベースとする材料の例は、国際公開第99/21935号と国際公開第02/067343号に記載されている。また、いわゆる低分子をベースとするデバイスの例は、米国特許第4,539,507号明細書に記載されている。
【0004】
図1を参照すると、OLEDの一般のデバイス構造は、透明なガラス基板またはプラスチック基板1と、酸化インジウム・スズのアノード2とカソード4から成っている。アノード2とカソード4との間に有機EL層3が設けられる。アノード2とカソード4の間には、電荷輸送層、電荷注入層、または電荷阻止層など、さらに他の層も設けられることがある。
【0005】
有機EL層3は、パターニング(パターン化)されることも、パターニングされないこともある。例えば、照明源として使用されるデバイスは、パターニングされない。パターニングされた層を含むデバイスは、パッシブマトリクス方式のディスプレイか、あるいは、アクティブマトリクス方式のディスプレイであってよい。パッシブマトリクス方式のディスプレイでは、アノード2は、アノード材料のパラレルストライプから構成されており、このストライプ状のアノード2上に有機EL層3が形成されている。有機EL層3上には、アノード2のパラレルストライプに直交して、カソード4のパラレルストライプが配置されている。カソード4の隣接するストライプは、一般に、フォトリソグラフィによって形成される絶縁材料のストライプ、いわゆる「カソードセパレータ」で隔てられる。パッシブマトリクス方式のディスプレイは、列ドライバと行ドライバを用いて駆動される。この駆動は、ディスプレイを反復的に走査して、直交するアノードストライプとカソードストライプでそれぞれ表される列と行に沿って個々の画素をアドレス指定することによって行われる。いわゆるアクティブマトリクス方式のディスプレイは、一般に、パターニングされた有機EL層3を有している。パターニングされた有機EL層3は、パターニングされたアノード2および非パターニングされた(パターニングされていない)カソード4と組み合わせて使用される。アクティブマトリクスの駆動方式では、ディスプレイの各画素は、それ自身に関連する駆動回路を備えている。駆動回路は、一般に、少なくとも1つの記憶素子(例えば、キャパシタ)と、アドレス指定トランジスタまたはスイッチングトランジスタと、駆動トランジスタで構成されている。
【0006】
OLEDデバイスは完全に透明である場合もある。その場合、アノード2もカソード4も透明である。透明カソードを有するいわゆる上面発光型のOLEDデバイスは、アクティブマトリクス方式のデバイスには特に有利である。なぜなら、このようなデバイス中の透明アノードを通じての発光が、発光画素の真下にある駆動回路で少なくとも一部阻止されるからである。
【0007】
透明カソードデバイスは透明アノードを持つ必要がないと理解されよう(もちろん、完全に透明なデバイスが要望される場合を除く)。したがって、下面発光型のデバイスに使用される透明アノードは、アルミニウム層などの反射材料の層に代えられるか、あるいは、そのような層で補助されてよい。透明カソードデバイスの例は、例えば英国特許第2348316号明細書に開示されている。
【0008】
図2は、電圧制御式のOLEDアクティブマトリクス画素回路10の一例を示した図である。画素回路10は、ディスプレイの各画素に対して提供される。また、接地線(GND線)12、電源線(Vss線)14、行セレクトライン16、列データライン18などのバスラインが提供され、これらの画素を相互に接続する。したがって、各画素は、電源接続部と接地接続部を有する。画素の各行は、共通の行セレクトライン16を有しており、また、画素の各列は、共通の列データライン18を有している。
【0009】
各画素は、接地線12と電源線14との間に、駆動トランジスタ22と直列に接続されたOLED20を有している。駆動トランジスタ22のゲート端子24はストレージキャパシタ26に接続される。アドレス指定トランジスタ28は、行セレクトライン16の制御の下で、ゲート端子24を列データライン18に接続する。アドレス指定トランジスタ28は、薄膜電界効果型トランジスタ(FET)スイッチであり、行セレクトライン16を起動すると、列データライン18をゲート端子24およびストレージキャパシタ26に接続する。このようにして、アドレス指定トランジスタ28がONであるときに、列データライン18上の電圧をストレージキャパシタ26上に蓄えることができる。これは一般に、画素回路のプログラミングとして知られている。この電圧は、少なくともフレームリフレッシュ期間の間、ストレージキャパシタ26上に保持される。なぜなら、駆動トランジスタ22へのゲート接続部分のインピーダンスが比較的に大きく、また、アドレス指定トランジスタ28がOFF状態にあるからである。
【0010】
