説明

異常音検出器及び異常音検出器を用いた電源ユニット検査装置

【課題】電源ユニットのファン異常を検出すること。
【解決手段】電源ユニットに磁気的に吸着する円環状の第1磁石11と、電源ユニットから与えられた振動によって中心部が振動する円板状のダイヤフラム13と、このダイヤフラム13に取り付けられた円板状の鉄片15と、この鉄片を吸着する方向に磁界を発生する第2磁石17と、これら鉄片15と第2磁石とを離す方向に復元弾性力を発生するバネ16と、前記第1磁石を開口底面に取り付けた状態で前記ダイヤフラム13と鉄片15と第2磁石とを収納する漏斗状の筐体18と、この筐体18の筒部に一端が取り付けられた細長い円筒状の導音チューブ5と、この導音チューブの他端にダイヤフラム13からの距離が25cmから40cmとなる位置に取り付けられ、ダイヤフラム13から与えられた音圧を電圧として出力するコンデンサマイクとを備えた異常音検出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニットのファン異常を検出する異常音検出器及びこの異常音検出器を用いた電源ユニット検査装置に係り、特に振動を用いて外部騒音が大きい環境においてもファン異常音を高精度に検出することができる異常音検出器及び異常音検出器を用いた電源ユニット検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコンピュータに使用される電源ユニットとしては、出力電力が500Wから750W、効率が80%から85%のものが一般に使用され、内部品を冷却するための羽根の回転によって空気流を発生するシロッコファン、クロスフローファン、軸流ファン等の冷却用ファンが使用されている。特に多数の磁気ディスク装置を併設した磁気記憶装置用の電源ユニットは、これらのファンが1個から4個使用され、このファンが回転動作時に発生する音には、空気の流動に伴う「風切り音」と、回転体の偏芯に伴う「振動音」と、ボールベアリング等の軸受け部の不具合に伴う「軸受け音」とがあり、前記「風切り音」は、ファンの回転に伴い必然的に発生するが、「振動音」及び「軸受け音」は正常なファンでは微少のため、製品として「不良」か否かを判定するときの判断要素として重要である。
【0003】
この電源ユニットの異常な「振動音」及び「軸受け音」を含む各種検査を行うための電源ユニット検査装置は、近年では、電子負荷器と交流電源部と各種測定器とパーソナルコンピュータを一体構成したものが開発されている。この電源ユニット検査装置は、被試験電源ユニットを接続して動作させ、パーソナルコンピュータの試験プログラムに従って試験を実施し、1台の被試験電源ユニットの検査に要する試験時間は数分内が好ましく、この時間内において、ファン回転に伴う前記「振動音」及び「軸受け音」(異常音)の発生の有無を、試験者の聴覚により判断している。この試験者の周波数や音圧を聴き取る聴覚レベルは個人差が大きく、更に検査環境が製造工場内の一行程として実施されるために他の行程作業に伴う衝撃音(ハンマー音等の打音等)や他工程での作業音や場内放送等のメロディー音等による雑音が多い環境で行われることによって、合格として処理された製品も後行程での検査により不合格とされることも多々発生している。この後行程に不良品を通過させてしまうことは、後行程への信頼を失うばかりでなく、行程混乱による金額損失も発生し、更には後行程が直接顧客となる場合には、製造物責任として訴訟に至る問題に発展することもあり得る。
【0004】
このような人的資質に依存した異音検査ではなく、ファン回転の異常音を機械的に検出する技術が記載された文献としては下記特許文献1及び2が挙げられ、特許文献1には、外部騒音を遮断する防音設備内でハードディスク装置等の回転駆動機器の動作音を検知し、この検知した動作音を周波数分析した音響パターンと予め設定した異常音の音響パターンとを比較することによって装置異常を検査する技術が記載され、特許文献2には、振動体である被測定物に接触した振動ピックアップを低反発ゴムの防振材を介して押し当てることによって、振動ピックアップと被測定物間との接触振動共振を低減させる技術が記載されている。また、技術分野は異なるが、マイクを内蔵した人体用の聴診器に関する技術が下記の特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−90050号公報
【特許文献2】特許第3944784号公報
