説明

異なる原料成形品の分離方法

【課題】異なる原料からなる成形品を原料別に分離可能な、異なる原料成形品の分離方法を提供する。
【解決手段】ケーシング6に取り付けた固定刃62と、ケーシング6内で回転するロータリーホルダ8に取り付けた回転刃82と、ケーシング6の底部に位置するスクリーン7と、を備える粉砕機5に、外径約17.3mm程度のゴム栓がインサート成形されている硬質プラスチックよりなる円筒状の口栓部分を投入し、前記粉砕機5の固定刃62と回転刃82との間隔を約5mmに設定し、かつスクリーン7の穴径を約30mmに設定し、前記回転刃82を取り付けたロータリーホルダ8を約500rpmで回転させることにより、硬質プラスチックよりなる前記口栓部分を破断させて、ゴム材よりなる前記ゴム栓を分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる原料からなる成形品を原料毎に分離する異なる原料成形品の分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異なる原料からなる成形品を組み合わせて一つの製品、例えば、液体容器とするものがある。即ち、袋状の本体部分を軟質プラスチックにより形成し、円筒状の口栓部分を硬質プラスチックにより形成し、更に口栓の封止部分を天然ゴム等のゴム材により構成したものが、点滴や輸血などの医療用パックとして知られている。
【0003】
そこで、この医療用パックでは、円筒状の口栓部分が袋状の袋体部分に溶着された箇所で切断すれば、本体部分と口栓部分とを分離することができるが、医療用パックは、ほゞ全量と言っても過言ではなく焼却処分されていた。
【0004】
また、口栓部分においては、ゴム材からなる封止部分を分離するのが極めて困難であった。このため、口栓部分を構成する硬質プラスチック及び封止部分を構成するゴム材は、再利用されることなく本体部分とともに廃棄されているのが現状であった。
【0005】
一方、PETボトルなどの使用済み廃プラスチックを細断、粉砕してリサイクル利用する工程のプラスチック粉砕機が、例えば特許文献1により知られている。
【0006】
このプラスチック粉砕機は、ケーシングの上方に廃プラスチックを投入する投入口を設け、下方に切断、粉砕物をふるい分けて排出するスクリーンを設けて構成してある。そして、ケーシングの内周面に固定刃を設け、ケーシング内部の回転軸に装着したロータリーホルダの周縁先端部に回転刃を設け、固定刃と回転刃との間で材料を切断、粉砕するものである。
【0007】
【特許文献1】特開2004−174304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のプラスチック粉砕機では、単一の原材料からなるPETボトルなどを、切断、粉砕してフレーク状または粒状ににしてリサイクル工程に供するには適しているが、異なる原料からなる成形品が一体化した被処理物を原料別の成形品に分離するには、適していなかった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、異なる原料からなる成形品を原料別に分離可能な、異なる原料成形品の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ケーシングに取り付けた固定刃と、ケーシング内で回転するロータリーホルダに取り付けた回転刃と、ケーシングの底部に位置するスクリーンと、を備える粉砕機に、異なる原料からなる第1成形品と第2成形品とが結合した被処理物を投入して、原料別に成形品を分離する異なる原料成形品の分離方法であって、固定刃と回転刃との間隔を、第1成形品に結合されている第2成形品の厚みの約0.7倍前後に設定し、スクリーンの穴径を、第2成形品の外径の約1.2〜1.73倍程度に設定し、固定刃と回転刃との間で、被処理物に剪断力を加えて第1成形品を破断させ、スクリーンの穴を通して、第2成形品及び破砕した第1成形品を落下させることにより、原料別に成形品を分離するようにしたことを特徴とする異なる原料成形品の分離方法である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した発明において、被処理物は、軟質プラスチックよりなる袋状の本体部分及び硬質プラスチックよりなる円筒状の口栓部分と、該口栓部分を封止するゴム材からなるゴム栓と、を一体に形成した医療用パックから、前記口栓部分を切断した長さ約50mm程度