説明

異物除去装置

【課題】異物除去装置1において、体格を大きくすることなく異物除去能力を高める。
【解決手段】異物除去装置1は、燃料を噴出させるノズル13と、ノズル13から噴出した燃料が衝突する衝突部14とを備える。そして、衝突部14は、燃料とともに移動してきた異物を停止させて異物の堆積層20を形成するとともに、燃料の流れる方向をノズル13により形成された方向から曲げる。これにより、異物は、衝突部14への衝突により燃料から分離されて堆積層20を形成し、異物を除かれた燃料は、流れの方向を変えて流れ続ける。このため、異物除去装置1において、濾過面積を大きく設定しなくても異物を除去することができる。したがって、異物除去装置1において、体格を大きくすることなく異物除去能力を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、内燃機関に供給される燃料に含まれる異物を除去する異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関を搭載する車両等には、内燃機関に供給される燃料に含まれる異物を除去するために濾過エレメントを主体とする異物除去装置が搭載され、燃料タンクから内燃機関に向かう燃料の流路に組み込まれ、車両等における燃料供給装置の1構成要素となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、異物の多い粗悪燃料が使用される地域が広がっており、異物除去装置の異物除去能力の向上が要求されている。
ところで、濾過エレメントは、単位濾過面積あたりの異物の除去量に上限があり、異物除去能力を高めるには濾過面積を増やす必要がある。しかし、濾過面積を増やすと、異物除去装置の体格が大きくなり、車両への搭載上、不都合が生じる虞が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−327910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、異物除去装置において、体格を大きくすることなく異物除去能力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段によれば、異物除去装置は、車両に搭載され、内燃機関に供給される燃料に含まれる異物を除去するものである。
また、異物除去装置は、燃料を噴出させるノズルと、ノズルから噴出した燃料が衝突する衝突部とを備える。そして、衝突部は、燃料とともに移動してきた異物を停止させて異物の堆積層を形成するとともに、燃料の流れる方向をノズルにより形成された方向から曲げる。
【0007】
これにより、異物は、衝突部への衝突により燃料から分離されて堆積層を形成し、異物を除かれた燃料は、流れの方向を変えて流れ続ける。このため、異物除去装置において、濾過面積を大きく設定しなくても異物を除去することができる。したがって、異物除去装置において、体格を大きくすることなく異物除去能力を高めることができる。
【0008】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段によれば、衝突部は、ノズルから噴出した燃料の衝突により回転する濾過体であり、濾過体の表面の一部に堆積層が形成される。また、表面で堆積層が形成される部位は濾過体の回転に応じて変位し、衝突部により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層の周囲から濾過体に進入する。
【0009】
これにより、異物除去装置への燃料の供給が停止することなく続いているときでも、燃料から異物を連続的に除去し続けることができる。なお、堆積層の除去は、例えば、燃料が衝突しなくなった位置に堆積層が回転変位したときに、自重による自由落下等により実現することができる。また、別途に剥離手段を設けてもよい。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段によれば、濾過体は、円筒状の外周面を有するとともに、燃料の衝突により円筒軸心を中心として回転する。そして、堆積層は外周面の一部に形成され、外周面で堆積層が形成される部位は濾過体の回転に応じて周方向に変位する。
円筒状の濾過体は既製品において汎用されている。このため、請求項1、2の手段の作用効果を得ることができる異物除去装置を、より低コストで製造することができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段によれば、衝突部は、所定の厚さを有して平面状に広がる濾過層であり、濾過層の表面の一部に堆積層が形成される。また、異物は、堆積層に積み重なるように捕捉されて燃料から除去され、衝突部により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層の周囲から濾過層に進入する。
【0012】
これにより、例えば、不織布や濾紙等の平面状の濾過材に煩雑な成形等を施すことなく、異物除去装置を製造することができる。なお、堆積層の除去は、例えば、ノズルからの燃料の噴出が停止したときに、自重による自由落下等により実現することができる。また、別途に剥離手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料供給装置の全体構成図である(実施例1)。
【図2】異物除去装置の構成図である(実施例1)。
【図3】(a)は異物除去装置の要部平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態1の異物除去装置は、車両に搭載され、内燃機関に供給される燃料に含まれる異物を除去するものである。
また、異物除去装置は、燃料を噴出させるノズルと、ノズルから噴出した燃料が衝突する衝突部とを備える。そして、衝突部は、燃料とともに移動してきた異物を停止させて異物の堆積層を形成するとともに、燃料の流れる方向をノズルにより形成された方向から曲げる。
【0015】
