説明

疲労試験装置

【課題】ワークに加える力の変動幅を一定に揃えて試験を行う際に設定されるべきサーボモータの回転軸の角度の振幅を自動的且つ速やかに得ることのできる疲労試験装置を提供する。
【解決手段】疲労試験装置が、ワークの変形量を計測する変形量検出手段と、ワークに加えられる力の大きさを計測する力計測手段と、サーボモータの回転軸の角度の振幅を徐々に増加させながら、変形量検出手段及び力計測手段の計測結果に基づいて該ワークのばね定数を演算するばね定数演算手段と、ばね定数演算手段によって演算されたばね定数に基づいて、ワークに加えられる力の大きさの振幅が所定の大きさとなるように、サーボモータを制御する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじり、引張、圧縮、曲げ方向の繰り返し荷重をワークに加える疲労試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料に繰り返し荷重を加えてその材料の疲労強度を計測する疲労試験装置として、特許文献1に記載のもののようなサーボモータを用いたものが利用されている。サーボモータは、目標となる角度(目標角度)をサーボアンプに入力することによってサーボモータの回転軸の位相をその角度に移動させるものである。サーボモータには回転軸の位相の変化を検出するためのロータリーエンコーダが設けられており、サーボアンプは、ロータリーエンコーダの検出値から判断される回転軸の位相と目標角度との差分に基づいて、サーボモータに与える駆動電力を設定する。
【特許文献1】特開昭63−37233号
【0003】
ねじり試験を行うねじり試験装置は、ワークの一端を把持するチャックとサーボモータの回転軸との間に設けられた減速機(減速ギアなど)によって、サーボモータのトルクを増幅してワークに付与している。また、引張、圧縮、曲げ試験を行う万能試験装置は、サーボモータの回転軸に送りねじ機構等の直動変換器を設けて、サーボモータの回転運動を直進運動に変換している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような疲労試験装置においては、加える力(トルクまたは荷重)、変位、速度或いは加速度の変動幅(上限及び/または下限)を一定に揃えて繰り返し荷重をワークに加える。しかしながら、サーボモータはその回転軸の角度を制御するものであるため、加える力の変動幅を一定に揃えて試験を行う場合は、繰り返し試験を行う前に、オペレータが手動操作にてワークに荷重を加え、所望の力を加えるために必要なサーボモータの回転軸の角度を見積もっていた(試し動作)。
【0005】
このような試し動作を手動操作にて行うには熟練が必要であり、また、必要なサーボモータの回転軸の角度が得られるまでに長時間を要していた。加えて、ワークに力を加えすぎて、試し動作中にワークを破損してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。すなわち、本発明は、ワークに加える力の変動幅を一定に揃えて試験を行う際に設定されるべきサーボモータの回転軸の角度の振幅を自動的且つ速やかに得ることのできる疲労試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の疲労試験装置は、ワークに加えられる力の大きさを計測する力計測手段と、サーボモータの回転軸の角度の振幅を徐々に増加させて反転駆動させながら、サーボモータの回転角度及び力計測手段の計測結果に基づいてワークに加わる力とサーボモータの回転軸の回転角度との比である比定数を演算する比定数演算手段と、比定数演算手段によって演算された比定数に基づいて、ワークに加えられる力の大きさの振幅が所定の大きさとなるように、サーボモータを制御する制御手段と、を有する。
【0008】
このような構成とすることによって、自動的且つ速やかに比定数を求め、この比定数に基づいて適切な角度振幅でサーボモータを駆動させることができる。また、サーボモータの回転軸の角度の振幅を徐々に増加させているため、不意にワークに大きな力がかかってワークの破損が発生するようなことはない。
【0009】