駆動トランジスタ22は、一般に、FETトランジスタでもあり、閾電圧(スレショルド電圧)よりも低い駆動トランジスタ22のゲート電圧に応じた電流(ドレイン・ソース電流)を流す。それゆえ、ゲート端子24での電圧は、OLED20を流れる電流、つまりOLED20の明るさを制御する。図2の電圧制御式の回路は、特に、OLED20の発光が印加電圧に非線形的に左右されるために、いくつかの欠点がある。また、OLEDから出力される光は、OLEDが流す電流に比例するので、電流制御を行うのが好ましい。図3は、電流制御を用いる図2の回路の変形例を示している。なお、図3では、図2のものと同じ要素が、同じ参照番号で表されている。電流発生器30で設定されるデータライン(列データライン)上の電流は、FET32を流れる電流をプログラミングし、さらに、この電流が、OLED20を流れる電流を設定する。これは、トランジスタ28aがONであるときに、(整合された)トランジスタ32と駆動トランジスタ22がカレントミラーを形成するからである。
【0011】
アクティブマトリクス駆動回路が、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、またはLTP(低温ポリシリコン)で製造されたトランジスタから構成される場合には、これらのトランジスタは、一般に、p型デバイスと呼ばれる。
【0012】
アクティブマトリクス駆動回路が、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)で製造されたトランジスタから構成される場合には、これらのトランジスタは、一般に、n形デバイスと呼ばれる。
【0013】
FET技術(a−Si:Hと、LTP)において直面する1つの問題は、連続動作に対する閾電圧(Vth)のシフトである。一般に、a−Si:Hのトランジスタ用のVthのシフトは、電圧ストレスに非常に敏感である。駆動トランジスタに対して、閾電圧を超える高い電圧を印加する必要があれば、閾電圧が大きく変化する。このことは、同一の印加プログラミング信号に対して、異なる駆動トランジスタが異なる駆動電流をOLEDに流すこととなって現れる。したがって、これは、表示の全域にわたって、画素の明るさが非線形となるという問題をもたらすかもしれない。
【0014】
前述の問題を解決する一つの手法が、Shirasaki論文で提案されている(非特許文献1参照)。この論文では、3トランジスタa−Si TFT画素回路が開示されており、その中では、画素回路および駆動方式が、閾電圧のシフトに起因する不安定性を補うことが可能であることが趣旨として述べられている。
【0015】
図4aは、Shirasaki論文の画素回路であり、図4bは、図4aの画素回路用の関連タイミングチャートである。図4aと図4bを参照すると、画素回路の駆動中には、書込みのステージ中にソース電圧VSourceがlowであり、保持のステージまたは駆動のステージ中にVSourceがhighに戻るように、VSourceを変化させなければならないことがわかる。ときには、例えば既存の「市販の」駆動部品が使用される場合に、このことは望ましくないかもしれない。標準のLCD行ドライバは、これらの様々な非標準信号を供給できないことがある。また、VSourceの変調は、キャパシタンスをいくらか変更させることもあり、それにより、駆動電流IT3を所期のものよりも減らすこともある。
【0016】
不安定性を補う方式として提案される他の方法は、さらに複雑な画素回路構成と駆動方式を必要とする。どんなデバイスにおいても、製造は簡単にしておく必要性があり、それとともに、追加デバイス用の有効領域(リアルエステート)の大きさには上限がある。さらに、ディスプレイの開口率は、目に見える発光画素で占有されるスペースを、バスラインまたはデバイスで使用されるスペースと比較したものとして一般に定義されており、デバイスとして、さらに多くのデバイスまたはラインが組み込まれると、この開口率は減らされる。
【0017】
時間の経過とともにOLEDの発光に影響を及ぼすさらなるパラメータは、OLED自体から、特にOLEDの寿命(経年変化)により生じる。OLEDが時を経るにつれて、OLEDは一般に、効率が悪くなって、光出力が低下する。光出力の低下は一般に、電流と光子の変換効率の低下から生じると考えれており、また、所与の駆動信号に対してOLEDを流れる電流の減少をもたらすOLED抵抗の増大から生じると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第90/13148号
【特許文献2】国際公開第95/06400号
【特許文献3】国際公開第99/48160号
【特許文献4】国際公開第99/21935号
【特許文献5】国際公開第02/067343号
【特許文献6】米国特許第4,539,507号明細書
