説明

異方性導電フィルム、異方性導電フィルムの製造方法、電子部品の接続方法、異方性導電接続体

【課題】異方性導電層に弾性スペーサを含有させて、チップ部品の反りや割れを防止する。
【解決手段】導電性粒子含有層2と絶縁性樹脂層3とが積層された多層構造をなし、導電性粒子含有層2と絶縁性樹脂層3との境界に弾性スペーサ4を有し、弾性スペーサ4は、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を回路基板等に異方性導電接続させる異方性導電フィルム、この異方性導電フィルムの製造方法、この異方性導電フィルムを用いた接続方法、この異方性導電フィルムを用いた異方性導電接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ部品を基板に実装する技術として、例えばチップ部品をいわゆるフェースダウン状態で基板上に実装するフリップチップ実装法が広く用いられている。このフリップチップ実装法は、チップ部品の端子電極としてバンプと称される電極を形成し、このバンプが基板の電極部と対向するように配置し、一括して電気的に接続する方法である。
【0003】
フリップチップ実装法においては、接続信頼性を高めること等を目的に、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)による電気的、機械的接続が図られている。図5に示すように、異方性導電フィルム50は、接着剤として機能する絶縁性の樹脂51中に導電性粒子52を分散したものである。チップ部品55は、複数のバンプ56が設けられているアクティブ面を基板57の電極部58と対向させ、異方性導電フィルム50を介して電気的に接続される。
【0004】
具体的に、基板57は、チップ部品55が実装される電極部58に異方性導電フィルム50が配置され、チップ部品55のアクティブ面が電極部58に対して位置合わせされた後、図示しない加熱ボンダーによってチップ部品55の上面から熱加圧される。
【0005】
これにより、チップ部品55及び基板57は、バンプ56と電極部58との間から樹脂51を排除すると共に導電性粒子52を挟み込むことで、電気的な接続が図られる。チップ部品55及び基板57は、バンプ56の無い部分では、導電性粒子52が絶縁性の樹脂51中に分散した状態が維持され、電気的に絶縁された状態が保たれるので、バンプ56のある部分でのみ電気的導通が図られることになる。
【0006】
異方性導電フィルム50を用いたフリップチップ実装法によれば、前記の通り、多数の電極間を一括して電気的に接続することが可能であり、ワイヤボンディングのように電極間を1つ1つボンディングワイヤで接続する必要はなく、また高密度実装に伴う端子電極の微細化、狭ピッチ化等への対応も比較的容易である。
【0007】
ところで、チップ部品55は、加熱ボンダーによって熱加圧されることにより、図6に示すように、反りを生じることがある。チップ部品55は、反りが生じることによりアクティブ面の外側縁にあるバンプ56と電極部58との電気的な接続が不十分となる。特にチップ部品55の一方のバンプが複数存在する場合、内側のバンプ56aは反りの中心点(支点)に近いことから、バンプの一部が浮き導電性粒子の潰れが十分でなくなり、外側のバンプ56bはバンプと電極部58とが完全に離間し導電性粒子の潰れが生じない為に接続不良が発生する。また、チップ部品55は、反りの程度が大きくなると、チップ割れが生じてしまう。
【0008】
このため、異方性導電フィルム50にスペーサを含有させ、チップ部品55のアクティブ面と基板57の電極部58との間にスペーサを挟み込ませる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−323523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載されているようにチップ部品55のアクティブ面と基板57の電極部58との間にスペーサを挟み込ませる場合においても、スペーサの硬度や粒子径によっては、チップ部品55に割れや反りを生じさせるおそれがあり、またバンプ56と電極部58とが離間し、導通抵抗の上昇を招くおそれもある。
【0011】
そこで、本発明は、異方性導電フィルム中にスペーサを含有させることにより、確実にチップ部品の反りや割れを防止することができる異方性導電フィルム、この異方性導電フィルムの製造方法、この異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法、この異方性導電フィルムを用いた異方性導電接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る異方性導電フィルムは、導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とが積層された多層構造をなし、上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを有し、上記弾性スペーサは、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである。
【0013】
