説明

異物検出装置

【課題】金属異物からの磁気信号を増大させ、また、検査対象物からのバックグラウンド信号を低減する。
【解決手段】異物の保磁力以上の強度の磁場を、複数の方向について印加することにより、検査対象物102に付着又は混入した金属異物を比較的弱い磁場で飽和磁化に到達させ、金属異物からの磁気信号の強度を効率的に増大させる。また、検査対象物を磁化した後、検査対象物を交流磁場の印加により消磁した上で、残留磁気の測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・医薬品・工業製品などに混入している金属異物を磁気的に非破壊で検出する検査装置及び検査手法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工程中に製品に付着又は混入する金属異物を検出する手法として、検査対象物を磁化した後、磁気センサーを用いて残留磁気を測定する方法がある。このような磁気センサーを用いた金属異物検出技術において、金属異物検出の感度を決めるのが、磁気信号のS/N比、即ち、金属異物からの信号と検査対象物自体からのバックグラウンド信号の比である。このS/N比を向上させるために、特開平9−54167号公報に開示されている磁気検知装置では、対象物体を着磁装置により着磁させた後、消磁装置により特定の磁性体のみを消磁させることにより、バックグラウンド信号を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−54167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記方法によっても、金属異物からの磁気信号が非常に小さく、バックグラウンド信号に埋もれてしまう場合には、金属異物の検出が困難になる。また、検査対象物の磁気特性が均一ではない場合には、キャンセル磁場の印加による検査対象物の完全な消磁は困難になる。
【0005】
本発明は、金属異物の検出において、金属異物からの磁気信号を増大させるものである。また、検査対象物からのバックグラウンド信号を低減するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の異物検出装置の一つの形態は、検査対象物に対して複数の方向から磁場を印加した後、検査対象物について残留磁気の測定を行う。印加する磁場の強度は、検査対象物に付着又は混入していると考えられる異物の保磁力以上の強度とするのが好ましい。
【0007】
また、本発明の異物検出装置の別の形態は、検査対象物を磁化した後、交流磁場の印加により消磁した上で、残留磁気の測定を行う。この時、好適な条件として、交流磁場の強度を、検査対象物の保持力の2倍よりも強く設定する。また別の好適な条件として、交流磁場の強度を、検査対象物に付着又は混入していると考えられる異物の保磁力より弱く設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査対象物に磁気異方性を持つ金属異物が付着又は混入していた場合、金属異物の磁化容易軸がどのような方向を向いていても比較的低い磁場で飽和磁化に到達させることができるため、金属異物からの磁気信号の強度を効率的に向上させることができる。
【0009】
また、検査対象物の磁気特性が均一ではない場合であっても、交流磁場の印加により検査対象物を消磁することができる。その際、交流磁場の強度を検査対象物の保持力よりも充分強く設定することによって、効果的に検査対象物を消磁出来る。また、交流磁場の強度を検査対象物に付着又は混入していると考えられる金属異物の保磁力より弱く設定することによって、金属異物を消磁せずに検査対象物のみを選択的に消磁することが出来る。こうして、金属異物からの磁気信号を保ちながら、検査対象物からのバックグラウンド信号を低減させることができる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係る異物検出装置の構成例を示す概略図。
【図2】磁気異方性を持つ強磁性体のM−Hカーブを示す図。
【図3】金属異物及び検査対象物の磁化の変化を示す図。
【図4】磁気センサーを用いた磁化用磁石の変動検知の手順を示すフローチャート。
【図5】実施例2に係る異物検出装置の構成例を示す概略図。
【図6】金属異物及び検査対象物の磁化の変化を示す図。
【図7】実施例3に係る異物検出装置の構成例を示す概略図。
【図8】実施例3を説明するタイムチャート。
【図9】実施例4に係る異物検出装置の構成例を示す概略図。
【図10】実施例4を説明するタイムチャート。
【図11】実施例4を説明するタイムチャート。
【図12】実施例5に係る異物検出装置の構成例を示す概略図。
【図13】金属異物及び検査対象物の磁化の変化を示す図。
【図14】実施例6に係る異物検出装置の構成例を示す概略図。
【図15】金属異物及び検査対象物の磁化の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
[実施例1]
図1は、本発明の第一の実施例に係る異物検出装置の構成例を示す概略図である。検査対象物102は、搬送ベルト101上に載置されて紙面左から右へと搬送される。ここでは搬送方向をY軸、Y軸に直交する鉛直な軸をZ軸、Y軸及びZ軸に直交する軸をX軸と定義する。磁化用磁石103,104,105はそれぞれ、X,Y,Z軸方向に磁場を発生する電磁石である。消磁用磁石107は、磁化用磁石105と同一方向、逆向きの磁場を発生する電磁石である。図示されていないが、磁化用磁石103,104,105の間には、互いに磁場が干渉しないよう磁気シールドが設けられている。また、消磁用磁石107の前後にも、磁場が漏洩しないよう、磁気シールドが設けられている。磁化用磁石103,104,105及び消磁用磁石107は、それぞれ増幅回路109a,109b,109c及び110を介して、直流電源111より給電されている。増幅回路109a,109b,109c及び110の出力は、制御計算機114により統合的に制御されている。
