説明

癌の検出のための尿遺伝子発現比

本発明は、低発現腫瘍マーカー(TM)および少なくとも一つの他のTMの発現レベルの分析に基づき、対象における癌の存在を判定する方法に関する。具体的には本発明は、少なくとも一つの低発現TM、詳しくは低発現膀胱TM(BTM)および少なくとも一つの過剰発現TM、詳しくは過剰発現BTM、の発現レベルの、比、回帰または分類分析を行うことによる、癌、特に膀胱癌の判定に関する。種々の態様では、本発明は、これらの方法を実施するためのキットおよび装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の検出に関する。具体的には、本発明は膀胱癌の検出のためのマーカーの使用に関する。より具体的には、本発明は、膀胱癌検出のため、低発現(under-expressed)マーカーを少なくとも一つの他のマーカーと組み合わせた使用に関する。
【0002】
背景
癌患者の生存は、癌を初期に治療すると、大きく増大する。膀胱癌の場合、進行した疾患と診断された患者の約15〜30%と比較して、疾患の初期段階と診断された患者は、>90%以上の5年生存率を有する。それ故、膀胱癌の早期診断につながる進歩によって、患者の予後の改善がもたらされる。尿試料を用いた、実施されている膀胱癌検出方法は、細胞診断である。しかしながら、細胞診断は、浸潤性膀胱癌の検出には75%感度、および表在性膀胱癌の検出にはたった約25%の感度であることが知られている(Lotan and Roehrborn, Urology 61 , 109-118 (2003))。
【0003】
尿中の特異的なマーカーの同定によって、癌の早期診断のための価値ある方法が提供でき、早期治療と予後の改善につながる。特異的な癌マーカーはまた、疾患の進行を監視する方法を提供し、外科、放射線療法、化学療法治療の有効性を監視することが可能になる。
【0004】
現在、膀胱癌を検出するための最も信頼できる方法は、生検病変部の組織学的検査を伴う細胞検査である。しかしながら、この技法は時間がかかり、侵襲的であり、その感度は約90%であるに過ぎず、癌の約10%はこの方法を用いても検出されないことを意味する。非侵襲的な方法としては、剥脱した悪性細胞を顕微鏡的に検出する尿の細胞診断が、現在の好まれる方法である。細胞診断は約95%の特異性を有するが、低段階の病変部については感度(9〜25%)が不十分であり、試料の品質に非常に依存し、観察者間での変異が大きいことに悩まされている。
【0005】
幾つかの尿タンパクマーカーが知られている。これらマーカーに関する試験は、細胞診断よりも感度が良好であるが、これらマーカー値の上昇はまた、炎症、尿路結石症および良性前立腺肥大を含む、非悪性疾患を有する患者において一般に観察されることから、特異性が不十分であることに悩まされる傾向がある。例えば、特異的核マトリックスタンパクを検出するNMP22は、47〜87%の感度および58〜91%の特異性を有する。
【0006】
尿検査に付随する一つの欠陥は、個々のマーカー値は、以下によって有意に変化する可能性があることである:(i)異なった尿採取方法(カテーテル採取尿、排尿、尿沈殿物);(ii)尿採取の日周タイミング;(iii)排尿時の採取点(例えば中間点対終了時点の試料);および(iv)変動する液体摂取、腎臓機能および血漿体積に影響する疾患、に伴う尿の濃度。これらの変動によって、擬陽性および擬陰性を招く可能性がある。この変動の幾つかは厳密な標準的操作手法を用いて減少させることができるが、これらの手法を患者が順守することは信頼できない可能性がある。変動する尿濃度の影響は、ある症例では、尿クレアチニンに対する相対的なマーカーレベルを評価することにより、説明できるが、これは、特に試料調製または貯蔵方法がマーカー検出とクレアチニン測定で異なる場合、試験コストを増大させ、試験がさらに複雑になる。
【0007】
癌の早期検出と診断のための簡単なツールが必要である。本発明は、膀胱癌の検出および診断に役立つための、マーカーに基づく、特に膀胱癌マーカーの比、回帰または分類分析に基づく方法、装置およびキットをさらに提供する。
【0008】
発明の要約
本発明は、以下のステップを含む、対象における癌の存在を決定する方法、を提供する:
(a) 対象からの試料を提供するステップ;
(b) 前記試料中の、少なくとも一つの腫瘍マーカー(TM)が低発現TMである、少なくとも二つのTMファミリーメンバーの発現レベルを検出するステップ;および
(c) あらかじめ定めた閾値に従って、患者が癌を有するかを立証するステップ。
【0009】
ステップ(c)は、前記TMの発現比を測定することによって、またはTM発現レベルの回帰または分類分析を行うことによって行うことができる。
【0010】
TMはBTMであることが可能である。検出される癌は膀胱癌であることがあり得るし、ある特定の実施態様では、TMの少なくとも一つは過剰発現BTMである。過剰発現BTMは、図11または図12に要約された群から選択してもよい。
【0011】
ある特定の実施態様では、少なくとも一つの低発現TMは、図3または図4に概要を述べた群から選択してもよい。
【0012】
本発明の他の実施態様では、検出ステップは、BTM mRNA、BTMタンパクまたはBTMペプチドの過剰発現を検出することによって行う。
【0013】
試料は、生検、血液、血清、腹膜洗浄液、脳脊髄液、尿および便試料のいずれかであり得る。
【0014】
本発明はまた、以下を含む、TMを検出するための装置を提供する:
その上にTMキャプチャー試薬を有する基材;および
該基材に付随する検出器であって、該キャプチャー試薬に結合している低発現TMを検出することができる該検出器。
【0015】
TMはBTMであることが可能である。
【0016】
TMキャプチャー試薬がオリゴヌクレオチドまたは抗体であることが可能である。
【0017】
ある特定の実施態様では、TMは図3または図4に概要を述べた群から選択されるBTMであることが可能である。
【0018】
本発明はまた、以下を含む、対象における癌の存在を判定するためのキットを提供する:
基材;
少なくとも一つのTMが低発現TMである、少なくとも二つのTMキャプチャー試薬;
および
使用のための取扱説明書。
【0019】
TMはBTMであることが可能である。
【0020】
TMキャプチャー試薬は、TM特異的オリゴヌクレオチドまたはTM特異的な抗体であってもよい。
【0021】
キットによって検出されるTMは、図3または図4に概要を述べた群から選択されるBTMであってもよい。
【0022】
キットによって検出される少なくとも一つのTMは、過剰発現TMまたは過剰発現BTMであってもよい。過剰発現BTMは、図11または図12に概要を述べた群から選択されてもよい。
【0023】
発明の詳細な説明
定義
用語「マーカー」は、生物現象の存在と定量的に、または定性的に関連する分子を意味する。マーカーの例としては、遺伝子、遺伝子断片、RNAまたはRNA断片のようなポリヌクレオチド;ペプチド、オリゴペプチド、タンパクまたはタンパク断片のようなポリペプチドを含む遺伝子産物;または現象の基礎となるメカニズムに直接的に関係していようが、間接的に関係していようが、関連代謝物、副産物または抗体または抗体断片のような他の識別分子が挙げられる。本発明のマーカーとしては、本明細書に開示した核酸配列(例えばGenBank配列)、具体的には全長配列、任意のコード配列、ノンコード配列および断片、またはそれらの任意の相補体、および上に規定したような任意の測定可能なそれらのマーカーが挙げられる。
【0024】
用語「感度」は、試験で陽性(モデルによっては)である、疾患を有する個人の比率を意味する。従って、感度が増加することは、試験結果に擬陰性がより少ないことを意味する。
【0025】
用語「特異性」は、試験で陰性(モデルによっては)である、疾患を有しない個人の比率を意味する。従って特異性が増加することは、試験結果に擬陽性がより少ないことを意味する。
【0026】
用語「発現」は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生産、具体的には遺伝子または遺伝子の部分からのRNA(例えばmRNA)の生産を含み、ならびにRNAまたは遺伝子または遺伝子の部分によってコードされるポリペプチドの生産を含み、発現と関連する検出可能な物質の出現を含む。例えば、ポリペプチド-ポリペプチド相互作用、ポリペプチド-ヌクレオチド相互作用等からの複合体の形成は、用語「発現」の範囲内に含まれる。別の例としては、ハイブリダイゼーションプローブまたは抗体のような結合リガンドの、遺伝子もしくは他のポリヌクレオチド、ポリペプチドもしくはタンパク断片との結合、および結合リガンドの可視化も含まれる。従って、マイクロアレイ上の、ノーザンブロットのようなハイブリダイゼーションブロット上の、またはウエスタンブロットのような免疫ブロット上の、またはビーズアレイ上の、またはPCR分析による、スポットの密度は、根本的な生物分子の用語「発現」の範囲内に含まれる。
【0027】
用語「過剰発現」は、ある細胞または細胞型におけるマーカーの発現が、他の同等の細胞または細胞型におけるマーカーの発現よりも多い場合に用いる。
【0028】
用語「低発現」は、ある細胞または細胞型におけるマーカーの発現が、他の同等の細胞または細胞型におけるマーカーの発現よりも少ない場合に用いる。
【0029】
用語「TM」または「腫瘍マーカー」または「TMファミリーメンバー」は、特定の癌に関連するマーカーを意味する。用語TMはまた、その組み合わせが癌の検出の感度および特異性を改良する、個々のマーカーの組み合わせをも含む。当然のことながら、用語「TM」は、マーカーが特定の腫瘍にのみ特異的であることは必要としない。むしろ、TMの発現は、他の型の細胞、疾患細胞、悪性腫瘍を含む腫瘍において変化することが可能である。
【0030】
TMは、膀胱癌を有すると疑われる患者からの組織試料からRNAを抽出し、その上に多くのオリゴヌクレオチドを有するマイクロアレイにRNAまたはcDNAコピーを加え、アレイ上のオリゴヌクレオチドに試料RNAをハイブリダイズさせ、各アレイスポットに結合した測定RNAのレベルを定量することにより、同定することができる。もしマーカーの存在が、マイクロアレイ法を用いて、正常、非悪性組織において見出される値の少なくとも約1.2倍に閾値より低い場合は、マーカーは低発現TMであると考えられる。代わりに、閾値は、正常値の約2倍より低い、正常値の約3分の1、正常値の約4分の1または約5分の1であることも可能である。「正常」は、ここでは正常の集団の90パーセンタイルより小さいことを意味する。他の場合、正常とは、95パーセンタイル(すなわち平均値から約2標準偏差(SD))の存在のレベルを意味することも可能であり、また他の場合、約97.5パーセンタイル未満(すなわち約3SD)または99パーセンタイルであることも可能である。
【0031】
用語「低発現TM」は、非悪性膀胱組織におけるよりも膀胱腫瘍において低い発現を示すマーカーを意味する。
【0032】
用語「過剰発現TM」は、非悪性膀胱組織におけるよりも膀胱腫瘍において高い発現を示すマーカーを意味する。
【0033】
用語「BTM」または「膀胱腫瘍マーカー」または「BTMファミリーメンバー」は、膀胱癌に関連するTMを意味する。用語BTMはまた、その組み合わせが膀胱癌検出の感度および特異性を改良する、個々のマーカーの組み合わせを含む。当然のことながら、用語BTMは、マーカーが膀胱腫瘍に対してのみ特異的であることを必要としない。むしろ、BTMの発現は、他の型の細胞、疾患細胞、悪性腫瘍を含む腫瘍において変化することができる。
【0034】
用語「低発現BTM」は、非悪性膀胱組織においてよりも、膀胱腫瘍において低い発現を示すマーカーを意味する。
【0035】
用語「過剰発現BTM」は、非悪性膀胱組織においてよりも、膀胱腫瘍において高い発現を示すマーカーを意味する。
【0036】
用語「qPCR」は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。用語「qPCR」又は「QPCR」は、例えばPCR Technique: Quantitative PCR, J.W. Larrick, ed., Eaton Publishing, 1997 および A-Z of Quantitative PCR, S. Bustin, ed., IUL Press, 2004に記載する定量的ポリメラーゼ連鎖反応を言う。
【0037】
用語「TCC」は、膀胱の移行上皮細胞癌を意味する。TCCは全膀胱癌の〜95%を占める。
【0038】
本明細書では、「抗体」および同様の用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子、を言う。これらにとしては、限定されないが、多クローン抗体、単クローン抗体、キメラ、単鎖、Fc、Fab、Fab’およびFab2断片、ならびにFab発現ライブラリーが挙げられる。抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかに関連しており、それらは分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なっている。これらはIgG1、IgG2、およびその他のようなサブクラスを含む。軽鎖は、カッパ鎖またはラムダ鎖であってもよい。本明細書における抗体の参照には、全てのクラス、サブクラスおよびタイプに対する参照が含まれる。更に、例えばマウスまたはヒトの配列のように一つを越える供給源に対して特異的である単クローン抗体またはその断片のようなキメラ抗体も含まれる。更にまた、ラクダ科動物の抗体、サメの抗体またはナノボディも含まれる。
【0039】
用語「癌」および「癌性の」は、異常なまたは制御されない細胞増殖を通常、特徴とする哺乳動物における生理的状態を言うか、または述べている。癌および癌の病理は、例えば、転移;隣接する細胞の正常機能に対する阻害;サイトカインまたは他の分泌産物の異常量の放出;炎症または免疫反応の抑制または悪化;腫瘍形成;前悪性の状態;悪性の状態;リンパ節等の周縁または遠隔組織または器官の侵入;に関与する可能性がある。
【0040】
用語「腫瘍」は、悪性であろうと良性であろうと、全ての腫瘍性の細胞成長および増殖、ならびに全ての前癌および癌細胞および組織を言う。
【0041】
用語「マイクロアレイ」は、キャプチャー剤、好ましくはポリヌクレオチド(例えばプローブ)またはポリペプチドが基質上に規則的に、または不規則に配置したものを言う。例えば、Microarray Analysis, M. Schena, John Wiley & Sons, 2002; Microarray Biochip Technology, M. Schena, ed., Eaton Publishing, 2000; Guide to Analysis of DNA Microarray Data, S. Knudsen, John Wiley & Sons, 2004; and Protein Microarray Technology, D. Kambhampati, ed., John Wiley & Sons, 2004を参照のこと。