また、本発明に係る異方性導電フィルムの製造方法は、基材に導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の一方を形成する工程と、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである弾性スペーサを、上記基材に塗布された導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の一方の表面に配置する工程と、上記弾性スペーサが配置された導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の一方の表面上に、導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の他方を形成することにより、上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを配設する工程とを有するものである。
【0014】
また、本発明に係る電子部品の接続方法は、電子部品が接続される電極部に、異方性導電フィルムを配置する工程と、上記電極部に、上記異方性導電フィルムを介して電子部品を配置する工程と、上記電子部品を上記電極部に接続する接続工程とを有し、上記異方性導電フィルムは、導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とが積層された多層構造をなし、上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを有し、上記弾性スペーサは、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである。
【0015】
また、本発明に係る異方性導電接続体は、電子部品と、上記電子部品が導電接続された電極部と、上記電子部品を上記電極部に導電接続させる導電性接着層とを有し、上記導電性接着層は、導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とが積層された多層構造をなし、上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを有し、上記弾性スペーサは、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弾性スペーサによって、電子部品の撓みを防止し、安定した導通を図ることができる。このとき、本発明によれば、弾性スペーサの硬度(20%K値)を20〜500kgf/mmとし、粒子径Dを10〜50μmとすることにより、加熱ボンダーによる熱加圧による電子部品の反りを確実に防止できるとともに、電子部品に過剰な負荷を与えず、電子部品の割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る異方性導電フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明に係る異方性導電接続体を示す断面図である。
【図3】弾性スペーサが配置された導電性粒子含有層を示す平面図である。
【図4】(a)は弾性スペーサの表面が導電性粒子含有層に100%接した異方性導電フィルムを示す断面図であり、(b)は弾性スペーサの表面が絶縁性樹脂層に100%接した異方性導電フィルムを示す断面図である。
【図5】従来のチップ部品と基板とを異方性導電フィルムにより接着した構造を示す断面図である。
【図6】チップ部品に反りが発生した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の具体例として示す異方性導電フィルム1は、図1に示すように、導電性粒子含有層2と、絶縁性樹脂層3と、弾性スペーサ4とを有するものである。異方性導電フィルム1は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネルの製造において画素をコントロールする駆動IC(集積回路)や、フレキシブルプリント配線板をガラス基板に接合する、いわゆるCOG(Chip on Glass)や、FOG(Film on Glass)などに用いることができる。
【0019】
図2に示すように、基板10は、例えばガラス基板やリジット基板、フレキシブル基板などの各種回路基板であり、チップ部品12が実装される電極部11が設けられている。また、チップ部品12は、例えば半導体チップやコンデンサなどの実装部品であり、基板10の電極部11に接続するバンプ13が形成されている。
【0020】
[異方性導電フィルム1]
異方性導電フィルム1は、基板10の電極部11と、チップ部品12との間に介在されることにより、チップ部品12のバンプ13と基板10の電極部11との間を導電性粒子を介して接続すると共に、チップ部品12と電極部11との間に弾性スペーサ4が挟み込まれる。これにより、異方性導電フィルム1は、チップ部品12が加熱ボンダーによって熱加圧されたときにも、チップ部品12の反りを抑制し、チップ部品12と基板10の電極部11との接続信頼性を向上させることができる。
【0021】
導電性粒子含有層2は、膜形成樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを含有する。絶縁性樹脂層3は、膜形成樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する。弾性スペーサ4は、導電性粒子含有層2と絶縁性樹脂層3との境界に設けられている。
【0022】
図1に示す異方性導電フィルム1は、それぞれPET(Polyethylene Terephthalate)等の剥離フィルムに形成された絶縁性樹脂層3及び導電性粒子含有層2によって弾性スペーサ4をラミネートして形成された2層構造である。本発明に係る異方性導電フィルム1は、少なくとも絶縁性樹脂層3、導電性粒子含有層2を備えた3層以上の多層構造であってもよい。
【0023】
[導電性粒子含有層2]
