説明

異物検査装置

【課題】検査対象物中に混入した異物の検出に必要な検査パラメータを簡易に取得して、その異物検査処理を効率的に実行することのできる異物検査装置を提供する。
【解決手段】ベルトコンベア等の搬送機構の端部から送り出されて空中に飛び出した検査対象物を撮像して検査画像を得るカラー撮像装置の撮像領域に、前記検査対象物が有する色成分を代表する固有色の前記検査画像の背景を形成する背景体を設ける。そして前記撮像手段にて求められた検査画像の色成分から前記検査対象物の特徴を解析して前記検査対象物中に混入した異物を検出する(異物検出手段)と共に、前記撮像手段にて求められた検査画像の色成分に基づいて前記異物検出手段で用いる異物判定の為の検査パラメータを初期設定し、更には設定した検査パラメータを更新する(検査制御手段)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ葉や穀類等の農産物中に混入した異物を検出し、これを排除するに好適な異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ葉や穀類等の農産物中に混入した異物を検出し、その排除に用いられる異物検査装置は、基本的にはその検査対象物の色に着目して異物検出を行うように構成される。具体的には、例えばベルトコンベアに載置されて搬送されるたばこ葉等の検査対象物をカラー撮像装置(カメラ)を用いて撮像し、その検査画像を解析することによって検査対象物の色成分を求める。そして検出された色成分が、前記検査対象物が有する正常な色成分であるか、或いは検査対象物に混入する虞のある異物が持つ異常な色成分であるかを判定することで異物検査が行われる。
【0003】
しかしながら検査対象物が有する正常な色成分と、異物が持つ異常な色成分との区別がつき難いことも多々あり、これらの色成分を精度良く識別するには種々の工夫が必要である。そこで本発明者等は、先に検査対象物が有する色成分の出現頻度に基づいて該検査対象物の正常色領域を定義すると共に、この正常色領域から外れる領域の色成分を異常色領域として定義することで、検査対象物が有する正常色と似た色成分の異物であっても、これを確実に検出することを提唱した(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−207456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら検査対象物が有する色成分の出現頻度に基づいて該検査対象物の正常色領域を定義するには、予め検査対象物を撮像した多数の検査画像を求め、これらの検査画像をそれぞれ解析することが必要である。具体的には異物検査に先立ってベルトコンベア上に或る程度の量の検査対象物を供給し、その検査対象物を撮像した画像を解析して該検査対象物の正常色領域を定義する等、異物検査を実施する上での検査パラメータを初期設定することが必要である。
【0005】
その上で、上記検査パラメータの初期設定に供した検査対象物を回収し、その回収分を含む検査対象物を前記ベルトコンベア上に改めて供給することで、上記検査対象物の異物検査が開始される。これ故、異物検査の開始までに時間が掛かることが否めず、また検査パラメータの初期設定に供した検査対象物を回収して、その供給源に戻す作業が必要となる等の煩わしさがある。
【0006】
しかも検査対象物がたばこ葉や穀類等の農産物である場合には、その色成分自体が天候等の影響を受けて変化し易い上、産地や品種の違いによる色成分の違いも無視できない。これ故、検査対象物の種別(農産物の品種や産地、生産時期等)が変更される都度、上述した検査パラメータの初期設定をやり直す必要があり、異物検査の処理効率が悪いと言う不具合がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、たばこ葉や穀類等の農産物からなる検査対象物中に混入した異物の検出に必要な検査パラメータを簡易に取得して、その異物検査処理を効率的に実行することのできる異物検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するべく本発明に係る異物検査装置は、例えばたばこ葉や穀類等の農産物中に混入した異物を検出して排除するに好適なものであって、
<a> 上記農産物からなる検査対象物を搬送するベルトコンベア等の搬送機構と、
<b> この搬送機構の端部から送り出されて空中に飛び出した検査対象物を撮像して検査画像を得るカラー撮像装置と、
<c> このカラー撮像装置の撮像領域に設けられ、前記検査対象物の色成分を代表する固有色を有する前記検査画像の背景を形成する背景体と、
