説明

異性化糖を含む難消化性デキストリンの製造方法

【課題】 飲食品への利用価値の高い、難消化性デキストリンを含む異性化糖の安価な製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記の工程(A)と、後続の工程(B)又は工程(C)の少なくとも1つの工程を含む、異性化糖を含む難消化性デキストリンの製造方法:
(A)難消化性成分を含む焙焼デキストリンにグルコアミラーゼを作用させて消化性成分をブドウ糖に加水分解する工程、
(B)果糖を添加する工程、
(C)生成したブドウ糖の一部をグルコースイソメラーゼにより果糖に変換する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異性化糖を含む難消化性デキストリン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難消化性デキストリンは、整腸作用、食後血糖の急激な上昇を抑制する作用や長期摂取による血中の中性脂肪やコレステロールの低下作用などを有し、機能性食品素材として広く利用されている。しかし、難消化性デキストリンの調製工程が少ないと難消化性成分の含量が低い場合が多く、また、調製工程が多いと、例えば、焙焼デキストリンにα−アミラーゼ、グルコアミラーゼを作用させ、消化性の画分をブドウ糖に変え、クロマトグラフィーや膜により分画を行い難消化性の画分だけを取り出す工程を含む場合には、歩留まりが約40%前後となり価格の高いものとなっていた(特許文献1〜2)。ところが、実際、食品の用途を調査すると各種飲料や菓子、デザートなどに用いられている難消化性デキストリンは、ブドウ糖果糖液糖(ブドウ糖と果糖の質量比率が58:42)や果糖ブドウ糖液糖(同比率が45:55)等のいわゆる異性化糖とともに利用されるケースが非常に多くあることが判明した。
【0003】
このような難消化性デキストリンと異性化糖を同時に含む飲食品を製造する場合、別々に調製した難消化性デキストリンと異性化糖を所定の濃度になるように予め混合して使用するか、別々に添加するのが従来の製造方法である。しかしながら、難消化性デキストリンと異性化糖を同時に含む飲食品を従来の方法で製造しようとすると、工程が繁雑であるばかりでなく製造コストも高いという欠点があった。
そこで、焙焼デキストリンから難消化性デキストリンを製造する工程において副生するブドウ糖にグルコースイソメラーゼを作用させるか、果糖を添加すれば、異性化糖を含む難消化性デキストリンが得られる可能性があるが、このような発想で異性化糖を含む難消化性デキストリンを製造した例は知られていない。
ブドウ糖を含む難消化性デキストリンは、難消化性デキストリンの製造工程における中間産物として得ることができるが(特許文献2)、通常そのブドウ糖純度は50%程度である。
一方、異性化糖の製造方法は、通常95%以上の高純度のブドウ糖にグルコースイソメラーゼを作用させるのが一般的な方法である。これは異性化反応が平衡反応であり、果糖のブドウ糖からの最大生成量が50%であること、及び原料糖液のブドウ糖純度が高いほど異性化反応が進行し易いためである(非特許文献1)。
従って、難消化性デキストリンの製造工程における中間産物のような純度の低い難消化性デキストリンを含むブドウ糖液に、グルコースイソメラーゼを作用させて異性化糖を含む難消化性デキストリンを製造しようとする場合、異性化反応が充分進行するかどうかは予測し難い。
【0004】
【特許文献1】特開平2−145169号公報
【特許文献2】特開平2−154664号公報
【非特許文献1】澱粉科学の事典、第464〜466ページ、不破英次、他3名(編)、朝倉書店、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、飲食品への利用価値の高い、異性化糖を含む難消化性デキストリンの安価な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、難消化性成分を含む焙焼デキストリン中の消化性成分をブドウ糖に変換した後、生成したブドウ糖を含む難消化性デキストリンに直接グルコースイソメラーゼを作用させることにより、意外にも、ブドウ糖単独溶液に作用させた場合と同等以上の効率でブドウ糖の一部が容易に果糖に変換されて異性化糖が生成し、異性化糖を含む難消化性デキストリンの効率的な製造が可能であることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下に示す、異性化糖を含む難消化性デキストリンの安価な製造方法を提供するものである。
【0007】
1.焙焼デキストリンの水溶液に、グルコアミラーゼを作用させ、次いで果糖を添加することを特徴とする、ブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンの製造方法。
2.焙焼デキストリンの水溶液に、グルコアミラーゼを作用させ、次いでグルコースイソメラーゼを作用させることを特徴とする、ブドウ糖果糖液糖を含む難消化性デキストリンの製造方法。
