説明

異方導電フィルム

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、マイクロエレクトロニクス接合、例えば、LCD(液晶ディスプレー)とフレキシブルプリント回路基板の端子部の電気的接合や、半導体ICとIC搭載用回路基板の接合等に用いる異方導電フィルムに関するものである。
〔従来の技術〕
最近の電子機器の小型化、薄型化に伴い、微細な回路同志や、微小部品と微細な回路の接続等の必要性が飛躍的に増大している。その接合方法のひとつとして異方導電フィルムを用いる方法がある。異方導電フィルムは基本的には熱可塑タイプと熱硬化タイプに分類され、それぞれの特性を活かした使用方法が提案されている(たとえば、特開昭60−84718、特開昭62−181378、特開昭62−207380、特開平1−113480、特開平1−249880、特開平1−261478各号公報)。特に熱硬化タイプは、熱可塑タイプのものに比べて接合の長期信頼性が高いことより、最近使用される事が多くなってきている。しかし、従来から使用されている熱硬化タイプの異方導電フィルムは硬化速度が遅かったり、接合時の作業性が不良であり、短時間の熱圧着では十分な接合信頼性は得られていないのが現状である。
〔発明が解決しようとする課題〕
熱硬化性樹脂をベースとした異方導電フィルムは硬化速度の早い樹脂系を使用した場合、相対的に硬化速度の遅い樹脂系を使用した場合に較べて同じ圧着条件では接合信頼性はあがるが、フィルムの保存安定性が低下する傾向がある。本発明は、フィルムの保存安定性に優れ、短時間の圧着でも高い接合信頼性を有する異方導電フィルムを提供する事を目的としたものである。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エポキシ樹脂、イミダゾール硬化剤、及び、導電粒子を混ぜ合わせた樹脂組成物に、アミン系の反応促進剤を添加して得られる異方導電フィルムである。
本発明において使用するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体は、結合アクリロニトリル量が35%以上45%以下のものを用いる。
エポキシ樹脂は、たとえばビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノールグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラックグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ダイマー酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等より選ばれたエポキシ樹脂であり、1種又は2種類以上を組合せて用いられる。
イミダゾール系硬化剤としては、たとえば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2−メチルイミダゾール−(1)〕エチル−S−トリアジン、2,4−−ジアミノ−6−〔2−ウンデシルイミダゾリル(1)〕エチル−S−トリアジン等が用いられ、2種類以上併用して用いても良い。
ここで、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体とエポキシ樹脂の割合は、エポキシ樹脂100重量部に対してアクリロニトリル−ブタジエン共重合体30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部とするのが良い。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の量が30重量部より少ないとフィルムの可とう性が低下し、脆くなり割れてしまう。反対に、70重量部より多いと、耐熱性が落ちてしまう。
イミダゾール系硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して、10〜20重量部の間で加える。10重量部以下では、硬化速度が遅く、通常の熱圧着条件では十分に硬化せず接合特性が不良となる。また、20部以上ではフィルムの保存性が低下し、通常40度未満の室温中で2〜3日で使用不可能となる。
導電粒子は、単一金属もしくは合金の金属粒子、あるいは樹脂又は金属の粒子を核としそれにメッキを施したものをもちいることができる。その配合量は、樹脂固形分100体積部に対して3〜10体積部が適当である。3体積部以下であると電極間に存在する粒子数が不足し安定した導通抵抗が得られない。また、10体積部以上であると隣接回路間の絶縁信頼性が劣る。
これら組成物に対してアミン系の反応促進剤、特に第三アミン、たとえばテトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、ピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が適応可能なものであり、エポキシ樹脂1当量あたり0.2〜0.3アミン当量の割合で添加するのが適当である。0.2当量以下の場合、反応促進効果が低下し、熱圧着後も硬化が不十分で高い接合信頼性は得られない。また、0.3当量以上の場合はエポキシ樹脂の硬化を促進してしまい、フィルムの保存安定性が著しく悪くなり、本発明の目的を達することができない。
〔実施例〕
以下、実施例により、本発明を、具体的に説明する。
(実施例1〜2)(比較例1〜4)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体としては、結合アクリロニトリル量が48%のN215SL、41%のN220S、および20%のN250S(いずれも日本合成ゴム社製)の各20%メチルエチルケトン溶液を、また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル型のエピコート1001(油化シェル社製)の70%メチルエチルケトン溶液を、硬化剤としては2エチル4メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成社製)をそれぞれ用意した。また、導電粒子としては400メッシュパスのアトマイズ半田粉(日本アトマイズ工業社製)を使用した。
上記の樹脂と硬化剤を配合した樹脂溶液に、シランカップリング剤処理した導電粒子を分散させ1時間攪拌した。次に、製膜する前に、反応促進剤としてトリエタノールアミン(和光純薬社製)を添加し5分間攪拌した後、直ちに離型フィルム上に流延し、乾燥させて製膜した。尚、各試料は第1表の割合で用いた。


