説明

異物の検出装置及び検出方法

【課題】 異物の検出能力を向上可能な異物検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明に係る異物検出装置1は、繊維状異物5が混在している可能性のある被検査物3が載置された搬送部10上の被検査領域S1に対して各々の入射面が互いに直交するように第1検査光L1及び第2検査光L2を照射する照射部20と、照射部20による第1検査光L1及び第2検査光L2の照射に伴い、被検査領域S1から反射された反射光のスペクトルを測定するスペクトル測定部30と、スペクトル測定部30により測定された反射光のスペクトルを解析して繊維状異物5が混在しているか否かを判断する判定システム41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物に混在している異物、特に繊維状異物の検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような分野においては、異物の検出能力を向上させるための研究が進められており、異物の検出能力の向上のための様々な方法が報告されている。例えば、特許文献1には、被検査物の背面に位置して被検査物の表面色に対する補色をなした載置台と、被検査物を照射する照射装置と、被検査物を撮影するカラーカメラと、撮影した画像を処理し異物を認識する処理装置とを備える被検査物の表面検査装置及びその装置を用いた表面検査方法が開示されている。また、特許文献2には、走査型撮像装置により得られた被検査物の映像信号を、微分回路、差分回路、判定回路等を用いて演算を行い、その演算の結果を用いて異物を判別する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9-304294号公報
【特許文献2】特開平6-323999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発明及び特許文献2に記載の発明の何れにおいても、細い繊維状異物に対する検出能力を十分に向上することは困難である。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、異物の検出能力を向上可能な異物検出装置及び異物検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明に係る異物検出装置は、異物が混在している可能性のある被検査物が載置された載置台上の被検査領域に対して各々の入射面が互いに直交するように第1検査光及び第2検査光を照射する照射手段と、照射手段による第1検査光及び第2検査光の照射に伴い、被検査領域から反射された反射光のスペクトルを測定するスペクトル測定手段と、スペクトル測定手段により測定された反射光のスペクトルを解析して異物が混在しているか否かを判断する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
被検査物に検査光を照射すると、その表面からは拡散反射光(散乱された光)及び正反射光が返ってくる。拡散反射光は、正反射光に比べて強度は低いものの、検査光の照射の角度などに依存せず、被検査物の表面から全方位に放射される。これに対して正反射光は、高い強度を持つものの、入射角と反射角が等しくなる特定の方向にのみ反射されるため、検出できる角度範囲が限定される。また、異物に検査光を照射すると、異物の表面面積が広い場合には、異物表面からの拡散反射光量は比較的に大きいため、検査光の照射の角度などに依存せず検出することが可能である。一方、細い繊維等のように異物が表面面積が狭い場合には、異物表面からの拡散反射光量は比較的に小さいため検出できない事もある。従って、細い繊維状異物を効率的に検出するには、強度の高い正反射光を捉える必要がある。本発明に係る異物検出装置では、繊維状異物からの正反射光を捕捉する確率を高めるために、異物が混在している可能性のある被検査物が載置された載置台上の被検査領域に対して、各々の入射面が互いに直交するように第1検査光及び第2検査光を照射する照射手段を備えることにより、異物表面からの強い正反射光を容易にスペクトル測定手段に受け渡すことができ、拡散反射光量の小さな繊維状異物に対する検出能力を向上することができる。
【0007】
また、スペクトル測定手段は、被検査領域をライン状に限定する開口部を有するスリットと、限定された被検査領域から反射された反射光を分光する分光手段と、分光手段によって分光された反射光を受光するための複数の受光センサからなる2次元の受光面を有する受光手段と、を含むことが好適である。このように、分光手段により被検査領域から反射された光を波長に応じて分光し、分光された光の波長領域毎に光強度を測定する構成を採用することで、スペクトル分析による異物の識別が可能となる。
【0008】