【0042】
用語「オリゴヌクレオチド」は、ポリヌクレオチド、通常はプローブまたはプライマーを言い、限定されないが、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖または二本鎖のリボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッドおよび二本鎖DNAが挙げられる。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドは、化学的方法、例えば市販の自動化オリゴヌクレオチド合成装置を用いて、またはインビトロ発現システム、組み換え技術、ならびに細胞および生物における発現を含む種々の他の方法により、しばしば合成される。
【0043】
用語「ポリヌクレオチド」は、単数または複数形で用いられた時、いずれかのポリヌクレオチドまたはポリデオキシヌクレオチドを言い、それらは改変されないRNAもしくはDNA、または改変されたRNAもしくはDNAであってもよい。これは、非限定的に、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくは、より一般的には二本鎖であってもよい、または一本鎖および二本鎖領域を含む、DNAおよびRNAを含むハイブリド分子を含む。更に、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域も含まれる。mRNA、cDNAおよびゲノムDNAおよびそれらの断片が、特に含まれる。この用語は、トリチウム標識された塩基またはイノシンのような異常塩基などの改変された一つ以上の塩基を含有するDNAおよびRNAを含む。本発明のポリヌクレオチドは、コーディングまたはアンチコーディング配列もしくはセンスまたはアンチセンス配列を包含することができる。当然のことながら、本明細書で、「ポリヌクレオチド」または同様な用語の参照には、全長配列ならびにそれらのいずれかの断片、誘導体または変異体を含まれる。
【0044】
本明細書で用いる「ポリペプチド」は、オリゴペプチド、ペプチドもしくはタンパク配列、またはそれらの断片、および天然分子、組み換え分子、合成または半合成分子を言う。天然に存在するタンパク分子のアミノ酸配列に言及するために、「ポリペプチド」を本明細書に列挙する場合、「ポリペプチド」または同様な用語は、アミノ酸配列を全長分子の完全な天然アミノ酸配列に限定することを意味するものではない。当然のことながら、本明細書において、「ポリペプチド」または同様な用語の各参照には、全列配列ならびにそれらの任意の断片、誘導体または変異体が含まれるであろう。
【0045】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は当業者により容易に決定でき、一般的に、プローブの長さ、洗浄温度および塩濃度に依存した経験的な計算でなされる。一般的に、プローブが長くなると適切なアニ―リングのために、より高い温度が必要となり、一方プローブが短くなると、より低い温度が必要となる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、その融点より低い環境に相補鎖が存在する場合、変性したDNAが再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイズさせる配列間の所望の相同性の度合いが高いほど、適用することができる相対温度は高くなる。その結果、相対温度が高いほど、反応条件がよりストリンジェントになるであろうし、一方相対温度が低いほどストリンジェンシーはより少なくなる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの更なる詳細および説明は、例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley lnterscience Publishers, (1995)に見られる。
【0046】
「ストリンジェントな条件」または「高度なストリンジェンシー条件」は、本明細書では、通常は(1)洗浄において低イオン強度および高温を用い、例としては0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃;(2)ホルムアミドのような変性剤をハイブリダイゼーション中に用い、例としては、50%(v/v)ホルムアミドを0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファー、pH6.5、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム中に、42℃;または(3)50%ホルムアミド、5XSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5X Denhardt's溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸、42℃を用い、洗浄は42℃において、0.2XSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミドで55℃、次いでEDTAを含む0.1XSSCで55℃から成る高ストリンジェンシー洗浄を行う。
【0047】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されたものを参照としても良く、上記のものよりはストリンジェンシーの低い洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度およびSDS%)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の例としては、20%ホルムアミド、5XSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5XDenhardt’s溶液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性、せん断したDNAを含む溶液中で37℃一夜インキュベートし、次いでフィルターを1XSSC中で約37〜50℃にて洗浄する。当業者であれば、温度、イオン強度等を、プローブの長さ等のような因子に適応するため必要に応じて、調整する方法を認識するであろう。
【0048】
本発明の実施には、別段指定のない限り、当技術分野の範囲にある、分子生物学(組み換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学および生化学の通常の技術が用いられるであろう。そのような技術はMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook et al., 1989; Oligonucleotide Synthesis, MJ Gait, ed., 1984; Animal Cell Culture, R.I. Freshney, ed., 1987; Methods in Enzymology, Academic Press, Inc.; Handbook of Experimental Immunology, 4th edition, D .M. Weir & CC. Blackwell, eds., Blackwell Science Inc., 1987; Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, J. M. Miller & M.P. Calos, eds., 1987; Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., 1987; および PCR: The Polymerase Chain Reaction, Mullis et al., eds., 1994、のような文献に十分に説明している。
【0049】
本発明の実施態様の説明
マイクロアレイ分析および定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)の組み合わせを用いて、腫瘍において低発現の、膀胱の移行上皮細胞癌(TCC)のマーカーを同定した。驚くべきことには、これらのマーカー、および他の膀胱腫瘍マーカー(BTM)、特に腫瘍において過剰発現しているマーカーとの間の比は、膀胱癌の診断に関するものであることを見出した。
【0050】
比(マーカーの絶対値を測定するよりもむしろ)は、膀胱癌細胞の特徴を表している、単純な遺伝子発現「兆候」を同定し、驚くべきことに、試料採取技術または尿濃度の変動に対して、より耐性がある。更に、低発現マーカーと過剰発現マーカーを組み合わせると、患者から試料と非悪性コントロールからの試料の間の差が最大になり、試験の信頼性が向上する。本明細書に記載する低発現マーカーは、(i)TCCにおける強く、一貫した下方制御、(ii)正常組織における高発現、および(iii)血尿を呈する患者での擬陽性のリスクを最小にするため、全血における発現がわずかであること、に基づいて選択した。
【0051】
二つのBTM比の測定の代用として、低発現および過剰発現BTMを回帰分析または線形識別分析を含む分類分析で分析できることも発見され、これらの分析の結果はまた、膀胱癌の存在の指標である。
【0052】
試験には、癌を有すると疑われる、または癌を有するリスクのある患者からの試料中の、BTMのようなTMマーカーの少なくとも二つの測定が含まれており、TMの少なくとも一つは低発現TMである。低発現TMと他のTMの比は癌の存在の指標である。第二のTMは当技術分野で知られている任意のTMでも可能であるが、好ましくは過剰発現BTMである。図3は、本発明で使用適性のある多くの低発現マーカーを示す。
【0053】
試験は、一つの低発現TMを一つの過剰発現TMと組み合わせて使用して行うのが最良である。例えば任意の過剰発現TMも使用することができる。浸潤性膀胱腫瘍(本明細書ではステージ1以上の腫瘍として規定される)から特定された既知の過剰発現BTMは、表11に概要を述べてあり、表在性膀胱腫瘍(本明細書ではステージTaおよびTis腫瘍として規定される)から特定された過剰発現BTMを図12に示す。
【0054】
本発明に使用する好ましい低発現BTMは、全血において有意には上昇しておらず、腫瘍細胞および非悪性膀胱細胞の両方において十分に高いコピー数存在することが立証されたことはまた驚くべきことである。図4に好ましい低発現BTMの概要を述べる。
【0055】
癌マーカーは、任意の適切な技術を用いて試料中に検出することができ、限定されないが、オリゴヌクレオチドプロ−ブ、qPCRまたは癌マーカーに対する抗体、が含まれる。
【0056】
当然のことながら、試験される試料は、腫瘍であると疑われる組織の試料に限定されない。マーカーは、血清中に分泌され、細胞膜から脱落し、溶解した細胞から放出され、または尿中へと失われる細胞に付着している可能性がある。それ故、試料としては任意の身体試料を含み、生検試料、血液、血清、腹膜洗浄液、脳精髄液、尿および便試料が挙げられる。
【0057】
当然のことながら、本発明はヒトにおける癌の検出に限られておらず、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、シカ、ブタおよび癌に罹患することが知られている任意の他の動物を含む、任意の動物において癌の検出に適している。
【0058】
癌検出の一般的方法
以下の方法は、TMを測定するために用いることができる非限定的な方法である。個々のTMの測定後、高および低発現BTMファミリーメンバーの間の比を測定する。これらの比は癌が存在するかしないかを予測するために使用する。
【0059】
あるいは、TMの高および低発現は、回帰または分類分析に用いる。これらの分析結果もまた、癌が存在するかしないかを予測するために使用する。
【0060】
当然のことながら、発現レベルを測定するどのような方法も適切であろうが、発現レベルを測定する一般方法の概要を以下に述べる。
【0061】
定量的PCR(qPCR)
定量的PCR(qPCR)は、BTM特異的プライマーおよびプローブを用いて、腫瘍試料、血清、血漿および尿試料について行うことができる。コントロール反応において、PCR反応で生成した産物の量は、出発テンプレートの量と相関する(Sambrook, J., E Fritsch, E. and T Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (2001))。PCR産物の定量化は、試薬が律速になる前に、対数期にある時にPCR反応を停止させることによって行うことができる。それからPCR産物をアガロースまたはポリアクリルアミドゲル中で電気泳動させ、臭化エチジウム染色または同等のDNA染色を行い、染色の強度をデンシトメトリーによって測定する。または、PCR反応の進行を、産物の蓄積をリアルタイムで測定するApplied Biosystems1 Prism 7000または the Roche LightCyclerのようなPCR装置を用いて測定することができる。リアルタイムPCRは、Sybr Greenのような色素を合成PCR産物へ挿入してDNA蛍光を測定するか、または消光分子から切断された時に、レポーター分子によって放出される蛍光を測定する;レポーターおよび消光分子は、プライマーオリゴヌクレオチドからのDNA鎖伸長の後、標的DNA分子にハイブリダイズさせるオリゴヌクレオチドプローブに組み込ませておく。オリゴヌクレオチドプローブは、次のPCRサイクルにおいてTaqポリメラーゼの酵素作用により、置換されかつ分解され、消光分子からレポーターを放出させる。Scorpion(登録商標)として知られる一つの変法においては、プローブはプライマーに共有結合している。
【0062】
逆転写PCR(RT−PCR)
RT−PCRは、薬剤治療を受ける、または受けない正常および腫瘍組織において、異なった試料群におけるRNAレベルを比較し、発現の型を特徴づけ、近縁関係にあるRNAを識別し、RNA構造を分析するために用いることができる。
【0063】
RT−PCRについては、最初のステップは標的試料からRNAを分離することである。出発物質は、通常は、ヒトの腫瘍または腫瘍細胞株、およびそれぞれに対応する正常組織または細胞株である。RNAは、乳房、肺、結腸(例えば大腸または小腸)、結腸直腸、胃、食道、肛門、直腸、前立腺、脳、肝臓、すい臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮、膀胱等からの腫瘍試料、原発性腫瘍または腫瘍細胞株からの、および健常提供者からのプールさた組織、のような種々の試料から分離することができる。もしRNA源が腫瘍ならば、RNAは、例えば、凍結したまたは保存したパラフィン包埋および固定(ホルマリン固定)した組織試料から抽出することができる。
