説明

癌治療状況評価方法および装置ならびに癌治療方法および装置

【課題】 光線力学的療法による治療の過程で治療状況を評価することが可能で信頼性が高い癌治療装置等を提供する
【解決手段】 癌治療状況評価装置2は、白色光源部21、撮像部22、励起光源部23、検出部24、評価部25、表示部26,27および導光部31〜34を備える。癌治療装置1は、この癌治療状況評価装置2に加えて、治療光源部10、導光部35および制御部50を備える。励起光源部23は、癌病巣部9に投与された光増感剤を励起し得る波長λの励起光Lを発生し、その励起光Lを導光部33の一端に入射させる。検出部24は、導光部34により導光されてきた光Lを入力して、そのうちの赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度を検出する。評価部25は、検出部24により検出された赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線力学的療法に拠る当該癌治療の進行状況を評価する方法および装置、ならびに、光線力学的療法に拠り癌治療を行う方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(photodynamic therapy、以下「PDT」という場合がある。)は、光増感剤が投与された癌病巣部に所定波長の治療光を照射し、この照射により発生する一重項酸素の細胞傷害性を利用して癌治療を行うものである。PDTは、外科療法、化学療法および放射線療法と比べると、正常組織への傷害が少なくて安全性が高い点、機能温存を図ることができる点、および、高い治療効果を得ることができる点、等の利点を有していることから、普及しつつある。
【0003】
しかしながら、PDTは、低エネルギーの治療光を照射するため、治療光照射中の癌病巣の変化が乏しく、熟練した医師でないと治療が順調に進行しているのか否かを治療の場で判別することが難しいことが欠点となっている。そこで、PDTによる治療効果の判別は、治療光照射の数日後に得られる組織の壊死反応を確認して行われている。したがって、治療光照射不足がある場合には治癒が得られないが、これは治療中には判別できず、数日後になって初めて判明することになる。また、これはPDTの信頼性を損なうものである。
【0004】
このような問題点を解決すべく、PDTによる治療の過程で治療状況を評価する方法が非特許文献1に記載されている。この文献に記載された方法では、光増感剤としてNpe6(明治製菓(株)製)を癌病巣部に投与して、この癌病巣部および周辺の正常組織に波長405nmの励起光を照射して、自家蛍光(トリプトファン、コラーゲン、エラスティン、フラビン等の生体物質から発生する蛍光)である緑色蛍光を検出するとともに、光増感剤から発生する赤色蛍光を検出する。生体物質から発生する自家蛍光の緑色蛍光は、正常組織では強く、癌組織では弱い。一方、光増感剤から発生する赤色蛍光は、正常組織では弱く、癌組織では強い。この文献に記載された方法では、このことを利用して、赤色蛍光と緑色蛍光との強度比についての画像を求めて、この画像から肺癌の診断を行っている。
【非特許文献1】古川欣也、他、「新しい薬剤を用いた実験的光線力学的癌診断法」、日本レーザー医学学会誌、第17巻、第1号、第59頁〜第63頁、1996年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、その文献にも記載されているとおり、自家蛍光の検出が不均一であることから、癌診断の信頼性が低い。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、光線力学的療法(PDT)による治療の過程で治療状況を評価することが可能で信頼性が高い癌治療状況評価方法および装置ならびに癌治療方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る癌治療状況評価方法は、光増感剤が投与された癌病巣部(ヒトを除く。)に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて癌治療を行う光線力学的療法に拠る当該癌治療の進行状況を評価する方法であって、癌治療の過程において、光増感剤を励起し得る波長の励起光を癌病巣部に照射し、励起光照射に伴い癌病巣部から発生する赤色蛍光および緑色蛍光を検出して、これら赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る癌治療状況評価装置は、光増感剤が投与された癌病巣部に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて癌治療を行う光線力学的療法に拠る当該癌治療の進行状況を評価する装置であって、(1) 光増感剤を励起し得る波長の励起光を癌病巣部に照射する励起光照射手段と、(2) 励起光照射手段による励起光照射に伴い癌病巣部から発生する赤色蛍光および緑色蛍光を検出する検出部と、(3) 検出部により検出された赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する評価部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これら本発明に係る癌治療状況評価方法と本発明に係る癌治療状況評価装置とは共通の技術的思想に基づくものである。この発明は、光増感剤が投与された癌病巣部に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて癌治療を行う光線力学的療法(PDT)に拠る当該癌治療の進行状況を評価するものである。このPDTに拠る癌治療の過程において、光増感剤を励起し得る波長の励起光が癌病巣部に照射され、励起光照射に伴い癌病巣部から発生する赤色蛍光および緑色蛍光が検出されて、これら赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況が評価される。癌病巣部への治療光の照射の初期段階では、光増感剤由来の赤色蛍光が発生し、やがて、その赤色蛍光の減衰が進むとともに緑色蛍光が現れて増大し、治療光照射が更に進行すると赤色蛍光および緑色蛍光の双方が減光し消滅する。このような赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化を測定することにより、PDTに拠る癌治療の進行状況を評価することができる。
【0010】