また、比定数演算手段は、サーボモータの回転軸の角度の変動が略止まった時のサーボモータの回転軸の回転角度及び力計測手段の計測結果に基づいて比定数を演算する構成とすることが好ましい。すなわち、サーボモータの回転軸の角速度が速い、即ちワークの変形速度が大きい時は計測誤差が発生しやすいので、ワークの変形速度が低い、すなわちワークがほとんど静止している状態におけるワークに掛かる力の大きさとサーボモータの回転軸の回転角度に基づいて比定数を演算することによって、サーボモータの角度振幅をより正確に求めることができる。
【0010】
また、力計測手段は、ワークに加えられる力の大きさを少なくとも2回計測し、比定数演算手段は、第1回目の計測における力の大きさと第2回目の計測における力の大きさとの差を第1回目の計測におけるサーボモータの回転軸の回転角度と第2回目の計測におけるサーボモータの回転軸の回転角度との差で割った値をワークのばね定数とする構成が望ましい。例えば引張試験や圧縮試験の場合は、ワークを試験装置に取り付けた時点でワークにひずみが発生している場合があるため、サーボモータの回転軸の回転角度が必ずしも自然状態からの変形量に対応しているとはいえない。本発明によれば、異なる力でワークを変形させた時の変形量の差と力の大きさの差に基づいて、より正確に比定数を算出することができる。
【0011】
また、疲労試験装置は、第1の方向と、第1の方向と反対の第2の方向の双方に沿ってワークに荷重を加えることが出来るようになっており、比定数演算手段は、ワークが第1の方向に変形している時の第1の比定数と、ワークが第2の方向に変形している時の第2の比定数とを演算し、制御手段は、ワークが第1の方向に変形している時は所定の大きさを第1の比定数で割って得られる変形量がワークの変形量の上限となるようサーボモータを制御し、ワークが第2の方向に変形している時は所定の大きさを第2の比定数で割って得られる変形量がワークの変形量の上限となるよう前記サーボモータを制御する構成とすることが好ましい。すなわち、例えば引張荷重をワークに加えるような疲労試験においては、引張方向(第1の方向)にワークを変形させる時と、この状態から除荷する(第2の方向にワークを変形させる)時とでは比定数が異なる可能性がある。そのため、本発明の構成のように、第1の比定数と第2の比定数を別々に求めることが好ましい。
【0012】
また、例えば、疲労試験装置はワークにねじり荷重を加えるねじり試験装置であり、ワークに加えられる力は、ワークの回転軸回りのトルクである。
【0013】
或いは、疲労試験装置が、送りねじ機構を介してワークに引張、圧縮又は曲げ荷重を加える万能試験装置であり、ワークに加えられる力は、ワークに加えられる荷重の送りねじ機構の送り方向成分である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ワークに加える力の変動幅を一定に揃えて試験を行う際に設定されるべきサーボモータの回転軸の角度の振幅を自動的且つ速やかに得ることのできる疲労試験装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の疲労試験装置のブロック図を示したものである。本実施形態の疲労試験装置は、試験片(ワーク)にねじり荷重を反復的に加えることができる疲労試験装置である。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態の疲労試験装置1は、ワークWにねじり荷重を加える装置本体10と、装置本体10のサーボモータ12を駆動するためのサーボアンプ20と、サーボアンプ20を制御する制御部30とを有する。
【0017】
装置本体10は、チャック11a、11bと、サーボモータ12と、減速機13と、トルクセンサ14と、角度センサ15とを有する。チャック11a及び11bは、ワークWを両端から把持する。減速機13は、サーボモータ12の駆動軸と一方のチャック11aの間に配置され、サーボモータ12の駆動軸のトルクを増大してワークWに与える。また、他方のチャック11bは、トルクセンサ14を介して図示しない装置本体のフレームに固定されている
【0018】
以上説明した構成において、サーボモータ12を駆動すると、チャック11a、11bに把持されたワークWにねじり荷重が加わり、その大きさはトルクセンサ14によって計測される。また、角度センサ15が減速機13の出力軸に設けられ、チャック11a付近におけるワークWのねじれ角度を検出する。
【0019】