【0064】
RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングの最初のステップは、RNAテンプレートのcDNAへの逆転写であり、次いでPCR反応における指数関数的な増幅を行う。二つの最も普通に使用されている逆転写酵素はトリ骨髄芽球症ウイルスの逆転写酵素(AMV−RT)およびMoloneyマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写ステップは、通常は、状況と発現プロファイリングの目的に応じて、特異的なプライマー、ランダムヘキサマーまたはオリゴdTプライマーを用いて開始する。例えば、抽出されたRNAは、GeneAmp RNA PCR キット (Perkin Elmer, CA, USA)を用いて、メーカーの指示に従って、逆転写することができる。得られたcDNAを次のPCR反応におけるテンプレートとして用いることができる。
【0065】
PCRステップは種々の熱安定性のDNA依存DNAポリメラーゼを用いることができるが、通常は、5’‐3’ヌクレーゼ活性を有するが、3’‐5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性を欠くTaqDNAポリメラーゼを用いる。従って、TaqMan(q)PCRは通常は、TaqまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を、標的アンプリコン結合しているハイブリダイゼーションプローブを加水分解するために用いるが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有するいかなる酵素も用いることができる。
【0066】
二つのオリゴヌクレオチドプライマーが、PCR反応に典型的なアンプリコンを生成するために用いる。第三のオリゴヌクレオチドまたはプローブは、二つのPCRプライマーの間に存在するヌクレオチド配列を検出するために設計される。プローブはTaqDNAポリメラーゼ酵素によっては伸長されず、レポーター蛍光色素および消光蛍光色素で標識されている。二つの色素が、プローブ上でのように接近して存在する場合、レポーター色素からの、いかなるレーザー誘導発光も消光色素によって消光される。増幅反応の間、TaqDNAポリメラーゼ酵素はプローブを、テンプレート依存的に切断する。その結果のプローブ断片は、溶液中に分散し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第二のフルオロフォアの消光効果を受けない。新分子が合成されるごとに、レポーター色素1分子が放出され、消光されないレポーター色素の検出により、データの定量的解釈の基盤が与えられる。
【0067】
TaqManRTPCRは、例えばABI PRISM 7700 Sequence Detection System (Perkin-Elmer-Applied Biosystems, Foster City, CA, USA), または Lightcycler (Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany)のような市販の装置を用いて行うことができる。好ましい一実施態様では、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM 7700tam Sequence Detection Systemのようなリアルタイム定量PCR装置で行われる。システムは、サーモサイクラー、レーザー、チャージカップル装置(CCD)、カメラおよびコンピュータから成る。システムは、サーモサイクラー上の96穴型中の試料を増幅する。増幅中、レーザー誘導蛍光シグナルをリアルタイムで、光ファイバーケーブルを通じて全96穴から集め、CCDで検出する。システムは機器の操作とデータ分析のためのソフトウエアを含む。
【0068】
5’ヌクレアーゼアッセイデータは、はじめにCtまたは閾値サイクルとしてとして表される。上に考察したように、蛍光値は、各サイクルの間記録され、増幅反応におけるその時点での増幅された産物の量を表す。蛍光シグナルが、統計的に有意であると最初に記録された時点が、閾値サイクルである。
【0069】
リアルタイム定量PCR(qPCR)
RT−PCR技術の最近の変種は、二重標識蛍光プローブ(すなわちTaqManプローブ)によって、PCR産物の蓄積を測定するリアルタイム定量PCRである。リアルタイムPCRは、競合定量PCRと相対定量PCRの両方に適合する。前者は、基準化のために各標的配列に対して内部競合剤を用い、一方後者は、試料中に含まれる基準化遺伝子、またはRT−PCRについてはハウスキーピング遺伝子を用いる。更なる詳細は、例えばHeld et al., Genome Research 6: 986-994 (1996)によって与えられる。
【0070】
発現レベルは、RNA源として固定したパラフィン包埋組織を用いて測定可能である。
本発明の一態様によれば、PCRプライマーおよびプローブは、増幅されるべき遺伝子のイントロン配列に基づいて設計する。この実施態様では、プライマー/プローブ設計の第一段階は遺伝子内のイントロン配列の描写である。これは、Kent, W. J., Genome Res. 12 (4): 656-64 (2002)が開発したDNA BLATソフトウエアのような公的に入手可能なソフトウエア、またはその変種を含むBLASTソフトウエアによって行うことができる。その後の段階として、PCRプライマーおよびプローブ設計についての定評のある方法が続く。
【0071】
非特異的なシグナルを避けるためにプライマーおよびプローブを設計する時にイントロン内の反復配列をマスクすることが有用である。これは、ベイラー医科大学を通じてオンラインで得られるRepeat Maskerプログラムを用いて容易に実施することができ、このプログラムはDNA配列を反復要素のライブラリーに対してスクリーニングし、反復要素がマスクされたクエリー配列を返す。マスクされた配列を、Primer Express (Applied Biosystems);MGB assay-by-design (Applied Biosystems);Primer3 (Steve Rozen and Helen J. Skaletsky (2000)、のような、いずれかの市販のまたは公的に得られるプライマー/プローブパッケジを用いて、プライマーおよびプローブを設計するために用いることができる。Primer3は一般利用者のためにはWWWにあり、生物学プログラマーのために
Krawetz S, Misener S (eds) Bioinformatics Methods and Protocols: Methods in Molecular Biology. Humana Press, Totowa, NJ, pp 365-386)に記載している。
【0072】
PCRプライマー設計において考慮すべき最も重要な要素としては、プライマー長、融点(Tm)およびG/C含量、特異性、相補的プライマー配列および3’末端配列が挙げられる。一般的に、最適PCRプライマーは、一般的に17〜30塩基長であり、約20〜80%、例えば約50〜60%G+C塩基を含む。融点は50と80℃の間、例えば約50から70℃が通常、好まれる。PCRプライマーおよびプローブ設計に関する更なる指針としては、例えばDieffenbach, C. W. et al., General Concepts for PCR Primer Design in: PCR Primer, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1995, pp. 133-155; lnnis and Gelfand, Optimization of PCRs in: PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, CRC Press, London, 1994, pp. 5-11 ; and Plasterer, T. N. Primerselect: Primer and probe design. Methods MoI. Biol. 70: 520-527 (1997)を参照されたい。これらの全開示内容は、参照により本明細書に明確に援用される。
【0073】
マイクロアレイ分析
差次的発現はまた、マイクロアレイ技術を用いて同定または確認することができる。従って、CCPMsの発現プロフィールは、新鮮腫瘍組織またはパラフィン包埋腫瘍組織のどちらかで、マイクロアレイ技術を用いて測定することができる。この方法では、対象となるポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチド)をマイクロチップ基材上に蒔く、または整列させる。整列した配列(すなわちキャプチャープローブ)は、対象となる細胞または組織(すなわち標的)からの特定のポリヌクレオチドとハイブリダイゼ−ションさせる。RT−PCR法におけるように、RNAの源は、通常、ヒト腫瘍または腫瘍細胞株、および対応する正常組織または細胞株から分離した全RNAである。従って、RNAは、種々の原発腫瘍または腫瘍細胞株から分離することができる。もしRNA源が原発腫瘍である場合は、RNAは、日常の診療において常に調製し保存している、例えば凍結した、または保存したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料および固定(例えばホルマリン固定)組織試料から抽出することができる。
【0074】
マイクロアレイ技術の具体的な実施態様では、cDNAクローンのPCR増幅された挿入断片を基材に添加する。基材は、1、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、または75までのヌクレオチド配列を含むことができる。他の態様では、基材は少なくとも10,000ヌクレオチド配列を含むことができる。マイクロアレイの配列は、マイクロチップ上に固定され、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼ−ションを行うのに適している。他の実施態様として、マイクロアレイの標的は、少なくとも50、100、200、400、500、1000、または2000塩基長;または50〜100、100〜200、100〜500、100〜1000、100〜2000または500〜5000塩基長であり得る。更なる実施態様として、マイクロアレイのためのキャプチャープローブは、少なくとも10、15、20、25、50、75、80、または100塩基長:または10〜15、10〜20、10〜25、10〜50、10〜75、10〜80または20〜80塩基長であり得る。
【0075】
蛍光標識cDNAプローブは、対象となる組織から抽出されたRNAの逆転写による蛍光ヌクレオチドの組み込みによって作製してもよい。チップに添加された標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに、特異性をもってハイブリダイゼ−ションする。非特異的に結合したプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄の後、共焦点レーザー顕微鏡またはCCDカメラのような別の検出方法で、チップを走査する。各アレイの要素のハイブリダイゼ−ションの定量によって、対応するmRNAの存在量の評価が可能になる。二つの源からのRNAから作製した、二重蛍光色で別々に標識されたcDNAプローブは、対としてアレイとハイブリダイゼ−ションさせる。それぞれの特定遺伝子に対応する二つの源からの転写物の相対的な存在量を、このようにして同時に測定する。このための代表的なプロトコルは、実施例4に詳細に記述する。
【0076】
ハイブリダイゼ−ションの小型化によって、膨大な遺伝子の発現型の便利で迅速な評価が利用可能になる。該方法は、細胞あたり数コピーで発現する、稀有な転写物を検出するために、および発現レベルにおける約2倍の差を再現性良く検出するために、必要となる感度を有することが示された(Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93 (2): 106-149 (1996))。マイクロアレイ分析は、Affymetrix GenChip technology, lllumina microarray technology またはIncyte's microarray technologyのような市販の装置によって、メーカーのプロトコルに従って行うことができる。遺伝子発現の大規模分析のためのマイクロアレイ法の開発によって、癌分類の分子マーカーを体系的に探査すること、種々の腫瘍型における効果予測することが可能になる。
【0077】
RNAの分離、精製および増幅
当技術分野においてmRNA抽出のための一般的方法は良く知られており、Ausubel et al., Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley and Sons (1997)を含む標準的な分子生物学の教科書に開示されている。パラフィン包埋組織からのRNA抽出法は例えばRupp and Locker, Lab Invest. 56: A67 (1987), and De Sandres et al., BioTechniques 18: 42044 (1995)に開示している。特に、RNA抽出は、Qiagenのような業者からの精製キット、バッファーセットおよびプロテアーゼを用いて、メーカーの指示に従って行うことができる。例えば、培養細胞らの全RNAはQiagen RNeasy mini-columnsを用いて分離することができる。他の市販のRNA分離キットとしては、MasterPure Complete DNA and RNA Purification Kit (EPICENTRE (D, Madison, Wl)およびParaffin Block RNA Isolation Kit (Ambion, Inc.)が挙げられる。
組織試料からの全RNAは、RNA Stat-60 (Tel- Test)を用いて分離することができる。腫瘍から調製されたRNAは、塩化セシウム密度勾配遠心法によって分離できる。
【0078】
固定パラフィン包埋組織をRNA源として用い、mRNA分離、精製、プライマー伸長および増幅を含む、遺伝子発現のプロファイリングのための代表的なプロトコルのステップは、種々の公刊された雑誌の論文に与えられている(例えば: T. E. Godfrey et al. J. Molec. Diagnostics 2: 84-91 (2000); K. Specht et al., Am. J. Pathol. 158: 419-29 (2001))。手短に説明すれば、代表的な手順は、パラフィン包埋腫瘍組織試料の約10μm厚の切片を切ることから始まる。それからRNAを抽出し、タンパクとDNAを除去する。RNAの濃度の分析後、必要であれば、RNA修復および/または増幅ステップを含めても良く、それからRNAを、遺伝子特異的なプロモータを用いて逆転写し次いでRT−PCRを行う。最後に、データを分析し、検査した腫瘍試料において同定された特徴的な遺伝子発現パターンに基づき、患者が得られる最良の治療の選択を明らかにする。
