説明

異物回収装置

【課題】主柱(管体)内の下方深くに溜まった異物を吸引することを可能にする異物回収装置を提供することにある。
【解決手段】吸引部61と、吸引部61で吸引した異物を収容する収容部62とを有する吸引捕集部6を備え、吸引部61は、主柱aの上方開口端から主柱a内に挿入されるホースによって供給される大気圧より高い正圧の空気を所定の方向に噴出させることでその噴流の上流側に負圧を生じさせるジェットポンプ部61aを有し、ジェットポンプ部61aの上流側Aに記負圧を利用して異物を吸引する吸引ノズル61bを有しており、収容部62は、ジェットポンプ部61aの下流側Bに噴出する噴流を受け入れて異物を回収するフィルタを兼ねた回収袋62aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための異物回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管鉄塔等のような既設の鋼管構造物においては、その鋼管で形成された主柱(管体)の内面等について調査や補修を行うことがある。その際、主柱における上方開口端から当該主柱内に例えば補修装置を挿入することによって行う方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法は、主柱自体の強度を損なうことがなく、また大規模な足場作りを必要としないなどの点で優れている。
【0003】
例えば、鋼管構造物の一例として示す鋼管鉄塔は、図9に示すように、複数(例えば4本)の主柱aを腹材e等で連結した構成のものが知られている。各主柱aは、複数の鋼管Pをフランジ継手部fによって接続することにより連続する一本のものに形成されている。フランジ継手部fは、通常は隣接する鋼管P同士を連通する開口を有するものであるが、主柱aの傾斜角度が変化する部位のフランジ継手部f1、f2については隣接する鋼管P内を仕切るように板状に形成されたものとなっていることが多い。
【0004】
このため、主柱aの内面に発生した錆部をグラインダー等で除去した際には、その錆を含んだ異物が例えばフランジ継手部f1上に溜まることになる。そして、このような異物は、そのまま放置すると、新たな錆を誘発する危険があることから、取り除くことが好ましい。
【0005】
なお、フランジ継手部f1より下方に位置する主柱aの内面については、当該フランジ継手部f1に開口部を形成した上で、当該開口部から補修装置を挿入して補修することになる。この場合は、開口時に生じた鉄片等の比較的大きな異物や塵状の小さな異物が下方のフランジ継手部f2上に溜まることになる。大きな異物については、本出願人が先に提案した重量物を回収可能な異物回収装置により回収することが可能である(引用文献4参照)。但し、そのような重量物用の異物回収装置では塵状の小さな異物まで綺麗に取り除くことは困難である。
【0006】
このため、小さな異物については、負圧による吸引力を利用したいわゆる掃除機を用いて綺麗に取り除くことが考えられる。
【0007】
しかしながら、掃除機の場合には、最大でも一気圧の圧力差による吸引力しか利用することができないので、吸引用のホースが長くなり管内摩擦損失が大きくなると、ホース内を流れる空気の流速が低下してしまい、異物を吸引するための十分な流速が得られないという欠点がある。このため、主柱aの上方開口端からフランジ継手部f1やフランジ継手部f2の深い位置まで長いホースを挿入して吸引しても、小さな異物さえ十分に回収することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−011013号公報
【特許文献2】特開2004−286114号公報
【特許文献3】特開2005−090173号公報
【特許文献4】特開2010−036274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、管体内の下方深くに溜まった異物をも十分に吸引することのできる異物回収装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一方の開口端が上方に位置するように設置された管体における当該上方開口端から当該管体内に挿入して、当該管体内に残留する異物を回収する異物回収装置であって、吸引部と、この吸引部で吸引した異物を収容する収容部とを有する吸引捕集部を備えてなり、前記吸引部は、前記管体の前