本発明に係る癌治療状況評価方法は、癌治療の過程において、赤色蛍光および緑色蛍光に加えて一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光をも検出して、これら赤色蛍光,緑色蛍光および一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価するのが好適である。また、本発明に係る癌治療状況評価装置では、検出部は、赤色蛍光および緑色蛍光に加えて一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光をも検出し、評価部は、検出部により検出された赤色蛍光,緑色蛍光および一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価するのが好適である。PDTにおいて、光増感剤が投与された癌病巣部に治療光が照射されることにより一重項酸素が発生し、この一重項酸素の酸化作用により癌細胞や癌組織が壊死に至ることで癌治療が行われ、また、この一重項酸素が緩和して元の三重項酸素に戻るときに波長1270nmの近赤外光が放出される。そこで、この近赤外光を検出して測定すれば、一重項酸素の発生量の推移(すなわち、癌治療の進行状況)を評価することができる。
【0011】
光増感剤は、フォトフリン、5-ALA、mTHPC、Npe6、ATX-S10Na(II)、BPD-MA のうちの何れかであるのが好適である。これらの場合、治療光波長は約630nm〜690nmであり、励起光波長は約405nmであり、検出すべき緑色蛍光の波長は約500nmであり、また、検出すべき赤色蛍光の波長は約630nm〜約690nmである。
【0012】
本発明に係る癌治療状況評価装置は、癌病巣部を照明するための白色光を癌病巣部に照射する白色光照射手段を更に備えるのが好適である。この場合には、白色光照射手段により白色光が癌病巣部に照射されることで、その癌病巣部を観測することができる。なお、白色光が照射された癌病巣部を撮像する撮像部を更に備えるのもの好適である。
【0013】
本発明に係る癌治療状況評価装置では、検出部は、癌病巣部から到達した光を分光する分光器と、この分光器による分光像を撮像する撮像部と、を有するのが好適である。この場合には、癌病巣部から到達した光が分光器により分光され、この分光器による分光像が撮像部により撮像される。この撮像により得られた分光スペクトルから赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度を検出することができる。
【0014】
本発明に係る癌治療状況評価装置では、検出部は、癌病巣部から到達した光を分岐して第1および第2の光を出力する分岐器と、分岐器から出力された第1の光のうち赤色蛍光を選択的に透過させる第1光フィルタと、第1光フィルタを選択的に透過した赤色蛍光を検出する第1検出器と、分岐器から出力された第2の光のうち緑色蛍光を選択的に透過させる第2光フィルタと、第2光フィルタを選択的に透過した緑色蛍光を検出する第2検出器と、を有するのも好適である。この場合には、癌病巣部から到達した光は分岐器により分岐されて第1および第2の光とされる。分岐器から出力された第1の光のうち赤色蛍光は、第1光フィルタを選択的に透過して、第1検出器により強度が検出される。また、分岐器から出力された第2の光のうち緑色蛍光は、第2光フィルタを選択的に透過して、第2検出器により強度が検出される。
【0015】
本発明に係る癌治療状況評価装置では、励起光照射手段は、励起光を導光して一端から外部へ該励起光を出射する励起用導光部を有し、検出部は、外部から一端に光を入射して導光する検出用導光部を有するのが好適である。ここで、励起用導光部および検出用導光部が一端側において束ねられているのが好適である。また、励起用導光部および検出用導光部それぞれの一端に入出射する光を散乱させる散乱部が設けられているのが好適である。さらに、癌治療用の治療光を導光する治療用導光部も、励起用導光部および検出用導光部とともに一端側において束ねられているのが好適であり、また、その一端から出射する治療光を散乱させる散乱部が設けられているのが好適である。
【0016】
本発明に係る癌治療方法は、光増感剤が投与された癌病巣部(ヒトを除く。)に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて光線力学的療法に拠り癌治療を行うとともに、この癌治療の過程において上記の本発明に係る癌治療状況評価方法により癌治療の進行状況を評価することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る癌治療装置は、(1) 光増感剤が投与された癌病巣部において一重項酸素を発生させ得る波長の治療光を癌病巣部に照射する治療光照射手段と、(2) この癌治療の過程において癌治療の進行状況を評価する上記の本発明に係る癌治療状況評価装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
これら本発明に係る癌治療方法と本発明に係る癌治療装置とは共通の技術的思想に基づくものである。この発明では、光増感剤が投与された癌病巣部に所定波長の治療光が照射されることで一重項酸素が発生して、光線力学的療法に拠り癌治療が行われる。この治療の過程において、上記の本発明に係る癌治療状況評価方法または癌治療状況評価装置により、癌治療の進行状況が評価される。
【0019】
本発明に係る癌治療方法は、癌治療状況評価方法による評価の際に赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が所定値以下となったときに癌病巣部への治療光の照射を終了させるのが好適である。また、本発明に係る癌治療装置は、癌治療状況評価装置による評価の際に赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が所定値以下となったときに治療光照射手段による癌病巣部への治療光の照射を終了させる制御部を更に備えるのが好適である。前述したように、癌病巣部への治療光の照射の初期段階では、光増感剤由来の赤色蛍光が発生し、やがて、その赤色蛍光の減衰が進むとともに緑色蛍光が現れて増大し、治療光照射が更に進行すると赤色蛍光および緑色蛍光の双方が減光し消滅する。赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が所定値以下となったときに、その旨の表示が為されるのみでもよいが、癌病巣部への治療光の照射を自動的に終了させることにより、治療光の過度な照射を防止することができる。
【0020】
本発明に係る癌治療方法は、治療光を癌病巣部に断続的に照射し、治療光が癌病巣部に照射されていない期間に赤色蛍光および緑色蛍光を検出するのが好適である。また、本発明に係る癌治療装置では、治療光照射手段は、治療光を癌病巣部に断続的に照射し、検出部は、治療光が癌病巣部に照射されていない期間に赤色蛍光および緑色蛍光を検出するのが好適である。
【0021】
或いは、本発明に係る癌治療方法は、治療光を癌病巣部に連続的に照射し、励起光が癌病巣部に照射されていない期間に光を検出するとともに、励起光が癌病巣部に照射されている期間に光を検出して、これら検出した光の強度の差に基づいて赤色蛍光および緑色蛍光を検出するのが好適である。また、本発明に係る癌治療装置では、治療光照射手段は、治療光を癌病巣部に連続的に照射し、検出部は、励起光が癌病巣部に照射されていない期間に光を検出するとともに、励起光が癌病巣部に照射されている期間に光を検出して、これら検出した光の強度の差に基づいて赤色蛍光および緑色蛍光を検出するのも好適である。