【0013】
磁気センサー106は磁化用磁石105と消磁用磁石107の間に設置され、検出回路112により、磁化用磁石103,104,105の内部を通過直後の検査対象物102から発生する磁気信号を測定する。磁気センサー108は消磁用磁石107の下流側に設置され、検出回路113により、検査対象物102から発生する磁気信号を測定する。入出力装置115は制御計算機114に接続されており、オペレータによる検査条件の設定、オペレータに対する検出結果の表示はこの入出力装置115を介して行われる。磁気センサー106,108には、ホール素子、磁気抵抗効果素子を含む任意の磁気センサーを用いることができる。
【0014】
ここで、本実施例における異物の磁化の原理を説明する。本実施例では、強磁性体からなる金属異物の磁気異方性を利用して、検査対象物に付随する金属異物、すなわち検査対象物に付着又は混入している金属異物を高感度に検出する。磁気異方性とは、強磁性体の磁化ベクトルが特定の方向に向きやすい(磁化されやすい)性質である。磁化されやすい方向は磁化容易軸、磁化されにくい方向は磁化困難軸と呼ばれる。図2は、磁気異方性を持つ強磁性体のM−Hカーブである。M−Hカーブは、十分に強い外部磁場を与えた場合の磁性体の磁化の変化を示し、メジャーループとも呼ばれる。図2(a)は、磁化容易軸方向に外部磁場を印加したときのM−Hカーブであり、矩形に近いループを描く。即ち、外部磁場の上昇に対して磁化が急峻に立ち上がり、比較的低い磁場で飽和に達するという特徴を持つ。また、磁化容易軸方向の外部磁場により飽和磁化に達した後、外部磁場をゼロにしても、残留磁化が大きく残る。磁化をゼロにするためには、さらに逆向きの外部磁場を加えなければならない。磁化がゼロになったときの外部磁場の強さを保磁力という。これに対して、磁化困難軸方向に外部磁場を印加した場合は、図2(b)のM−Hカーブに示すように、外部磁場に対して磁化の変化が緩やかであり、大きな磁場を印加して初めて飽和に達する。また、磁化困難軸方向の外部磁場により飽和磁化に達した後、外部磁場をゼロにすると、残留磁化は小さい。これに伴い保磁力も小さく、比較的磁化が消えやすい性質を持つと言える。
【0015】
製品に付着又は混入する金属異物の多くは、工場での製造工程で使用されている機械設備に由来し、鉄やステンレスが主成分である。特にSUS304は製造装置の部材等によく用いられる材質であり、本来磁性を持たないが、金属異物として混入するSUS304は、摩耗、破断の際に応力を受けるためマルテンサイト相を含み、磁性を持つと考えられる。また、金属異物は摩耗や破断により発生するため、球などの対称性の高い形状よりは、複雑で方向性を持った形状をとり易く、磁気異方性を持つと考えられる。これに対して、検査対象物となる工業製品は、磁性を持たないか、磁性を持っていても磁気特性が等方的である場合が多い。
【0016】
以上から、検査対象物を磁化し、その残留磁気により金属異物を検出する異物検出装置においては、検査対象物に印加する外部磁場を、金属異物の磁化容易軸方向とすることにより、より低い外部磁場で効率よく金属異物を磁気飽和させることができ、残留磁化を大きくすることができる。しかしながら、製品に付随する金属異物の磁化容易軸の方向はランダムであると考えられ、それぞれの磁化容易軸の方向を知ってその方向に外部磁場を印加することは困難である。
【0017】
そこで、本発明においては、金属異物の磁化容易軸がいずれの方向を向いている場合でも、その磁化容易軸に外部磁場を印加し、飽和磁化に到達させるべく、複数の方向に磁場を印加する。磁性体は、一旦磁化容易軸方向に磁化されると、その後、磁化困難軸に外部磁場が印加されても、消磁されにくい。
【0018】
次に、再び図1を用いて、本実施例における異物検出の流れを説明する。検査対象物102は、磁化用磁石103,104,105が形成するX,Y,Z軸方向の外部磁場中を順に通過する。3つの軸のうち、いずれかは検査対象物102に混入又は付着した金属異物の磁化容易軸方向に近い方向となるから、全ての金属異物はその磁化容易軸に磁化される。この時、検査対象物が磁性を持っている場合、検査対象物もまた磁化されるが、前述したように検査対象物の磁性は等方的であるため、磁化の方向は、直前に印加された磁場の方向となる。本実施例の場合は、磁化用磁石103,104,105によりX,Y,Z軸の順で磁場が印加されるため、検査対象物102の磁化方向はZ軸である。
【0019】
磁気センサー106は、磁化用磁石103,104,105が作る外部磁場中を通過した検査対象物が発する磁気信号を測定する。この信号は検出回路112を通じて、制御計算機114に伝送され、この信号を元に、制御計算機114は消磁用磁石107の磁場強度を決めることができる。消磁用磁石107の磁場強度の決定方法については後で詳しく述べる。
【0020】