<d> 前記撮像手段にて求められた検査画像の色成分から前記検査対象物の特徴を解析して前記検査対象物中に混入した異物を検出する異物検出手段と、
<e> 前記撮像手段にて求められた検査画像の色成分に基づいて前記異物検出手段で用いる異物判定の為の検査パラメータを初期設定すると共に、設定した検査パラメータを更新する検査制御手段と
を具備したことを特徴としている。
【0009】
好ましくは前記検査制御手段は、前記背景体から取得した前記検査画像の背景色に基づいて検査パラメータ(例えば検査対象物が有する正常色の色成分領域)を初期設定する。しかる後、この初期設定された検査パラメータを用いて異物検査処理を実行すると共に、この異物検検査処理にて弁別された検査対象物の正常な色成分に従って前記検査パラメータを逐次更新(学習)するように構成される。
【0010】
尚、前記背景体は、搬送機構の端部から送り出されて空中に飛び出す検査対象物を、前記カラー撮像装置とは反対側から前記固有色にて照明する背景照明光源からなる。そしてこの背景照明光源は、例えば前記検査対象物の代表色を膨張させた色領域であって該検査対象物が有する色成分(固有色)を含む色領域の照明光を発するものとして実現される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る異物検査装置によれば、ベルトコンベア等の搬送機構の端部から送り出されて空中に飛び出した検査対象物をカラー撮像装置にて撮像して異物検査処理を実行するので、ベルトコンベア(搬送機構)上の検査対象物を撮像して異物検査する従来一般的な装置のように、その検査画像の背景となるベルトコンベアの色の影響を排除するべく、例えばベルトコンベアを黒色に設定する必要がない。しかも空中に飛び出した検査対象物を撮像するカラー撮像装置に対峙させて設けた背景体が、前記検査対象物が有する色成分を代表する固有色に設定されているので、この背景体を撮像した検査画像の背景色に基づいて検査パラメータを初期設定するだけで、この検査パラメータを用いて前記検査対象物を異物検査することができる。
【0012】
その上で、検査対象物の異物検査結果である該検査対象物が有する色成分に基づいて前記検査パラメータを逐次更新するので、異物検査の実施経過に伴って、その検査対象物が有する色成分に合わせて前記検査パラメータを適宜修正してその異物検査精度を高めることができる。つまり検査対象物に対する異物検査を実施しながら、これと併行してその検査パラメータを最適化することができる。特に従来のように異物検査に先立って所定量の検査対象物を搬送し、これによって検査パラメータを初期設定すると共に上記検査対象物を回収し、その後、改めて検査対象物の異物検査を実施する等の煩わしさがなくなり、効率的に異物検査を実施し得る等の実用上多大なる効果が奏せられる。
【0013】
また背景照明光源の発光色成分が経時的に変化しても、その発光色成分に基づいて初期設定された検査パラメータが、その後の異物検査処理の実行に伴う学習によって逐次修正されるので、背景照明光源の経時的変化が異物検査処理に悪影響を及ぼすことがない。故に検査環境の変化等の外乱要因に拘わりなく、常に安定して精度良く異物検査を実行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る異物検査装置について、除骨したたばこ葉に対する異物検査を例に説明する。
図1はこの実施形態に係る異物検査装置の概略構成図で、1は検査対象物であるたばこ葉(除骨葉)Sを搬送して異物検査に供するベルトコンベア(搬送装置)を示している。たばこ葉(検査対象物)Sは、その供給源であるホッパ(図示せず)から4000kg/h程度の流量で異物検査に供され、例えば振動コンベア(図示せず)を介して一定流量に平均化された後、前記ベルトコンベア1上に供給される。ちなみにこのベルトコンベア1は、例えば幅140cmの無端状ベルトを40〜200m/分程度の搬送速度で駆動されるものであって、振動コンベアから連続的に供給されるたばこ葉Sを層厚4mm程度に並べて搬送する。
【0015】
さて上記ベルトコンベア1により搬送され、その端部から送り出されて空中に飛び出すたばこ葉(検査対象物)Sは、所定幅の層流をなし、一定の落下曲線を描いて排出コンベア(図示せず)上に導かれる。このようにしてたばこ葉(検査対象物)Sを送り出す前記ベルトコンベア1の端部近傍の上方位置には、該コンベア1から送り出され、上述したように層流をなして空中に飛び出したたばこ葉(検査対象物)Sを撮像してその検査画像を得るカラー撮像装置(カメラ)2が設けられている。またこのカラー撮像装置(カメラ)2の側部には、該カラー撮像装置2の撮像領域を均一に照明する照明光源3a,3bが設けられている。これらの照明光源3a,3bは白色光を発するものであり、これによって前記ベルトコンベア1の端部から送り出されたたばこ葉(検査対象物)Sは、その色成分を損なうことなしに均一・均質照明されて前記カラー撮像装置2による撮像に供せられる。