【0022】
本発明に係る局注器は、(1) 各々の先端が斜めにカットされた複数の細径管と、(2) 複数の細径管それぞれの他端を互いに固定する固定締め部と、(3) 複数の細径管を内部に収納するチューブと、(4) 複数の細径管をチューブの軸方向に移動させて、複数の細径管それぞれの先端をチューブから外部へ繰り出す繰り出し手段と、を備えることを特徴とする。ここで、複数の細径管それぞれの先端部分がチューブから外部へ繰り出されたときに拡がるように剛性が付与されているのが好適であり、チューブがフッ素樹脂からなるのが好適であり、また、繰り出し手段がラックピニオン機構を有するのが好適である。また、本発明に係る注射針は、金属パイプの先端が斜めにカットされ、その金属パイプの側面に1以上の貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0023】
このような局注器または注射針を用いることにより、通常の1本の注射器による注入に比べて、病巣内の広い範囲の複数箇所で光増感剤を注入することができるため、光増感剤の注入均一化が可能であり、また、病巣の大きさに合わせてラックピニオン(繰り出し機構)の回転を操作することで病巣内の注入位置を調整することも可能である。また、この局注器または注射針を用いて光増感剤を局注することにより、光増感剤が癌組織のみに投与されるため、投与量が少なくて済む等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光線力学的療法(PDT)による治療の過程で治療状況を高い信頼性で評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
初めに、本発明を想到するに到った経緯について説明する。本発明者は、高感度な共焦点蛍光顕微鏡システムを用いてPDTによる細胞死を観察しているときに、細胞から得られる新しい蛍光の推移を見つけた。すなわち、現在において癌患者の治療に一般的に使用されている光増感剤であるフォトフリン(Axcan Scandipharm社供給)をHeLa腫瘍細胞に投与し、このHeLa腫瘍細胞に光を照射すると、最初はフォトフリン由来の赤色蛍光が発生し、やがて赤色蛍光の減衰が進むとともに緑色蛍光が現れて増大し、光照射が更に進行すると赤色蛍光および緑色蛍光の双方が減光し消滅する現象を見つけた。また、この緑色蛍光は、カルシウムイオンが関与して現れると考えられ、細胞死に応じてミトコンドリア及び細胞膜に強く得られることを見いだした。
【0027】
さらに、フォトフリンを投与したHeLa担癌マウスを用いたPDTの実験でも同様の現象を確認した。すなわち、光照射の初期にはフォトフリン由来の赤色蛍光が発生し、やがて緑色蛍光が出現し、光照射が更に進行すると赤色蛍光および緑色蛍光の双方が減光し消滅する現象を見つけた。本発明者は、この現象に関する知見に基づいて、患者のPDT治療の推移を実時間的に把握して、治療効果の向上に寄与できるPDT評価方法を発明した。
【0028】
従来から、生体を光照射するときに得られるものとして自家蛍光が知られている。自家蛍光は、トリプトファン、コラーゲン、エラスティンおよびフラビン等の生体物質が光照射されるときに発生するもので、本発明に関係する細胞死に関係する緑色蛍光とは異なる。これについて図1および図2を用いて以下に説明する。
【0029】
図1は、フォトフリンが投与されていないヌードマウスのHeLa腫瘍に励起光を照射したときの自家蛍光スペクトルを示す図である。図2は、図1の自家蛍光スペクトルにおいて蛍光強度が略最大となる波長500nmでの蛍光強度の経時変化を示す図である。ここでは、ヌードマウスにHeLa腫瘍を作成し、これにフォトフリンを投与しないで、治療光として波長630nmのパルスレーザー光(照射パワー:75mW/cm)を腫瘍に照射するとともに、励起光として波長405nmのレーザー光(照射パワー:20mW/cm)を腫瘍に照射した。また、治療光照射エネルギー密度が10J/cmの整数倍を経過する度に、治療光の照射を一時的に停止して、励起光照射時の自家蛍光スペクトルを測定した。図1(a)は、治療光照射エネルギー密度が0,10,20,30,40,50J/cmそれぞれの場合の自家蛍光スペクトルを示す。また、図1(b)は、治療光照射エネルギー密度が60,70,80,90,100J/cmそれぞれの場合の自家蛍光スペクトルを示す。
【0030】
この自家蛍光は、波長450nmから長波長側に延びる大きな帯域で出現し、波長500nm付近に最大強度を有していて、治療光照射に対して長時間に亘って一定の強度を示し安定であった。また、治療光照射エネルギー密度が0,10,20,30,40,50,60,70,80,90,100J/cmと経過しても、蛍光スペクトルの形状および強度は共に略一定であった(図1)。また、蛍光強度が略最大となる波長500nmでの蛍光強度変化は、0〜100J/cmの治療光照射範囲では、±6%の揺らぎの範囲で略一定であった(図2)。
【0031】
これに対して、図3は、フォトフリンが投与されたヌードマウスのHeLa腫瘍に励起光を照射したときの蛍光スペクトルを示す図である。ここでは、HeLa担癌ヌードマウスにフォトフリン25mg/kgを投与して、治療光として波長630nmのパルスレーザー光(照射パワー:75mW/cm)を腫瘍に照射するとともに、励起光として波長405nmのレーザー光(照射パワー:20mW/cm)を腫瘍に照射した。また、治療光照射エネルギー密度が10J/cmの整数倍を経過する度に、治療光の照射を一時的に停止して、励起光照射時の蛍光スペクトルを測定した。図3は、治療光照射エネルギー密度が0,10,30,50,70,90,100J/cmそれぞれの場合の自家蛍光スペクトルを示す。
【0032】
フォトフリンが投与された腫瘍に励起光を照射すると、波長630nm付近および波長690nm付近それぞれにピークを有するフォトフリンの赤色蛍光と、波長500nm付近にピークを有する緑色蛍光との、2種類の蛍光が得られた。また、図1の場合と同様に、一定エネルギーの治療光を腫瘍に照射する度に蛍光スペクトルを測定すると、図3に示されるような蛍光強度の経時変化が得られた。
【0033】
すなわち、治療光照射エネルギー密度が0J/cmであるときにはフォトフリンの赤色蛍光が強く現れるが、治療光照射につれて赤色蛍光は単調に減衰した。これに対して、波長500nm付近にピークを有する緑色蛍光は、治療光照射エネルギー密度が0J/cmから30J/cmとなるまでは増加し、その後は減少する結果となった。
【0034】
このように、フォトフリンの投与がないときに発生する自家蛍光は光照射を続けても殆ど変化しない蛍光強度であり、これに対して、フォトフリンを投与したときに得られる同波長帯に現れる蛍光強度は光照射を続けたとき初め増加した後に減少した。この蛍光強度の経時変化は培養細胞での緑色蛍光変化を反映しているものと理解できる。この緑色蛍光は、PDT死を含む腫瘍細胞や腫瘍組織から発するもので、フォトフリンが励起されて活性酸素(一重項酸素)が発生することが原因で変化したものと理解される。
