説明

癌の光線力学療法のための標的化されたナノフォトメディスン

本発明は、光増感剤含有ナノ粒子であって、前記ナノ粒子の少なくとも一部の全体にわたってナノ粒子マトリックス材料に共有結合で結合し、かつ、準凝集状態でその中に組み込まれた光増感剤を含む光増感剤含有ナノ粒子に関する。本発明はさらに、本発明のナノ粒子を作製する方法、および前記ナノ粒子を使用してPDT治療によって癌細胞を死滅させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の療法および癌の治療において使用するための治療用製剤に関する。特に、本発明は、癌の光線力学療法において使用するためのナノメディスン(nanomedicine)、ならびに前記ナノメディスンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光線力学療法(PDT)は、多くのタイプの癌および多様な非悪性の状態を治療するための新生の治療様式である。PDTにおいて、光増感剤の光活性化は、血漿、ミトコンドリア、リソソーム、および核膜を含む細胞区画を酸化的に破壊することができる一重項酸素(1O2)のような活性酸素種(ROS) 、遊離ラジカルまたは過酸化物を発生し、これらは、結果として腫瘍細胞を不可逆的に損傷させることになる。適切な条件下で、光線力学療法は、隣接した健常な組織を損傷させることなく病的な組織を破壊する有効かつ選択的な方法の利点を与える。しかし、現在の治療(例えば、外科手術、放射線療法、および化学療法)を超えるPDTの利点にもかかわらず、それが主流の癌の療法手段として一般的に臨床に受け入れられることはいまだにきわめて少ない。これは、現在のPDT技術のいくつかの決定的な限界、例えば、感光性薬剤の非特異的な生体分布による身体の長期にわたる光感受性、光スペクトルのより良好な組織透過領域での薬剤の弱い光吸収、結果として循環における無制御な凝集および投与における難しさにつながるPS薬剤の疎水性、親水性薬剤の速い光退色、結果として標的部位での薬剤の最適な濃度の欠如につながる非特異的な薬剤局在などのためである。
【0003】
PDTに対する従来のアプローチの有効なターゲティングの欠如を考慮に入れ、現況技術は、標的光線力学療法のための結合体(この結合体は、光増感剤をターゲティングリガンド、例えば、モノクローナル抗体、ペプチド、葉酸などと結合させる)を開発する必要があり、開発が続けられている。これらのアプローチは、標的光線力学療法において使用される同じターゲティングリガンドに結合した小さな蛍光分子を組み込んだ標的光学診断用結合体の開発と密接に関連していることに注意することが重要である。しかし、現況技術の標的PDTは、いくつかの重大な課題を有する。1)最も有効な光増感剤は、本質的に水溶解性に乏しい疎水性の性質であり、脂質環境に高い親和性を有する。これは、以下の2つの結果を有する:第一に、光増感剤結合体は、生理的条件で注射されたときに、血漿タンパク質に結合する凝集体を形成し、小胞体の(endoreticular)システムによって宿主から除去される。これは、任意の標的組織において達成されうる、結合体の有効な濃度を制限する。第二に、光増感剤結合体が標的細胞と相互作用するときに、その高い親油性が細胞の非特異的な細胞の取り込みを促進する。この過程は、活性なレセプターのターゲティングと競合し、結果として該標的レセプターを発現しない正常細胞内での結合体の蓄積をもたらす。2) 1個の光増感剤分子が1個のターゲティングリガンドに結合するという事実は、限りある数のレセプターを有する細胞内に組み込むことのできる光増感剤の量を制限しうることを意味する。1個のターゲティングリガンドに複数の光増感剤分子(またはその前駆体)を結合するために努力がなされてきたが、このことは重大な問題として残っている。また、遊離光増感剤の1つの重要な特性は、活性酸素種の発生によってそれ自身が破壊されることであり、光増感剤-リガンド結合体においても同様の作用が生じる。この作用は、組織に送達されうる活性酸素の全用量を制限する。したがって、レセプターあたり高濃度の光増感剤を達成することがきわめて重大である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7364754号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、光線力学療法における使用に好適な光増感剤含有ナノ粒子の作製のための方法であって、
- ナノ粒子前駆体分子を提供する段階と、
- 前記ナノ粒子前駆体分子に光増感剤を結合させて光増感剤結合型ナノ粒子前駆体を提供する段階と、
- 前記光増感剤結合型ナノ粒子前駆体から、前記ナノ粒子前駆体の溶液沈澱または自己集合によってナノ粒子を形成する段階と
を含む方法を提供する。
【0006】
きわめて好ましい実施形態において、本発明は、分子イメージングを用いた標的光線力学療法における使用に好適な光増感剤含有ナノ粒子の作製のための方法であって、
- ナノ粒子前駆体分子を提供する段階と、
- 前記ナノ粒子前駆体分子に光増感剤を結合させて光増感剤結合型ナノ粒子前駆体を提供する段階と、
- 該光増感剤-ナノ粒子前駆体結合体に磁気造影剤および/または光造影剤(optical contrast agent)を組み込む段階と、
- 磁気造影剤および/または光造影剤を含有する前記光増感剤-ナノ粒子前駆体混合物から溶液沈澱または分子自己集合によってナノ粒子を形成する段階と
を含む方法を提供する。
【0007】
前記方法の好ましい一実施形態において、前記ナノ粒子は、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属酸化物、キトサン、カルボキシメチルキトサン(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンイミン(PEI)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびこれらの組合せからなる群から選択される材料から形成される。
【0008】
前記方法の他の好ましい一実施形態において、前記金属酸化物はシリカであり、前記前駆体分子はオルトケイ酸塩であり、前記ナノ粒子は、塩基性pHの条件下かつコロイド状シリカナノ粒子を形成するための超音波処理下での加水分解および凝縮によるケイ酸塩粉末の形成のためのゾル-ゲル法によって形成される。
【0009】
前記方法のさらに他の好ましい一実施形態において、前記光増感剤は、クロリンe6 (Ce6)、メソ-テトラ(3-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(benzoporphyrin derivative monoacid ring A)(BPDまたはベルテポルフィン)、フォトフリン、テモポルフィン(Foscan (登録商標))、ローズベンガル、金属フタロシアニンおよびこれらの組合せから選択される。
【0010】
他の一態様において、本発明は、上記のような本発明による方法によって得ることができる光増感剤含有ナノ粒子を提供する。
【0011】
他の一態様において、本発明は、光増感剤含有ナノ粒子であって、前記ナノ粒子の少なくとも一部の全体にわたってナノ粒子マトリックス材料に共有結合で結合、かつ、モノマー分子と凝集した分子との混合物としてその中に組み込まれた光増感剤を含み、前記ナノ粒子のソーレー帯吸収に対するQ帯吸収の比率が0.05と1.0との間の値を有する光増感剤含有ナノ粒子を提供する。
【0012】
本発明の態様の好ましい一実施形態において、前記ナノ粒子は、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属酸化物、キトサン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンイミン(PEI)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、およびこれらの組合せからなる群から選択される材料から形成される。
【0013】
本発明のきわめて好ましい実施形態において、前記ナノ粒子は金属酸化物から形成され、好ましくは、前記金属酸化物はシリカである。
【0014】
本発明によるナノ粒子のさらに他の好ましい一実施形態において、前記光増感剤は、クロリンe6 (Ce6)、メソ-テトラ(3-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A (BPDまたはベルテポルフィン)、フォトフリン、テモポルフィン(Foscan (登録商標))、ローズベンガル、金属フタロシアニンおよびこれらの組合せから選択される。
【0015】
本発明によるナノ粒子のさらに他の好ましい一実施形態において、前記ナノ粒子は、光造影剤および/または磁気造影機能(magnetic contrast functionality)でドープされる。
【0016】
さらに他の好ましい一実施形態において、該光造影剤は、Mn、Cu-AlもしくはCu-ハロゲンでドープされたZnSの発光量子ドットである。
【0017】
さらに他の好ましい一実施形態において、該磁気造影機能は、ナノフォトメディスン(nanophotomedicine)をGd3+、Fe3+またはMn2+でドープすることによって提供される。
【0018】
さらに他の好ましい一実施形態において、前記ナノ粒子は、最も外側の表面に共有結合で連結された癌ターゲティングリガンドを含有する。この癌ターゲティングリガンドは、オクトレオチドであることが好ましい。
【0019】
他の一態様において、本発明は、上記のような本発明によるナノ粒子を、薬学的に許容される担体と共に含む、注射用組成物または経口投与用組成物を提供する。
【0020】
他の一態様において、本発明は、PDT治療によって癌細胞を死滅させる方法であって、前記癌細胞を上記のような本発明によるナノ粒子と接触させる段階と、前記ナノ粒子に治療有効量の光を照射して前記ナノ粒子からの一重項酸素発光を誘起する段階とを含む方法を提供する。
【0021】