【特許文献7】英国特許第2348316号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Shirasaki,T et al、大型フルカラーOLEDテレビジョン−発光ポリマとa‐Si TFT技術−、vol II、p257−278、2004年12月、ディスプレイ国際ワークショップ(IDW)、(http://hat-lab.ed.kyushu-u.ac.jp//Documents/AMD3#OLED5-1.pdf.にてオンライン入手可能)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
画素回路の駆動トランジスタの閾値の変化を補うすることを目的として改良された画素回路を提供することが望ましい。
【0021】
OLEDの経年変化を補うすることを目的として改良された画素回路を提供することも望ましい。
【0022】
バスラインの数を減らして、デバイスの開口率を大きくできるように改良された画素回路を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、有機発光ダイオード(OLED)を駆動するための画素駆動回路が提供される。この画素駆動回路は、第1のセレクトラインと、第2のセレクトラインと、データラインと、第1の電圧供給ラインと、駆動トランジスタを備える。駆動トランジスタの電流路は、一端が第1の電圧供給ラインに接続され、他端がOLEDに接続されている。駆動トランジスタのゲート端子は、記憶素子に接続されており、この記憶素子は、駆動トランジスタのゲートとソースとの間に接続されて、第1のスイッチトランジスタの制御の下で、駆動トランジスタ用の駆動信号を記憶する。第1のスイッチトランジスタは、第1のセレクトラインへのゲート接続部を有し、第1のスイッチトランジスタの電流路は、駆動トランジスタのゲートとドレインとの間に接続されている。第2のスイッチトランジスタは、第2のセレクトラインへのゲート接続部を有し、第2のスイッチトランジスタの電流路は、一端がデータラインに接続され、他端が駆動トランジスタとOLEDとの間にあるノードに接続されている。
【0024】
さらに他の実施形態では、第3のセレクトラインと、この第3のセレクトラインへのゲート接続部を有する第3のスイッチトランジスタが備えられる。第3のスイッチトランジスタは、駆動トランジスタの電流路において、OLEDと駆動トランジスタとの間に直列に設けられる。
【0025】
好ましくは、第1のセレクトラインは、非反転セレクトラインであり、第3のセレクトラインは、第1のセレクトラインがHIGHであるときに第3のセレクトラインがLOWとなるような反転セレクトラインである。
【0026】
さらに好ましくは、第1のセレクトラインと第2のセレクトラインは共通である。
【0027】
好ましくは、第1の電圧供給ラインと他のセレクトラインが、電圧供給兼セレクトラインとして形成される。
【0028】
好ましくは、第1の電圧供給ラインと他のセレクトラインが、電圧供給兼セレクトラインとして形成され、第1のセレクトラインと第2のセレクトラインが共通である。
【0029】
さらに他の実施形態では、他のセレクトラインが、共通データラインを共用する隣接画素回路の第1のセレクトラインである。
【0030】
本発明の実施形態では、駆動トランジスタは、n型トランジスタであり、好ましくはアモルファス・シリコンから製造される。
【0031】
好ましくは、OLEDは、OLEDのアノード端子が駆動トランジスタに接続されるような電流路を有する。
【0032】
また、本発明によれば、行と列で配置される複数の画素駆動回路が提供される。各データラインが、列中の各画素回路で共用され、各電圧供給ライン兼全セレクトラインが、行中の各画素回路で共用される。特定の列では、アドレス指定中に、n−1番目の画素駆動回路の電圧供給兼セレクトラインが、n番目の画素駆動回路への第1の電圧供給ラインとして働き、n+1番目の画素駆動回路の電圧供給兼セレクトラインが、n番目の画素駆動回路へのセレクトラインとして働く。
【0033】
好ましくは、画素駆動回路は、行と列で配置されてディスプレイを形成し、各データラインは、列中の各画素回路で共用され、各セレクトラインは、行中の各画素回路で共用される。
【0034】
好ましくは、第2のスイッチトランジスタは、OLEDの両端の電圧降下を検出し検出電圧降下信号を生成するための電圧検出デバイスに接続される。検出電圧降下信号はコントローラに送られて、検出電圧降下信号に応じて駆動信号が調整される。
【0035】
さらに好ましくは、この検出電圧降下信号は、ルックアップテーブルに提供されて、代表OLED用の電圧と駆動信号との関係を表す電圧データが保存される。コントローラは、この関係に応じて、駆動信号を調整するようにプログラムされている。
【0036】