また、スペクトル測定手段は、被検査領域から反射された反射光のうち所定の透過波長帯域の反射光を選択的に透過させて出力するものであって、所定の透過波長帯域を変更可能な光フィルタと、光フィルタを透過した反射光を受光する2次元の受光面を有する受光手段と、を含むことも好適である。
【0009】
これにより、反射特性等が異なる複数の異物を、フィルタを取り替えることなく容易に検出できる。また、異物の反射特性等に応じて、検出波長を容易に調整できる。
【0010】
また、被検査領域に照射される第1検査光の入射面とスリットの開口部の長手方向とが互いに直交することが好適である。これにより、第一検査光が異物の表面において反射された反射光に対する開口値を大きくすることができ、反射光を効率的に捕捉できる。
【0011】
また、被検査物を搬送する搬送手段を更に備えることが好適である。このような構成を採用することで、被検査物を搬送しながら検査光の照射、反射光のスペクトルの測定、及び異物の判定を行うことができ、異物検出を自動化することが容易となる。
【0012】
また、本発明に係る異物検出方法は、異物が混在している可能性のある被検査物が載置された載置台上の被検査領域に対して、各々の入射面が互いに直交するように第1検査光及び第2検査光を照射する照射ステップと、照射ステップにおける第1検査光及び第2検査光の照射に伴い、被検査領域から反射された反射光のスペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、スペクトル測定ステップにおいて測定された反射光のスペクトルを解析して異物が混在しているか否かを判断する判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
異物の形状によっては、異物の表面で散乱された拡散反射光の光量が微弱で、拡散反射光の光量を用いて異物を検出することが困難である場合がある。また、このような拡散反射光と比較して正反射光は強度が高い。本発明に係る異物検出方法では、異物が混在している可能性のある被検査物が載置された載置台上の被検査領域に対して、各々の入射面が互いに直交するように第1検査光及び第2検査光を照射する照射ステップを備えることにより、異物の表面において反射された高い強度の正反射光を用いて異物検出を行うことができる。従って、本発明に係る異物検出方法によれば、異物の検出能力を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る異物検出装置によれば、異物の検出能力を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明に係る異物検出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る異物検出装置1の概略構成図である。
【0017】
異物検出装置1は、搬送部10、照射部20、スペクトル測定部30及びパーソナルコンピュータ(PC)40を備える。
【0018】
搬送部10は、繊維状異物(例えば、毛髪)5が混在している可能性のある被検査物(例えば、豆)3を搬送する手段である。具体的には赤外線反射率の低い材料で作成されたベルトコンベアであり、被検査物3がその上面P1上に載置されるベルト部10aとベルト部10aの内面と接しておりベルト部10aを駆動可能にするための2つのロール部(図示せず)とで構成されている。ロール部はモーター等の回転駆動装置と連結されており、ロール部が回転することによって、ベルト部10aが駆動して、ベルト部10aに載置されている被検査物3は図1に示すA方向(x軸の正方向)に搬送される。ベルト部10aの幅は、後述する照射部20が照射可能な範囲内にあり、且つ後述するカメラ33が測定可能な範囲であることが好ましい。
【0019】
照射部20は、波長範囲900nm〜2500nmに中心波長を有する近赤外光の第1検査光L1及び第2検査光L2をそれぞれ出力する第1照射部21及び第2照射部23から構成されている。具体的に説明すると、照射部21は、検査光L1の入射面と搬送部10の移動方向Aとが直交するように検査光L1を被検査領域S1に照射し、照射部23は、検査光L2の入射面と搬送部10の移動方向Aとが平行となるように検査光L2を被検査領域S1に照射する。このように、第1照射部21及び第2照射部23それぞれから出力される第1検査光L1及び第2検査光L2は、搬送部10の上面P1に対する入射面が互いに直交する。
【0020】
スペクトル測定部30は、照射部20による被検査物3への検査光L1,L2の照射により、被検査物3から反射された反射光のスペクトルを測定する手段であり、カメラ33と、その前段に設けられたスリット35及び回折格子31とで構成されている。
【0021】