磁気センサー106を通過後、検査対象物102は、消磁用磁石107によって直流消磁される。すでに述べたように検査対象物102の磁化の方向は、最後に通過した磁化用磁石105が発生する磁場の方向であるため、消磁用磁石107は磁化用磁石105と略同一方向、逆向きの直流磁場を発生するよう設計されており、検査対象物102の残留磁化はゼロとなる。この時、検査対象物102に混入又は付着した金属異物もまた消磁用磁石107の作用を受けるが、一旦その磁化容易軸方向に磁化された金属異物は消磁作用を受けにくい。したがって、消磁用磁石107の下流に設置された磁気センサー108を用いれば、金属異物の残留磁化を感度よく測定することができる。磁気センサー108の測定結果は、検出回路113を通じて制御計算機114に伝送され、制御計算機114は測定された信号強度を予め定められた閾値と比較することにより、金属異物の有無を判定する。即ち、制御計算機114は、異物検出部を構成する。
【0021】
ここで、図3(a)を用いて、本実施例における磁化磁場の強度設定について説明する。
図3(a)は、本実施例における金属異物の磁化の変化を示したものであり、十分に大きな外部磁場を想定したメジャーループ(図3には破線で示す)と比べると、小さなループ(マイナーループ)を描く。外部磁場の印加方向は金属異物の磁化容易軸方向である。金属異物検出の感度を上げるためには、残留磁化を大きくするために、金属異物の磁化を飽和に近付けることが重要である。したがって、より強い磁場強度が望ましいが、実装上及びコストの観点からは、印加することのできる磁場強度に限界がある。そのため、本実施例では、複数の方向に磁場を印加することで、金属異物を最も磁化しやすい方向に磁化させる。これにより、単一の方向に磁場を印加する場合に比べて、金属異物をより低い磁場で磁気飽和させることができる。具体的には、図3(a)に矢印Aで示したように、磁化が立ち上がりきる程度の磁場強度が磁化磁場として必要かつ十分である。この磁化磁場は、第一次近似的には、保磁力と同程度であるが、実際には、検査対象物や検出すべき金属異物の情報、過去の検出結果等を元に、オペレータ又は制御計算機が磁化磁場の強度を設定するのが望ましい。
【0022】
次に、図3(b)を用いて、本実施例における消磁磁場の強度設定について説明する。
図3(b)は、本実施例における検査対象物の磁化の変化を示したものである。磁化磁場の印加により、矢印Aで示した経路で磁化された検査対象物は、消磁磁場の印加により、図3(b)に矢印Bで示したように、その磁化を減少し、さらに負の向きに磁化される。その後、消磁磁石の磁場領域を抜け、外部磁場がゼロとなると、矢印Cで示したように、検査対象物の磁化は再び正の向きに少し戻る。最終的に残った磁化が残留磁化である。この残留磁化がゼロとなるよう、消磁磁場の強度を設定するのが望ましい。
【0023】
この消磁磁場により、金属異物もまた磁化をある程度失うが、図3(a)に矢印B及びCで示したように、残留磁化は検査対象物のそれと比べて大きい。これは、磁化容易軸方向のM−Hカーブが矩形に近いループを描いているためであり、保磁力より小さい消磁磁場に対しては、磁化の勾配が小さいためである。言い換えると、消磁磁場は金属異物の保磁力よりも小さく設定する必要がある。
【0024】
なお、最適な消磁磁場の強度は検査対象物の磁気特性によって決まるため、検査に先立ちテストピースを用いた測定により消磁磁場強度の決定を行うのが好ましい。さらに、材料や製造工程の変更に伴って、検査対象物の磁気特性が変動する可能性があるため、材料ごと、ロットごとに消磁磁場を調整するのが好ましい。
【0025】
以上のように磁化磁場及び消磁磁場が設定された後も、磁化用磁石や消磁用磁石に供給される電流のオフセット変動や、検査対象物の磁性の変動などの理由で、消磁磁場の強度の最適値が長周期的に変動する場合がある。
【0026】
図4は、磁気センサー106を用いた磁化用磁石の変動検知のフローである。このフローによれば、磁化磁場を設定し(S11)、その直後の磁気センサー106の測定値を基準として記憶しておく(S12)。検査開始後は、磁気センサー106の出力を測定することで磁化磁場の長周期的な変動をモニターし(S13,S14)、磁気センサー106の出力変動が閾値以下のときには検査を継続し(S15)、この変動が閾値を超えたときに、磁化磁場の再調整を行う(S16)。
【0027】
これと同様に、磁気センサー108を用いて消磁磁場の長周期的な変動をモニターすることもできる。磁気センサー108により検出される磁気信号のうち低周波成分は、検査対象物からの信号であると考えられるため、これが平均的にゼロになるよう、制御計算機114を介して増幅回路110にフィードバックを行えばよい。
【0028】
なお、本実施例においては、磁化用磁石103,104,105及び消磁用磁石107に電磁石を用いたが、原理的には永久磁石を用いてもよい。この場合、増幅回路による制御を行うことはできないため、検査条件が固定されるが、コストを低減できる。又は、コストと検査条件の自由度を両立させるために、永久磁石と電磁石を組み合わせたものを磁化用磁石103,104,105及び消磁用磁石107に用いてもよい。
【0029】
また、本実施例においては、磁化用磁石による磁化の方向を試料搬送方向及びこれに直交する2方向としたが、これと異なる3方向であっても同様の効果が得られる。また、実装上及びコストの観点から3方向に磁化することが難しく、磁化方向を2方向とした場合、3方向の場合より効果は減少するものの、従来の磁化方法と比べると高い異物検出感度が得られる。
【0030】
[実施例2]
