説明

癌の治療方法

本発明は、ピリミジン誘導体の投与による哺乳動物の癌の治療方法に関する。詳細には、この方法は、5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミドまたはその塩もしくは溶媒和物の投与による癌の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジン誘導体の投与による、哺乳動物の癌の治療方法に関する。詳細には、この方法は5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミドまたはその塩もしくは溶媒和物の投与による癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療のための有効な化学療法は、腫瘍学の分野において目標とされ続けている。一般に癌は、細胞分裂、分化およびアポトーシス細胞死を制御する正常なプロセスからの脱制御の結果生じる。アポトーシス(プログラムされた細胞死)は、胚発生ならびに種々の疾患(例えば変性神経性疾患、心血管疾患および癌)の発病において重要な役割を果たす。
【0003】
癌において、腫瘍の増殖は血管新生に依存することが示されている。白血病の進行、ならびに悪性の腹水および胸水に関連した流体の蓄積にも、血管新生促進因子が関わる。(Folkmann, J., J. Nat’l. Cancer Inst., 82:4-6 (1990)を参照されたい)。したがって、血管新生促進経路を標的とすることは、医学的ニーズが高いにもかかわらず満たされていないこれらの領域において新しい治療薬を得るために広く追求されている戦略である。
【0004】
血管新生のプロセスの中心となるのは、血管内皮増殖因子(VEGF)およびその受容体(血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)と言う)である。VEGFに対する3種のチロシンキナーゼ受容体が同定された。すなわち、VEGFR1 (Flt-1)、VEGFR2 (Flk-1およびKDR)、ならびにVEGFR3 (Flt-4)である。こうした受容体は血管新生に関わっており、シグナル伝達に関与する。(Mustonen, T. ら J. Cell Biol. 129:895-898 (1995); Ferrara and Davis-Smyth, Endocrine Reviews, 18(1):4-25 (1997); McMahon, G., The Oncologist, 5(90001):3-10 (2000))。
【0005】
したがって、VEGFRのキナーゼドメインの阻害は、チロシン残基のリン酸化反応を遮断し、また、血管新生の開始およびVEGFにより仲介される他のシグナル伝達経路を妨害する役割を果たし、そのため様々なタイプの癌に効力のある治療を提供すると考えられる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明者らはここに、5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミドまたはその塩もしくは溶媒和物の投与を含む、新規な癌治療法を同定した。
【0007】
本発明のある態様では、哺乳動物における感受性癌の治療方法であって、前記哺乳動物に式(I)の化合物
【化1】

【0008】
またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む前記方法を提供する。
【0009】
発明の詳細な説明
本明細書で用いる「新生物」という用語は、細胞または組織の異常な増殖を言い、良性(すなわち非癌性)の増殖と、悪性(すなわち癌性)の増殖とを含むと理解される。「新生物性の」という用語は、新生物の、または新生物に関連した、という意味である。
【0010】
本明細書で用いる「有効な量」という用語は、例えば研究者または医師が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的な応答を引き出す薬物または薬剤の量を意味する。さらに、「治療に有効な量」という用語は、かかる量を受け取っていない対応する被験体と比較して、向上した疾患、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防、もしくは軽減、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす量を意味する。この用語の範囲にはまた、正常な生理学的機能を高めるのに有効な量も含まれる。
【0011】
当技術分野でよく知られているように、腫瘍はしばしば転移性であり、これは、最初(原発性)の部位の腫瘍増殖が1以上の解剖学上離れた部位に広がるというものである。本明細書で用いる被験者の「腫瘍」または「癌」とは、原発性の腫瘍のみならず、転移性の腫瘍増殖をも含む。
【0012】
本発明はいくつかの症状または疾患の治療方法を提供し、そのいずれもが式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与するステップを含む。本明細書で用いる「治療」という用語は、特定の病状を緩和すること、その病状の症状を消失もしくは低減させること、その病状の進行を遅延もしくは阻止させること、および被験体でのその病状の最初の発生または以前に罹患した被験体でのその病状の再発を予防もしくは遅延させることを意味する。
【0013】
本明細書で用いる「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明では、式(I)の化合物またはその塩)と溶媒から形成される、化学量論の変化する複合体を言う。かかる溶媒は本明細書の目的のためには、溶質の生物学的活性を妨害するものであってはならない。適当な溶媒の例としては、限定するものではないが、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられる。好ましくは使用する溶媒は製薬上許容される溶媒である。適当な製薬上許容される溶媒の例としては、水、エタノールおよび酢酸が挙げられるがこれらに限らない。最も好ましくは、使用される溶媒は水である。
【0014】
本明細書に開示する癌の治療方法は、
式(I)の化合物:
【化2】

【0015】
またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む。
【0016】
ある実施形態では、式(I)の化合物の塩は塩酸塩である。好ましい実施形態では、式(I)の化合物の塩は、式(I')に示すように、一塩酸塩である。式(I)の化合物の一塩酸塩の化学名は、5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸である。
【化3】

【0017】
別の好ましい実施形態では、式(I)の化合物の塩は、式(I)の化合物の一塩酸一水和物である。式(I)の化合物の一塩酸一水和物は、化学名が5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸一水和物であり、これを式(I'')に示す。
【化4】