スリット35は、y軸方向を長手方向として延びるように形成された開口部35aを有しており、スペクトルが測定される被検査領域S1をライン状に限定する。また、スリット35の開口部35aの長手方向と第2検査光L2の入射面とが互いに直交するため、繊維状異物5の表面において反射された反射光に対するカメラ33の受光感度が向上される。
【0022】
回折格子31は、被検査領域S1からの反射光を波長に応じてx軸方向に分光する。カメラ33は、2次元の受光面を有しており、その2次元の受光面により回折格子31によって分光された反射光を受光する。これにより、カメラ33の受光面を構成する各受光センサには被検査領域S1中の所定の単位領域から反射された反射光が波長に応じて分光されて入力される。このとき、カメラ33の2次元の受光面のy軸方向は被検査領域S1中の位置に対応し、x軸方向は分光された波長に対応している。
【0023】
カメラ33は、2次元の受光面による受光により発生する電荷をA/D変換器によってデジタル変換し、波長領域ごとに光強度の分布のデジタルデータを生成する。このデジタルデータは、カメラ33のデータ出力端子からケーブルを通してPC40に時系列的に伝送される。PC40内には、測定された波長領域毎に反射光の強度の分布をデータ処理及び画像処理を行う判定システム(判定部)41が取り込まれている。この判定システム41により、被検査領域S1に繊維状異物5が存在するか否かが判定される。
【0024】
(異物検出方法)
以下では、異物検出装置1による異物検出の手順を説明する。
図2は、異物検出の全体的な流れを示すフローチャートである。以下、図2を参照しながら上記実施形態の異物検出装置1を用いて被検査物3に混在している繊維状異物5を検出する方法を説明する。繊維状異物5の検出においては、まず、被検査領域S1に対して、それぞれの入射面が互いに直交するように第1検査光L1及び第2検査光L2を照射する(S101)。第1検査光L1及び第2検査光L2の照射に伴い、被検査領域S1から反射された反射光のスペクトルを測定する(S102)。所定の波長領域における反射光の強度の分布から、被検査領域S1中の隣接する3つ以上の単位領域において、その閾値より高い強度が測定されたと判断される場合には、これを繊維状異物5と判定する(S103)。
【0025】
まず、搬送部10へ被検査物3の供給が開始される前に、所定の搬送速度で搬送部10を運転しておく。そして、搬送部10に設定された搬送速度を測定条件データとして判定システム41に設定しておく。
【0026】
搬送部10の搬送速度は、カメラ33が十分精度よく被検査物3を検出できる範囲内とすることが好ましい。搬送部10への被検査物3の供給が開始されると、照射部21,23から検査光L1,L2を発し、被検査領域S1に検査光L1,L2を照射する。被検査領域S1は、ベルト部10a上に積載されている被検査物3の幅を十分にカバーするものであり、被検査領域S1から反射された反射光は回折格子31により波長に応じてx軸方向に分光される。その分光された反射光はカメラ33の2次元の受光面によって受光される。
【0027】
受光面では受光により電荷が発生し、発生した電荷はカメラ33のA/D変換器によってデジタル変換されて、波長領域ごとに光強度の分布のデジタルデータとなる。このデジタルデータは、カメラ33のデータ出力端子からケーブルを通してPC40に時系列的に伝送される。
【0028】
次に、PC40で行われる繊維状異物5の判定方法について説明する。
【0029】
図3を参照しながら、判定システム41により行われる繊維状異物5が存在するか否かを判定する方法について具体的に説明する。判定システム41はピクセル単位(受光センサのx軸の1ライン単位)に判定を行う。まず、予め決められた複数の波長の反射率が全て背景閾値以下である部分を背景であると判断し、それ以外の部分を要識別領域(被検査物3または繊維状異物5)であると判定する。その後、要識別領域に対して複数波長の反射率を演算し、被検査物3と繊維状異物5を判別する。
【0030】
被検査物3と繊維状異物5を判別する演算方法には種々の方法があるが、その一例を図3(a)及び(b)を用いて説明する。図3(a)は、被検査領域S1からの特定波長の反射光強度をグラフ化した光強度分布図であり、横軸がベルトコンベアの幅方向の位置を、縦軸が反射光強度を示している。図3(b)は、図3(a)の点Fと点Gにおける反射光波長特性(受光センサのx軸方向データ)を示す図であり、横軸が波長を、縦軸が反射光の強度を示している。図3(b)に示されているように、繊維状異物5が存在する一単位領域に対応される点Fにおける反射光波長特性には被検査物3には見られない反射率ピークP1、P2が見られる。
【0031】