記上方開口端から当該管体内に挿入されるホースによって供給される大気圧より高い正圧の空気を所定の方向に噴出させることでその噴流の上流側に負圧を生じさせるジェットポンプ部を有し、このジェットポンプ部の上流側に前記負圧を利用して異物を吸引する吸引ノズルを有しており、前記収容部は、前記ジェットポンプ部の下流側に噴出する前記噴流を受け入れて異物を回収するフィルタを兼ねた回収袋を有していることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吸引捕集部を備えた作業部と、この作業部を支持するベース部とを備えてなり、前記ベース部は、当該ベース部を前記管体内の中空位置に支持すると共に、当該ベース部を当該管体の延在する方向に移動可能に支持する支持アームを有しており、前記作業部は、前記ベース部の先端側に設けられた回転支持部と、当該回転支持部に設けられた揺動支持部とを有し、前記吸引捕集部は、前記揺動支持部に設けられており、前記回転支持部は、前記揺動支持部を前記ベース部に対して前記管体の周方向に回転駆動するように構成され、前記揺動支持部は、前記吸引捕集部を前記回転支持部に対して前記管体の半径方向に揺動駆動するように構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記管体の前記上方開口端から当該管体内に挿入されるブロー用ホースによって供給される大気圧より高い正圧の空気を前記吸引ノズルの近傍に噴出させるブローノズルを備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記吸引部は、前記ジェットポンプ部の前記下流側に前記噴流を前記回収袋内に導入する筒部を有し、この筒部の先端部に前記回収袋から前記ジェットポンプ部への逆流を防止する逆流防止弁を有しており、前記回収袋内には、前記筒部の外周部に永久磁石が取り付けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記吸引ノズルの周囲を照らす照明と、当該吸引ノズルの周囲を撮影するカメラとを備えていることを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記管体は、鋼管鉄塔における鋼管によって構成された主柱であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、正圧の空気をジェットポンプ部に供給することで当該ジェットポンプ部の上流側に負圧を生じさせることができ、この負圧を利用して吸引ノズルから管体内の異物を吸引して回収袋に送ることができる。この場合、ホースの長さがその内径に比して長く、管内摩擦損失が大きな状態であっても、その管内摩擦損失以上の圧力の空気をホースに供給することで、ジェットポンプ部に供給する空気の流量を最適な状態に維持することができ、ジェットポンプ部の上流側の吸引ノズル内を所定の負圧状態に保持することができる。従って、管体内の下方深くに溜まった異物であっても十分に吸引し回収することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、吸引捕集部を備えた作業部がベース部に支持されており、ベース部には当該ベース部を管体の中空位置に支持すると共に、当該ベース部を管体の延在する方向に移動自在に支持する支持アームを有しているので、そのベース部によって吸引捕集部を管体内の所定の位置に移動することができると共に、所定の位置に確実に保持することができる。
【0018】
また、作業部がベース部の先端側に設けられた回転支持部と、この回転支持部に設けられた揺動支持部とを有しており、吸引捕集部が揺動支持部に設けられているので、吸引ノズルを管体の例えば底面における周方向にも半径方向にも移動することができる。即ち、管体の底に溜まった異物を隈なく吸引して回収することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、正圧の空気を吸引ノズルの近傍に噴出するブローノズルを備えているので、例えば管体の底面に付着し、吸引ノズルの吸引力ではその底面から引き離せないような異物であっても、ブローノズルから噴出する噴流の動圧を利用して当該異物を引き離し、吸引ノズルによって回収することができる利点がある。