【0018】
式(I)の化合物の遊離の塩基、塩および溶媒和物は、例えば2001年12月19日に出願され、2002年8月1日にWO 02/059110として公開された国際特許出願第PCT/US01/49367号、および2003年6月17日に出願され、2003年12月24日にWO 03/106416として公開された国際特許出願第PCT/US03/19211号に記載の手法にしたがって調製することができる。
【0019】
典型的には、本発明の塩は製薬上許容される塩である。「製薬上許容される塩」という用語に含まれる塩は、本発明の化合物の無毒性の塩を言う。本発明の化合物の塩には、本発明の化合物の置換基に含まれる窒素から誘導された酸付加塩も含まれうる。代表的な塩としては以下の塩が挙げられる:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチル臭化物塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、一カリウムマレイン酸塩、粘液酸、ナプシレート、硝酸塩、N-メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオジド、トリメチルアンモニウム塩および吉草酸塩。製薬上許容されない他の塩は、本発明の化合物の調製に有用である可能性があり、これらは本発明のさらなる態様をなす。
【0020】
本発明の癌の治療法に用いるために、式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物をそのままの化学物質として投与することも可能であるが、活性成分を医薬組成物として提供することも可能である。したがって本発明は、本発明の癌治療法において投与することのできる医薬組成物をさらに提供する。医薬組成物は、式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、および1以上の製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。担体、希釈剤または賦形剤は、製剤の他の成分と適合可能であり、かつ製剤の受容者に有害ではないという意味で許容されるものでなければならない。
【0021】
医薬製剤は、単位用量当たりに所定量の活性成分を含む単位投与剤形として提供することができる。かかる単位は、治療すべき症状、投与経路、ならびに患者の年齢、体重および状態に応じて、例えば0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜500mgの式(I)の化合物を含むことができる。また、医薬製剤は単位用量当たりに所定量の活性成分を含む単位投与剤形として提供することができる。好ましい単位用量製剤は、本明細書で上に挙げた1日用量もしくは分割用量、またはその適当な一部の活性成分を含有するものである。さらに、かかる医薬製剤は、製薬分野で周知のどのような方法で調製してもよい。
【0022】
式(I)の化合物は任意の適当な経路により投与することができる。適当な経路としては、経口、直腸、鼻、局所(バッカルおよび舌下を含む)、膣、ならびに非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内、髄腔内、および硬膜外を含む)が挙げられる。好ましい投与経路は、例えば受容者の症状に応じて変わりうることが理解されよう。
【0023】
本発明の方法はまた、癌治療の他の治療方法と共に実施することができる。特に、抗新生物療法においては、上に記載したものとは別の、他の化学治療、ホルモン療法、抗体薬剤ならびに外科的治療および/または放射線療法との併用療法が想定される。抗新生物療法は、例えば2002年1月14日に出願され、2002年7月25日にWO 02/056912として公開された国際出願第PCT US 02/01130号に記載されており、これを参照により抗新生物療法に関する範囲について本明細書に組み入れる。したがって本発明における併用療法は、少なくとも1種の式(I)の化合物の投与、ならびに他の治療剤(これには他の抗新生物薬剤も含まれる)の任意選択的な使用を含む。かかる組合せ薬剤は、一緒にまたは別々に投与してもよく、別々に投与するときにはこれを同時にまたは任意の順で逐次的に、時間的に近接してまたは時間を空けて行うことができる。式(I)の化合物および他の製薬上活性な薬剤の量、ならびに投与の相対的なタイミングは、所望の併用治療効果が達成されるように選択する。
【0024】
経口投与用の医薬製剤は、個別の単位として、例えばカプセル剤または錠剤;粉剤または顆粒剤;溶液剤または懸濁液剤(それぞれ水性または非水性液体を使用);可食性のフォーム剤またはホイップ剤;または水中油型乳濁液剤もしくは油中水型乳濁液剤として提供することができる。
【0025】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で経口投与する場合は、活性薬物成分を経口用の製薬上許容される無毒性の不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水など)と組み合わせることができる。粉剤は、化合物を適当な微細な大きさに細かく砕き、同じように細かく砕いた適当な製薬上の担体(例えばデンプンまたはマンニトールなどのような可食性の炭水化物)と混合することにより調製する。香味剤、保存剤、分散化剤および着色剤を加えてもよい。
【0026】
カプセル剤は、上記のように粉末混合物を調製し、成形ゼラチンシースに充填することにより製造することができる。流動化剤および滑沢剤、例えばコロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形ポリエチレングリコールなどを粉末混合物に添加してから充填作業を行ってもよい。カプセル剤を摂取したときの医薬のアベイラビリティを向上させるために、崩壊剤または可溶化剤(例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム)を添加することもできる。
【0027】
さらに、所望であればまたは必要であれば、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を混合物に添加することもできる。適当な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコースもしくはβ-ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。こうした剤形に用いる滑沢剤としてはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるがこれらに限らない。錠剤は、例えば粉末混合物を調製し、顆粒またはスラッグを形成し、滑沢剤および崩壊剤を加え、ついで打錠することにより製剤化する。粉末混合物は、適当に細かく砕いた化合物を、上に記載の希釈剤または基剤と、さらに任意成分として結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、またはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(パラフィンなど)、吸収促進剤(四級塩など)および/または吸収剤(ベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムなど)と混合することにより調製する。粉末混合物は、結合剤(例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液、またはセルロース材料もしくはポリマー材料の溶液)を用いて湿らせ、ついでふるいを強制通過させることにより顆粒化することができる。顆粒化に代わる方法として、粉末混合物を打錠機にかけることも可能であり、その結果得られるのは不完全に形成されたスラッグであり、これを破壊して顆粒とする。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたはミネラルオイルを添加することにより滑らかにして、錠剤成形金型への粘着を防止することができる。次に滑らかにした混合物を打錠する。本発明の化合物はまた、自由流動性の不活性担体と混合して、顆粒化またはスラッグ形成工程を経ることなく、直接打錠することができる。シェラックのシーリングコート、糖またはポリマー材料のコーティング、およびワックスの光沢コーティングからなる透明または半透明の保護コーティングを施してもよい。異なる単位用量を区別するためにこれらのコーティングに着色料を添加してもよい。
【0028】
経口用の液剤(例えば溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤)は、その所定量があらかじめ決められた量の化合物を含有するように、単位投与剤形に調製することができる。シロップ剤は、化合物を適当に香味付けした水溶液に溶解することにより調製することができ、またエリキシル剤は無毒性のアルコール性ビヒクルを使用することにより調製する。懸濁液剤は、化合物を無毒性のビヒクル中に分散させることにより製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤(例えばエトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、香味添加剤(例えばペパーミント油または天然甘味料またはサッカリンもしくは他の人工甘味料)などを添加してもよい。
【0029】
適宜に経口投与用の単位投与製剤をマイクロカプセル化することもできる。製剤はまた、放出が延長されるまたは持続するように調製することができ、これは例えば粒状物質をポリマーやワックスなどでコーティングしたり、その中に包埋することにより行う。
【0030】
本発明に用いる化合物はまた、リポソーム送達システム、例えば小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソームおよび多重膜リポソームの形態で投与することができる。リポソームは種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどから形成することができる。
【0031】
本発明に用いる薬剤はまた、モノクローナル抗体を個々のキャリアー(これに化合物分子がカップリングされる)として使用することにより送達することもできる。本発明の化合物はまた標的化可能な薬物キャリアーとしての可溶性ポリマーにカップリングさせることができる。かかるポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンが挙げられる。その上、該化合物は、薬物の制御放出をもたらすのに有用な生分解性ポリマーの一群、例えばポリ乳酸、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋型または両親媒性のブロックコポリマーにカップリングさせることもできる。
【0032】
経皮投与用の医薬製剤は、個別のパッチ(受容者の表皮に長時間にわたり密着させることを意図したもの)として提供することができる。例えば、活性成分はPharmaceutical Research, 3(6):318 (1986)に一般的に記載されているように、パッチからイオントフォレシスにより送達され得る。
【0033】
局所投与用の医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、粉剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤またはオイル剤として製剤化することができる。
【0034】
眼や他の外部組織(例えば口や皮膚など)の処置のためには、製剤は、好ましくは局所用の軟膏剤またはクリーム剤として適用される。軟膏剤として製剤化するときには、活性成分をパラフィン性または水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に用いることができる。あるいは活性成分は、水中油クリーム基剤または油中水基剤を用いてクリーム剤として製剤化することができる。
【0035】
眼への局所投与に適する医薬製剤としては点眼剤が挙げられ、このときの活性成分は適当な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁されている。
【0036】
口内への局所適用に適する医薬製剤としては、ロゼンジ剤、芳香錠および洗口剤が挙げられる。
【0037】
直腸投与用の医薬製剤は、坐剤としてまたは浣腸剤として提供されうる。
【0038】
鼻への投与に適する医薬製剤としては、担体が固形物の場合、粒径が例えば20〜500ミクロンの範囲の粗末剤が挙げられ、これは鼻から吸い込む様式で(すなわち鼻の近くに保持した粉剤容器から鼻孔への急激な吸入により)投与される。担体が液体の場合には、経鼻スプレーまたは点鼻剤として投与するための適当な製剤として、活性成分の水性または油性溶液剤が挙げられる。
【0039】
吸入による投与に適する医薬製剤としては、微粒子の散剤またはミストが挙げられ、これらはさまざまなタイプの加圧式定量噴霧器、ネブライザー、または吸入器を用いて発生させることができる。
【0040】
膣投与用の医薬製剤は、ペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤として提供されうる。
【0041】
非経口投与に適する医薬製剤としては、水性および非水性の滅菌注射溶液剤(抗酸化剤、バッファー、静菌剤および該製剤を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含みうる)、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁液剤(懸濁化剤と増粘剤を含みうる)が挙げられる。かかる製剤は、単回用量容器または複数回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアル中に提供することができ、また、使用の直前に無菌液状担体(例えば注射用の水)を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即座の注射溶液および懸濁液は、無菌の粉剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0042】
上に具体的に挙げた成分の他に、製剤は、対象の製剤の種類を考慮して当技術分野で慣用の他の添加剤を含んでもよい、と理解されたい。例えば経口投与に適した製剤は、香味剤を含みうる。
【0043】
上述したように、特定の式(I)の化合物は哺乳動物に投与される。典型的には、投与される本発明の薬剤の量は、例えば哺乳動物の年齢と体重、治療を必要としているその特定の症状、その症状の重症度、製剤の性質、および投与経路を含むいくつかの要因に依存する。最終的には、投与される量は、かかりつけの医師または獣医の判断に任されるだろう。
【0044】
典型的には、式(I)の化合物は、0.1〜100 mg/kg(受容者(哺乳動物)の体重)/日の範囲、およびより通例的には1〜30 mg/kg体重/日の範囲で与えられる。
【0045】
上に記載のように、本発明は、5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミドまたはその塩もしくは溶媒和物の投与による癌の治療法を含む。
【0046】
本発明の方法は、さまざまなタイプの感受性の癌の治療に有用であり、これには限定するものではないが以下のものが含まれる:多形性膠芽腫 (GBM)を含む脳腫瘍; 神経内分泌癌; 前立腺癌; 骨髄腫; 乳癌; 非小細胞肺癌および中皮腫を含む肺癌; 卵巣癌; 腎細胞癌を含む腎臓癌; 胆嚢癌; 肝細胞性および胆管腫を含む肝臓癌; 子宮頸癌; 膀胱癌; 頭頸部癌; 食道癌、胃癌、および腸癌を含む消化管の癌; 直腸結腸癌; 皮膚癌; 平滑筋癌; 骨肉腫; 肉腫; 膵臓癌; ならびに甲状腺癌。
【0047】
本発明のある実施形態では、治療は第一選択(first line)療法であり得る。別の実施形態では、治療は付加(adjunctive)療法であり得る。さらなる実施形態において、治療は補助(adjuvant)療法であり得る。
【0048】
本発明のある実施形態では、感受性の癌がVEGF-R阻害に感受性である、哺乳動物における前記感受性の癌の治療方法を提供する。
【0049】
腎臓は背骨の両側に配置されている一対の豆形の臓器であり、血液を濾過し、濾過細尿管の複雑なシステムを通して老廃物を尿へと排除する。体中のすべての血液は1時間に約20回腎臓を通過する。腎細胞癌(RCC)は珍しい形態の癌であり、多くの場合には腎臓の濾過細尿管の内層に癌細胞が存在することを特徴とする。腎臓の外側へ、身体の複数のおよび/または離れた部位へと拡がった癌のことを転移性RCCという。VEGFはRCCの生物学に極めて重要な役割を果たすことが示されている(例えばRini, B.I., The Oncologist 10(3):191-7 (2005)を参照されたい)。
【0050】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が腎細胞癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0051】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が腎細胞癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0052】
黒色腫は非常に深刻な形態の皮膚癌である。黒色腫はメラノサイト(メラニンと呼ばれる皮膚色素を合成する細胞)から発生する。黒色腫はすべての皮膚癌の症例の約4%を占めるにすぎないが、大部分の皮膚癌関連死の原因である。VEGFは、黒色腫の生物学において重要な役割を果たすことが示されている(例えば、Redondo, P.ら, Cytokine 12(4):374-8 (2000)を参照されたい)。
【0053】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が黒色腫である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0054】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が黒色腫である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0055】
肉腫は、癌細胞が結合組織として知られている体内の正常細胞から生じるかまたはそれに似ている、特異な癌の一般的なクラスである。正常な結合組織には、脂肪、筋肉、血管、深部皮膚組織、神経、骨、および軟骨が含まれる。こうした正常組織のいずれかに似ている細胞の癌のことを肉腫という。肉腫は、その癌を構成する特定の細胞型に基づき細分される。例えば平滑筋肉腫は平滑筋組織から生じる悪性腫瘍である。軟骨肉腫は軟骨を形成する細胞の癌である。VEGFの発現レベルは肉腫で増大していることが示されており、腫瘍の重症度と相関しうる(例えば、Pakos, EEら, Anticancer Research, 25(5):3591-6 (2005)を参照されたい)。
【0056】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が肉腫である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0057】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が肉腫である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0058】
肺癌は、片方または両方の肺で異常細胞が無制御に増殖するものである。正常な肺組織細胞は再生して正常な肺組織へと発達するのに対して、こうした異常細胞は急激に再生し、決して正常肺組織へと発達することがない。ついで癌細胞のこぶ(腫瘍)が形成され、肺を破壊し、正常に機能するのを困難にする。
【0059】
87%を上回る肺癌が喫煙に関連している。しかしながら、すべての喫煙者が肺癌を発症するわけではない。喫煙をやめることは個体のリスクを著しく低下させるが、喫煙経験者は喫煙したことのない人に比べなお肺癌のリスクが高い。アスベストやラドンガスのような他の発癌性物質への曝露も個体のリスクを高め、これはタバコまたは葉巻の喫煙と組み合わさったときに特にそうである。例えば、非小細胞肺癌は典型的には喫煙またはラドンガス曝露と関連している。しかしながら、悪性細胞が、胸部の嚢の薄膜(胸膜)、腹腔の内側の膜(腹膜)、または心臓の周りの薄膜(心膜)に見出される、希な形態の癌である中皮腫を有するほとんどの患者は、その一生のどこかの時点で職場または家庭でアスベストに曝露されたことがある。VEGFは肺癌の生物学において重要な役割を果たすことが示されている(例えばHuang, Cら, 92(7):1231-9 (2005); およびKumar, Pら, 49 補遺 1:S53-60 (2005)を参照されたい)。
【0060】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が肺癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0061】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が肺癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0062】
胃癌(stomach cancer)は、胃癌(gastric cancer)とも呼ばれ、胃の内側の膜から発生する癌である。胃癌の発生率は米国では低下したが、それは依然として癌死亡の突出した原因であり、特に発展途上国ではそうである。胃癌は年齢が40歳以上の男性に最も頻繁に発生し、初期ステージの兆候や症状が多くの場合気付かれないままにされることから、多くの場合後期ステージ疾患として現れる。VEGFは胃癌の治療のための重要な治療標的であることが示されている(例えばWhisenant, Jら, Curr Treat Options Oncol. 6(5):411-21 (2005)を参照されたい)。
【0063】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が胃癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0064】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が胃癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0065】
結腸または直腸の癌を直腸結腸癌と言う。この癌は腫瘍が大腸の内層で増殖するときに発生する。発生率は男性と女性で同程度であり、この癌のリスクは50歳以降から増加する。現在、直腸結腸癌は米国において4番目に多く見られる癌である。VEGF経路は直腸結腸癌治療のための重要な標的であることが示されている(例えばRhee, Jら, Expert Opin. Pharmacother., 6(10):1701-1711 (2005)を参照されたい)。
【0066】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が直腸結腸癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0067】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が直腸結腸癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0068】
神経内分泌腫瘍は、その腫瘍が局在する部位ではなく、その腫瘍が増殖する元となった細胞のタイプをさす。神経内分泌細胞はホルモンや調節タンパク質を産生するため、こうした細胞の腫瘍は通常、それらが産生する特定のホルモンに関連した症状を伴う。神経内分泌細胞は、内分泌系および神経系の両方において役割を果たす。神経内分泌細胞は種々の調節ホルモンまたは神経ペプチド(これには神経伝達物質や増殖因子も含まれる)を産生し分泌する。こうした細胞が癌になると、それらは増殖しその特定の神経ペプチドを過剰産生する。神経内分泌腫瘍は一般的には希である。例えば、あるタイプの神経内分泌腫瘍はカルチノイド腫瘍である。このタイプの腫瘍は腸管、虫垂、直腸、気管支、または卵巣に生じうる。ほとんどのカルチノイド腫瘍はセロトニンを分泌する。このホルモンの血中濃度が十分に高いと、これはカルチノイド症候群を引き起こす。この症候群は腫瘍それ自体ではなく、分泌される過剰量のホルモンにより引き起こされるさまざまな症状を言う。VEGF発現は神経内分泌腫瘍において観察されている(例えばTangjitgamol, Sら, Int. J. Gynecol. Cancer, 15(4):646-56 (2005)を参照されたい)。
【0069】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が神経内分泌癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0070】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が神経内分泌癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0071】
甲状腺癌は、甲状腺で異常細胞が無制御に増殖するものである。甲状腺は蝶のような形をしており、首の前方の、のど仏の下にある。甲状腺には、身体機能の調節を補助する2種類のホルモンを産生する2種類の細胞がある。甲状腺における濾胞細胞はチロキシン(またはT-4)と呼ばれるホルモンを産生し、これが体の代謝速度を制御する。C細胞は、傍濾胞細胞とも呼ばれ、血液中のカルシウムレベルの調節を助けるホルモンであるカルシトニンを産生する。甲状腺癌は希であり、全ての癌の約1.5%程度を占めるに過ぎず、この疾患は男性よりも女性に多い。VEGFは甲状腺癌において重要な役割を果たすことが示されている (例えばVieira, JMら, Eur. J. Endocrinol., 153(5):701-9 (2005)を参照されたい)。
【0072】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が甲状腺癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0073】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が甲状腺癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0074】
乳癌は、乳房組織中の細胞が正常に制御されることなく分裂し増殖するタイプの癌である。乳癌の約80パーセントは乳管から生じ、約20パーセントは乳腺小葉から生じる。乳房の癌性腫瘍は非常にゆっくり増殖するのが常であり、そのためこぶとして感じることができるほど大きくなるまでに、10年もの間、増殖し続けていた可能性がある。乳癌はほとんどの場合女性に生じるが、乳癌と診断される人の約1パーセントは男性である。VEGFは乳癌と関連づけられており、その発現は予後指標となることが提唱されている(例えばRhee, Jら, Expert Opin. Pharmacother., 6(10):1701-1711 (2005)を参照されたい)。
【0075】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が乳癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0076】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が乳癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は、式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0077】
頭頸部癌は、口腔 (口)、咽頭 (喉)、副鼻腔 (粘液を分泌する細胞が並んだ鼻の周辺の小さな空洞)、鼻腔 (鼻孔のすぐ奥の気道)、喉頭(「のど仏」または発声器)、および唾液腺 (唾液を分泌する耳下腺、下顎腺、舌下腺)に発生する種々の悪性腫瘍に対する名称である。その一部には、顔および首の皮膚癌および頸部リンパ節の腫瘍も含まれる。頭頸部癌においてVEGF発現レベルの上昇が見出された。例えばWorden, Bら, Cancer Res., 65(16):7071-81 (2005)を参照されたい。
【0078】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が頭頸部癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0079】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が頭頸部癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0080】
原発性の脳腫瘍、例えば多形性膠芽腫 (GBM)および未分化星状細胞腫 (AA)は、中枢神経系の癌として広く分類されている。もっとも頻繁に見られ、かつ臨床的に侵攻性の脳腫瘍はGBMである。これは白質中で異常な塊として増殖し、白質路に沿って周囲の実質を浸潤する。GBMは特徴として著しく出血性かつ壊死性である。治療の改良にもかかわらず、予後は依然として厳しい。新たにGBMと診断された患者の平均生存期間は約12カ月である。再発は患者の約80%において6〜12カ月以内に生じる。再発の時点からの平均生存期間は約6カ月である。VEGF発現は脳腫瘍において観察されている(例えばMaia, AC Jr. ら, AJNR Am J Neuroradiol., 26(4):777-83 (2005)を参照されたい)。
【0081】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が脳腫瘍である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0082】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が脳腫瘍である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0083】
子宮頸癌は、子宮頸部(膣の上部に連結されている子宮の部分)の癌である。子宮頸癌の90パーセントは頸部を覆う平坦なまたは「扁平な」細胞から生じる。残りの10%のうちの大部分は、腺、つまり子宮へと繋がっている頸管の粘液分泌細胞から生じる。VEGF発現は、種々のステージの子宮頸癌と関連している(例えばMathur, SPら, Gynecol. Oncol., 98(3):467-83 (2005)を参照されたい)。
【0084】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が子宮頸癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0085】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が子宮頸癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0086】
膀胱の癌は、男性において4番目に多く見られる悪性腫瘍であり、女性において10番目に多く見られる悪性腫瘍である。米国では毎年50,000人以上が膀胱癌を発症し、そのうち12,000人以上は最終的にこの疾患が原因で死亡する。
【0087】
膀胱癌は、60歳以上の個体に最も多く発生する傾向がある。喫煙および特定の工業用化学物質(アリールアミンと呼ばれる化合物の誘導体)への曝露は膀胱癌の発症と強く相関する。こうした癌の大部分(約90%)は膀胱の内側を覆う細胞(尿路上皮または移行上皮として知られている)から生じる。VEGF発現の上昇は膀胱癌の患者において観察されている(例えばBeecken, WDら, J. Cell. Mol. Med., 9(3):655-61 (2005)を参照されたい)。
【0088】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が膀胱癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0089】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が膀胱癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0090】
食道癌は食道(口から胃へと食物を運ぶ筋性の管)の悪性腫瘍である。食道癌は米国では比較的希であり、50歳以上の男性に最も頻繁に生じる。100,000人中、5人未満が食道癌に罹る。食道癌には2つの主なタイプ、扁平上皮細胞癌および腺癌がある。この2種は顕微鏡下での外見により識別される。
【0091】
扁平上皮細胞癌は喫煙およびアルコール消費と関連している。この疾患の米国における発生率は比較的一定したままであり、対する食道の腺癌の発生率は劇的に上昇した。胃食道逆流性疾患(GERD)の合併症であるバレット食道は、食道の腺癌の発症のリスク要因である。食道の腺癌のリスク要因としては、男性であること、肥満、洋風の食事、および喫煙が挙げられる。VEGFは食道癌においてある役割を果たすことが示されている(例えばIshikawa, Mら, Hepatogastroenterology, 51(59):1319-22 (2004)を参照されたい)。
【0092】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が食道癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0093】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が食道癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む。
【0094】
膵臓の癌は、膵臓の組織に癌(悪性)細胞が存在する疾患である。膵臓は約6インチの長さであり、片方が太く他方が細い、細長いナシのような形をしている。膵臓は胃の後方にあり、小腸の一部により形成される小さな輪の内側にある。膵臓の太い右端を膵頭とよび、中間部分を膵体とよび、細い左端を膵尾と呼ぶ。
【0095】
膵臓は体内で2つの主な役割を果たす。膵臓は、食物の消化を助ける消化液と、体がどう食物を貯蔵し使用するかを調節するホルモン(インスリンなど)を産生する。膵臓の消化液を産生する部分を膵臓外分泌部と言う。膵臓癌の約95%が膵臓外分泌部から生じる。膵臓のホルモン産生部分を膵臓内分泌部と呼ぶ。膵臓癌のわずか約5%が膵臓内分泌部から生じ、これには島細胞癌も含まれる。VEGF発現は膵臓癌において実証されており、発現レベルは予後と関連しうる (例えばRhee, Jら, Expert Opin. Pharmacother., 6(10):1701-1711 (2005)を参照されたい)。
【0096】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が膵臓癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0097】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が膵臓癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0098】
肝臓癌には2つの主な種類がある。肝細胞癌および胆管癌である。肝細胞癌は肝細胞(主要な機能性肝臓細胞)の癌である。肝細胞癌は原発性の肝臓癌である。肝細胞癌は通常、球様の腫瘍として肝臓内で増殖し、その周辺の正常組織に浸潤する。B型肝炎ウイルス感染の病歴は患者に肝細胞癌発症のリスクをもたらす。
【0099】
胆管細胞の癌は胆管癌と呼ばれる。胆管癌は胆管から生じ、多くの場合、寄生虫である肝吸虫の蔓延により引き起こされる。この癌は胆管に沿って面または線として増殖し、X線検査では発見しにくい。
【0100】
肝臓癌は、先進国よりも多くの発展途上国において非常に蔓延している。その発生率はサハラ以南のアフリカ、中国、南アジア、および日本において最も高い。日本は先進国における例外である。中国は世界の症例の約45%を占める。VEGF発現レベルは肝臓癌の重要な予後マーカーであることが示されている (例えばDeng-Fu, Yら, Hepatobiliary Pancreat. Dis. Int., 4(2):220-6 (2005)を参照されたい)。
【0101】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が肝臓癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0102】
本発明の別の実施形態では、哺乳動物に式(I)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、癌が肝臓癌である前記方法を提供する。別の実施形態では、該方法は式(I')の化合物を投与することを含む。別の実施形態では、該方法は式(I'')の化合物を投与することを含む。
【0103】
前述の本発明の癌治療方法において、式(I)、(I')および(I'')の化合物は上に記載したとおりである。
【0104】
以下の実施例は例示のみを意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0105】
本明細書では、これらの方法、スキームおよび実施例の中で用いる記号および表記は、現代の科学文献(例えばthe Journal of the American Chemical Societyまたはthe Journal of Biological Chemistry)に使用されているものに従う。アミノ酸残基を表すのに一般に標準の一文字または三文字表記を使用し、これらは特に断らない限りL型立体配置であるとする。特に断らない限り、すべての出発材料は販売業者から入手したものであり、さらに精製することなく使用した。特に、以下の略語を実施例および明細書全体にわたり用いる:
g (グラム); mg (ミリグラム);
L (リットル); mL (ミリリットル);
μL (マイクロリットル); psi (平方インチ当たりのポンド数);
M (モル濃度); mM (ミリモル濃度);
N (規定) Kg (キログラム)
i.v.(静脈内); Hz (ヘルツ);
MHz (メガヘルツ); mol (モル);
mmol (ミリモル); RT (室温);
min (分); h (時間);
mp (融点); TLC (薄層クロマトグラフィー);
Tr (保持時間); RP (逆相);
DCM (ジクロロメタン); DCE (ジクロロエタン);
DMF (N,N-ジメチルホルムアミド); HOAc (酢酸);
TMSE (2-(トリメチルシリル)エチル); TMS (トリメチルシリル);
TIPS (トリイソプロピルシリル); TBS (t-ブチルジメチルシリル);
HPLC (高圧液体クロマトグラフィー);
THF (テトラヒドロフラン); DMSO (ジメチルスルホキシド);
EtOAc (酢酸エチル); DME (1,2-ジメトキシエタン);
EDTA エチレンジアミン四酢酸;
FBS ウシ胎仔血清;
IMDM イスコフ改変ダルベッコ培地;
PBS リン酸緩衝生理食塩水;
RPMI ロズウェルパーク記念研究所;
RIPA バッファー ;
RT 室温;
QD 1日1回; BID 1日2回;
SD 安定疾患; MR 複合応答;
PR 部分寛解
150 mM NaCl、50 mM Tris-HCl、pH 7.5、0.25% (w/v) デオキシコール酸塩、1% NP-40、5 mM オルトバナジン酸ナトリウム、2 mM フッ化ナトリウム、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル。
【0106】
特に断らない限り、全ての温度は℃ (摂氏度)で表す。特に断らない限り、全ての反応は室温にて不活性雰囲気下で行った。
【0107】
以下の実施例では、式 (I)の化合物の合成において特に有用な中間体の合成を説明する。
【0108】
中間体実施例1
2,3-ジメチル-6-ニトロ-2H-インダゾールの調製
【化5】