【特許文献3】実用新案登録第3116151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献1記載の技術は、予め設定した異常音の音響パターンと検知した音響パターンとを比較することによって、装置異常を検査することができるが、外部雑音のない防音設備内での検査を前提としており、コンピュータ機器の一部として使用される電源ユニットの如き外部雑音の多い環境における異常音検査が困難であるという課題があった。また、このような異常音を音波と捉えてマイクによる音圧レベルの大小で判断する検査技術は、被検査対象が大容量のスイッチング方式の直流電源ユニットの場合、この直流電源ユニットから発生する電磁ノイズによって電子機器が誤動作する可能性が大きいという不具合もあった。
【0007】
また、特許文献2記載の技術は、被測定物の振動が低反発ゴムを経由して振動ピックアップに伝達させるため、ピックアップに直接、被試験器の振動が伝達されずに検出感度が低下するという課題があった。更に、特許文献3記載の聴診器技術は、鼓動等を集音するための振動板を含む集音部と医師が耳に装着するためのイヤチップ間を柔軟なチューブによって接続するためにマイクを集音部に近接して配置しなければならず、このため振動体とマイク間の距離及び容積が必然的に小さくなることによって、振動板による空気の振動(音圧)が小さい状態で電気信号に変換され、人間の耳にはカクテルパーティー効果によって問題とならないが、電気信号的にはノイズが大きくなるという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決することであり、外部騒音が多い環境においてもファンの異常音を高精度に判定することができる異常音検出器及び異常音検出器を用いた電源ユニット検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1記載の本発明は、磁性体の筐体部により覆われた電源ユニットの振動による異常音を検出する異常音検出器であって、前記電源ユニットの筐体部に磁力によって吸着する円環状の第1磁石と、前記第1磁石と間隔を空けて配置され、前記筐体部から与えられた振動によって中心部が振動する円板状の振動板と、前記振動板に取り付けられた金属磁性体と、前記金属磁性体と間隔を空けて配置され、前記磁性体を吸着する方向に磁界を発生する第2磁石と、前記金属磁性体と第2磁石との間に配置され、前記磁性体と第2磁石とを離す方向に復元弾性力を発生するバネ部と、前記第1磁石と弾性部材とを開口底面に取り付けた状態で前記振動体と磁性体と第2磁石とを収納する漏斗状の筐体部と、前記筐体部に一端が取り付けられた円筒状の導音チューブと、前記導音チューブの他端に前記振動板からの距離が所定範囲の距離となるように取り付けられ、前記振動板から与えられる音圧を基に電圧を出力するマイクとを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記特徴の異常音検出器において、前記振動板からマイクまでの所定距離を25cmから40cmとしたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記導音チューブが、チューブ内部を通過する音圧に含まれる約1kHz以上の高周波成分を吸収する材質で構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記何れかの特徴の異常音検出器において、前記第1磁石と筐体部との間の振動を吸収する振動吸収部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、磁性体の筐体部により覆われた電源ユニットの振動による異常音を異常音検出器によって検出し、前記異常音検出器によって検出した異常音を電気回路によって判定する電源ユニット検査装置であって、前記異常音検出器が、前記電源ユニットの筐体部に磁力によって吸着する円環状の第1磁石と、前記第1磁石と間隔を空けて配置され、前記筐体部から与えられた振動によって中心部が振動する円板状の振動板と、前記振動板に取り付けられた金属磁性体と、前記金属磁性体と間隔を空けて配置され、前記磁性体を吸着する方向に磁界を発生する第2磁石と、前記金属磁性体と第2磁石との間に配置され、前記磁性体と第2磁石とを離す方向に復元弾性力を発生するバネ部と、前記第1磁石と弾性部材とを開口底面に取り付けた状態で前記振動体と磁性体とバネ部と第2磁石とを収納する漏斗状の筐体部と、前記筐体部に一端が取り付けられた円筒状の導音チューブと、前記導音チューブの他端に前記振動板からの距離が所定範囲の距離となるように取り付けられ、前記振動板から与えられる音圧を基に