この点に着目して、本実施形態の判定システム41には予め所定の波長付近における反射率ピークP1とP2を検出するアルゴリズムを組み込まれており、反射率ピークP1とP2が同時に検出された場合に、そのピクセルでは繊維状異物5が検出されたと判定するようになっている。なお、検出性能を更に向上させるため、判定システム41は、特定エリア内に繊維状異物5が検出されたと判定されるピクセルが複数個まとまって存在する時にのみ繊維状異物5が存在すると判定するようになっている。すなわち、例えば5×5の25ピクセル内に繊維状異物5が検出されたと判定されるピクセルが3個以上まとまって存在する場合に繊維状異物5として認識する。この判定方法は、あくまで単純化した一例であり、PC40に組み込まれた判定システム41においては、更に複雑で識別能力の高い判定アルゴリズムが組み込まれていてもよい。
【0032】
本実施形態に係る異物検出装置1及び異物検出装置1を用いた異物検出方法では、照射部20により、繊維状異物5が混在している可能性のある被検査物3が載置された搬送部10上の被検査領域S1に対して、それぞれの入射面が互いに直交するように第1検査光L1及び第2検査光L2が照射される。毛髪等の細い繊維状異物5においては、その表面で散乱された拡散反射光の光量が微弱で、拡散反射光の光量を用いて異物を検出することが困難である場合がある。
【0033】
また、このような拡散反射光と比較して繊維状異物5の表面において発生する正反射光は強度が高い。本実施形態係る異物検出装置1では、上述した構成を有する照射部20を備えることにより、繊維状異物5の表面において反射された高い強度の正反射光の情報を容易にスペクトル測定部30に伝達することができ、その高い強度の正反射光を用いて異物検出を行うことができる。従って、本実施形態に係る異物検出装置1によれば、異物の検出能力を向上することができる。
【0034】
また、回折格子31及びカメラ33からなるスペクトル測定部30を備えるため、回折格子31により被検査領域S1から反射された光を波長に応じて分光し、分光された光の波長領域毎に光強度を測定することができる。そのため、スペクトル分析による異物の識別が可能となる。
【0035】
被検査領域S1に照射される第2検査光L2の入射面と回折格子31の前段に設けられたスリット35の長手方向とが互いに直交している。これにより、第二検査光が繊維状異物5の表面において反射された反射光に対する開口値を大きくすることができ、反射光を効率的に捕捉できる。
【0036】
以下、図4〜図7を用いて、異物検出装置1が被検査領域S1に対して第1検査光L1及び第2検査光L2をそれぞれの搬送部10の上面P1に対する入射面が互いに直交するように照射する照射部20を備えることによる効果を説明する。図5,6及び7は、図4に示されている繊維状異物5として8つのポリプロピレンの繊維PP〜PP、8つのポリエチレンの繊維PE〜PE及び8つの毛髪H〜Hが混在する被検査物3が載置された被検査領域S1に、1つの検査光の検査光L1のみを照射した場合、検査光L1及びL2の2つの検査光を照射した場合、検査光L1及びL2を含む3つの検査光を照射した場合において、回折格子31及びカメラ33により測定されたスペクトルに基づいて所定の波長で得られた強度分布をそれぞれ表す図である。
【0037】
図5〜図7から分かるように、毛髪H〜Hと比べて比較的に太いポリプロピレンの繊維PP〜PP及び8つのポリエチレンの繊維PE〜PEの検出においては、いずれの場合においてもすべて検出されており、大きな差はない。しかし、細い毛髪H〜Hの検出においてはその結果が異なっており、以下に具体的に説明する。
【0038】
図5に示されるように、1つの検査光の検査光L1のみが照射された場合には8つの毛髪H〜Hにうち6つ(H,H,H,H,H及びH)が検出されている。また、図6に示されるように、2つの検査光の検査光L1及びL2が照射された場合には8つの毛髪H〜Hにうち7つ(H,H,H,H,H,H及びH)が検出されており、他の毛髪Hも異物として判定されないものの、その一部が検出されている。また、図7に示されるように、検査光L1及びL2を含む3つの検査光が照射された場合には8つの毛髪H〜Hにうち3つ(H,H及びH)が検出されている。
【0039】
以下、このような結果が得られた理由を図8及び図9を用いて説明する。図8において、繊維状異物5の円筒状の表面には検査光L1をカメラ33に正反射する角度を持った部分が存在する。一方、繊維状異物5の表面には、検査光L1をカメラ33に正反射する角度を持った面はほとんど存在しない。従って、検査光L1のみを使用した場合には、正反射光をカメラ33に返しやすい繊維状異物5は検出されやすく、正反射光をカメラ33に返し難い繊維状異物5は検出され難くなる。なお、実際には、図9に示すように、繊維状異物5が検査光Lの入射面と直交するように配置されていない場合であってもそれに近い角度をなしていれば(繊維状異物5における範囲A)、繊維状異物5の表面状態などにより正反射光がカメラ33に伝達される確率が高くなる。また、繊維状異物5の全体が異物と判定されなくても、その一部が繊維状異物5として判定され異物と判定されれば取り除くことは可能である。
【0040】