さらに、衝突部は、所定の厚さを有して平面状に広がる濾過層であり、濾過層の表面の一部に堆積層が形成される。また、異物は、堆積層に積み重なるように捕捉されて燃料から除去され、衝突部により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層の周囲から濾過層に進入する。
【0016】
実施形態2の異物除去装置によれば、衝突部は、ノズルから噴出した燃料の衝突により回転する濾過体であり、濾過体の表面の一部に堆積層が形成される。また、表面で堆積層が形成される部位は濾過体の回転に応じて変位し、衝突部により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層の周囲から濾過体に進入する。
なお、濾過体は、円筒状の外周面を有するとともに、燃料の衝突により円筒軸心を中心として回転する。そして、堆積層は外周面の一部に形成され、外周面で堆積層が形成される部位は濾過体の回転に応じて周方向に変位する。
【実施例】
【0017】
〔実施例1の構成〕
実施例1の異物除去装置1の構成を、図1および図2を用いて説明する。
異物除去装置1は、車両に搭載され、内燃機関2に供給される燃料に含まれる異物を除去するものであり、燃料タンク3から内燃機関2に向かう燃料の流路4に組み込まれ、車両等における燃料供給装置5の1構成要素となっている。
【0018】
なお、燃料供給装置5は、例えば、燃料タンク3から燃料を汲み上げ、高圧化して吐出する燃料供給ポンプ6と、燃料供給ポンプ6から吐出された燃料を高圧状態で蓄圧する蓄圧容器としてのコモンレール7と、内燃機関2に気筒8ごとに搭載され、コモンレール7から燃料の分配を受けて各気筒8内に燃料を噴射するインジェクタ9と、各種センサから内燃機関2の運転状態を示す検出信号の入力を受けるとともに、これらの検出信号に基づいて燃料供給ポンプ6やインジェクタ9等の動作を制御する電子制御ユニット10とを備える周知構造を有する。
【0019】
そして、異物除去装置1は、例えば、燃料タンク3から燃料供給ポンプ6に向かう燃料の流路4に組み込まれている。
異物除去装置1は、燃料を噴出させるノズル13と、ノズル13から噴出した燃料が衝突する衝突部14とを備える。また、異物除去装置1の外殻体15は内部に燃料の流動領域16を形成しており、流動領域16にノズル13が突出するとともに衝突部14が収容されている。
【0020】
ノズル13は、例えば、燃料タンク3から異物除去装置1に至る燃料配管の異物除去装置1側の先端部であり、流動領域16に突出するように外殻体15に接続している。
衝突部14は、所定の厚さを有して平面状に広がる濾過層18であり、濾過層18は、例えば、不織布や濾紙等の平面状の濾過材により構成されている。また、衝突部14は、流動領域16を自身よりも上流側の領域16aと下流側の領域16bとに区画している。
【0021】
ここで、濾過層18の一方側表面19はノズル13の開口と垂直に対向しており、ノズル13から噴出した燃料は上流側の領域16aにおいて一定の角度範囲に広がりながら濾過層18に衝突する。これにより、濾過層18は、一方側表面19の一部において、燃料とともに移動してきた異物を停止させて異物の堆積層20を形成するとともに、燃料の流れる方向をノズル13により形成された方向から曲げる。
【0022】
このため、異物は、堆積層20に積み重なるように捕捉されて燃料から除去され、流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層20の周囲から濾過層18に進入して他方側表面21から下流側の領域16bに流入する。
また、下流側の領域16bを形成する外殻体15には、異物除去装置1から燃料供給ポンプ6に至る燃料配管の異物除去装置1側の先端部23が接続しており、異物を除去された燃料は、下流側の領域16bから燃料供給ポンプ6に供給される。
【0023】
なお、上流側の領域16aの鉛直下側には、除去された異物を溜める異物貯留部24が設けられている。ここで、異物貯留部24を形成する壁面の一部は、濾過層18の一方側表面19の鉛直下側に連続している。このため、ノズル13からの燃料の噴出が停止すると、堆積層20は、自重により自由落下して異物貯留部24に溜まる。
【0024】
〔実施例1の効果〕
実施例1の異物除去装置1は、燃料を噴出させるノズル13と、ノズル13から噴出した燃料が衝突する衝突部14とを備える。そして、衝突部14は、燃料とともに移動してきた異物を停止させて異物の堆積層20を形成するとともに、燃料の流れる方向をノズル13により形成された方向から曲げる。
【0025】
これにより、異物は、衝突部14への衝突により燃料から分離されて堆積層20を形成し、異物を除かれた燃料は、流れの方向を変えて流れ続ける。このため、異物除去装置1において、濾過面積を大きく設定しなくても異物を除去することができる。したがって、異物除去装置1において、体格を大きくすることなく異物除去能力を高めることができる。
【0026】
また、衝突部14は、所定の厚さを有して平面状に広がる濾過層18であり、濾過層18の表面の一部に堆積層20が形成される。また、異物は、堆積層20に積み重なるように捕捉されて燃料から除去され、衝突部14により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層20の周囲から濾過層18に進入する。
これにより、例えば、不織布や濾紙等の平面状の濾過材に煩雑な成形等を施すことなく、異物除去装置1を製造することができる。
【0027】
〔実施例2の構成〕
実施例2の異物除去装置1によれば、図3に示すように、衝突部14は、ノズル13から噴出した燃料の衝突により回転する濾過体26である。
ここで、濾過体26は、例えば、円筒状の外周面27を有するとともに、燃料の衝突により円筒軸心を中心として回転する。
【0028】
つまり、ノズル13は、噴出した燃料が濾過体26の外周面27に衝突するように外周面27に対して配置される。さらに、ノズル13は、ノズル13から燃料が直進した場合の外周面27における衝突点28を想定した場合に、衝突点28における直進方向の流速ベクトルが周方向の成分を有するように外周面27に対して配置される。