【0035】
上記の如く、赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化を測定することで、PDTによる細胞死や組織死をPDT施行時に把握することができる。本発明は、このような発明者の知見に基づくものである。
【0036】
次に、本発明に係る癌治療装置および癌治療状況評価装置の実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係る癌治療装置1の外観図である。図5は、本実施形態に係る癌治療装置1の構成図である。癌治療装置1は、光増感剤が投与された癌病巣部9に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させてPDTに拠り癌治療を行うものであって、当該癌治療の進行状況を評価する癌治療状況評価装置2を含み、図4に示されるように、治療光源部10、評価装置本体20、表示部26,27、導光部31〜35および内視鏡40を備える。
【0037】
導光部31〜34は、評価装置本体20と内視鏡40との間で光(白色光、励起光、蛍光)を導光するものである。導光部35は、治療光源部10から出力された治療光を内視鏡40へ導光するものである。評価装置本体20は、白色光を発生して該白色光を導光部31に導入し、導光部32により導光されてきた光を入力して撮像し、励起光を発生して該励起光を導光部33に導入し、また、導光部34により導光されてきた蛍光を入力して強度を検出する。
【0038】
表示部26は、導光部32により導光されてきて評価装置本体20により撮像されて得られた画像を表示する。また、表示部27は、導光部34により導光されてきて評価装置本体20により検出された蛍光のスペクトルを表示する。なお、2つの表示部26,27が設けられるのではなく、1つの表示部が設けられてもよく、後者の場合には、撮像で得られた画像と蛍光スペクトルとが分割表示される。
【0039】
内視鏡40は、導光部31〜35が連結される操作部40aと、操作部40aから延設され生体内に挿入される案内管40bとを有している。案内管40b中には、導光部31〜35それぞれと光学的に接続された複数の光ガイドが挿入されていて、その先端部において光(治療光、白色光、励起光、蛍光)を入射することができる。なお、導光部31〜35は例えば光ファイバケーブルからなるのが好適であり、案内管40b内の各光ガイドは例えば光ファイバからなるのが好適である。
【0040】
より具体的な構成として、図5に示されるように、癌治療状況評価装置2は、評価装置本体20内に設けられた白色光源部21、撮像部22、励起光源部23、検出部24および評価部25を備え、更に、表示部26,27および導光部31〜34を備える。また、癌治療装置1は、この癌治療状況評価装置2に加えて、治療光源部10、導光部35および制御部50を備える。
【0041】
白色光源部21は、白色光Lを発生し、その白色光Lを導光部31の一端に入射させる。導光部31は、この入射した白色光Lを導光し、その白色光Lを先端から外部へ出射して癌病巣部9に照射する。導光部32は、導光部31の先端から出射されて癌病巣部9へ照射された白色光Lの反射光または散乱光を先端に入射し、その光Lを導光する。撮像部22は、導光部32により導光されてきた光Lを入力して撮像するものであって、カラー画像を得ることができるものが好適であり、また、CCDカメラであるのが好適である。そして、表示部26は、撮像部22により撮像されて得られた画像を表示するものであって、カラー画像を表示することができるものが好適である。
【0042】
これら白色光源部21、撮像部22、導光部31、導光部32および表示部26は、癌病巣部9を観察するためのものである。白色光源部21による白色光出力は、連続的に行われてもよいが、他の光源(治療光源部10、励起光源部23)のパルス発光タイミングと同期して断続的に行われるのが好適であり、後者の場合には、制御部50から出力されるトリガー制御信号Triggerに基づいて動作するチョッパが設けられるのが好適である。
【0043】
励起光源部23は、癌病巣部9に投与された光増感剤を励起し得る波長λの励起光Lを発生し、その励起光Lを導光部33の一端に入射させる。励起光源部23はレーザ光源を含むのが好適である。導光部33は、この入射した励起光Lを導光し、その励起光Lを先端から外部へ出射して癌病巣部9に照射する。導光部34は、導光部33の先端から出射された励起光Lが癌病巣部9へ照射されたことに伴って癌病巣部9で発生した光Lを先端に入射し、その光Lを導光する。検出部24は、導光部34により導光されてきた光Lを入力して、そのうちの赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度を検出する。評価部25は、検出部24により検出された赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する。また、表示部27は、この蛍光スペクトルを表示する。
【0044】
励起光源部23による励起光出力および検出部24による蛍光検出は、連続的に行われてもよいが、断続的に行われるのが好適であり、後者の場合には制御部50から出力される制御信号に基づいて動作する。また、導光部33および導光部34は、各々の先端(癌病巣部9の側の端部)において束ねられているのが好適である。また、検出部24は、上記の赤色蛍光および緑色蛍光に加えて、一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する例えば波長1270nmを中心とする光をも検出するとともに、評価部25は、検出部24により検出された赤色蛍光,緑色蛍光および波長1270nm光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価するのも好適である。
【0045】
治療光源部10は、光増感剤が投与された癌病巣部9において一重項酸素を発生させ得る波長λの治療光Lを発生し、その治療光Lを導光部35の一端に入射させる。治療光源部10はレーザ光源を含むのが好適である。導光部35は、この入射した治療光Lを導光し、その治療光Lを先端から外部へ出射して癌病巣部9に照射する。治療光源部10による治療光出力は、連続的に行われてもよいが、断続的に行われるのが好適であり、後者の場合には制御部50から出力される制御信号に基づいて動作する。
【0046】
制御部50は、治療光源部10、白色光源部21および励起光源部23それぞれにおける光出力タイミングを制御し、検出部24における蛍光検出タイミングを制御し、評価部25による評価結果を入力する。また、制御部50または評価部25は、赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化測定結果に基づいて、各々の強度が所定値以下となったときに治療光源部10からの治療光Lの出力を終了させる。なお、このような治療光出力を自動終了させる機能が設けられなくてもよく、赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が所定値以下となったときに、その旨の表示が為されるようにして、その表示を受けた医師または装置操作者が治療光源部10の出力を終了させるようにしてもよい。