この状態で、更に検査光L2も照射されると、繊維状異物5から発生した高い強度の正反射光も容易にカメラ33に受け渡されて繊維状異物5も容易に検出されることとなり検出能力が向上される。一方、検査光L1及びL2を含む3つの検査光を照射すると、繊維状異物5及び5からの正反射光の光量が相対的に弱くなり、検出能力が下がることとなる。
【0041】
より具体的に説明すると、繊維状異物5の特定部分において正反射が起こる場合、その正反射光は複数の検査光のいずれか1つに対して起こる。なお、測定においては白色散乱板からの反射光量を100%、スリット35を閉じた場合の光量を0%と規格化しており、以下の説明では検査光L1のみを使用した場合の繊維状異物5からの正反射光量を規格化値の10%(1灯使用時の10%)と仮定する。検査光L1のみを使用した場合も、検査光L1及びL2を同時に使用した場合も、繊維状異物5がカメラ33に返す正反射光量は共に「1灯使用時の10%」で変わらないが、検査光L1及びL2を同時に使用した場合(2灯使用時)には、被検査領域S1に照射される検査光の全体光量は検査光L1のみを使用した場合の2倍になる。つまり「1灯使用時の10%」は2灯使用時には5%相当となり、繊維状異物5からの正反射光の相対強度は低下する。そのため、カメラ33の繊維状異物51に対する検出感度は、検査光L1及びL2を同時に使用した場合の方が、検査光L1のみを使用した場合より低下する。しかし、検査光L1及びL2を同時に使用することにより、検査光L1のみでは見え難い角度にあった繊維状異物52も検出できるようになり、この検出範囲の拡大効果が正反射光相対強度の低下を上回るため、結果として検査光L1及びL2を同時に使用した方が繊維状異物の検出能力が向上する。
【0042】
検査光L1及びL2に更に1灯追加して検査光を3灯使用した場合には、検出範囲の拡大効果によるメリットよりも、異物からの正反射光相対強度の低下によるデメリットの方が大きく影響を及ぼし、結果として繊維状異物の検出能力は低下する。従って、検出範囲の拡大効果を最大限に利用し、異物からの正反射光相対強度の低下を最小限に留めるという観点から、入射面が直交する2つの検査光を使用することが効果的であり、これにより異物検出装置1の繊維状異物5に対する検出能力を向上させることができる。
【0043】
また、2つの検出光を照射することで、搬送部10等の背景板の傷などによる誤検出を抑制することができる。具体的に説明すると、背景板である搬送部10に傷があった場合、特にカメラ33に対して正反射光を受け渡すような傷である場合には搬送部10の傷が繊維状異物として判定されてしまう。しかし、2つの検査光を照射することで、正反射光の相対強度を下げることができ、誤検出力を下げることができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10に示すように、第2実施形態に係る異物検出装置2は、スペクトル測定部30に替えてスペクトル測定部30Aを備える点で、第1実施形態の異物検出装置1と相違する。具体的に説明すると、第1実施形態のスペクトル測定部30がスリット35、回折格子31及び複数の受光センサにより構成されている2次元の受光面を有するカメラ33からなるものであるのに対して、スペクトル測定部30Aはエリアセンサからなる2次元の受光面を有するカメラ33Aとカメラ33Aの前段に配置された波長可変フィルタ31Aにより構成されている。なお、その他の構成は、異物検出装置1の構成と同等であるため、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0045】
波長可変フィルタ31Aは、被検査領域S1から反射された反射光うち所定の透過波長帯域の反射光を選択的に透過させて出力して他の波長帯域の反射光を減衰させるものであって、その所定の透過波長帯域を変更することができる。例えば、波長可変フィルタ31Aは、フィルタ材料を機械的に移動させて波長を変更する機械式フィルタであってもよく、構成要素の電気的特性を利用して波長を変更する電気式フィルタであってもよい。電気式フィルタの一例としては、液晶波長可変フィルタがある。波長可変フィルタ31Aを透過して出力された反射光はエリアセンサからなる2次元の受光面により受光される。カメラ33Aは、2次元の受光面による受光により発生する電荷をA/D変換器によってデジタル変換し、透過波長帯域における光強度の分布のデジタルデータを生成する。
【0046】
第2実施形態に係る異物検出装置2は、波長可変フィルタ31Aにより必要とする複数波長の反射光強度分布を測定することにより、第1実施形態に係る異物検査装置1と同様の効果が得られるほか、以下のような効果を奏することができる。すなわち、第1実施形態においては異物判定に不必要な波長データも含めて、測定可能な全波長データを取り込んでいたが、第2実施形態においては異物判定に必要な波長データのみを波長可変フィルタ31Aにより取り込むことができるので、判定にかかる時間を短縮することができ、異物検出の効率を高める事ができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、第1実施形態において、分光手段として回折格子31が用いられているが、これに限定される必要はなく、プリズム等であってもよい。