のほゞ円筒物であって、外径約17.3mm程度のゴム栓がインサート成形されており、前記粉砕機の固定刃と回転刃との間隔を約5mmに設定し、かつスクリーンの穴径を約30mmに設定し、前記回転刃を取り付けたロータリーホルダを約500rpmで回転させることにより、硬質プラスチックよりなる前記口栓部分を破断させて、ゴム材よりなる前記ゴム栓を分離するようにした異なる原料成形品の分離方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した発明において、前記粉砕機のスクリーンをウレタン樹脂により形成し、合成ゴムよりなるゴム栓と硬質プラスチックよりなる口栓部分とを分離するようにした異なる原料成形品の分離方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、異なる原料よりなる成形品を組み合わせて一つの製品に構成してある被処理物を、原料別に分離処理することができる。従って、分離処理の済んだものは、異なる原材料が混在しないので、原料リサイクルに供し易いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ケーシングに取り付けた固定刃と、ケーシング内で回転するロータリーホルダに取り付けた回転刃と、ケーシングの底部に位置するスクリーンと、を備える粉砕機に、外径約17.3mm程度のゴム栓がインサート成形されている硬質プラスチックよりなる円筒状の口栓部分を投入し、前記粉砕機の固定刃と回転刃との間隔を約5mmに設定し、かつスクリーンの穴径を約30mmに設定し、前記回転刃を取り付けたロータリーホルダを約500rpmで回転させることにより、硬質プラスチックよりなる前記口栓部分を破断させて、ゴム材よりなる前記ゴム栓を分離するようにして、異なる原料成形品の分離方法を実現した。
【実施例】
【0015】
次に、本発明の一実施例を図面について説明する。
図1〜図4は、本発明において、被処理物の一例となる医療用パックを説明するための図面である。即ち、図1は医療用パックの斜視図、図2は口栓部分の断面図、図3は口栓部分を半断面にした分解図、図4はゴム栓の斜視図である。
【0016】
医療用パック1は、袋状の本体部分2と円筒状の口栓部分3とからなっており、本体部分2と口栓部分3とは融着されて気密状態となっている。本体部分2は、柔軟性が要求されるため、低密度ポリエチレン等の軟質プラスチック材料が用いられている。そして、この本体部分2は、例えば低密度ポリエチレンインフレーションフィルムを口栓体装着部11を残してヒートシールなどの方法で融着して得られる。
【0017】
一方、口栓部分3は、ほゞ円筒形をなす部材であって、外端内側にはゴム栓4が装着してある。口栓部分3を構成する筒部32は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート等、適宜な硬質プラスチック材料を使用することができ、所望の位置に、溝或いはリング状の凹凸部が形成してある。
【0018】
また、筒部32には、キャップ部材31が嵌着され、ゴム栓4を封止する。このため、キャップ部材31は、ゴム栓4の前端部分が係止する内側係止縁311を前端側に備え、内周面には筒部32が嵌入する嵌入部312を備えている。そして、嵌入部312の内周面には、筒部32に設けたフランジ部321が嵌合する溝部313が設けてある。
【0019】
更に、ゴム栓4には、注射針を穿刺するための穿刺部41が凹陥状に設けてある。また、このゴム栓4の材質としては、天然ゴムや合成ゴムが用いられる。そして、このゴム栓4が、前記した口栓部分3の筒部32とキャップ部材31との間に封止される。
【0020】
口栓部分3を構成する筒部32とゴム栓4とキャップ部材31との結合は、一般に行なわれているインサート成形により行うことができる。なお、図面に示す実施例においては、ゴム栓4とキャップ部材31との間にリング部材33を介在させている。このリング部材33は、例えば口栓部分3と同じ材質からなっている。そして、このリング部材33に設けた嵌入壁331が、ゴム栓4に設けた受入溝42に嵌入することにより、封止状態をより確実に保つようになっている。
【0021】
そして、ここでは、硬質プラスチックよりなるキャップ部材31と筒部32とリング部材33とが第1成形品となり、ゴム材よりなるゴム栓4が第2成形品となり、これらがインサート成形により結合されている口栓部分3が被処理物となる。
【0022】