他の一態様において、本発明は、イメージングを用いたPDT治療によって癌細胞を死滅させる方法であって、前記癌細胞を上記のような本発明によるナノ粒子と接触させる段階と、前記ナノ粒子に治療有効量の光を照射して前記ナノ粒子からの一重項酸素発光を誘起する段階とを含み、該ナノ粒子が光造影剤および/または磁気造影剤でドープされ、前記照射の方向が、該癌細胞の部位、大きさおよび広がりを示すためのマーカーとして該光造影剤または磁気造影剤を使用するイメージング技術によって誘導される方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1において説明している実験の結果:大きさ90〜100nmのシリカベースのナノフォトメディスンの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例1〜3において説明している実験の結果:フリーのフォトメディスンの吸収と比較して、654nmでのNPM-1、NPM-2およびNPM-3の吸収において特定の処理条件による規則的な増加を示しているシリカ中のクロリンe6ベースの蛍光励起スペクトルナノフォトメディスンを示す図である。
【図3】実施例4において説明している実験の結果:フリーのmTHPCのものと比較して、赤吸収帯において約6倍の増強を導いている励起スペクトルの完全な改変を示しているシリカ中のmTHPCベースのナノフォトメディスンのフォトルミネセンス励起スペクトルを示す図である。
【図4】実施例5において説明している実験の結果を示す図である:ナノフォトメディスンの光分解特性を、ほぼ同じ初期蛍光強度を有するフリーのクロリンe6と比較している。フリーのCe6は、光増感の間に生成される一重項酸素によって、きわめて速い光退色特性を示した一方、NPMは、10Jの照射の後でさえも薬剤の光安定性が延長される結果となる完全に異なる非直線的な退色特性を示した。
【図5】実施例6において説明している実験の結果を示す図である:レーザー照射下(405nm、30秒、左パネル)の癌細胞内のフリーのクロリンe6の速い光退色の共焦点顕微鏡画像に対して、ナノフォトメディスンで処理した細胞内の薬剤の感光性は、長い照射(360秒、右パネル)の後でさえも示される。
【図6】実施例7において説明している実験の結果: ZnS : Mn QDでドープされたナノフォトメディスンからの蛍光放射を示している、a) X線回折、b)フォトルミネセンス(PL)スペクトルおよびc)デジタル写真を示す図である。
【図7】実施例10において説明している実験の結果:フリーのフォトメディスン(Ce6)の反磁性の特性に対してMRIイメージングに好適な、Gd3+でドープされたナノフォトメディスンの常磁性の特性を示している、振動試料磁力計データを示す図である。
【図8】実施例10において説明している実験の結果:水およびフリーのCe6をリファレンスとした、異なる濃度のナノフォトメディスン(NPM)のMRIファントムイメージングを示す図である。
【図9】実施例11において説明している実験の結果: sst2レセプター+ve癌細胞(K562)による、ペプチドを結合したナノフォトメディスンの効率的な細胞内取り込みを示している共焦点顕微鏡画像を示す図である。
【図10】実施例11において説明している実験の結果:同濃度のフリーのクロリンe6および対照ナノ粒子と比較した、ナノフォトメディスンで処理したK562細胞における細胞死の増加(低い細胞生存度)を示している癌細胞の光線力学療法データを示す図である。図10は、654nmにおける吸光度に依存して、NPMのPDT効果がより良好であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書中で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、大きさが約20〜500nm、好ましくは50〜200nm、最も好ましくは約100nmと測定される微結晶粒子または一次粒子を指す。ナノ粒子は、ポリマーナノ粒子を含む、有機または無機のナノ粒子でありうる。該粒子は、乾燥粉末または分散液の形態で作製されうる。一般に、より高い付加価値のついた製品の形態のナノ粒子は、スラリー、フィルムまたはデバイスを提供するためのさらなる処理を必要とする。本発明において、デバイスとしての用途は想定されるものである。該ナノ粒子は、固体もしくは多孔質であってもよく、1個または複数の連続したもしくは半連続のシェルによって囲まれた内部コアを含んでいてもよく、または1個のモノリシック粒子を含んでいてもよい。コアおよびシェルは、いずれも、有機、無機またはポリマーでありうる。ナノ粒子の製造のための好適なナノ粒子材料は、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化鉄(Fe3O4、Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、セリア(CeO2)およびジルコニア(ZrO2)などの単純金属酸化物である。同様に好適なものは、酸化インジウム-スズ(In2O3-SnO2またはITO)および酸化アンチモン-スズ(ATO)のような混合酸化物、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸ジルコニウム)ならびにチタン酸塩(チタン酸バリウム(BaTiO3))である。多様な複合酸化物、半導体、非酸化セラミックス(例えば、炭化タングステン)および金属を含む、他の種類のナノ粒子も、特定の実施形態において好適である。TiO2およびITOのような半導性酸化物、半導体ナノ結晶(量子ドットと呼ばれることが多い)を除く。ナノ粒子の作製のためのさらなる技術は、デンドリマー(高度に分枝した合成のポリマー)または他のポリマーの使用に関する。該光増感剤は、部位ターゲティングおよび制御された送達、もしくはターゲティングと検出との組合せのために、典型的には、デンドリマーの表面に結合するか、またはその内側の空隙に配置される。該ナノ粒子は、好適には、コロイド合成を介して合成されてもよく、コロイド結晶の形態をとりうる。好適なナノ粒子前駆体としては、凝集してナノ粒子を形成する、相互に連結した前駆体のネットワークを形成するための、好ましくは2つ、好ましく
は2つより多い、例えば、3つ、4つまたは5つの、分子間結合のための部位を有する重合性モノマーなどが挙げられる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「ナノキャリアデバイス」という用語は、光増感剤ならびに光イメージング剤およびターゲティングリガンドのような化合物の担体としての役割を果たすナノ粒子の形態の本発明の組成物を指す。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「光増感剤」という用語は、クロリンe6 (Ce6)、m-THPCなどのような化合物を指す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「ナノフォトメディスン」という用語は、ナノ粒子と複合化された光増感剤を指す。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「ドープされたナノフォトメディスン」という用語は、MR造影剤および/または光造影剤でドープされたナノフォトメディスンを指す。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「ドープされた」という用語は、少量(約1〜15%)の別の物質(この場合には、光造影剤および/または磁気造影剤)がナノ粒子結晶中に意図的に添加されていることを意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「ナノフォトメディスン-結合体」という用語は、ターゲティングリガンドと結合したナノフォトメディスンを指す。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「ドープされたナノフォトメディスン-結合体」という用語は、ターゲティングリガンドと結合して磁気共鳴(MR)造影剤および/または光造影剤でドープされた、ドープされたナノフォトメディスンを指す。
【0031】
本発明者らは、PDT治療において改良された効力を提供するナノフォトメディスン製剤を発見した。本発明のナノフォトメディスン製剤は、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属酸化物のナノ結晶をベースとする、またはキトサン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンイミン(PEI)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、もしくは他の好適なポリマーおよびこれらの組合せをベースとする、ナノ粒子、例えば、セラミックの構造物、コアまたはシェルを含む、金属酸化物コアおよびポリマーシェル、もしくは金属酸化物シェルを有するポリマーコア、または上記のものの他の任意の組合せを有する粒子などを含有し、ここで、前記ナノ粒子、またはそのシェルもしくはコアは、光増感剤分子でドープされ、前記光増感剤分子は、準凝集状態(quasi-aggregated state)で前記ナノ粒子材料中で分布する。
【0032】
「準凝集状態」という用語は、本明細書中では、光増感剤が、異なるレベルの凝集、すなわち、凝集体の形態ならびに遊離光増感剤の形態(モノマー単位)の双方で、ナノキャリア(ナノ粒子)中に存在することを示すのに使用される。
【0033】
本発明における、半(準)凝集状態によるナノ粒子中の光増感剤薬剤の固有の状態。この状態は、本明細書に記載のUV-VisスペクトルのQ帯領域における光増感剤の、ソーレー帯におけるその吸光度と比較して増強された吸光度によって定義されうる。より詳細には、(安定化された)半凝集状態の場合、ソーレー帯吸光度に対するQの比率であるQ/Sは、好ましくは≧0.05から1までである。
【0034】
