説明

異種液体混入検知装置および方法

【課題】 装置の設置場所、環境温度、異種液体の混入を検知する液面の状態などの影響を受けにくく高い耐久性を備えた異種液体検知システムを提供する。
【解決手段】 喫水線の下方と上方と間を結ぶ無限軌道で回転する無限軌道式ベルト装置110により液面付近の少量の液分が引き上げられてゆく。液面に生じる波の影響を受けない高さにおいてスクレーパー120の歯121が無限軌道式ベルト装置のベルト面に当接するように配置されている。スクレーパーの歯121によりベルト111から掻き落とされた液体はセンサ130に導かれ、センサ130内の透光性を有する検知プレート132を通過して流出する。検知プレート132を挟むように発光部133と受光部134が直角に取り付けられており、検知プレート132上の液体を透過した光を受光部134で受光する。異種液体の混入によりセンサ130で検出するRGBの色比率が変化し、異種液体の混入を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵目的である液体に対して、異種の液体が混入しているか否かを検知するための異種液体混入検知装置および方法に関する。特に人の目視による常時監視が困難な設備での異種液体の混入検知、例えば、船舶における船舶内燃機の冷却水清水タンクなどへの油等の異種液体の混入検知、工場設備・発電設備等の蒸気を用いた熱交換器の冷却水への油等の異種液体の混入検知、プール・浴場等での水・お湯への異種液体の混入検知、工場排水の清浄度監視などに適用される。
【背景技術】
【0002】
従来、異種液体の混入を検知する異種液体検知システムとして、油膜・漏油検知器が知られている。筐体の構造として、検知液面に対して浮子を浮かべて浮子内にセンサを組み込んで液面を監視するフロート式と、貯蔵タンク等の喫水面近くの壁面に固定子を取り付け、固定子内にセンサを組み込んで液面を監視する固定式とがある。また、異種液体の検知方式として透過式と静電容量式がある。
【0003】
透過式は、水が循環する配管の一側面の対向する位置(上下、左右等)にガラス部を設け、ガラス部を挟んで投光部と受光部を設け、投光部からガラス部を介して光を照射し、液面を通過した透過光を受光部で受け、当該透過光の光度を計測して油分を検知する方法である。
なお、透過式は光を透過させる必要があるため、透過度の低い液体に対する異種液体検知システムには不向きである。例えば、内燃機関等の冷却油等と熱交換する循環水の場合は循環水中に防錆剤が入っているためにもともと透過度が低く、透過式での油分の検知は不向きであると言われている。そこで、船舶における船舶内燃機の冷却水清水タンクなどへの異種液体検知システムなどに用いられることが多い。
【0004】
静電容量式は、液体、粉体、塊体などのあらゆる物質がもっている固有の誘導率を利用した検知方法である。検知液面の表面に漂う物質の静電容量を検出し、その変化を捉える方法である。
なお、静電容量式は、静電容量の変化を捉えるために異種液体の量・厚みがある程度必要となるという問題がある。例えば、異種液体が油の場合では油膜の厚みが1cm以上ないと静電容量の変化を検知できない。つまり、少量の異種液体の検知には不向きな方式であると言える。
【0005】
また、静電容量は、温度、湿度などの影響を受けやすいため、検知方式として静電容量式を用いる場合には温度、湿度等の計測条件を一定にする必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−317293号公報
【特許文献2】特開2001−82095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の異種液体検知システムでは、筐体の構成がフロート式、固定式のいずれであっても、また、異種液体の検知方式が透過式、静電容量式のいずれであっても、検知液面が静止していることが条件となる。もし、検知液面に波紋や流れが存在すると、浮子式の場合は浮子自体が揺れ動いてしまい、固定式の場合も固定子に対する検知液面の水位や状態が安定しないため、検知結果にノイズが混入することとなり、信頼性の高い異種液体の検知ができない。
【0008】
また、上記従来の異種液体検知システムでは、筐体の構成がフロート式、固定式のいずれであっても、また、異種液体の検知方式が透過式、静電容量式のいずれであっても、装置が液面上に設置されなければならないが、検知液面に波紋や流れが存在すると、装置内に液体が浸水してしまい、不具合が生じるおそれがある。
【0009】
また、異種液体の検知方式が静電容量式である場合は、温度、湿度などの影響を受けないように配慮する必要があるが、異種液体を検知する液面の温度や湿度等の計測条件を一定に保つことは容易ではない。
