説明

異音ピックアップツール

【課題】特別な付加装置を必要とせず,実際に異音の測定に使用するツールを用いて,通常環境で短時間,簡単,正確に,複数の測定ツールのピックアップ感度を均一に設定できるとともに,センサー単体で,それぞれの感度の確認を行う必要がないため,異音測定作業を大幅に簡易化する。
【解決手段】増幅回路に利得設定機能を備え,かつ,増幅回路の出力レベルを表示する機能を備える基準ツール1と,増幅回路に利得設定機能を備える測定ツール3で構成し,被測定機器18にそれぞれのセンサー2、4を近接装着し,基準ツールのセンサー2によりピックアップされる異音や周囲騒音の増幅回路出力レベルを,増幅回路の飽和レベルの1/nに設定して後に,基準ツールと測定ツールのセンサーがそれぞれピックアップする異音や周囲騒音の高速フーリエ変換出力を差異分析し,測定ツールの増幅回路の利得設定により,差異を概略0に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
増幅回路に利得設定機能を備え,かつ,増幅回路の出力レベルを表示する機能を備える基準ツールと,増幅回路に利得設定機能を備える測定ツールで構成し,被測定機器にそれぞれのセンサーを近接させて装着し,基準ツールのセンサーによりピックアップされる異音や周囲騒音の増幅回路出力レベルを,増幅回路の飽和レベルの1/nに利得設定して後に,基準ツールと測定ツールのセンサーがそれぞれピックアップする異音や周囲騒音の高速フーリエ変換出力を差異分析し,測定ツールの増幅回路の利得設定機能により,差異を概略0に設定とすることにより,特別な機能を付加することなく,通常環境で,短時間,簡単,正確に測定ツールのピックアップ感度を標準ツールの設定感度に適合させることが出来る,異音ピックアップツール。
【背景技術】
【0002】
電気機器の動作が正常であるか否かの判断の一つとして,動作時の異音検出が種々実用化されている。電気機器では,ハードディスク,コンパクトディスク,ファン,ソレノイド,電源などから発する異音や,磁気テープ,用紙走行などで生ずる擦れによる異音など数多くの異音が発生し,許容範囲を越えた場合は極めて不快であるとともに,機器に何らかの不具合が発生している場合が多い。発生してる異音が正常な範囲であるか否かは,熟練した作業者が直接耳で聞いて判断する場合が多いが,近年では,周囲騒音の影響を避けるため,複数の加速度センサー,振動センサー,マイクなどのセンサーを用いてピツクアップされるそれぞれの信号をA/D変換,高速フーリエ変換して,その相関を分析,処理する方法が各種実用化されているが,複数のセンサーを使用する方法では,全てのセンサーのピックアップ感度が揃っていることが大前提となるが,感度を合わせるには,付加装置を用いたり,かなり複雑な設定が必要なため,特別な機能を付加することなく,通常環境で,短時間,簡単,正確に設定できる異音検出手段が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気機器などの動作時の異音検出手段として,複数の加速度センサー,振動センサー,マイクなどのセンサーを用いてピツクアップされるそれぞれの信号をA/D変換,高速フーリエ変換して,その相関を分析,処理して周囲騒音による影響を避けつつ,精度の高い測定を行う方法が各種提案されているが,複数のセンサーを使用する方法では,全てのセンサーのピックアップ感度が均一であることが大前提であり,感度がばらついていると,大きな測定誤差を発生させるため,如何にして,特別な付加装置を用いることなく,通常環境で,短時間,簡単,正確に感度を揃えられるかが大きな課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
増幅回路に利得設定機能を備え,かつ,増幅回路の出力レベルを表示する機能を備える基準ツールと,増幅回路に利得設定機能を備える測定ツールで構成し,被測定機器にそれぞれのセンサーを近接装着し,基準ツールのセンサーによりピックアップされる異音や周囲騒音の増幅回路出力レベルを,増幅回路の飽和レベルの1/nに設定して後に,基準ツールと測定ツールのセンサーがそれぞれピックアップする異音や周囲騒音の高速フーリエ変換出力を差異分析し,測定ツールの増幅回路の利得設定により,差異を概略0に設定する。
【発明の効果】
【0005】
特別な付加装置を必要とせず,実際に異音の測定に使用するツールを用いて,通常環境で短時間,簡単,正確に,複数の測定ツールのピックアップ感度を均一に設定できるとともに,センサー単体で,それぞれの感度の確認を行う必要がないため,異音測定作業が大幅に簡易化される大きなメリットを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明による異音ピックアップツールを被測定対象18に装着した概念図を示す。1は基準ツール,2は基準ツールのセンサー,3は測定ツール,4は測定ツールのセンサー,7は高速フーリエ変換(FFT)出力を差異分析する演算処理回路を示す。基準ツールセンサー2と測定ツールのセンサー4は相互に近接した位置で被測定対象18に装着され,ほぼ同一の異音,周囲騒音をピックアップする。センサーは硬質金属で形成され,内面がエクスポネンシャルカーブを描くドーム状の頂上部にマイク5,6を備え,ドーム内の空気を伝わる異音,周囲騒音をピックアップする。
【0007】