一方、図5及び図6は、粉砕機の概略を示す一部を欠截した側面図である。粉砕機5は、横方向に配置したほゞ円筒形のケーシング6の上方に、被処理物を投入するための投入口61を設け、下方には粉砕物をふるい分けて排出するためのスクリーン7が設けてある。
【0023】
ケーシング6の内部には、回転軸81を備えたロータリーホルダ8を設ける。また、このロータリーホルダ8の先端部には回転刃82を取り付ける。図示の実施例では、ロータリーホルダ8をほゞ正三角形に形成し、頂点部分にそれぞれ回転刃82を取り付けている。なお、これらの回転刃82は、ネジにより交換可能に取り付けられ、位置調整も可能である。
【0024】
一方、ケーシング6の内周面には、固定刃62を1枚ないし複数枚取り付ける。例えば、図示した粉砕機5においては、ほゞ水平位置に、2枚の固定刃62、62が取り付けてある。なお、前側に位置する固定刃62を前側固定刃62a、後側に位置する固定刃62を後側固定刃62bとする。また、これらの固定刃62は、ネジにより交換可能であるし、位置調整も可能である。
【0025】
そして、ロータリーホルダ8を図示していないモータにより回転させて、固定刃62と回転刃82との間で、被処理物を切断、粉砕するのである。なお、図示の実施例における粉砕機5においては、図7に示すように、二つのロータリーホルダ8、即ち第1ロータリーホルダ8a及び第2ロータリーホルダ8bを僅かに角度を変えて回転軸81に取り付けている。回転軸81には、図示していないモータが接続され、このモータを駆動源として、例えば1分間に500回転(500rpm)で、ロータリーホルダ8を回転させることができる。もちろん、この回転数は、500rpmに限定されるものではなく、適宜に調整可能である。
【0026】
次に、前記した医療用パック1を被処理物として、粉砕機5に投入してゴム栓4と口栓部分3とを分離する方法を説明する。
【0027】
先ず、医療用パック1の軟質プラスチックよりなる袋状の本体部分2と、硬質プラスチックよりなる円筒状の口栓部分3とを切断する。本体部分2は、単一の樹脂材でできているので、例えば再生加工原料としてリサイクルに供する。
【0028】
一方、口栓部分3は、ゴム栓4が嵌着されているので、異なる原料からな成形品が混在しているため、このままではリサイクルに供することができなかった。そこで、ゴム栓4と口栓部分3とを分離するのであるが、粉砕機5によって細分化してしまうと、ゴムの細片と合成樹脂の細片とが混ざってしまい、これを分離することは、更に煩雑になってしまう。
【0029】
そこで、本発明者は、被処理物として、医療用パック1から切断して得た口栓部分3(最大外径:25mm、全長:50mm)を用いて、粉砕機5における固定刃62と回転刃82との間隔を変更すると共に、スクリーン7の穴径を変更して実験したところ、以下の結果を得た。なお、口栓部分3には、天然ゴムよりなるゴム栓4(外径:17.3mm、厚み:7mm)がインサート成形により、封止されている。
【0030】
【表1】

【0031】
この結果、固定刃62と回転刃82との間隔(L)を5mm、スクリーン7の穴径(D)を30mmとしたものが、最も結果がよかった。即ち、スクリーン7上に落下するゴム栓4を、無傷か僅かにクラックが生じている程度に処理しなければならない。これは、後工程における分別効率に影響するからである。
【0032】
そのためには、ゴム栓4の外径よりも1.2から1.73倍程度の大きさの穴を複数開設したスクリーン7を用いるのがよい。小さな穴を有するスクリーン7では、スクリーン7と回転刃82との間に挟まれて破損が増大する。逆に、スクリーン7の穴が大き過ぎると、ゴム栓4が分離されないままスクリーン7の穴から落下してしまうことがあり、分離が不充分になる問題が発生する。
【0033】
被処理物の数が少ない場合は、スクリーン7の下方に配置したスクリーン受71に、ゴム栓4と口栓部分3の破砕物とが混在しているが、ゴム栓4を簡単に取り出すことができる。また、大量の被処理物を処理する場合には、スクリーン受71に水を張った受皿(図示せず)を配置することにより、ゴム栓4と口栓部分3との比重さを利用して分離するとよい。このようにして分別回収するようにすれば、次の粉砕工程へ容易に進むことができ、全量をリサイクルに回すことが可能になる。
【0034】