【0016】
また前記ベルトコンベア1の端部近傍の下方位置には、上記カラー撮像装置(カメラ)2の撮像領域に位置して、つまりカラー撮像装置(カメラ)2に対峙させて、例えば3原色発光ダイオードアレイと、その前面に設けられた光拡散板とからなる背景照明光源4が設けられている。この背景照明光源4は、前記カラー撮像装置2が撮像入力する前記検査画像の背景を形成する背景体をなすもので、後述するように前記たばこ葉(検査対象物)Sが有する色成分を代表する固有色を発光することで、前記検査画像の背景色を設定する役割を担う。
【0017】
尚、カラー撮像装置2は、ベルトコンベア1の端部から帯状の層をなして送り出されるたばこ葉(検査対象物)Sを、その幅方向(ベルトコンベア1の幅方向)に亘って順次ライン状に撮像することで、たばこ葉(検査対象物)Sの搬送方向に連続してライン状の検査画像を得る。そして異物検査部5によるたばこ葉(検査対象物)Sの異物検査は、上述したようにして求められる検査画像の色成分を解析することにより実施される。
【0018】
具体的には前記異物検査部5は、画像処理装置を主体として構成されるものであって、前記検査画像の画素(絵素)毎に色成分を分析し、基本的にはその色成分が前記たばこ葉(検査対象物)Sが有する色成分の領域(正常色領域)に含まれるか否かを判定する。また前記異物検査部5は、上記正常色領域に含まれない色成分、つまり異常色領域に含まれる色成分であると判定した画素(絵素)については、それらが連なる画素のまとまりが物(異物)として所定の大きさ(画素数)を有するか否か等を判定することにより、たばこ葉(検査対象物)S中に混在している異物を検出する。
【0019】
そして前記異物検査部5にて異物が検出された場合には、前述した帯状のたばこ葉(検査対象物)Sの層流における幅方向(ベルトコンベア1の幅方向)での異物検出位置と、その検出タイミングとに従って前記カラー撮像装置2の下流側に設けられた排除ノズル6が駆動される。尚、排除ノズル6はベルトコンベア1の幅方向に複数個設けられており、異物の検出位置に応じて選択的に駆動される。そしてこの排除ノズル6からスポット的に吹き出される高圧エア(エアジェット)によって前記帯状のたばこ葉(検査対象物)Sの層流に混在している異物が、その層流の外側に排除される(吹き飛ばされる)。この場合、たばこ葉(検査対象物)Sの層流中の異物だけを排除するように前記排除ノズル6から吹き出す高圧エアを絞り込み制御しても良いが、検出した異物とその周囲の若干量のたばこ葉とをまとめて排除するようにしても良い。このようにして帯状のたばこ葉(検査対象物)Sの層流から排除された異物は、前記排除ノズル6に対峙させて設けられている異物ストッカ7により回収される。
【0020】
さて前述した異物検査部5は、前記カラー撮像装置2にて撮像入力された検査画像を用いて次のようにして異物検査処理を実行する。即ち、この異物検査部5は、前記検査画像解析して該検査画像を形成する画素(絵素)毎にその色成分を求めると共に、例えばたばこ葉(検査対象物)Sが有する色成分の分布領域を特定する正常色領域、およびこの正常色領域以外の色成分領域として定められる異常色領域とからなる2つの検査パラメータに従い、上記画素(絵素)毎に求められた色成分が正常色領域に含まれるか、或いは異常色領域に含まれるかを判定する画像処理装置11を主体として構成される。また前記画像処理装置11は、異常色領域に含まれる色成分の画素(絵素)が検出されたとき、その色成分の画素(絵素)のまとまりが、物(異物)としての所定の大きさを有するか否かを判定する大きさ判定機能も備える。
【0021】
尚、検査画像を形成する画素(絵素)の色成分の分析は、例えば前述した特許文献1に開示されるようにR(赤),G(緑),B(青)からなる3原色成分の比率を求め、R,G,Bの各色成分を3軸とする色空間において、その色成分がどこに存在するかを特定することによって行われる。このような3原色成分の比率分析に代えて上記画素(絵素)の色波長を特定することで、その色成分を求めることも可能である。そして検出した色成分が正常色領域に属するか、或いは異常色領域に属するかの判定は、検出した色成分が前記RGB色空間において設定した前記正常色領域および正常色領域以外の異常色領域に含まれるか否かを判定することにより行われる。