【0048】
また、本実施形態のおいては、搬送部10としてベルトコンベヤが用いられているが、ターンテーブルなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る異物検出装置の概略構成図である。
【図2】図1の異物検出装置により行われる異物検出の全体的な流れを示すフローチャートである。
【図3】図1の異物検出装置の判定システムにより行われる異物の判定方法を説明するための図である。
【図4】図1の異物検出装置の効果を説明するための図である。
【図5】図1の異物検出装置の効果を説明するための図である。
【図6】図1の異物検出装置の効果を説明するための図である。
【図7】図1の異物検出装置の効果を説明するための図である。
【図8】図1の異物検出装置の効果を説明するための図である。
【図9】図1の異物検出装置の効果を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る異物検出装置2の概略構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1、2…異物検出装置、3…被検査物、5…繊維状異物、10…搬送部、20,21,23…照射部、30,30A…スペクトル測定部、31…回折格子、31A…波長可変フィルタ、33,33A…カメラ、41…判定システム、S1…被検査領域、L1,L2…検査光。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物が混在している可能性のある被検査物が載置された載置台上の被検査領域に対して各々の入射面が互いに直交するように第1検査光及び第2検査光を照射する照射手段と、
前記照射手段による前記第1検査光及び前記第2検査光の照射に伴い、前記被検査領域から反射された反射光のスペクトルを測定するスペクトル測定手段と、
前記スペクトル測定手段により測定された前記反射光のスペクトルを解析して前記異物が混在しているか否かを判断する判定手段と、
を備えることを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記スペクトル測定手段は、
前記被検査領域をライン状に限定する開口部を有するスリットと、
限定された前記被検査領域から反射された前記反射光を分光する分光手段と、
前記分光手段によって分光された前記反射光を受光するための複数の受光センサからなる2次元の受光面を有する受光手段と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記スペクトル測定手段は、
前記被検査領域から反射された前記反射光のうち所定の透過波長帯域の前記反射光を選択的に透過させて出力するものであって、前記所定の透過波長帯域を変更可能な光フィルタと、
前記光フィルタを透過した前記反射光を受光する2次元の受光面を有する受光手段と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記被検査領域に照射される前記第1検査光の前記入射面と前記スリットの前記開口部の長手方向とが互いに直交することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記被検査物を搬送する搬送手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の異物検出装置。
【請求項6】
異物が混在している可能性のある被検査物が載置された載置台上の被検査領域に対して各々の入射面が互いに直交するように第1検査光及び第2検査光を照射する照射ステップと、
前記照射ステップにおける前記第1検査光及び前記第2検査光の照射に伴い、前記被検査領域から反射された前記反射光のスペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記スペクトル測定ステップにおいて測定された前記反射光のスペクトルを解析して前記異物が混在しているか否かを判断する判定ステップと、
を備えることを特徴とする異物検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−32259(P2010−32259A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192606(P2008−192606)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】