【0047】
図6は、本実施形態に係る癌治療状況評価装置2に含まれる検出部24の構成の一例を示す図である。この図に示される検出部24は、癌病巣部9から導光部34を経て到達した光を分光する分光器241と、この分光器241による分光像を撮像する撮像部242と、を有する。撮像部242はCCDカメラであるのが好適である。このように構成される検出部24では、この撮像部242による撮像により得られたスペクトルに基づいて、赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が検出される。
【0048】
図7は、本実施形態に係る癌治療状況評価装置2に含まれる検出部24の構成の他の一例を示す図である。この図に示される検出部24は、癌病巣部9から導光部34を経て到達した光を分岐して第1および第2の光を出力する分岐器243と、分岐器243から出力された第1の光のうち赤色蛍光を選択的に透過させる第1光フィルタ244と、第1光フィルタ244を選択的に透過した赤色蛍光を検出する第1検出器245と、分岐器243から出力された第2の光のうち緑色蛍光を選択的に透過させる第2光フィルタ246と、第2光フィルタ246を選択的に透過した緑色蛍光を検出する第2検出器247と、を有する。このように構成される検出部24では、第1検出器245による検出に基づいて赤色蛍光の強度が検出され、また、第2検出器247による検出に基づいて緑色蛍光の強度が検出される。分岐器243としては、特に限定されないが、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、ダイクロイックプリズムなどを適用してもよい。
【0049】
PDT治療のために癌病巣部9に投与される光増感剤として、フォトフリン、5-ALA、mTHPC、Npe6、ATX-S10Na(II)、BPD-MA のうちの何れかが用いられる。
【0050】
光増感剤としてフォトフリン(Axcan Scandipharm社)を使用する場合には、治療光Lの波長λは約630nmであり、励起光Lの波長λは約405nmであり、検出されるべき緑色蛍光の波長λは約500nmであり、検出されるべき赤色蛍光の波長λは約630nmである。
【0051】
光増感剤として5-ALA(コスモ・バイオ株式会社)を使用する場合には、治療光Lの波長λは約630nmであり、励起光Lの波長λは約405nmであり、検出されるべき緑色蛍光の波長λは約500nmであり、検出されるべき赤色蛍光の波長λは約630nmである。
【0052】
光増感剤としてmTHPC(Scotia Pharmaceuticals, UK)を使用する場合には、治療光Lの波長λは約652nmであり、励起光Lの波長λは約405nmであり、検出されるべき緑色蛍光の波長λは約500nmであり、検出されるべき赤色蛍光の波長λは約650nmである。
【0053】
光増感剤としてNpe6(明治製菓株式会社)を使用する場合には、治療光Lの波長λは約664nmであり、励起光Lの波長λは約405nmであり、検出されるべき緑色蛍光の波長λは約500nmであり、検出されるべき赤色蛍光の波長λは約665nmである。
【0054】
光増感剤としてATX-S10Na(II)(株式会社光ケミカル研究所)を使用する場合には、治療光Lの波長λは約670nmであり、励起光Lの波長λは約405nmであり、検出されるべき緑色蛍光の波長λは約500nmであり、検出されるべき赤色蛍光の波長λは約670nmである。
【0055】
光増感剤としてBPD-MA(QLT INC., Canada)を使用する場合には、治療光Lの波長λは約690nmであり、励起光Lの波長λは約405nmであり、検出されるべき緑色蛍光の波長λは約500nmであり、検出されるべき赤色蛍光の波長λは約690nmである。
【0056】
これらの光増感剤は、癌細胞に取り込まれ、それぞれの波長λの治療光Lが照射されると活性酸素(一重項酸素)を生成し、この活性酸素によりミトコンドリアや細胞膜が直接的あるいは間接的に傷害されることにより細胞が死滅する。したがって、光増感剤を投与した癌病巣部9に励起光Lを照射すると、照射に従い光増感剤の蛍光(赤色蛍光)および緑色蛍光が出現し、それらの強度の経時変化は、前述したフォトフリンのときと同様な過程をたどる。よって、励起光照射時に得られる赤色蛍光強度および緑色蛍光強度それぞれの経時変化を測定することにより、PDTのモニタリングが可能となる。
【0057】
次に、図8および図9を用いて、本実施形態に係る癌治療装置1および癌治療状況評価装置2の動作について説明するとともに、本実施形態に係る癌治療方法および癌治療状況評価方法についても説明する。図8は、治療光源部10から治療光Lが断続的に出力される場合の癌治療装置1の動作を説明するタイミングチャートである。図9は、治療光源部10から治療光Lが連続的に出力される場合の癌治療装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【0058】
図8に示されるように、治療光源部10から治療光Lが断続的に出力される場合の癌治療装置1の動作は以下のとおりである。治療光源部10は、制御部50から出力される一定周期Tであってパルス幅Tのトリガー制御信号を入力し、トリガー制御信号の立ち上がり時刻からパルス幅T10の治療光Lを出力する。白色光源部21は、トリガー制御信号の立ち上がり時刻から一定期間T21だけ白色光Lを出力する。励起光源部23および検出部24は、トリガー制御信号の立ち上がりから一定時間T241だけ経過した時刻から一定期間T242だけ動作する。励起光源部23および検出部24の動作期間T242は、治療光源部10の出力期間T10と重ならず、白色光源部21の出力期間T21とも重ならない。
【0059】
例えば、トリガー制御信号のパルス周期Tは25msecであり、トリガー制御信号のパルス幅Tは10μsecであり、治療光源部10から出力される治療光Lのパルス幅T10は5nsecであり、白色光源部21の出力期間T21は10msecであり、トリガー制御信号の立ち上がり時刻から検出部24動作開始時刻までの時間T241は15msecであり、励起光源部23および検出部24の動作期間T242は5msecである。
【0060】
トリガー制御信号の立ち上がり時刻から始まる各周期Tにおいて、その周期開始時刻からパルス幅T10の治療光Lが治療光源部10から出力され、その治療光Lは導光部35により導光されて癌病巣部9に照射される。癌病巣部9に投与された光増感剤に治療光Lが照射されることで癌治療が行われる。
【0061】
