説明

畦形成機

【課題】畦形成装置に設けられている円筒部をディスクから簡易かつ迅速に着脱できるようにし、様々な畦高が混在する農地での新畦を形成する作業の効率化を実現する。
【解決手段】畦形成機は、旧畦に土を盛り上げる盛土装置と、盛り上げられた盛土を締め固める畦形成装置と、を備える。畦形成装置は、盛土の斜面を締め固めるディスク33と、盛土の上面を締め固める円筒部とを備える。円筒部は、シャフト341を保持する。シャフト341は、円筒部の軸心方向に平行にそれ自体の長手方向が向き、軸回り方向に回転自在かつ長手方向に移動自在にとなっている。円筒部の端部から突出する嵌合ピン344がディスク33に設けられた第1嵌合孔333に嵌合した状態でカムレバー347を操作すると、シャフト341は長手方向移動及び軸回り回転し、ディスク33と円筒部との着脱がロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旧畦を修復して新畦を形成する畦形成機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盛土装置と畦形成装置とを備え、盛土装置を駆動して旧畦上に土を盛り上げ、次いで、畦形成装置を回転させて盛り土を上から締め固めて、旧畦上に新畦を形成する畦形成機が知られている。そして、畦形成装置としては、円錐台状のディスクの先端から円筒部を突出させ、この円筒部の外周で新畦の上面を形成するものが知られている。ここで、畦高が大きい旧畦に新畦を形成する場合、円筒部がディスクに固定されたままだと、円筒部が畦側面と接触してしまう場合がある。この点、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載の畦塗り機は、いずれも畦形成装置の円筒部をディスク先端から取り外すことができるものであり、円筒部をディスクから取り外してディスクを回転させて使用することで、畦高が大きい旧畦に新畦を形成することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−140202号公報(段落0032、図5)
【特許文献2】特開平11−46503号公報(段落0015、図4)
【特許文献3】特許第3163269号公報(段落0100、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載の畦塗り機のいずれにおいても、畦形成装置における円筒部はボルトとナットとでディスクに取り付けられている。そのため、作業者は、円筒部をディスクから取り外すときに、ボルトとナットとの締結を解除する作業を行わなくてはならない。しかし、田圃等の広範な農地で作業を行う作業者にとって、ディスクから円筒部を着脱するために強固に締結されたボルトとナットとを締結解除する作業は煩わしい。特に、一部にのみ畦高が大きい旧畦が存在するような農地では、その一部の旧畦に対してのみ円筒部を取り外して作業を行えばよいのであって、特許文献1〜3に記載の畦塗り機に備わる畦形成装置では、この一部の旧畦に対して新畦を形成するために、簡易かつ迅速に円筒部を着脱することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、畦形成装置に設けられている円筒部をディスクから簡易かつ迅速に着脱できるようにし、様々な畦高が混在する農地での新畦を形成する作業の効率化を実現することである。
【0006】
なお、出願人は、「作業状態では旧畦の上面に接触し非作業状態では当該旧畦の上面との接触が解除される畦上面削土装置を有する畦形成機」を提案している(特願2009―198286「畦形成機」)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の畦形成機は、旧畦に土を盛り上げる盛土装置と、前記盛土装置によって前記旧畦に盛り上げられた盛土を締め固める畦形成装置と、を備え、前記畦形成装置は、側面で前記盛土の斜面を締め固める円錐台状のディスクと、側面で前記盛土の上面を締め固める円筒部と、操作部からの操作によって前記ディスクと前記円筒部との着脱をロックするロック機構と、前記ディスクと前記円筒部との接続部に設けられ、前記ディスクの回転方向に対する前記円筒部の回り止めをする回り止め手段と、を含む。
