説明

疲労寿命評価用試験片及びこれを用いた疲労寿命評価方法

【課題】配管内面の溶接部に確実にき裂を発生させて、配管の疲労寿命を評価することができる試験片及び疲労寿命評価方法を提供する。
【解決手段】同一形状の2つの金属配管部2と金属配管部2の間に溶接部3とを有する疲労寿命評価用試験片1が、配管から切り出される。試験片1の配管内側に対応する面は、配管内側と同一形状とされる。試験片1の配管外側に対応する面は、溶接部3と金属配管部2との接続部6で連続的な曲線を有する。試験片1の中心軸Cから溶接部3の配管内側及び外側に対応する各頂点までの距離の比率が1以上とされる。上記試験片1は、疲労寿命評価装置の負荷中心軸が中心軸Cより配管内側面の方向に位置するように、負荷中心軸からずらして配置される。上記のように配置された試験片1に引張荷重及び圧縮荷重が繰り返し負荷されて、溶接部3または接続部4に疲労亀裂が発生するまでの繰り返し回数が取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を高温高圧の水が流通し、溶接部を有する配管の疲労寿命を評価するための試験片、及びこれを用いた疲労寿命評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電設備では、一次系冷却水用配管の内部を高温かつ高圧の水が流通する。図5に示されるように、一次系冷却水用配管などの配管50は、主にステンレスとされる2つの金属配管51が、主にステンレスとされる溶接材料によって溶接されて構成される。図5において、X面は配管内側の面であり、Y面は配管外側の面である。配管の内側及び外側のいずれも、金属配管51と溶接部52との接続部63において、金属配管51の面と溶接部52の面とは不連続になっている。
【0003】
配管内部に高温高圧の水が流通すると、配管外部環境との温度差に起因して、配管の内側及び外側に引張応力及び圧縮応力が繰り返し付与される。繰り返し応力が付与されることによって、配管内面の溶接部52(溶接ビード)や接続部63に疲労き裂が発生する。このため、保守管理の観点から配管の疲労寿命を正確に評価することが重要となっている。
【0004】
一般に、溶接部の疲労き裂による疲労を評価する際には、溶接部を含む対象部材や製品から丸棒形状に切り出した試験片が使用される。曲げやねじりなどの特別な負荷が要求されない場合は、丸棒形状の試験片の長さ方向の軸を試験機軸(主軸)に一致させ、試験片に対して試験機軸方向に引張及び圧縮の負荷を繰り返し付与する単軸負荷型の疲労試験が実施される。疲労試験で得られる試験片の軸方向の長さの変化量等から試験片に付与される引張応力及び圧縮応力の大きさが求められ、所定の応力下で疲労亀裂が発生した時の応力繰り返し回数に基づいて、溶接部を含む部材の疲労寿命が評価される。
【0005】
特許文献1は、水環境中で試験片の熱疲労を測定する試験機を開示する。特許文献1の試験機を用いた試験では、試験片表面に高温純水と低温純水を交互に噴射させるとともに、試験片の両端を荷重フレームに固定して熱疲労試験を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−231435号公報(特許請求の範囲、発明の利用分野)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な疲労寿命評価装置で計測可能な試験片の大きさは、原子力発電設備に使用される配管よりも極めて小さい。つまり、配管形状を維持したままで疲労試験を実施することは、試験装置の都合上現実的に不可能である。
配管から溶接部を含む短冊状の試験片を切り出せば、一般的な疲労寿命評価装置での評価が可能となる。しかし、このような試験片では、図5のように接続部63においては金属配管51と溶接部52とは不連続に接続されている。このため、例えば配管外面の肉盛り近傍など評価対象ではない部分に応力が集中してき裂が発生する場合があり、評価対象である配管内面の溶接部52や接続部63に亀裂を発生させることができない。このため、配管の疲労寿命を正確に評価できないことが問題となっていた。
【0008】
