説明

瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞およびその調製方法

【課題】瘡痕が残らない程にきれいに創傷を治癒することに使用できる手段を提供する。
【解決手段】哺乳動物由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞。哺乳動物の骨髄、月経血または臍帯血から得られる創傷治癒能を有する間葉系細胞。哺乳動物はラット、ブタまたはヒトであることができる。創傷を有する患者の骨髄、月経血または臍帯血から創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離し、単離した細胞を培養する、前記患者の創傷に移植するための創傷治癒能を有する間葉系細胞の調製方法。創傷治癒能を有する間葉系細胞の有効量を患者の創傷に移植する創傷の治療方法。創傷治癒能を有する間葉系細胞を有効成分として含有する、創傷治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞およびその調製方法に関する。特に本発明は、間葉系細胞を用いる瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞およびその調製方法に関する。さらに本発明は、この細胞を用いた創傷の治療方法および治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に形成された傷あとは、部位によっては小さなものでも、その人にとっては大きな心の負担になることがある。また、事故や手術などでできた傷跡、瘢痕も、できればなるべく目立たないことが望まれる。そこで、傷あとを目立たなくするよう縫い方などを工夫などもされ、あるいは、古い傷あとが目立つようなときには、目立たなくする工夫もなされている。さらに、その他にも、そのような傷、創傷を治癒するために、形成外科の分野では、種々の試みがなされている。
【0003】
例えば、創傷治癒を促進するために、創傷および/または病巣に適用される、実質的な表面電荷をもつ、非−生分解性材料で作成されたミクロスフェアを含む治療用組成物が知られている(特表2002−541222号公報)
【0004】
また、創傷治癒を促進または増進するために、線維芽細胞増殖因子12(FGF−12)としてもまた知られている、ケラチノサイト増殖因子−2(KGF−2)を使用することも知られている(特表2002−541222号公報)。
【0005】
ところで、縫合創を対象としてこれまでの研究で胎児に傷をつけると傷が跡形もなく治癒する事が報告されている。その研究の延長線上で、マウス、ラットとブタの胎仔と成獣の創傷治癒の際のサイトカイン発現の違いを研究し、応用することで良い結果が得られたという報告がある。(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2004 May 29;359(1445):839-50. Scar-free healing: from embryonic mechanisms to adult therapeutic intervention. Ferguson MW, O'Kane S.)これは具体的にはPDGF,TGFbeta1,TGFbeta2 の発現を減弱させ、TGFbeta3を投与するという内容である。しかし、傷跡は完全に消失するわけではない事、そしてTGFが実際に臨床応用化されていない成長因子であることに問題がある。
【0006】
【特許文献1】特表2002−541222号公報
【特許文献2】特表2002−541222号公報
【非特許文献1】Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2004 May 29;359(1445):839-50. Scar-free healing: from embryonic mechanisms to adult therapeutic intervention. Ferguson MW, O'Kane S.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、これまでは、瘡痕が残らない程にきれいに創傷を治癒することはできないのが実情であった。
【0008】
前述のように、形成外科領域では、古くから手術手技として特殊な縫合方法(真皮縫合など)が行われてきて、今日も普及している。しかし、この手技は瘢痕を目立たなくする効果はあっても瘢痕を消すことはできない。また、術後のテープ保護、装具による固定なども行われているが、やはり瘢痕を目立たなくする効果はあっても瘢痕を消すことはない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、瘡痕が残らない程にきれいに創傷を治癒することに使用できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は以下の通りである。
[請求項1]哺乳動物由来の間葉系細胞であり、かつ創傷治癒能を有する細胞。
[請求項2]哺乳動物の骨髄、月経血または臍帯血から得られる創傷治癒能を有する間葉系細胞。
[請求項3]哺乳動物の骨髄から得られる細胞である請求項2に記載の細胞。
[請求項4]瘢痕の残らない創傷治療用である請求項1または2に記載の細胞。
[請求項5]哺乳動物がラットである請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
[請求項6]CD29、CD73、CD44HおよびCD90の少なくとも1つに陽性である請求項5に記載の細胞。
[請求項7]CD45およびCD31の少なくとも1つに陰性である請求項5または6に記載の細胞。
[請求項8]FERM AP-20378である請求項5に記載の細胞。
[請求項9]哺乳動物がブタである請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
[請求項10]SWC3a、CD44、CD29、CD44HおよびCD90の少なくとも1つに陽性である請求項9に記載の細胞。
[請求項11]CD31陰性である請求項9または10に記載の細胞。
[請求項12]哺乳動物がヒトである請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
[請求項13]CD140b陽性である請求項12に記載の細胞。
[請求項14]CD54、SSEA-4およびCD157の少なくとも1つに陽性である請求項12または13に記載の細胞。
[請求項15]CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つに陽性である請求項12〜14のいずれか1項に記載の細胞。
[請求項16]CD140aが陰性である請求項12〜15のいずれか1項に記載の細胞。
[請求項17]CD50、CD117、CD133、STRO-1、CD14、CD135、SSEA-1、SSEA-3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つに陰性である請求項11〜16のいずれか1項に記載の細胞。
[請求項18]創傷を有する患者の骨髄、月経血または臍帯血から創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離し、単離した細胞を培養する、前記患者の創傷に移植するための創傷治癒能を有する間葉系細胞の調製方法。
[請求項19]前記患者の骨髄から骨髄細胞液を採取し、得られた骨髄細胞液から、CD140b抗原をマーカーとして、前記創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離する請求項18に記載の調製方法。
[請求項20]CD140b抗原が陽性である細胞を単離する請求項19に記載の調製方法。
[請求項21]マーカーとして、CD54、SSEA4およびCD157の少なくとも1つの抗原をさらに用いる請求項19または20に記載の調製方法。