【0109】
手順1:
350 mLのアセトン中の18.5g (0.11 mol)の3-メチル-6-ニトロ-1H-インダゾールの撹拌溶液に、室温にて20g(0.14 mol)の四フッ化ホウ酸トリメチルオキソニウムを加えた。溶液をアルゴン雰囲気下で3時間撹拌した後に、溶媒を減圧下で除いた。得られた固形物に、飽和NaHCO3水溶液(600 mL)および4:1のクロロホルム-イソプロパノール混合物(200 mL)を加え、この混合物を撹拌し、その後層を分離させた。水相を追加のクロロホルム:イソプロパノール(4×200 mL)で洗浄し、合わせた有機相を乾燥(Na2SO4)させた。濾過と溶媒の除去により、黄褐色の固形物が得られた。この固形物をエーテル(200 mL)で洗浄して、2,3-ジメチル-6-ニトロ-2H-インダゾールを黄色の固形物(15.85 g、73%)として得た。1H NMR (300 MHz、DMSO-d6) δ8.51 (s、1H)、7.94 (d、J = 9.1 Hz、1H)、7.73 (d、J = 8.9 Hz、1H)、4.14 (s、3H)、2.67 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 192 (M+H)。
【0110】
手順2:
−30℃に冷却した三フッ化ホウ素エーテラートの溶液(12.5 mmol、塩化メチレン(2.0 mL)中に1.77 g)に、2分間にわたりオルトギ酸トリメチル(11 mmol、1.17 g)を加えた。この混合物を0℃へと15分加温し、次いで−70℃に冷却した。前記のニトロインダゾール(10 mmol、1.77 g)を塩化メチレン(30 mL)にスラリー化し、この冷却混合物に一度に加えた。この混合物を−70℃で15分撹拌し、周囲温度で17時間撹拌した。17時間後には混合物は赤色でかつ不均一であった。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液 (20 mL)でクエンチ(反応停止)し、有機層を分離させた。水層を塩化メチレン(30 mL)で抽出した。塩化メチレン層を合わせ、水(30 mL)で抽出した。塩化メチレン層を、残りが約10 mLとなるまで減圧下で蒸留した。プロパノール(10 mL)を加え、残りの塩化メチレンを減圧下で除き、黄色のスラリーを得た。生成物を濾過により単離して、2,3-ジメチル-6-ニトロ-2H-インダゾール(65%、7mmol、1.25 g)を淡黄色の粉末として得た。1H NMR (300 MHz、DMSO-d6) δ 8.51 (s、1H)、7.94 (d、J = 9.1 Hz、1H)、7.73 (d、J = 8.9 Hz、1H)、4.14 (s、3H)、2.67 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 192 (M+H)。
【0111】
手順3:
25 mLの丸底フラスコの中で、3-メチル-6-ニトロインダゾール(7.27 mmol、1.28 g)をDMSO (4.0 mL)中に撹拌しながら溶解させ、濃硫酸(7.27 mmol、0.73 g)で処理して粘性スラリーを得た。このスラリーを硫酸ジメチル(21.1 mmol、2.66 g)で処理した。混合物を窒素下で50℃にて72時間加熱した。72時間後に黄色の粘性スラリーが得られた。スラリーを冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10 mL)で徐々に処理した。この混合物を塩化メチレン(2×20 mL)で抽出した。塩化メチレン層を合わせ、水(20 mL)で逆抽出した。塩化メチレン層をプロパノール(10 mL)で処理し、塩化メチレンを減圧下で蒸留により除いた。固形物を濾過により分離し、黄色の固形物をヘプタン(5 mL)で洗浄し、空気乾燥させた。2,3-ジメチル-6-ニトロ-2H-インダゾール生成物(70%、0.97 g)を淡黄色の固形物として得た。1H NMR (300 MHz、DMSO-d6) δ 8.51 (s、1H)、7.94 (d、J = 9.1 Hz、1H)、7.73 (d、J = 8.9 Hz、1H)、4.14 (s、3H)、2.67 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 192 (M+H)。
【0112】
手順4:
250 mLの3つ口丸底フラスコに、3-メチル-6-ニトロ-1H-インダゾール硫酸塩(5.0 g、18.2 mmol)および塩化メチレン(25 mL)を加えた。この混合物を25℃で撹拌し、DMSO (5 mL)で処理した。硫酸ジメチル(6.7 g、5.0 mL、53.0 mmol)をシリンジから加え、反応混合物を70℃の浴にて加熱還流した。7時間後にHPLC分析は9%の出発物質を示した。この時点で加熱を停止し、後処理を開始した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液(35 mL)を室温にて反応混合物に加えた。層を分離させ、水層を塩化メチレン(25 mL)で抽出した。塩化メチレン層を合わせ、水(2×25 mL)で洗浄した。塩化メチレン層を、容積の半分が除かれるまで減圧下で蒸留した。プロパノール(25 mL)を添加し、全ての塩化メチレンが除去されるまで減圧下での蒸留を継続した。ここから黄色のスラリーが得られ、これを25℃で1時間撹拌した。生成物を濾過により単離し、得られた黄色の固形物をヘプタン(10 mL)で洗浄した。ここから2,3-ジメチル-6-ニトロ-2H-インダゾール(70%、2.43 g)を黄色の固形物として得た。1H NMR (300 MHz、DMSO-d6) δ 8.51 (s、1H)、7.94 (d、J = 9.1 Hz、1H)、7.73 (d、J = 8.9 Hz、1H)、4.14 (s、3H)、2.67 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 192 (M+H)。
【0113】
中間体実施例2
2,3-ジメチル-6-アミノ-2H-インダゾールの調製:
【化6】