導電性粒子含有層2は、膜形成樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを含有する。
【0024】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂などの種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも膜形成状態、接続信頼性などの観点からフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0025】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、常温で流動性を有する液状エポキシ樹脂などを単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂や、ゴム、ウレタン等の各種変成エポキシ樹脂等が例示され、これらは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。また、液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができ、これらは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
硬化剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱により活性化する潜在性硬化剤、加熱により遊離ラジカルを発生させる潜在性硬化剤などを用いることができる。加熱により活性化する潜在性硬化剤としては、例えば、ポリアミン、イミダゾール等のアニオン系硬化剤やスルホニウム塩などのカチオン系硬化剤などが挙げられる。
【0027】
導電性粒子は、電気的に良好な導体であるものであれば使用でき、例えば、銅、銀、ニッケル等の金属粉末や樹脂よりなる粒子を上記金属により被覆したものが挙げられる。また、導電性粒子の全表面を絶縁性の皮膜で被覆したものを用いてもよい。導電性粒子は、粒子径が1〜10μmのものを使用でき、3〜5μmのものを好適に使用できる。
【0028】
その他の添加組成物として、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。また、無機フィラーを添加させてもよい。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。無機フィラーの含有量により、流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させることができる。また、ゴム成分なども接合体の応力を緩和させる目的で、適宜使用することができる。
【0029】
これら導電性粒子含有層2の各構成成分を配合する際、これらを溶解させる有機溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、又はこれらの混合溶剤、その他各種有機溶剤を用いることができる。また、導電性粒子含有層2の溶融粘度は導電性粒子の粒子捕捉率を向上させる観点から、絶縁性樹脂層3の溶融粘度よりも高いことが好ましい。
【0030】
[絶縁性樹脂層3]
絶縁性樹脂層3は、膜形成樹脂と、熱硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する。膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、及び硬化剤は、導電性粒子含有層2と同様なものを用いることができる。
【0031】
また、絶縁性樹脂層3は、その他の添加組成物として、導電性粒子含有層2と同様に、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などを用いることができる。これらの中でも、本実施の形態では、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。これにより、有機材料と無機材料の界面における接着性を向上させることができる。
【0032】
また、絶縁性樹脂層3は、無機フィラーを添加させてもよい。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができ、無機フィラーの種類は特に限定されるものではない。無機フィラーの含有量により、流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させることができる。また、絶縁性樹脂層3は、ゴム成分なども接合体の応力を緩和させる目的で、適宜使用することができる。
【0033】
なお、導電性粒子の粒子捕捉率を向上させる観点から、絶縁性樹脂層3は、導電性粒子含有層2よりも溶融粘度が低くなることが好ましい。
【0034】
[弾性スペーサ4]
導電性粒子含有層2と絶縁性樹脂層3との境界に設けられる弾性スペーサ4は、例えば球形で絶縁性、緩衝性、かつ耐熱性を有する樹脂系の弾性体からなる。弾性スペーサ4は、チップ部品12を基板10の電極部11に実装する際に、加熱ボンダーによる熱加圧工程によってチップ部品12に反りが発生することを防止するものである。
【0035】
弾性スペーサ4は、加熱ボンダーによる熱加圧によってもチップ部品12の反りを防止できるとともに、チップ部品12に過剰な負荷を与えない程度の硬度を有し、例えば、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmとされ、好ましくは100〜400kgf/mmである。弾性スペーサ4は、硬度(20%K値)が20kgf/mmよりも小さいと加熱ボンダーによる圧力に抗してチップ部品12の反りを防止することができず、500kgf/mmを超えるとかえってチップ部品12に過剰な負荷を与えチップ割れが発生するおそれがある。