3.グルコアミラーゼを作用させる前にα−アミラーゼを作用させることを特徴とする上記1又は2に記載の方法。
4.上記2又は3に記載のブドウ糖果糖液糖を含む難消化性デキストリンに、さらに果糖を添加することを特徴とする、ブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンの製造方法。
5.上記1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られるブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンを、さらに水素添加することを特徴とする、還元ブドウ糖果糖液糖又は還元果糖ブドウ糖液糖を含む還元難消化性デキストリンの製造方法。
6.上記1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られるブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリン。
7.上記5に記載の製造方法によって得られる還元ブドウ糖果糖液糖又は還元果糖ブドウ糖液糖を含む還元難消化性デキストリン。
8.上記6に記載のブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンを含んでなる飲食品。
9.上記7に記載の還元ブドウ糖果糖液糖又は還元果糖ブドウ糖液糖を含む還元難消化性デキストリンを含んでなる飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難消化性デキストリンの製造工程における中間産物として得られるブドウ糖と難消化性デキストリンの混液に果糖を添加することにより、又ブドウ糖をグルコースイソメラーゼの基質として利用することにより、異性化糖を含む難消化性デキストリンを容易に得ることができるので、難消化性デキストリンの分離工程も省略でき、飲食品への利用価値の高い異性化糖を含む難消化性デキストリンを効率的に、安価に得ることが可能となる。さらに、難消化性デキストリンと異性化糖を同時に含む飲食品の、安価で効率的な製造が可能となる。また、本発明で得られる異性化糖を含む難消化性デキストリンを水素添加することで、低エネルギー及び低甘味度で着色安定性に優れた、還元異性化糖を含有する還元難消化性デキストリンを容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において「難消化性デキストリン」とは、衛新第13号(栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリン、好ましくは35〜95質量%、さらに好ましくは60〜90質量%の難消化性成分を含むデキストリンのことをいう。
本発明において焙焼デキストリンの「白度」とは、色差計(例えば、日本電色工業株式会社製)を用いて試料を照射し、その反射光を測定し、酸化マグネシウムの標準白板の白度を100としたときの相対値であり、最高値は100である。
また、本発明において「異性化糖」とは、ブドウ糖と果糖から構成される液糖のことをいう。本発明において「ブドウ糖果糖液糖」は、ブドウ糖の相対濃度が果糖と等しいか又はこれよりも高い異性化糖を意味し、「果糖ブドウ糖液糖」は、果糖の相対濃度がブドウ糖よりも高い異性化糖を意味するものとする。
本発明の異性化糖を含む難消化性デキストリンの製造方法は、(A)難消化性成分を含む焙焼デキストリンを水に溶解し、これにグルコアミラーゼを作用させて消化性成分をブドウ糖に加水分解する工程、次いで(B)果糖を添加する工程、又は(C)生成したブドウ糖の一部をグルコースイソメラーゼにより果糖に変換する工程、又はさらに(D)前記工程(B)及び(C)の少なくとも一つの工程で得られる生成物を水素添加する工程を含んでいる。本発明の異性化糖を含む難消化性デキストリンの製造方法は、工程(A)、(B)、(C)及び(D)を含んでいてもよい。
【0010】
(A)難消化性成分を含む焙焼デキストリンにグルコアミラーゼを作用させて消化性成分をブドウ糖に加水分解する酵素消化工程
本発明に使用する焙焼デキストリンの製造方法としては、従来から知られているものが使用できるが、特に本発明においては、その刺激臭や好ましくない味覚を可能な限り生成しない製造方法が求められる。原料澱粉としては広く各種のものが使用でき、例えば、トウモロコシ、小麦、キャッサバ、馬鈴薯などの澱粉のほか、各種市販の加工澱粉も使用することができる。
これらの原料澱粉に、硫酸、硝酸、塩酸などの鉱酸、好ましくは塩酸を、その濃度を好ましくは1質量%程度の水溶液として、原料澱粉に対して数質量%を添加、好ましくは噴霧して均一になるように混合し、好ましくは100〜120℃程度で予備乾燥し、水分を好ましくは2〜6質量%、さらに好ましくは3質量%前後とする。
続いて温度を好ましくは130〜180℃に上げて好ましくは0.5〜5時間程度焙焼して焙焼デキストリンを得る。このようにして得られる焙焼デキストリンは、DE1〜10、白度55〜65、難消化性成分の含有量が50〜65質量%であることが好ましい。