【0114】
手順1:
2-メトキシエチルエーテル(12 mL)中の2,3-ジメチル-6-ニトロ-2H-インダゾール (1.13 g)の撹拌溶液に、0℃にて、8.9 mLの濃塩酸中の4.48gの塩化スズ(II)の溶液を5分間かけて滴下した。添加の完了後に、氷浴を取り外し、溶液をさらに30分撹拌した。約40 mLのジエチルエーテルを反応物に加えたところ、析出物が形成された。得られた析出物を濾過により単離し、ジエチルエーテルで洗浄し、2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-アミンのHCl塩である黄色の固形物 (1.1 g、95 %)を得た。1H NMR (300 MHz、DMSO-d6) δ 7.77 (d、J = 8.9 Hz、1H)、7.18 (s、1H)、7.88 (m、1H)、4.04 (s、3H)、2.61 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 162 (M+H)。
【0115】
手順2:
2Lの3つ口丸底フラスコに窒素流入口と流出口および機械式撹拌器を取り付けた。穏和な窒素流を開始させ、反応器に10%Pd/C(50%水湿性、6.0 g)を加えた。撹拌を開始し、反応器にメタノール(750 mL)および中間体実施例1の生成物(50 g)を加えた。ギ酸アンモニウム(82.54 g)を水(120 mL)に溶解させた。このギ酸アンモニウム水溶液を反応温度が25〜30℃に保たれる添加速度にて反応溶液に加えた。反応を25℃で進行させた。6時間後に、HPLC分析に基づき反応は終了したと判断した。混合物を濾過し、触媒をメタノール(50 mL)で洗浄した。メタノール層を合わせて、減圧下で溶媒を除いた。残留物を水(200 mL)に溶解させ、塩化メチレン(3×250 mL)で抽出した。塩化メチレン層を合わせて、溶媒を真空下で除き、溶媒の約半分を除去した。ヘプタン(400 mL)を加え、反応生成物スラリーが残り約300 mLとなるまで真空蒸留を継続した。生成物を濾過により単離し、真空下に50℃で4時間乾燥させ、2,3-ジメチル-6-アミノ-2H-インダゾールを遊離の塩基として得た(40.76 g、96.7 %)。1H NMR (300 MHz、DMSO-d6) δ 7.31 (d、J = 8.9 Hz、1H)、6.45 (d、J = 8.9 Hz、1H)、6.38 (s、1H)、4.95 (s、br、2H)、3.85 (s、3H)、2.44 (s、3H) MS (ES+、m/z) 162 (M+H)。
【0116】
中間体実施例3
N-(2-クロロピリミジン-4-イル)-2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-アミンの調製
【化7】