図5は、本発明の第二の実施例に係る異物検出装置の構成例を示す概略図である。なお、図1と同一の部分には同一の符号を付した。図1の異物検出装置と同一の機能を有する部分については、詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施例では、検査対象物401は帯状のフィルムであり、これが紙面左から右へと搬送される。X軸,Y軸,Z軸の定義は図1と同一である。磁化用磁石103,104,105はそれぞれ、X,Y,Z軸方向に磁場を発生する電磁石であり、それぞれ増幅回路109a,109b,109cを介して、直流電源111より電流を供給されている。消磁用磁石402は交流磁場を発生可能な電磁石であり、増幅回路403を介して、交流電源404により給電されている。消磁用磁石402の形成する交流磁場の振幅は時間的に一定である。しかしながら、空間的には、消磁用磁石から下流側に遠ざかるに従い徐々に減衰するよう磁気シールドなどが設計されている。
【0032】
マグネトメータ型磁気センサー405及び平面型グラジオメータ型磁気センサー407は消磁用磁石402の下流側に設置され、それぞれ検出回路406,408により、消磁用磁石402の内部を通過直後の検査対象物401から発生する磁気信号を測定する。図示されていないが、消磁用磁石402とマグネトメータ型磁気センサー405の間には、磁場が漏洩しないよう、磁気シールドが設けられている。検出回路406の出力は、制御計算機114に伝送され、この信号を元に、制御計算機114は消磁用磁石402の磁場強度を決定する。また、検出回路408の出力は、制御計算機114に伝送され、制御計算機114はこの信号強度を予め定められた閾値と比較することにより、金属異物の有無を判定する。マグネトメータ型磁気センサー405と平面型グラジオメータ型磁気センサー407の作用については後で述べる。
【0033】
ここで、消磁用磁石402により行われる交流消磁の原理について、図6のM−Hカーブを用いて説明する。図6(a)は、本実施例における金属異物の磁化の変化を示したものであり、磁化磁場印加直後を起点として、その後減衰する交流磁場が磁化容易軸方向に印加されていることを示す。この時、外部磁場がゼロ近辺を往復しても、金属異物の磁化は大きく減衰せず、最終的に残留磁化が大きく残る。これは、磁化容易軸において金属異物のM−Hカーブが矩形に近いループを描いているためである。これに対して、図6(b)は、本実施例における検査対象物の磁化の変化を示したものであり、外部磁場がゼロ近辺を往復するとともに、磁化が大きく減衰し、最終的には残留磁化がゼロになる。これは、検査対象物のM−Hカーブがゼロ磁場近辺で大きな勾配を持つためである。
【0034】
消磁用磁石の磁場強度は次のように決定する。図6(c)は、検査対象物のM−Hカーブの拡大部である。交流磁場の強度を徐々に減衰させたとき磁化がゼロに近づくためには、交流磁場の振幅に対応する磁化の振幅の中心がゼロとなる必要がある。したがって、ゼロ磁場近辺のM−Hカーブを直線で近似すると、交流磁場の強度は検査対象物の保磁力の2倍程度必要であることが分かる。
【0035】
一方、異物からの磁気信号レベルの観点からは、交流磁場の強度は小さいほうが望ましい。交流磁場により異物の磁化を減衰させないために許容される交流磁場の強度は、異物の保磁力程度である。
【0036】
このように、検査対象物の消磁と金属異物の磁気信号レベル保持はトレードオフの関係にある。したがって、より好適には、検査に先立ちテストピースを用いた測定により、磁気信号のS/N比、即ち、金属異物からの信号と検査対象物自体からのバックグラウンド信号の比が最も大きくなるための条件を求めるのが望ましい。
【0037】
以上の方法で消磁用磁石により形成される交流磁場の強度を適切に設定することにより、検査対象物の磁化のみを選択的に消磁させることができる。
【0038】
次に、本実施例におけるマグネトメータ型磁気センサー405と平面型グラジオメータ型磁気センサー407の作用について説明する。マグネトメータ型磁気センサーとは、1ターン又は同一の向きに複数ターン巻かれたピックアップコイルに磁気検出素子が接続されたものである。これに対して、平面型グラジオメータ型磁気センサーとは、同一形状の2つのコイルを逆方向に巻き、直列につないだものを磁気検出素子と接続するものである。本実施例においては、磁気検出素子としてSQUIDセンサーを用いたが、フラックスゲートセンサー、MRセンサーなど他の磁気検出素子を用いてもよい。
【0039】
マグネトメータ型磁気センサーが検出コイルに入る磁場の絶対値を測定するのに対し、平面型グラジオメータ型磁気センサーは2つのコイルに共通して入る磁場を消去し、差分のみを測定する特徴を持つ。
【0040】
本実施例においては、検査対象物401は帯状のフィルムであるため、これが磁性を持つ場合、一定の磁気信号を発生することが期待される。したがって、平面型グラジオメータ型磁気センサーは、検査対象物からの磁気信号を低減し、金属異物からの信号を感度良く検出する作用を持つ。
【0041】
これに対し、マグネトメータ型磁気センサーは、検査対象物からの磁気信号をモニターする作用を持つ。消磁用磁石の強度を決めた後も、磁化用磁石や消磁用磁石に供給される電流のオフセット変動や、検査対象物の磁性の変動などの理由で、消磁磁場の強度の最適値が長周期的に変動する場合がある。このような場合は、マグネトメータ型磁気センサー405により、磁気信号を検出し、検査対象物からの信号が平均的にゼロになるよう、制御計算機114を介して増幅回路403にフィードバックを行えばよい。本実施例においては、マグネトメータ型磁気センサー405と平面型グラジオメータ型磁気センサー407の位置関係は、マグネトメータが上流側、平面型グラジオメータ型磁気センサー407が下流側としたが、逆になっても同様の効果が得られる。
【0042】
[実施例3]