【0010】
このように、上記従来の異種液体検知システムでは、検知液面の静止状態、検知液面の温度、湿度環境などの影響を受けると、検知の信頼性の低下を招くという問題があった。
【0011】
上記問題点に鑑み、本発明は、装置の設置場所、環境温度、異種液体の混入を検知する液面の状態などの影響を受けにくく、検知信頼性が高い異種液体検知システムおよび検知方法を提供することを目的とする。また、本発明は、装置の故障が少なく、高い耐久性を備えた異種液体検知システムおよび検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の異種液体検知システムは、正常液体に対して異種液体の混入を検知する異種液体検知システムであって、検査対象液体の喫水線の下方と上方を結ぶ無限軌道で回転する無限軌道式ベルト装置と、前記無限軌道に沿って移動する前記無限軌道式ベルト装置のベルト面に対して歯が当たるように配置されたスクレーパーと、前記スクレーパーの歯により前記無限軌道式ベルト装置のベルト面から掻き落とされた液体を受け取って透光性を有する検知プレートを通過させて流出させる液体流路と、前記検知プレートを挟んで対向する発光部および受光部とを備え、前記受光部で受光される信号変化を検出して前記正常液体とは異なる前記異種液体の混入を検知するセンサとを備えた異種液体検知システムである。
【0013】
なお、前記スクレーパーの配置位置は、前記無限軌道式ベルト装置の前記無限軌道のうち前記ベルトの移動方向が上方から下方へ移動する経路中で前記液面の喫水線より上の位置であることが好ましく、さらに言えば、前記液面の喫水線より上の位置とは、前記液面に生じ得る波の影響を受けない高さの位置であることが好ましい。
【0014】
上記構成により、無限軌道式ベルト装置が液面の喫水線の下方と上方と間を結ぶ無限軌道で回転するため、液体を貯蔵するタンク等が多少揺れ動いても無限軌道式ベルト装置により確実に、液面付近の液体を表面張力や表面摩擦などで上方に掬い上げることができ、また、スクレーパーにより確実にセンサ内に掻き取ることができ、センサにて高い信頼性の異種液体検知が可能となる。従来の浮子式のセンサや固定式のセンサではタンク等の揺れ動きにより生じてしまう不具合が本発明の異種液体検知システムでは発生しない。
【0015】
次に、無限軌道式ベルト装置のベルトの取り付けに関して、前記無限軌道式ベルト装置のベルトの上方のプーリーは設置箇所の壁面に対して固定され、前記無限軌道式ベルト装置のベルトの下方のプーリーは設置箇所の壁面に対して固定せずに遊離状態として前記ベルトを介して吊り下がった状態とし、前記ベルトに対して前記下方のプーリーの重量のテンションがかかり、前記ベルトが鉛直下方に垂れ下がった状態となるものであることが好ましい。
上記構成により、下方のプーリーを設置箇所の壁面に固定する必要はないために設置が容易であるとともに、ベルトが常に鉛直下方に保たれ、また、ベルトにかかるテンションも略一定となる。
【0016】
センサについては多様なタイプを適用することができる。
例えば、検知プレート上の液体の色比率の変化を検出するタイプのセンサがある。このタイプのセンサは、前記発光部と前記受光部を結ぶ線が前記検知プレートに対して直角に取り付けられる。
このタイプのセンサであれば、船体の揺れや光源のゆらぎなどで受光量の強度変化が起こったとしても光の色比率は変化しないため誤動作が起こる可能性が低い。つまり、ノイズの影響を受けにくい方式であると言える。もし、センサが受光量の強度変化を判定するものであれば、船体の揺れによる光の反射や光源のゆらぎやなどで生じる光の受光量の強度変化を捉えて誤動作が起こる可能性がある。
次に、検知プレート上の前記液体による屈折率の変化を検出するタイプのセンサがある。このタイプのセンサは、前記発光部と前記受光部を結ぶ線が前記検知プレートに対して斜めに取り付けられる。つまり、液体が介在する検知プレートに対して屈折率の変化を捉えやすい角度となるように取り付けておく。
【0017】
次に、本発明の異種液体検知方法は、正常液体に対して異種液体の混入を検知する異種液体検知方法であって、検査対象液体の喫水線の下方と上方を結ぶ無限軌道で回転する無限軌道式ベルト装置により前記液面から液体を引き揚げ、前記無限軌道に沿って移動する前記無限軌道式ベルト装置のベルト面に対して歯が当たるように配置されたスクレーパーにより前記液体を掻き落とし、前記スクレーパーの歯により前記無限軌道式ベルト装置のベルト面から掻き落とされた液体を受け取って透光性を有する検知プレートを通過させ、前記検知プレートを挟んで対向する発光部から発射され受光部で受光される信号変化をセンサにより検出し、前記正常液体とは異なる前記異種液体の混入を検知する異種液体検知方法である。