【0011】
次に、グルコアミラーゼ(消化酵素)を作用させる。最終難消化性デキストリン中の難消化性成分が高濃度であることを必要とする場合には、この酵素消化工程において、グルコアミラーゼを作用させる前に、α−アミラーゼを作用させることが望ましい。
本発明の酵素消化工程の一例を挙げると、まず、焙焼デキストリンを水に溶解して、好ましくは30〜50質量%水溶液とし、水酸化ナトリウム水溶液等により好ましくはpH5.5〜6.5、より好ましくは5.8となし、カビ又は細菌等由来の市販α−アミラーゼ製剤を好ましくは0.05〜0.2質量%添加して、好ましくは50〜100℃で、好ましくは0.5〜2.0時間保持する。その後、好ましくは40〜60℃に冷却し、好ましくはpH4.5〜5.5に調整したのち、市販グルコアミラーゼ製剤を好ましくは0.1〜0.5質量%添加して好ましくは45〜55℃で、好ましくは1〜10時間保持し、消化性成分をブドウ糖に変換する。
最終難消化性デキストリン中の難消化性成分が高濃度であることを必要としない場合には、この酵素消化工程において、α−アミラーゼを使用しなくても良い。
この水溶液を、必要に応じて活性炭、珪藻土等で脱色し、さらにイオン交換樹脂等で脱塩、濃縮を行って、ブドウ糖を含む難消化性デキストリンの水溶液とする。
【0012】
(B)果糖を添加する工程、及び(C)生成したブドウ糖の一部をグルコースイソメラーゼにより果糖に変換する工程
本発明は、次いでブドウ糖を含む難消化性デキストリンの水溶液に果糖を添加する工程(工程(B))、及び/又は、生成したブドウ糖の一部をグルコースイソメラーゼにより果糖に変換する工程(工程(C))を含む。
工程(C)は例えば、担体に固定化したグルコースイソメラーゼを充填したカラムにブドウ糖を含む難消化性デキストリンの水溶液を通液して連続的にブドウ糖の一部を果糖に変換することにより、ブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンの水溶液を得ることができる。
この溶液を、必要により、活性炭、珪藻土等で脱色し、次いでイオン交換樹脂等で脱塩、濃縮を行えば高濃度製品が得られる。ブドウ糖と果糖の組成比は、果糖の添加量や工程(C)の操作条件を変更することにより適宜調整することができる。
【0013】
(D)前記工程(B)及び(C)の少なくとも一つの工程で得られる生成物を水素添加する工程
工程(B)及び/又は(C)で得られる異性化糖を含む難消化性デキストリンは、所望により水素添加により還元して還元異性化糖を含む還元難消化性デキストリンとすることができる。例えばブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンの水溶液を、必要により活性炭、珪藻土等で脱色し、次いでイオン交換樹脂等で脱塩、濃縮した溶液に、ラネーニッケル等を触媒として、常法により加圧下に水素ガスを導入して水素添加を行う。反応終了後、触媒を除去、必要により活性炭、珪藻土等で脱色し、次いでイオン交換樹脂等で脱塩、濃縮すれば、還元異性化糖を含む還元難消化性デキストリンの濃縮液を得ることができる。
このようにして得られる異性化糖を含む難消化性デキストリン、あるいは還元異性化糖を含む還元難消化性デキストリンは、難消化性デキストリンと異性化糖を同時に含む各種飲食品、例えば、炭酸飲料、果汁飲料、ヨーグルト、ジャム、ゼリー、ケーキ等の和洋菓子類等の製造に好適に使用することができる。これらの飲食品に対する本発明の異性化糖を含む難消化性デキストリン、あるいは還元異性化糖を含む還元難消化性デキストリンの添加量は任意であるが、通常は5〜15質量%である。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されるものではない。以下の実施例、比較例において他に明記しない限り「部」は「質量部」である。
【0014】
実施例1
市販のトウモロコシ澱粉1kgを攪拌機付き加熱装置に入れ、攪拌しながら1%塩酸30mlをスプレーし、続いて均一に混合し、徐々に加熱し110℃まで昇温して水分3質量%に予備乾燥した後、150℃で40分加熱し、白度60の焙焼デキストリンを得た。
この焙焼デキストリン500gに水1000mlを加えて溶解し、4%水酸化ナトリウム水溶液でpH5.8とし、α−アミラーゼ(ターマミル60L、ノボザイム社)を0.2質量%添加して95℃で1時間加水分解した。
次いでpHを5.0に調整したのち、グルコアミラーゼ(グルックザイムNL4.2、天野製薬株式会社)を0.1質量%添加して50℃で3時間加水分解した。
次に、活性炭を0.2質量%添加して30分保持した後、珪藻土ろ過して脱色し、さらにイオン交換樹脂による脱塩を行って、ブリックス濃度60%まで濃縮し、固形分約450gを含むブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液750gを得た。この混合液は、ブドウ糖41.4部と難消化性デキストリン58.6部の混合物であった(図1)。