サーボモータ12は、サーボアンプ20によって制御される。すなわち、サーボアンプ20は、制御部30から送信される設定角度(目標とするサーボモータの回転軸の角度)に基づいてサーボモータ12を駆動するための駆動電力を生成し、これをサーボモータ12に送ってこれを駆動させる。サーボモータ12には、サーボモータ12の回転軸の回転数や角度等を検出するためのロータリーエンコーダ12aが設けられている。ロータリーエンコーダ12aの信号出力はサーボアンプ20に接続されており、サーボアンプ20はロータリーエンコーダ12aの計測結果に基づいて駆動電力のフィードバック制御を行う。
【0020】
次いで、制御部30の構成につき説明する。図2は、本実施形態の制御部30のブロック図である。図2に示されているように、本実施形態の制御部30は、コントローラ31、信号変換手段32、A/D変換手段33、トルクセンサ用アンプ34a、角度センサ用アンプ34b、操作手段35、波形発生回路36、フレキシブルディスクドライブ(FDD)37、メモリ38及びアナログポート39を有する。なお、図1及び図2においては、制御部30は一つのブロックとして記載されているが、実際は複数のユニットによって形成される。例えば、トルクセンサ用アンプ34a、角度センサ用アンプ34bはそれぞれが独立したユニットとして形成される。また、操作手段35は、コントローラ31を含むユニットのケース側面に設けられる制御パネルであるが、ケーブルを介してコントローラ31に接続される独立したユニット(例えばパーソナルコンピュータ)であってもよい。
【0021】
本実施形態の制御部30は、トルクセンサ14、角度センサ15(共に図1)によって検出されたワークWのトルクや角度を参照しながら、トルク又は角度の経時変動が所望の波形を示すように、サーボアンプ20(図1)に設定角度を送信するものである。
【0022】
ワークWに与える作用(荷重や変形量)の波形は、操作手段35を用いて設定される。操作手段35は、例えばキーボードなどの入力手段と、この入力手段による入力結果を確認するための表示手段とを備えており、本実施形態のねじり試験装置1のオペレータは、操作手段35を操作して、繰り返しねじり試験を行う際のトルク、角度、又は角速度の範囲を設定することができる。例えば、正弦波状に往復ねじり運動を行う際の角度変動の振幅を設定することができる。操作手段35による設定結果は、コントローラ31に送信され、メモリ38に保存される。
【0023】
また、波形発生回路36は、所望の周期・タイミングで正弦波、三角波、矩形波などの信号波形を生成する回路である。より具体的には、f(t)を時刻tを引数とする関数としたときに、式s=f(t)で示される値sを順次コントローラ31に出力するものである。なお、上式において、例えば波形が正弦波であれば、周期をT、位相をaとして、f(t)=sin(2π(t−a)/T)である。ここで、周期T及び位相aは、操作手段35を操作することによって任意の値に設定可能である。
【0024】
コントローラ31は、波形発生回路36からコントローラ31に送信される値に、操作手段35によって設定された値を乗じて目標波形を演算し、この目標波形からサーボアンプ20に送るべき設定角度を演算する。そして、操作手段35にて設定された演算された設定角度は、信号変換手段32を介してサーボアンプ20に送信される。
【0025】
以上のような構成により、ワークWのねじり角が、正弦波、三角波又は矩形波といった規定の波形に従って変動するように、サーボモータ12を駆動することが出来るようになっている。
【0026】
また、本実施形態のねじり試験装置1は、オペレータにて設定されたトルクの振幅(設定トルク振幅)でワークWに繰り返し荷重を加える疲労試験を行う際、サーボモータ12の回転軸の角度変動の振幅を自動的に設定できるようになっている。その手順につき、図3を参照して以下説明する。なお、図3は、横軸に時間t、縦軸にサーボモータ12の回転軸の角度θを取ったグラフである。
【0027】
上記のごとく設定トルク振幅でワークWに繰り返し荷重を加えることができるようにするため、本実施形態においては、疲労試験に先立ってワークWのばね定数を計測している。その具体的な計測方法を次に説明する。まず、ワークWをチャック11a、11bに取り付け、次いでサーボモータ12を駆動する。そして、サーボモータ12の駆動が始まった当初は、十分に小さい角度変動の振幅でサーボモータ12の回転軸が駆動されるようにする。そして、その後は徐々に回転軸の角度振幅を増加させる。この際、トルクセンサ14によってワークWに加えられるトルクが検出されている。また、振幅に関わらず回転軸の角度の変動の周期Tは一定である。
【0028】