【0008】
別の面から見た本発明の畦形成機は、旧畦に土を盛り上げる盛土装置と、前記盛土装置によって前記旧畦に盛り上げられた盛土を締め固める畦形成装置と、を備え、前記畦形成装置は、側面で前記盛土の斜面を締め固める円錐台状のディスクと、側面で前記盛土の上面を締め固める円筒部と、前記円筒部の周面に覆われ、前記円筒部の軸心方向に平行にそれ自体の長手方向を向け、軸回り方向に回転自在かつ長手方向に移動自在に前記円筒部に設けられたシャフトと、前記円筒部における前記ディスク側の第1端部及び前記ディスクの上底側の取付端部のいずれか一方から突出する嵌合ピンと、前記第1端部及び前記取付端部のいずれか他方に設けられ、前記嵌合ピンが嵌合する第1嵌合孔と、で構成された回り止め手段と、前記シャフトの長手方向移動及び軸回り回転によって、前記嵌合ピンを前記第1嵌合孔に嵌合した状態での前記第1端部及び前記取付端部との着脱をロックするロック機構と、前記円筒部における前記第1端部とは反対側の第2端部に設けられ、前記シャフトを長手方向移動及び軸回り回転するための操作部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の畦形成機によれば、畦形成装置のディスクと円筒部のロックは、シャフトの長手方向移動及び軸回り回動のみで実現される。したがって、畦形成装置に設けられている円筒部をディスクから簡易かつ迅速に着脱でき、様々な畦高が混在する農地での新畦を形成する作業の効率化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の実施の形態における、畦上面削土装置が作業状態にあるときの、畦形成機の右側面図である。
【図2】畦上面削土装置が作業状態にあるときの、畦形成機の平面図である。
【図3】畦上面削土装置が非作業状態にあるときの、畦形成機の右側面図である。
【図4】畦上面削土装置が非作業状態にあるときの、畦形成機の平面図である。
【図5】畦上面削土装置が作業状態にあるときの、畦形成機の駆動系を表す動力系統図である。
【図6】作業状態にある畦上面削土装置及び盛土装置の一部拡大後面図である。
【図7】未接合状態にあるディスクと円筒部との一部拡大中央断面図である。
【図8】ディスクと円筒部との接合過程の一部拡大中央断面図である。
【図9】接合状態にあるディスクと円筒部との一部拡大中央断面図である。
【図10】図7のX矢視図である。
【図11】図7のY矢視図である。
【図12】図8のZ矢視図である。
【図13】第二の実施の形態における、ディスクと円筒部との接合過程の一部拡大中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の一形態を、図1ないし図12に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第一の実施の形態と呼ぶ。図1,図2は、畦上面削土装置51が作業状態にあるときの、畦形成機1の右側面図,平面図である。図3,図4は、畦上面削土装置51が非作業状態にあるときの、畦形成機1の右側面図,平面図である。図5は、畦上面削土装置51が作業状態にあるときの、畦形成機1の駆動系を表す動力系統図である。図6は、作業状態にある畦上面削土装置51及び盛土装置41の一部拡大後面図である。なお、図6では、畦の形状を一点鎖線で示し、ディスク33を省略している。
【0012】
畦形成機1は、トラクタ(図示せず)の後方に取り付けられて用いられる。畦形成機1は、トラクタの進行方向前方側(図1〜図4における右側)の端部に装着フレーム11を備え、この装着フレーム11がトラクタの後方に取り付けられる。以下、トラクタの進行方向前方側を、単に「進行方向前方側」と呼ぶことがある。また、トラクタの進行方向後方側を、単に「進行方向後方側」と呼ぶことがある。
【0013】
装着フレーム11には、1個のトップブラケット12が上部の中央に、ロアピン13,14が下部の両端に、それぞれ取り付けられている。トップブラケット12及びロアピン13,14がトラクタの三点リンク機構(図示せず)に連結することにより、装着フレーム11はトラクタに装着される。また、装着フレーム11の後方側からは、水平回動軸22が略鉛直方向に延びている。