この混合溶液に果糖を添加し、難消化性デキストリン58.6部、ブドウ糖41.4部及び果糖30.0部の混合液(図2)、及び、難消化性デキストリン58.6部、ブドウ糖41.4部及び果糖50.6部の混合液(図3)を得た。
なお、難消化性デキストリン、ブドウ糖及び果糖の組成分析には、三菱化成(株)製の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラム(MCI GEL CK08EC)を使用し、カラム温度80℃でイオン交換水を用いて溶出し、RI検出器にて検出した。
【0015】
実施例2
実施例1で得られたブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液をブリックス濃度10%に調整し、固定化グルコースイソメラーゼ製剤(スウィートザイムIT、ノボザイム社)のカラム(57ml)にSV(ml通液量/hr/mlカラム容量)3.5、カラム温度70℃で通液し、ブドウ糖と果糖、難消化性デキストリンの混合液を得た。これをミックスイオン交換樹脂(強塩基性イオン交換樹脂と強酸性イオン交換樹脂の等量混合物)に通液して脱塩したのち濃縮液を得た。
この溶液の組成は図4に示すように難消化性デキストリン58.6部、ブドウ糖21.1部及び果糖20.3部であり、ブドウ糖から果糖への異性化率は49.0%であった。
比較対照として、ブリックス濃度10%のブドウ糖溶液について同様の実験を行い、ブドウ糖50.5部及び果糖49.5部の組成物が得られ、異性化率は49.5%であった(図5)。
これらの結果は、難消化性デキストリンを含むブドウ糖溶液であっても、ブドウ糖単独溶液と同等の効率で異性化反応が進行することを示している。
【0016】
実施例3
実施例1で得られたブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液をブリックス濃度45%に調整し、固定化グルコースイソメラーゼ製剤(スウィートザイムIT、ノボザイム社)のカラム(2000ml)にSV(ml通液量/hr/mlカラム容量)1.2、カラム温度55℃で通液し、ブドウ糖と果糖、難消化性デキストリンの混合液を得た。これをミックスイオン交換樹脂に通液して脱塩したのち濃縮液を得た。
この溶液の組成は図6に示すように難消化性デキストリン58.6部、ブドウ糖21.1部及び果糖20.3部であり、ブドウ糖から果糖への異性化率は49.0%であった。
比較対照として、ブリックス濃度45%のブドウ糖溶液について同様の実験をSV1.2で行ったところ、ブドウ糖55.0部及び果糖45.0部の組成物が得られ、異性化率は45.0%であった(図7)。
また、実施例1で得られたブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液をブリックス濃度45%に調整し、同様の実験をSV1.75で行ったところ、難消化性デキストリン58.6部、ブドウ糖24.8部及び果糖16.6部の組成物が得られ、異性化率は40.1%であった(図8)。これらの結果は、SVを調整することにより、難消化性デキストリンを含むブドウ糖溶液の異性化反応を、ブドウ糖単独溶液を用いた場合よりも効率的に行えることを示している。また、本実施例における異性化率(49%)は、従来の工業的異性化糖の製造における最大異性化率(50%)に匹敵する(非特許文献1)。
【0017】
実施例4
実施例4においてSV1.75の条件で実施して得られた異性化糖を含む難消化性デキストリン溶液100部に対して、果糖を13.7部添加し、果糖とブドウ糖の比率が55:45の異性化糖を含む難消化性デキストリン溶液を得た。同様に、果糖を206.6部添加し、果糖とブドウ糖の比率が90:10の異性化糖を含む難消化性デキストリン溶液を得た。
【0018】
実施例5
実施例1で得られた異性化糖を含む難消化性デキストリン(難消化性デキストリン58.6部、ブドウ糖41.4部、果糖50.6部)をブリックス濃度50%に調整し、その一部を用いて、以下の表1に示す処方に従ってオレンジエードを調製した。配合した原材料を混合し、容器に加熱充填して所望の飲料を得た。このオレンジエードは本発明の調製品に由来する3.4gのブドウ糖、4.2gの果糖及び4.9gの難消化性デキストリンを含んでいる。


【0019】
表1

【0020】
実施例6
実施例2で得られた果糖20.3部、ブドウ糖21.1部及び難消化性デキストリン58.6部からなる溶液を、ブリックス濃度65%に調整し、その1.0kgを2.0L容量のオートクレーブ(ナックオートクレーブ社製)に入れ、20gのラネーニッケル(日興リカ製R239)を添加し、7.2%リン酸二ナトリウム水溶液と21%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.6とした後、水素ガスを100kg/cm2で導入し、130℃、2時間の水素添加反応を行った。反応後、ラネーニッケルを除去し、活性炭で脱色、ミックスイオン交換樹脂のカラムに通液して脱塩した後、濃縮した。得られた濃縮液の組成は、マンニトール10.1部、ソルビトール31.1部及び還元難消化性デキストリン58.7部であった(果糖を水素添加すると、等量のマンニトールとソルビトールが生成することは当業者に周知である)。この還元異性化糖を含む還元難消化性デキストリンのエネルギーは1.5kcal/gであり、砂糖の甘味度を100とした時の相対甘味度は30であった。