ソーレー帯は、モノマー形態にあるあらゆる増感剤の主な吸光度であるが、組織透過率が低い場合には、青色領域にある。Q帯は、(より良好な組織透過率を有する)赤色NIR領域でサテライト帯であるが、常により低い吸光度である。典型的には、Q/Sは、モノマーの場合、約0.05である。
【0035】
本発明において、より高いQ帯吸収は、増感剤分子のアミノ化の程度(結合の程度)をナノ粒子マトリックスで制御することによって達成される。例えば、下記の実施例でより詳細に説明しているように、NPM-1はNPM-2よりもアミノ化されず、さらにはNPM-2はNPM-3よりもアミノ化されない。これらの特定のNPMの実施例において示しているように、APTSおよびTEOSの濃度、ならびに他の反応パラメータに依存して、Ce6のアミノ化されたカルボキシル基の量を制御することによって654nmでQ帯における異なる吸収レベルのNPMを得ることが可能である(図2を参照されたい、NPM1〜2と3は、654nmで異なるレベルの吸光度に関する)。例えば、NPM-1は約0.3のQ/S値を有し、NPM-2は約0.5のQ/S値を有し、NPM-3は約0.7のQ/S値を有し、かつNPM-4は約1のQ/S値を有する(最大値、Q帯吸光度を最大にした場合)。
【0036】
したがって、本発明は、光増感剤薬剤を含有する、金属硫酸塩、金属リン酸塩もしくは(好ましくは)金属酸化物のナノ粒子、またはポリマーナノ粒子に関し、前記ナノ粒子は、少なくとも0.05、より好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.3のQ/S値を有する。この値は、スペクトルピークの最大に無関係である(Q帯は約600〜900nmの間のいずれかに最大を有し、S帯は約350〜500nmの間のいずれかに最大を有する)。
【0037】
本発明者らは、こうしたナノ粒子は、中でも、高度に改良された光安定性を提供することを見出した。
【0038】
好ましい実施形態において、該ナノ結晶は、無毒性かつ好適に発光性である。これは、提供する
【0039】
この複合構造の外部表面には、癌を標的としたリガンドが連結することが好ましい。
【0040】
本発明の他の一実施形態において、該光増感剤-ナノ粒子-ターゲティングリガンド結合体は、とりわけ、従来技術の以下の問題点、1)光増感剤の凝集/親油性; 2)ターゲティングリガンドあたり低濃度の光増感剤; 3)可視スペクトルの赤色領域における光増感剤の低い吸収; 4)光増感剤の非特異的な蓄積; 5)血液循環における光増感剤分子の無制御な凝集; 6)光増感剤自体の蛍光特性を使用した線量測定の難しさ;ならびに7)非侵襲性の分子イメージングによって誘導される線量測定、および薬物動態学的評価の欠如、を克服するものである。
【0041】
該ナノ粒子結合体の表面の化学的性質は、生理的環境における凝集が回避され、結合体が小胞体の(endoreticular)システムによって隔離されず、かつ正常細胞の非特異的なターゲティングが最小限に抑えられるようなものである。(きわめて)高濃度の光増感剤をナノ粒子中に加えて準凝集状態を形成することが可能であることも見出された。ナノ粒子中の光増感剤の量は、好適に
【0042】
凝集状態のフリーの光増感剤とは異なり、準凝集状態の光増感剤分子は効率よく光を吸収し、活性酸素種を効果的に発生する結果となる。この結果は、予想外であって、ナノ粒子中の光増感剤の特有のコンフォメーションによって説明されうる。
【0043】
理論に拘束されることを望むものではないが、ナノ粒子における光増感の過程は、結果として、薬剤の制御されたin situでのモノマー化、およびそれによる一重項酸素の長期間にわたる制御された放出を導くと考えられている。
【0044】
ナノ粒子結合体の光線力学的成分に加えて、本発明の組成物は、該ナノ粒子(のコアまたはシェル)中に光造影剤をさらに組み込んであってもよい。好適な光造影剤としては、ZnS:Mn2+ QDのような発光マーカー、インドシアニングリーン(ICG)のような蛍光マーカーおよびメチレンブルー(MB)のような光学色素(optical dye)などが挙げられる。これらのマーカーは、特定のタイプの癌の治療効力の著しい改良を提供する、光学イメージングによって誘導される局所的な薬剤送達を可能にする。ナノ粒子中の光造影剤の量は、ドープされたナノ粒子の全重量を基準として、好適には約0.0001〜15重量%、好ましくは約0.0005〜5重量%である。
【0045】
ナノ粒子結合体の光線力学成分に加えて、本発明の組成物は、ナノ粒子(のコアまたはシェル)中に磁気造影剤がさらに組み込まれていてもよい。これは、光の透過によってその最終結果の光学的な測定が制限される臨床適用における該結合体の全身性薬物動態を決定する際に重大な利点を提供する磁気共鳴画像法を行うことを可能にする。磁気造影剤の量は、ドープされたナノ粒子の全重量を基準として、好適には約0.0001〜15重量%、好ましくは0.0005〜5重量%である。
【0046】
上記のように、本発明は、光増感剤薬剤およびPDTの現在の限界に著しい改良をもたらす。これらの改良は、前記ナノフォトメディスン製剤の特有の性質によるものである。この新しいナノ製剤の、従来のフリーの薬剤と比較した主な利点の1つは、感光性分子が、モノマーと凝集分子との間の段階、すなわち、モノマーと凝集分子とが共存する、準凝集様式で担体デバイスと複合化されることである。一般に、溶液または粉末の形態において、個々の(モノマーの)感光性色素分子は、ファンデルワールスのような分子間の引力によって、凝集する傾向がある。分子の凝集状態では、薬剤の蛍光効率および一重項酸素収量が著しく低下するため、この凝集は、PDTの有効な適用における重大な障害である。
【0047】
光増感剤薬剤の凝集は、分子間相互作用のレベルによって決定され、したがって、溶媒中の分子の濃度の関数となる。PDTにおいて使用される大部分のフォトドラッグ(photodrug)は、疎水性の性質であり、したがって、生理的条件下で凝集する傾向がある。したがって、フリーの薬剤を使用するときには、循環中に光分子のモノマー性を維持するために、きわめて低い濃度のみ一般に使用することができる。一方、該薬剤の完全にモノマーの形態も、組織を透過する赤色光の吸収が低いという不利な点を有する。さらに、モノマー単位は、光分子濃度が有効なレベル未満に低下するという事実に起因する早すぎる治療の完了につながる速い光退色を受ける。
【0048】
完全なモノマー化と凝集との間の妥協点が達成されうること、および、これにより改良された長期のPDT適用が可能となることを、発見した。
【0049】
したがって、本発明は、フォトドラッグ分子の、ナノキャリアデバイスマトリックス(ナノ粒子マトリックス)との制御された複合化を提供する。これは、モノマー単位が、ナノ粒子マトリックス中の官能基によって分離された凝集種と共存するように、準凝集種と同様にモノマー単位として個々のフォトドラッグ分子を共有結合で結合することができる官能基を、ナノキャリアデバイスに提供することによって達成される。これが達成されうる1つの好適な様式は、光増感剤を結合したナノ粒子前駆体からナノ粒子を調製することである。これがこのように達成される構造において、モノマー単位は、レーザー照射に応じて一重項酸素種を放出し始め、この一重項酸素の一部は、フォトドラッグ分子の準凝集集団を能動的に崩壊させて新しいモノマー単位を生じさせる。結果として、光活性のあるモノマー単位が長期間のレーザー療法のために連続して供給されることになる。最も重要なことに、本発明のナノ粒子製剤は、固体状態(粉末形態)でまたは水性媒体/生化学的媒体中で物理-化学的に安定であり、したがって、その光物理的特性は生理学的な条件下でほぼ不変のままである。これは、血液中での薬剤の凝集およびこれに関連した該薬剤の薬物動態の問題がないという利点を有する。
【0050】
本発明のもう1つの利点は、ナノフォトメディスンの特徴的な構造およびフォトドラッグの複合化が、光線の組織透過率がより高い、可視光スペクトルの赤色および近赤外領域におけるフォトドラッグの光吸収の著しい改良を導くことである。フリーのフォトドラッグ分子の大部分は、電磁スペクトルの紫外または青色の領域(ソーレー帯)と比較して、赤色領域(すなわち、Q帯)において最低の吸収を有するので、この特性は、光線療法の効力を改良することにおいてきわめて重要である。これは、赤色光のような高い組織透過率を有する光線を使用して腫瘍の内部領域の全体にわたって全て光増感される必要のある薬剤としての、フリーのフォトドラッグの使用を制限する。したがって、赤色領域におけるフォトドラッグの吸収特性の改良、すなわち、Q帯が必要とされる。したがって、本発明は、光吸収がQ帯において著しく高く、ソーレー帯のものよりも何倍も高い、フォトドラッグのナノ製剤を提供する。この改良された吸収特性は、準凝集薬剤分子とナノキャリアデバイスの分子との制御された超分子相互作用の手段によって達成される、前記ナノ製剤に固有のものである。
【0051】
本発明のさらにもう一つの重要な特徴は、細胞毒性一重項酸素をより長く放出する結果になる、ナノキャリアデバイス中のフォトメディスンのより高い安定性に関するものである。一般に、モノマーのフリーのフォトドラッグ、特に、クロリンe6のような親水性分子は、その分子自体によって生成される一重項酸素の攻撃による急速な光退色を受ける。このことは、病的な部位において十分な濃度のフォトドラッグを利用できることを制限し、したがって、癌に損傷を与えることにおける薬剤の治療効力を制限する。光退色に対して安定化させるために分子を直接改変することは、一重項酸素生成の量子収量に影響することがあり、望ましくない。したがって、一重項酸素の収量が維持され、同時に、より少ない光退色を示すことになるフォトドラッグ製剤を調製することが重要である。
【0052】
したがって、本発明は、該薬剤のモノマー単位が最大限のレーザー光の退色効果に曝露されないナノフォトメディスン製剤を提供する。代わりに、該フォトドラッグは、モノマー単位と準凝集単位との安定な混合物として、ナノキャリアマトリックスと複合化し、該モノマーによって生成される一重項酸素がレーザー照射に応じて準凝集単位の脱凝集を引き起こし、長期間の照射および/または高い光線量であっても、細胞毒性をもたらす濃度の一重項酸素の連続した供給を行う。