【0014】
畦形成機1は、入力軸15を備える。入力軸15は、トラクタに備わるPTO軸(図示せず)に連結され、トラクタの駆動力を畦形成機1に入力する。
【0015】
畦形成機1は、支持フレーム21を備える。支持フレーム21は、図2および図4に示すように、装着フレーム11に備わる水平回動軸22を介して、装着フレーム11に取り付けられる。支持フレーム21は、水平回動軸22を回動中心として装着フレーム11に対して水平面内で回動自在である。装着フレーム11と支持フレーム21は、伸縮自在の回動シリンダ23によって連結されている。回動シリンダ23は、支持フレーム21が水平回動軸22を回転中心として水平面内で回動するときに伸縮して、トラクタの進行方向に対する畦形成機1の側方へのオフセット量を調整する。
【0016】
畦形成機1は、畦形成装置31と、盛土装置41と、畦上面削土装置51とを備える。まず、これらの装置及びこれらを駆動する駆動系について説明する。
【0017】
[畦形成装置] 畦形成装置31は、支持フレーム21の進行方向後方側の端部に取り付けられている。畦形成装置31は、畦形成装置回転軸32と、ディスク33と、円筒部34とを備える。
【0018】
畦形成装置回転軸32は、進行方向に直交させて水平に延び、軸回り方向に回転自在となっている。
【0019】
ディスク33は、円錐台状をなし、円錐台先端側を旧畦U(図6参照)の傾斜している側面USに向けて畦形成装置回転軸32に取り付けられる。ディスク33の表面には、複数の金属板が貼り付けられる。
【0020】
円筒部34は、円筒状をなし、ディスク33の円錐台先端側に取り付けられる。円筒部34は、ディスク33に対して着脱自在となっている。この点の詳細は、図7ないし図12に基づいて、後述する。
【0021】
[盛土装置] 盛土装置41は、畦形成装置31に対して進行方向前方側に設置される。盛土装置41は、盛土装置回転軸42と、複数の掘削刃43と、カバー44とを備える。
【0022】
盛土装置回転軸42は、畦形成装置回転軸32と平行に延びていて、畦形成装置31よりも進行方向前方側に位置し、軸回り方向に回転自在となっている。
【0023】
掘削刃43は、盛土装置回転軸42に取り付けられてこの盛土装置回転軸42から放射して延びている。各掘削刃43の先端は、畦傾斜面側に屈曲している。掘削刃43は、掘削する旧畦Uの側面US及び裾部を掘削するとともに、掘削した土を旧畦Uの側面US及び上面UU(図6参照)に飛散して盛り土を形成する。
【0024】
カバー44は、盛土装置41の上部に設置され、掘削刃43によって掘削された土の飛散を防止するとともに旧畦U側へ誘導する。
【0025】
[畦上面削土装置] 畦上面削土装置51は、盛土装置41と畦形成装置31との間に設置される。畦上面削土装置51は、畦上面削土装置回転軸52と、回転軸側クラッチ53と、掘削刃側クラッチ54と、複数の掘削刃55と、掘削刃取り付け軸56と、カバー57と、連結軸58と、畦上面削土装置側第3スプロケット81、チェーン82と、掘削刃取り付け軸スプロケット83とを備える。
【0026】
畦上面削土装置回転軸52は、水平方向に延び、軸回り方向に回転自在となっている。畦上面削土装置回転軸52の回転力は、回転軸側クラッチ53及び掘削刃側クラッチ54を介して掘削刃取り付け軸56に伝達される(詳しくは[駆動系]の項で後述)。
【0027】
各掘削刃55は、掘削刃取り付け軸56に取り付けられていて、それぞれの先端は畦傾斜面側に屈曲している。掘削刃55の下端が旧畦Uの上面UUに位置付けられるよう、掘削刃55は、その下端が、畦形成装置31の下端及び盛土装置41の下端のいずれよりも高くなる高さ位置に設置される。畦上面削土装置回転軸52の回転力を受けて掘削刃取り付け軸56が回転することにより、掘削刃55は回転して旧畦Uの上面UUを掘削する。
【0028】
カバー57は、畦上面削土装置51の上部に設置され、掘削刃55によって掘削された土が外側へ飛散することを防止する。
【0029】