ある実施形態では、電圧検出デバイスは、ディスプレイのすべてのOLEDの電圧降下を検出する。また、複数の電圧検出デバイスが備えられ、複数の電圧検出デバイスの各々が、ディスプレイのOLEDの一部の電圧降下を検出する。電圧検出デバイスで検出される検出電圧降下は、複数のOLEDの両端の電圧降下を組み合わせたものであってもよい。
【0037】
好ましくは、本発明はさらに、検出電圧降下信号から画素駆動回路のトランジスタのトランジスタ特性を決定するモジュールをさらに備えるアクティブマトリクス方式の表示装置も提供する。
【0038】
決定されたトランジスタ特性は、駆動トランジスタの閾電圧のシフトであってよい。特に、画素駆動回路は電流プログラム方式のものである。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、有機発光ダイオード(OLED)を駆動する画素駆動回路が提供される。この画素駆動回路あh、第1のセレクトラインと、データラインと、第1の電圧供給ラインと、駆動トランジスタと、を備える。駆動トランジスタの電流路は、一端が第1の電圧供給ラインに接続され、他端がOLEDに接続されている。駆動トランジスタのゲート端子は、記憶素子に接続されて、第1のスイッチトランジスタおよび第2のスイッチトランジスタの制御の下で、駆動トランジスタ用の駆動信号を記憶する。第1のスイッチトランジスタおよび第2のスイッチトランジスタは、第1のセレクトラインへのゲート接続部を有する。第3のスイッチトランジスタは、第2のセレクトラインへのゲート接続部を有し、駆動トランジスタの電流路においてOLEDと駆動トランジスタとの間に直列に設けられている。
【0040】
好ましくは、第1のセレクトラインは、非反転セレクトラインであり、第2のセレクトラインは、第1のセレクトラインがHIGHであるときに第2のセレクトラインがLOWとなるような反転セレクトラインである。さらに好ましくは、第1の電圧供給ラインと他のセレクトラインは、電圧供給兼セレクトラインとして形成される。また、任意に、他のセレクトラインは、第1のセレクトラインであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
次に、本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照して例示としてのみ説明する。
【0042】
【図1】図1は、有機ELデバイスの従来技術の一例を示す図である。
【図2】図2は、電圧駆動のアクティブマトリクスOLED画素回路の従来技術の一例を示す図である。
【図3】図3は、電流駆動のアクティブマトリクスOLED画素回路の従来技術の一例を示す図である。
【図4a】図4aは、電流駆動のアクティブマトリクスOLED画素回路の従来技術の一例を示す図である。
【図4b】図4bは、図4aに示される画素回路用のタイミング図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態による画素回路を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態による画素回路を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施形態による画素回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図5には、本発明の第1の実施形態の画素回路50が示されている。この画素回路50は、複数の画素から構成される全体表示(図示されてない)の各OLED52に対して備えられる。また、接地(GND)54、電源電圧線56、第1の行セレクトライン58、列データライン60が提供されて、これらの画素が相互接続される。
【0044】
第2の行セレクトライン62も提供されて、これらの画素が相互接続される。したがって、各画素回路50は、共通の接地54と電源電圧線56を有している。また、各画素は、共通の第1の行セレクトライン58と第2の行セレクトライン62と列データライン60を有している。
【0045】
OLED52は、電源電圧線56と接地54との間で、第1のトランジスタ64と駆動トランジスタ66に直列に接続されている。OLED52のカソード端子は、接地54に接続され、また、アノード端子は、第1のトランジスタ64および駆動トランジスタ66との直列接続を介して、電源電圧線56に接続される。第1のトランジスタ64のゲート端子は、第2の行セレクトライン62に接続され、それにより、第2の行セレクトライン62の制御の下にある。
【0046】