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、ジェットポンプ部から下流側に噴出する噴流を回収袋に導入する筒部の先端部に逆流防止弁を有しているので、吸引作業を終了した後に、回収袋内に送られた異物が筒部、ジェットポンプ部及び吸引ノズルを介して管体内に逆流するのを防止することができる。しかも、回収袋内には筒部の外周に永久磁石が取り付けられているので、逆流防止弁の応答遅れ等があっても、鉄粉等の磁性を有する異物については回収袋から管体内に流出するのを防止することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、吸引ノズルの周囲を照らす照明及びその吸引ノズルの周囲を撮影するカメラを備えているので、管体内における例えば底面に溜まった異物をテレビモニタ等で確認しながら確実に回収することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、管体が鋼管鉄塔における鋼管によって構成された主柱であるから、その主柱の途中に設けられた例えばフランジ継手部の上面に溜まった異物や、当該主柱の最下部(底面部)に溜まった異物を確実に回収することができる。このため、例えば主柱の内面の錆を取り除く補修をした際に飛散した酸化鉄等を含む異物についても確実に回収することができるので、そのような異物によって新たな錆が誘発されるのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例として示した異物回収装置を示す正面図である。
【図2】同異物回収装置におけるベース部を示す要部破断正面図である。
【図3】同異物回収装置における作業部を示す要部破断正面図である。
【図4】同異物回収装置における吸引捕集部を示す要部破断正面図である。
【図5】同異物回収装置における吸引捕集部の吸引部及び収容部を示す要部破断正面図である。
【図6】同異物回収装置における吸引捕集部の先端側からの端面図である。
【図7】同異物回収装置における吸引捕集部を示す図であって、(a)はビス回りに回動する前の状態を示す要部破断正面図であり、(b)はビス回りに回動した後の状態を示す要部破断正面図である。
【図8】同異物回収装置における吸引捕集部に設けた永久磁石の他の例を示す図であって、吸引部及び収容部を示す要部破断正面図である。
【図9】同異物回収装置を用いて異物を回収するための鋼管製の主柱を有する鋼管鉄塔を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0025】
この実施例で示す異物回収装置1は、図1に示すように、一方の開口端が上方に位置するように設置された管体としての主柱aにおけるその上方開口端から当該主柱a内に挿入して、当該主柱a内のフランジ継手部f1又はフランジ継手部f2(図9参照)上に残留する異物を回収するものであり、吸引捕集部6を備えた構成になっている。なお、主柱aを有する鋼管鉄塔については、図9に示すように構成されており、既に背景技術で説明しているので、当該背景技術で示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0026】
吸引捕集部6は、図4に示すように、吸引部61と、この吸引部61で吸引した異物を収容する収容部62とを有している。吸引部61は、ジェットポンプ部61aと、吸引ノズル61bと、筒部61cとによって一体的に構成されている。収容部62は、回収袋62aと、この回収袋62aの周囲を覆うカバー62bとを有している。
【0027】
ジェットポンプ部61aは、図5に示すように、主柱aの上方開口端からホース63(図4参照)を介して供給される大気圧より高い正圧の空気を、所定の方向に噴出させることで、その噴流の上流側Aに負圧を生じさせるようになっている。
【0028】
吸引ノズル61bは、ジェットポンプ部61aの上流側Aに生じた負圧を利用して異物を吸引するようになっている。吸引ノズル61bには、外周面に保護ノズル61gが嵌合されている。保護ノズル61gは、柔軟性を有する樹脂素材によって円筒状に形成されたものであり、その先端面が所定の角度で斜めに切断された形状になっている。また、保護ノズル61gは、その先端部を吸引ノズル61bより先端側に突出させることが可能になっており、その突出量を任意に設定することが可能になっている。
【0029】