【0053】
本発明の特定の実施形態のさらにもう一つの利点は、光線療法の前にまたはその間に、病的な部位の磁気コントラストおよび光学コントラストのイメージングを提供するナノフォトメディスンの能力である。イメージングによって誘導される照射療法は、癌の正確な部位、大きさおよび広がり(血管新生/転移)が検出される、臨床診療における新生の領域であり、直接照射療法に使用される。これは、療法の前およびその間の照射治療計画と共に、コンピューター断層撮影またはMRIによって明らかにされる、体内での該薬剤の実際のイメージング座標をアライメントすることによって達成される。この種のイメージングを用いた光線療法は、有効な癌の管理において大きな利点を有する。したがって、本発明のナノフォトメディスンに光学マーカーおよび/または磁気造影剤を提供し、ドープされたナノフォトメディスンを療法と共に使用する発展性は、本発明の重要な態様である。
【0054】
本発明の態様のさらに他の一実施形態では、該ナノフォトメディスン構築物に、癌などの疾患部位を特異的にターゲティングする特性が提供される。これは、ナノフォトメディスン表面にレセプター-リガンドのようなターゲティング部分を提供することによって達成されうる。これは、癌の標的光線力学療法を達成するのを補助する。ターゲティングリガンドの量は、ナノ粒子の全重量を基準として、好適には、約0.00001〜1重量%である。
【0055】
この概念を証明するために、本発明者らは、光増感剤、ナノ粒子およびターゲティングリガンドを含有するナノフォトメディスンを調製した。光増感剤薬剤としてメタ-テトラヒドロキシフェニルクロリン(m-THPC/Foscan)およびクロリンe6(Ce6)を選択し、ナノ粒子としてナノ粒子状シリカを選択し、かつターゲティングリガンドとしてオクトレオチドを選択した。オクトレオチドは、ソマトスタチンの合成アナログである。多くの神経内分泌系の腫瘍および(活性化された)免疫細胞は、高密度のソマトスタチンレセプター(sst)を発現する。当業者は、光増感剤、ナノ粒子およびターゲティングリガンドの選択において変形がなされうることを理解するであろう。本発明者らは、こうして調製したターゲティング可能なナノフォトメディスンを、実験設定において多様な水性媒体中ならびにin vitroのsst陽性細胞(K562細胞、ヒト骨髄細胞系)および野生型細胞において使用して、このアプローチの妥当性を確認した。一重項酸素量子収量データおよび細胞増殖アッセイと組み合わせた該結合体のin vitroでの吸収および励起分光法は、下記の実施例で説明しているように、これらのナノフォトメディスンが望ましい治療効力を示すことを確証する。同様なアプローチを使用して他のレセプターをターゲティングできること、ならびに光増感剤およびナノ粒子の選択は重要ではないことを本発明者らが認識していることに注意することは重要である。
【0056】
本発明は、in vivoで癌細胞をターゲティングすること、2様式の蛍光および磁気共鳴画像法による腫瘍コントラストを増強すること、ならびに可視光の曝露下で活性酸素種の制御された送達によって癌細胞を破壊することのできる可能性のある新規ナノフォトメディスンを提供する。
【0057】
本発明の特性を決定する特徴は、望ましい準凝集様式での光増感剤のナノ粒子との結合、およびそれが光増感剤の物理-化学的特性を変化させて有効な標的PDTに好適なものにすることの発見である。この結合により、フリーの非結合型薬剤と比較して、組織を透過する波長で光をよりよく吸収することができ、照射に応じた活性酸素種の制御された放出を可能にする、光増感剤の準凝集状態が生じるという発見は、予想外なものであった。本治療用組成物がターゲティングリガンドおよび磁気造影機能と結合されうることは、イメージングを用いたPDTの適用を支持するので、特別な利点である。
【0058】
本発明のナノフォトメディスンを作製する方法
本発明のナノフォトメディスンは、多くの異なる方法で調製することができる。これは、ナノ粒子の種類、ならびに光増感剤およびナノ粒子マトリックス(ナノ粒子の調製用の材料)の化学的性質によって決まる。
【0059】
光増感剤が準凝集状態でナノ粒子と結合されて提供されることは、不可欠である。本明細書中で示すように、好適なナノ粒子は、前駆体材料を低温(例えば、20〜80℃)で溶液からナノ結晶に沈澱させることによって、または高温(熱)の方法によって、得ることができる。該ナノ粒子は、溶液またはコロイドからの沈澱によって得られることが好ましい。好適な条件下で沈澱してナノ粒子を形成することになる好適な前駆体材料としては、金属硫化物、金属リン酸塩および金属酸化物ならびにこれらの組合せ、例えば、ケイ酸塩およびリン酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。きわめて好ましい方法は、当技術分野においてコロイド状シリカ粒子を調製することで知られているものである。該粒子は、アモルファス結晶であってもよく、または完全に結晶化されていてもよい。これらの金属硫化物、金属リン酸塩および/または金属酸化物の粒子は、そのまま使用されてもよく、またはポリマー物質で覆われるかもしくはポリマー物質と組み合わされてセラミックを形成してもよい。本発明のナノ粒子は、好ましくは粒子の形成中に含有させることによって、光増感剤、発光材料、および磁気材料でドープされる。
【0060】
該光増感剤は、ナノ粒子に共有結合で結合されることが好ましい。シリカの場合、したがって、ケイ酸塩反応性光増感剤が作製されることが好適である(かつ好ましい)。きわめて好適には、シランカップリング剤が、光増感剤とケイ酸塩との間の架橋剤として使用される。きわめて好適には、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)が、ケイ酸塩と反応してケイ酸塩にアミン官能性を提供することができるような化合物として使用される。
【0061】
本発明のナノフォトメディスンを作製する方法における1つの段階は、該ナノ粒子がケイ酸塩である一実施形態において、アミン反応性光増感剤の提供である。この場合、(Ce6が分子あたり3個のカルボキシル基を有する)カルボキシル含有光増感剤は、好ましくはスクシンイミド、例えばスルホ-NHSなどの存在下、通常は溶媒DMSO中で、光増感剤をモル過剰のカルボジイミド、例えばEDC(EDAC)などと反応させることによって活性化されることが好適である。この反応では、光増感剤上のカルボキシル基が活性化されて、アミン反応性スルホNHSエステルのようなアミン反応性の中間体を形成する。この活性化反応は、好適には、約1〜10時間続けることができ、通常は、アミン反応性光増感剤を提供するのに約4時間である。この生成物は、場合によっては、ゲル濾過によって精製される。
【0062】
こうした実施形態における作製の第2の段階は、好適には、アミン反応性光増感剤をアミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)と反応させて、ケイ酸塩反応性光増感剤(官能化された光増感剤)を提供することである。このカップリング反応は、好適には、暗所、室温で3〜4時間継続される。この段階の結果生じる化合物の一例は、Ce6-APTSである。
【0063】
次の段階では、ゾル-ゲル法によって、該ケイ酸塩反応性光増感剤、例えばCe6-APTSをナノ構造シリカ粉末の合成のためのオルトケイ酸塩前駆体、例えば、オルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン、TEOS)、およびオルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシラン、TMOS)などと反応させて、光増感剤を結合したオルトケイ酸塩(例えば、Ce6-TEOSまたはCe6-TMOS)を得る。この結合反応は、好適には、99%エタノール中、2〜3時間の持続時間で行われる。光増感剤を結合したオルトケイ酸塩は、本発明のナノフォトメディスンを形成するためにシランを結合した準凝集光増感剤が埋め込まれたナノ粒子デバイスの前駆体を形成する。本発明のナノ粒子は、光増感剤を結合したこれらのオルトケイ酸塩前駆体をゾル-ゲル反応において使用することによって達成される。
【0064】
ゾル-ゲル反応における最初の段階は、該オルトケイ酸塩前駆体の加水分解、およびこの加水分解された生成物を凝縮して小さい(3〜4個のケイ素)粒子を形成することを絶対的に必要とし、この小さい粒子は、凝集して、最終的には凝縮してシリカゲルを形成しうる、より大きなコロイド状シリカ粒子を形成する。しかし、この後者の段階は、本発明の方法の部分ではないことが好ましい。該粒子は、約90〜100nmの最終的な大きさを有し、酸性条件のない場合には、通常は凝縮してゲルを形成することはない。光増感剤を結合したオルトケイ酸塩前駆体(例えば、Ce6を結合したTEOSおよび/またはTMOS前駆体)の加水分解および凝縮は、光増感剤がシリカマトリックス中に共有結合で結合された、ナノサイズのシリカ粉末を生成する。
【0065】
Ce6を結合したTEOSおよび/またはTMOS前駆体の加水分解は、水溶液中で、エタノール媒体に、少量の水と、例えば、NH4O4もしくは他のアンモニウム供給源またはNaOHなどの強塩基とを添加することによって達成されうる。次に、この水溶液を、例えば、2分間の間隔を空けて10分間、超音波処理し、この超音波処理により、結果として、シリカマトリックス中に複合化された準凝集された光増感剤のナノ粒子の沈澱が生じる。このようにして沈澱したナノフォトメディスン粒子を、次いで、水性媒体(通常、エタノール/水/アンモニウム混合物)から遠心分離によって分離してもよく、場合によっては、水中で洗浄して、PBSまたは水に再分散させてもよい。
【0066】
上記の例において、APTSで改変されたケイ酸塩前駆体は原理ではアミン反応性光増感剤と反応しうるが、APTSを結合した光増感剤はケイ酸塩前駆体と反応することが好ましい。結果として、光増感剤が、大きくなっていくナノ粒子中により好ましい準凝集状態で組み込まれることになるからである。