駆動トランジスタ66のゲート端子は、ストレージキャパシタ68の第1の端子に接続され、ストレージキャパシタ68の第2の端子は、スイッチトランジスタ70の第1の端子に接続されている。スイッチトランジスタ70のゲート端子は、第1の行セレクトライン58に接続され、それにより、第1の行セレクトライン58の制御の下にある。スイッチトランジスタ70の第2の端子は、列データライン60に接続されている。第2のトランジスタ72は、ゲート端子と第1の端子と第2の端子を有している。第2のトランジスタ72のゲート端子は、第1の行セレクトライン58に接続され、それにより、第1の行セレクトライン58の制御の下にある。第2のトランジスタ72の第1の端子は、ストレージキャパシタ68の第1の端子および駆動トランジスタ66のゲート端子に接続されている。第2のトランジスタの第2の端子は、電源電圧線56に接続されている。
【0047】
動作の際、画素回路50は、電源電圧線56から接地54まで画素回路50を横切って印加される電源電圧Vddを有している。プログラミングのステージでは、第1の行セレクトライン58がHIGHであり、それにより、スイッチトランジスタ70と第2のトランジスタ72がON状態にされている。同時に、第1の行セレクトライン58と比較して反転行セレクトラインである第2の行セレクトライン62はLOWであり、第1のトランジスタ64をOFFにスイッチングする。したがって、OLEDは電圧供給ラインから隔離されて、それにより、電源電圧を低レベルと高レベルとの間で変調する必要がなくなる。それゆえ、列データライン60の電圧は、ストレージキャパシタ68上に蓄えることができる。発光のステージでは、第1の行セレクトラインがLOWであり、それにより、スイッチトランジスタ70および第2のトランジスタ72がOFF状態にされている。同時に、第2の行セレクトライン62はHIGHであり、それにより、駆動トランジスタ66および第1のトランジスタ64は、電流(ドレイン・ソース電流)をOLED52に流すことができる。
【0048】
図5(および、以下の図6と図7)の画素回路は、当技術分野において知られているように、列データライン60上に電流発生器(図示されてない)を追加して、電流制御される。
【0049】
図6には、本発明の第2の実施形態の画素回路100が示されている。なお、図6では、図5のものと同じ要素が、同じ参照番号で表されている。この画素回路100は、追加の行セレクトライン102を備えている。
【0050】
スイッチトランジスタ70は、ゲート端子と第1の端子と第2の端子を備えている。スイッチトランジスタ70のゲート端子は、追加の行セレクトライン102に接続され、それにより、追加の行セレクトライン102の制御の下にある。スイッチトランジスタ70の第1の端子は、ストレージキャパシタ68の第2の端子に接続されている。スイッチトランジスタ70の第2の端子は、列データライン60に接続されている。
【0051】
動作の際、画素回路100のプログラミングステージでは、OLED52の両端の電位差がほぼゼロであるように、電源電圧Vddを低電位に保持する。このプログラミングステージでは、第1の行セレクトライン58と、追加の行セレクトライン102は両方ともHIGHであり、それにより、列データライン60上の電圧は、ストレージキャパシタ68上に蓄えることができる。発光ステージでは、電源電圧Vddは高電位になり、第1の行セレクトライン58と、追加の行セレクトライン102はLOWとなる。したがって、駆動トランジスタ66により、電流(ドレイン・ソース電流)をOLED52に流すことができる。
【0052】
図6に示される実施形態は、測定のステージを含んでいる。この測定のステージでは、追加のセレクトライン102をHIGHにし、かつ、列データライン60上の電圧降下を、ノード104から接地54までOLED52を横切って測定できるようにする。OLEDの両端の電圧降下は、有機材料の経年変化により異なることが知られている。したがって、この測定された電圧降下は、そのような経年変化を表すものであり、このような電圧降下を利用すれば、上記経年変化を補うことができる。このような電圧降下を測定して、それをルックアップテーブルと比較してもよい。これは、コントローラを介して、列データライン60上のさらに高い、またはさらに低い駆動信号(電圧または電流)で画素回路100をプログラムするようことを必要とするかもしれない。個々の画素は、このようにして補われるか、または、いくつかの画素が測定されて、1行ずつ補われるか、あるいは、このデバイスが全体として補われてもよい。いくつかのOLED52にわたる電圧降下は、いくつかのOLED52の両端の電圧降下の組合せにより得られてもよい。
【0053】
図7には、本発明の第3の実施形態の2つの画素回路(200と250)が示されている。図7では、図5に描かれているものと同じ要素が、同じ参照番号で表されている。図7を参照すると、画素回路250の電圧供給ライン252は、隣接する画素回路200の行セレクトライン254と共用されている。したがって、デバイスのバスラインの数は減らされる。このようにして、電圧供給ラインと行セレクトラインが組み合わされて、いくつかの画素回路間で共用される。