本発明は、配管内面の溶接部に確実にき裂を発生させて、配管の疲労寿命を評価することが可能な疲労寿命評価用試験片及び疲労寿命評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、配管から切り出され、該配管の疲労寿命を評価するための試験片であって、同一形状の2つの金属配管部と該2つの金属配管部との間に挟まれた溶接部とを有し、前記2つの金属配管部は、共通する1つの中心軸を有するように配置され、前記溶接部の前記配管の外側に対応する面、及び、前記溶接部の前記配管の内側に対応する面のそれぞれが凸状になっており、前記配管の内側に対応する面において、前記溶接部及び該溶接部近傍に位置する前記金属配管部は、前記配管の内側の面と同一形状であり、前記配管の外側に対応する面において、前記溶接部と前記金属配管部との各々の接続部は、前記溶接部の面と前記金属配管部の面とで連続的な曲線を有し、前記溶接部の前記配管の内側に対応する側の前記凸部の頂点と前記中心軸との距離に対する、前記溶接部の前記配管の外側に対応する側の前記凸部の頂点と前記中心軸との距離の比率が、1以上である疲労寿命評価用試験片を提供する。
【0010】
上記発明において、前記配管の外側に対応する側の前記凸部が加工されて、前記比率が1以上とされていることが好ましい。
【0011】
本発明の疲労寿命評価用試験片は、溶接部を含み、溶接部を挟んで対称となる形状に配管から切り出される。溶接部及び溶接部近傍に位置する金属配管部は、配管の内側に対応する面に機械加工が施されず、切り出す前の配管の内側内壁と同一形状の凸形状を有する。一方、配管外側の対応する面には機械加工が施され、上述の接続部の形状を有し、試験片中心軸から溶接部の頂点までの距離の比率が上述の範囲を有する物とされる。
本発明の疲労寿命評価用試験片は、上記の形状とすることにより、配管内側に対応する溶接部及び接続部において応力を集中させることができる。このため、配管内側の溶接部及び接続部に疲労き裂を確実に発生させることができる。
【0012】
また本発明は、上記の疲労寿命評価用試験片を用いて、前記配管の疲労寿命を評価する方法であって、疲労寿命評価装置の負荷中心軸が、前記試験片の中心軸よりも配管の内側に対応する方向に位置するように、前記試験片が前記疲労寿命評価装置に設置される工程と、前記疲労寿命評価装置に設置された前記試験片が、前記配管の使用環境において前記配管の内側を流通する水と略同一とされる温度及び圧力の水に浸漬される工程と、前記試験片が前記水に浸漬された状態で、所定の荷重で前記試験片に引張応力及び圧縮応力の組み合わせを繰り返し付与する工程と、前記溶接部に疲労き裂が発生した時の前記引張応力及び圧縮応力の組み合わせを前記試験片に付与した回数を取得し、前記回数を前記配管の疲労寿命と見なす工程と、を含む疲労寿命評価方法を提供する。
【0013】
上述の形状を有する疲労寿命評価用試験片を、試験片の中心軸が疲労寿命評価装置の負荷中心軸からずれるように疲労寿命評価装置に設置して、疲労寿命試験を実施する。こうすることにより、試験片に曲げモーメントによる曲げ応力を付与する。上述した負荷中心軸と試験片の中心軸との位置関係にすることにより、配管の内側に対応する面の溶接部に付与される曲げ応力を、配管外側に対応する面の溶接部に付与される曲げ応力よりも大きくすることができる。従って、試験片の配管内側に対応する溶接部及び接続部において疲労き裂を確実に発生させることができる。このため、配管の疲労寿命を正確に評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配管内側に対応する側の溶接部に確実に疲労き裂を発生させることができる。このため、配管の疲労寿命を正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】疲労寿命評価用試験片の形状の一例を示す概略図である。
【図2】疲労寿命測定装置の概略図である。
【図3】試験片が疲労寿命測定装置に設置される状態を表す概略図である。
【図4】試験片に作用する荷重モードを説明する概略図である。
【図5】溶接部を有する配管の水流通方向の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本実施形態に係る疲労寿命評価用試験片の形状の一例を示す概略図である。図1(a)は、試験片の正面図である。図1(b)は、図1(a)の試験片長辺端部(符号7)側から見た側面図である。図1(c)は、図1(a)のA−A断面概略図である。
【0017】