筒部61cは、ジェットポンプ部61aの下流側Bに噴出した空気を収容部62の回収袋62a内に導入するようになっている。筒部61cの先端部には、回収袋62aからジェットポンプ部61aへの異物の逆流を防止する逆流防止弁61dが設けられている。吸引ノズル61bと筒部61cは、ジェットポンプ部61aを介して同軸状となるように一直線状に形成されている。
【0030】
回収袋62aは、筒部61cから噴出する異物を含む噴流を受け入れ、空気の通過を許容することで、異物を回収するフィルタを兼ねたものとなっている。回収袋62aは、筒状の袋によって形成されたものであり、その開口部が筒部61cの外周面に締結バンド62cによって着脱可能に取り付けられている。カバー62bは、回収袋62aを外側から囲んで当該回収袋62aの定形性を保つべく円筒状に形成されており、その外周面には空気流通用の複数の孔62dが形成されている。また、このカバー62bは、上端部が頂面板62eによって閉塞されているが、下端部が開口されており、その開口部が筒部61cの外周を囲むように固定された閉塞板61hの外周面に嵌合した上で、その外周面に形成されたフランジ61iに当接するようになっている。一方、回収袋62a内となる筒部61cの外周部には、永久磁石64が取り付けられている。この永久磁石64は、逆流防止弁61dに近接するように設けられている。
【0031】
また、吸引捕集部6は、図4に示すように、継手61eによって配管ブロック65に取り付けられるようになっている。継手61eは、ジェットポンプ部61aに空気を供給するようになっている。配管ブロック65には、さらにブローノズル66も取付けられている。ブローノズル66は、主柱aの上方開口端からブロー用ホース67を介して供給される大気圧より高い正圧の空気を吸引ノズル61bの近傍に噴出させるようになっている。なお、ブロー用ホース67は、ブローノズル66の上端部に締結バンドによって連結されている。
【0032】
また、配管ブロック65は、継手63aによってホース63に連結されている。継手63aと継手61eは、配管ブロック65内に形成された流路65aを介して連通されている。即ち、ホース63から供給される正圧の空気が継手63a、流路65a及び継手61eを介してジェットポンプ部61aに供給されるようになっている。更に、配管ブロック65には、図6に示すように、吸引ノズル61bの周囲を照らすLED照明65bと、当該吸引ノズル61bの周囲を撮影するカメラ(ビデオカメラ、CCD)65cが設けられている。
【0033】
また、異物回収装置1は、図1に示すように、吸引捕集部6を支持する作業部2と、この作業部2を支持するベース部3とを備えている。
【0034】
ベース部3は、図2に示すように、当該ベース部3を主柱a内の中空位置に支持すると共に、当該ベース部3を当該主柱aの延在する方向に移動可能に支持する支持アーム32を有している。作業部2は、図3に示すように、ベース部3の先端側に設けられた回転支持部4と、当該回転支持部4に設けられた揺動支持部5とを有している。吸引捕集部6は、揺動支持部5に、横方向ブラケット52、縦方向ブラケット53及び配管ブロック65を介して取り付けられている。また、回転支持部4は、揺動支持部5をベース部3に対して主柱aの周方向に回転駆動するように構成され、揺動支持部5は、吸引捕集部6を回転支持部4に対して主柱aの半径方向に揺動駆動するように構成されている。
【0035】
以下、更に詳細に説明すると、ベース部3は、図2に示すように、直線状に長く延在する外郭部31を有すると共に、その一方の端部(上端部)にワイヤ11の接続部31aが設けられている。支持アーム32は、ベース部3の長手方向の所定の位置に、少なくとも一組(この例では3組)設けられている。なお、図2は、ベース部3における2組の支持アーム32を有する部分を拡大して示している。
【0036】
各組みにおける支持アーム32は、ベース部3を周方向にほぼ三等分する各位置(図示例では、支持アーム32を周方向に120度間隔をおいた3位置となっているが、周方向に90度間隔をおいた4位置、または周方向に180度間隔をおいた2位置等であってもよい。)に配置されている。その各位置に配置された支持アーム32は、外郭部31内に設けられた揺動駆動機構33によって揺動駆動されるようになっている。
【0037】
揺動駆動機構33は、モータ33aと、このモータ33aの回転運動を直線運動に変換するねじ機構33bと、このねじ機構33bによって直線方向に駆動されるラックギヤ33cと、このラックギヤ33cに噛み合うピニオンギヤ32aとを備えている。