次いで、図3のグラフにおける四箇所のポイントA、B、C及びDでワークWに加わるトルクF、F、F、F及び、その時のサーボモータ12の回転軸の角度θ、θ、θ、θを計測した。ここで、ポイントA及びCは試験開始時の回転軸の角度Oから一方向(以下、正の方向と定義する)に角度が変動している時に計測を行ったものであり、ポイントB及びDはこの正の方向とは逆の方向(以下、負の方向と称す)に角度が変動している時に計測を行ったものである。
【0029】
また、ポイントA〜Dのいずれも、サーボモータ12の回転軸の変動が略止まった時点である。本実施形態においては、図3のように、サーボモータ12の回転軸の変動が正弦波状となるように制御されている。そのため、試験開始から時間T/4+nT(n:自然数)経過後に、正の方向側で回転軸の角速度は0となる。同様に、試験開始から時間3T/4+nT経過後に、正の方向側で回転軸の角速度は0となる。本実施形態においては、試験開始から9T/4経過後をポイントA、11T/4経過後をポイントB、13T/4経過後をポイントC、15T/4経過後をポイントDとしている。
【0030】
次いで、ポイントA〜Dでの計測値を用いて、数1によってワークWの正及び負の方向におけるトルクとサーボモータの回転角度との比である比定数をS、Sを演算する。
【0031】
【数1】

【0032】
次いで、計測したS、Sに基づいて、設定トルク振幅にてワークWに繰り返し荷重を加えるためのサーボモータ12の回転軸の角度変動の上限値と下限値とを決定する。すなわち、正の方向側の設定トルク振幅をFSP、負の方向側の設定トルク振幅をFSN、サーボモータ12の回転軸の角度変動の上限値と下限値をそれぞれθ、θとして、以下の数2によってθ、θを演算する。
【0033】
【数2】

【0034】
そして、求めたθ、θに基づいて、サーボモータ12の回転軸の角度の変動が数3の式を満たすように、サーボアンプ20に与える設定角度θを変更することによって、所望の設定トルク振幅に基づいてワークに繰り返し荷重を与えることが可能となる。
【0035】
【数3】

【0036】
以上説明した本発明の第1の実施の形態は、ねじり試験装置に関するものである。しかしながら、本発明は上記構成に限定されるものではない。すなわち、本発明はサーボモータを使用する他のタイプの疲労試験装置においても適用可能である。以下に説明する本発明の第2の実施の形態の疲労試験装置は、サーボモータによって駆動される送りねじ機構によって、ワークに引張、圧縮、又は曲げ荷重を加える事が可能な、所謂万能試験装置である。
【0037】
図4は、本実施形態の疲労試験装置101のブロック図を示したものである。本実施形態の疲労試験装置は、試験片(ワーク)に引張、圧縮、又は曲げ荷重を反復的に加えることができるようになっている。
【0038】
図4に示されるように、本実施形態の試験装置101は、ワークWに荷重を加える装置本体110と、装置本体110のサーボモータ112を駆動するためのサーボアンプ120と、サーボアンプ120を制御する制御部130とを有する。装置本体110は、フレーム111と、サーボモータ112と、直動変換器113と、ロードセル114と、変位センサ115と、アダプタ118a及び118bとを有する。
【0039】
直動変換器113は、サーボモータ112の回転軸の回転運動を直進方向の運動に変換するためのものであり、送りねじ113aと、ナット113bと、一対のガイドレール113cと、ガイドレール113cの夫々に対応したランナーブロック113dとを有する。ナット113bは、送りねじ113aと係合している。また、ランナーブロック113dは、ナット113bに固定されている。ランナーブロック113dは、対応するガイドレール113cに沿って移動可能であると共に、この方向以外には移動できないようになっている。このため、ランナーブロック113d及びナット113bの運動は、ガイドレール113cが伸びる方向に沿った一自由度に限定される。さらに、送りねじ113aの軸方向は、ガイドレール113cが伸びる方向と平行(すなわち上下方向)であるため、サーボモータ112によって送りねじ113aを回動させると、ナット113bはガイドレール113cに沿って移動する。図4に示されるように、サーボモータ112は、フレーム111のテーブル部111aの下に固定されており、また、ガイドレール113cはテーブル部111aの上に固定されている。このため、ナット113bはテーブル部111aに対して上下動することになる。なお、ナットの上には、ワークWを下から保持するための下部アダプタ118aが取り付けられる。