【0079】
免疫組織化学およびプロテオミクス
免疫組織化学法はまた、本発明の増殖マーカーの発現レベルを検出するのに適している。従って、各マーカーに特異的な、抗体または抗血清、好ましくはポリクロナール抗血清、最も好ましくはモノクロナール抗体を、発現を検出するために用いる。抗体は、例えば放射線標識、蛍光標識、ビオチンのようなハプテン標識、またはセイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼのような酵素での、抗体自身の直接標識によって検出することができる。あるいは、未標識の第一次抗体を、第一次抗体に特異的な抗血清、ポリクロナール抗血清またはモノクロナール抗体を含む標識された第二次抗体と組み合わせて用いる。免疫組織化学プロトコルおよびキットは当技術分野で良く知られており、市販されている。
【0080】
プロテオミックスは、試料中(例えば、組織、器官または培養細胞)に存在するポリペプチドをある時点において分析するために用いることができる。特に、プロテオミック技術は試料中のポリペプチド発現の包括的な変化の評価をするために用いることができる(発現プロテオミックスとも呼ばれる)。プロテオミック分析は、通常は:(1)二次元ゲル電気泳動法(2−DPAGE)による試料中の個々のポリペプチドの分離;(2)ゲルから回収された個々のポリペプチドの同定、例えば質量分光分析またはN末端配列決定による;および(3)生物情報科学を用いての分析を含む。プロテオミックス法は、単独で、または本発明の増殖マーカーの産物を検出するための他の方法と組み合わせて、遺伝子発現プロファイリングの他の方法に対する貴重な補助である。
【0081】
マーカーに対して選択的である核酸プローブを用いたハイブリダイゼ−ション方法
これらの方法は、核酸プローブを支持体に結合させ、試験試料から由来したRNAまたはcDNAと適切な条件下でハイブリダイゼ−ションさせることを含む(Sambrook, J., E Fritsch, E. and T Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (2001))。これらの方法は、組織または液体試料から由来したBTMに適用することができる。RNAまたはcDNA製剤は、通常は検出と定量を可能にするために、蛍光または放射性分子で標識されている。いくつかの応用では、ハイブリダイゼ−ションするDNAは、シグナル強度を増強するために、分岐した蛍光標識構造でタグを付けることができる(Nolte, F.S., Branched DNA signal amplification for direct quantitation of nucleic acid sequences in clinical specimens. Adv. Clin. Chem. 33, 201- 35 (1998))。ハイブリダイゼ−ションしない標識は、蛍光検出またはゲル像のデンシトメトリーによってハイブリダイゼ−ションの量を定量する前に、0.1XSSC、0.5%SDSのような低塩溶液中での強い洗浄によって除去する。支持体はナイロンまたはニトロセルロースのような固体であっても、液体懸濁状態でハイブリダイゼ−ションする小球体またはビーズであってもよい。洗浄と精製を可能にするために、ビーズは磁石であってもよいし(Haukanes, B-I and Kvam, C, Application of magnetic beads in bioassays. Bio/Technology 11, 60-63 (1993))、またはフローサイトメトリーを可能にするために蛍光標識されていてもよい(例えば: Spiro, A., Lowe, M. and Brown, D., A Bead-Based Method for Multiplexed Identification and Quantitation of DNA Sequences Using Flow Cytometry. Appl. Env. Micro. 66, 4258-4265 (2000)を参照)。
【0082】
ハイブリダイゼ−ション技術の変種は、蛍光ビーズ支持体と分岐DNAシグナル増幅を組み合わせたQuantiGene Plex(登録商標)アッセイ(Genospectra, Fremont)である。ハイブリダイゼ−ション技術の更に別の変種は、Quantikine(登録商標)mRNAアッセイ (R&D Systems, Minneapolis)である。方法はメーカーの指示書中に記述してある。簡単に説明すれば、このアッセイは、ジゴキシゲニンと結合したオリゴヌクレオチドハイブリダイゼ−ションプローブを用いる。ハイブリダイゼ−ションは、呈色反応アッセイにおいて、アルカリホスファターゼと結合した抗ジゴキシゲニン抗体を用いて検出される。
【0083】
追加の方法は、当技術において周知であり、本明細書にさらに記述する必要はない。
【0084】
酵素結合免疫アッセイ(ELISA)
簡単に説明すれば、サンドイッチELISAアッセイにおいては、BTMに対するポリクローンまたはモノクローン抗体は固体の支持体(Crowther, J. R. The ELISA guidebook. Humana Press: New Jersey (2000); Harlow, E. and Lane, D., Using antibodies: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (1999))、または懸濁ビーズに結合している。他の方法は当技術分野において周知であり、更に本明細書で説明する必要はない。モノクロナール抗体は、ハイブリドーマ由来であることもできるし、またはファージ抗体ライブラリーから選択することができる(Hust M. and Dubel S., Phage display vectors for the in vitro generation of human antibody fragments. Methods MoI Biol. 295:71-96 (2005))。非特異的な結合部位は、非標的タンパク製剤および界面活性剤でブロックされる。それからキャプチャー抗体を、BTM抗原を含む尿または組織の調製物とインキュベートする。抗体/抗原複合体を、標的BTMを検出する第二の抗体とインキュベートする前に、混合物を洗浄する。第二の抗体は通常は、酵素反応またはレポーターと結合している第三の抗体のいずれかによって検出される、蛍光分子または他のレポーター分子と結合している(Crowther, Id.)。または、直接ELISAにおいては、BTMを含む調製物は、支持体またはビーズに結合でき、標的抗原は抗体―レポーター抱合体で直接検出される(Crowther, Id.)。
【0085】
モノクロナール抗体およびポリクロナール抗血清を製造する方法は当技術分野においては公知であり、本明細書で更に説明する必要はない。
【0086】
免疫検出
腫瘍を除くための手術の前後に採取された膀胱癌患者からの血清または血漿におけるマーカーファミリーメンバーの免疫検出;限定されないが、結腸直腸、膵臓、卵巣、黒色肉腫、肝臓、食道、胃、子宮内膜および脳を含む、他の癌を有する患者におけるマーカーファミリーメンバーの免疫検出;および膀胱癌患者からの尿および便試料におけるマーカーファミリーメンバーの免疫検出;のために、本方法を用いることもできる。
【0087】
BTMはまた、免疫ブロッティングまたは免疫沈降のような他の標準的な免疫検出法を用いて、組織または尿中で検出することができる(Harlow, E. and Lane, D., Using antibodies: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor (1999))。免疫ブロッティングにおいては、BTMを含む組織または液体からのタンパク調製物を、変性または非変性状態で、ポリアクリルアミドゲルを介して電気泳動する。それからタンパクを、ナイロンのような膜状支持体に移動させる。その後、BTMを直接または間接的に、免疫組織化学について記述したように、モノクロナール抗体またはポリクロナール抗体と反応させる。あるいは、ある調製物では、タンパクを先に電気泳動分離することなしに膜に直接スポットすることができる。シグナルはデンシトメトリーにより定量することができる。
【0088】
免疫沈降において、BTMを含む可溶性の調製物をBTMに対するモノクロナール抗体またはポリクロナール抗体とインキュベートする。反応混合物を、それから共有結合したプロテインAまたはプロテインGを有するアガロースまたはポリアクリルアミドからなる不活性なビーズとインキュベートする。プロテインAまたはプロテインGビーズは、ビーズに結合した抗体−BTM−抗原の固定された複合体を形成する抗体と特異的に相互作用する。洗浄後、結合したBTMは免疫ブロッティングまたはELISAによって検出および定量することができる。
【0089】
閾値の決定
下方制御されたBTMを用いた、比率または回帰分析のいずれかにおける試験のために、試料をTCCに関して陽性または陰性と呼ぶことを可能にする、閾値を誘導する。これらの閾値は、TCCの存在を調査されている患者のコホートの分析によって決定されるであろう。閾値は異なった試験の適用により変動する可能性がある;例えば集団のスクリーニングにおける試験に使用する閾値は、主として泌尿器症状の無い患者のコホートを用いて決定されるであろうし、これらの閾値は、TCC再発の監視下にある患者、または血尿のような泌尿器症状の存在を調査される患者に対する試験に用いる閾値とは異なっている可能性がある。閾値は、要求される臨床状況において試験の特異性の実用的なレベルを提供するために選択することができる;すなわち擬陽性の結果を受ける患者の数が過剰ではないような、適度な感度を可能にする特異性である。この特異性は80〜90%の範囲内にあればよい。試験の閾値を得る代替法の一つは、異なった試験の閾値について、感度を特異性に対してプロットし(ROC曲線)、それから曲線の変曲点を選択する方法である。
【0090】
単一閾値の代用として、試験は、疾患の存在の可能性の程度が異なる、およびそれらに関連した臨床結果が異なる、試験区間を用いてもよい。例えば、試験は三つの区間を有してもよい:一つはTCCの存在の高リスク(例えば90%)と関連する区間、第二はTCCの低リスクと関連する区間、および第三は疾患の疑いがあると見なされる区間である。「疑わしい区間」は、規定された期間での再試験の推奨と関連し得る。
【0091】
尿中の膀胱癌マーカーを検出する方法
いくつかの実施態様では、BTMに関するアッセイは、尿試料について行うことできることが望ましい。一般的に、これらの液体中のオリゴヌクレオチド、タンパクおよびペプチドに関するアッセイ方法は当技術分野では知られている。しかしながら、例示の目的で、BTMの尿レベルはサンドイッチ型酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて定量することができる。血漿または血清アッセイのために、適切に希釈した試料または段階希釈した標準BTM5μl、およびペルオキシダーゼ抱合抗ヒトBTM抗体75μlを、マイクロタイタープレートのウエルに加える。30分間30℃のインキュベーション期間の後、結合していない抗体を除くために、ウエルをリン酸バッファー食塩水(PBS)中0.05%Tween20で洗浄する。BTMと抗BTM抗体の結合した複合体は、それからHを含むo-フェニレンジアミンと15分間30℃でインキュベートする。当然のことながら、反応を1M HSOを加えて停止し、492nmでの吸光度をマイクロタ-イタープレートリーダーで測定する。抗BTM抗体は、モノクロナール抗体またはポリクロナール抗体であり得る。
【0092】
多くのタンパクは、(1)細胞によって分泌され、(2)細胞膜から切断され、(3)細胞死時に細胞から喪失するか、または(4)脱落した細胞内に含まれる、のいずれかであることから、当然のことながら、BTMは尿中で検出される可能性もある。更に加えて、膀胱癌の診断は、試料中のBTMの発現、または試料中のBTMの蓄積のいずれかを測定することにより決定することができる。診断の先行技術における方法には、膀胱鏡検査、細胞学的検査およびこれらの処置の間に抽出された細胞の検査が挙げられる。該方法は、尿中または尿路上皮のこすり取った試料中の、又は他の症例の場合、膀胱壁の生検試料中の腫瘍細胞の同定に依存した。これらの方法は、試料採取の誤り、観察者間の同定における誤差等を含む、数種類の誤差を被る。
【0093】
膀胱腫瘍マーカーに対する抗体
更なる態様では、本発明は、BTMに対する抗体の製造を含む。本明細書に記載する方法を用いて、新規のBTMを、マイクロアレイおよび/またはqPCRを用いて同定することができる。ひとたび推定マーカーが同定されると、免疫反応を誘発するのに十分な量の推定マーカーを製造することができる。場合によっては、全長BTMを用いることができ、他の場合は、免疫原としてBTMのペプチド断片が十分であるかも知れない。免疫原は、適切な宿主(例えば、マウス、ウサギ等)に注射することができ、必要に応じて、完全フロイントアジュバント、フロイント不完全アジュバントのようなアジュバントを、免疫反応を増強させるために注射することができる。当然のことながら、免疫技術においては抗体を作成することは、ルーチンであり、本明細書でさらに記述する必要はない。その結果、本明細書に記載した方法を用いて、同定されたBTMに対する抗体を製造することができる。
【0094】
更なる実施態様では、本明細書で同定された腫瘍マーカーのタンパクまたはタンパクコアに対して、またはBTMに特有のオリゴヌクレオチド配列に対して、抗体を作製することができる。ある種のタンパクはグリコシル化が可能であるが、グリコシル化のパターンの変種は、ある状況下においては、通常のグリコシル化パターンを欠いたBTMの形を検出間違いする可能性がある。従って、本発明のある態様では、BTM免疫原は、脱グリコシルBTMまたは脱グリコシルBTM断片を含むことができる。脱グリコシル化は、当技術分野において知られる一つ以上のグリコシダーゼを用いて達成することができる。あるいは、BTMcDNAを、大腸菌等を含む原核生物細胞株のようなグリコシル化欠損細胞株において発現させることができる。
【0095】
BTMをコードするオリゴヌクレオチドを有するベクターを作成することができる。多くのそのようなベクターは、当技術分野において周知の公知の標準ベクターを基礎とすることができる。ベクターは、種々の細胞株をトランスフェクトして、BTMを製造する細胞株を作製するために用いることができる。特異的抗体、またはBTM検出用の他の試薬を開発するため、またはBTMに対して開発されたアッセイを基準化するため、BTMを製造する細胞株を用いて、所望量のBTMを製造することができる。