また、各周期Tにおいて、その周期開始時刻から始まる一定期間T21の間、白色光Lが白色光源部21から出力され、その白色光Lは導光部31により導光されて癌病巣部9に照射され、また、この照射により生じた反射光または散乱光は導光部32により導光されて撮像部22により撮像される。そして、撮像部22による撮像により得られた画像は表示部26により表示される。なお、白色光Lが白色光源部21から出力されている期間T21の間、励起光源部23から励起光Lは出力されず、また、検出部24による光検出は行われない。
【0062】
また、各周期Tにおいて、その周期開始時刻から一定時間T241だけ経過した時刻から一定期間T242の間、励起光Lが励起光源部23から出力され、その励起光Lは導光部33により導光されて癌病巣部9に照射され、また、この照射により生じた蛍光Lは導光部34により導光されて検出部24により強度が検出される。なお、励起光Lが励起光源部23から出力されている期間T242の間、治療光源部10から治療光Lは出力されず、また、白色光源部21から白色光Lは出力されない。
【0063】
以上のような周期T毎の動作が繰り返されることで、PDTにより癌病巣部9の治療が行われ、また、その癌治療の進行に応じて赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が経時変化する。すなわち、癌治療を始めた当初は、光増感剤由来の赤色蛍光が発生し、やがて赤色蛍光の減衰が進むとともに緑色蛍光が現れて増大し、治療が更に進行すると赤色蛍光および緑色蛍光の双方が減光し消滅する。このようにして、評価部25において、検出部24により検出された蛍光強度の経時変化に基づいて、癌病巣部9における治療の進行状況が評価される。そして、赤色蛍光および緑色蛍光の双方の強度が所定値以下となったときに、治療光源部10からの治療光Lの出力が停止され、また、励起光源部23からの治療光Lの出力も停止される。
【0064】
一方、図9に示されるように、治療光源部10から治療光Lが連続的に出力される場合の癌治療装置1の動作は以下のとおりである。白色光源部21は、制御部50から出力される一定周期T(=T)であってパルス幅Tのトリガー制御信号を入力し、トリガー制御信号の立ち上がり時刻から一定期間T21だけ白色光Lを出力する。励起光源部23および検出部24は、周期T(=T)毎ではなく、2周期(T+T)に1回の割合で、トリガー制御信号の立ち上がりから一定時間T241だけ経過した時刻から一定期間T242だけ動作する。励起光源部23および検出部24の動作期間T242は、白色光源部21の出力期間T21と重ならない。
【0065】
例えば、トリガー制御信号のパルス周期T(=T)は25msecであり、トリガー制御信号のパルス幅Tは10μsecであり、白色光源部21の出力期間T21は10msecであり、トリガー制御信号の立ち上がり時刻から検出部24動作開始時刻までの時間T241は15msecであり、励起光源部23および検出部24の動作期間T242は5msecである。
【0066】
治療光Lは、治療光源部10から連続的に出力され、導光部35により導光されて癌病巣部9に照射される。癌病巣部9に投与された光増感剤に治療光Lが照射されることで癌治療が行われる。
【0067】
また、各周期T(=T)において、その周期開始時刻から始まる一定期間T21の間、白色光Lが白色光源部21から出力され、その白色光Lは導光部31により導光されて癌病巣部10に照射され、また、この照射により生じた反射光または散乱光は導光部32により導光されて撮像部22により撮像される。そして、撮像部22による撮像により得られた画像は表示部26により表示される。なお、白色光Lが白色光源部21から出力されている期間T21の間、励起光源部23から励起光Lは出力されず、また、検出部24による光検出は行われない。
【0068】
また、或る周期Tにおいて、その周期開始時刻から一定時間T241だけ経過した時刻から一定期間T242の間、励起光Lが励起光源部23から出力され、その励起光Lは導光部33により導光されて癌病巣部9に照射され、また、この照射により生じた蛍光Lは導光部34により導光されて検出部24により強度が検出される。なお、励起光Lが励起光源部23から出力されている期間T242の間、白色光源部21から白色光Lは出力されない。
【0069】
一方、励起光Lが励起光源部23から出力された期間Tに続く次の期間Tにおいては、励起光源部23から励起光Lが出力されることなく、検出部24による光検出が行われる。このような周期Tと周期Tとが交互に行われる。そして、周期Tにおける検出部24による検出結果から、その周期Tの前または後の周期Tにおける検出部24による検出結果が差し引かれることで、癌病巣部9への励起光Lの照射に伴って発生した蛍光の強度が得られる。
【0070】
以上のような2周期毎の動作が繰り返されることで、PDTにより癌病巣部9の治療が行われ、また、その癌治療の進行に応じて赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が経時変化する。すなわち、癌治療を始めた当初は、光増感剤由来の赤色蛍光が発生し、やがて赤色蛍光の減衰が進むとともに緑色蛍光が現れて増大し、治療が更に進行すると赤色蛍光および緑色蛍光の双方が減光し消滅する。このようにして、評価部25において、検出部24により検出された蛍光強度の経時変化に基づいて、癌病巣部9における治療の進行状況が評価される。そして、赤色蛍光および緑色蛍光の双方の強度が所定値以下となったときに、治療光源部10からの治療光Lの出力が停止され、また、励起光源部23からの励起光Lの出力も停止される。
【0071】
PDTにおいて、光増感剤が投与された癌病巣部9に治療光Lが照射されることにより一重項酸素が発生する。この照射により光増感剤が光励起され、そのエネルギーが癌組織中に存在する酸素に伝達され、エネルギー伝達を受けた酸素は基底状態の三重項酸素から活性度の高い一重項酸素になる。一重項酸素の酸化作用により癌細胞や癌組織が壊死に至ることで癌治療が行われるものである。一重項酸素が緩和して元の三重項酸素に戻るときに波長1270nmの近赤外光が放出されるので、PDT施行中に、この近赤外光を検出して測定すれば、一重項酸素の発生量の推移を知ることが可能となる。
【0072】
PDT施行中に前記した赤色蛍光および緑色蛍光の他に、一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する波長ピーク1270nm光の強度の時間推移をも観察することにより、より精度の高いPDTモニタリングを実現することができる。この波長1270nm光強度の推移は特に癌組織中の酸素量のモニタリングに寄与できる。赤色蛍光が相当量得られているのに波長1270nm光の減衰が大きいときには、組織中に酸素量が少ないことが予想され、これはPDTによる血管閉塞による酸素供給の低減が予想される。この場合、不完全な治療結果となるので、この対策として治療光照射を一旦停止し癌組織の酸素供給回復を待って治療光照射を再開すれば、治療効果の増加が期待できる。
【0073】