次に、被処理物として、合成ゴム製のゴム栓4(厚み:6.4mm、外径:23.3mm)がインサート成形されている硬質プラスチック製の注射針挿入部(全長:17.1mm)を用いて、金属製のスクリーン7と、ウレタン樹脂製のスクリーン7とを比較した。結果は、以下の表2のとおりである。なお、粉砕機5における刃先の間隔(L)は、前側:5mm、後側:5mmに設定し、スクリーン7の穴径(D)はいずれも40mmに設定した。
【0035】
【表2】

【0036】
この結果、天然ゴムに比べて粘弾性特性が劣る合成ゴムよりなるゴム栓4であっても、スクリーン7の材質をウレタン樹脂とすることにより、クラックが入ることなく無傷で分離可能なことが分った。
【0037】
以上、本発明を図示の実施例について説明したが、本発明は前記した各実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限り適宜に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】医療用パックの斜視図である。
【図2】医療用パックにおける口栓部分の断面図である。
【図3】医療用パックにおける口栓部分を半断面にした分解図である。
【図4】医療用パックにおけるゴム栓の斜視図である。
【図5】粉砕機の概略を示す一部を断面にした正面図であり、スクリーンを閉じた状態である。
【図6】粉砕機の概略を示す一部を断面にした正面図であり、スクリーンを開いた状態である。
【図7】粉砕機のロータリーホルダ及び回転刃、並びに固定刃の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 医療用パック
2 本体部分
3 口栓部分
4 ゴム栓
5 粉砕機
6 ケーシング
7 スクリーン
8 ロータリーホルダ
11 口栓体装着部
31 キャップ部材
32 筒部
33 リング部材
41 穿刺部
42 受入溝
61 投入口
62 固定刃
71 スクリーン受
81 回転軸
82 回転刃
311 内側係止縁
312 嵌入部
313 溝部
321 フランジ部
331 嵌入壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに取り付けた固定刃と、ケーシング内で回転するロータリーホルダに取り付けた回転刃と、ケーシングの底部に位置するスクリーンと、を備える粉砕機に、
異なる原料からなる第1成形品と第2成形品とが結合した被処理物を投入して、原料別に成形品を分離する異なる原料成形品の分離方法であって、
固定刃と回転刃との間隔を、第1成形品に結合されている第2成形品の厚みの約0.7倍前後に設定し、
スクリーンの穴径を、第2成形品の外径の約1.2〜1.73倍程度に設定し、
固定刃と回転刃との間で、被処理物に剪断力を加えて第1成形品を破断させ、
スクリーンの穴を通して、第2成形品及び破砕した第1成形品を落下させることにより、
原料別に成形品を分離するようにしたことを特徴とする異なる原料成形品の分離方法。
【請求項2】
被処理物は、軟質プラスチックよりなる袋状の本体部分及び硬質プラスチックよりなる円筒状の口栓部分と、該口栓部分を封止するゴム材からなるゴム栓と、を一体に形成した医療用パックから、前記口栓部分を切断した長さ約50mm程度のほゞ円筒物であって、外径約17.3mm程度のゴム栓がインサート成形されており、
前記粉砕機の固定刃と回転刃との間隔を約5mmに設定し、かつスクリーンの穴径を約30mmに設定し、
前記回転刃を取り付けたロータリーホルダを約500rpmで回転させることにより、硬質プラスチックよりなる前記口栓部分を破断させて、ゴム材よりなる前記ゴム栓を分離するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の異なる原料成形品の分離方法。
【請求項3】
前記粉砕機のスクリーンをウレタン樹脂により形成し、合成ゴムよりなるゴム栓と硬質プラスチックよりなる口栓部分とを分離するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の異なる原料成形品の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−68215(P2008−68215A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250169(P2006−250169)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(506310991)株式会社タカヤナギ (5)
【Fターム(参考)】