【0096】
キット
本発明の発見に基づいて、数種のタイプの試験キットを想定し製造することができる。第一に、検出分子(またはキャプチャー試薬)を予め搭載した検出装置を有するキットを作製できる。BTMmRNAの検出に関する実施態様では、該装置は、基材(例えば、ガラス、シリコン、石英、金属等)を含むことが可能であり、基材の上には、検出されるべきmRNAとハイブリダイゼ−ションするオリゴヌクレオチドがキャプチャー試薬として結合している。いくつかの実施態様では、mRNAの直接検出は、mRNA(cy3、cy5、放射線標識または他の標識で標識されている)を基材上のオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼ−ションさせることにより達成することが可能である。他の実施態様では、mRNAの検出は、所望のmRNAに対する相補的DNA(cDNA)をまず作製することによって達成可能である。それから、標識cDNAを、基質上のオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼ−ションさせ、検出できる。
【0097】
抗体をキット中でキャプチャー試薬として用いることもできる。いくつかの実施態様では、基材(例えばマルチウエルプレート)はそこに付着した特異的BTMキャプチャー試薬を有することが可能である。いくつかの実施態様では、キットにブロッキング試薬を含ませることも可能である。ブロッキング試薬は非特異的な結合を減少させるために使用できる。例えば、非特異的なオリゴヌクレオチド結合は、サケ精子DNAのようなBTMオリゴヌクレオチドを含まない、任意の都合の良い供給源からのDNAの過剰量を用いて減少させることができる。非特異的な抗体の結合は、血清アルブミンのようなブロッキングタンパクの過剰量を用いて減少させることができる。当然のことながら、オリゴヌクレオチドおよびタンパクを検出するための数多くの方法が、当技術分野で知られており、BTM関連分子を特異的に検出することが可能ないかなる戦略も使用することができ、本発明の範囲内にあると考えることができる。
【0098】
基材に加えて、試験キットはキャプチャー試薬(プローブのような)、洗浄液(例えばSSC、他の塩、バッファー、洗剤等)ならびに検出部分(例えば、cy3、cy5、放射線標識等)を含むことができる。キットはまた、使用のための取扱説明書および包装を含むことができる。
【0099】
膀胱癌Iの検出のために用いるBTM比
一連の実施態様では、過剰発現するBTMと組み合わせてBTMLTBDH4を検査するための試薬は、膀胱癌を検出するための、分画されない尿または尿細胞沈殿物の試験のためのキットに組み込むことができる。尿試料は、疾患の進行または治療に対する反応の監視を必要とする、膀胱癌と診断された患者、肉眼または顕微鏡的な血尿を含む泌尿器症状を有する個人、または無症状の個人、から採取することができる。分画されない尿中のBTMを測定するキットを用いて試験される患者または個人については、試験用に尿の約2mlを採取して試験することができる。尿の沈殿物に関する試験については、>10mlの尿を採取することができる。
【0100】
適切なキットとして:(i)使用および結果の解釈のための取扱説明書、(ii)任意の回帰分析分類子または式を含む、多遺伝子分析の解釈のためのソフトウエア、(iii)未分画の尿または尿沈殿物からのRNAの安定化および精製のための試薬、(iv)dNTPおよび逆転写酵素を含む、cDNAの合成のための試薬、および(v)BTMcDNAの定量化のための試薬、が挙げられる。一つの形では、これらの試薬は、定量PCRに用いても良く、PCRに必要とされる、特異的なエクソンにまたがるオリゴヌクレオチドプライマー、検出のためのプローブで標識された第三のオリゴヌクレオチド、Taqポリメラーゼおよび他のバッファー、塩およびdNTPsを含む。キットは、標識プローブまたは分岐DNA技術によるBTM RNAの直接ハイブリダイゼ−ションのような転写物の検出のための他の方法;および(vi)品質管理測定としての機能を果たす、βアクチンのような高度に転写される遺伝子からの転写物を検出するためのオリゴヌクレオチドおよびプローブ、も使用できる。
【0101】
BTM比を用いた膀胱癌の進行の評価
膀胱腫瘍の進行を評価するために、組織試料を膀胱壁の生検によって得、または膀胱癌を有する患者から尿試料を長い時間をかけて採取する。BTMまたはそれらの組み合わせの比の評価を、異なった時間に採取された試料について行う。特定の範囲内のBTM比は膀胱癌の進行を示す。
【0102】
BTM比を用いた膀胱癌の治療の評価
膀胱腫瘍のための治療の効果を評価するために、組織および/または尿の試料を治療開始前に得る。一つ以上のBTMのベースライン値を、互いに関して種々のBTMの比を測定するのと同じように、測定する。治療を開始し、治療には、疾患の種類と段階に応じて、手術、放射線治療または化学療法を含めて、当技術分野において知られている任意の治療法を挙げることができる。治療過程の間、組織および/または尿の試料を採取し、BTMの存在および量を分析する。種々のBTMの比を測定し、結果を(1)治療前の患者のベースライン値、または(2)膀胱癌を有しない個人の集団から得た正常値と比較する。
【0103】
TCC療法の進行を監視するためのBTM比の使用
TCCの迅速診断および早期検出に加えて、組織、血清または尿において検出されたBTMマーカー比は、治療に対する患者の反応を監視するために使用することができる。これらの応用において、尿および/または血清試料は、全身、小胞内または血管内化学療法、放射線療法または免疫療法の開始後、周期的に採取することができる。マーカー比の変化は、有効な治療を示す腫瘍サイズの減少を示す可能性がある。変化の比率は各患者または治療法のための最良の治療用量を予想するために用いることができる。
【0104】
BTM回帰分析の利用
BTM比に加えて、高および低発現BTMファミリーメンバーを含む、回帰または分類分析は上記の応用に用いることができる。
【0105】
評価したマーカーは、既知のヒト遺伝子から選択する。評価した遺伝子は図3および4に示す。図3および4に含まれるものは、遺伝子名、HUGO識別子、MWGオリゴ数、NCBI mRNA参照配列番号およびタンパク参照番号である。全長配列は、http://www.ncbi.nlm. nih.gov/entrez/に見出すことができる。
【0106】
実施例
本明細書で記述した実施例は本発明の実施態様を例示するためのものであって、本発明の範囲を制限する意図はない。他の実施態様、方法および分析の方法は分子診断技術における当業者の範囲内にあり、本明細書において詳細に記述する必要はない。本明細書の教えに基づく当技術分野の範囲内にある他の実施態様は、本発明の部分であると考えられる。
【0107】
方法
腫瘍の採取
膀胱腫瘍試料および非悪性尿路上皮試料は日本の京都大学病院において切除された外科手術標本から採取した。
【0108】
尿の採取
非悪性コントロールおよび膀胱癌患者からの尿試料は、日本の京都大学病院から得た。健常コントロール試料は日本人志願者から得た(図1)。
【0109】
RNA抽出
腫瘍組織はTriReagent:水(3:1)混合物中でホモゲナイズし、それからクロロホルムで抽出した。その後、全RNAはそれからRNeasy(商標)手順(Qiagen)を用いて水相から精製した。RNAは、また16の癌細胞株からも抽出し、参照RNAとして役立つようにプールした。
【0110】
RNAは、尿試料を等量の溶解バッファー(5.64Mグアニジン−塩酸、0.5%サルコシル、50mM酢酸ナトリウム(pH6.5)、および1mM β−メルカプトエタノール;pHは7.0に1.5M Hepes pH8で調整)と混合することにより、尿から抽出した。尿中のRNA量が低いことから、担体として作用させるために、全バクテリアRNA7.5μgを尿/溶解バッファー混合物に加えた。それから全RNAを、TrizolおよびRNeasy(商標)手順を用いて抽出した。RNA調製品は、Qiagen QIAquick(商標)PCR精製キットを用いて、cDNA合成の前に更に精製した。
【0111】
RNAは、3人の健常な志願者の血液から、3.6%デキストランにおける沈降を用いて全血から濃縮した細胞についてTrizol/RNeasy(商標)抽出を行うことにより抽出した。
【0112】
マイクロアレイスライドの調製
エポキシコーティングしたガラススライド(MWG Biotech)を、Gene Machinesマイクロアレイ作製ロボットを用いて、メーカーのプロトコルに従って、〜30,000の50merオリゴヌクレオチド(MWG Biotech)でプリントした。
【0113】
RNA標識およびハイブリダイゼーション
cDNAは、5μg全RNAから、5−(3−アミノアリル)−2’デオキシウリジン−5’−三リン酸を含む反応において、Superscript II(商標)逆転写酵素(Invitrogen)を用いて転写した。反応混合物を、Cy3またはCy5と炭酸水素塩バッファー中で1時間室温にてインキュベートする前に、Microconカラムで脱イオン化した。組み込まれていない色素はQiaquick カラム(Qiagen)を用いて除去し、SpeedVac中で試料を15μlに濃縮した。Cy3およびCy5で標識されたcDNAは、それからAmbion ULTRAhyb(商標)バッファーと混合し、100℃、2分間で変性させ、ハイブリダイゼ−ションチェンバー内のマイクロアレイスライドと42℃で16時間ハイブリダイゼ−ションさせた。それからスライドを洗浄し、Axon 4000A(商標)スキャナー内で、2出力セッティングで2回走査した。
【0114】
癌マーカー遺伝子のマイクロアレイ分析
53の膀胱腫瘍および20の非悪性(「正常」)膀胱組織試料からのRNAをCy5で標識し、Cy3標識参照RNAと二重または三重でハイブリダイゼ−ションさせた。標準化した後、29,718遺伝子のそれぞれの発現の変化を、倍変化率および統計的確率によって推定した。
【0115】
標準化手順
Genepix(商標)ソフトウエアにより検出した蛍光強度の中央値を、局所的なバックグラウンド強度を引き算することにより補正した。バックグラウンド補正強度がゼロ未満のスポットは排除した。標準化を容易にするために、強度比および総合的スポット強度を対数変換した。対数化した強度比は、LOCFIT(商標)パッケージで実施した局所回帰を用いて、色素および空間的バイアスに関して補正した。対数化した強度比は、総合的スポット強度および場所に関して同時に回帰させた。局所回帰の残余は、補正された対数化した倍変化率を与えた。品質管理のために、各標準化されたマイクロアレイの比をスポットの強度および局在化に関してプロットした。プロットをその後、人為産物の残余のいずれかが存在するかを肉眼的に検査した。更にANOVA モデルをpin-tipバイアスを検出するために適用した。統計分析のために、標準化の全ての結果およびパラメータをPostgresデータベースに挿入した。
【0116】
統計分析
アレイ間の測定倍変化率の比較を改良するために、log2(比)を、アレイ当たり同じ総合的標準偏差を有するように、率に応じて決めた。この標準化は平均組織内クラス変動率を減少させた。それから倍変化率に基づくランク検定を、ノイズロバスト性を改善するために用いた。この検定は、(i)アレイ内の倍変化率のランク(Rfc)の計算、およびii)腫瘍組織の(Rfc)中央値から正常組織の(Rfc)中央値を引く、と言う2段階より成る。両ランクの中央値の差は、倍変化率のランクのスコアを規定する。更に三つの統計検定を、標準化されたデータについて行った:1)2サンプルステューデントt-検定、2)Wilcoxon検定、および3)マイクロアレイの統計分析(SAM)。各統計方法で(ランク倍変化率、t-検定、Wilcoxon検定およびSAM)最も有意に下方制御された遺伝子は、各検定においてランクスコアを与えられた。全てのランクスコアを加えて、一つの合計ランクスコアにした。
【0117】
尿RNAからのcDNA合成
全尿RNAは、順方向プライマーを0.01μg含む50μlの反応液において、70℃でインキュベートし、それから氷上で2分間冷却することにより、膀胱腫瘍マーカーのそれぞれに対して遺伝子特異的なプライマーとアニールさせた。各cDNA反応液には、最終容積20μl中、アニールしたRNAおよび5x Superscript Il逆転写酵素バッファー(Invitrogen, USA)4μl、0.1MDTT(Invitrogen, USA) 2μl、RNase out(40U/μl(Invitrogen, USA)0.5μl、10mM dNTP(Invitrogen, USA) 4μlおよびSuperscript Il逆転写酵素(200U/μl)(Invitrogen, USA)0.5μlが含まれていた。反応液を42℃で1時間、70℃で10分および80℃で1分インキュベートした。qPCRに先立って、反応液をQiagen QIAquick PCR精製カラム(Qiagen, Victoria, Australia)で精製し、−80℃で保存した。
【0118】
定量的リアルタイムPCR
リアルタイムまたは定量PCTR(qPCR)は、PCRテンプレートコピー数の絶対的または相対的定量のために用いた。Taqman(商標)プローブおよびプライマーセットは、Primer Express V 2.0(商標)(Applied Biosystems)を用いて設計した。可能であれば、全ての潜在的スプライス変種は、結果として得られるアンプリコンに含め、アンプリコン優先権は、MWG-Biotech-由来マイクロアレイオリゴヌクレオチドによって包含される領域に与えた。プライマーおよびプローブの配列は図2に示す。あるいは、もし標的遺伝子が、所望のアンプリコンを包含して、Assay-on-Demand(商標)発現アッセイ(Applied Biosystems)によって表される場合は、それらを用いた。自家設計アッセイにおいて、プライマー濃度は、SYBR green標識プロトコルおよび参照RNAから作製したcDNAを用いて、滴定した。増幅はABI Prism(商標)7000配列検出システムで、標準的なサイクリング条件で行った。解離曲線において単一の増幅産物を観察した場合は、最適プライマー濃度および5’FAM - 3’TAMRA リン酸塩 Taqman(商標)プローブ(Proligo)を最終濃度250nMで用いて、625倍の濃度範囲にわたって標準曲線を作出した。0.98を越える回帰係数を有する標準曲線を与えるアッセイを、次の分析に用いた。
【0119】
アッセイは96穴プレートで行った。各プレートは、625倍の濃度範囲にわたって、参照cDNA標準曲線を含んだ。尿qPCRについては、各反応において〜5mlの未分画尿から抽出した全RNAを用いた。ΔCt(標的遺伝子Ct−平均参照cDNA Ct)を、各マーカーについて計算し、それに続く比率、回帰または分類分析において用いた。