[請求項22]CD54、CD140b、SSEA4およびCD157の少なくとも1つの抗原が陽性である細胞を単離する請求項21に記載の調製方法。
[請求項23]マーカーとして、CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つの抗原をさらに用いる請求項19〜22のいずれか1項に記載の調製方法。
[請求項24]CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つの抗原が陽性である細胞を単離する請求項23に記載の調製方法。
[請求項25]前記患者の骨髄から骨髄細胞液を採取し、得られた骨髄細胞液から、CD140a抗原をマーカーとして、前記創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離する請求項18〜24のいずれか1項に記載の調製方法。
[請求項26]CD140a抗原が陰性である細胞を単離する請求項25に記載の調製方法。
[請求項27]マーカーとして、CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つの抗原をさらに用いる請求項25または26に記載の調製方法。
[請求項28]CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つの抗原が陰性である細胞を単離する請求項27に記載の調製方法。
[請求項29]請求項11〜17のいずれかに記載の創傷治癒能を有する間葉系細胞または請求項を18〜28のいずれか1項に方法で調製した創傷治癒能を有する間葉系細胞の有効量を患者の創傷に移植する、創傷の治療方法。
[請求項30]前記移植は、切開を加える直前に切開予定線周囲の真皮内に創傷治癒能を有する間葉系細胞を局注することで行う請求項29に記載の方法。
[請求項31]前記移植は、創縫合を行う直前に創縁の真皮内に創傷治癒能を有する間葉系細胞を局注することで行う請求項29に記載の方法。
[請求項32]前記細胞の移植により、瘢痕の残らない創傷治療を行う請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
[請求項33]bFGF、HGF、レチノイン酸、およびビタミンAからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに患者の創傷に移植する請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
[請求項34]請求項12〜17のいずれかに記載の創傷治癒能を有する間葉系細胞または請求項を18〜28のいずれか1項に方法で調製した創傷治癒能を有する間葉系細胞を有効成分として含有する、創傷治療剤。
[請求項35]切開を加える直前に切開予定線周囲の真皮内に局注することで行われる移植に用いられるための請求項34に記載の創傷治療剤。
[請求項36]創縫合を行う直前に創縁の真皮内に局注することで行われる移植に用いられるための請求項34に記載の創傷治療剤。
[請求項37]bFGF、HGF、レチノイン酸、およびビタミンAからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する請求項34〜36のいずれか1項に記載の治療剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の間葉系細胞を用いることで瘢痕の残らない創傷治療が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、哺乳動物由来の間葉系細胞であり、かつ創傷治癒能を有する細胞に関する。本発明において、創傷治癒能を有する間葉系細胞は、例えば、哺乳動物の骨髄、月経血または臍帯血から得られる間葉系細胞であり、特に、骨髄から得られる細胞であることが好ましい。本発明の間葉系細胞は、瘢痕の残らない創傷治療に用いることができる。
【0013】
これまでに、成体骨髄には造血系幹細胞および血管幹細胞以外に間葉系幹細胞が存在し、間葉系幹細胞からは骨細胞、軟骨細胞、腱細胞、靱帯細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞、ストローマ細胞、肝臓oval細胞が分化誘導できることが報告されている[Science, 284, 143-147 (1999); Science, 284, 1168-1170 (1999)]。しかし、成体骨髄中の創傷治癒に有効な間葉系細胞に分化する能力を有する細胞の特性の同定、該細胞を増殖する方法、該細胞から効率的に創傷治癒に有効な間葉系細胞に分化誘導する方法については明らかでなかった。
【0014】
前述のようにより安全かつ確実な創傷治療が望まれている。そこで、骨髄細胞などの生体組織または臍帯血より瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞を選別し、瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞の増殖または分化をコントロールすることは、骨髄由来の細胞などの生体細胞または臍帯血を用いた創傷治癒に有効な間葉系細胞の再生治療の開発に有用である。そのために、瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞を単離して、該細胞の増殖または分化に働くサイトカインまたは転写因子を同定することが必要である。
【0015】
本発明者は上記問題点を開発すべくまずラットの骨髄由来の細胞について鋭意研究し、以下の結果を得た。すなわち、ラット骨髄由来の細胞を1細胞レベルにまず分離を行い、多数の細胞株を取得した。これら細胞株を一つ一つ、創傷治癒に有効な間葉系細胞形成能を有する細胞株を複数取得した。次に選られた細胞株を、骨髄由来の細胞が、創傷治癒に有効な間葉系細胞および脂肪細胞の少なくとも2種類の異なる細胞を分化誘導できる多分化能(Pluripotent)を持った幹細胞であることを見出した。またFGF−8,ET1,Midkine,BMP4の4種類のうち少なくとも一種のサイトカインを組み合わせて添加することで、骨髄由来の細胞に創傷治癒に有効な間葉系細胞特異的な遺伝子の発現を促進できることを見出した。同様に、瘢痕のない創傷治癒が約50倍促進できることを見出した。また骨髄由来の細胞を創傷治癒に有効な間葉系細胞の細胞外基質をコートした培養皿で培養することで、骨髄由来の細胞に創傷治癒に有効な間葉系細胞特異的な遺伝子であるANPおよびcTnIの発現を特異的に促進できることを見出した。さらに、骨髄由来の細胞を創傷治癒に有効な間葉系細胞由来の初代培養細胞と共培養を行うことで骨髄由来の細胞から創傷治癒に有効な間葉系細胞の形成が約10倍促進することを見出した。また、創傷治癒に有効な間葉系細胞との共培養を組み合わせることで、約500倍創傷治癒に有効な間葉系細胞への分化が促進することを見出した。
【0016】
次に移植実験により、骨髄由来の細胞の分化能力を検討した。まずラット成体皮膚創傷部に移植することで、骨髄由来の細胞が創傷治癒に有効な間葉系細胞と血管に分化することを見出した。
【0017】
これらの結果は、本発明で見出したラットの骨髄由来の細胞が、今まで知られていた骨髄に存在する造血系組織にのみ分化する造血幹細胞および骨格筋、脂肪細胞、骨などの沿軸中胚葉系組織にのみ分化する間葉系幹細胞とは異なる性質、すなわち外胚葉系、中胚葉系および内胚葉系の3胚葉すべてに分化できる全能性を有していることを示している。
【0018】