[駆動系]図5及び図6を参照して、駆動系の詳細を説明する。回転軸側クラッチ53は、畦上面削土装置回転軸52の先端に取り付けられる。また、掘削刃側クラッチ54は、掘削刃取り付け軸56に取り付けられる。ここで、畦上面削土装置回転軸52と掘削刃取り付け軸56とは、連結軸58を介して回動自在に連結されている。連結軸58は、進行方向と概ね平行で、後方が上になるように傾斜している(図3参照)。一例として、連結軸58の傾斜角度は、水平面に対し約30度である。なお、この傾斜角度は、水平面に対して15度から80度の範囲が望ましい。
【0030】
畦形成機1は、ユニバーサルジョイント71を備える。ユニバーサルジョイント71は、その一端が入力軸15に、その他端が支持フレーム21に設けられた第1ギヤケース72の入力軸に、それぞれ接続している。ユニバーサルジョイント71は、入力軸15からの駆動力を第1ギヤケース72に伝達する。第1ギヤケース72の下方には、第2ギヤケース73が、水平方向に回動自在に設けられている。そして、第1ギヤケース72は、ベベルギヤを内蔵し、ユニバーサルジョイント71から入力された駆動力を第2ギヤケース73に伝達する。第2ギヤケース73は、ベベルギヤを内蔵し、第1ギヤケース72から入力された駆動力を畦上面削土装置回転軸52に伝達し、この畦上面削土装置回転軸52を回転駆動させる。
【0031】
ところで、畦上面削土装置側第3スプロケット81は、畦上面削土装置回転軸52と同軸上に取り付けられている。このため、畦上面削土装置回転軸52に伝達された駆動力は、回転軸側クラッチ53および掘削刃側クラッチ54を介して、畦上面削土装置側第3スプロケット81に伝わる。また、掘削刃取り付け軸スプロケット83は、掘削刃取り付け軸56に取り付けられる。畦上面削土装置側第3スプロケット81と掘削刃取り付け軸スプロケット83とには、チェーン82が掛け渡されている。これにより、畦上面削土装置側第3スプロケット81の駆動力は、チェーン82を介して掘削刃取り付け軸スプロケット83に伝わり、掘削刃取り付け軸56を回転させる。
【0032】
また、畦上面削土装置回転軸52には、畦上面削土装置側第1スプロケット74と畦上面削土装置側第2スプロケット77とが取り付けられている。盛土装置回転軸42には、盛土装置側スプロケット75が取り付けられている。そして、畦上面削土装置側第1スプロケット74と盛土装置側スプロケット75とには、第1チェーン76が張り渡されている。また、畦形成装置回転軸32には、畦形成装置側スプロケット78が取り付けられている。そして、畦上面削土装置側第2スプロケット77と畦形成装置側スプロケット78とには、第2チェーン79が張り渡されている。これらの構造並びに前述したユニバーサルジョイント71、第1ギヤケース72、第2ギヤケース73及び畦上面削土装置回転軸52を介して、入力軸15から入力された駆動力が盛土装置回転軸42及び畦形成装置回転軸32に伝達され、これらを回転駆動させる。
【0033】
再び、図1〜図4を参照する。畦形成機1は、さらに、旧畦Uとは反対側(圃場の側)にゲージ輪61を備える。ゲージ輪61は、金属製の円錐板であり、その外周部が圃場面(図示せず)に刺さり込んで新畦を形成する畦形成装置31の高さを調整し、さらに、畦からの成形圧を受けとめて、畦形成機1の走行時の直進性を保持させる。
【0034】
上記に述べた畦形成機1を用いて新畦を形成する場合、まず、畦形成装置31のディスク33を旧畦Uの側面USに設置し、畦形成装置31の円筒部34を旧畦Uの上面UUに設置する。また、盛土装置41を、旧畦Uの側面USの進行方向前方側の直前の箇所に設置する。さらに、畦上面削土装置51を、旧畦Uの上面UUに設置する。
【0035】
次いで、トラクタ(図示せず)で畦形成機1を牽引する。このとき、トラクタの駆動力は、PTO軸から入力軸15等を経て、畦上面削土装置回転軸52に伝わる。
【0036】
畦上面削土装置回転軸52に伝えられた駆動力は、畦上面削土装置側第1スプロケット74、第1チェーン76及び盛土装置側スプロケット75を介して、盛土装置回転軸42に伝わり、複数の掘削刃43が回転する。このようにして、盛土装置41の掘削刃43は、旧畦Uの側面US及びこの側面USの下の圃場面を削土してその土を飛散させ、旧畦U上に土を盛り上げる。
【0037】