【0120】
血液におけるマーカーの発現
図3および4に示すマーカーの全血における発現を、コンピュータシミュレーションで決定した。マイクロアレイプローブは、それらの標的mRNAのGenBank登録番号を介してUniGeneクラスターに接続し、UniGeneからの組織発現プロフィールを、血液ライブラリーにおける発現配列タグ(ESTs)の数を決定するために用いた。0または1個の発現配列タグ(EST)を有する遺伝子のみを図4に示す。全血におけるLTB4DHの低発現を確認するために、図2に示すプライマーおよびプローブを用いて、全血から抽出された全RNAについて、RT−qPCRを実施した。有意な発現は観察されなかった(結果は示さず)。
【0121】
下方制御された膀胱癌マーカーの同定
膀胱癌の下方制御されたマーカーを同定するために、30,000オリゴヌクレオチドチップを用いて、53の膀胱腫瘍および20の非悪性膀胱組織試料からのRNAについて、マイクロアレイ研究を、我々は行った。図3は、非悪性膀胱組織と比較して、膀胱癌組織において有意な下方制御を示す300の遺伝子に関するマイクロアレイデータの統計分析を示す。図3は、HUGO遺伝子名および略語、タンパク参照配列番号、NCBImRNA参照配列番号、MWG Biotechプローブオリゴヌクレオチド番号、腫瘍および非悪性組織の間の遺伝子発現における倍変化率中央値、本来の補正されないStudentのt検定の結果、2-サンプルWilcoxon検定の結果、SAM検定の結果および合計ランクスコアを含む。
【0122】
膀胱癌のための尿試験における、好ましい低発現膀胱腫瘍マーカーの同定
血尿は、膀胱癌に伴う普通の共出現症状であることから、膀胱癌マーカーが全血において有意に上昇していないことが、有利である。更に、下方制御されるマーカーは、比率、回帰または分類分析に用いることから、それらが、腫瘍細胞および非悪性膀胱細胞に十分に高いコピー数で存在することは、尿における信頼性のある検出を可能にするために、有利である。適切なマーカーを同定するために、我々は、血液ESTライブラリーにおいてはほとんど、または全く代表されておらず、かつ非悪性組織において中央値よりも高い発現を有する、サブセットについて、図3における遺伝子をスクリーニングした。発現中央値は、アレイ上の30,000オリゴヌクレオチドを、マイクロアレイ試験において分析された試料における、それらの強度の中央値によってランク付けを行うことにより推測した。この基準に合うマーカーを図4に示す。図4は、HUGO遺伝子名および略語、タンパク参照配列番号、NCBImRNA参照配列番号、倍変化率中央値、ランクスコア、腫瘍組織および非悪性組織におけるマイクロアレイスポット強度のランクの中央値、および血液ESTライブラリーに存在するEST数を含む。
【0123】
アレイデータで観察した下方制御は、図4に示す三つの遺伝子、LTB4DH、BAG1およびFLJ21511について、qPCRによって確証された。これらの遺伝子は、10の腫瘍試料および10の非悪性試料からの全RNAについて試験した。LTB4DH、BAG1およびFLJ21511は、これらの試料において、それぞれ2.5倍、1.4倍および6.1、倍の非悪性組織と比較して、膀胱癌において平均下方制御を示した。
【0124】
LTB4DHを用いた尿のqPCR分析
TCC患者および非悪性泌尿器状態を有するコントロールからの尿を、排尿またはカテーテルによって採取した。全RNAを、42のコントロールの排尿採取尿、および37のTCC患者の排尿採取尿またはカテーテル採取尿から抽出し、LTB4DHおよび三つの過剰発現マーカー、IGFBP5、MDKおよびHoxA13に対するプライマーとプローブを用いる定量RT−PCRにおいて使用した。ΔCt比を、IGFBP5/LTB4DH、MDK/LTB4DHおよびHoxA13/LTB4DHについて決定した。このデータは図5のボックスプロットよって図示され、3回の検定のそれぞれにおけるコントロールおよびTCC患者からの尿試料の間のデータの広がりに明瞭な差を示す。最も正確な検定は、試料コホートにおいてそれぞれ87%と88%の感度および特異性を示したIGFBP5/LTB4DHであった(図6a)。これらの検定のそれぞれに関する、感度と特異性の間の対応を図示するために、ROC曲線を図7に示す。IGFBP5/LTB4DH、MDK/LTB4DHおよびHoxA13/LTB4DHに関する曲線下の面積は、それぞれ0.9223、0.9199および0.7497である。検定の正確さを測定するこれらの面積は、全ての3つのLTB4DHとの比率が有用なこと、特にIGFBP5/LTB4DHおよびMDK/LTB4DHが有用なことを示している。
【0125】
TCC検出の感度と特異性を増加させるために、二つの検定の組み合わせを用いた。これらの検定の組み合わせの最適感度および特異性を図6bに示す。図8a−fは、LTB4DHおよびBAG1を用いる三つの検定のそれぞれについての2次元空間でのデータ分離を示す。このデータは、下方制御BTMであるLTB4DHまたはBAG1のいずれかを含む二つ以上の検定の組み合わせが、90%を越える感度と特異性を達成することができることを示す。更に、これらの検定は単純な遺伝子発現シグニチャー(signature)を測定し、マーカーの絶対レベルを測定するのではないことから、これらは尿濃度の変動に対して耐性があるであろう。
【0126】
LTB4DHとの比が関与した検定の、尿濃度に対するロバスト性を示すために、IGBP5単一(ΔCt)およびIGFBP5/LTB4DHのレベルを、尿濃度の関数としてプロットし(図9a−b)、データにトレンドラインをフィットさせた。非悪性コントロールおよびTCCを有する患者からのつのryou尿試料について、尿濃度の増加に伴い、IGFBP5ΔCtが減少することが分かるが、これはIGFBP5/LTB4DH比に関しては存在しない。この効果は非悪性試料について最も顕著であったが、これはIGFBP5およびLTB4DHの発現においては腫瘍の大きさおよび腫瘍の不均一さのような他の影響がないからである。
【0127】
場合によっては、膀胱癌アッセイにおいて単一マーカーを用いた時、尿試料採取の方法は、採取された脱落膀胱細胞の数の変動により、検出されるべきマーカーの量に影響し得る。このバイアスは、試料の少ない割合で、擬陽性または擬陰性の結果になり得る。LTB4DHまたは他の低発現遺伝子を含む比を使用は、異なった方法を補償するための方法を提供するはずである。この仮説を検証するために、単純な排尿採取(9試料)またはカテーテルによる採取(28試料)によるTCC患者からの採取試料を、TCCマーカーおよびLTB4DHの存在について検定した。TCCマーカー単独での分析により、排尿採取試料は、データの範囲の低い端に(より高いCt)より多く代表されていることが示され、カテーテル採取試料に比べて、これらの試料中に脱落細胞の平均数がより少ないことと一致している。このことは、図10a−cに、IGFBP5、MDKおよびHoxA13に関する自己散乱プロットで図示している。対照的に、これらのマーカーとLTB4DHの間の比率を計算した時、排尿およびカテーテル採取試料は、Ct比の類似した範囲に広がっており(図10d−f)、高発現マーカーおよびLTB4DHのような低発現マーカーの間の遺伝子発現シグニチャーの計算により、異なった尿採取方法によって導入されたマーカーレベルの変動が補償されることを図示している。
【0128】
低グレード腫瘍を有する患者からの尿試料は、これらの試料中に脱落細胞の少数のみが存在することから、BTMの蓄積ではしばしばボーダーライン上にある。これらの試料はそれ故、試料採取法または尿濃度の変動のために、分類が不正確であるという高いリスクがある。
【0129】
TCCの検出のための下方制御遺伝子を組み込んだ遺伝子発現比の有用性は、それ故、低グレードTCCの検出に応用された時に顕著である可能性が高い。この効果を示すために、低グレードTCCを有する患者からの排尿採取された43の尿試料のコホートと、123のコントロールを、マーカーIGFBP5、HoxA13およびLTB4DHについて検定した。コホートの臨床的特徴を図13に要約する。IGFBP5およびHoxA13に関するqPCRデータを、検定の正確さの尺度としてROC曲線下の面積を用いて(STATA統計パッケージ)、単独でおよびLTB4DHとの比で分析した。結果を図14に要約する。IGFBP5マーカーを用いると、LTB4DHは、低グレード(グレード1−2)ステージTaのTCCの検出精度を9%、いずれかのステージの低グレードTCCを8%増加させた。低グレードステージTaのTCCのHoxA13検定の精度は、3%増加した。
【0130】
LTB4DHを用いたqPCRデータの線形識別分析
線形識別分析(LDA)は、二つ以上の群の間に最大の分離が存在するように、変数の線形の組み合わせを生成する、統計的手法である(Fisher R.A. "The Use of Multiple Measurements in Taxonomic Problems", Annals of Eugenics 7 179 (1936))。この変数の線形の組み合わせは、「線形判別」と呼ばれ、データセットのクラスの分離を最大にするインプット変数の線形関数である。qPCRデータのような特定のデータセットを特徴付けるために、LDA(またはいずれかの他の分類手法)の能力は、相互検証を用いて検定できる。この方法において、データセットの一部は、分類子を生成するために用い、またデータベースの一部は、分類子の有効性を測るために用いる。データベースを訓練と検定への分割は、複数回反復することができる(毎回新分類子を生成する)。k−倍相互検証において、データベースはk−通りに分割され、各サブセットは、訓練と検証のk回目の一つにおいて、検定セットとして用いる。これは一つを抜き出す相互検証(leave-one-out cross-validation (LOOCV))にまで伸張することができ、ここで各試料は、データベースにおける残りの試料から生成する分類子に従って分類する(“leave one out”;検定される試料を抜き出す)。
【0131】
LDAおよびLOOCVは、TCCの診断を改良することにおいて、下方制御BTMであるLTB4DHの有用性を例示するために用いた。qPCRを最初に、さらなる30のグレード3腫瘍(5>ステージ1、13=ステージ1、4=Tis,および8=Ta)を補足した、図13に記載したコントロールおよびTCC尿試料のコホートについて行った。六つの遺伝子LTB4DH、MDK、IGFBP5、HOXA13、TOP2aおよびCDC2の組み合わせを、LOOCVによって判定して、分類子性能に関して検定した。事後確率(「脱落」した試料はTCC試料であったこと)を、R統計プログラミング環境のROCRパッケージを用いてROC曲線を作製するために用いた。一定の特異性に対する分類子の感度は適切なROC曲線を参照して得た。
【0132】
LTB4DHを伴う、または伴わない上方制御BTMの組み合わせを用いたTCCの検出感度は、85%の特異性で測定した。この分析の結果を図15に示す。上方制御されるBTMsであるMDK、IGFBP5、Top2a、cdc2およびHoxA13の組み合わせを含むアッセイにLTB4DHを加えることにより、総合感度を1〜2%、およびTaステージの腫瘍、グレード1〜2の腫瘍およびグレード3の腫瘍の検出感度を3%上昇することが分かる。
【0133】
先の記述において、公知の同等物を有する完全体または構成成分について参照したが、そのような同等物は、個々に述べられたとして本明細書に援用される。
【0134】
本発明は、例証として、およびそれらの可能な実施態様を参照して説明したが、当然のことながら、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、改良および/または改変してもよい。
【0135】
産業上の利用可能性
BTMファミリーメンバーの検出法には、マイクロアレイおよび/またはリアルタイムPCR法を用いた、核酸、タンパクおよびペプチドの検出を含む。本発明の組成物および方法は、疾患の診断、治療法の有効性の評価、ならびにBTMファミリーメンバーの発現を測定するのに適した試薬および試験キットを製造するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
本発明を、特定の本発明の実施態様に準拠しておよび図を参照して説明するが、ここで:
【図1−1】図1は、qPCR分析において用いられた尿試料の特徴を示す表を示す。
【図1−2】図1は、qPCR分析において用いられた尿試料の特徴を示す表を示す。
【図2】図2は、本発明に拠る膀胱癌のqPCR分析のためのマーカーのプライマーおよびオリゴヌクレオチドの表を示す。