【0117】
手順1
THF(15 mL)およびエタノール(60 mL)中の中間体実施例2の生成物(2.97 g、0.015 mol)とNaHCO3(5.05 g、0.06 mol)の撹拌溶液に、2,4-ジクロロピリミジン(6.70 g、0.045 mol)を室温にて加えた。反応物を85℃で4時間撹拌した後に、懸濁物を室温に冷却し、濾過し、酢酸エチルで十分に洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた固形物を酢酸エチルで細かくすりぶつして、N-(2-クロロピリミジン-4-イル)-2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-アミン(89 %、3.84 g)を得た。1H NMR (400 MHz、DMSO-d6) δ 7.28 (d、J = 9.0 Hz、1H)、6.42 (d、J = 8.8 Hz、1H)、6.37 (s、1H)、5.18 (br s、1H)、3.84 (s、3H)、2.43 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 274 (M+H)。
【0118】
手順2
圧縮空気駆動式の機械撹拌器、温度計、および窒素流入口/流出口を備えた1Lの3つ口フラスコに、425 mL (13容)のEtOH/THF (4/1)中の中間体実施例2の生成物 (32.89 g、0.204 mol、1.0当量)の溶液、重炭酸ナトリウム (51.42 g、0.612 mol、3.0当量)を、次いで2,4-ジクロロピリミジン (45.59 g、0.306 mol、1.5当量)を加えた。フラスコの内容物を75℃に加熱し74〜76℃に6〜7時間保った。反応の進行はHPLCにより確認した(中間体実施例2の生成物<2%)。反応物を30分かけて20〜25℃に冷却し、30分間、20〜25℃に保った。次いで反応内容物をさらに30分かけて10〜12℃に冷却し、その温度にさらに10分保った。反応物を濾過し、濾過ケークをEtOAc (2×100 mL、3.0容)、および脱イオン水(514 mL、15.6容)で洗浄した。次いで濾過ケークを真空オーブン中で35℃にて一晩乾燥させて、44.75 gの所望の生成物を白色の固形物 (80.1%)として得た。1H NMR (400 MHz、DMSO-d6) δ 7.28 (d、J = 9.0 Hz、1H)、6.42 (d、J = 8.8 Hz、1H)、6.37 (s、1H)、5.18 (br s、1H)、3.84 (s、3H)、2.43 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 274 (M+H)。
【0119】
手順3
2 Lのジャケット付き反応器に、IMS (1000 mL)、中間体実施例2の生成物 (100 g、0.620 mol、1当量)、炭酸水素ナトリウム(107g、1.27 mol、2.05当量)、および2,4-ジクロロピリミジン (101 g、0.682 mol、1.1当量)を加えた。この溶液を、85℃のジャケット温度にて8時間にわたり撹拌しながら加熱還流した。次いで得られたスラリーを50℃に冷却し、水(500 mL)を加えて温度を40〜50℃に保った。次いで反応を50℃の内部温度にて1時間撹拌し、次いで20℃に冷却した。固形生成物を濾過により回収し、水(750 mL×2)で洗浄し、次いでEtOAc(450 mL×1)で洗浄した。60℃で真空下に一晩乾燥させた後に、135g(80%)のN-(2-クロロピリミジン-4-イル)-2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-アミンを得た。
【0120】
中間体実施例4
N-(2-クロロピリミジン-4-イル)-N,2,3-トリメチル-2H-インダゾール-6-アミンの調製
【化8】