図7は、本発明の第三の実施例に係る異物検出装置の構成例を示す概略図である。なお、図1、図5と同一の部分には同一の符号を付した。図1、図5の異物検出装置と同一の機能を有する部分については、詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施例では、検査対象物102は、すり鉢状の漏斗601に投入され、漏斗中を回転した後、漏斗の底部に設けられた開口より、搬送ベルト101上に落ちる。磁化用磁石602は漏斗全体を浸す磁場を形成する電磁石であり、増幅回路604を介して、直流電源605より電流を供給されている。磁気シールド603は磁化用磁石602全体を囲みつつ、検査対象物の投入口、出口を備える磁気シールドであり、磁場の漏洩を防ぐ。増幅回路604の出力は制御計算機114により制御されている。光センサー606は搬送ベルト101上を見込むように設置され、検査対象物102の通過を検出する。消磁用磁石402は交流磁場を発生可能な電磁石であり、信号発生回路403を介して、交流電源404により電圧を供給されている。磁気センサー108は消磁用磁石402の下流側に設置され、検出回路113により、検査対象物102から発生する磁気信号を測定する。入出力装置115は制御計算機114に接続されており、オペレータによる検査条件の設定、オペレータに対する検出結果の表示はこの入出力装置115を介して行われる。
【0044】
本実施例の原理は実施例1と同一であり、検査対象物に付着又は混入した金属異物を磁化容易軸方向に磁化させたのち、交流磁場を印加することにより、検査対象物を消磁する流れとなっている。実施例1との違いの一つは、実施例1では、金属異物を磁化容易軸方向に磁化させるため、複数の着磁磁石を用いて検査対象物に対して複数の方向の磁化磁場を印加していたのに対し、本実施例では、すり鉢状の漏斗601を用いて、磁化用磁石602が形成する磁場中で検査対象物102を回転させることにより、検査対象物に付着又は混入した金属異物を磁化容易軸に磁化させる。これにより、磁化用磁石を単一とすることができ、コスト低減を図ることができる。
【0045】
本実施例と実施例1のもう一つの違いは、実施例1では消磁用磁場の強度が時間的に一定であるのに対し、本実施例では、消磁用磁場をパルス状とする点である。これについて図8のタイムチャートを用いて説明する。図8(a)は光センサー606の出力である。光センサー606は、検査対象物の通過を検出し、パルス信号を出力する。この信号が制御計算機114に伝送されると、制御計算機114は搬送ベルト101の速度を元に消磁用磁石402に交流磁場を印加するタイミングを計算し、図8(b)に示すようなトリガー信号を発生する。このトリガー信号を入力信号として、信号発生回路403は、図8(c)に示すような減衰する交流電流を発生し、消磁用磁石402に交流磁場を発生させる。
【0046】
このように消磁用磁場をパルス的に発生させることにより、検査対象物の通過時のみ消磁用磁場を発生させることが出来るので、消磁用磁石による消費電力及び発熱量の低減を図ることが出来る。なお、光センサー606は、検査対象物の通過を検出できるものであれば、それに替えて、静電容量型センサー、撮像装置など、他の任意のセンサーを用いてもよい。
【0047】
[実施例4]
図9は、本発明の第四の実施例に係る異物検出装置の構成例を示す概略図である。なお、図1、図7と同一の部分には同一の符号を付した。図1、図7の異物検出装置と同一の機能を有する部分については、詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施例では、検査対象物102は、搬送ベルト101上に載置され、紙面左から右へと搬送される。光センサー606は搬送ベルト101上を見込むように設置され、検査対象物102の通過を検出する。
【0049】
磁石801a,801bは、対になってX方向の磁場を発生させる電磁石であり、信号発生回路804aにより電流を供給される。磁石802a,802bは、対になってY方向の磁場を発生させる電磁石であり、信号発生回路804bにより電流を供給される。磁石803a,803bは、対になってZ方向の磁場を発生させる電磁石であり、信号発生回路804cにより電流を供給される。信号発生回路804a,804b,804cは電源805により電流を供給される。
【0050】
磁気センサー108は磁石801a,801b,802a,802b,803a,803bの下流側に設置され、検出回路113により、検査対象物102から発生する磁気信号を測定する。入出力装置115は制御計算機に接続されており、オペレータによる検査条件の設定、オペレータに対する検出結果の表示は、この入出力装置115を介して行われる。
【0051】
本実施例の原理は実施例1及び実施例3と同一であり、検査対象物に付着又は混入した金属異物を磁化容易軸方向に磁化させたのち、交流磁場を印加することにより、検査対象物を消磁する流れとなっている。本実施例の特徴の一つは、複数の方向への磁化を単一のサイトで、時分割的に行う点である。本実施例のもう一つの特徴は、検査対象物の磁化と消磁に同一の磁石を用いる点である。これについて、図10のタイムチャートを用いて説明する。
【0052】