【図3−1】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−2】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−3】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−4】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−5】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−6】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−7】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−8】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−9】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−10】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−11】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−12】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−13】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−14】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−15】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−16】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−17】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−18】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−19】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−20】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−21】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−22】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−23】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−24】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−25】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−26】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−27】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−28】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−29】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−30】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−31】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−32】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−33】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−34】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−35】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−36】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−37】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−38】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−39】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−40】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−41】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−42】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−43】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−44】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−45】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−46】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−47】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−48】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−49】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−50】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図3−51】図3は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図4−1】図4は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した、全血においては殆ど発現していないが、正常膀胱組織においては高度に発現している低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図4−2】図4は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した、全血においては殆ど発現していないが、正常膀胱組織においては高度に発現している低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図4−3】図4は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した、全血においては殆ど発現していないが、正常膀胱組織においては高度に発現している低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図4−4】図4は、膀胱癌の試料についてマイクロアレイ法を用いて同定した、全血においては殆ど発現していないが、正常膀胱組織においては高度に発現している低発現膀胱腫瘍マーカーの表を示す。
【図5】図5は、非悪性泌尿器疾患またはTCCを有する患者からの尿試料について、三つの膀胱移行上皮癌(TCC)マーカー(HoxA13、IGFBP5およびMDK)と低発現マーカーLTB4DHとの比を示すボックスアンドウィスカープロット(箱髭図)を表す。ボックスは第25、50および75番パーセンタイルを規定し、水平のバーは隣接の値を印す。異常値は丸で示す。中空ボックスは非悪性疾患コントロールからの試料を表し、斜線ボックスはTCC患者からの試料を表す。
【図6】図6は、LTB4DHを含む試験のための、TCC検出の感度および特異性の例を示す。(a)単独試験;(b)LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用いた組み合わせ試験。
【図7】図7a〜cは、LTB4DHを含む比を用いた、尿試料中のTCCの検出の感度および特異性に関するROC曲線を示す。7a.IGFBP5/LTB4DH;7b.MDK/LT4BDH;7c.HoxA13/LTB4DH。
【図8a】図8a〜fは、組み合わせ試験の散乱プロットを示し、a〜cは、LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用い、d〜fは、LTB4DHの代わりにBAG1を用いて繰り返した。8a.MDK/LTB4DHおよびIGFBP5/LTB4DH。
【図8b】図8a〜fは、組み合わせ試験の散乱プロットを示し、a〜cは、LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用い、d〜fは、LTB4DHの代わりにBAG1を用いて繰り返した。8b.MDK/LTB4DHおよびHoxA13/LTB4DH;IGFBP5/LTB4DHおよびHoxA13/LTB4DH。
【図8c】図8a〜fは、組み合わせ試験の散乱プロットを示し、a〜cは、LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用い、d〜fは、LTB4DHの代わりにBAG1を用いて繰り返した。
【図8d】図8a〜fは、組み合わせ試験の散乱プロットを示し、a〜cは、LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用い、d〜fは、LTB4DHの代わりにBAG1を用いて繰り返した。8d.MDK/BAG1およびIGFBP5/BAG1。
【図8e】図8a〜fは、組み合わせ試験の散乱プロットを示し、a〜cは、LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用い、d〜fは、LTB4DHの代わりにBAG1を用いて繰り返した。8e.MDK/BAG1およびHoxA13/BAG1。
【図8f】図8a〜fは、組み合わせ試験の散乱プロットを示し、a〜cは、LTB4DHおよび三つのマーカーHoxA13、IGFBP5およびMDKの内の二つを用い、d〜fは、LTB4DHの代わりにBAG1を用いて繰り返した。8f.IGFBP5/BAG1およびHoxA13/BAG1。
【図9a】図9a〜bは、IGFBP5に関するΔCtならびにIGFBP5/LTB4DHおよび尿クレアチニン濃度に関するΔCt比の間の相関関係を示す散乱プロットを示す。9a.TCCを有する患者からの尿試料。
【図9b】図9a〜bは、IGFBP5に関するΔCtならびにIGFBP5/LTB4DHおよび尿クレアチニン濃度に関するΔCt比の間の相関関係を示す散乱プロットを示す。9b.非悪性疾患を有する患者からの尿試料。
【図10a】図10a〜fは、膀胱腫瘍マーカーMDK、IGFBP5およびHoxA13単独またはLTB4DHとの比を用いて分析したTCC患者からの、排泄採取およびカテーテル採取試料の分布を示す、自己散乱プロット(Self-self scatter plots)を表す。
【図10b】図10a〜fは、膀胱腫瘍マーカーMDK、IGFBP5およびHoxA13単独またはLTB4DHとの比を用いて分析したTCC患者からの、排泄採取およびカテーテル採取試料の分布を示す、自己散乱プロット(Self-self scatter plots)を表す。
【図10c】図10a〜fは、膀胱腫瘍マーカーMDK、IGFBP5およびHoxA13単独またはLTB4DHとの比を用いて分析したTCC患者からの、排泄採取およびカテーテル採取試料の分布を示す、自己散乱プロット(Self-self scatter plots)を表す。
【図10d】図10a〜fは、膀胱腫瘍マーカーMDK、IGFBP5およびHoxA13単独またはLTB4DHとの比を用いて分析したTCC患者からの、排泄採取およびカテーテル採取試料の分布を示す、自己散乱プロット(Self-self scatter plots)を表す。
【図10e】図10a〜fは、膀胱腫瘍マーカーMDK、IGFBP5およびHoxA13単独またはLTB4DHとの比を用いて分析したTCC患者からの、排泄採取およびカテーテル採取試料の分布を示す、自己散乱プロット(Self-self scatter plots)を表す。
【図10f】図10a〜fは、膀胱腫瘍マーカーMDK、IGFBP5およびHoxA13単独またはLTB4DHとの比を用いて分析したTCC患者からの、排泄採取およびカテーテル採取試料の分布を示す、自己散乱プロット(Self-self scatter plots)を表す。
【図11−1】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−2】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−3】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−4】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−5】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−6】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−7】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−8】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−9】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−10】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−11】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−12】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−13】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−14】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−15】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図11−16】図11は、浸潤性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−1】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−2】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−3】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−4】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−5】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−6】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−7】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−8】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−9】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−10】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−11】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−12】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−13】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−14】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図12−15】図12は、表在性膀胱腫瘍からの既知の過剰発現マーカーを示す。
【図13】図13は、ROC曲線分析で使用した低段階TCC試料およびコントロールの臨床的特徴を示す。