【0054】
デバイス中のバスラインの総数を減らすことが必要である場合には、この画素回路の実施形態を、実施形態1および実施形態2の両方または一方と合体することがある。さらに、供給電圧を変調する必要なしに、OLEDの経年変化を補うことができる画素回路を実現したい場合には、実施形態1は、実施形態2と組み合わされてもよい。
【0055】
当業者であれば、おそらく、他の多くの効果的な代替方法が思いつくであろう。本発明は、上述の実施形態には限定されず、特許請求の範囲の精神およびその範囲内にある当業者には明白な変更を含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオード(OLED)を駆動する画素駆動回路であって、
第1のセレクトラインと、
第2のセレクトラインと、
データラインと、
第1の電圧供給ラインと、
駆動トランジスタと、
を備え、
前記駆動トランジスタの電流路は、一端が前記第1の電圧供給ラインに接続され、他端が前記OLEDに接続されており、
前記駆動トランジスタのゲート端子は、記憶素子に接続されており、前記記憶素子は、前記駆動トランジスタのゲートとソースとの間に接続されて、第1のスイッチトランジスタの制御の下で、前記駆動トランジスタ用の駆動信号を記憶し、
前記第1のスイッチトランジスタは、前記第1のセレクトラインへのゲート接続部を有し、前記第1のスイッチトランジスタの電流路は、前記駆動トランジスタのゲートとドレインとの間に接続されており、
第2のスイッチトランジスタは、前記第2のセレクトラインへのゲート接続部を有し、前記第2のスイッチトランジスタの電流路は、一端が前記データラインに接続され、他端が前記駆動トランジスタと前記OLEDとの間にあるノードに接続されていることを特徴とする画素駆動回路。
【請求項2】
第3のセレクトラインと、
前記第3のセレクトラインへのゲート接続部を有する第3のスイッチトランジスタと、
をさらに備え、
前記第3のスイッチトランジスタは、前記駆動トランジスタの電流路において前記OLEDと前記駆動トランジスタとの間に直列に設けられている、請求項1に記載の画素駆動回路。
【請求項3】
前記第1のセレクトラインは、非反転セレクトラインであり、
前記第3のセレクトラインは、前記第1のセレクトラインがHIGHであるときに前記第3のセレクトラインがLOWとなる反転セレクトラインである、請求項2に記載の画素駆動回路。
【請求項4】
前記第1のセレクトラインと前記第2のセレクトラインが共通である、請求項2または請求項3に記載の画素駆動回路。
【請求項5】
前記第1の電圧供給ラインと他のセレクトラインが、電圧供給兼セレクトラインとして形成される、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画素駆動回路。
【請求項6】
前記第1の電圧供給ラインと他のセレクトラインが、電圧供給兼セレクトラインとして形成され、前記第1のセレクトラインと前記第2のセレクトラインが共通である、請求項1に記載の画素駆動回路。
【請求項7】
前記他のセレクトラインが、共通データラインを共用する隣接画素回路の第1のセレクトラインである、請求項5または請求項6に記載の画素駆動回路。
【請求項8】
前記駆動トランジスタがn型トランジスタである、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の画素駆動回路。
【請求項9】
前記駆動トランジスタがアモルファス・シリコン・トランジスタである、請求項8に記載の画素駆動回路。
【請求項10】
前記OLEDは、前記OLEDのアノード端子が前記駆動トランジスタに接続される電流路を有する、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の画素駆動回路。
【請求項11】
複数の前記画素駆動回路が、行と列で配置され、各データラインが、列中の各画素回路で共用され、各電圧供給ライン兼全セレクトラインが、行中の各画素回路で共用され、
特定の列では、アドレス指定中に、n−1番目の画素駆動回路の電圧供給兼セレクトラインが、n番目の画素駆動回路への第1の電圧供給ラインとして働き、n+1番目の画素駆動回路の電圧供給兼セレクトラインが、n番目の画素駆動回路へのセレクトラインとして働く、請求項5〜請求項10のいずれかに記載の複数の画素駆動回路。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の画素駆動回路のアレイを備えるアクティブマトリクス方式の表示装置であって、
前記画素駆動回路は、行と列で配置されてディスプレイを形成し、各データラインは、列中の各画素回路で共用され、各セレクトラインが、行中の各画素回路で共用されることを特徴とするアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項13】