【0018】
上記方法によれば、無限軌道式ベルト装置が液面の喫水線の下方と上方と間を結ぶ無限軌道で回転するため、液体を貯蔵するタンク等が多少揺れ動いても無限軌道式ベルト装置により確実に、液面付近の液体を表面張力や表面摩擦などで上方に掬い上げることができ、また、スクレーパーにより確実にセンサ内に掻き取ることができ、センサにて高い信頼性の異種液体検知が可能となる。従来の浮子式のセンサや固定式のセンサではタンク等の揺れ動きにより生じてしまう不具合が本発明の異種液体検知方法では発生しない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の異種液体検知システムによれば、無限軌道式ベルト装置が液面の喫水線の下方と上方と間を結ぶ無限軌道で回転するため、液体を貯蔵するタンク等が多少揺れ動いても無限軌道式ベルト装置により確実に、液面付近の液体を表面張力や表面摩擦などで上方に掬い上げることができ、また、スクレーパーにより確実にセンサ内に掻き取ることができ、センサにて高い信頼性の異種液体検知が可能となる。従来の浮子式のセンサや固定式のセンサではタンク等の揺れ動きにより生じてしまう不具合が本発明の異種液体検知システムでは発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の異種液体検知システムの実施例を説明する。
本発明の異種液体検知システムは、例えば、船舶における船舶内燃機の冷却水清水タンク等への油等の異種液体の混入検知、工場設備・発電設備等の蒸気を用いた熱交換器の冷却水への油等の異種液体の混入検知、プール・浴場等での水・お湯への異種液体の混入検知、工場排水の清浄度監視などに適用されるが、ここでは、正常状態で存在する正常液体を水とし、当該水に対して油などの異種液体の混入を検知する例、例えば、船舶における船舶内燃機の冷却水清水タンクへの油等の異種液体の混入を検知する構成例を説明する。なお、本発明はこれらの構成例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の異種液体検知システム100全体の構成を模式的に示した図である。図2は無限軌道式ベルト装置110の構成を示した図、図3はスクレーパー120とセンサ130の構成を示す図である。各図に示した各構成要素の形状は一例であり、本発明の異種液体検知システム100は多様な形状に対応できることは前述の通りである。
【0022】
実施例1の構成例において、異種液体検知システム100は、無限軌道式ベルト装置110、スクレーパー120、センサ130、制御部140を備えた構成となっている。タンク200内には正常液体として水210が貯蔵されている。
【0023】
無限軌道式ベルト装置110は、図1に示すように、液面の喫水線の下方と上方と間を結ぶ無限軌道で回転するようにタンク200内に取り付けられており、ベルト111、プーリー112a,112b、モーター113、その他回転駆動に必要な機構系や制御系を備えたものとなっている。制御系がモーター113を駆動させることによりプーリー112aを回転させ、ベルト111がプーリー112a,112b間を無限軌道にて回転する。
【0024】
例えば、タンク200の内壁面にフランジ(図示せず)が設けられており、モーター113が取付けられている。モーター113の回転軸にプーリー112aが嵌め込まれて固定されている。モーター113には駆動に必要なケーブル類や電子回路基板(図示せず)が設けられ、更に、モーターの回転部はカバー(図示せず)に覆われ、外部からの緩衝に対して保護されている。
【0025】
ここで、ベルト111の長さは、適用するタンク200により適切に選択することが好ましいが、図2に示すように、タンク200の中での通常想定している貯蔵水の一番低い状態の喫水線(Low)よりもプーリー112bが低い位置に取り付けられ、タンク200の中での通常想定している貯蔵水の一番高い状態の喫水線(High)よりもプーリー112aおよびセンサ130が高い位置に取り付けられる必要があるため、プーリー112aとセンサ130下面までの距離をSとすると、プーリー112aとプーリー112bの径Rとすると、ベルト111の長さLは2×(High−Low+S+2R)よりも大きいものとすれば良い。プーリー112a,プーリー112bの各々の取り付け位置も前述のとおり、プーリー112bはタンク200の中での通常想定している貯蔵水の一番低い状態の喫水線(Low)よりも低い位置に取り付け、プーリー112aおよびセンサ130はタンク200の中での通常想定している貯蔵水の一番高い状態の喫水線(High)よりも高い位置に取り付ける。
【0026】