電圧を出力するマイクとを備え、前記電気回路が、前記マイクから出力される電圧を増幅して出力する電圧増幅素子と、異常音を検出するための基準となる電圧を供給する蓄電池等の基準電圧発生素子と、前記電圧増幅素子からの出力電圧をプラス端子に入力し、前記基準電圧発生素子からの出力電圧をマイナス端子に入力して両者を比較し、電圧増幅素子からの出力電圧が基準電圧発生素子からの基準電圧を超えたときに出力信号をローからハイとする比較回路素子と、前記比較回路素子からのハイとなった信号を保持して操作者に音又は点滅によって警告を発するための保持回路素子とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記特徴の電源ユニット検査装置において、前記振動板からマイクまでの所定距離を25cmから40cmに設定した状態で前記マイクが導音チューブを伝達された音圧を基に電圧を出力することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記特徴の電源ユニット検査装置において、前記導音チューブを約1kHz以上の音圧高周波成分を吸収する材質で構成し、前記導音チューブが約1kHz未満の低周波成分の音圧をマイクに伝えることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記特徴の電源ユニット検査装置において、前記電気回路のマイクと電圧増幅素子間に約1kHz以上の音圧高周波成分の通過を阻止するローパスフィルタ素子を設け、約1kHz未満の低周波成分の電圧を電圧増幅素子に出力することを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、前記特徴の電源ユニット検査装置において、前記第1磁石と筐体部との間の振動を吸収する振動吸収部材を設け、前記振動吸収部材が筐体部から与えられる振動を吸振することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による異常音検出器は、第1磁石によって電源ユニットに吸着した状態において電源ユニットからの振動を振動板が受け、この振動板の振動による音圧を導音チューブ内に離して配置したマイクが検出することによって、外部騒音が多い環境においてもファンの異常音を高精度に検出することができる。また、本発明による電源ユニット検査装置は、前記異常音検出器のマイクから出力される電圧を基準電圧と比較して電源ユニットの異常音を判定することによって、外部騒音が多い環境においてもファンの異常音を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態による異常音検出器の振動ピックアップ部の構造を示す図
【図2】本発明の実施形態による電源ユニット検査装置を示す図
【図3】本発明の実施形態による異常音検出器を取り付けた電源ユニットを示す図
【図4】本発明の実施形態による異常音検器の回路構成を示す図
【図5】本発明の実施形態による偏芯量による測定比較データを示す図
【図6】金属ピンを埋め込んだファンを示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による異常音検出器及びこの異常音検出器を用いた電源ユニット検査装置の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
まず、本実施形態の検査対象となる電源ユニットは、コイルに印加する直流電圧を制御して回転数を制御するDCモータにより回転駆動されるファンを有し、このファン回転数は低速レベルで1500rpmから高回転レベルで8000rpmであり、異常音は、この回転数を基本周波数とし、そのn倍の周波数成分の周波数スペクトルを持ち、周波数的には低周波領域(下は80Hz程度、上は1kHz程度)の音である。また、この電源ユニットは、スイッチング方式の内蔵電源であり、他の電子素子に放射される電磁ノイズを低減するために外装は磁性体(磁場の中で磁化される物質)である鋼鉄製のカバーによって覆われている。また、この電源ユニットは、ファンの異常回転によって発生する異常音が低周波(下は80Hz程度、上は1kHz程度)帯域のため、ファンを取り付けているパネルもファンと同様に振動する特性がある。
【0021】
[構成]