試験片1は、原子力発電設備の一次系冷却水配管など、内部を高温高圧水が流通する配管から切り出される。試験片1は、配管の溶接部を含むように切り出され、図1に例示される形状に加工される。
【0018】
試験片1は、2つの金属配管部2と、金属配管部2の間に挟まれる溶接部3で構成される。金属配管部2は、例えばステンレスとされる。溶接部3は、例えばステンレスとされる。2つの金属配管部2は同一形状とされる。なお、金属配管部2の形状は図1(a)に示される形状に限定されない。
【0019】
図1(b)及び図1(c)において、符号Xは配管の内側に対応する面を指し、符号Yは配管の外側に対応する面を指す。
試験片1のX面において、溶接部3は凸形状となっている。X面の溶接部3及び溶接部3近傍の金属配管部2は、配管内側形状と同一となっている。図1(c)に示すように、試験片1のX面における溶接部3と金属配管部2との接続部6は、溶接部3の面と金属配管部2の面とが不連続となっている。
金属配管部2のX面の溶接部3から離れた場所は、機械加工が施されていても良い。例えば図1(b)のように、金属配管部2のX面の短辺両端部4は切欠き加工されていても良い。
【0020】
試験片1のY面において、溶接部3は凸形状となっている。溶接部3から離れた場所の金属配管部2のY面は、少なくとも試験片1の中央部で平坦になるようになるように機械加工される。図1(b)では、溶接部3から離れた場所で金属配管部2のY面の短辺両端部5は切欠き加工されているが、機械加工せずに配管外側の形状と同一とされていても良い。
【0021】
試験片1のY面における溶接部3と金属配管部2との接続部6は、溶接部3の面と金属配管部2の面とで連続的な曲線となるように機械加工される。例えば、接続部6の表面は、曲率半径R=20mm以上の曲線に機械加工される。
【0022】
図1(c)に示すように、2つの金属配管部2は、紙面横方向の中心線を一致させるように接続される。この中心線が、試験片1の中心軸Cとされる。試験片1の中心軸Cからの溶接部3のX面の頂点Pxの距離をdxとし、中心軸Cからの溶接部3のY面の頂点Pyの距離をdyとしたときに、dy/dxが1以上とされる。なお、dy/dx>1である場合、溶接部3の中心線(中心軸Cに対して垂直方向において、X面からの距離とY面からの距離とが同じになる点を結んだ線)は、Y面側に湾曲した形状となる。dy/dx=1であると、図1(c)のように、溶接部3の中心線は試験片1の中心軸Cと一致するので、特に好ましい。
【0023】
本実施形態では、Y面における溶接部3が凸形状を有し、且つ、所定のdy/dx及び曲率半径Rを満たすように、溶接部3のY面及び接続部が適宜機械加工される。
【0024】
図1の試験片を用いて、配管の疲労寿命を評価する方法を以下で説明する。
図2は、疲労寿命測定装置の概略図である。疲労寿命測定装置10は、上部治具11、下部治具12、及び、ロードフレーム13を備える。試験片1は、上部治具11と下部治具との間に固定されている。
【0025】
上部治具11の上部は、ロードフレーム13に固定されている。
下部治具12は、軸体14に接続されている。軸体14の下端に動力部15が接続される。動力部15は、下方のロードフレーム13内に収納されている。動力部15はアクチュエータ16及びサーボバルブ17で構成されている。アクチュエータ16の動力源として油圧ユニット18がサーボバルブ17に接続される。サーボバルブ17は制御部19に接続される。
【0026】
上部治具11及び下部治具12は、圧力容器20内に収納される。圧力容器20の下部には、水供給配管21及び水排出配管22が設置される。
【0027】
下部治具12と動力部15との間で、軸体14に負荷制御部23が設置される。負荷制御部23は制御部19に接続される。制御部19は例えばコンピュータとされる。
【0028】
試験片1の金属配管部2にX面及びY面の変位量を測定するための変位計24が設置される。変位計24の2つの探針は、溶接部3を挟むように金属配管部に接触させられる。
【0029】
図3は、試験片が疲労寿命測定装置に設置される状態を表す概略図である。試験片1は、図1に示される長辺両端部7(金属配管部2)を上部治具11及び下部治具12で固定されることで、疲労寿命測定装置10に設置される。溶接部3の中心と上部治具11との距離は、溶接部3の中心と下部治具12との距離と同一とされる。
【0030】