また、本発明のラットの骨髄由来の細胞を造血系細胞の表面抗原であるCD34、CD117、CD14、CD45、CD90、Sca-1、Ly6c、Ly6gを認識する抗体、血管内皮細胞の表面抗原であるFlk-1、CD31、CD105、CD144を認識する抗体、間葉系細胞の表面抗原であるCD140を認識する抗体、インテグリンの表面抗原であるCD49b、CD49d、CD29、CD41を認識する抗体、マトリックス受容体であるCD54、CD102、CD106、CD44を認識する抗体などを用いて骨髄由来の細胞の表面抗原の発現を解析することにより、今までに知られていない全く新しい発現形態を示している全能性の幹細胞であることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
本発明において、哺乳動物はラット、ブタまたはヒトであることができる。各哺乳動物の間葉系細胞について順次説明する。
【0020】
[ラット由来の間葉系細胞]
本発明は、ラット由来の間葉系細胞であり、かつ創傷治癒能を有する細胞に関する。
【0021】
これまで、骨髄由来の間葉系幹細胞が多くの細胞に分化し、生体に移植するとその環境に合わせて分化することが報告されてきた。そこで私たちはこれまでに骨髄由来間葉系幹細胞が皮膚創傷治癒に与える影響を検討してきた。
【0022】
まず、ラットの骨髄細胞のうちプラスチック接着細胞を10−15継代行う方法で幹細胞を得た。(Dexter.T.M.et.al:J.Cell.Phisiol.,91:5-44,1977)そしてこれらの細胞が多分化能を有することを確認後、ラット皮膚全層切開創に移植し、瘢痕がほとんどわからない状態に治癒したことを確認した。
【0023】
ところで、骨髄由来のプラスチック接着細胞に分化誘導をかけると、全ての細胞が同じように分化するわけではなく、その分化能に差があることがわかる。つまり、本発明者らがラット骨髄から得た細胞は多種類の細胞が混在している状態であると考えられる。そこで、これらのポリクローナルな細胞の中に、分化能が優れ、かつ創傷治癒に大きく影響を与える細胞が含まれている可能性を考え、細胞をクローニングし、その分化能の差異および創傷治癒に与える影響につき検討を行った。その結果、多種類の細胞が混在している状態で細胞移植を行ったほうが、瘢痕が目立たなくなることがわかった。
【0024】
本発明のラット由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、実施例において詳述するが、CD29、CD73、CD44およびCD90の少なくとも1つに陽性である。さらに、本発明のラット由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、CD45およびCD34の少なくとも1つに陰性である。本発明のラット由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、MHC Class Iには陽性であり、かつMHC Class IIには陰性である。
【0025】
本発明のラット由来の創傷治癒能を有するポリクローナルな間葉系細胞F344MSCは、2005年1月26日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM AP-20378として寄託されている。
【0026】
ラットから、本発明の間葉系細胞を取得する方法としては、特に限定されないが以下の手順で取得することができる。ラットを頚椎脱臼により致死させ、70%エタノールで充分消毒した後、大腿骨の皮膚ならびに大腿四頭筋を切除する。膝関節の部分にハサミをいれて関節をはずし、大腿骨背面の筋肉を除去する。股関節の部分にハサミを入れて関節を外し、大腿骨を取り出す。大腿骨に付着している筋肉をハサミでできるだけ除去した後、大腿骨の両端をハサミで切断する。骨の太さに応じた適当なサイズの針を2.5mlの注射器に装着し、10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM、DMEM、あるいはIMDM等の細胞培養用培地約1.5mlを注射器に充填した後、注射針の先端を大腿骨の膝関節側の断端に差し込む。注射器内の培養液を骨髄内に注入することで、股関節側の断端から骨髄細胞が押し出される。得られた骨髄細胞はピペッテイングにより培養液中に浮遊させる。該骨髄液からは、後述のヒト骨髄液からの骨髄細胞の単離と同様の方法により、本発明の間葉系細胞を単離することができる。詳細は実施例において説明する。
【0027】
[ブタ由来の間葉系細胞]
本発明は、ブタ由来の間葉系細胞であり、かつ創傷治癒能を有する細胞に関する。本発明のブタ由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、SWC3a、CD44、CD29、CD44HおよびCD90の少なくとも1つに陽性である。また、CD31陰性である。さらに、本発明のブタ由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、SLA Class Iには陽性であり、かつSLA DQ (Class II)およびSLA DR (Class II)には陰性である。
【0028】
本発明のブタ由来の間葉系細胞は、ブタの骨髄液から、後述のヒト骨髄液からの骨髄細胞の単離と同様の方法により単離することができる。
【0029】
[ヒト由来の間葉系細胞]
本発明は、ヒト由来の間葉系細胞であり、かつ創傷治癒能を有する細胞である。本発明のヒト由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、CD140b陽性である。そして、好ましくは、さらに、CD54、CD140b、SSEA4およびCD157の少なくとも1つに陽性である。さらには、CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つに陽性である。また、本発明のヒト由来の間葉系細胞は、CD140aが陰性である。さらに好ましくは、CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つに陰性である。また、本発明のヒト由来の創傷治癒能を有する間葉系細胞は、HLA-A,B,Cには陽性であり、HLA-DおよびHLA-DRには陰性である。
【0030】
本発明のヒト由来の間葉系細胞は、創傷を有する患者の骨髄、月経血または臍帯血から創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離し、単離した細胞を培養することで調製することができる。この細胞は、前記患者の創傷に移植するための創傷治癒能を有する間葉系細胞である。即ち、本発明では、自己の間葉系細胞を創傷に移植して創傷を治癒することができる。これにより瘡痕の残らない創傷治癒が可能である。
【0031】
以下に、骨髄から間葉系細胞を単離する方法を述べる。
(1)骨髄から、間葉系細胞を単離する方法
ヒトの骨髄より、本発明にとって有効な細胞を取得する方法としては、安全かつ効率的に取得される方法であれば特に限定されないが、文献(S. E. Haynesworth et al. Bone, 13, 81 (1992))に記載された方法に基づき行うことができる。
【0032】
胸骨または腸骨から骨髄穿刺を行う。骨髄穿刺を行う場所の皮膚面を消毒し、局所麻酔を行う。特に骨膜下を充分に麻酔する。骨髄穿刺針の内筒を抜き、5000unitsのヘパリンを入れた10ml注射器を装着して必要量の骨髄液を速やかに吸引する。平均的には10ml〜20mlの骨髄液を吸引する。骨髄穿刺針を取り外し、10分間程圧迫止血する。取得した骨髄液を1,000×gの遠心分離により骨髄細胞を回収した後、該骨髄細胞をPBS (Phosphate Buffered Saline)で洗浄する。本ステップを2回繰り返した後、該骨髄細胞を10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM (α-modified MEM)、DMEM (Dulbecco's modified MEM)あるいはIMDM (Isocove's modified Dulbecco's medium)等の細胞培養用培地に再浮遊させることにより骨髄細胞液を得ることができる。