さて、本実施形態による異常音検出器は、図1に示す如く、金属製の被測定物に磁力によって吸着するために片面側のみに磁界を発生する円環状の第1の磁石11と、この磁石11に貼り付けられ、この磁石11と同形状の低反発ウレタン12と、この低反発ウレタン12と間隔を空けて配置された円板状の振動板となるダイヤフラム13と、このダイヤフラム13に取り付けられた磁性体である円板状の鉄片15と、この鉄片15上に間隔を空けて配置され、前記鉄片15を吸着する方向に磁界を発生する第2の磁石17と、この第2の磁石17と鉄片15との間に配置され、両者を離す方向に復元弾性力を発生する円環状のバネ16と、前記第1の磁石11と低反発ウレタン12とを開口底面に貼り付けた状態で前記ダイヤフラム13と鉄片15と第2の磁石17バネ16とを収納する漏斗状の筐体18と、この筐体18の管に一端が嵌められた長さが約30cmから50cmの円筒状の導音チューブ5と、この導音チューブ5の他端に前記筐体18の管から距離が25cmから40cmとなる位置に導音チューブ端部を密閉するように取り付けられたコンデンサマイク6とから構成されている。なお、図1(a)は本実施形態による異常音検出器の側面一部断面を示し、図1(b)は底面を示す図である。
【0022】
前記ダイヤフラム13は、円板状の円周部の縁が筐体18に固着された状態で外部から与えられる低周波の振動によって中心部が容易に振動し、第2磁石及び鉄片15と吸着力とバネ16の復元力との均衡によって所定の位置に維持し、外部からの音圧によって容易に振動するように構成され、このダイヤフラム13と鉄片15と第2の磁石17とバネ16とによって振動ピックアップ部7を構成している。
【0023】
前記第1の磁石11は、厚さが5mm以下の薄板円環状であり、前記電源ユニットの鋼鉄製カバーに吸着するための吸着力は、前記異常音検出器の質量約100gを垂直に保持する吸着力が必要であり、吸着面積約2000mm、パネル面の表面粗さが0.5mmとした場合、約25mTの磁力あれば良く、汎用品の薄いフェライト磁石を使用することができる。
【0024】
前記導音チューブ5は、直管状の高周波雑音に影響されないゴムや金属等の材質から成り、長さが約30cmから50cm、内径約10mm程度のもので良く、前記コンデンサマイク6は、前記導音チューブ5の内径に隙間なく嵌合可能な単一指向性のものが良い。この導音チューブ5は、一端部が密閉された細長い空間内において音圧をダイヤフラム13に伝達し、この音圧を受けたコンデンサマイク6が、音圧の変化に応じた電圧を音圧の変化に応じて発生し、後述する電気回路に供給する。なお、本実施形態においては、音圧を電気信号に変換する素子としてコンデンサマイクを例とするが、これに限らず、ダイナミックマイクその他の音圧を電気信号に変換する変換素子であっても良い。前記導音チューブ5は音圧の伝搬を妨げない範囲で湾曲したものであっても良く、また、導音チューブ自体の材質を音圧(音波)の高周波線分(約1kHz以上)を吸収する発泡ゴム等を使用することや、内壁に前記高周波線分(約1kHz以上)を吸収する発泡ゴムを貼り付けることや、導音チューブの途中に低周波成分を通過させ、高周波成分を吸収するグラスウール等の部材を設けても良い。
【0025】
この異常音検出器9は、図2及び図3に示す如く、被検査対象である電源ユニット1のファン8が取り付けられたパネル2に前記第1の磁石11の磁気的吸着力によって取り付けられ、本実施形態による電源ユニット検査装置3の電気回路に接続される。
【0026】
この電気回路は、電源ユニット検査装置3に内蔵され、図4に示す如く、前記コンデンサマイク6から出力される電圧を増幅して出力する電圧増幅素子20と、異常音を検出するための基準となる電圧を供給する蓄電池等の基準電圧発生素子22と、前記電圧増幅素子20からの出力電圧をプラス端子に入力し、前記基準電圧発生素子22からの出力電圧をマイナス端子に入力して両者を比較し、電圧増幅素子20からの出力電圧が基準電圧発生素子22からの基準電圧を超えた場合に出力信号をローからハイとする比較回路素子21と、この比較回路素子21からのハイとなった信号を保持して操作者に音又は点滅によって警告を発するためのフリップフロップ素子等の保持回路素子23とから構成され、前記基準電圧は、ファンの個数や大きさ等により正常時の基本振動レベルで動作しないような値に調整されている。なお、前記電圧増幅素子20の出力段に高周波成分(約1kHz以上)の出力を制限するローパスフィルタを設けても良い。
【0027】
[動作]
このように構成された本実施形態による電源ユニット検査装置3は、異常音検出器9が第1の磁石によって電源ユニット1のパネル2に吸着して取り付けられ、電源ユニット1に電源ユニット検査装置3から所定の電力が供給されてファン8が回転駆動されている状態において、ファンに偏芯等の異常があるとき、低周波の振動音が発生し、ファン8を固定したパネル2も同様に振動して基準値を超えた高音量の音が発生する。