図6に示された光検出部24の構成において、波長1270nm光を検出するには、分光器241により波長1270nm光をも分光出力し、スペクトル表示あるいはその出力を数値表示すればよい。この場合、図8に示されたタイミングチャートにおいて、トリガー制御信号の立ち上がり時刻より遅れたゲート信号(一例として、トリガー制御信号より5μsec遅れて50μsec間続く信号)の間だけで波長1270nm光を検出する。また、白色光Lの照射をこのゲート信号時間と重ならないようにするために、トリガー制御信号の開始から1msec程度だけ遅らせることが必要である。
【0074】
次に、本実施形態に係る癌治療装置および方法ならびに癌治療状況評価装置および方法において用いるのに好適な局注器、導光部および注射針それぞれについて説明する。
【0075】
通常、光増感剤の投与は静脈注射(静注)により行われるが、投与された光増感剤は、全身に回り、本来必要な癌組織以外の正常組織にも集積する。このために皮膚に集積した光増感剤により光線過敏症等の副作用が発生し、患者はこの対処のために長期の入院を強いられる。光増感剤は正常組織よりも癌組織に選択的に集積する特性を持つとはいっても、癌組織は体全体のわずかな部分にすぎず、投与された光増感剤は癌組織以外の組織にも存在することになり、投与の効率は悪い。この問題を解決するためには、光増感剤を癌組織に選択的に投与すればよい。
【0076】
図10は、光増感剤を癌組織に選択的に投与するときに好適に用いられる本実施形態に係る局注器60の断面図である。この局注器60は、複数の細径管61、固定締め部62、チューブ63、および、ラックピニオン64を備える。複数の細径管61は、各々の先端が斜めにカットされていて注射針の役目を果たすものであり、ステンレス鋼からなるのが好適である。固定締め部62は、複数の細径管61それぞれの他端を互いに固定していて、チューブ63に固定された操作部65に対してラックピニオン64により結合されている。チューブ63は、内視鏡40の鉗子孔に挿入できるように外形2mmであるのが好適であり、フッ素樹脂からなるのが好適であり、特に、テフロン(登録商標)からなるのが好適である。
【0077】
また、複数の細径管61は、チューブ63の内部に収納され、繰り出し手段としてのラックピニオン64により、チューブ63の軸方向に移動され、先端がチューブ63から外部へ繰り出される。また、複数の細径管61それぞれは、先端部分がチューブ63から外部へ繰り出されたときに拡がるように剛性が付与されている。チューブ63の先端には例えばステンレス鋼製の先端金属66が設けられていて、細径管61がスムーズに外側に曲がるようになっている。
【0078】
PDT施行の医師は、この局注器60を内視鏡40の鉗子孔に挿入し、ラックピニオン64の回転により細径管61を病巣部9へ向かって繰り出して刺入し、病巣部9へ光増感剤を注入する。このような局注器60を用いることにより、通常の1本の注射器による注入に比べて、病巣内の広い範囲の複数箇所で光増感剤を注入することができるため、光増感剤の注入均一化が可能であり、また、病巣の大きさに合わせてラックピニオン64の回転を操作することで病巣内の注入位置を調整することも可能である。
【0079】
光増感剤を癌組織内で局注すると、時間の経過につれて光増感剤は組織内に拡散浸透し、広い範囲に分布した状態をつくることができる。この時間に治療光Lを照射すれば広がりと大きさを持つ癌組織の治療が可能となる。
【0080】
図11は、深部の癌を治療するときに好適に用いられる本実施形態に係る注射針およびバンドル光ファイバの断面図である。深部の癌を治療するときには、超音波やX線による監視の下で、癌組織9に注射針72を挿入して光増感剤を局注する。すなわち、樹脂製のカテーテル(留置針)71に挿入された注射針72を癌組織に刺入して、光増感剤を癌組織9に注入する(同図(a))。次いで、カテーテル71を残して注射針72を撤去し、治療光照射時にバンドル光ファイバー73をカテーテル71内に挿入する(同図(b))。
【0081】
バンドル光ファイバー73は、前述の励起用導光部33,治療用導光部35および検出用導光部34が先端部において束ねられたものであり、先端に設けられたディフューザー(散乱部)74を介して、導光部35により導光された治療光Lを癌組織9内に照射するとともに、導光部33により導光された励起光Lをも癌組織9内に照射し、また、組織9から発せられる光Lを集めて導光部34により検出部24に送ることができる。
【0082】
図12は、バンドル光ファイバー73の先端部の構成を示す図である。同図(a)は横断面図を示し、同図(b)は縦断面図を示す。バンドル光ファイバー73は、治療用導光部としての太径石英ファイバー35と、これを取り囲んで、励起用導光部としての複数(図では4本)の細径光ファイバー33と、検出用導光部としての複数(図では4本)の細径光ファイバー34とを含む。励起用導光部としての細径光ファイバー33と、検出用導光部としての細径光ファイバー34とは、治療用導光部としての太径石英ファイバー35の周りに交互に配置されている。
【0083】
光ファイバー35は、石英ガラスの先端に散乱性のチューブ81がかぶせられ、そのチューブ81の先端に先端チップ83が取り付けられている。また、複数の細径光ファイバー33,34それぞれは、石英ガラスの先端に散乱性のチューブ82がかぶせられ、そのチューブ82の先端に先端チップ84が取り付けられている。チューブ81,82および先端チップ83,84は、図11中のディフューザー74を構成している。
【0084】
先端チップ83,84は光散乱性を有していて光を散乱させることができ、また、チューブ81,84も光を散乱させることができることから、結果として、石英ファイバー先端と先端チップとの間の空間が円柱状の散乱体となり、ここから光を周囲に散乱させて出射することができ、また、外部からの光を集めることができる。先端チップ83,84は乳白色の樹脂からなるのが好ましい。
【0085】
このようにして深部の癌組織に光増感剤を局注し、その後に治療光を照射してPDTを行い、その施行中に蛍光や波長1270nm光を含む近赤外光を検出して治療のモニタリングをすることができる。
【0086】
図13は、注射針72の構成を示す図である。同図(a),(b)は、注射針72の軸に垂直な2方向それぞれから見た図を示す。この図に示されるように、注射針72は、金属パイプの先端が斜めにカットされていて、その金属パイプの側面に1以上の貫通孔72aが注射口として設けられている。通常の先端部に注射口を1つだけ持つ注射針に比べ、この注射針72は、癌組織中に光増感剤を分散化できることができる点に特長がある。例えば、注射針72の外径は1.5mmであり、注射針72の内径は1.0mmであり、各貫通孔72aの直径は0.6mmであり、軸方向に沿った貫通孔72aの配置の間隔は例えば5mmである。貫通孔72aの直径、個数および配置間隔は、治療する癌組織の大きさにより適切に設定されることが望ましい。
【0087】
光増感剤を局注することにより、光増感剤が癌組織のみに投与されるため、投与量が少なくて済み、肝臓や腎臓等の代謝排泄系への負担が少なくなる。光線過敏症の発症も防ぐことができるために、早期の退院が可能となり、医療費の軽減につながり、医療経済上のメリットが大きい。
【0088】