【0121】
手順1
DMF (50 mL)中の中間体実施例3の生成物(7.37 g)の撹拌溶液に、Cs2CO3 (7.44 g、2当量)およびヨードメタン(1.84 mL、1.1当量)を室温にて加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。次いで反応混合物を氷水浴に注ぎ、析出物を濾過により回収し、水で洗浄した。析出物を空気乾燥させて、N-(2-クロロピリミジン-4-イル)-N,2,3-トリメチル-2H-インダゾール-6-アミンを灰白色の固形物(6.43 g、83%)として得た。1H NMR (400 MHz、DMSO-d6) δ 7.94 (d、J = 6.0 Hz、1H)、7.80 (d、J = 7.0 Hz、1H)、7.50 (d、J = 1.0 Hz、1H)、6.88 (m、1H)、6.24 (d、J = 6.2 Hz、1H)、4.06 (s、3H)、3.42 (s、3H)、2.62 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 288 (M+H)。
【0122】
手順2
圧縮空気駆動式の機械撹拌器、温度計、添加用漏斗および窒素流入口/流出口を備えた3Lの3つ口フラスコに、DMF (272 mL、5容)および中間体実施例3の生成物 (54.4 g、0.20 mol、1.0当量)を撹拌しながら加えた。反応温度を20〜25℃に保ちながら、この反応混合物にさらに炭酸セシウム(194.5 g、0.60 mol、3.0当量)を加えた。反応混合物を20〜25℃にて10分間撹拌した。温度を20〜30℃に保ちながら、ヨードメタン(45.1 g、0.32 mol、1.6当量)を約10分間かけて加えた。反応混合物を20〜30℃で撹拌した(典型的には、反応は1〜2時間で完了する)。温度を25〜40℃に保ちながら、脱イオン水(925 mL、17容)を約30分かけて加えた。反応混合物を20〜25℃にて40分撹拌した。生成物を濾過により単離し、次いで濾過ケークをH2O/DMF (6:1、252 mL、4.6容)で洗浄した。湿ったケークを40〜45℃にて真空下で乾燥させ、N-(2-クロロピリミジン-4-イル)-N,2,3-トリメチル-2H-インダゾール-6-アミン(51.7 g、90.4%)を黄色の固形物として単離した。1H NMR (400 MHz、DMSO-d6) δ 7.94 (d、J = 6.0 Hz、1H)、7.80 (d、J = 7.0 Hz、1H)、7.50 (d、J = 1.0 Hz、1H)、6.88 (m、1H)、6.24 (d、J = 6.2 Hz、1H)、4.06 (s、3H)、3.42 (s、3H)、2.62 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 288 (M+H)。
【0123】
手順3
2 Lのジャケット付き反応器に、DMF(383 mL)、炭酸ジメチル (192 mL)、中間体実施例3の生成物(115 g、0.420 mol、1当量)および炭酸カリウム(174 g、1.26 mol、3当量)を加えた。この懸濁物を135℃のジャケット温度にて6時間にわたり撹拌しながら加熱還流した。次いで得られたスラリーを60℃に冷却し、反応温度を50〜65℃に保ちながら水(1150 mL)を徐々に加えた。次いで反応を20℃に冷まし、20℃の内部温度で2時間撹拌し、次いで10℃に冷却して一晩保ち、その後濾過した。固形物を室温にて水(230 mL×2)で洗浄し、IMS:水(1:1) (230 mL×1)の混合液ですすいだ。真空下に60℃で一晩乾燥させた後、101g(83%)のN-(2-クロロピリミジン-4-イル)-N,2,3-トリメチル-2H-インダゾール-6-アミンを得た。
【0124】
実施例1: パゾパニブ(pazopanib) (5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)(メチル)アミノ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド)ならびにその塩および溶媒和物の調製
実施例1a
5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)(メチル)アミノ]ピリミジン-2-イル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミドの調製
【化9】