【0067】
したがって、好ましくは、官能化された光増感剤を提供するために、光増感剤に、ナノ粒子前駆体に共有結合で結合するための官能基が提供される。当業者は、光増感剤のような分子をナノ粒子前駆体に結合させる多様な可能性をよく認識している。これらの技術は、一般に、アミノ-、シラン-、チオール-、ヒドロキシル-および/またはエポキシ-官能性を光増感剤に導入すること、およびその後これにナノ粒子前駆体を、場合によっては架橋剤を使用して、結合させることに関する。より一般的な用語で光増感剤のアミノアルキルシラン化のこうした実施形態に言及する場合には、連結剤として働く二官能性モノマーを採用して光増感剤をナノ粒子前駆体に連結することに関して、本発明の一実施形態に従ってナノ粒子前駆体に共有結合で結合するための官能化された光増感剤を調製する方法をさらに説明することもできる。
【0068】
きわめて好適には、二官能性モノマーは、1つの官能性はナノ粒子前駆体と反応することができ、もう1つは光増感剤の官能化された基と反応することができるように、2つの異なる化学官能性を有していてもよい。
【0069】
官能化された光増感剤とナノ粒子前駆体とは、i)光増感剤をナノ粒子前駆体に共有結合で結合させて、光増感剤を結合したナノ粒子前駆体を形成することを可能にする条件下、ならびにii)前記ナノ粒子前駆体の分子間結合を介してナノ粒子前駆体複合体を形成し、前記ナノ粒子前駆体複合体を凝集させて、凝縮および凝集のようなその後の段階によってナノ粒子を形成することを可能にする条件下で、溶液中または懸濁剤中で混合される。段階i)は、段階ii)の前に生じさせることが好ましい。これにより、結果として光増感剤が準凝集状態でナノ粒子と結合されて提供されることになる。
【0070】
光増感剤が結合されるナノ粒子は、その調製中にまたはその後に、発光マーカーおよび/または磁気造影マーカーでさらにドープされてもよい。これは、下記のように行われることが好ましい。
【0071】
発光量子ドットでドープされたナノフォトメディスン
発光材料でナノ粒子をドープする方法は、一般に、以下のように行うことができる。まず、光増感剤を結合したナノ粒子前駆体を上記のように調製する。発光マーカーを、加水分解および凝縮の溶液にそのマーカーを添加することにより、この前駆体の加水分解および凝縮中に、ナノマトリックス中にドープする。次に、前記ナノ粒子前駆体の分子間凝縮を介したナノ粒子前駆体複合体の形成、およびナノ粒子を形成するための前記ナノ粒子前駆体複合体の凝集のための条件を適用する。オルトケイ酸塩前駆体の場合では、これらには、例えば、1〜5%のNH4O4の供給が含まれる。該発光マーカーの好適な量は、沈澱溶液中に、例えば、0.01μMのZnS : Mn2+である。10分間の超音波処理は、準凝集されたCe6およびZnS : Mn2+ QDと複合化された二酸化ケイ素のナノ粒子の沈澱を導き、準凝集されたCe6およびZnS : Mn2+ QDは、ナノ粒子状マトリックス中に埋め込まれた状態を維持する。沈澱したドープされたナノフォトメディスンを、遠心分離によって媒体から分離して、好ましくは、PBS中で洗浄および保存する。本発明のナノフォトメディスンの投与のためには、該デバイスを、PBS中に懸濁することが好ましい。
【0072】
磁気造影剤でドープされたナノフォトメディスン
該ナノ粒子を磁気造影剤でドープする方法は、発光マーカーについての上記のものと基本的に同じである。まず、光増感剤を結合したナノ粒子前駆体を上記のように調製する。磁気造影剤の前駆体、例えば: 0.001〜10%のGd3+(GdNO3)もしくは0.001〜10%の(Mn2+)MnCl2、または0.001〜10%のFe3+(FeCl3)を、ナノ粒子を形成する加水分解および凝縮の溶液に添加する。硝酸ガドリニウムの使用は、例えば、適切な条件下で、準凝集された光増感剤と複合化されてGd3+でドープされたナノ粒子が沈澱する結果となり、Gd3+は、ナノ粒子状マトリックスのアモルファス相中に埋め込まれた状態を維持する。沈澱したナノ粒子を、遠心分離によって媒体から分離し、好ましくは、使用前に洗浄する。
【0073】
本発明の適用。
標的療法は医薬の中心的な目標であり、標的治療部分の周囲の正常組織に対する損傷を最小限に抑えることがきわめて重要である。PDTは、事実上体内のあらゆる部位に適用することができる。PDTは照射後に全身性免疫応答を誘発するが、活性酸素種の作用の半径は、単一の細胞の半径よりもきわめて小さい。実際には、光増感剤結合体は、dark toxicityを示さず、したがって、(明領域内での)局所的な選択性は重大な可能性を提供する。高濃度の活性酸素種に耐性であるかまたは耐性を生じることが示されている細胞もしくは組織はない。本発明は、従来技術の標的光線力学療法の重大な不利な点の多くを克服することができる。ここで、光増感剤結合体は、限られた生物学的利用能、非特異的な取り込みおよびターゲティングリガンドあたりの活性酸素種を生じる限られた能力を有する。本明細書中に記載のように、本発明のアプローチの原理を証明するために、sst2を発現している細胞を使用した。本発明は、他のレセプターをターゲティングするために使用することができ、他の光増感剤と共に適用することもできる。癌の分子標的は、広範囲にわたり、腫瘍の種類に特異的である。乳房、前立腺、肺、脳の腫瘍および胃腸管における癌のレセプター標的PDTを研究することは、明らかに合理的である。他の非悪性状態を標的とすることもできる。例えば、関節リウマチを有する患者の罹患した関節内の活性化された免疫性細胞は高密度のソマトスタチン(SS)レセプター(sst)を発現するためである。標的PDTは、この状態を治療するための理想的な候補となるであろう。
【0074】
これから、以下の非限定的な実施例を通して、本発明をより詳細に説明する。
【0075】
(実施例)
以下の実施例は、2つの異なる代表的な光増感剤、すなわち、クロリンe6(Ce6)またはmTHPCが、光の組織透過率がより良好なQ帯(赤色NIR)領域で望ましい光吸収特性の最終構築物の好適な準凝集段階で、ナノサイズ化された(50〜150nm)シリカまたはキトサンの担体デバイス中に共有結合で埋め込まれる、ナノフォトメディスン(NPM)を作製する方法を説明するものである。これらのナノフォトメディスンを、光学イメージングに好適な発光量子ドットの第2の成分およびMRIコントラストイメージングに好適な常磁性イオンの第3の成分でドープしてドープされたナノフォトメディスンを形成すること、および/または活性な癌ターゲティングペプチドリガンドと結合させて(ドープされた)ナノフォトメディスン結合体を形成すること、新規な光退色特性、癌細胞への送達、ならびに前記ナノフォトメディスンを使用する光線力学療法を、別々の実施例において説明している。
【0076】
ナノフォトメディスンの調製に使用した試薬としては、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、Sigma 98%)またはオルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS、Sigma 98%)、アンモニア(25%溶液、Sigma Aldrich)、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドハイドロクロライド(EDACまたはEDC)、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、炭酸N,N'-ジスクシンイミジル(DSC、Sigma、98%)、エタノール(99%、Sigma)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(Sigma)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、クロリンe6、m-テトラヒドロキシフェニルクロリン(mTHPC)、ZnS : Mn量子ドット(QD)、硝酸-ガドリニウム(Gd3+)(99%、Sigma)、およびジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)などが挙げられ、全て分析用グレードの試薬であり、さらに精製することなく使用した。
【0077】
この合成の方法では、従来技術(米国特許第7364754号)とは異なり、本発明者らは、簡単で低コストで均一な、水とエタノールまたはDMSOの混和性溶媒システムを含有する、界面活性剤を含有しない非ミセル媒体を使用した。
【0078】
(実施例1:光増感剤としてCe6を使用したナノフォトメディスンNPM-1の作製)
この実施例では、Q帯(654nm)領域において最終構築物による光の吸収がフリーのCe6と比較して約2倍高い、光増感剤クロリンe6(Ce6)ベースのナノフォトメディスン(すなわち、NPM-1)の調製を示している。
【0079】
1μM濃度のCe6(例えば、Porphyrin Products、Logan、UTから市販されている)を、5mlの99%DMSO中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させた。反応の4時間後、この複合化された生成物をゲル濾過によって精製し、アミン反応性光増感剤を得て、これを、200μLのAPTSを使用して、シランカップリング剤とさらに反応させる。このカップリング反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTSを得る。次の段階では、このCe6-APTSを、10mlの99%エタノール媒体中で、600μL (約600mg)のTEOSまたはTMOSと2〜3時間反応させて、シランを結合させた準凝集光増感剤の前駆体を形成させる。2分間の間隔を空けた10分間の超音波処理下での3mlの水および600μLのNH4O4の添加によるこの前駆体の加水分解により、シリカマトリックス中に複合化された準凝集されたCe6のナノ粒子の沈澱が生じる。沈澱したNPM-1を、遠心分離(6000rpm、5分間)によって溶媒から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、PBS中に再分散させる。