【0033】
上記骨髄細胞液から、本発明の間葉系細胞を単離する方法としては、溶液中に混在する他の細胞、例えば血球系細胞、造血幹細胞、血管幹細胞および線維芽細胞などを除去できれば特に限定されないが、M. F. Pittenger et al. Science, 284, 143 (1999)に記載された方法に基づき骨髄細胞液を密度1.073g/mlのpercollに重層した後、1,100×gで30分間遠心分離して界面の細胞を回収することにより単離することができる。また、該骨髄細胞液に10×PBSを加えて9/10に希釈したpercollを同容量加えて混合した後に、20,000×gで30分間遠心分離し、密度1.075〜1.060の画分を回収することにより、目的とする細胞を含む骨髄細胞混合物を取得することができる。
【0034】
(2)骨髄以外の組織から、本発明の間葉系細胞を単離する方法
後述する抗体を用いた分離方法および培養方法により、間葉系細胞を、骨髄以外の組織からも取得することができる。骨髄以外の組織としては、好ましくは月経血、胎盤、臍帯血があげられる。具体的には、以下の方法で行うことができる。
【0035】
臍帯から臍帯血を分取し、ただちに500units/mlの終濃度になるようにヘパリンを加える。よく混合した後、遠心分離して臍帯血から細胞を分取し、10%のFBS(牛胎仔血清)を含むα-MEM (α-modified MEM)、DMEM (Dulbecco's modified MEM)あるいはIMDM (Isocove's modified Dulbecco's medium)等の細胞培養用培地に再浮遊させる。得られた細胞液から後述する抗体を利用して、本発明に有効な細胞を分離することができる。
【0036】
[分離した細胞の培養]
上記の方法により単離した、本発明の間葉系細胞を培養するために用いる培地としては、通常公知(組織培養の技術基礎編 第三版、朝倉書店1996)の組成の細胞培養用培地を用いることができるが、好ましくは牛等の血清を5〜20%添加した、α-MEM、DMEMあるいはIMDM等の細胞培養用培地などが用いられる。培養条件は、細胞が培養可能であればいかなる条件でもよいが、培養温度は33〜37℃が好ましく、さらに5〜10%の二酸化炭素ガスで満たした孵卵器で培養することが好ましい。本発明の間葉系細胞は、通常の組織培養用のプラスチック製培養皿に接着して増殖することが好ましい。細胞が培養皿一面に増殖する頃、培地を除去して、トリプシン EDTA溶液を加えることで細胞を浮遊させる。浮遊した細胞は、PBSあるいは該細胞培養用の培地で洗浄後、該細胞培養用の培地で5倍から20倍希釈して新しい培養皿に添加することで、さらに継代培養することができる。
【0037】
本発明においては、患者の骨髄から骨髄細胞液を採取し、得られた骨髄細胞液から、CD140b抗原をマーカーとして、前記創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離することができる。この場合、CD140b抗原が陽性である細胞を単離する。CD140b抗原が陽性である細胞の単離は、例えば、フローサイトメーターを用いて行うことができる。フローサイトメーターを用いて単離した細胞は、さらに、前記培養方法を用いて培養することもできる。
【0038】
さらに本発明においては、マーカーとして、CD54、CD140b、SSEA4およびCD157の少なくとも1つの抗原をさらに用いることができる。この場合、CD54、CD140b、SSEA4およびCD157の少なくとも1つの抗原が陽性である細胞を単離する。細胞の単離および単離した細胞の培養は、上記と同様である。
【0039】
さらに本発明においては、マーカーとして、CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つの抗原をさらに用いることができる。この場合、CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つの抗原が陽性である細胞を単離する。細胞の単離および単離した細胞の培養は、上記と同様である。
【0040】
あるいは、本発明においては、患者の骨髄から骨髄細胞液を採取し、得られた骨髄細胞液から、CD140a抗原をマーカーとして、前記創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離することができる。この場合、CD140a抗原が陰性である細胞を単離する。細胞の単離および単離した細胞の培養は、上記と同様である。
【0041】
さらに本発明においては、マーカーとして、CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つの抗原をさらに用いることができる。この場合、CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つの抗原が陰性である細胞を単離する。細胞の単離および単離した細胞の培養は、上記と同様である。
【0042】
本発明は、上記本発明のヒト由来の間葉系細胞、または上記本発明の方法で調製したヒト由来の間葉系細胞の有効量を患者の創傷に移植する、創傷の治療方法に関する。ヒト由来の間葉系細胞の有効量は、患者の創傷の程度や大きさ等を考慮して、医師等の専門家の診断に基づいて、適宜決定されるが、例えば、有効(移植)量は、例えば、1cmの縫合創に対し、細胞を約1×108個用いる。但し、この細胞数を目安とし、適宜、減少または増加させることはできる。
【0043】
また、ヒト由来の間葉系細胞の創傷への移植は、例えば、シリンジ等を用いて注入により行うことができる。移植の対象となる創傷には特に制限はないが、例えば、外傷、手術による縫合創等を挙げることができる。具体的には、培養増殖された間葉系細胞は、手術中、切開を加える直前に切開予定線周囲の真皮内に局注するという形で移植を行うことができる。あるいは、手術中、創縫合を行う直前に創縁の真皮内に局注するという形で移植を行うことができる。本発明のヒト由来の間葉系細胞の移植により、瘢痕の残らない創傷治療を行うことができる。
【0044】
本発明において、瘢痕の残らない創傷治療における「瘢痕の残らない」とは、「瘢痕が肉眼的に視認されない」状態を意味する。さらに、瘢痕が肉眼的に視認されないか、否かは、スコアリングによる評価方法によって、決定することができる。スコアリングは、以下の項目を用いて行うことができる。
【0045】
【表1】

【0046】
上記項目を用いたスコアリングによる評価は、具体的には以下のように行うことができる。
(1)評価対象である瘢痕を術後一定の間隔をあけて、例えば、術後3および6ヵ月後に、一定の条件で撮影する。例えば、撮影にはデジタルカメラを用いて行うことができ、例えば、デジタルカメラ撮影(コニカミノルタディマージュA1)、デルモスコープ(スカラ)により撮影される。
(2)撮影画像はプリントアウトされ、専門家によって、上記表に基づいてスコアリングされる。具体的には、プリントアウトには4800×2400dpi以上のプリンタ(例えば、キャノン PIXUS9900i)を用い、専門家としては、形成外科認定医であることが好ましい。さらに、評価する専門家は、好ましくは複数であることが、評価の客観性を担保するという観点から好ましい。具体的には、例えば、3人の形成外科認定医により上記表に基づいてスコアリングされることが好ましい。
(3)採点は、単独の評価者の満点は、12点であり、複数の評価者が評価を行う場合は、これらの点数が合計加算される。例えば、3人の形成外科認定医による評価の場合、最高は36点である。本発明においては、スコアリングの結果が満点であることが最も好ましいが、「瘢痕が肉眼的に視認されない」状態である、という観点からは、満点の80%以上のスコアであれば、実質的に「瘢痕が肉眼的に視認されない」状態である、とし、好ましくは90%以上のスコアであり、最も好ましくは100%(満点)である。
【0047】