光センサー606により検査対象物の通過が検知されると、制御計算機114は、信号発生回路804a,804b,804cにトリガー信号を入力し、これにより、信号発生回路804a,804b,804cは、それぞれ、図10(a)、図10(b)、図10(c)のような信号を発生させる。この信号は、それぞれ、X方向、Y方向、Z方向の磁場に対応する。まず、T1からT2にかけて、磁石801a,801bに直流電流が流れ、X方向の向きに磁化用磁場が印加される。次に、T2からT3にかけて、磁石802a,802bに直流電流が流れ、Y方向の向きの磁化用磁場が形成される。次に、T3からT4にかけて、磁石803a,803bに直流電流が流れ、Z方向の向きに磁化用磁場が印加される。以上が、検査対象物の磁化のプロセスである。次に、T5からT6にかけて、磁石801a,801bに減衰する交流電流が流れ、X方向に交流消磁が行われる。続いて、T6からT7にかけて、磁石802a,802bに減衰する交流電流が流れ、Y方向に交流消磁が行われる。さらにT7からT8にかけて、磁石803a,803bに減衰する交流電流が流れ、Z方向に交流消磁が行われる。検査対象物が磁石801a,801b,802a,802b,803a,803bが発生する磁場中を通過中に、T1からT8までの処理は行われる。
【0053】
なお、図10の例では、3つの向きに対して磁化を行ったが、検査対象物に付着又は混入する金属異物があらゆる方向に磁化容易軸を持ちうることを考えると、さらに多くの向きに対して磁化を行ってもよい。たとえば、図11の例では、7つの向きに対して磁化を行っている。即ち、T1からT2にかけて、磁石801a,801bに直流電流が流れ、X方向正の向きに磁化用磁場が印加される。次に、T2からT3にかけて、磁石802a,802b、及び磁石803a,803bに直流電流が流れ、X方向正の向きからY方向正の向きへ45度の向きに磁化用磁場が印加される。次に、T3からT4にかけて、磁石802a,802bに直流電流が流れ、Y方向正の向きに磁化用磁場が印加される。以下、順に直流電流を流す磁石と電流の強さを変えることにより、7つの向きに対して、磁化用磁場が印加され、最後にT9からT10にかけて、磁石801a,801b,802a,802b,803a,803bに減衰する交流電流が流れることにより、検査対象物に対して交流消磁が行われる。このとき、検査対象物を全方向に渡って均一に消磁を行うため、磁石801a,801bに流れる交流電流と、磁石802a,802bに流れる交流電流、磁石803a,803bに流れる交流電流はそれぞれ異なる周波数を持つようにしてもよい。これにより、3種類の交流電流により合成される磁場がランダムな方向を向くため、特定の磁化成分を残さず、消磁を行うことができる。
【0054】
なお、センサー606により検査対象物の通過が検知されると、その検査対象物が磁石801a,801b,802a,802b,803a,803bによって構成される磁場印加空間のほぼ中央に進んだタイミングで搬送ベルト101を停止させ、検査対象物が静止した状態で図10に示した処理を行ってもよい。この場合には、検査対象物102は、搬送ベルト101上に載置され、紙面左から右へと間欠的に搬送されることになる。
【0055】
[実施例5]
図12は、本発明の第五の実施例に係る異物検出装置の構成例を示す概略図である。なお、図5と同一の部分には同一の符号を付した。図5の異物検出装置と同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0056】
本実施例では、検査対象物401は帯状のフィルムであり、これが紙面左から右へと搬送される。X軸、Y軸、Z軸の定義は図1と同一である。磁化用磁石103,104,105はそれぞれ、X,Y,Z軸方向に磁場を発生する電磁石であり、それぞれ増幅回路109a,109b,109cを介して、直流電源111より電流を供給されている。磁気センサーアレイ1101は磁化用磁石105の下流側に設置され、検出回路113により、検査対象物401から発生する磁気信号を測定する。磁気センサーアレイ1101は、ホール素子やMR素子などの磁気センサーを直線状に並べて配置したものである。入出力装置115は制御計算機に接続されており、オペレータによる検査条件の設定、オペレータに対する検出結果の表示はこの入出力装置115を介して行われる。消磁用磁石1102は交流磁場を発生可能な電磁石であり、増幅回路1103を介して、交流電源1104により電圧を供給されている。
【0057】
本実施例の原理は実施例2と同一であり、複数の方向に磁化用磁場を印加することにより、検査対象物に付着又は混入した金属異物を磁化容易軸に磁化させ、金属異物の残留磁化を感度よく測定する。本実施例の特徴の一つは、検査対象物からの磁気信号測定前に直流又は交流の消磁を行わない点である。これについて図13を用いて説明する。
【0058】
図13(a)は、金属異物のM−Hカーブを示したものであり、破線が十分に大きな外部磁場を想定したメジャーループ、実線が本実施例における金属異物の磁化の変化を示したものである。一方、図13(b)は、検査対象物のM−Hカーブを示したものであり、点線が十分に大きな外部磁場を想定したメジャーループ、実線が本実施例における検査対象物の磁化の変化を示したものである。図13(a)と図13(b)を比較すると、保磁力(磁化がゼロになるときの外部磁場の強さ)が互いに近いことが分かる。このような場合、検査対象物を消磁するために磁場を印加すると、金属異物もまた消磁されてしまうため、十分に高い感度が得られない場合がある。そこで、本実施例では、図13(a)及び図13(b)に実線で示したように、消磁を行わずに、残留磁化を測定する。これにより、消磁を行う場合よりも、金属異物と検査対象物の磁化の差が大きくなり、より高感度に金属異物を検出できる。
【0059】
本実施例のもう一つの特徴は、検査対象物からの磁気信号測定後に消磁用磁石1102により交流消磁を行う点である。この交流消磁の役割は、検査に際して印加した直流磁場が、検査対象物を磁化させたことが、検査後のプロセス、又は出荷後の検査対象物の性能に与える影響を除去するためである。