試験片1の中心軸Cは、疲労寿命測定装置10の負荷中心軸Lに対してずらして配置される。負荷中心軸Lは、試験片1の中心軸CよりもX面側(配管の内側に対応する面側)に位置している。負荷中心軸Lは試験片1を貫いていても良いし、試験片1のX面の外側に位置していても良い。なお、試験片1の中心軸Cと負荷中心軸Lとの距離は、治具11,12に試験片1を確実に固定でき試験片1が外れない程度の値とされる。
【0031】
配管の疲労寿命の評価は、以下の工程で実施される。
試験片1が図3のように疲労寿命測定装置10に設置され、変位計24が試験片1に取り付けられる。
その後、圧力容器20内に水供給配管21から水が供給される。試験片1全体は、水に浸漬される。圧力容器20内部の水の温度及び圧力は、発電設備などに配管が使用された場合に配管内部を流通する高温高圧水と略同一とされる。具体的に、水の温度は、23℃〜325℃とされる。圧力容器20内は水で充填されており、圧力は0.1MPa〜16MPaとされる。圧力容器20内の水は、水排出配管22から圧力容器20外に排出される。水供給配管21及び水排出配管22には、それぞれバルブ(不図示)が設置されており、バルブおよび循環ポンプにより圧力容器20内部の圧力が調整されている。測定中、圧力容器20内の水の温度及び圧力が上記範囲に保持されながら、圧力容器20内への水の供給及び圧力容器20外への水の排出が継続される。
【0032】
試験片1が水に浸漬された後、制御部19はサーボバルブ17に制御信号を送信する。制御信号を受信したサーボバルブ17は、油圧ユニット18を作動させ、油圧ユニット18を介してアクチュエータ16を作動させる。アクチュエータ16により、軸体14が所定の周期及び所定の変位量で上下方向に移動させられる。アクチュエータ16は、軸体の移動量Dを変位信号として制御部19に送信する。
【0033】
軸体14の移動により、下部治具12が上下に変位させられる。下部治具12が変位することにより、試験片1に引張荷重及び圧縮荷重が繰り返し負荷される。引張荷重及び圧縮荷重が負荷される周期は軸体の移動周期と同一である。
変位計24は、試験片1のX面及びY面のそれぞれの変位量Ex,Eyを計測する。変位計24は、X面及びY面の変位量Ex,Eyをひずみ信号として制御部19に送信する。
負荷制御部23は、試験片に付与される荷重量Pを荷重信号として制御部19に送信する。
【0034】
制御部19は、軸体の移動量D、変位量Ex,Ey、及び荷重量Pを取得する。制御部19は、変位量Ex,Eyが所定値になるように、軸体の移動量Dを制御して、荷重量Pを所定値に調整する。
【0035】
下部治具12の変位により試験片1に荷重が繰り返し付与されることにより、試験片1に引張と圧縮とが繰り返し付与される。制御部19は、1回の引張及び1回の圧縮を1つの繰り返し回数として、試験片1に付与された引張及び圧縮の繰り返し回数を計測する。
【0036】
図4は、試験片に作用する荷重モードを説明する概略図である。図4において、「+」はX面またはY面の伸長、「−」はX面またはY面の圧縮を表す。
本実施形態において、試験片1の溶接部3には、軸力による引張応力及び圧縮応力σ、曲げモーメントによる引張応力及び圧縮応力(曲げ応力)σが付与される。試験片1の溶接部3に付与される引張応力及び圧縮応力σは、σ=σ+σで表される。
【0037】
図4のA欄に示すように、試験片1が引っ張られると、溶接部3のX面側及びY面側はともに中心軸Cの方向へ伸長する。試験片1が圧縮されると、溶接部3のX面側及びY面側はともに中心軸Cの方向に収縮する。
試験片1には、引張応力及び圧縮応力σが付与される。溶接部3のX面に付与されるσの大きさと、溶接部3のY面に付与されるσの大きさは略同一となる。幅Wの試験対象部に作用するσは、式(1)で表される。
σ=P/((dx+dy)W) …(1)
【0038】
図4のB欄は、負荷中心軸と試験片の中心軸とがずれたことに起因する曲げを示している。負荷中心軸Lと試験片1の中心軸Cをずらして配置され、試験片1は両端が治具11,12に固定されているため、試験片1に荷重が付与されると、試験片1の溶接部3の周辺に曲げモーメントが発生する。図4のB欄に示すように、試験片1が引っ張られたときに試験片1のX面がY面に対して相対的に伸びる曲げが発生し、試験片1が圧縮されたときに試験片のX面がY面に対して相対的に縮む曲げが発生する。あるいは、試験片1が引っ張られたときに試験片1のX面がY面に対して相対的に縮む曲げが発生し、試験片1が圧縮されたときに試験片のX面がY面に対して相対的に伸びる曲げが発生する。