【0040】
フレーム111の天井111bの下面から、上部ステージ116が吊り下げられている。また、テーブル部111aの上面には、図中上方向に伸びるガイドバー117cが設けられている。上部ステージ116の左右方向端部には、上下方向に穿孔された貫通孔116aが形成されており、この貫通孔116aにガイドバー117cが通されている。このため、上部ステージ116はガイドバー117cに沿って上下方向に移動可能となっている。また、上部ステージ116に設けられた図示しないボルトを締めることによって、貫通孔116aの内径を絞る事が出来るようになっており、これによって、ガイドバー117cに対して上部ステージ116を固定できるようになっている。
【0041】
上部ステージ116の下面には、ワークWを上から保持するための上部アダプタ118bが取り付けられる。本実施形態においては、上部アダプタ118bと下部アダプタ118aとの間でワークWを保持した状態でナット113bを上下動させる事によって、ワークWに荷重を加える事が出来るようになっている。なお、上部及び下部アダプタ118a、118bはそれぞれ上部ステージ116、ナット113bに対して着脱可能に構成されており、ワークWに加えるべき荷重の種類に応じて適切なアダプタを選択可能となっている。図4は、ワークWに圧縮荷重を加える構成であるため、上部アダプタ118bの下面及び下部アダプタの上面は平面状に形成されている。ワークWに引張荷重を加える際は、ワークWを把持するチャックが設けられたアダプタ118a、118bが使用される。三点曲げ試験をおこなう際は、圧縮試験用のアダプタと三点曲げ用の治具とを組み合わせて使用する。
【0042】
また、上部ステージ116は、フレーム111の天井111bから送りねじ117aによって吊り下げられている。天井111bには、送りねじ117aと係合する回転可能なナット(図示せず)が埋めこまれている。ナットは天井111bに配置されたモータ117bによって回転駆動されるようになっている。また、送りねじ117aと上部ステージ116とを連結するリンクによって、上部ステージ116に対して送りねじ117aはその軸回りに回転しないようになっている。従って、上部ステージ116のボルトを緩めて上部ステージ116を移動可能とした状態で、モータ117bによってこのナットを回動させることで、送りねじ117a及びこの送りねじ117aと連結している上部ステージ116を上下方向に駆動することができる。この機能は、ワークWの寸法に合わせてアダプタ118a、118bの間隔を調整する際に使用される。すなわち、試験を行う際はボルトを締めて上部ステージ116をガイドバー117cに固定する。
【0043】
以上説明した構成において、アダプタ118a、118bでワークWを保持してサーボモータ112を駆動すると、ワークWに引張、圧縮又は曲げ荷重が加わり、その大きさはロードセル114によって計測される。また、変位センサ115は、下部のアダプタの変位、すなわちワークWの変形量を検出するセンサ(例えば、ロータリーエンコーダが組み込まれたダイヤルゲージ)である。
【0044】
第1の実施形態と同様、サーボモータ112は、サーボアンプ120によって制御される。すなわち、サーボアンプ120は、制御部130から送信される目標値(目標とするサーボモータの回転軸の角度)に基づいてサーボモータ112を駆動するための駆動電力を生成し、これをサーボモータ112に送ってこれを駆動させる。サーボモータ112には、サーボモータ112の回転軸の回転数や角度等を検出するためのロータリーエンコーダ112aが設けられている。ロータリーエンコーダ112aの信号出力はサーボアンプ120に接続されており、サーボアンプ210はロータリーエンコーダ112aの計測結果に基づいてフィードバック制御を行う。
【0045】
次いで、制御部130の構成につき説明する。図5は、本実施形態の制御部130のブロック図である。図示されているように、本実施形態の制御部130は、トルクセンサの代わりにロードセルが、角度センサの代わりに変位センサがそれぞれ接続できるようになっているほかは、図2に示される本発明の第1の実施の形態と同一である。従って、制御部130において本発明の第1の実施の形態と同一又は類似の構成要素には同一の符号を配し、また制御部130に関する詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態の制御部130は、ロードセル114、変位センサ115(共に図4に記載)によって検出されたワークWの荷重や変形量を参照しながら、荷重又は変形量の経時変動が所望の波形を示すように、サーボアンプ120(図1)に設定角度を送信するものである。