本発明の間葉系細胞の移植前に、瘢痕があった患者の場合、本発明の間葉系細胞の移植による瘢痕消失は、例えば、術前と術後の創傷箇所の画像を上記スコアリングによる評価に供し、術前と術後のスコアを比較することで、瘢痕消失の評価を行うことができる。また、術前に創傷がない患者の場合、術後の創傷箇所の画像のみを上記コアリングによる評価に供し、スコア(点数)によって、「瘢痕が肉眼的に視認されない」状態であることを確認できる。
【0048】
本発明の上記移植においては、創傷に応じて、医師等の専門家の診断に基づいて、本発明の間葉系細胞に加えて、例えば、bFGF、HGF、レチノイン酸、およびビタミンAからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに患者の創傷に移植することもできる。
【0049】
本発明は、上記本発明のヒト由来の間葉系細胞または上記本発明の方法で調製したヒト由来の間葉系細胞を有効成分として含有する、創傷治療剤に関する。この創傷治療剤は、必要により、例えば、bFGF、HGF、レチノイン酸、およびビタミンAからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することもできる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に示す。
実施例1
「ラット骨髄由来間葉系幹細胞の培養」
成獣F344オスラットの大腿骨より骨髄を採取してプラスチックディッシュに播種し、10-15継代培養して得られた細胞を使用した。培養液は10%FBSと1%Penicillin-Streptomycin添加のDMEMを用いた。
【0051】
「細胞の多分化能の確認(間葉系幹細胞の証明)」
Adipogenesis(脂肪細胞への分化能)を確認するため「DMEM+10%FBS+5μg/ml insulin+10-8M dexamethasone」の培養液で3週間培養を行った。脂肪分化誘導の評価のために中性脂肪を染色するoil red O染色法を行った。Osteochondrogenesis(骨・軟骨細胞への分化能)を確認するため「DMEM+10%FBS + 10mM β-glycerophosphate + 50μg/ml ascorbic acid +10-8M dexamethasone」の培養液で3週間培養を行った。軟骨への分化の評価には軟骨基質を染色するアルシアンブルー染色法を用いた。
【0052】
Myogenesis(骨格筋細胞への分化能)を確認するため「DMEM+10%FBS+0.1%fungizone」の培養液で7日間培養を行い、7日目からは「DMEM+10%FBS」で2週間培養を行った。抗ミオシン抗体で免疫染色を行いDABで発色させた。
【0053】
ラット骨髄由来の細胞は多分化能を有していた。上記方法で分化を誘導した結果、脂肪形成(Adipogenesis)、軟骨形成(Osteochondrogenesis)、筋発生(Myogenesis)(図1)が認められ、我々が培養したプラスチック接着細胞は多分化能を有しており、間葉系幹細胞であると考えられた。
【0054】
ここで得られた本発明のラット由来のポリクローナルな間葉系細胞(F344MSC)は、2005年1月26日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM AP-20378として寄託されている。
【0055】
実施例2
「間葉系幹細胞の皮膚全層切開創への移植」
細胞はDiIで標識したうえ、低用量(Low density)群は 4×105個、高用量(High density) 群は 4×106個に細胞数を調整し、ラットの背部4ヶ所の真皮に0.1mlの細胞浮遊液を局注し、直後に1cmの皮膚全層切開を加えた。コントロールはPBSを用いた。7、14日目に肉眼的観察を行い、14日目に創を採取した。14日目の創はホルマリン固定し、パラフィン包埋後、Masson-Trichrome染色を行った。組織はSingerらの方法(表1)で点数化した。
【0056】
「間葉系幹細胞のクローニング、その多分化能と皮膚全層切開創への移植」
96穴プレートを用い、結果的に骨髄由来間葉系幹細胞の101のクローン細胞を作成した(図2)。これらの細胞を細胞培養液で培養し、21日目に多分化能を確認した。これらの細胞のうち特に多分化能が優れていると思われる細胞 (モノクローナルO) とクローニングを行わなかった細胞(ポリクローナル)を4×106個に細胞数を調整し、ラット全層切開創に骨髄間質細胞を移植した。組織はSingerらの方法(図2)で点数化した。
【0057】
「ラット皮膚全層切開創への細胞移植の結果」
7日目の肉眼的観察結果では、コントロール(Control)、低用量(Low density)においてわずかに創を認識できるが、高用量(High density)では創が認識しづらくなっている(図3)。14日目の高用量(High density)の創はさらに認識できなくなっている(図4)。14日目の組織像ではコントロールでは創の範囲に一致して膠原線維の乱れと皮膚付属器の欠損を認めた。低用量(Low density)では膠原線維の乱れが明らだった。高用量(High density)では創の範囲が正常と比べ、判別が困難だった(図5)。創作成14日目の蛍光写真像では低用量(Low density), 高用量(High density)ともに創の範囲に一致して移植細胞が遊走し分布していることがわかった(図6)。
【0058】
次に、Singerらによる組織像の評価法を用い、ラットの創の評価を行った。図2のように8項目の有無によりスコアリングするもので、あり(Present)、なし(Absent)で採点し、最高点が10点で、良好に治癒した創であると判断される。14日目の創を評価すると、コントロールは平均1.5点, 低用量(Low density)は3.25点, 高用量(High density)は4.5点となり、コントロールと細胞移植群との間に有意差を認めた(図7)。以上より、間葉系細胞は皮膚の瘢痕を目立たなく治療する能力を有すること、組織学的に、膠原線維の配列を正常化すること、移植細胞数は多い方が有効であることが確認された。
【0059】
「クローニングした細胞の多分化能と皮膚全層切開創への移植」
Oil red O染色法では全ての細胞が脂肪細胞へ分化したことがわかった。このうち1種類のアルファベット順にOと名づけた細胞は特に大きな脂肪滴を有しており、他の細胞とは明らかに異なる細胞形態を認めた(図8)。アルシアンブルー染色法では、60.4%が軟骨細胞へ分化したことがわかった。Oと名づけた細胞は特に強陽性の細胞を多く認めた(図9)。抗ミオシン抗体で免疫染色を行いDABで発色させると92.7%が筋細胞に分化したことがわかった(図10)。以上の分化誘導の結果から、骨髄間葉系幹細胞は分化能の異なる細胞が多種類混在している状態であること、Oの細胞の多分化能が特徴的であり、さらに幅広い分化能を有している可能性が考えられた。
【0060】
次に分化能の優れている細胞O(モノクローナルO(Monoclonal O))と多種類が混在した骨髄由来間葉系幹細胞(ポリクローナル(Polyclonal))をラットの背部に局注し、直後に1cmの皮膚全層切開を加えた。その結果、移植後14日目で肉眼的にコントロール, モノクローナルOにおいてわずかに創を認めるが、ポリクローナルでは創がはっきりしない状態に治癒した(図11)。14日目のMasson-Trichrome染色による組織像では、分化能が特徴的なOの細胞を移植した創では膠原線維の配列が乱れていることがわかるが、ポリクローナルの細胞では瘢痕の範囲が不明瞭だった(図12)。Singerらによる組織像の評価法ではコントロールは1.5点,モノクローナルOは2.75点, ポリクローナルは4.5点となり、モノクローナル Oはコントロールとの有意差はなかったが、ポリクローナルとコントロールの間では有意差を認めた(図13)。以上より、瘢痕形成抑制には骨髄細胞のうちプラスチック接着細胞を複数回継代した細胞の移植が有効であること、複数種類の細胞が混在している状態で移植することが必要であることがわかった。