【0038】
各支持アーム32は、基端部(上端部)がピニオンギヤ32aと共に回転することにより、全体が外郭部31内に収納された状態になったり、その先端部が種々の径の主柱aの内面に当接した状態となるように、揺動駆動されるようになっている。この場合、支持アーム32の揺動角度は、モータ33aの回転角度によって制御されることになる。また、各支持アーム32の先端部には、主柱aの延在する方向に移動することを可能にする転輪32bが設けられている。
【0039】
なお、図1及び図2は軸線が鉛直方向に延在する円筒形状の主柱a内に異物回収装置1を挿入し、当該異物回収装置1が各支持アーム32によって主柱aの軸心位置に保持された状態を示しているが、この主柱aが図9に示すように所定角度傾いている場合であっても当該異物回収装置1を同様に保持することが可能である。また、ピニオンギヤ32aは、その外周部の全体にラックギヤ33cと噛み合う歯を設けた例を示したが、この歯については支持アーム32の揺動可能角度に応じてラックギヤ33cに噛み合う範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0040】
回転支持部4は、図3に示すように、ベース部3内に設けられた回転駆動機構41によって、当該ベース部3に連結され、かつ当該ベース部3に対して同軸状に回転駆動されるようになっている。
【0041】
回転駆動機構41は、ベース部3の下端部に回転自在に設けられた回転駆動軸41aと、ベース部3内に設けられたモータ41bと、このモータ41bの回転駆動力を回転駆動軸41aに伝達する一対のギヤ41c、41dとを備えている。この回転駆動機構41により、回転支持部4は、モータ41bの回転角度に応じた角度で、回転するようになっている。また、回転支持部4は、ベース部3と同様の外径で直線状に長く延在する外郭部42を備えている。
【0042】
揺動支持部5は、回転支持部4内に設けられた揺動駆動機構51によって、当該回転支持部4に連結され、かつ回転支持部4に対して主柱aの半径方向に揺動駆動されるようになっている。
【0043】
揺動駆動機構51は、回転支持部4内に設けられたモータ51aと、このモータ51aの回転運動を直線運動に変換するねじ機構51bと、このねじ機構51bによって直線方向に駆動されるラックギヤ51cと、このラックギヤ51cに噛み合い、かつ揺動支持部5に連結されたピニオンギヤ51dを備えている。揺動支持部5は、モータ51aの回転角度に応じた角度で揺動するようになっている。
【0044】
なお、ピニオンギヤ51dについては、外周部の全体にラックギヤ51cと噛み合う歯を設けた例を示したが、この歯についても揺動支持部5の揺動可能角度に応じてラックギヤ33cに噛み合うことになる範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0045】
横方向ブラケット52は、揺動支持部5の軸方向に直交する形状の板状部材によって形成されており、揺動支持部5の軸方向が作業部2の軸方向と平行になった状態(下方に延在する状態)において、当該作業部2の真下に位置するように形成されている。
【0046】
縦方向ブラケット53は、横方向ブラケット52の隅部に固定され、この隅部から揺動支持部5の軸方向と平行に下方に延在するように形成されている。この縦方向ブラケット53は、図6に示すように、ステンレス鋼板等の金属板をコ字状に折り曲げたもので形成されており、対向するフランジ53a、53a及びビス53b、53bで配管ブロック65を保持することにより、この配管ブロック65及び吸引捕集部6等が横方向ブラケット52の下方に位置するようになっている。
【0047】
また、配管ブロック65は、縦方向ブラケット53の各フランジ53a、53aのそれぞれにビス53b、53bによって固定されている。これらのビス53b、53bは、同軸状に位置し、かつ図7に示すように、縦方向ブラケット53の下端部に位置しているので、その軸回りに配管ブロック65の揺動を可能とし、吸引捕集部6のカバー62bの頂部を横方向ブラケット52の真下から外側に移動させることを可能にしている。
【0048】