【0022】
ちなみにこのような機能を備えた画像処理装置11は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等が備える画像処理機能(ソフトウェア)によって実現されたり、或いは専用のハードウェアによって実現される。そして画像処理装置11は、異常色領域に含まれる色成分の画素(絵素)が検出され、その色成分の画素(絵素)のまとまりが物(異物)としての所定の大きさを有するとき、これを前記たばこ葉(検査対象物)S中に混在している異物であるとして検出し、その検出位置と検出タイミングとを出力する。上記異物の検出位置は前述したたばこ葉(検査対象物)Sの層流における幅方向(ベルトコンベア1の幅方向)での位置を示すものであり、また検出タイミングは上記層流の流れ方向の位置を示すものである。
【0023】
前述した排除ノズル6は、このようにして特定される異物の検出位置に応じて、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)からなる排除制御部12の制御の下で駆動される。即ち、カラー撮像装置2により撮像され、異物検査部5の画像処理装置11にて異物が検出されたとき、その検出された異物が前記カラー撮像装置2による撮像位置から前記排除ノズル6の設置位置に到達する時間を見込んで排除ノズル6が駆動される。尚、排除ノズル6は、前述したように所定幅の帯状をなして空中に送り出されるたばこ葉(検査対象物)Sの層流に対して、その幅方向(ベルトコンベア1の幅方向)に亘って複数個設けられており、前述した異物の検出位置に応じて選択的に駆動される。従って前述した如く検出された異物の検出位置に応じて、その検出部位に存在する異物が前記排除ノズル6により層流の外側に排除される。
【0024】
さてこのように機能する異物検査処理に用いられる正常色領域および異常色領域をそれぞれ特定する検査パラメータは、前記異物検査部5が備える検査制御手段13によって設定される。この検査制御手段13は、前述した画像処理装置11と並列に動作し、前記検査画像が有する色成分に基づいて検査パラメータを初期設定すると共に、上述した画像処理装置11による異物検査結果に基づいて上記検査パラメータを逐次更新する検査パラメータ生成部からなる。この検査パラメータ生成部(検査制御手段)13も、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等が備える画像処理機能および演算処理機能によって実現されたり、或いは専用のハードウェアによって実現される。尚、図中15は、異物検査部5に対して各種の制御情報を入力したり、或いは異物検査結果の表示出力を指示する操作部である。
【0025】
即ち、この検査制御手段(検査パラメータ生成部)13は、異物検査装置が起動されたとき、ベルトコンベア1の上流に供給されたたばこ葉(検査対象物)Sが該ベルトコンベア1の下流端から送り出されて前記カラー撮像装置2による異物検査領域に導かれるまでのタイムラグ(遅れ時間)を利用し、前記カラー撮像装置2が撮像する検査画像の背景そのものである前記背景照明光源4の像を初期検査画像として取り込み、この初期検査画像(背景画像)の色成分に従って検査パラメータを初期設定する。
【0026】
この検査パラメータの初期設定は、前述したように背景照明光源4が発する色成分が、たばこ葉(検査対象物)Sが有する色成分を代表する固有色として、好ましくは、例えば幾つかの種類のたばこ葉(検査対象物)Sの代表色を膨張させて設定した該検査対象物Sが有する色成分を含む色領域の光として設定されていることから、この背景色を解析することによってたばこ葉(検査対象物)Sが有する正常色が分布する色領域(正常色領域)を第1の検査パラメータとして設定する。そしてこの正常色領域から外れた色成分の領域(正常色領域の補領域)を、異物の色成分を含む異常色領域を示す第2の検査パラメータとして設定する。そしてこのようにして初期設定した第1および第2の検査パラメータを前記画像処理装置11に与えてたばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理に供する。
【0027】