【0036】
また、弾性スペーサ4は、チップ部品12のバンプ13の高さに応じて、加熱ボンダーによる熱加圧によってもチップ部品12の反りを防止できるとともに、バンプ13と電極部11との接続を阻害しない粒子径を有し、例えば、バンプ高さHが15μmとされているのに対して粒子径Dが10〜50μmとされている。弾性スペーサ4は、粒子径Dが10〜50μmとされることにより、チップ部品12のバンプ13の高さHとの比(H/D)が0.3〜1.5となる。これにより、弾性スペーサ4は、チップ部品12の反りを抑制すると共に、バンプ13と電極部11との接続を阻害することもない。
【0037】
[フィルム製造方法]
次に、異方性導電フィルム1の製造方法について説明する。本実施の形態における異方性導電フィルム1は、剥離フィルム上に導電性粒子含有層2を形成し、同様に剥離フィルム上に絶縁性樹脂層3を形成し、導電性粒子含有層2の表面に弾性スペーサ4を配設した後、弾性スペーサ4上から絶縁性樹脂層3をラミネートすることにより製造される。
【0038】
剥離フィルムは、例えば、シリコーンなどの剥離剤をPET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methylpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)などに塗布した積層構造からなり、導電性粒子含有層2及び絶縁性樹脂層3の乾燥を防ぐとともに、これらの形状を維持する。剥離フィルムは、基板10の電極部11の形状に応じた形状、例えば矩形状に形成されている。
【0039】
異方性導電フィルム1は、この剥離フィルム上に導電性粒子含有層2を構成する樹脂組成物をバーコーター、塗布装置などを用いて塗布し、熱オーブン、加熱乾燥装置などを用いて乾燥させる。これにより所定の厚さ、例えば10μm厚の導電性粒子含有層2を形成する。導電性粒子含有層2は、剥離フィルム5の同形状の例えば矩形状に形成される。
【0040】
次いで、導電性粒子含有層2と同様に、剥離フィルム上に絶縁性樹脂層3を構成する樹脂組成物を塗布し、乾燥させ、所定の厚さ、例えば10μm厚の絶縁性樹脂層3を形成する。
【0041】
次いで、図3に示すように、バンプ13と電極部11との接続位置を除いた導電性粒子含有層2の所定の位置、例えば幅方向の中央部に、長手方向に亘って複数の弾性スペーサ4が所定間隔で配設される。このとき、弾性スペーサ4は、全体が導電性粒子含有層2に埋没することなく、表面の20〜40%が接するように配設される。
【0042】
次いで、弾性スペーサ4上から絶縁性樹脂層3をラミネートする。このとき、弾性スペーサ4は、導電性粒子含有層2に表面の20〜40%が接し、絶縁性樹脂層3に表面の60〜80%が接する。
【0043】
このように、異方性導電フィルム1は、弾性スペーサ4が導電性粒子含有層2にその表面の20〜40%が埋没するように配設され、絶縁性樹脂層3にその表面の60〜80%が埋没するように配設されるため、導電性粒子含有層2及び絶縁性樹脂層3の厚さが、弾性スペーサ4が配設されている領域においても、弾性スペーサ4が配設されていない領域においても等しくなり、全体に亘って均一の樹脂厚みとすることができる。
【0044】
すなわち、異方性導電フィルム1は、弾性スペーサ4が導電性粒子含有層2や絶縁性樹脂層3のいずれかに、表面の100%が接するまで埋没すると、ラミネート処理によって当該弾性スペーサ4が配設された領域の樹脂が周囲に排除され、弾性スペーサ4が配設された領域の樹脂厚みは薄く、その周囲は厚くなってしまう。
【0045】
本発明に係る異方性導電フィルム1は、弾性スペーサ4が導電性粒子含有層2と絶縁性樹脂層3との境界に配設されているため、全体に亘って樹脂厚みを均一に形成することができる。
【0046】
[チップ部品の接続方法]
次に、上述した異方性導電フィルム1を用いたチップ部品12の接続方法、及び異方性導電接続体について説明する。本実施の形態におけるチップ部品12の接続方法は、基板10の電極部11上に異方性導電フィルム1を貼付け、この異方性導電フィルム1上にチップ部品12を仮配置する。次いで、チップ部品12上から加熱ボンダーにより熱加圧することにより異方性導電フィルム1を熱硬化させるとともに、基板10の電極部11と、チップ部品12のバンプ13とを接続させるものである。これにより、異方性導電フィルム1に分散された導電性粒子を介して基板10の電極部11とチップ部品12のバンプ13とが接続された異方性導電接続体が得られる。
【0047】
基板10に異方性導電フィルム1を貼り付ける工程では、導電性粒子含有層2と接する剥離フィルムを剥がし、導電性粒子含有層2を電極部11に配置する。次いで、絶縁性樹脂層3と接する剥離フィルムの上から硬化剤が本硬化しない程度の温度で熱加圧する。その後、剥離フィルムを剥がし、絶縁性樹脂層3側からチップ部品12を搭載し、図示しない加熱ボンダーによってチップ部品12上から熱加圧する。
【0048】
ここで、異方性導電フィルム1は、導電性粒子を含有しないバンプ13が埋入する上層に絶縁性樹脂層3を有し、電極部11と接する下層に導電性粒子含有層2が設けられている。したがって、チップ部品12は、バンプ13が加熱によって流動性を示す絶縁性樹脂層3を押し退け、バンプ13が導電性粒子含有層2の導電性粒子を介して電極部11と接続される。
【0049】