ベルト111の素材は限定されないが、もし、その表面が高い撥水性の素材であれば水や混入した異種液体を上方に上げることができないので、ある程度の親水性や表面摩擦がある素材を選び、表面摩擦がでるように表面加工を施しておくことが好ましい。素材としては、ゴムベルト、金属ベルトなどがある。
【0027】
ベルト111の張り方であるが、たわんでいる状態では後述するようにスクレーパー112による液体の掻き落としには不向きであるため、たわまない程度のテンションにてベルト111を張っておく。ここで、下方のプーリー112bの取り付け方法であるが、以下の2通りの方法がある。
【0028】
第1の方法は、プーリー112bの回転軸を何らかの機構系を介してタンク200の内壁面に機械的に取り付けるものである。この方法によれば、プーリー112bの取り付け位置は固定され、当該位置がタンク200の中での通常想定している貯蔵水の一番低い状態の喫水線(Low)よりも低い位置であれば、異種液体検知システムの稼動において支障は生じない。
【0029】
第2の方法は、プーリー112bの重量とガイド(図示せず)により、ベルト111に対して常に下方向に力がかかる構造とする方法である。つまり、ベルト111には常に下方向の一定のテンションがかけられて鉛直下方に向けてたわむことなく引っ張られている。尚、ベルト111の長さLが上記のように2×(High−Low+S+2R)よりも大きいものに調整されておれば、プーリー112bは常に液体の喫水線の下となり、ベルト111は無限軌道を移動する中で、液面の喫水線近くの液体を表面張力およびベルト111との間の表面摩擦により上に引き上げることができる。
【0030】
次に、スクレーパー120は、図3に示すように、無限軌道式ベルト装置110のベルト111面に対して歯121が当たるように配置されている。スクレーパー120の素材は剛性のある板片であれば良く、例えばプラスチック片で良い。
【0031】
スクレーパー120のベルト111面に対する取り付け位置に関しては、この構成例では、図3に示すように、無限軌道式ベルト装置110のベルト111の無限軌道のうち、ベルト111の移動方向が上方から下方へ移動する経路中でタンク200の貯蔵水の液面の喫水線より上である。このようにベルト111の移動方向が上方から下方へ移動する経路中でスクレーパー120の歯121を当てることで、ベルト111面上にある液体をベルト111面から掻き落として分離しやすくなり、後述するセンサ130に導きやすくなる。
【0032】
ここで、スクレーパー120のベルト111面に対する取り付け角度であるが、図3(b)に示すように、ベルト111面に対して対向するように角度Aをつけて配設することが好ましい。スクレーパー120はベルト111面上にある液体をベルト111面から掻き落とすものであるため、角度Aをつけてスクレーパー120の歯を当てると、直角に歯を当てるよりも掻き落としやすくなるからである。スクレーパー120の歯121により無限軌道式ベルト装置110のベルト111面から掻き落とされた液体は、センサ130に導かれてゆく。
【0033】
次に、センサ130は、導かれてきた液体が、正常液体である水210のみであるか、その他の油などの不純物である異種液体211が混入しているかを判別するものである。
センサ130は、図3に示すように、液体流路131、検知プレート132、発光部133、受光部134、その他電子回路(図示せず)を備えている。
【0034】
液体流路131は、スクレーパー120で掻き落とされた液体を受け取って検知プレート132上を通過させてタンク内に還流させる液体の流路である。
【0035】
検知プレート132は、透光性を有する板材であり、例えば透明なガラスや透明なプラスチックなどで形成されている。液体流路131の一部として組み込まれ、液体流路131を流れる液体が検知プレート132上を通過するように配設されている。
【0036】
発光部133は、白色LED素子などの発光素子を備えたものである。
受光部134は、受光した光のRGB色比率を捉える受光素子を備えたものである。
発光部133および受光部134は、検知プレート132を挟んで対向するように配設され、発光部133から発射された光が受光部134で直接受光されるように調整されている。図3の例では発光部133と受光部134の両者を結ぶ線が検知プレート132に対して直角に取り付けられている。
【0037】
ここで、図3では、発光部133が下、受光部134が上に配設されているが、発光部133が上、受光部134が下に配設されていても良い。発光部133が下、受光部134が上に配設されている場合、作業員が船舶内燃機の冷却水清水タンク内を覗いて異種液体検知システム100を目視する場合に作業員が発光部133の発光を確認しやすいというメリットがある。
【0038】