【0061】
実施例3
「組織および細胞における成長因子の発現」
ポリクローナル 、モノクローナル O, モノクローナル Gの細胞数を4×106個に調整し、同様にラット背部に局注して皮膚全層切開を加えた。3,5,7日目に創より1mm離して筋膜上で創を採取し、ホモジネート後ウエスタン ブロッティングを行った。また、ポリクローナル 、モノクローナル O, モノクローナル Gそれぞれの細胞をホモジネート後ウエスタン ブロッティングを行った。
【0062】
組織のウエスタン ブロッティングの結果ではHGFは3日目に全ての創に発現していたが、特にポリクローナル細胞移植群にコントロールと比較して強い発現を認めた(図14)。TGFβ1は3日目にコントロール、ポリクローナル細胞移植群ともに弱いがほぼ同等の発現を認めた(図15)。細胞のウエスタン ブロッティングの結果では、ポリクローナル細胞にHGFの強い発現を認めたが、Oの細胞にはほとんど発現を認めなかった(図16)。TGFβ1はいずれの細胞にも発現を認めなかった。以上よりラットポリクローナル細胞移植群の組織およびポリクローナル細胞に早期にHGFが強く発現されており、その結果TGF−β1による線維化が抑制され、瘢痕形成が抑制されている可能性が考えられた。
【0063】
「炎症細胞の出現」
CD11bの免疫染色の結果、CD11b陽性細胞をカウントすると、3日目、5日目共にポリクローナル細胞移植群でCD11b陽性細胞の数が有意に減少していた(図17)。ED1の免疫染色の結果、ED1陽性細胞をカウントすると、3日目、5日目共にポリクローナル細胞移植群で創内のED1陽性細胞の数が有意に減少していた(図18)。以上よりラット骨髄由来間葉系幹細胞(ポリクローナル)を移植することで、創傷治癒の炎症期の炎症細胞浸潤が抑制され、瘢痕形成抑制に寄与している可能性が示唆された。
【0064】
実施例4
「ラット骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析」
ラット骨髄間葉系細胞のプロファイリングのために、フローサイトメーター(FC500, Beckman Coulter社製)を用いてラット骨髄細胞(F344MSC)の表面抗原の解析を行った。
【0065】
解析に用いたのは、CD29(integrin β1)、CD31(PECAM-1)、CD44H(Pgp-1/HCAM)、CD45(Leukocyte common antigen)、CD73(ecto-5'-nucleotidase)、CD90(Thy-1)、RT1Aa,b,l(MHC ClassI)、Rat I-A(MHC ClassII)の8種類である。
【0066】
フローサイトメトリー用緩衝液(1% FBS-PBS)に懸濁したF344MSC細胞に各抗体を0.5μg/5x105cells/0.2mlの濃度で加えて氷中で30分間反応させた。
ネガティブコントロールには、アイソタイプコントロール抗体と反応させた細胞を用いた。
FITC標識あるいはPE標識抗体で処理した細胞は、10倍量の緩衝液で洗浄後0.5mlに懸濁した。
フローサイトメーター(FC500, Beckman Coulter社製)で蛍光強度を測定し、ネガティブコントロールに対する蛍光強度の変化量を抗原分子の発現の有無の判定に用いた。フローサイトメーター測定結果は図19および20に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例5
「ブタ骨髄由来間葉系幹細胞の培養および多分化能の検討」
生後4週のブタL.W.D.種を2匹使用した。骨髄より骨髄血を採取し、プラスチックディッシュに接着する細胞を培養し、3-4継代行った。培地は非働化FBS20%、1%Penicillin-Streptomycin添加のDMEMを用いた。この細胞の一部を骨細胞、脂肪細胞へ分化させる誘導培地で2週間培養し、von Kossa染色、oil red O染色で多分化能を検討した。
【0069】
「ブタ骨髄由来間葉系幹細胞の移植」
次に、骨髄由来細胞をCell Trackerで標識し、ブタ背部に一ヶ所あたり1.5×107個の細胞を皮内に局注(自家移植)し、直後に2cm長さの皮膚全層切開を加えた(n=17)。PBSを局注した創をコントロールとした。術後4週間目に創はデルモスコープとデジタルカメラで撮影し、肉眼的評価を行った。また、組織はホルマリン固定後、HE染色、Masson-Trichrome染色を行い、Singerらの方法で評価を行った。
【0070】
ブタ骨髄由来プラスチック接着細胞を分化誘導すると、骨細胞、脂肪細胞へ分化することが確認され、採取した細胞は間葉系幹細胞であることが証明された(図21)。この細胞を皮膚全層切開創に移植すると肉眼的に細胞移植群は創治癒が早く、瘢痕形成が抑制された(図22,23)。組織学的には細胞移植群では膠原線維の形成および配列が良好であった(図24)。以上よりブタ皮膚においても骨髄由来間葉系幹細胞は瘢痕抑制効果を有することが確認され、ヒトにおいても同様の効果が期待できると考えられた。
【0071】
実施例6
ブタ骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
ブタ骨髄間葉系細胞のプロファイリングのために、フローサイトメーター(FC500,Beckman Coulter社製)を用いて実施例5で得たブタ骨髄間葉系細胞(ZS15細胞)の表面抗原の解析を行った。
解析に用いたのは、CD29(integrin β1)、CD31(PECAM-1)、CD44(Pgp-1)、CD44H(Pgp-1, Hermes antigen)、CD90(Thy-1)、MHC Class I(SLA Class I)、SLA-DQ(MHC ClassII)、SLA-DR(MHC Class II)、
SWC3a(Monocyte/Granulocyte)の9種類である。
フローサイトメトリー用緩衝液(1% FBS-PBS)に懸濁した骨髄間葉系細胞に各抗体を2μg/5x105cells/0.2mlの濃度で加えて氷中で30分間反応させた。
ネガティブコントロールとしては、アイソタイプコントロール抗体と反応させた細胞を用いた。
FITC標識あるいはPE標識抗体で処理した細胞は、10倍量の緩衝液で洗浄後0.5mlに懸濁した。
未標識の1次抗体で処理した細胞は、10倍量の緩衝液で洗浄後、2μg/5x105cells/0.2mlの濃度の抗マウスIg-PE標識抗体または抗ラットIg-PE標識抗体と氷中で30分間反応させ、10倍量の緩衝液で洗浄後0.5mlに懸濁した。
フローサイトメーター(FC500, Beckman Coulter社製)で蛍光強度を測定し、ネガティブコントロールに対する蛍光強度の変化量を抗原分子の発現の有無の判定に用いた。フローサイトメーター測定結果は図25〜27に示す。
【0072】
【表3】

未標識またはFITC標識の抗体を使用した場合、未標識またはFITC標識の抗体を用いて反応を行い、次いで抗マウスIg-PE標識抗体処理後、フローサイトメーターで測定した。
【0073】
実施例7
「ヒト骨髄間葉系細胞の培養および多分化能の検討」
ヒトの骨髄より骨髄血を採取し、プラスチックディッシュに接着する細胞を培養し、3-4継代行った。培地は非働化FBS20%、1%Penicillin-Streptomycin添加のDMEMを用いた。これにより、本発明の間葉系細胞を得た。
【0074】
実施例8
「ヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析」
ヒト骨髄間葉系細胞のプロファイリングのために、フローサイトメーター(FC500, Beckman Coulter社製)を用いて実施例7で得た細胞(Yub10F)の表面抗原の解析を行った。
【0075】