【0047】
ワークWに与える作用の波形は、操作手段35を用いて設定される。本実施形態の試験装置101のオペレータは、操作手段35を操作して、繰り返し試験を行う際の荷重、変形量等の変動幅を設定することができる。例えば、ワークWに正弦波状の復繰り返し圧縮変位を加える際の変位の振幅を設定することができる。
【0048】
コントローラ31は、波形発生回路36からコントローラ31に送信される値に、操作手段35によって設定された値を乗じて目標値を演算し、この目標値とロードセル114が検出した荷重、又は変位センサ115が検出した変形量(又はそれらの時間微分値である変形速度)とを比較して、サーボアンプ120に送るべき設定角度を演算する。演算された設定角度は、信号変換手段32を介してサーボアンプ120に送信される。
【0049】
以上のような構成により、ワークWに加わる荷重やワークWの変形量が、正弦波、三角波又は矩形波といった規定の波形に従って変動するように、サーボモータ112を駆動することが出来るようになっている。
【0050】
また、第1の実施形態と同様、本実施形態の万能試験装置101は、オペレータにて設定された荷重の振幅(設定荷重振幅)でワークWに繰り返し荷重を加える疲労試験を行う際、サーボモータ12の回転軸の角度変動の振幅を自動的に設定できるようになっている。この構成は、図3を参照して説明した本発明の実施形態とほとんど同様である。従って本実施形態においても、図3を参照して説明する。
【0051】
上記のごとく設定トルク振幅でワークWに繰り返し荷重を加えることができるようにするため、本実施形態においては、疲労試験に先立ってワークWのばね定数を計測している。具体的な計測方法を次に説明する。まず、ワークWを試験装置101に取り付け、次いでサーボモータ12を駆動する。そして、サーボモータ12の駆動が始まった当初は、十分に小さい角度変動の振幅でサーボモータ12の回転軸が駆動される。その後は徐々に回転軸の角度振幅を増加させる。この際、トルクセンサ14によってワークWに加えられるトルクが検出されている。また、振幅に関わらず回転軸の角度の変動の周期Tは一定である。
【0052】
次いで、図3における四箇所のポイントA、B、C及びDでワークWに加わる荷重P、P、P、P及び、その時のサーボモータ12の回転軸の角度θ、θ、θ、θを計測した。ここで、ポイントA及びCは試験開始時の回転軸の角度Oから一方向(以下、正の方向と定義する)に角度が変動している時に計測を行ったものであり、ポイントB及びDはこの正の方向とは逆の方向(以下、負の方向と称す)に角度が変動している時に計測を行ったものである。
【0053】
また、ポイントA〜Dのいずれも、サーボモータ12の回転軸の変動が略止まった時点である。本実施形態においては、図3に示されているように、サーボモータ12の回転軸の変動が正弦波状となるように制御されている。そのため、試験開始から時間T/4+nT(n:自然数)経過後に、正の方向側で回転軸の角速度は0となる。同様に、試験開始から時間3T/4+nT経過後に、正の方向側で回転軸の角速度は0となる。本実施形態においては、試験開始から9T/4経過後をポイントA、11T/4経過後をポイントB、13T/4経過後をポイントC、15T/4経過後をポイントDとしている。
【0054】
次いで、ポイントA〜Dでの計測値を用いて、数4によってワークWの正及び負の方向におけるばね定数をS、Sを演算する。
【0055】
【数4】

【0056】
次いで、計測したS、Sに基づいて、設定荷重振幅にてワークWに繰り返し荷重を加えるためのサーボモータ12の回転軸の角度変動の上限値と下限値とを決定する。すなわち、正の方向側の設定荷重振幅をPSP、負の方向側の設定荷重振幅をPSN、サーボモータ12の回転軸の角度変動の上限値と下限値をそれぞれθ、θとして、以下の数5によってθ、θを演算する。
【0057】
【数5】

【0058】