【0021】
実施例7
実施例6で得られた還元異性化糖を含む還元難消化性デキストリンを用いてキャンデーを調製した。固形分200gを含む溶液をブリックス濃度60%に濃縮した後、ステンレス容器に移し、電熱器上で穏やかに撹拌しながら品温160℃まで加熱して煮詰めた後、約80℃まで放冷してキャビティーに流し込んで成型、固化させてキャンデーを得た。得られたキャンデーは、型離れが良好で、外観は透明で表面の凹凸がなく、適度の歯ごたえがあり、低吸湿性で、保形性、熱安定性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1において、焙焼デキストリンを酵素消化して得られたブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液を分析したときのHPLCチャートである。
【図2】実施例1において、焙焼デキストリンを酵素消化して得られたブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液に果糖を添加して、ブドウ糖41.4部に対する果糖の比率を30.0部にしたときのHPLCチャートである。
【図3】実施例1において、焙焼デキストリンを酵素消化して得られるブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液に果糖を添加して、ブドウ糖41.4部に対する果糖の比率を50.6部にしたときのHPLCチャートである。
【図4】実施例2において、ブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液にグルコースイソメラーゼを作用させて得られた、異性化糖と難消化性デキストリンの混合液のHPLCチャートである。
【図5】実施例2において、比較対照実験で得られた異性化糖液のHPLCチャートである。
【図6】実施例3において、ブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液にSV1.2でグルコースイソメラーゼを作用させて得られた、異性化糖と難消化性デキストリンの混合液のHPLCチャートである。
【図7】実施例3において、比較対照実験で得られた異性化糖液のHPLCチャートである。
【図8】実施例3において、ブドウ糖と難消化性デキストリンの混合液にSV1.75でグルコースイソメラーゼを作用させて得られた、異性化糖と難消化性デキストリンの混合液のHPLCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙焼デキストリンの水溶液に、グルコアミラーゼを作用させ、次いで果糖を添加することを特徴とする、ブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンの製造方法。
【請求項2】
焙焼デキストリンの水溶液に、グルコアミラーゼを作用させ、次いでグルコースイソメラーゼを作用させることを特徴とする、ブドウ糖果糖液糖を含む難消化性デキストリンの製造方法。
【請求項3】
グルコアミラーゼを作用させる前にα−アミラーゼを作用させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のブドウ糖果糖液糖を含む難消化性デキストリンに、さらに果糖を添加することを特徴とする、ブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られるブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンを、さらに水素添加することを特徴とする、還元ブドウ糖果糖液糖又は還元果糖ブドウ糖液糖を含む還元難消化性デキストリンの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られるブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリン。
【請求項7】
請求項5に記載の製造方法によって得られる還元ブドウ糖果糖液糖又は還元果糖ブドウ糖液糖を含む還元難消化性デキストリン。
【請求項8】
請求項6に記載のブドウ糖果糖液糖又は果糖ブドウ糖液糖を含む難消化性デキストリンを含んでなる飲食品。
【請求項9】
請求項7に記載の還元ブドウ糖果糖液糖又は還元果糖ブドウ糖液糖を含む還元難消化性デキストリンを含んでなる飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−149369(P2006−149369A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193842(P2005−193842)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】