このようにして得られた異方導電フィルムを用いて、40℃の雰囲気中に保存し一定時間ごとに取り出して、フレキシブルプリント回路基板とITO(インジウム・スズ酸化膜)透明導電膜をパターン加工したガラスの回路基板とを圧着し、両回路基板の接続端子間の接続抵抗値の変化を測定した。また、同じ試験片を用いて温度サイクル試験として−30℃雰囲気中で30分⇔80℃雰囲気中に30分放置を1サイクルとして処理し、一定サイクルごとに上記と同じ試験片を用い、接続端子間の抵抗値の変化を測定し、接続安定性の評価を行なった。ここで、圧着するフレキシブルプリント回路基板とITOガラス基板の回路は200μmピッチ、熱圧着条件は160℃、30kg/cm2,15secで行った。
保存試験の結果は第1図に示した通りであった。実施例1、実施例2は、結合ニトリル量41%のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた系であるが、抵抗値の変化はほとんどみられなかった。また、結合ニトリル量44.5%相当のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた実施例3、結合ニトリル量36.8%相当のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた実施例4も抵抗値の変化はなかった。反応促進剤を入れなかった系(比較例1)、(比較例2)、(比較例3)、結合ニトリル量48%のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用い反応促進剤をエポキシ樹脂に対して0.3アミン当量入れた系(比較例4)も初期抵抗値の変化はみられなかった。結合ニトリル量34.7%相当のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた実施例5は、若干抵抗値の上昇がみられた。
それに対し、結合ニトリル量30.5%相当のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた比較例5、結合ニトリル量20%のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた比較例5、比較例6では、反応促進剤が適量であっても、保存試験7日後で初期抵抗値に上昇が見られ、比較例7、比較例8、比較例9は、反応促進剤をエポキシ樹脂に対して0.6アミン当量入れた系では、保存試験7日後で初期抵抗値が2倍以上になり使用に耐えぬものであった。
温度サイクル試験処理後の抵抗値の変化率は、第2図に示した通りで、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、の500サイクル処理後の抵抗の変化率は、非常に小さいのに対し、実施例5はやや上昇する。一方、比較例は、どの場合も、抵抗の変化率は著しく大きい。
すなわち、結合ニトリル量35%〜45%のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を用いた系で、反応促進剤をエポキシ1当量に対し0.2〜0.3添加することで、保存性に優れた高信頼性の異方導電フィルムが得られた。
〔発明の効果〕
本発明による異方導電フィルムは、保存安定性が40℃以下の通常の室温雰囲気中で90日以上ときわめて優れており、また、短時間で確実に圧着できる高信頼性の異方導電フィルムである。
【図面の簡単な説明】
第1図は40℃における保存安定性の図である。第2図は温度サイクルによる導通抵抗値の変化率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】結合アクリロニトリル量が35%以上、45%以下のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エポキシ樹脂、イミダゾール系硬化剤、及び導電粒子とからなる樹脂組成物溶液に、アミン系の反応促進剤をエポキシ1当量あたり0.2〜0.3アミン当量の割合で添加し、離型フィルム上に流延、溶剤を揮散させて得られることを特徴とする異方導電フィルム。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2994012号
【登録日】平成11年(1999)10月22日
【発行日】平成11年(1999)12月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−242722
【出願日】平成2年(1990)9月14日
【公開番号】特開平4−123713
【公開日】平成4年(1992)4月23日
【審査請求日】平成9年(1997)7月7日
【出願人】(999999999)住友ベークライト株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭64−60679(JP,A)
【文献】特開 昭59−221371(JP,A)
【文献】特開 昭51−20998(JP,A)