前記第2のスイッチトランジスタは、OLEDの両端の電圧降下を検出し検出電圧降下信号を生成するための電圧検出デバイスに接続され、前記検出電圧降下信号はコントローラに送られて、前記検出電圧降下信号に応じて前記駆動信号が調整される、請求項12に記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項14】
前記検出電圧降下信号は、ルックアップテーブルに提供されて、代表OLED用の電圧と駆動信号との関係を表す電圧データが保存され、前記コントローラは、前記関係に応じて、前記駆動信号を調整するようにプログラムされている、請求項13に記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項15】
前記電圧検出デバイスは、前記ディスプレイのすべてのOLEDの電圧降下を検出する、請求項13または請求項14に記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項16】
複数の電圧検出デバイスが備えられ、前記複数の電圧検出デバイスの各々が、前記ディスプレイの前記OLEDの一部の電圧降下を検出する、請求項13または請求項14に記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項17】
前記電圧検出デバイスで検出される検出電圧降下は、複数のOLEDの両端の電圧降下を組み合わせたものである、請求項13〜請求項16のいずれかに記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項18】
前記検出電圧降下信号から画素駆動回路のトランジスタのトランジスタ特性を決定するモジュールをさらに備える、請求項13〜請求項17のいずれかに記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項19】
前記トランジスタ特性が、前記駆動トランジスタの閾電圧のシフトである、請求項18に記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項20】
前記画素駆動回路が電流プログラム方式のものである、請求項11〜請求項18のいずれかに記載のアクティブマトリクス方式の表示装置。
【請求項21】
有機発光ダイオード(OLED)を駆動する画素駆動回路であって、
第1のセレクトラインと、
データラインと、
第1の電圧供給ラインと、
駆動トランジスタと、
を備え、
前記駆動トランジスタの電流路は、一端が前記第1の電圧供給ラインに接続され、他端が前記OLEDに接続されており、
前記駆動トランジスタのゲート端子は、記憶素子に接続されており、前記記憶素子は、前記データラインに接続されて、第1のスイッチトランジスタおよび第2のスイッチトランジスタの制御の下で、前記駆動トランジスタ用の駆動信号を記憶し、
前記第1のスイッチトランジスタおよび前記第2のスイッチトランジスタは、前記第1のセレクトラインへのゲート接続部を有し、
第3のスイッチトランジスタは、第2のセレクトラインへのゲート接続部を有し、前記駆動トランジスタの電流路において前記OLEDと前記駆動トランジスタとの間に直列に設けられていることを特徴とする画素駆動回路。
【請求項22】
前記第1のセレクトラインは、非反転セレクトラインであり、
前記第2のセレクトラインは、前記第1のセレクトラインがHIGHであるときに前記第2のセレクトラインがLOWとなる反転セレクトラインである、請求項21に記載の画素駆動回路。
【請求項23】
前記第1の電圧供給ラインと他のセレクトラインが、電圧供給兼セレクトラインとして形成される、請求項21または請求項22に記載の画素駆動回路。
【請求項24】
前記他のセレクトラインが前記第1のセレクトラインである、請求項23に記載の画素駆動回路。
【請求項25】
前述のおよび/または添付図面の図5、図6、図7を参照したとおりの画素駆動回路。
【請求項26】
前述のおよび/または添付図面の図5、図6、図7を参照したとおりのアクティブマトリクス方式の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−541014(P2010−541014A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527516(P2010−527516)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003300
【国際公開番号】WO2009/044120
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】