【0125】
手順1
イソプロパノール(6 mL)中の中間体実施例4の生成物(200 mg、0.695 mmol)および5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド (129.4 mg、0.695 mmol)の溶液に、4滴の濃塩酸を加えた。この混合物を一晩加熱還流した。混合物を室温に冷却し、エーテル(6 mL)で希釈した。析出物を濾過により回収し、エーテルで洗浄した。5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)(メチル)アミノ]-ピリミジン-2-イル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミドの塩酸塩を灰白色の固形物として単離した。 1H NMR (400 MHz、d6DMSO+NaHCO3) δ 9.50 (br s、1H)、8.55 (br s、1H)、7.81 (d、J = 6.2 Hz、1H)、7.75 (d、J = 8.7 Hz、1H)、7.69 (m、1H)、7.43 (s、1H)、7.23 (s、2H)、7.15 (d、J = 8.4 Hz、1H)、6.86 (m、1H)、5.74 (d、J = 6.1 Hz、1H)、4.04 (s、3H)、3.48 (s、3H)、2.61 (s、3H)、2.48 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 438 (M+H)。
【0126】
手順2
磁気撹拌棒、温度計、還流冷却器、および窒素流入口/流出口を備えた250mLの3つ口フラスコに、エタノール(60 mL、10容)、中間体実施例4の生成物 (6.00 g、20.85 mmol、1.0当量)および 5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド (4.00 g、21.48 mmol、1.03当量) を撹拌しながら加えた。反応混合物を70℃に加熱した。反応混合物を68〜72℃で3時間撹拌した後に、ジオキサン中の4M HCl(0.11 mL、0.44 mmol、0.02当量)を約2分にわたり加えた。反応混合物を、HPLC分析で中間体実施例4の出発物質の面積が残り<1.5%となるまで、68〜72℃にて撹拌した(典型的にはこの反応は>8時間で完了する)。反応混合物を約30分かけて20℃に冷却し、20〜22℃で40分間撹拌した。次いで生成物を濾過により回収し、濾過ケークをエタノール(20 mL、3.3容)で洗浄した。湿ったケークを真空下で45〜50℃にて乾燥させた。5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)(メチル)アミノ]-ピリミジン-2-イル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド(9.52g、96.4%)の一塩酸塩を白色の固形物として単離した。1H NMR (400 MHz、d6DMSO + NaHCO3) δ 9.50 (br s、1H)、8.55 (br s、1H)、7.81 (d、J = 6.2 Hz、1H)、7.75 (d、J = 8.7 Hz、1H)、7.69 (m、1H)、7.43 (s、1H)、7.23 (s、2H)、7.15 (d、J = 8.4 Hz、1H)、6.86 (m、1H)、5.74 (d、J = 6.1 Hz、1H)、4.04 (s、3H)、3.48 (s、3H)、2.61 (s、3H)、2.48 (s、3H)。MS (ES+、m/z) 438 (M+H)。
【0127】
手順3:
14mLのMeOH中の中間体実施例4の生成物(1.1g、3.8 mmol)の撹拌懸濁物に、5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド(0.78g、4.2 mmol、1.1当量)を室温にて加えた。反応混合物を3時間加熱還流し、次いで1,4-ジオキサン中の4M HCl(19μL、0.076 mmol)を一度に加えた。4時間後に、懸濁物を室温に冷却し、濾過した。得られた固形物を10mLのMeOHで洗浄し、真空で乾燥させて1.3 g (72%)の5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸を白色の固形物として得た。1H NMR (DMSO-d6、400 MHz) δ 10.95 (s、1H)、8.36 (s、1H)、7.86 (d、J = 8.8 Hz、2H)、7.64-7.59 (m、2H)、7.40 (m、3H)、6.93 (dd、J = 8.8、2.0 Hz、1H)、5.92 (s、1H)、4.08 (s、3H)、3.57 (s、3H)、2.65 (s、3H)、2.56 (s、3H)。
【0128】
手順4
10 mLのTHF中の中間体実施例4の生成物(1.1 g、3.7 mmol)の撹拌懸濁物に、5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド(0.70 g、3.8 mmol、1.0当量)を室温にて加えた。反応混合物を3時間加熱還流し、次いで1,4-ジオキサン中の4M HCl(18μL、0.072 mmol)を一度に加えた。5時間後に、懸濁物を室温に冷却し、濾過した。得られた固形物を16 mLのTHFで洗浄し、空気乾燥させて1.6 g (92%)の5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸を淡黄色の固形物として得た。
【0129】
手順5
10mLのCH3CN中の中間体実施例4の生成物(1.0g、3.6 mmol)の撹拌懸濁物に、5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド(0.70g、3.8 mmol、1.0当量)を室温にて添加した。この反応混合物を3時間加熱還流し、次いで1,4-ジオキサン中の4M HCl (18μL、0.076 mmol)を一度に加えた。20時間後に懸濁物を室温に冷却し、濾過した。生じた固形物を10 mLのCH3CNで洗浄し、空気乾燥させて、1.3g (73%)の5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸を灰白色の固形物として得た。
【0130】
手順6
2Lのジャケット付き反応器に、MeOH(1005 mL)、中間体実施例4の生成物(84g、0.292 mol、1当量)および5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド(60 g、0.320 mol、1.1当量)を加えた。この溶液を撹拌し、50℃に加熱し、ジオキサン中の4M HCl(1.46 mL、2 mol%)を加えた。次いでこの溶液を85℃のジャケット温度にて10時間撹拌しながら加熱還流した。次いで、得られたスラリーを20〜25℃に冷却し、濾過した。濾過した固形物を室温にてアセトニトリル(293 mL×2)で洗浄した。60℃にて真空下で一晩乾燥させた後に、116g (81%)の5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸を得た。
【0131】
実施例1b
5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸一水和物の調製
【化10】