【0060】
[実施例6]
図14は、本発明の第六の実施例に係る異物検出装置の構成例を示す概略図である。なお、図1、図5と同一の部分には同一の符号を付した。図1、図5の異物検出装置と同一の機能を有する部分については、詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施例では、検査対象物401は帯状のフィルムであり、これが紙面左から右へと搬送される。X軸、Y軸、Z軸の定義は図1と同一である。磁化用磁石105はZ軸方向に磁場を発生する電磁石であり、増幅回路109cを介して、直流電源111より電流を供給されている。消磁用磁石402は交流磁場を発生可能な電磁石であり、増幅回路403を介して、交流電源404により電圧を供給されている。消磁用磁石402の形成する交流磁場の振幅は時間的に一定である。しかしながら、空間的には、消磁用磁石から下流側に遠ざかるに従い徐々に減衰するよう磁気シールドなどが設計されている。
【0062】
マグネトメータ型磁気センサー405及び平面型グラジオメータ型磁気センサー407は消磁用磁石402の下流側に設置され、それぞれ検出回路406,408により、消磁用磁石402の内部を通過直後の検査対象物401から発生する磁気信号を測定する。図示されていないが、消磁用磁石402とマグネトメータ型磁気センサー405の間には、磁場が漏洩しないよう、磁気シールドが設けられている。検出回路406の出力は、制御計算機114に伝送され、この信号を元に、制御計算機114は消磁用磁石402の磁場強度を決定する。また、検出回路408の出力は、制御計算機114に伝送され、制御計算機114はこの信号強度を予め定められた閾値と比較することにより、金属異物の有無を判定する。マグネトメータ型磁気センサー405及び平面型グラジオメータ型磁気センサー407の作用は、実施例2で説明した通りである。
【0063】
本実施例の特徴の一つは、検査対象物の磁化及び消磁を単一の方向で行う点である。実施例1から5においては、検査対象物を複数の方向に磁化し、検査対象物に付着又は混入した金属異物をその磁化容易軸方向に磁化させることによって、金属異物の残留磁化を大きくする方法がとられていた。しかし、磁化用に磁石を複数用いることが、実装上及びコストの観点から困難な場合がある。これに対して、検査対象物と検出すべき金属異物の磁気特性がある条件を満たせば、検査対象物の磁化が単一の方向であっても、磁化の後に交流消磁を行うことにより、より高い感度で金属異物を検出することが可能である。その条件とは、「検出すべき金属異物の保磁力が検査対象物の保磁力と比べて大きい」場合である。
【0064】
これについて、図15のM−Hカーブを用いて説明する。図15(a)は、本実施例における金属異物の磁化の変化を示したものであり、磁化磁場印加直後を起点として、その後減衰する交流磁場が印加されていることを示す。この時、外部磁場がゼロ近辺を往復しても、金属異物の磁化は大きく減衰せず、最終的に残留磁化が大きく残る。これは、金属異物のM−Hカーブが矩形に近いループを描いているためである。これに対して、図15(b)は、本実施例における検査対象物の磁化の変化を示したものであり、外部磁場がゼロ近辺を往復するとともに、磁化が大きく減衰し、最終的には残留磁化がゼロになる。これは、検査対象物のM−Hカーブがゼロ磁場近辺で大きな勾配を持つためである。
【0065】
消磁用磁石の磁場強度は次のように決定する。図15(c)は検査対象物のM−Hカーブの拡大部である。交流磁場の強度を徐々に減衰させたとき磁化がゼロに近づくためには、交流磁場の振幅に対応する磁化の振幅の中心がゼロとなる必要がある。したがって、ゼロ磁場近辺のM−Hカーブを直線で近似すると、交流磁場の強度は検査対象物の保磁力の2倍程度必要であることが分かる。
【0066】
一方、金属異物からの磁気信号レベルの観点からは、交流磁場の強度は小さいほうが望ましい。交流磁場により金属異物の磁化を減衰させないために許容される交流磁場の強度は、金属異物の保磁力程度である。
【0067】
このように、検査対象物の消磁と金属異物の磁気信号レベル保持はトレードオフの関係にある。したがって、より好適には、検査に先立ちテストピースを用いた測定により、磁気信号のS/N比、即ち、金属異物からの信号と検査対象物自体からのバックグラウンド信号の比がもっとも大きくなるための条件を求めるのが望ましい。
【0068】
以上の方法で消磁用磁石により形成される交流磁場の強度を適切に設定することにより、検査対象物の磁化のみを選択的に消磁させることができる。
【0069】
以上のように、検出すべき金属異物の保磁力が検査対象物の保磁力と比べて大きい場合、検査対象物の磁化が単一の方向であっても、交流磁場の強度を適切に設定することにより、検査対象物の磁化のみを選択的に消磁させることができる。
【0070】
本発明は、磁性を持つ材料を含む製品中に混入する微量の金属異物を検出する非破壊検査装置として有用であり、例えば、リチウムイオン電池の電極に混入する微量の金属異物を検出するインライン検査装置に適用することができる。
【0071】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
101 搬送ベルト
102 検査対象物
103,104,105 磁化用磁石
106 磁気センサー
107 消磁用磁石
108 磁気センサー
109a,109b,109c,110 増幅回路
111 直流電源