【図14】図14は、ROC曲線分析の結果を示す。LTB4DHがHoxA13およびIGFBP5との比として用いられた時得られる試験の正確度の増加の図示。
【図15】図15は、TCCの検出に関して、LTB4DHの存在および非存在下での、BTMの線形識別分析の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 該対象からの試料を提供するステップ;
(b) 少なくとも一つのTMが低発現TMである、前記試料中の少なくとも二つのTMファミリーメンバーの発現レベルを検出するステップ;および
(c) あらかじめ定めた閾値に従って、患者が癌を有するかを立証するステップ;
を含む、対象における癌の存在を決定する方法。
【請求項2】
ステップ(c)を、前記BTMの発現比を測定することによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)を、該BTM発現値の回帰または分類分析によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該TMがBTMである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が膀胱癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該TMの少なくとも一つが過剰発現TMである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該少なくとも一つの低発現TMが、図3に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該少なくとも一つの低発現TMが、図4に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該過剰発現TMが、図11または図12に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
検出する前記ステップを、TM mRNAの発現を検出することによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
検出する前記ステップを、TMタンパクの発現を検出することによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
検出する前記ステップを、TMペプチドの発現を検出することによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該試料が、生検、血液、血清、腹膜洗浄液、脳脊髄液、尿および便試料のいずれか一つである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
その上にTMキャプチャー試薬を有する基材;および
前記基質に付随する検出器で、前記キャプチャー試薬に結合している低発現TMを検出することができる前記検出器;
を含む、TMを検出するための装置。
【請求項15】
該TMがBTMである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記TMキャプチャー試薬がオリゴヌクレオチドである、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記TMキャプチャー試薬が抗体である、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
該TMが図3に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
該TMが図4に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
基材;
少なくとも一つのTMが低発現TMである、少なくとも二つのTMキャプチャー試薬;
および
使用のための指示書;
を含む、対象における癌の存在を決定するためのキット。
【請求項21】
該TMがBTMである、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記TMキャプチャー試薬が、TM特異的オリゴヌクレオチドである、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
前記TMキャプチャー試薬が、TM特異的抗体である、請求項20に記載のキット。
【請求項24】
該低発現TMが、図3に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項20に記載のキット。
【請求項25】
該低発現TMが、図4に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項20に記載のキット。
【請求項26】
少なくとも一つのTMが過剰発現TMである、請求項20に記載のキット。
【請求項27】
該過剰発現TMが図11または図12に概要を述べた群から選択されるBTMである、請求項26に記載のキット。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図3−8】
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【図3−9】
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【図3−10】
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【図3−11】
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【図3−12】
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【図3−13】
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【図3−14】
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【図3−15】
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【図3−16】
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【図3−17】
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【図3−18】
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【図3−19】
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【図3−20】
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【図3−21】
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【図3−22】
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【図3−23】
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【図3−24】
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【図3−25】
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【図3−26】
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【図3−27】
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【図3−28】
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【図3−29】
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【図3−30】
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【図3−31】
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【図3−32】
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【図3−33】
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【図3−34】
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【図3−35】
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【図3−36】
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【図3−37】
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【図3−38】
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【図3−39】
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【図3−40】
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【図3−41】
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【図3−42】
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【図3−43】
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【図3−44】
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【図3−45】
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【図3−46】
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【図3−47】
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【図3−48】
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【図3−49】
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【図3−50】
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【図3−51】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図11−5】
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【図11−6】
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【図11−7】
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【図11−8】
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【図11−9】
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【図11−10】
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【図11−11】
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【図11−12】
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【図11−13】
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【図11−14】
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【図11−15】
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【図11−16】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図12−6】
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【図12−7】
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【図12−8】
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【図12−9】
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【図12−10】
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【図12−11】
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【図12−12】
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【図12−13】
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【図12−14】
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【図12−15】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−528817(P2009−528817A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554172(P2008−554172)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000029
【国際公開番号】WO2007/091904
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(504350120)パシフィック エッジ バイオテクノロジー リミティド (9)
【Fターム(参考)】