【0132】
丸底フラスコに、2.6 gの実施例1aの手順1の一塩酸塩(任意の形態)を加えた。次いで 39mLのイソプロパノール(15容)を加えた。混合物を油浴にて75℃に加熱し、次いで14 mLの0.05N HCl水溶液(5.4容)を加えた。透明な溶液を65℃に冷却し、次いで実施例1の手順1の一塩酸塩の一水和物(0.05〜0.1wt%)を種付けした。濁った溶液を65℃にて60分撹拌し、次いで約0.25〜0.5℃/分にて0℃へと冷却した。得られた白色の固形物を濾過し、室温にて真空下で乾燥させて一定重量とし、収率88%にて5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸一水和物を得た。
【0133】
実施例1c
5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸無水物の調製
【化11】

【0134】
1Lのジャケット付き反応器に、アセトニトリル(563 mL)、水(188 mL)、実施例1の手順6の一塩酸塩 (50 g、0.105 mol)を加えた。この溶液を85℃のジャケット温度にて撹拌および加熱し、透明な溶液を得た。次いでこの溶液を45℃に冷却して90分保ち、水和物を結晶化させた。この90分の静置の後に、溶液を0℃に冷却して1時間保ち、次いで濾過乾燥機に通して濾過した。次いで濾過した固形物をアセトニトリル(200 mL×1)で0℃にて洗浄した。LODが25%未満となるまで、濾過乾燥機内で固形物に窒素を25℃で吹き付けた。濾過乾燥機内の固形物にアセトニトリル(300 mL)を加え、これを少なくとも8 時間、またはDATRで観察したときに形態変換が完了する(一水和物が残っていない状態)まで60℃にて撹拌し、5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸無水物を形成させた。濾過乾燥機の内容物を約30℃に冷却し、窒素圧を利用して濾液を押し出した。LODが0.5%未満となるまで、濾過ケークに窒素を約60℃にて真空下で吹きつけた。内容物を20℃に冷却し、37.5g (75%)の5-({4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル}アミノ)-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸無水物を得た。
【0135】
生物学的データ
実施例2
経口投与されたパゾパニブ(pazopanib)の固形癌患者における臨床試験
63人の癌患者に、パゾパニブを、用量漸増スキームにて、週に3回、1日1回(qd)または1日2回(bid)投与した。代表的な何人かの患者へのパゾパニブの投与量と投与頻度を下の表1にまとめた。患者を毎月評価し、疾患が進行するまで、または許容できない副作用が現れるまで処置を続けた。臨床応答は8週毎に決定した。安全性および薬力学は別々に評価した。
【表1】

【0136】
40μMのパゾパニブのピーク血漿濃度が達成された患者では、腫瘍の種類にかかわらず、臨床上の効果が示された。予備的代表的患者データを下の表2に示す。
【表2】

【0137】
本発明の特定の実施形態をここに例示し詳細に説明したが、本発明はそれらに限定されるものではない。上の詳細な説明は本発明の典型例として提供されたものであり、本発明のいかなる限定をも構成しないと解釈されるべきである。改変は当業者にとつて自明であり、本発明の精神を逸脱しないあらゆる改変が特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、前記哺乳動物に式(I)の化合物
【化1】

またはその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む前記方法。
【請求項2】
前記化合物が式(I')の化合物である、請求項1に記載の方法。
【化2】

【請求項3】
前記化合物が式(I'')の化合物である、請求項1に記載の方法。
【化3】

【請求項4】
哺乳動物における感受性の癌の治療方法であって、前記哺乳動物に式(I)の化合物
【化4】

またはその塩もしくは溶媒和物、
および少なくとも1種の抗新生物療法を施すことを含む前記方法。
【請求項5】
前記化合物が式(I')の化合物である、請求項4に記載の方法。
【化5】

【請求項6】
前記化合物が式(I'')の化合物である、請求項4に記載の方法。
【化6】

【請求項7】
前記感受性の癌がVEGF-R阻害に感受性である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記感受性の癌が腎細胞癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記感受性の癌が黒色腫である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記感受性の癌が肉腫である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記感受性の癌が肺癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記感受性の癌が胃癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記感受性の癌が直腸結腸癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記感受性の癌が神経内分泌癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記感受性の癌が甲状腺癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記感受性の癌が乳癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記感受性の癌が頭頸部癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記感受性の癌が脳腫瘍である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記感受性の癌が子宮頸癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記感受性の癌が膀胱癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記感受性の癌が食道癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記感受性の癌が膵臓癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記感受性の癌が肝臓癌である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記感受性の癌が、脳腫瘍、多形性膠芽腫(GBM)、神経内分泌癌、前立腺癌、骨髄腫、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、中皮腫、卵巣癌、腎臓癌、腎細胞癌、胆嚢癌、肝臓癌、肝細胞癌および胆管癌、子宮頸癌、膀胱癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)、食道癌、胃癌(stomach cancer)、腸癌、直腸結腸癌、皮膚癌、平滑筋癌、骨癌、肉腫、膵臓癌、ならびに甲状腺癌から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517397(P2009−517397A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542487(P2008−542487)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045777
【国際公開番号】WO2007/064753
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】