また、横方向ブラケット52には、その下面に弾性押圧手段52aが設けられている。弾性押圧手段52aは、横方向ブラケット52の下面に取り付けられたコイルスプリング(付勢部材)52bと、このコイルスプリング52bの下端部に取り付けられた押圧部材52cとを備えている。この弾性押圧手段52aは、横方向ブラケット52の下方向に位置した状態の吸引捕集部6のカバー62bの頂部である頂面板62eを押圧することにより、当該カバー62bの下端部を閉塞板61hのフランジ61iに押し付けた状態に維持するようになっている。
【0049】
上記のように構成された異物回収装置1においては、図9に示す鉄塔における所定の主柱aの上方開口端に設けられた閉塞板hを開いて、その上方開口端から当該主柱a内に、吸引捕集部6、作業部2及びベース部3の順で挿入する。この状態において、吸引捕集部6、作業部2及びベース部3は、3組の各支持アーム32によって、主柱aのほぼ軸心位置に保持された状態になると共に、当該主柱a内を上下方向に移動可能な状態になる。そこで、LED照明65bで吸引ノズル61bの周囲を照らし、当該周囲をカメラ65cで撮影しながら、ワイヤ11の繰り出し量を調整することにより、吸引ノズル61bを例えばフランジ継手部f1に接近させることができる。
【0050】
また、作業部2がベース部3の先端側に設けられた回転支持部4と、この回転支持部4に設けられた揺動支持部5とを有し、吸引捕集部6が揺動支持部5に設けられているので、吸引ノズル61bをフランジ継手部f1上の周方向にも半径方向にも移動することができる。このため、吸引ノズル61bを上述のように移動することにより、フランジ継手部f1上に溜まった異物を隈なく吸引して、回収袋62aに収容することができる。
【0051】
一方、ホース63の長さの増大により、当該ホース63内を流れる空気による管内摩擦損失が例えば1気圧以上になるようなことがあっても、その管内摩擦損失以上の正圧の空気をホース63に供給することができ、これによりジェットポンプ部61aに所定の流量の空気を供給することができるので、当該ジェットポンプ部61aの上流側Aを所定の負圧状態にすることができる。従って、主柱aの下方深くに位置するフランジ継手部f1(又はフランジ継手部f2)の上に溜まった異物についても十分に回収することができる。
【0052】
しかも、正圧の空気を吸引ノズル61bの近傍に噴出するブローノズル66が備えられているので、例えばフランジ継手部f1の上面に付着して、吸引ノズル61bの吸引力だけではその上面から引き離せないような異物であっても、ブローノズル66から噴出する空気の動圧を利用して当該異物を引き離し、吸引ノズル61bによって吸引し回収することができる。
【0053】
また、筒部61cの先端部に逆流防止弁61dを備えているので、異物の吸引作業を終了した後に、回収袋62a内に収容した異物が筒部61cからジェットポンプ部61a等を介して主柱a内に逆流するのを防止することができる。しかも、回収袋62a内の筒部61cの外周に永久磁石64を設けているので、鉄粉等の磁性を有する異物については永久磁石64によっても回収袋62a内に保持することができ、たとえ逆流防止弁61dに応答遅れがあっても、その鉄粉等が主柱a内に流出してしまうのを防止することができる。
【0054】
このため、主柱aの内面の錆を取り除いた際に飛散した酸化鉄等を含む異物についても確実に回収することができるので、そのような異物によって新たな錆が誘発されるのを確実に防止することができる。
【0055】
また、回収袋62aから異物を取り出す際には、図7に示すように、ビス53b、53bを緩めた上で、弾性押圧手段52aを押し上げ、配管ブロック65をビス53bの軸回りに回動させる。これにより、吸引捕集部6の頂部を横方向ブラケット52の真下から外側に移動させることができるので、カバー62bを閉塞板61hの外周面から引き抜くことができるようになる。このようにして、カバー62bを取り外してから、締結バンド62cを緩めることにより、回収袋62aを取り出すことができるので、その回収袋62aから異物を排出させることができる。
【0056】
なお、上記実施例においては、永久磁石64を筒部61cの外周における逆流防止弁61dに近接するように取り付けた例を示したが、永久磁石64を用いないもので構成してもよい。また、永久磁石64を用いた場合には、その永久磁石64は、図8に示すように、筒部61cの開口部からできる限り下方に離れた当該筒部61cの外周に取り付けるように構成してもよい。この場合には、開口部から下方に離れた永久磁石64に磁性を有する異物が捕捉されるので、当該異物が逆流防止弁61dを介して逆流するのをより確実に防止することができると共に、磁性を有する異物の収容量の増大を図ることができる。