また、畦上面削土装置回転軸52に伝えられた駆動力は、回転軸側クラッチ53、掘削刃側クラッチ54、畦上面削土装置側第3スプロケット81、チェーン82及び掘削刃取り付け軸スプロケット83を介して、掘削刃取り付け軸56に伝わり、複数の掘削刃55が回転させる。このようにして、畦上面削土装置51は、旧畦Uの上面UUを削土し、雑草等を削り、さらには旧畦Uの上面UUの凹凸を一定に整える。
【0038】
また、畦上面削土装置回転軸52に伝えられた駆動力は、畦上面削土装置側第2スプロケット77、第2チェーン79及び畦形成装置側スプロケット78を介して、畦形成装置回転軸32に伝わり、畦形成装置回転軸32を回転させる。これにより、ディスク33と円筒部34とが回転する。
【0039】
ところで、畦形成装置31のディスク33は、後述するように、畦の側面傾斜面全面に当接されて回転され、畦の側面傾斜面を成形する。このため、畦形成装置31のディスク33の径は、図1に図示されるように、盛土装置41に取り付けられた各掘削刃43先端までの径よりも大である。また、ディスク33の円錐台状外端部は、作業対象の畦の斜面下端の基部に併せて位置付けられる。このため、畦形成機1に取り付けられたディスク33の下端と、盛土装置41に取り付けられた各掘削刃43の下端とは、略同じ高さに位置する。そのため、盛土装置41の上部には、スペースAが形成されることになる。
【0040】
連結軸58を回動中心として、掘削刃55、掘削刃取り付け軸56及びカバー57を回動して折り畳むと、掘削刃55が旧畦Uの上面UUから離反して非作業状態となる。非作業状態となったとき、回転軸側クラッチ53と掘削刃側クラッチ54との噛み合わせは解除され、掘削刃取り付け軸56、掘削刃55及びカバー57は、図6において一点鎖線で示される位置(もしくは、図3に図示される位置)、すなわち、トラクタ側上方であって作業時に比較して斜め前に移動し、盛土装置41の上部のスペースAに位置付けられる。このように、本実施の形態では、盛土装置41の上部に生ずるスペースAを有効活用して、非作業時の畦上面削土装置51を収納できる。さらに、掘削刃取り付け軸56、掘削刃55及びカバー57は、連結軸58を挟んで重量物である畦形成装置31とは反対側に折りたたまれる。これにより、畦形成機1の全体の重心が進行方向前方側に移動し、作業バランスが良好となる。なお、掘削刃取り付け軸56、掘削刃55及びカバー57を、連結軸58を中心として下方向に回動させることで、これらは図6において実線で示される位置(もしくは、図1に図示される位置)に位置付けられ、回転軸側クラッチ53と掘削刃側クラッチ54とが繋がり、掘削刃55が旧畦Uの上面UUに近接して作業状態となる。
【0041】
さらに、本実施の形態の畦形成機1では、掘削刃55等を収納するために斜め前に上げると同時にクラッチが切れて、掘削刃取り付け軸56及び掘削刃55は駆動しなくなり、作業員にとっての安全性が高まる。
【0042】
なお、掘削刃55、掘削刃取り付け軸56、カバー57等を有する畦上面削土装置51は、連結軸58の周囲に設けた回動固定穴90に固定ピン(図示せず)を挿入することで、作業位置及び非作業位置のそれぞれの位置に固定させてもよい。また、電動シリンダ等を介在させて畦上面削土装置51を回動させるようにしても良い。
【0043】
以下、図7ないし図12に基づいて、畦形成装置31の詳細を述べる。図7は、未接合状態にあるディスク33と円筒部34との一部拡大中央断面図である。図8は、ディスク33と円筒部34との接合過程の一部拡大中央断面図である。図9は、接合状態にあるディスク33と円筒部34との一部拡大中央断面図である。図10は、図7のX矢視図である。図11は、図7のY矢視図である。図12は、図8のZ矢視図である。
【0044】
畦形成装置31におけるディスク33及び円筒部34の周速は、ギア比を調整することによって、トラクタ及び畦形成機1の走行スピードよりも速くなるように予め設定されている。このため、ディスク33は旧畦Uの側面USに対して、円筒部34は旧畦Uの上面に対して、それぞれスリップしながら接触し回転して、接土表面を締め固める。
【0045】