しかる後、上述した第1および第2の検査パラメータを用いて実行される異物検査処理の前記画像処理装置11による検査結果に基づいて、上記第1および第2の検査パラメータを逐次更新し、更新した検査パラメータを画像処理装置11に与えて、その後のたばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理に供する。この第1および第2の検査パラメータの更新処理は、例えばたばこ葉(検査対象物)Sの異物検査によって正常であると判断された色成分を求め、この色成分に基づいて先に第1の検査パラメータとして設定された正常色領域を修正する。この正常色領域の修正に伴って、その補色領域である異常色領域の修正も行われる。そしてこのような検査パラメータの更新処理を、新たな異物検査の実行に伴ってたばこ葉(検査対象物)Sの色成分および異物の色成分が検出される都度、逐次実施する。
【0028】
より具体的には図2にその処理手順の一例を示すように、先ず前記背景照明光源4を撮像して求められる背景画像の色成分に従って検査パラメータP[0]を初期設定する〈ステップS1〉。そしてこの初期設定された検査パラメータP[0]に従って、たばこ葉(検査対象物)Sを撮像した検査画像に対する異物検査処理を実行し、検出した異物に対する排除制御を実行する〈ステップS2〉。
【0029】
一方、上記異物検査処理の実行に伴って検出されるたばこ葉(検査対象物)Sおよび異物の色成分とその出現頻度とに従って新たな検査パラメータP[N]を作成する〈ステップS3〉。この検査パラメータP[N]の自動作成は、前述したたばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理と併行に行われる。そして新たな検査パラメータP[N]が求められたならば、先に求められて上記異物検査処理に用いられている検査パラメータP[N-1]との間で、例えば
P[N+1]=α・P[N]+β・P[N-1]
なる演算処理を実行し、前記画像処理装置11に与える新たな検査パラメータP[N+1]を求める〈ステップS4〉。尚、上記αは検査パラメータの学習係数であり、またβは検査パラメータの急激な変化を防止する為の安定化係数である。そしてこの学習によって更新された検査パラメータP[k]に基づくたばこ葉(検査対象物)Sの異物検査と、この異物検査に基づく検査パラメータP[k+1]の自動生成とを繰り返し実行し、更には自動生成した新たな検査パラメータに基づく前記検査パラメータの更新処理を繰り返し実行する。
【0030】
従って前述した如く検査パラメータP[0]を初期設定し、この検査パラメータP[0]を用いた前記画像処理装置11での異物検査の実行に伴って新たな検査パラメータP[1]が求められた場合には、これらの検査パラメータP[0],P[1]に基づく学習によって新たな検査パラメータP[2]が求められ、この検査パラメータP[2]が改めて前記画像処理装置11に与えられる。そしてこの検査パラメータP[0]を用いた前記画像処理装置11での異物検査の実行に伴って更に新たな検査パラメータP[3]が求められると、上述したようにこれらの検査パラメータP[2],P[3]に基づく学習によって新たな検査パラメータP[4]が求められ、この検査パラメータP[4]が前記画像処理装置11に与えられる。以降、このような検査パラメータP[N]の学習による更新が逐次進められ、これによってたばこ葉(検査対象物)Sを異物検査する上での精度および信頼性の高い検査パラメータが逐次構築されていく。
【0031】
かくして上述した如く構成された異物検査装置によれば、たばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理を開始するに際して、先ず背景照明光源4を撮像して求められる背景画像の色成分に基づいて初期設定した検査パラメータに従って前記たばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理を実行しながら、その検査結果に従って前記検査パラメータを学習し、これによって異物検査精度の高い検査パラメータを逐次構築していくことが可能である。
【0032】
従って従来のようにたばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理を開始するに先立って予め所定の量のたばこ葉(検査対象物)Sをその搬送ラインであるベルトコンベア1上に供給し、該たばこ葉(検査対象物)Sの色成分情報を取得してその異物検査に用いる検査パラメータを初期設定しなくても良い。また検査パラメータの初期設定に用いたたばこ葉(検査対象物)Sを回収して再度ベルトコンベア1上に供給し、改めて異物検査に供する等の煩わしさもない。故に、たばこ葉(検査対象物)Sに対する異物検査処理を効率的に実行することが可能となる。
【0033】