図4は検知プレート132上の液体による受光部133で受光される色の色比率の変化を検出する原理を説明する図である。
図4(a)は、油などの異種液体が混入せずに水のみの液体210が検知プレート132上に存在している場合に、センサ130で捉えた光のRGBの色比率の例を示す図である。この例では水のみの液体210を透過し、受光部134で受光された光に含まれるR:G:Bの色比率は8:5:3であるとする。なお、検知プレート132が透明なガラスなどの素材であれば受光した光のRGBの色比率には影響を与えない。
【0039】
次に、図4(b)は、油などの異種液体211が混入し、その異種液体211が無限軌道式ベルト装置110により上方へ上げられ、スクレーパー120で掻き落とされ、センサ130の液体流路131から検知プレート132上に異種液体211が導かれた状態である。検知プレート132上には油などの異種液体211のみ、または、水210に加えて異種液体211が混在してその比重に応じて水分の上に油膜などの液膜を張るか、水分の下に油層などの液層を形成している。この状態において、異種液体211を透過し、受光部134で受光された光に含まれるR:G:Bの色比率は8.5:4.5:3であるとする。そのため、センサ130において、図4(a)で受光される光のR:G:Bの色比率は8:5:3であったものが、図4(b)で受光される光のR:G:Bの色比率が8.5:4.5:3に変化していることが検知される。
【0040】
センサ130は、受光される光のRGB色比率が変化したことを検出すれば、検知プレート132上の液体に水210とは異なる異種液体211が混入したと判別できる。
【0041】
次に、本発明の異種液体検知システムの動作を順を追って簡単にまとめておく。
図5は本発明の異種液体検知システムの動作の流れを分かりやすく示す図である。図6は、本発明の異種液体検知システム100の動作の流れを簡単に示したフローチャートである。
【0042】
(動作の流れ1)
[無限軌道式ベルト装置110の駆動、液面付近の液体の引き上げ]
モーター113を作動すると、プーリー112aが回転を開始し、それに伴いベルト111が図7の矢印1の方向に沿って無限軌道の回転を開始する。この時、ベルト111のうちタンク200内の水面付近において下方(水面下)から上方(水面上)へ移動するベルト111により表面張力で水面の液分がベルト面にのったまま矢印方向へ引き上げられる。
【0043】
(動作の流れ2)
[無限軌道式ベルト装置110のベルト移動にのった液体の移動]
無限軌道式ベルト装置110のベルト移動は無限軌道で回転を続け、タンク200内の水面付近において引き上げられた液分がベルト面にのったまま上方への移動を続ける。やがて無限軌道式ベルト装置110のベルト移動はプーリー112aにより折り返され、ベルト111の移動方向が矢印2の下向き方向へ反転する。
【0044】
(動作の流れ3)
[スクレーパー120による液分の掻き落とし]
無限軌道式ベルト装置110のベルト移動を続けるとやがてスクレーパー120が配設されている箇所に至る。当該個所においてスクレーパー120の歯121がベルト111の表面と当接しており、表面張力によりベルト面に残留している液分を掻き落とす。
液分はベルト111からスクレーパー120を介して矢印3の方向に流れてゆく。
【0045】
(動作の流れ4)
[センサ130における液分の屈折率の変化検出]
液分が矢印3の流れに沿って移動すると、液分は検知プレート132上を通過する。検知プレート132に対して発光部133から光が発射されており、当該照射光は、検知プレート132および液分を介して受光部134において受光される。この際、水210とは異なる異種液体211が検知プレート132上を通過すると、受光部132で受光される光のRGBの色比率が変化し、センサ130においてRGBの色比率の変化が検出される。
【0046】
(動作の流れ5)
[センサ130における異種液体混入の有無の判別、信号出力]
センサ130は、受光された光のRGBの色比率の変化を検出しなければ異種液体211の混入はないと判別し、受光された光のRGBの色比率の変化を検出すると異種液体211の混入があったものと判別する。その後、異種液体検出システム100は制御部(図示せず)から異種液体混入判別信号を出力する。
【0047】
(動作の流れ6)
[センサ130に取り込んだ液分の循環]
センサ130に取り込んで検知プレート132面で異種液体の混入検知に用いられた液分はそのまま矢印4の流れに沿ってタンク200内の水面へ戻される。
【実施例2】
【0048】
実施例2の異種液体検知システム100aとして、センサ部130aで用いるセンサとして光の屈折率の変化を検出するタイプのセンサを用いた構成例を示す。