112 検出回路
114 制御計算機
115 入出力装置
401 検査対象物
402 消磁用磁石
403 増幅回路
404 交流電源
405 マグネトメータ型磁気センサー
406 検出回路
407 平面型グラジオメータ型磁気センサー
408 検出回路
601 漏斗
602 磁化用磁石
603 磁気シールド
604 増幅回路
605 直流電源
606 光センサー
801a,801b,802a,802b,803a,803b 磁石
804a,804b,804c 信号発生回路
805 電源
1101 磁気センサーアレイ
1102 消磁用磁石
1103 増幅回路
1104 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に磁場を印加する磁場印加部と、
前記磁場印加部によって磁場を印加された検査対象物から発生する磁気信号を測定する磁気センサーと、
前記磁気センサーからの信号を用いて前記検査対象物に付随する異物を検出する異物検出部とを有し、
前記磁場印加部は、前記検査対象物に対して方向が異なる複数の直流磁場を順に印加することを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記複数の直流磁場は、方向が互いにほぼ直交する3方向の直流磁場を含むことを特徴とする異物検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記磁場印加部は互いに方向が異なる磁場を発生させる複数の磁石と前記検査対象物を搬送する搬送装置とを有し、前記搬送装置によって前記検査対象物を前記複数の磁石が発生する磁場領域を順に移動させることを特徴とする異物検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記磁場印加部は、複数の電磁石と、前記複数の電磁石を順に通電する信号発生回路を備えることを特徴とする異物検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記磁場印加部は、磁石及び前記磁石が発生する磁場の中で前記検査対象物を回転させる手段を備えることを特徴とする異物検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記磁場印加部により前記検査対象物に最後に印加する直流磁場は、その直前に前記検査対象物に印加した直流磁場の方向とほぼ同方向で逆向きの消磁磁場であることを特徴とする異物検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記磁場印加部は、前記複数の直流磁場を印加した後、最後に印加した直流磁場とほぼ同方向の交流磁場を印加し、前記交流磁場を減衰させた後、前記磁気センサーにより前記検査対象物から発生する磁気信号を測定することを特徴とする異物検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の異物検出装置において、前記交流磁場の最大強度は前記検査対象物の保磁力の2倍以上であることを特徴とする異物検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の異物検出装置において、前記交流消磁場の最大強度は検出すべき異物の保磁力より小さいことを特徴とする異物検出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の異物検出装置において、前記検査対象物は帯状の連続体であり、前記磁気センサーは平面型グラジオメータであることを特徴とする異物検出装置。
【請求項11】
検査対象物に磁場を印加する磁石と、
前記磁石によって磁場を印加された検査対象物から発生する磁気信号を測定する磁気センサーと、
前記磁気センサーからの信号を用いて前記検査対象物に付随する異物を検出する異物検出部とを有し、
前記磁石が発生する磁場強度は、検出すべき異物の磁化容易軸における保磁力以上であることを特徴とする異物検出装置。
【請求項12】
検査対象物に磁場を印加する磁場印加部と、
前記磁場印加部によって磁場を印加された検査対象物から発生する磁気信号を測定する磁気センサーと、
前記磁気センサーからの信号を用いて前記検査対象物に付随する異物を検出する異物検出部とを有し、
前記磁場印加部は、前記検査対象物に直流磁場を印加する直流磁場印加手段と、前記直流磁場を印加した後、前記検査対象物に交流磁場を印加する交流消磁手段とを有し、
前記交流磁場を減衰させた後、前記磁気センサーによって前記検査対象物から発生する磁気信号を測定することを特徴とする異物検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の異物検出装置において、前記交流消磁手段の発生する最大磁場強度が、前記検査対象物の保磁力の2倍以上であることを特徴とする異物検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の異物検出装置において、前記交流消磁手段の発生する最大磁場強度は、検出すべき異物の保磁力より小さいことを特徴とする異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−159292(P2012−159292A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17006(P2011−17006)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】