特にたばこ葉Sの品種を変えて異物検査する場合であっても、前述した背景画像の色成分に基づく検査パラメータの初期設定が行われ、その後、その異物検査結果に基づく検査パラメータの学習によってその品種に応じて検査パラメータが適応的に設定される。従って異物検査対象とするたばこ葉Sの品種が変わる都度、異物検査処理を中断する必要がなく、その処理効率を高めることが可能となる。
【0034】
また背景画像を形成する背景照明光源4の発光色が経時的に変化したとしても、この発光色に基づいて色設定した検査パラメータがその後の異物検査処理に伴って学習され、検査対象物が有する色成分に応じて更新されていく。従って背景照明光源4の経時的な変化に拘わることなく、常に安定に異物検査処理を実行することができる。換言すれば外乱要因を排除しながら、異物検査処理を簡易に、しかも精度良く実施することができる等の効果が奏せられる。
【0035】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば異物検査処理を停止するに際して、それまで異物検査に供していた検査パラメータを記憶し、異物検査処理の再開時に上記記憶した検査パラメーを読み出してその再開時における検査パラメータとして初期設定することも勿論可能である。また検査パラメータについては、異物検査の判定アルゴリズムに応じて設定すれば良いものであり、また検査パラメータの学習とその更新処理についても種々の手法を適宜採用することができる。
【0036】
またここではたばこ葉の異物検査を例に説明したが、小麦等の穀類や豆類等の農産物に対する異物検査にも同様に適用することができる。またチョコレートやガム等の菓子類を製造するに際して、希に砂糖等の添加物がその食材と混じり合うことなく塊のまま残ることがある。このような砂糖の塊も広義の異物であり、このような異物(砂糖の塊)を検出する場合にも本発明を同様に適用することが可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る異物検査装置の概略構成図。
【図2】本発明に係る異物検査装置における検査パラメータの設定制御手順の一例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 ベルトコンベア(搬送装置)
2 カラー撮像装置
3a,3b 照明光源
4 背景照明光源(背景体)
5 異物検査部
6 排除ノズル
11 画像処理装置
12 排除制御部
13 検査パラメータ生成部(検査制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を搬送する搬送機構の端部から送り出された上記検査対象物を撮像して検査画像を得るカラー撮像装置と、
このカラー撮像装置の撮像領域に設けられ、前記検査対象物の色成分を代表する固有色を有する前記検査画像の背景を形成する背景体と、
前記撮像手段にて求められた検査画像の色成分から前記検査対象物の特徴を解析して前記検査対象物中に混入した異物を検出する異物検出手段と、
前記撮像手段にて求められた検査画像の色成分に基づいて前記異物検出手段で用いる異物判定の為の検査パラメータを初期設定すると共に、設定した検査パラメータを更新する検査制御手段と
を具備したことを特徴とする異物検査装置。
【請求項2】
前記検査制御手段は、前記検査画像の背景色に基づいて検査パラメータを初期設定した後、前記異物検出手段にて弁別された検査対象物の正常な色成分に従って前記検査パラメータを逐次更新するものである請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記背景体は、搬送機構から送り出されて空中に飛び出す検査対象物を、前記カラー撮像装置とは反対側から照明する背景照明光源である請求項1に記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記背景体は、前記検査対象物の代表色を膨張させた色領域の照明光を発する背景照明光源である請求項2に記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記検査対象物は、農産物である請求項1に記載の異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−25205(P2009−25205A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189983(P2007−189983)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(592118686)ジェイティエンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】