そして、求めたθ、θに基づいて、サーボモータ12の回転軸の角度の変動が前述の数3の式を満たすように、サーボアンプ20に与える設定角度θを変更することによって、所望の設定荷重振幅に基づいてワークに繰り返し荷重を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施の形態の疲労試験装置の概要を示したものである。
【図2】本発明の第1の実施の形態の疲労試験装置の制御部のブロック図である。
【図3】本発明の第1及び第2の実施形態における、サーボモータの回転軸の角度の変動を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態の疲労試験装置の概要を示したものである。
【図5】本発明の第2の実施の形態の疲労試験装置の制御部のブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
1 疲労試験装置
10 装置本体
12 サーボモータ
20 サーボアンプ
30 制御部
31 コントローラ
33 変換手段
35 操作手段
37 フレキシブルディスクドライブ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータによってワークに繰り返し荷重を加える疲労試験装置であって、
該ワークに加えられる力の大きさを計測する力計測手段と、
前記サーボモータの回転軸の回転角度の振幅を徐々に増加させて反転駆動させながら、前記サーボモータの回転角度及び前記力計測手段の計測結果に基づいて該ワークに加わる力と前記サーボモータの回転軸の回転角度との比である比定数を演算する比定数演算手段と、
前記比定数演算手段によって演算された比定数に基づいて、該ワークに加えられる力の大きさの振幅が所定の大きさとなるように、前記サーボモータを制御する制御手段と、
を有する、疲労試験装置。
【請求項2】
前記比定数演算手段は、前記サーボモータの回転軸の角度の変動が略止まった時の前記サーボモータの回転軸の回転角度及び前記力計測手段の計測結果に基づいて該比定数を演算する、ことを特徴とする請求項1に記載の疲労試験装置。
【請求項3】
前記力計測手段は、該ワークに加えられる力の大きさを少なくとも2回計測し、
前記比定数演算手段は、第1回目の計測における力の大きさと第2回目の計測における力の大きさとの差を第1回目の計測における前記サーボモータの回転軸の回転角度と第2回目の計測における前記サーボモータの回転軸の回転角度との差で割った値を該比定数とする、ことを特徴とする請求項1または2に記載の疲労試験装置。
【請求項4】
前記疲労試験装置は、第1の方向と、該第1の方向と反対の第2の方向の双方に沿って該ワークに荷重を加えることが出来るようになっており、
前記比定数演算手段は、該ワークが該第1の方向に変形している時の第1の比定数と、該ワークが該第2の方向に変形している時の第2の比定数とを演算し、
前記制御手段は、該ワークが第1の方向に変形している時は該所定の大きさを該第1の比定数で割って得られる変形量が該ワークの変形量の上限となるよう前記サーボモータを制御し、該ワークが第2の方向に変形している時は該所定の大きさを該第2の比定数で割って得られる変形量が該ワークの変形量の上限となるよう前記サーボモータを制御する、
事を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の疲労試験装置。
【請求項5】
前記疲労試験装置が該ワークにねじり荷重を加えるねじり試験装置であり、
該ワークに加えられる力は、該ワークの回転軸回りのトルクである、特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の疲労試験装置。
【請求項6】
前記疲労試験装置が、送りねじ機構を介して該ワークに引張、圧縮又は曲げ荷重を加える万能試験装置であり、
該ワークに加えられる力は、該ワークに加えられる荷重の該送りねじ機構の送り方向成分である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の疲労試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−85847(P2009−85847A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258004(P2007−258004)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(391046414)国際計測器株式会社 (32)
【Fターム(参考)】