【0080】
透過型電子顕微鏡写真(図1)により、大きさ90〜100nmの均一な球状ナノ粒子の形成が示される。NPM-1の蛍光励起スペクトル(図2a)により、該構築物の、一重項酸素生成の原因となる三重項状態電子遷移と対応している654nmでの光の吸収、および/または蛍光が、フリーの光増感剤のものよりも約2倍高いことが示される。これにより、ナノフォトメディスン構築物中の光増感剤は、もはやフリーの形態にあるのではなく、代わりに、アミノプロリルシラン基を介したアミド結合によって共有結合で連結された複合化された形態であることが示唆される。
【0081】
(実施例2:光増感剤としてCe6を有するナノフォトメディスンNPM-2の特性)
この実施例では、Q帯における光の吸収がフリーのCe6のものと比較して約4倍高いナノフォトメディスン(NPM-2)の加工を例示している。
【0082】
1μM濃度のCe6を、5mlの99%エタノール中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させた。反応の約4時間後、この結合体をゲル濾過によって精製し、アミン反応性光増感剤を得て、これを、300μLのAPTSを使用して、シランカップリング剤と反応させる。このカップリング反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTSを得る。次の段階では、Ce6-APTSを、10mlの99%エタノール媒体中で、800μLのTEOSまたはTMOSと3時間反応させて、NPM-2の前駆体を形成させる。2分間の間隔を空けた15分間の超音波処理下での3mlの水および600μLのNH4O4の添加によるこの前駆体の加水分解により、NPM-2ナノフォトメディスンの沈澱が生じ、このとき、Ce6は、さらにより高いレベルで準凝集され、かつアミド結合を通してナノ粒子状マトリックス中に共有結合で埋め込まれた状態を維持する。沈澱したNPM-2粒子を、遠心分離によってエタノール媒体から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、PBS中に再分散させる。図2に示しているNPM-2の蛍光励起スペクトルは、654nmでQ帯領域の吸収がフリーの薬剤のものと比較して約4倍増加することを示唆する。ソーレー帯領域における吸収は、ほぼ不変のままである。この増強されたQ帯の吸収は、フリーの光増感剤の場合と比較してより深い組織で一重項酸素の生成を導くことができる。
【0083】
(実施例3:光増感剤としてCe6を使用したナノフォトメディスンNPM-3の作製)
さらにもう1つの実施例では、Q帯領域における吸収がフリーのCe6のものと比較して約7倍高いナノフォトメディスン(NPM-3)の作製を例示している。
【0084】
1μM濃度のCe6を、5mlの99%エタノール中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させた。反応の4時間後、この結合された生成物をゲル濾過によって精製し、アミン反応性光Ce6を得た。これを、600μLのAPTSを使用して、シランカップリング剤と反応させる。このカップリング反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTSを得た。次の段階では、このCe6-APTSを、10mlの99%エタノール媒体中で、1000μLのTEOSまたはTMOSと2〜3時間反応させて、シランを結合させた準凝集フォトメディスンの前駆体を形成させた。2分間の間隔を空けた20分間の超音波処理下での3mlの水および800μLのNH4O4の添加によるこの前駆体の加水分解により、さらに準凝集されたCe6と複合化されたNPM-3ナノ粒子の沈澱が生じ、このCe6は、ナノ粒子状マトリックス中に埋め込まれた状態を維持する。沈澱したNPM-3粒子を、遠心分離によってエタノール媒体から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、投与のためにPBS溶液中に再分散させる。
【0085】
NPM-3の蛍光励起スペクトル(図2)より、フリーの薬剤のものよりも7倍近く、かつ、同じ構築物のソーレー帯吸収のものの約75%に相当する、654nm領域での依然としてより高い光の吸収が示される。
【0086】
化学改変の程度によるナノフォトメディスンのQ帯の吸収における制御された増加、および最も重要なことに、水もしくはPBS中での、または血液中でのタンパク質の影響による、あるいは病的な部位における蓄積後の、他のいかなる制御不能の凝集からの光増感剤分子を保護するナノキャリアデバイス中のナノフォトメディスンの安定化は、本発明の重要な成果である。このことにより、本発明は、最大の課題のうちの1つである、光増感剤の無制御な凝集およびフリーの光増感剤で認められる感光性特性の損失を克服する。
【0087】
(実施例4:光増感剤としてmTHPCを使用したナノフォトメディスンNPM-4の作製)
この実施例では、もう1つの重要な光増感剤であるmTHPCを有するナノフォトメディスン(NPM-4)の作製を例示している。この生成物は、高い蛍光活性および光増感剤活性を維持したまま、652nmでソーレー帯からQ帯に光吸光度特性の100%シフトを示す。
【0088】
1μM濃度のアミン反応性mTHPCを、600μLのシランカップリング剤APTSで暗所で24時間処理した。24時間後、このmTHPC-APTS結合体を、10mlの99%エタノール媒体中で、1000μLのTEOSまたはTMOSと6時間反応させて、シランを結合させた準凝集ナノフォトメディスンであるmTHPCの前駆体を形成させた。2分間の間隔を空けた20分間の超音波処理下での6mlの水および800μLのNaOHの添加によるこの前駆体の加水分解により、準凝集されたmTHPCと複合化されたNPM-4ナノ粒子の沈澱が生じる。
【0089】
図3に示しているように、この生成物は、フリーのmHPCと比較して完全に異なる吸収/励起特性を示す。ソーレー帯約400nmでの吸収は完全に消えたことが見出されたのに対して、光線療法に必要とされる、Q帯での、必須の吸収は、70〜80%増強された。フリーの増感剤のソーレー帯のものと同じくらい高いこのQ帯吸収は、結果として、光線力学療法中に治療効力を有意に増強することになりうる。この構築物は、フリーの光増感剤の主な不利な点のうちの1つ、すなわち、スペクトルの赤色領域における低い光吸収を克服するものである。
【0090】
(実施例5:ex vivoにおけるナノフォトメディスンNPM-3の光物理的特性)
この実施例では、実施例3で調製されるナノフォトメディスン(NPM-3)の光物理的特性を例示している。光線力学療法におけるフリーの薬剤との比較で生成物の著しい改良を実証している。
【0091】
薬剤の光安定性は、癌のような疾患の長期の療法にきわめて重要である。しかし、フォトドラッグ、特にCe6のような水溶性の薬剤は、その薬剤自体によって生成される一重項酸素による分解を受けるので、きわめて速い光分解を受ける。これは、疾患部位での該薬剤の不十分な濃度に起因する、早すぎる治療の完了につながる。この実施例では、ナノフォトメディスンがどのようにしてこの問題を克服するかが示される。
【0092】
ほぼ同じ初期蛍光強度(薬剤の濃度と相関する)を有するフリーのCe6およびナノフォトメディスン(NPM-3)の光退色特性を、蛍光分光計を使用して比較する。10Jcm-2の全線量の同一条件下で、双方の生成物の試料のレーザー照射を行った。図4は、双方の試料の蛍光放射特性における変化を例示するものである。フリーのCe6は、2.5Jcm-2と同じくらい低い強度で該薬剤が不活化される結果となる典型的な速い退色を示すのに対して、NPM-3構築物は、埋め込まれた薬剤の固有の非直線的な特性および10Jcm-2の光線量を投与した後でさえも光安定性を示す。NPM-3の光退色曲線は、該薬剤からの蛍光放射の増強および低下の双方を伴う複数の相を示す。これは、光との相互作用に応じた、埋め込まれた薬剤の空間的に不均一な(準凝集)性質を明らかにし、該薬剤は、繰り返される様式で、in situでのモノマー化を受けてその後に退色されることを示唆している。実際に、これにより、延長された期間の療法の後でさえも、該構築物中の該薬剤の長期安定性がもたらされる。
【0093】
(実施例6 in vivoにおけるナノフォトメディスンNPM-3の光物理的特性)
この実施例では、癌細胞の細胞内でのナノフォトメディスンの光安定性を試験して、フリーの光増感剤のものと比較した。
【0094】
白血病細胞K562を、12ウェル組織培養プレート中に800,000細胞/ウェルで播種し、フリーのCe6(1μM)および同濃度の増感剤を使用することによって調製したナノフォトメディスン(NPM-3)の双方で処理した。共焦点顕微鏡を使用してイメージングを行う前に、細胞を37℃で3時間インキュベートした。蛍光イメージングは、細胞に取り込まれた増感剤またはナノフォトメディスンを、405nmレーザーを使用して励起することによって行った。治療効果と有意な相関を有する、癌細胞の細胞内領域での光退色を記録するために、定められた時間(1〜360秒)のレーザー照射後にイメージングを行う。
【0095】
図5aは、フリーのCe6で処理した細胞の共焦点画像を示すものであり、このとき、該薬剤は、レーザー照射の領域において30秒後に完全に退色されたが、図5bでは、ナノフォトメディスンで処理した細胞は、360秒までも安定な蛍光を示した。これにより、実施例5に記載のように認められた分光学的特性は、生体細胞、すなわち、in vivoにおいてもあてはまることが確認される。光線療法には該薬剤の蛍光活性の維持が不可欠であるので、ナノフォトメディスンのこの特徴的な性質は、癌の光線療法の延長された継続期間を提供するのに決定的なものである。
【0096】
(実施例7:発光量子ドットでドープされたナノフォトメディスンの作製)
この実施例では、ドープされたナノフォトメディスンを形成するために、ZnS:Mn2+の発光量子ドットでドープされた、ナノフォトメディスンNPM-5の作製を例示している。