実施例2の異種液体検知システム100aの各構成要素は、受光部134aを除き、実施例1の異種液体検知システム100の各構成要素と同様で良い。
【0049】
受光部134aは、受光素子を複数並べ、発光素子から発射された光の屈折率が変化しても光を捉えることができる受光素子アレイを形成した構成となっている。受光素子アレイとなっていると屈折率の変化による光線のずれが検出しやすくなる。
発光部133および受光部134aは、検知プレート132を挟んで対向するように配設され、発光部133から発射された光が受光部134aで直接受光されるように調整されている。
【0050】
図7は検知プレート132上の液体による屈折率の変化を検出する原理を説明する図である。
ここで、図7に示すように、発光部133と受光部134aは、両者を結ぶ線が検知プレート132に対して斜めに取り付けられている。これは、本構成において、センサ130aが、異種液体の混入の判別として、検知プレート132上の液体による屈折率の変化を検出して判別するものであるからである。
【0051】
図7(a)は、油などの異種液体が混入せずに水のみの液体210が検知プレート132上に存在している場合の光の屈折の様子を示す図である。センサ130aは、デフォルトの初期設定として、発光部133から発射された光が図7(a)のように屈折して受光部134aに受光されるものと調整されている。検知プレートの素材(ガラスやプラスチック)に応じた屈折率も加味して調整しておくことが好ましい。ここでは受光部134aには受光素子(1)から受光素子(7)までが並べられているものとする。
図7(a)に示すように、発光部133から発射された光は正常液体である水210の水面に対して斜めに当たって屈折し、境界面で角度が変化して受光部134aの所定位置に受光される。この例では、受光素子(3)に受光されている。
【0052】
次に、図7(b)は、油などの異種液体211が混入し、その異種液体211が無限軌道式ベルト装置110により上方へ上げられ、スクレーパー120で掻き落とされ、センサ130aの液体流路131から検知プレート132上に異種液体211が導かれた状態である。検知プレート132上には油などの異種液体211のみ、または、水210に加えて異種液体211が混在してその比重に応じて水分の上に油膜などの液膜を張るか、水分の下に油層などの液層を形成している。この状態において、検知プレート132上の異種液体211は水210のみの屈折率とは異なる屈折率を示すようになる。そのため、発光部133から発射された光は液面に対して斜めに当たって屈折し、その境界面で角度が変化して受光部134aの所定位置に受光される。そのため、図7(b)に示すように、図7(a)とは屈折する角度が変化し、この例では、光線がより深い方向に屈折する。ここで、受光部134aが複数の受光素子を持つ受光素子アレイであれば、センサ130aは、図7(b)では、図7(a)で受光していた受光素子(3)とは異なる受光素子(4)によって光線が受光されたことを検出することができる。
【0053】
センサ130はa、光線が受光される受光素子が変化したことを検出すれば(この例では受光素子(3)から受光素子(4)へ変化した)、検知プレート132上の液体に水210とは異なる異種液体211が混入したと判別できる。
センサ部130aにより異種液体211の混入が検知された後の動作は、実施例1と同様で良い。
【0054】
以上、実施例において説明した本発明の異種液体検知システムによれば、無限軌道式ベルトにより液面近くの少量の液分を確実に引き上げ、液面に多少の波などの揺らぎがあっても信頼性の高い異種液体混入検知を行うことができる。
また、装置の設置場所、環境温度、異種液体の混入を検知する液面の状態などの影響を受けにくく、検知信頼性が高く、装置の故障が少なく、高い耐久性を備えた異種液体検知システムおよび検知方法を提供することができる。
【0055】
以上、本発明の異種液体検知システムの構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の異種液体検知システムは、人の目視による常時監視が困難な設備での異種液体の混入検知、例えば、船舶における船舶内燃機の冷却水清水タンクなどへの油等の異種液体の混入検知、工場設備・発電設備等の蒸気を用いた熱交換器の冷却水への油等の異種液体の混入検知、プール・浴場等での水・お湯への異種液体の混入検知、工場排水の清浄度監視などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1にかかる本発明の異種液体検知システム100全体の構成を模式的に示した図
【図2】無限軌道式ベルト装置110の構成を示した図