ディスク33は、畦形成作業時に、畦形成装置回転軸32の回転によって回転し、ディスク33の表面が傾斜している旧畦Uの側面USに当接して、盛土装置41(図1〜図6参照)によって旧畦Uに盛り上げられた盛土を締め固めて新畦の傾斜面を成形する。このため、ディスク33は、盛土を締め固めるために充分な強度と重量をもって形成されている。また、円筒部34は、畦形成作業時には、外周を旧畦上面に接して回転され、新畦の上面を成形する。以下、ディスク33及び円筒部34のそれぞれ、並びに、これらの着脱をロックするロック機構Pについて説明する。
【0046】
[円筒部] 円筒部34には、シャフト341が取り付けられている。シャフト341の長手方向は、円筒部34の軸心に一致するよう円筒部34に保持されていて、円筒部34の軸心方向に平行に向いている。このため、シャフト341は、円筒部34の周面に覆われることになる。また、シャフト341は、軸回り方向に回転自在かつ長手方向に移動自在に円筒部34に保持されている。ここで、円筒部34におけるディスク33側の端部を第1端部34Aと呼ぶ。また、円筒部34における第1端部34Aとは反対側の端部を、第2端部34Bと呼ぶ。
【0047】
第1端部34A側の端面において、この端面から突出するシャフト341を挟んで対称となる二箇所のそれぞれから、嵌合ピン344が突出する。
【0048】
第1端部34A側の端面から突出するシャフト341のディスク33側の先端部には、引掛体としてのロックプレート342が取り付けられる。ロックプレート342は、図11及び図12に示されるような、ディスク33側に設けられた長孔332(後述)に挿入できる大きさでこれとほぼ同形状の楕円形状をなしている。ロックプレート342は、その中央箇所で、シャフト341の先端に取り付けられ、シャフト341の軸心方向に交差する方向に延びている。また、ロックプレート342の両端領域には、第2嵌合孔343が設けられる。
【0049】
ロックプレート342と円筒部34との間には、スプリング345が配置されている。そして、スプリング345と第1端部34A側の端面との間には、座金346が挟まれている。スプリング345は、ロックプレート342をディスク33側に押している。
【0050】
また、第1端部34Aには、ディスク33の取付端部33Aの段部Bに嵌合する形状の段部Cが形成されている。
【0051】
一方、第2端部34B側には、皿ばね348及び座金349を挟んで、操作部としてのカムレバー347が設けられている。カムレバー347は、シャフト341をその長手方向に移動したり、その軸回り方向に回転したりするために操作者が把持するためのものであり、座金349に接するカム部347aと、カム部347aから延出する把持部347bとを有する。カム部347aには取付軸350が設けられ、この取付軸350を介してカムレバー347とシャフト341とは連結されている。図7及び図10に示す状態では、カムレバー347は、第2端部34B側の端面から延出するストッパブラケット351によって、把持部347bは、取付軸350を中心に起き上がることができず、シャフト341をその軸回り方向に回すような方向RAにのみ回転できる。把持部347bは、図10の実線に示す位置から別のストッパブラケット351に当たるような図10の一点鎖線に示す位置まで90度回転できる。ここで、図10の一点鎖線に示す位置に位置付けられた把持部347bは、図8に示すように上方に向く。この状態で、シャフト341の先端をまたぐように把持部347bを方向RBに回転させると、把持部347bは、図9に示すように下方に向く。この過程で、カム部347aは回転して、このカム部347aに取り付けられたシャフト341を座金349から離れる方向RCに動かす。なお、図9に図示される状態において、カムレバー347と座金349との当接面は平面状に形成されており、その間に働く摩擦力によってカムレバー347が動くことは無い。
【0052】
[ディスク] ディスク33の上底側の端部は、円筒部34を取り付けるための取付端部33Aとなっている。この取付端部33Aの上底面には、嵌合ピン344が嵌合する第1嵌合孔333と、ロックプレート342が通過可能な長孔332とが形成されている。
【0053】
また、取付端部33Aには、円筒部34の第1端部34Aの段部Cに嵌合する形状の段部Bが形成されている。
【0054】