【0097】
発光QDは、癌を含む疾患のin vivoイメージングのための有望な候補である。しかし、使用される発光QDは、通常、毒性のある重金属カドミウムをその組成物中に含有する(CdS、CdSe、CdTeなど)。これは、こうしたQDならびにこうしたQDでドープされたナノデバイスをヒトの臨床適用に使用することを制限する。これに対して、本発明は、金属(CuまたはAl)または遷移金属(Mn)でドープされたZnSをベースとした完全に無毒性の量子ドットをナノフォトメディスン中に組み込むのに使用し、これは、埋め込まれた光増感剤の蛍光および一重項酸素生成特性に影響を及ぼすことなく、in vivoにおけるNPMの光学イメージングに使用することができる。
【0098】
したがって、典型的な調製では、1μMのCe6を、5mlの99%エタノール中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させる。反応の2〜4時間後、この結合された生成物をゲル濾過によって精製し、アミン反応性の「活性化された」光増感剤を得て、これを、シランカップリング剤である600μLのAPTSと反応させる。この反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTS-1を得る。3〜4時間後、このCe6-APTS-1を、10mlの99%エタノール媒体中で、1000μLのTEOSまたはTMOSと2〜3時間反応させて、シランを結合させた準凝集光増感剤の前駆体を形成させる。ナノ粒子状マトリックス中に埋め込まれた状態を維持する、準凝集されたCe6およびZnS:Mn2+ QDと複合化された二酸化ケイ素のナノ粒子の沈澱を生じることになる、10分間の超音波処理下での0.01μMのZnS:Mn2+ QDを含有する3mlの水および800μLのNH4O4の添加により、この前駆体の加水分解および凝縮中に、該量子ドットをナノマトリックス中にドープする。沈澱したドープされたナノフォトメディスンを、遠心分離によってエタノール媒体から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、投与のためにPBS溶液中に再分散させる。
【0099】
図6aは、ナノフォトメディスン中に埋め込まれたZnS QDのX線回折パターンを示すものであり、図6bおよび図6cは、埋め込まれたZnS:Mnから橙色を発光している、水に分散された試料の600nmでの蛍光放射スペクトルおよびデジタル写真を示すものであり、これにより、ドープされたナノフォトメディスン中でQDをドープすることに成功することが確証される。
【0100】
QDからの蛍光放射は、ドープされたナノフォトメディスンが標的組織に局在した後に、ファイバー光励起および放射装置を使用して、in vivoでの癌のイメージングに使用することができる。これは、フリーの光増感剤の蛍光特性に現在依存している、光線力学線量測定の現法を改良するのを補助する。癌の検出および線量測定にQDを使用することは、光増感剤を光退色させる(破壊する)ことなく、これらの目標を達成するのに役立つ。
【0101】
(実施例8:ガドリニウム(Gd3+)でドープされたナノフォトメディスンの作製)
この実施例では、ドープされたナノフォトメディスンを形成するためにガドリニウム(Gd3+)の磁気造影剤でドープされたNPM-5の作製を説明している。
【0102】
1μM濃度のCe6を、5mlの99%エタノール中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させた。反応の2〜4時間後、この結合された生成物をゲル濾過によって精製し、アミン反応性の「活性化された」フォトメディスンを得て、これを、シランカップリング剤である600μLのAPTSと反応させる。この反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTS-1を得る。3〜4時間後、このCe6-APTS-1を、10mlの99%エタノール媒体中で、1000μLのTEOSまたはTMOSと2〜3時間反応させて、シランを結合させた準凝集ナノフォトメディスンの前駆体を形成させる。ナノ粒子状マトリックスのアモルファス相中に埋め込まれた状態を維持する、準凝集されたCe6と複合化されてGd3+でドープされた二酸化ケイ素のナノ粒子の沈澱を生じることになる、10分間の超音波処理下での0.01Mの硝酸ガドリニウムを含有する3mlの水に次いで800μLのNH4O4の添加により、この前駆体の加水分解および凝縮中に、該磁気剤をナノマトリックス中にドープする。沈澱したナノ粒子を、遠心分離によってエタノール媒体から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、PBS溶液中に再分散させる。
【0103】
振動試料磁力計を使用して行った磁気試験により、フリーのCe6の反磁性の反応と比較して、Gd3+でドープされたナノフォトメディスンの常磁性特性(図7)が明らかにされた。さらに、24ウェルプレート中で、1.5Tの臨床MRI単位を使用して、ドープされたナノフォトメディスンで処理した約80,000個の癌細胞の収集をイメージングすることによって磁気共鳴画像法のためのこのシステムの適用性が実証された。図8は、対照(未処理の細胞)およびフリーのCe6で処理した細胞と共に、異なる濃度のドープされたナノフォトメディスンで処理した細胞のT1強調コントラストイメージングを示すものである。ナノフォトメディスンの濃度と共にコントラストが増強されるのを認めることができ、これにより、本発明に記載のドープされたナノフォトメディスンは、光線力学療法と共にMRIベースの診断のために使用できることが確証される。これは、治療前の計画を立てること、投与された薬剤の薬物動態を完全に非侵襲性の技術を使用して理解すること、および治療後の効力の解析において重要性を有する。
【0104】
(実施例9:マンガン(Mn2+)でドープされたナノフォトメディスンの作製)
この実施例では、ドープされたナノフォトメディスンを形成するためにマンガン(Mn2+)の磁気造影剤でドープされたNPM-6の作製を説明している。
【0105】
1μM濃度のCe6を、5mlの99%エタノール中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させた。反応の2〜4時間後、この結合された生成物をゲル濾過によって精製し、アミン反応性の「活性化された」フォトメディスンを得て、これを、シランカップリング剤である600μLのAPTSと反応させる。この反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTS-1を得る。3〜4時間後、このCe6-APTS-1を、10mlの99%エタノール媒体中で、1000μLのTEOSまたはTMOSと2〜3時間反応させて、シランを結合させた準凝集ナノフォトメディスンの前駆体を形成させる。ナノ粒子状マトリックスのアモルファス相中に埋め込まれた状態を維持する、準凝集されたCe6と複合化されてMn2+でドープされた二酸化ケイ素のナノ粒子の沈澱を生じることになる、10分間の超音波処理下での0.01Mの硫酸マンガンを含有する3mlの水に次いで800μLのNH4O4の添加により、この前駆体の加水分解および凝縮中に、該磁気剤をナノマトリックス中にドープする。沈澱したナノ粒子を、遠心分離によってエタノール媒体から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、PBS溶液中に再分散させる。
【0106】
(実施例10:鉄(Fe3+)でドープされたナノフォトメディスンの作製)
この実施例では、ドープされたナノフォトメディスンを形成するために鉄(Fe3+)の磁気造影剤でドープされたNPM-5の作製を説明している。
【0107】
1μM濃度のCe6を、5mlの99%エタノール中で、10〜15倍モル過剰のEDACおよび10〜15モル過剰のスルホ-NHSと反応させた。反応の2〜4時間後、この結合された生成物をゲル濾過によって精製し、アミン反応性の「活性化された」フォトメディスンを得て、これを、シランカップリング剤である600μLのAPTSと反応させる。この反応を、暗所、室温で3〜4時間継続させて、化合物Ce6-APTS-1を得る。3〜4時間後、このCe6-APTS-1を、10mlの99%エタノール媒体中で、1000μLのTEOSまたはTMOSと2〜3時間反応させて、シランを結合させた準凝集ナノフォトメディスンの前駆体を形成させる。ナノ粒子状マトリックスのアモルファス相中に埋め込まれた状態を維持する、準凝集されたCe6と複合化されてFe3+でドープされた二酸化ケイ素のナノ粒子の沈澱を生じることになる、10分間の超音波処理下での0.01Mの塩化鉄(FeCl3)を含有する3mlの水に次いで800μLのNH4O4の添加により、この前駆体の加水分解および凝縮中に、該磁気剤をナノマトリックス中にドープする。沈澱したナノ粒子を、遠心分離によってエタノール媒体から分離して、蒸留水で洗浄し、その後、PBS溶液中に再分散させる。
【0108】
振動試料磁力計を使用して行った磁気試験により、フリーのCe6の反磁性の反応と比較して、Gd3+でドープされたナノフォトメディスンの常磁性特性(図7)が明らかにされた。さらに、24ウェルプレート中で、1.5Tの臨床MRI単位を使用して、ドープされたナノフォトメディスンで処理した約80,000個の癌細胞の収集をイメージングすることによって磁気共鳴画像法のためのこのシステムの適用性が実証された。図8は、対照(未処理の細胞)およびフリーのCe6で処理した細胞と共に、異なる濃度のドープされたナノフォトメディスンで処理した細胞のT1強調コントラストイメージングを示すものである。ナノフォトメディスンの濃度と共にコントラストが増強されるのを認めることができ、これにより、本発明に記載のドープされたナノフォトメディスンは、光線力学療法と共にMRIベースの診断のために使用できることが確証される。これは、治療前の計画を立てること、投与された薬剤の薬物動態を完全に非侵襲性の技術を使用して理解すること、および治療後の効力の解析において重要性を有する。