溶接部3のX面及びY面には、曲げモーメントによる引張応力及び圧縮応力σが付与される。
【0039】
ここで、負荷中心軸Lと試験片1の中心軸Cとをずらすことにより試験片1に発生する曲げモーメントMは、材料のヤング率E、断面二次モーメントI、はりの曲率ρを用いて式(2)で表される。
M=EI/ρ …(2)
また、曲げ応力σは断面係数Zを用いて式(3)で表される。
σ=M/Z …(3)
式(2)より、負荷中心軸Lと試験片1の中心軸Cとのずれが大きくなるほど試験片のX面に付与される曲げモーメントは、試験片のY面に付与される曲げモーメントよりも大きくなる。従って、試験片のX面(配管内側に対応)に付与される曲げ応力の値σは、試験片のY面(配管外側に対応)に付与される曲げ応力σの値よりも大きくなる。
【0040】
従って、試験片1のX面側の溶接部3に付与される引張応力及び圧縮応力の大きさσ(σ,σの和)は、試験片1のY面に付与される引張応力及び圧縮応力の大きさσ(σ,σの和)よりも大きくなる。すなわち、溶接部3のX面側に応力が集中する。このため、溶接部3のX面側が疲労き裂発生起点となり、確実にX面側の溶接部3に疲労き裂が発生する。
【0041】
制御部19は、疲労き裂が発生するまでの引張及び圧縮の繰り返し回数Nを計測する。制御部19は、繰り返し回数Nを試験片が切り出された配管の疲労寿命と見なして取得する。上述の工程により、所定応力が付与されるときの配管の疲労寿命が評価される。
【符号の説明】
【0042】
1 試験片
2 金属配管部
3 溶接部
10 疲労寿命測定装置
11 上部治具
12 下部治具
13 ロードフレーム
14 軸体
15 動力部
16 アクチュエータ
17 サーボバルブ
18 油圧ユニット
19 制御部
20 圧力容器
21 水供給配管
22 水排出配管
23 負荷制御部
24 変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管から切り出され、該配管の疲労寿命を評価するための試験片であって、
同一形状の2つの金属配管部と該2つの金属配管部との間に挟まれた溶接部とを有し、
前記2つの金属配管部は、共通する1つの中心軸を有するように配置され、
前記溶接部の前記配管の外側に対応する面、及び、前記溶接部の前記配管の内側に対応する面のそれぞれが凸状になっており、
前記配管の内側に対応する面において、前記溶接部及び該溶接部近傍に位置する前記金属配管部は、前記配管の内側の面と同一形状であり、
前記配管の外側に対応する面において、前記溶接部と前記金属配管部との各々の接続部は、前記溶接部の面と前記金属配管部の面とで連続的な曲線を有し、
前記溶接部の前記配管の内側に対応する側の前記凸部の頂点と前記中心軸との距離に対する、前記溶接部の前記配管の外側に対応する側の前記凸部の頂点と前記中心軸との距離の比率が、1以上である疲労寿命評価用試験片。
【請求項2】
前記配管の外側に対応する側の前記凸部が加工されて、前記比率が1以上とされている請求項1に記載の疲労寿命評価用試験片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の疲労寿命評価用試験片を用いて、前記配管の疲労寿命を評価する方法であって、
疲労寿命評価装置の負荷中心軸が、前記試験片の中心軸よりも配管の内側に対応する方向に位置するように、前記試験片が前記疲労寿命評価装置に設置される工程と、
前記疲労寿命評価装置に設置された前記試験片が、前記配管の使用環境において前記配管の内側を流通する水と略同一とされる温度及び圧力の水に浸漬される工程と、
前記試験片が前記水に浸漬された状態で、所定の荷重で前記試験片に引張応力及び圧縮応力の組み合わせを繰り返し付与する工程と、
前記溶接部に疲労き裂が発生した時の前記引張応力及び圧縮応力の組み合わせを前記試験片に付与した回数を取得し、前記回数を前記配管の疲労寿命と見なす工程と、
を含む疲労寿命評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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