【0029】
また、濾過体26は、円筒軸心が鉛直方向を指向するように異物除去装置1に組み込まれており、ノズル13は、衝突点28における直進方向の流速ベクトルが鉛直下向きの成分を有するように外周面27に対して配置される。
そして、堆積層20は外周面27の一部に形成され、外周面27で堆積層20が形成される部位は濾過体26の回転に応じて周方向に変位する。また、衝突部14により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層20の周囲から濾過体26に進入し、内周側に向かって濾過体26を通過する。
【0030】
そして、堆積層20は、例えば、燃料が衝突しなくなった位置に堆積層20が回転変位したときに、自重による自由落下等により外周面27から剥離して除去される。
なお、濾過体26は、例えば、濾紙を素材とする平板状の濾過エレメントを円筒状に巻回することで設けられた周知の構造体である。また、濾過体26の上下には、それぞれ、濾過体26の上側、下側を封鎖する円板状の支持体30a、30bが濾過体26に接着等されており、支持体30a、30bは濾過体26とともに回転する。
【0031】
さらに、濾過体26の軸心周囲の円筒状の領域は、濾過体26を通過した燃料が流入する下流側の領域16bを形成する。そして、下流側の領域16bには、異物除去装置1から燃料供給ポンプ6に至る燃料配管の異物除去装置1側の先端部23が突出しており、異物を除去された燃料は、下流側の領域16bから燃料供給ポンプ6に供給される。
【0032】
ここで、濾過体26は、ボールベアリング32により先端部23に軸受されている。つまり、ボールベアリング32の外輪32aが上側の支持体30aと一体化されて濾過体26とともに回転し、内輪32bが先端部23に固定されている。
【0033】
〔実施例2の効果〕
実施例2の異物除去装置1によれば、衝突部14は、ノズル13から噴出した燃料の衝突により回転する濾過体26であり、濾過体26の表面の一部に堆積層20が形成される。また、堆積層20が形成される部位は濾過体26の回転に応じて変位し、衝突部14により流れる方向が曲げられた燃料は、堆積層20の周囲から濾過体26に進入する。
これにより、異物除去装置1への燃料の供給が停止することなく続いているときでも、燃料から異物を連続的に除去し続けることができる。
【0034】
また、濾過体26は、円筒状の外周面27を有するとともに、燃料の衝突により円筒軸心を中心として回転する。そして、堆積層20は外周面27の一部に形成され、外周面27で堆積層20が形成される部位は濾過体26の回転に応じて周方向に変位する。
円筒状の濾過体26は周知の構造体であって既製品において汎用されている。このため、異物除去装置1をより低コストで製造することができる。
【0035】
〔変形例〕
異物除去装置1の態様は、実施例1、2に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例1、2の異物除去装置1によれば、衝突部14は、濾過層18や濾過体26により構成されていたが、燃料を通さない壁体により衝突部14を設け、壁体の周囲に燃料の通路を構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 異物除去装置
2 内燃機関
13 ノズル
14 衝突部
18 濾過層
20 堆積層
26 濾過体
27 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、内燃機関(2)に供給される燃料に含まれる異物を除去する異物除去装置(1)において、
燃料を噴出させるノズル(13)と、このノズル(13)から噴出した燃料が衝突する衝突部(14)とを備え、
この衝突部(14)は、燃料とともに移動してきた異物を停止させて異物の堆積層(20)を形成するとともに、燃料の流れる方向を前記ノズル(13)により形成された方向から曲げることを特徴とする異物除去装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の異物除去装置(1)において、
前記衝突部(14)は、前記ノズル(13)から噴出した燃料の衝突により回転する濾過体(26)であり、
この濾過体(26)の表面の一部に前記堆積層(20)が形成され、
前記表面で前記堆積層(20)が形成される部位は、前記濾過体(26)の回転に応じて変位し、
前記衝突部(14)により流れる方向が曲げられた燃料は、前記堆積層(20)の周囲から前記濾過体(26)に進入することを特徴とする異物除去装置(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の異物除去装置(1)において、
前記濾過体(26)は、円筒状の外周面(27)を有するとともに、燃料の衝突により円筒軸心を中心として回転し、
前記堆積層(20)は前記外周面(27)の一部に形成され、
前記外周面(27)で前記堆積層(20)が形成される部位は、前記濾過体(26)の回転に応じて周方向に変位することを特徴とする異物除去装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の異物除去装置(1)において、
前記衝突部(14)は、所定の厚さを有して平面状に広がる濾過層(18)であり、
前記濾過層(18)の表面の一部に前記堆積層(20)が形成され、
異物は、前記堆積層(20)に積み重なるように捕捉されて燃料から除去され、
前記衝突部(14)により流れる方向が曲げられた燃料は、前記堆積層(20)の周囲から前記濾過層(18)に進入することを特徴とする異物除去装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219623(P2012−219623A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82622(P2011−82622)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】