上記に述べた畦形成装置31において、ディスク33に円筒部34を取り付けるときは、まず、図7に示すように、カムレバー347を操作してロックプレート342をディスク33側に押し出しておき、この状態でロックプレート342をディスク33側の長孔332に向けて動かし、ディスク33に形成される段部Bと円筒部34に形成される段部Cとを嵌合させる。なお、図7に示される状態では、ロックプレート342は水平方向に向いている。段部Bと段部Cとが嵌合すると、図8に示すように、2個の嵌合ピン344は、ディスク33側の第1嵌合孔333のそれぞれに嵌められる。その結果、嵌合ピン344の先端部は、ディスク33の内側に突出して、円筒部34はディスク33の回転方向に対し回り止めが作用する(回り止め手段S)。
【0055】
続いて、カムレバー347を図7に示す位置から図8に示す位置まで動かして、シャフト341を90度回転させる。これにより、ロックプレート342は鉛直方向に向く。また、この操作の過程で、第2嵌合孔343は図11に示す位置から図12に示す位置に移動し、第2嵌合孔343の位置が嵌合ピン344に一致する。
【0056】
次いで、カムレバー347を図8に示す位置から図9に示す位置まで動かしてシャフト341の先端をまたぐようにカムレバー347を回転させる。これにより、ロックプレート342に設けられた第2嵌合孔343は、ディスク33の内側に突出する嵌合ピン344の先端部に引っ掛かって嵌まり、ディスク33と円筒部34との着脱がロックされ、円筒部34はディスク33に固定される。すなわち、畦形成装置31は、ロック機構Pを有する。また、ロックプレート342と第1嵌合孔333と嵌合ピン344と第2嵌合孔343とは、引掛構造Qを構成する。
【0057】
円筒部34をディスク33から取り外すときは、円筒部34をディスク33に取り付ける作業と逆の手順でカムレバー347を動かす。
【0058】
このように、本実施の形態の畦形成装置では、カムレバー347を操作するだけで、シャフト341を長手方向に移動したり軸回り回動したりすることができ、この操作のみで、畦形成装置31を構成するディスク33と円筒部34のロックが実現される。したがって、畦形成装置31に設けられている円筒部34をディスク33から簡易かつ迅速に着脱でき、様々な畦高が混在する農地での新畦を形成する作業の効率化が実現される。
【0059】
なお、嵌合ピン344をディスク33に設け、第1嵌合孔333を円筒部34に設けても構わない。
【0060】
次いで、別の実施の一形態を、図13に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第二の実施の形態と呼ぶ。この場合、第一の実施の形態と同一の部分には同一の符号を用い、説明も省略する。図13は、ディスク33と円筒部34との接合過程の一部拡大中央断面図である。本実施の形態の畦形成装置31では、ディスク33と円筒部34とは、一つのボルトナット締結によってロックされる。より詳細には、円筒部34における第1端部34Aの端面中央から突出するシャフト341の先端には、その周面に沿って雄ネジ部902が形成されている。また、ディスク33の取付端部33Aには、挿入された雄ネジ部902が突き当たる箇所に雌ネジ部903が配置されている。
【0061】
本実施の形態では、カムレバー347を動かしてシャフト341を軸回り方向に回転させることにより、雄ネジ部902を雌ネジ部903に螺合させて、円筒部34をディスク33に取り付ける。つまり、雄ネジ部902と雌ネジ部903とは、ボルトナット構造901を構成する。
【0062】
このように、本実施の形態の畦形成装置でも、カムレバー347を操作するだけで、畦形成装置31を構成するディスク33と円筒部34のロックが実現される。したがって、畦形成装置31に設けられている円筒部34をディスク33から簡易かつ迅速に着脱でき、様々な畦高が混在する農地での新畦を形成する作業の効率化が実現される。
【0063】
また、本実施の形態では、シャフト341の先端に雌ネジ部を設け、ディスク33に雄ネジ部を設けて、これらでボルトナット構造901を構成してもよい。
【0064】
また、第一の実施の形態、及び、第二の実施の形態のいずれにおいても、畦上面削土装置51は、盛土装置41と畦形成装置31との間に設けられているが、この畦上面削土装置51は、盛土装置41の前方側に設けられていても良い。