また、永久磁石64によって、逆流防止弁61dや筒部61c等が磁化し、当該逆流防止弁61d、筒部61c等に磁性を有する異物が付着するのを防止するため、その逆流防止弁61d、筒部61c等を非磁性体のプラスチック、真鍮、ステンレス鋼等の材料によって形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 異物回収装置
2 作業部
3 ベース部
4 回転支持部
5 揺動支持部
6 吸引捕集部
32 支持アーム
61 吸引部
61a ジェットポンプ部
61b 吸引ノズル
61c 筒部
61d 逆流防止弁
62 収容部
62a 回収袋
63 ホース
64 永久磁石
65b 照明
65c カメラ
66 ブローノズル
67 ブロー用ホース
a 主柱(管体)
A 上流側
B 下流側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の開口端が上方に位置するように設置された管体における当該上方開口端から当該管体内に挿入して、当該管体内に残留する異物を回収する異物回収装置であって、
吸引部と、この吸引部で吸引した異物を収容する収容部とを有する吸引捕集部を備えてなり、
前記吸引部は、前記管体の前記上方開口端から当該管体内に挿入されるホースによって供給される大気圧より高い正圧の空気を所定の方向に噴出させることでその噴流の上流側に負圧を生じさせるジェットポンプ部を有し、このジェットポンプ部の上流側に前記負圧を利用して異物を吸引する吸引ノズルを有しており、
前記収容部は、前記ジェットポンプ部の下流側に噴出する前記噴流を受け入れて異物を回収するフィルタを兼ねた回収袋を有していることを特徴とする異物回収装置。
【請求項2】
前記吸引捕集部を備えた作業部と、この作業部を支持するベース部とを備えてなり、
前記ベース部は、当該ベース部を前記管体内の中空位置に支持すると共に、当該ベース部を当該管体の延在する方向に移動可能に支持する支持アームを有しており、
前記作業部は、前記ベース部の先端側に設けられた回転支持部と、当該回転支持部に設けられた揺動支持部とを有し、
前記吸引捕集部は、前記揺動支持部に設けられており、
前記回転支持部は、前記揺動支持部を前記ベース部に対して前記管体の周方向に回転駆動するように構成され、
前記揺動支持部は、前記吸引捕集部を前記回転支持部に対して前記管体の半径方向に揺動駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の異物回収装置。
【請求項3】
前記管体の前記上方開口端から当該管体内に挿入されるブロー用ホースによって供給される大気圧より高い正圧の空気を前記吸引ノズルの近傍に噴出させるブローノズルを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物回収装置。
【請求項4】
前記吸引部は、前記ジェットポンプ部の前記下流側に前記噴流を前記回収袋内に導入する筒部を有し、この筒部の先端部に前記回収袋から前記ジェットポンプ部への逆流を防止する逆流防止弁を有しており、
前記回収袋内には、前記筒部の外周部に永久磁石が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の異物回収装置。
【請求項5】
前記吸引ノズルの周囲を照らす照明と、当該吸引ノズルの周囲を撮影するカメラとを備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の異物回収装置。
【請求項6】
前記管体は、鋼管鉄塔における鋼管によって構成された主柱であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の異物回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−22532(P2013−22532A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160662(P2011−160662)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(306033025)日本鉄塔工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】