チップ部品12及び基板10は、バンプ13の無い部分では、導電性粒子が絶縁性の樹脂中に分散した状態が維持され、電気的に絶縁された状態が保たれるので、バンプ13のある部分でのみ電気的導通が図られることになる。
【0050】
また、異方性導電フィルム1は、バンプ13と電極部11とが接続される領域を除く、例えばチップ部品12の略中央部分に応じて弾性スペーサ4が配設され、この弾性スペーサ4によってチップ部品12の略中央が撓むことを防止する。したがって、チップ部品12は、略中央部が反ることにより、外側縁に設けられたバンプ13が電極部11と離間することなく、安定した導通を得ることができる。
【0051】
このとき、異方性導電フィルム1は、弾性スペーサ4の硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmとすることにより、加熱ボンダーによる熱加圧によるチップ部品12の反りを確実に防止できるとともに、チップ部品12に過剰な負荷を与えず、チップ割れを防止することができる。
【0052】
また、異方性導電フィルム1は、弾性スペーサ4が、チップ部品12のバンプ13の高さに応じた所定の粒子径を有し、例えば、バンプ高さHが15μmとされているのに対して粒子径Dが10〜50μmとされている。これにより、異方性導電フィルム1は、弾性スペーサ4の粒子径Dと、チップ部品12のバンプ13の高さHとの比(H/D)が0.3〜1.5となり、チップ部品12の反りを抑制すると共に、バンプ13と電極部11との接続を阻害することもない。
【実施例1】
【0053】
以下、本発明の実施例について説明する。実施例では、導電性粒子含有層2に含まれる弾性スペーサ4の硬度(20%K値)、バンプ高さHに対する粒子径D、そして弾性スペーサ4が導電性粒子含有層2へ接する表面の割合が異なる異方性導電フィルムのサンプルを用いて、チップ部品をガラス基板上の電極部に熱加圧することにより実装した。そして各サンプルについて、チップ部品の反り、初期導通抵抗(Ω)、高温高湿試験(85℃−85%RH500hr)後の導通抵抗(Ω)について調べた。チップ部品のバンプ高さHは、いずれも15μmで統一した。
【0054】
なお、チップ部品の反りは、触針式表面粗度計(商品名:SE−3 株式会社小阪研究所製)を用いて、ガラス基板の下側からスキャンし、チップ部品実装後のガラス基板面を測定し、チップ部品の両端をベースラインとした時の最大値を求めた。評価指標として、反りが17μm未満の場合は実用上問題なしとして○とし、反りが17μm以上のものは×とした。
【0055】
各異方性導電フィルムのサンプルは、導電性粒子含有層及び絶縁性樹脂層からなる2層構造、又は導電性粒子含有層のみからなる1層構造であり、導電性粒子含有層は、
フェノキシ樹脂(YP−50:新日鐵化学株式会社製);60質量部
エポキシ樹脂(EP828:三菱化学株式会社製);35質量部
硬化剤(Si−80L:三新化学工業株式会社製);4質量部
シランカップリング剤(A−187:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製);1質量部
導電性粒子;(AUL704:積水化学工業株式会社製):50000pce/mmで分散
を混合し樹脂組成物を調整した。
【0056】
また、絶縁性樹脂層は、
フェノキシ樹脂(YP−50:新日鐵化学株式会社製);55質量部
エポキシ樹脂(EP828:三菱化学株式会社製);40質量部
硬化剤(Si−80L:三新化学工業株式会社製);4質量部
シランカップリング剤(A−187:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製);1質量部
を混合し樹脂組成物を調整した。
【0057】
実施例1は、導電性粒子含有層及び絶縁性樹脂層からなる2層構造であり、弾性スペーサの硬度(20%K値)を20kgf/mm、粒子径Dを30μm、バンプ高さH(=15μm)と粒子径Dとの比(H/D)を0.5、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合を30%とした。
【0058】
実施例2は、弾性スペーサの硬度(20%K値)を100kgf/mmとした他は、実施例1と同一の構成とした。
【0059】
実施例3は、弾性スペーサの硬度(20%K値)を300kgf/mmとした他は、実施例1と同一の構成とした。
【0060】
実施例4は、弾性スペーサの硬度(20%K値)を400kgf/mmとした他は、実施例1と同一の構成とした。
【0061】
実施例5は、弾性スペーサの硬度(20%K値)を500kgf/mmとした他は、実施例1と同一の構成とした。
【0062】
実施例6は、導電性粒子含有層及び絶縁性樹脂層からなる2層構造であり、弾性スペーサの硬度(20%K値)を300kgf/mm、粒子径Dを10μm、バンプ高さH(=15μm)と粒子径Dとの比(H/D)を1.5、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合を30%とした。
【0063】
実施例7は、粒子径Dが20μm、バンプ高さH(=15μm)と粒子径Dとの比(H/D)を0.75とした他は、実施例6同一の構成とした。
【0064】
実施例8は、粒子径Dが40μm、バンプ高さH(=15μm)と粒子径Dとの比(H/D)を0.38とした他は、実施例6同一の構成とした。
【0065】
実施例9は、粒子径Dが50μm、バンプ高さH(=15μm)と粒子径Dとの比(H/D)を0.3とした他は、実施例6同一の構成とした。
【0066】