【0028】
本実施形態による電源ユニット検査装置3の異常音検出器9は、前記パネル2の振動によって振動し、この振動が、筐体18には低反発ウレタン12のダンピング作用によって振動は伝達されず、ダイヤフラム13の中心部分がバネ16の復元力と第2磁石と鉄片15との吸着力との均衡が崩されることによって振動し、この振動による音圧が漏斗状の上部筒部に集約され、この上部筒部から導音チューブを介してコンデンサマイク6に伝達され、この音圧を受けたマイク6が空気振動として伝達された音圧を電圧として出力する。
【0029】
この出力電圧を入力した電気回路(図4)は、入力電圧を電圧増幅素子20によって増幅して出力した電圧と基準電圧発生素子22からの基準電圧とを比較回路素子21によって比較し、比較回路素子21が電圧増幅素子20からの出力電圧が基準電圧発生素子22からの基準電圧を超えた場合に出力信号をハイとし、保持回路素子23が前記ハイとなった出力信号を保持することによって、電源ユニット1のファン8から異常音が発生していることを検出することができる。特に本実施形態においては、振動ピックアップ部7の音圧を発生するダイヤフラム13からコンデンサマイク6迄の細長い空間を密閉し、低周波の音波が外部からの高周波雑音に影響されることなく導音チューブ5内を伝達してコンデンサマイク6に伝わるため、外部騒音の影響を受けることなく高周波ノイズを含まない音圧によって電源ユニットのファン回転による異常音を容易に検出することができる。特に本実施形態においては、音圧を発生するダイヤフラム13をファン近傍に配置し、このダイヤフラム13から発生した音圧を検知するコンデンサマイク6を電磁ノイズを発する電源ユニット1から所定の距離だけ離して配置したため、電源ユニット1からのノイズの影響を受けずに高精度な検査を行うことができる。
【0030】
本実施形態による電源ユニット検査装置3の試験を行うために、図6に示す如く、電源ユニット1のパネル2側から見て、ファン8の円状ロータ部の円周上に0.2gのピン30を埋め込み、ファン8の回転中心8Sに対する重量バランスを故意に崩した状態とし、前記ピン30を埋め込まない正常状態品と、1つのピン30を埋め込んだ偏芯状態と、2つのピン30を埋め込んだ偏芯状態とを用いた実験を行った。この実験は、ファン駆動モータに供給する電圧を5Vから0.5V単位に12V迄上昇させたときの電圧増幅素子20の出力電圧を測定したものであり、この結果は、図5に示す如く、正常品における出力電圧(mV)が13mVから16mVの範囲に収まっているのに対し、1つのピンを埋め込んだ試験においては出力電圧(mV)が30mVから80mVに上昇し、2つのピンを埋め込んだ試験においては出力電圧(mV)が45mVから100mVに上昇することが判明した。
【0031】
従って、前記電気回路の基準電圧を、例えば17mVから20mVに設定しておくことによって、本実施形態による電源ユニット検査装置3は、ファンの偏芯による異常音を検出することができる。
【0032】
また、電源ユニットの試験中のハンマー試験等のパネルを叩く試験がある場合、プログラムにて出力信号を検出しないようにしておけば良く、ピックアップ部を被試験電源より取り外す必要がないため、試験開始から終了までの試験時間中に振動ピックアップ部は一度設置すれば良いので検査手順を簡易にすることができる。
【0033】
なお、前述の実施形態においては異常音検出器9をファン8が設置されたパネル2に取り付ける例を説明したが、電源ユニット1の筐体は外周部が一体形成されているため、他の面に取り付けても良い。また、本実施形態においては低反発ウレタン12を用いる例を説明したが、弾性力があり且つ高周波成分を吸収する特性を有する素材であっても良く、前記ダイヤフラム13は弾性力をもつ円板上のものを使用する例を説明したが、振動面(電源ユニット筐体側面)に突出する突起部を設け、この突起部の先端が振動面に僅かに接触するようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 電源ユニット、 2 パネル 、3 電源ユニット検査装置、
5 導音チューブ 、6 コンデンサマイク、
7 振動ピックアップ部、8 ファン、 8S 回転中心、 9 異常音検出器、
11 第1の磁石、 12 低反発ウレタン、 13 ダイヤフラム、
15 鉄片、 16 バネ、 17 第2の磁石、 18 筐体、
20 電圧増幅素子、 21 比較回路素子、 22 基準電圧発生素子、