【0065】
さらに、畦形成装置31の円筒部34を外して作業する場合は、畦上面削土装置51を上方に回動して折り畳むことで、畦高が大きい場合の作業においても畦上面削土装置51が干渉せずに適切な作業ができる。
【符号の説明】
【0066】
1 畦形成機
31 畦形成装置
33 ディスク
33A 取付端部
332 長孔
333 第1嵌合孔
34 円筒部
34A 第1端部
34B 第2端部
341 シャフト
342 ロックプレート(引掛体)
343 第2嵌合孔
344 嵌合ピン
347 カムレバー(操作部)
41 盛土装置
51 畦上面削土装置
901 ボルトナット構造
902 雄ネジ部
903 雌ネジ部
P ロック機構
Q 引掛構造
S 回り止め手段
U 旧畦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旧畦に土を盛り上げる盛土装置と、
前記盛土装置によって前記旧畦に盛り上げられた盛土を締め固める畦形成装置と、
を備え、
前記畦形成装置は、
側面で前記盛土の斜面を締め固める円錐台状のディスクと、
側面で前記盛土の上面を締め固める円筒部と、
操作部からの操作によって前記ディスクと前記円筒部との着脱をロックするロック機構と、
前記ディスクと前記円筒部との接続部に設けられ、前記ディスクの回転方向に対する前記円筒部の回り止めをする回り止め手段と、
を含む、
畦形成機。
【請求項2】
旧畦に土を盛り上げる盛土装置と、
前記盛土装置によって前記旧畦に盛り上げられた盛土を締め固める畦形成装置と、
を備え、
前記畦形成装置は、
側面で前記盛土の斜面を締め固める円錐台状のディスクと、
側面で前記盛土の上面を締め固める円筒部と、
前記円筒部の周面に覆われ、前記円筒部の軸心方向に平行にそれ自体の長手方向を向け、軸回り方向に回転自在かつ長手方向に移動自在に前記円筒部に設けられたシャフトと、
前記円筒部における前記ディスク側の第1端部及び前記ディスクの上底側の取付端部のいずれか一方から突出する嵌合ピンと、前記第1端部及び前記取付端部のいずれか他方に設けられ、前記嵌合ピンが嵌合する第1嵌合孔と、で構成された回り止め手段と、
前記シャフトの長手方向移動及び軸回り回転によって、前記嵌合ピンを前記第1嵌合孔に嵌合した状態での前記第1端部及び前記取付端部との着脱をロックするロック機構と、
前記円筒部における前記第1端部とは反対側の第2端部に設けられ、前記シャフトを長手方向移動及び軸回り回転するための操作部と、
を含む、
畦形成機。
【請求項3】
前記ロック機構は、
前記シャフトの軸心方向に交差する方向に前記シャフトから延びる引掛体と、
前記取付端部に設けられ、前記引掛体が通過できる長孔を形成し、前記長孔を通過して前記ディスクの内側に位置付けられた後に前記シャフトの軸回り回転によって回転変位した前記引掛体が前記取付端部に引っ掛かる引掛構造と、
を含む、
請求項1又は2記載の畦形成機。
【請求項4】
前記嵌合ピンは、前記第1端部から突出し、
前記第1嵌合孔は、前記取付端部に設けられ、
前記引掛体は、前記第1嵌合孔に嵌合した前記嵌合ピンの先端部が入り込む第2嵌合孔を形成する、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の畦形成機。
【請求項5】
前記ロック機構は、
前記シャフトにおける前記ディスク側の端部と前記取付端部とをボルトナット締結するボルトナット構造である、
請求項1又は2記載の畦形成機。
【請求項6】
前記旧畦の上方部分を削る畦上面削土装置を更に備え、
前記畦上面削土装置は、畦上面から離反する上方向に回動して折り畳み可能である、
請求項1ないし5のいずれか一に記載の畦形成機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−125303(P2011−125303A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289105(P2009−289105)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】