実施例10は、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合を20%とした他は、実施例3と同一の構成とした。
【0067】
実施例11は、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合を40%とした他は、実施例3と同一の構成とした。
【0068】
比較例1は、弾性スペーサの硬度(20%K値)を700kgf/mmとした他は、実施例1と同一の構成とした。
【0069】
比較例2は、導電性粒子含有層及び絶縁性樹脂層からなる2層構造であり、弾性スペーサを含有しない構成とした。
【0070】
比較例3は、導電性粒子含有層のみからなる1層構造であり、実施例3と同一の弾性スペーサを含有し、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合を100%とした。
【0071】
比較例4は、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合が0%、すなわち、弾性スペーサは全て絶縁性樹脂層に埋設した他は、実施例3と同一の構成とした。
【0072】
比較例5は、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合が100%、すなわち、弾性スペーサは全て導電性粒子含有層に埋設し、絶縁性樹脂層には接していない他は、実施例3と同一の構成とした。
【0073】
比較例6は、粒子径Dが60μm、バンプ高さH(=15μm)と粒子径Dとの比(H/D)を0.25とした他は、実施例6同一の構成とした。
【0074】
【表1】

【0075】
結果を表1に示す。表1に示すように、弾性スペーサの硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmである実施例1〜5では、チップ部品の反りが最大16.3μmであり、また初期導通抵抗が1.8Ω以下、高温高湿試験(85℃−85%RH500hr)後の導通抵抗が47Ω以下と、いずれも実用上問題はなかった。一方、弾性スペーサの硬度(20%K値)が700kgf/mmである比較例1では、チップ部品に割れが発生した。
【0076】
また、弾性スペーサの粒子径Dが10〜50μmであり、バンプ高さHとの比(H/D)が0.3〜1.25である実施例6〜実施例9では、チップ部品の反りが最大13.5μmであり、また初期導通抵抗が1.8Ω以下、高温高湿試験(85℃−85%RH500hr)後の導通抵抗が51Ω以下と、いずれも実用上問題はなかった。一方、弾性スペーサの粒子径Dが60μm、バンプ高さHとの比(H/D)が0.25である比較例6では、チップ部品の一部に割れが発生し、このため高温高湿試験後の導通抵抗はOPENとなり、使用できなくなった。
【0077】
また、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層に接する弾性スペーサの表面の割合が20〜40%である実施例10〜実施例11では、チップ部品の反りが12.3μmであり、また初期導通抵抗が0.3Ω、高温高湿試験(85℃−85%RH500hr)後の導通抵抗が15Ωと、いずれも実用上問題はなかった。一方、熱加圧に供する前における導電性粒子含有層2に接する弾性スペーサ4の表面の割合が0%、100%である比較例4及び比較例5では、図4(a)(b)に示すように、弾性スペーサ4が配設された箇所の導電性粒子含有層2又は絶縁性樹脂層3の厚さがその他の箇所との厚さと比して薄くなり、全体に亘って均一の樹脂厚みの異方性導電フィルムを製作することができなかった。
【0078】
なお、導電性粒子含有層のみからなる比較例3では、チップ部品のバンプによる樹脂の排除が不十分となり、初期導通抵抗が比較的高くなった。また、弾性スペーサを含有しない比較例2では、チップ部品の反りが17μm、初期導通抵抗が6.8Ω、高温高湿試験後の導通抵抗が50Ω以上となり、反りによる導通抵抗の上昇がみられた。
【符号の説明】
【0079】
1 異方性導電フィルム、2 導電性粒子含有層、3 絶縁性樹脂層、4 弾性スペーサ、10 基板、11 電極部、12 チップ部品、13 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とが積層された多層構造をなし、
上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを有し、
上記弾性スペーサは、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、上記弾性スペーサは、粒子径Dが10〜50μmである異方性導電フィルム。
【請求項2】
上記弾性スペーサは、粒子径Dと、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の電極高さHとの比(H/D)が0.3〜1.5である請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
上記弾性スペーサは、上記導電性粒子含有層に接する表面の割合が20〜40%である請求項1又は請求項2に記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層の2層構造からなる請求項3記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とは、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の形状に応じた形状をなし、