23 保持回路素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体の筐体部により覆われた電源ユニットの振動による異常音を検出する異常音検出器であって、前記電源ユニットの筐体部に磁力によって吸着する円環状の第1磁石と、前記第1磁石と間隔を空けて配置され、前記筐体部から与えられた振動によって中心部が振動する円板状の振動板と、前記振動板に取り付けられた金属磁性体と、前記金属磁性体と間隔を空けて配置され、前記磁性体を吸着する方向に磁界を発生する第2磁石と、前記金属磁性体と第2磁石との間に配置され、前記磁性体と第2磁石とを離す方向に復元弾性力を発生するバネ部と、前記第1磁石と弾性部材とを開口底面に取り付けた状態で前記振動体と磁性体とバネ部と第2磁石とを収納する漏斗状の筐体部と、前記筐体部に一端が取り付けられた円筒状の導音チューブと、前記導音チューブの他端に前記振動板からの距離が所定範囲の距離となるように取り付けられ、前記振動板から与えられる音圧を基に電圧を出力するマイクとを備えた異常音検出器。
【請求項2】
前記振動板からマイクまでの所定距離を25cmから40cmとした請求項1記載の異常音検出器。
【請求項3】
前記導音チューブが、チューブ内部を通過する音圧に含まれる約1kHz以上の高周波成分を吸収する材質で構成されている請求項1又は2記載の異常音検出器。
【請求項4】
前記第1磁石と筐体部との間の振動を吸収する振動吸収部材を設けた請求項1から3の何れかに記載の異常音検出器。
【請求項5】
磁性体の筐体部により覆われた電源ユニットの振動による異常音を異常音検出器によって検出し、前記異常音検出器によって検出した異常音を電気回路によって判定する電源ユニット検査装置であって、前記異常音検出器が、前記電源ユニットの筐体部に磁力によって吸着する円環状の第1磁石と、前記第1磁石と間隔を空けて配置され、前記筐体部から与えられた振動によって中心部が振動する円板状の振動板と、前記振動板に取り付けられた金属磁性体と、前記金属磁性体と間隔を空けて配置され、前記磁性体を吸着する方向に磁界を発生する第2磁石と、前記金属磁性体と第2磁石との間に配置され、前記磁性体と第2磁石とを離す方向に復元弾性力を発生するバネ部と、前記第1磁石と弾性部材とを開口底面に取り付けた状態で前記振動体と磁性体とバネ部と第2磁石とを収納する漏斗状の筐体部と、前記筐体部に一端が取り付けられた円筒状の導音チューブと、前記導音チューブの他端に前記振動板からの距離が所定範囲の距離となるように取り付けられ、前記振動板から与えられる音圧を基に電圧を出力するマイクとを備え、前記電気回路が、前記マイクから出力される電圧を増幅して出力する電圧増幅素子と、異常音を検出するための基準となる電圧を供給する蓄電池等の基準電圧発生素子と、前記電圧増幅素子からの出力電圧をプラス端子に入力し、前記基準電圧発生素子からの出力電圧をマイナス端子に入力して両者を比較し、電圧増幅素子からの出力電圧が基準電圧発生素子からの基準電圧を超えたときに出力信号をローからハイとする比較回路素子と、前記比較回路素子からのハイとなった信号を保持して操作者に音又は点滅によって警告を発するための保持回路素子とを備える電源ユニット検査装置。
【請求項6】
前記振動板からマイクまでの所定距離を25cmから40cmに設定した状態で前記マイクが導音チューブを伝達された音圧を基に電圧を出力する請求項5記載の電源ユニット検査装置。
【請求項7】
前記導音チューブを約1kHz以上の音圧高周波成分を吸収する材質で構成し、前記導音チューブが約1kHz未満の低周波成分の音圧をマイクに伝える請求項5又は6記載の電源ユニット検査装置。
【請求項8】
前記電気回路のマイクと電圧増幅素子間に約1kHz以上の音圧高周波成分の通過を阻止するローパスフィルタ素子を設け、約1kHz未満の低周波成分の電圧を電圧増幅素子に出力する請求項5から7の何れかに記載の電源ユニット検査装置。
【請求項9】
前記第1磁石と筐体部との間の振動を吸収する振動吸収部材を設け、前記振動吸収部材が筐体部から与えられる振動を吸振する請求項5から8の何れかに記載の電源ユニット検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−237198(P2011−237198A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106756(P2010−106756)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】