解析に用いたのは、CD9(p24/MRP-1) ,CD13(aminopeptidase N),CD14(LPS/LBP receptor), CD29(integrin β1), CD31(PECAM-1), CD34(O-glycosylated transmembrane glycoprotein), CD44(Pgp-1/HCAM), CD45(Leukocyte common antigen), CD50(ICAM-3), CD54(ICAM-1), CD55(DAF), CD59(HRF20), CD73(ecto-5'-nucleotidase), CD81(TAPA-1), CD90(Thy-1), CD105(endoglin), CD106(VCAM-1), CD117(c-kit), CD133(AC133/PROML1), CD135(FLT3/FLK2), CD140a(PDGFRα), CD140b(PDGFRβ), CD157(BST-1), CD166(ALCAM), CD243(MDR-1), CD338(ABCG2/BCRP1), STRO-1, SSEA-1(stage-specific embryonic antigen-1), SSEA-3(stage-specific embryonic antigen-3), SSEA-4(stage-specific embryonic antigen-4), HLA-ABC(MHC Class I), HLA-D(DR,DP,DQ) (MHC Class II), HLA-DR(MHC Class II)である。
【0076】
フローサイトメトリー用緩衝液(1% FBS-PBS)に懸濁した骨髄間葉系細胞(Yub10F)に各抗体を0.5μg/5x105cells/0.2mlの濃度で加えて氷中で30分間反応させた。
ネガティブコントロールには、アイソタイプコントロール抗体と反応させた細胞を用いた。
FITC標識あるいはPE標識抗体で処理した細胞は、10倍量の緩衝液で洗浄後0.5mlに懸濁した。
未標識の1次抗体で処理した細胞は、10倍量の緩衝液で洗浄後、0.5ug/5x105cells/0.2mlの濃度の抗マウスIg-PE標識抗体または抗マウスIgM-PE標識抗体と氷中で30分間反応させ、10倍量の緩衝液で洗浄後0.5mlに懸濁した。
フローサイトメーター(FC500, Beckman Coulter社製)で蛍光強度を測定し、ネガティブコントロールに対する蛍光強度の変化量を抗原分子の発現の有無の判定に用いた。フローサイトメーター測定結果は図28〜36に示す。
【0077】
【表4】


未標識の抗体を使用した場合、未標識の抗体を用いて反応を行い、次いで抗マウスIg-PE標識抗体または抗ラットIgM-PEラット標識抗体処理後、フローサイトメーターで測定した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、創傷治療および治療剤の分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ラット骨髄由来細胞が示す多分化能
【図2】Singerらの方法による点数化の説明
【図3】ラット皮膚全層切開創への細胞移植後、7日目の肉眼的観察結果
【図4】ラット皮膚全層切開創への細胞移植後、14日目の肉眼的観察結果
【図5】ラット皮膚全層切開創への細胞移植後、14日目の組織学的解析
【図6】ラット皮膚全層切開創への細胞移植後、14日目の蛍光組織像
【図7】移植細胞密度(細胞数)による瘢痕治癒の組織学的スケーリング
【図8】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)の脂肪細胞分化
【図9】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)の軟骨細胞分化
【図10】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)の骨格筋細胞分化.抗ミオシン抗体による免疫組織学的解析結果
【図11】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)による、細胞移植後14日における創傷治癒巣の肉眼像
【図12】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)による、細胞移植後14日における創傷治癒巣の組織像
【図13】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)による、ラット皮膚全層切開創への細胞移植後14日目における瘢痕治癒の組織学的スケーリング
【図14】細胞移植後3日後および5日後における、皮膚組織のHGF(Hepatocyte growth factor)の、ウエスタンブロット解析
【図15】細胞移植後3日後および5日後における、皮膚組織のTGF-beta1(Transforming growth factor-beta1)の、ウエスタンブロット解析
【図16】クローニングした細胞(Monoclonal)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)における、HGF(Hepatocyte growth factor)の、ウエスタンブロット解析
【図17】クローニングした細胞(Monoclonal: O, G)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)を移植後3日目および5日目における、創傷治癒部位でのCD11b陽性細胞(炎症細胞)出現頻度
【図18】クローニングした細胞(Monoclonal: O, G)とクローニングしていない細胞(Polyclonal)を移植後3日目および5日目における、創傷治癒部位でのED1陽性細胞(炎症細胞)出現頻度
【図19】フローサイトメートリーによるラット骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図20】フローサイトメートリーによるラット骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図21】ブタ骨髄由来細胞の脂肪分化ならびに骨分化(位相差顕微鏡像)
【図22】ブタ皮膚全層切開創の創傷治癒過程における肉眼的観察結果(コントロール)
【図23】ブタ皮膚全層切開創に対して細胞移植後の肉眼的観察結果
【図24】ブタ皮膚全層切開創に対して細胞移植後の組織学的観察結果
【図25】フローサイトメートリーによるブタ骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図26】フローサイトメートリーによるブタ骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図27】フローサイトメートリーによるブタ骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図28】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図29】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図30】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図31】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図32】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図33】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図34】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図35】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析