上記弾性スペーサは、上記電子部品の上記電極端子が配置される位置を除く領域に設けられている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
基材に導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の一方を形成する工程と、
硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである弾性スペーサを、上記基材に塗布された導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の一方の表面に配置する工程と、
上記弾性スペーサが配置された導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の一方の表面上に、導電性粒子含有樹脂層及び絶縁性樹脂層の他方を形成することにより、上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを配設する工程とを有する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項7】
上記弾性スペーサは、粒子径Dと、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の電極高さHとの比(H/D)が0.3〜1.5である請求項6記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項8】
上記弾性スペーサは、上記導電性粒子含有層に接する表面の割合が20〜40%である請求項6又は請求項7に記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項9】
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とは、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の形状に応じた形状をなし、
上記弾性スペーサは、上記電子部品の上記電極端子が配置される位置を除く領域に配置される請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項10】
電子部品が接続される電極部に、異方性導電フィルムを配置する工程と、
上記電極部に、上記異方性導電フィルムを介して電子部品を配置する工程と、
上記電子部品を上記電極部に接続する接続工程とを有し、
上記異方性導電フィルムは、
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とが積層された多層構造をなし、
上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを有し、
上記弾性スペーサは、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである電子部品の接続方法。
【請求項11】
上記弾性スペーサは、粒子径Dと、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の電極高さHとの比(H/D)が0.3〜1.5である請求項10記載の電子部品の接続方法。
【請求項12】
上記弾性スペーサは、上記導電性粒子含有層に接する表面の割合が20〜40%である請求項10又は請求項11に記載の電子部品の接続方法。
【請求項13】
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とは、上記電子部品の形状に応じた形状をなし、
上記弾性スペーサは、上記電子部品の上記電極端子が配置される位置を除く領域に配置されている請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の電子部品の接続方法。
【請求項14】
電子部品と、
上記電子部品が導電接続された電極部と、
上記電子部品を上記電極部に導電接続させる導電性接着層とを有し、
上記導電性接着層は、
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とが積層された多層構造をなし、
上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層との境界に弾性スペーサを有し、
上記弾性スペーサは、硬度(20%K値)が20〜500kgf/mmであり、粒子径Dが10〜50μmである異方性導電接続体。
【請求項15】
上記弾性スペーサは、粒子径Dと、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の電極高さHとの比(H/D)が0.3〜1.5である請求項14記載の異方性導電接続体。
【請求項16】
上記弾性スペーサは、上記導電性粒子含有層に接する表面の割合が20〜40%である請求項14又は請求項15に記載の異方性導電接続体。
【請求項17】
上記導電性粒子含有層と上記絶縁性樹脂層の2層構造からなる請求項16記載の異方性導電接続体。
【請求項18】
導電性粒子含有層と絶縁性樹脂層とは、該異方性導電フィルムを介して導電接続される電子部品の形状に応じた形状をなし、
上記弾性スペーサは、上記電子部品の上記電極端子が配置される位置を除く領域に設けられている請求項14〜請求項17のいずれか1項に記載の異方性導電接続体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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