図2は基準ツール1,測定ツール3で構成する異音ピックアップツールの概略回路構成を示す。基準ツールは,複数の測定ツールの感度を均一に設定する基準としての役割を備えている。センサー5によるピックアップ信号は,増幅回路8で所要増幅して後にA/D変換10,FFT変換11を行うが,増幅回路8の出力信号が飽和した場合は,予期せぬ高調波が発生するなど,以降の処理結果が意味を成さなくなるため,増幅回路利得は可能な限り飽和しない範囲に設定する必要がある。このため,通常の異音,周囲騒音発生時の増幅回路出力は,利得設定機能のボリューム9により,飽和レベルの1/2〜1/4程度に設定する。このような値に設定することにより,異音が2〜4倍大きくなった場合でも飽和することが無く,良好な分析が可能である。また,基準ツールの増幅回路の利得を適切に設定するために,A/D変換した出力を表示制御回路12によりピーク値をホールドしたり,所定レベル以上の平均値を算出するなどして,LCDなどの表示ツール13で視認確認する機能が必要である。
【0008】
このようにして最適な利得出力に設定された基準ツールと,未設定の測定ツールのセンサー信号をそれぞれ,A/D変換,FFT変換して,演算処理回路7で相互の差異を評価し,差異が0となるように,測定ツール3の利得設定機能のボリューム15を設定する。差異が0であることは,標準ツールの増幅回路8の出力レベルと,測定ツールの増幅回路14の出力レベルが同一であることを示しており,このようにして複数の測定ツールを特別な付加装置を用いることなく,通常環境で,短時間,簡単,正確にピックアップ感度を揃えることが出来るとともに,センサー感度をそれぞれ単体で確認する必要は無く,異音検出のための作業が極めて簡易化される。
【実施例】
【0009】
内面がエクスポネンシャルカーブを描くドーム形状のセンサーは,音の反射率が高い,高比重な真鍮で構成し,高さ;3cm,底面径;Φ3cm,厚さ2mmで形成し,コンデンサーマイクを使用した。初期設定時には,基準ツールと測定ツールとを近接して,被測定対象に取り付けることにより,両方で同等な異音,周囲騒音をピックアップする。センサーとしては,マイクに限定されず,振動センサーや加速度センサーでも良く,ドーム形状の材質はステンレスなどの高比重材であれば良い。また,FFT変換や演算処理,表示ツールなどは個別にハード構成せずパソコンを利用しても良いとともに,初期設定後に標準ツールを測定ツールとして利用できるとともに,標準ツールと全く同じ構成のツールを測定ツールとして使用することも出来るなど,各種の機能,構成,ディメンジョン,材質などに関しては,本実施例に限定されず,本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば,種々変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0010】
増幅回路に利得設定機能を備え,かつ,増幅回路の出力レベルを表示する機能を備える基準ツールと,増幅回路に利得設定機能を備える測定ツールで構成し,被測定機器にそれぞれのセンサーを近接して装着し,基準ツールのセンサーによりピックアップされる異音や周囲騒音の増幅回路出力レベルを,増幅回路の飽和レベルの1/nに設定して後に,基準ツールと測定ツールのセンサーがそれぞれピックアップする異音や周囲騒音の高速フーリエ変換出力を差異分析し,測定ツールの増幅回路の利得設定により,差異を概略0に設定することによりピックアップ感度を標準ツールの設定感度に適合させることが出来る,異音ピックアップツール。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の異音ピックアップツールを被測定対象に装着した概念図を示す。
【図2】異音ピックアップツールの概略回路構成図を示す。
【符号の説明】
1 基準ツール 11 FFT変換回路
2 センサー 12 表示制御回路
3 測定ツール 13 表示器
4 センサー 14 増幅回路
5 マイク 15 ボリューム
6 マイク 16 A/D変換回路
7 演算処理回路 17 FFT変換回路
8 増幅回路 18 被測定対象
9 ボリューム
10 A/D変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクなどのセンサーにより被測定機器の異音や周囲騒音をピックアップし,増幅回路により所要増幅してA/D変換によりデジタル信号化し,高速フーリエ変換により周波数スペクトラム変換して分析処理する異音ツールに関して,増幅回路に利得設定機能を備え,かつ,増幅回路の出力レベルを表示する機能を備える基準ツールと,増幅回路に利得設定機能を備える測定ツールで構成し,被測定機器にそれぞれのセンサーを近接させて装着し,基準ツールのセンサーによりピックアップされる異音や周囲騒音の増幅回路出力レベルを,増幅回路の利得設定機能により,飽和レベルの1/nに設定して後に,基準ツールと測定ツールのセンサーがそれぞれピックアップする異音や周囲騒音の高速フーリエ変換出力を差異分析し,測定ツールの増幅回路の利得設定機能により,差異を概略0に設定することにより,特別な機能を付加することなく,通常環境で,短時間,簡単,正確に測定ツールのピックアップ感度を標準ツールの設定感度に適合させることが出来る,異音ピックアップツール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−38894(P2010−38894A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220470(P2008−220470)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(396014636)株式会社ワイ・イー・シー (13)
【出願人】(507160344)株式会社メイルリバー (6)
【Fターム(参考)】