【図36】フローサイトメートリーによるヒト骨髄間葉系細胞の表面抗原の解析

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物由来の間葉系細胞であり、かつ創傷治癒能を有する細胞。
【請求項2】
哺乳動物の骨髄、月経血または臍帯血から得られる創傷治癒能を有する間葉系細胞。
【請求項3】
哺乳動物の骨髄から得られる細胞である請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
瘢痕の残らない創傷治療用である請求項1または2に記載の細胞。
【請求項5】
哺乳動物がラットである請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項6】
CD29、CD73、CD44HおよびCD90の少なくとも1つに陽性である請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
CD 45およびCD31の少なくとも1つに陰性である請求項5または6に記載の細胞。
【請求項8】
FERM AP-20378である請求項5に記載の細胞。
【請求項9】
哺乳動物がブタである請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項10】
SWC3a、CD44、CD29、CD44HおよびCD90の少なくとも1つに陽性である請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
CD31陰性である請求項9または10に記載の細胞。
【請求項12】
哺乳動物がヒトである請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項13】
CD140b陽性である請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
CD54、SSEA-4およびCD157の少なくとも1つに陽性である請求項12または13に記載の細胞。
【請求項15】
CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つに陽性である請求項12〜14のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項16】
CD140aが陰性である請求項12〜15のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項17】
CD50、CD117、CD133、STRO-1、CD14、CD135、SSEA-1、SSEA-3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つに陰性である請求項11〜16のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項18】
創傷を有する患者の骨髄、月経血または臍帯血から創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離し、単離した細胞を培養する、前記患者の創傷に移植するための創傷治癒能を有する間葉系細胞の調製方法。
【請求項19】
前記患者の骨髄から骨髄細胞液を採取し、得られた骨髄細胞液から、CD140b抗原をマーカーとして、前記創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離する請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
CD140b抗原が陽性である細胞を単離する請求項19に記載の調製方法。
【請求項21】
マーカーとして、CD54、SSEA4およびCD157の少なくとも1つの抗原をさらに用いる請求項19または20に記載の調製方法。
【請求項22】
CD54、CD140b、SSEA4およびCD157の少なくとも1つの抗原が陽性である細胞を単離する請求項21に記載の調製方法。
【請求項23】
マーカーとして、CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つの抗原をさらに用いる請求項19〜22のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項24】
CD9、CD13、CD59、CD29、CD73、CD81、CD90、CD44、CD105、CD166およびCD106の少なくとも1つの抗原が陽性である細胞を単離する請求項23に記載の調製方法。
【請求項25】
前記患者の骨髄から骨髄細胞液を採取し、得られた骨髄細胞液から、CD140a抗原をマーカーとして、前記創傷治癒能を有する間葉系細胞を単離する請求項18〜24のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項26】
CD140a抗原が陰性である細胞を単離する請求項25に記載の調製方法。
【請求項27】
マーカーとして、CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つの抗原をさらに用いる請求項25または26に記載の調製方法。
【請求項28】
CD50、CD117、CD133、STRO1、CD14、CD135、SSEA1、SSEA3、CD31、CD34、CD45およびCD243の少なくとも1つの抗原が陰性である細胞を単離する請求項27に記載の調製方法。
【請求項29】
請求項11〜17のいずれかに記載の創傷治癒能を有する間葉系細胞または請求項を18〜28のいずれか1項に方法で調製した創傷治癒能を有する間葉系細胞の有効量を患者の創傷に移植する、創傷の治療方法。
【請求項30】
前記移植は、切開を加える直前に切開予定線周囲の真皮内に創傷治癒能を有する間葉系細胞を局注することで行う請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記移植は、創縫合を行う直前に創縁の真皮内に創傷治癒能を有する間葉系細胞を局注することで行う請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞の移植により、瘢痕の残らない創傷治療を行う請求項29〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
bFGF、HGF、レチノイン酸、およびビタミンAからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに患者の創傷に移植する請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項12〜17のいずれかに記載の創傷治癒能を有する間葉系細胞または請求項を18〜28のいずれか1項に方法で調製した創傷治癒能を有する間葉系細胞を有効成分として含有する、創傷治療剤。
【請求項35】
切開を加える直前に切開予定線周囲の真皮内に局注することで行われる移植に用いられるための請求項34に記載の創傷治療剤。
【請求項36】
創縫合を行う直前に創縁の真皮内に局注することで行われる移植に用いられるための請求項34に記載の創傷治療剤。
【請求項37】
bFGF、HGF、レチノイン酸、およびビタミンAからなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する請求項34〜36のいずれか1項に記載の治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2006−230316(P2006−230316A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51661(P2005−51661)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】