【0109】
(実施例11)
この実施例では、赤色レーザー(放射652nm)を使用して、ペプチドを結合したナノフォトメディスンの感度を高めることによる、ペプチドを結合したナノフォトメディスンの癌細胞への送達および光線力学療法を説明している。
【0110】
白血病細胞K562を、96ウェルマイクロタイタープレート中に800,000細胞/ウェルで播種して、フリーのCe6(1μM)、フリーの光増感剤と等しい濃度の増感剤を提供する0.05mg/mlのナノフォトメディスン(NPM-3)、および対照として0.05mg/mlの裸のシリカナノ粒子で処理した。細胞を、5%のCO2下、37℃で3時間インキュベートした。続いて、結合していないフリーの増感剤、ナノフォトメディスン、およびシリカナノ粒子を、該ウェルプレートから除去して、新しい媒体で2回洗浄した。
【0111】
試験試料を使用して、ペプチドを結合したナノフォトメディスンの細胞の取り込みを調べた。図9は、癌細胞による、ペプチドを結合したナノフォトメディスンの有意な細胞下の取り込みを示すものであり、これにより、薬剤送達の成功が確証される。
【0112】
続いて、96ウェルプレートの全てのウェルにわたる均一なレーザー出力を供給する、ファイバー光照射器を通して連結された、652nmコヒーレント光を放射する固体レーザーを使用して、PDTを行った。レーザー出力計を使用して測定しながら、20Jcm-2の全光線量を適用した。20Jcm-2の全線量を達成するために、5mWの量のレーザー出力を、4000秒間かけて供給した。
【0113】
PDT後、細胞を72日間さらにインキュベートし、生存可能な細胞のミトコンドリア中にそれらの細胞の代謝活性によって形成されるホルマザン結晶(480nm)の光吸収(光学濃度)を使用する標準的なアッセイ(Roche Cell Proliferation Reagent WST-1、Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany)を使用して、処理した細胞の細胞生存率および増殖能力を評価した。したがって、この試験は、PDT治療による細胞死/細胞生存率についての直接的な情報を提供する。
【0114】
図10は、WSTアッセイの結果を示すものである。これらのデータにより、フリーの光増感剤と比較して、3つのナノフォトメディスン構築物全てがより高い治療効果(癌細胞を死滅させること)を示すことが明白に示唆される。これは、光線力学療法における前記構築物の有利な特性を確証するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子イメージングを用いた標的光線力学療法における使用に好適な光増感剤含有ナノ粒子の作製のための方法であって、
a)ナノ粒子前駆体分子を提供する段階と、
b)前記ナノ粒子前駆体分子に光増感剤を結合させて光増感剤結合型ナノ粒子前駆体を提供する段階と、
c)前記光増感剤-ナノ粒子前駆体結合体に磁気造影剤および/または光造影剤を添加して光増感剤-ナノ粒子前駆体混合物を提供する段階と、
d)ステップc)から得られた前記光増感剤-ナノ粒子前駆体混合物から溶液沈澱または分子自己集合によってナノ粒子を形成する段階と
を含む方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属酸化物、キトサン、カルボキシメチルキトサン(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンイミン(PEI)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびこれらの組合せからなる群から選択される材料から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属酸化物がシリカであり、前記前駆体分子がオルトケイ酸塩であり、前記ナノ粒子が、塩基性pHの条件下かつコロイド状シリカナノ粒子を形成するための超音波処理下でのオルトケイ酸塩前駆体の加水分解および凝縮の過程によって形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光増感剤が、クロリンe6(Ce6)、メソ-テトラ(3-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(BPDまたはベルテポルフィン)、フォトフリン、テモポルフィン(Foscan (登録商標))、ローズベンガル、金属フタロシアニンおよびこれらの組合せから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる光増感剤含有ナノ粒子。
【請求項6】
光増感剤含有ナノ粒子であって、前記ナノ粒子の少なくとも一部の全体にわたってナノ粒子マトリックス材料に共有結合で結合し、かつ、モノマー分子と凝集した分子との混合物としてその中に組み込まれた光増感剤を含み、前記ナノ粒子のソーレー帯吸収に対するQ帯吸収の比率が0.05と1.0との間の値を有する光増感剤含有ナノ粒子。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属酸化物、カルボキシメチルキトサン(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンイミン(PEI)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびこれらの組合せからなる群から選択される材料から形成される、請求項5または6に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記金属酸化物がシリカである、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記光増感剤が、クロリンe6 (Ce6)、メソ-テトラ(3-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(BPDまたはベルテポルフィン)、フォトフリン、テモポルフィン(Foscan (登録商標))、ローズベンガル、金属フタロシアニンおよびこれらの組合せから選択される、請求項5から8のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、光造影剤および/または磁気造影機能でドープされている、請求項5から9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記光造影剤が、Mn2+、Cu+-Al3+もしくはCu+-ハロゲンまたはこれらの組合せでドープされたZnSの発光量子ドットである、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
磁気造影機能が、ナノフォトメディスンをGd3+、Fe3+またはMn2+でドープすることによって提供される、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、最も外側の表面に共有結合で連結された癌ターゲティングリガンドを含有する、請求項5から12のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項14】
癌ターゲティングリガンドが、オクトレオチドもしくはオクレアトテート(ocreatotate)またはこれらのカルボキシレート誘導体、例えば、ソマトスタチンレセプター2型を標的とする、DTPA-Tyr3-オクレオチド、DOTA-Tyr3-オクレオチド、DTPA-Tyr3-オクトレオタート(Octreotate)またはDOTA-Tyr3-オクレオタート(Ocreotate)などである、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
請求項5から14のいずれか一項に記載のナノ粒子を、薬学的に許容される担体と共に含む、注射用組成物または経口投与用組成物。
【請求項16】
PDT治療によって癌細胞を死滅させる方法であって、前記癌細胞を請求項5から14のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させる段階と、前記ナノ粒子に治療有効量の光を照射して前記ナノ粒子からの一重項酸素発光を誘起する段階とを含む方法。
【請求項17】
画像によるPDT治療によって癌細胞を死滅させる方法であって、前記癌細胞を請求項5から14のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させる段階と、前記ナノ粒子に治療有効量の光を照射して前記ナノ粒子からの一重項酸素発光を誘起する段階とを含み、前記ナノ粒子が光造影剤および/または磁気造影剤でドープされ、前記照射の方向が、癌細胞の部位、大きさおよび広がりを示すためのマーカーとして光造影剤または磁気造影剤を使用するイメージング技術によって誘導される方法。

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図9】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−529500(P2012−529500A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514903(P2012−514903)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050337
【国際公開番号】WO2010/143942
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511294062)エラスムス・ユニヴァーシティ・メディカル・センター・ロッテルダム (2)
【出願人】(511302127)アムリタ・ヴィシュワ・ヴィジャペータム・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】