【図3】スクレーパー120とセンサ130の構成を示した図
【図4】検知プレート132上の液体による色比率の変化を検出する原理を説明する図
【図5】本発明の異種液体検知システムの動作の流れを分かりやすく示す図
【図6】異種液体検知システム100の動作の流れを簡単に示したフローチャート
【図7】実施例2にかかるセンサ部130aにおける検知プレート132上の液体による屈折率の変化を検出する原理を説明する図
【符号の説明】
【0058】
100 異種液体検知システム
110 無限軌道式ベルト装置
111 ベルト
120 スクレーパー
121 歯
130 センサ
131 液体流路
132 検知プレート
133 発光部
134 受光部
200 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常液体に対して異種液体の混入を検知する異種液体検知システムであって、
検査対象液体の喫水線の下方と上方を結ぶ無限軌道で回転する無限軌道式ベルト装置と、
前記無限軌道に沿って移動する前記無限軌道式ベルト装置のベルト面に対して歯が当たるように配置されたスクレーパーと、
前記スクレーパーの歯により前記無限軌道式ベルト装置のベルト面から掻き落とされた液体を受け取って透光性を有する検知プレートを通過させて流出させる液体流路と、前記検知プレートを挟んで対向する発光部および受光部とを備え、前記受光部で受光される信号変化を検出して前記正常液体とは異なる前記異種液体の混入を検知するセンサとを備えた異種液体検知システム。
【請求項2】
前記スクレーパーの配置位置が、前記無限軌道式ベルト装置の前記無限軌道のうち前記ベルトの移動方向が上方から下方へ移動する経路中で前記検査対象液体の喫水線より上の位置である請求項1に記載の異種液体検知システム。
【請求項3】
前記検査対象液体の喫水線より上の位置が、前記液面に生じ得る波の影響を受けない高さの位置である請求項2に記載の異種液体検知システム。
【請求項4】
前記無限軌道式ベルト装置のベルトの上方のプーリーは設置箇所の壁面に対して固定され、前記無限軌道式ベルト装置のベルトの下方のプーリーは設置箇所の壁面に対して固定せずに遊離状態として前記ベルトを介して吊り下がった状態とし、前記ベルトに対して前記下方のプーリーの重量のテンションがかかり、前記ベルトが鉛直下方に垂れ下がった状態とした請求項1から3のいずれか1項に記載の異種液体検知システム。
【請求項5】
前記発光部と前記受光部を結ぶ線が前記検知プレートに対して直角に取り付けられており、前記センサが、前記検知プレート上の前記液体の色比率の変化を検出するものである請求項1から4のいずれか1項に記載の異種液体検知システム。
【請求項6】
前記発光部と前記受光部を結ぶ線が前記検知プレートに対して斜めに取り付けられており、前記センサが、前記検知プレート上の前記液体による屈折率の変化を検出するものである請求項1から4のいずれか1項に記載の異種液体検知システム。
【請求項7】
正常液体に対して異種液体の混入を検知する異種液体検知方法であって、
検査対象液体の喫水線の下方と上方を結ぶ無限軌道で回転する無限軌道式ベルト装置により前記液面から液体を引き揚げ、
前記無限軌道に沿って移動する前記無限軌道式ベルト装置のベルト面に対して歯が当たるように配置されたスクレーパーにより前記液体を掻き落とし、
前記スクレーパーの歯により前記無限軌道式ベルト装置のベルト面から掻き落とされた液体を受け取って透光性を有する検知プレートを通過させ、前記検知プレートを挟んで対向する発光部から発射され受光部で受光される信号変化をセンサにより検出し、前記正常液体とは異なる前記異種液体の混入を検知する異種液体検知方法。
【請求項8】
前記発光部と前記受光部を結ぶ線が前記検知プレートに対して直角に取り付けられており、前記センサが、前記検知プレート上の前記液体の色比率の変化を検出するものである請求項7に記載の異種液体検知方法。
【請求項9】
前記発光部と前記受光部を結ぶ線が前記検知プレートに対して斜めに取り付けられており、前記センサが、前記検知プレート上の前記液体による屈折率の変化を検出するものである請求項7に記載の異種液体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−220879(P2011−220879A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91200(P2010−91200)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(591114733)バルコエンヂニヤリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】