以上に詳細に説明したとおり、本実施形態では、病巣を光照射するときに病巣から得られる蛍光を利用する。治療光照射の初期には、発生する蛍光としては光増感剤の赤色蛍光が主であるが、治療光照射が進行するにつれ、活性酸素による細胞・組織傷害に応じた緑色蛍光が得られる。更に治療光照射が進むと赤色蛍光および緑色蛍光の双方は減衰し消滅する。
【0089】
本発明者たちは、緑色蛍光の出現にはカルシウムイオンが関与していて、PDTによる細胞破壊に応じて緑色蛍光が得られることを、細胞実験や動物実験で得られる蛍光を精細に観察して確認した。赤色蛍光は、光増感剤が適切に光照射により励起されていることの現れであり、また、緑色蛍光は、治療光照射が更に進行して細胞が死滅し始めていることの現れであり、2つの蛍光が減衰し消滅することは、PDTにより治療が適切に行われたことを意味するものとして判断することができる。
【0090】
赤色蛍光強度および緑色蛍光強度がある所定値(これは例えば実際の治療結果に対応させて決められる。)以下に低下する時点で、治療光照射を停止させれば、それ以上の治療光照射は治療効果に関係ないため、患者や医師の負担を軽減させることができる。また、赤色蛍光や緑色蛍光が得られないときには、警告を出すようにすれば、これにより治療者(医師)は、患部の状況(出血、汚れ等)や患者背景(前治療歴等)等のPDT治療を妨げる要因を検討することができる
更に、PDT施行時に癌組織から発せられる一重項酸素由来の波長1270nm近赤外光を検出し、その強度をモニタすれば、更に精度の高いPDTのモニタリングが可能となる。PDTは、光増感剤を光照射するときに発生する一重項酸素の酸化作用により治療が行われるものであり、一重項酸素の発生を直接的にモニタすることは、PDTによる治療結果を予測する上で重要である。本実施形態では、上記蛍光および一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する波長1270nm光の時間推移をモニタして、PDT治療を完全にする上で有用であり、PDTの信頼性向上に寄与するものである。
【0091】
光増感剤を静注しないで癌組織に局注すれば、光増感剤の正常組織に及ぼす副作用を軽減できる。本実施形態により、表在性癌や深部の癌に対して光増感剤局注が可能となり、しかも、励起光照射している癌組織で発する蛍光や一重項酸素由来1270nm光を検出することが可能であり、本実施形態の趣旨であるPDTのモニタリングがこれらの癌で可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】フォトフリンが投与されていないヌードマウスのHeLa腫瘍に励起光を照射したときの自家蛍光スペクトルを示す図である。
【図2】図1の自家蛍光スペクトルにおいて蛍光強度が略最大となる波長500nmでの蛍光強度の経時変化を示す図である。
【図3】フォトフリンが投与されたヌードマウスのHeLa腫瘍に励起光を照射したときの蛍光スペクトルを示す図である。
【図4】本実施形態に係る癌治療装置1の外観図である。
【図5】本実施形態に係る癌治療装置1の構成図である。
【図6】本実施形態に係る癌治療状況評価装置2に含まれる検出部24の構成の一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る癌治療状況評価装置2に含まれる検出部24の構成の他の一例を示す図である。
【図8】治療光源部10から治療光Lが断続的に出力される場合の癌治療装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】治療光源部10から治療光Lが連続的に出力される場合の癌治療装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】本実施形態に係る局注器60の断面図である。
【図11】本実施形態に係る注射針およびバンドル光ファイバの断面図である。
【図12】バンドル光ファイバー73の先端部の構成を示す図である。
【図13】注射針72の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1…癌治療装置、2…癌治療状況評価装置、9…癌病巣部、10…治療光源部、20…評価装置本体、21…白色光源部、22…撮像部、23…励起光源部、24…検出部、25…評価部、26,27…表示部、31〜35…導光部、40…内視鏡、50…制御部、60…局注器、71…カテーテル、72…注射針、73…バンドル光ファイバ、74…ディフューザー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感剤が投与された癌病巣部(ヒトを除く。)に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて癌治療を行う光線力学的療法に拠る当該癌治療の進行状況を評価する方法であって、
癌治療の過程において、前記光増感剤を励起し得る波長の励起光を癌病巣部に照射し、励起光照射に伴い癌病巣部から発生する赤色蛍光および緑色蛍光を検出して、これら赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する、
ことを特徴とする癌治療状況評価方法。
【請求項2】
癌治療の過程において、赤色蛍光および緑色蛍光に加えて一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光をも検出して、これら赤色蛍光,緑色蛍光および一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する、ことを特徴とする請求項1記載の癌治療状況評価方法。
【請求項3】
前記光増感剤が、フォトフリン、5-ALA、mTHPC、Npe6、ATX-S10Na(II)、BPD-MA のうちの何れかである、ことを特徴とする請求項1記載の癌治療状況評価方法。
【請求項4】
光増感剤が投与された癌病巣部(ヒトを除く。)に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて光線力学的療法に拠り癌治療を行うとともに、この癌治療の過程において請求項1〜3の何れか1項に記載の癌治療状況評価方法により癌治療の進行状況を評価する、ことを特徴とする癌治療方法。
【請求項5】
前記癌治療状況評価方法による評価の際に赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が所定値以下となったときに癌病巣部への治療光の照射を終了させることを特徴とする請求項4記載の癌治療方法。
【請求項6】
治療光を癌病巣部に断続的に照射し、
治療光が癌病巣部に照射されていない期間に赤色蛍光および緑色蛍光を検出する、
ことを特徴とする請求項4記載の癌治療方法。
【請求項7】
治療光を癌病巣部に連続的に照射し、
励起光が癌病巣部に照射されていない期間に光を検出するとともに、励起光が癌病巣部に照射されている期間に光を検出して、これら検出した光の強度の差に基づいて赤色蛍光および緑色蛍光を検出する、
ことを特徴とする請求項4記載の癌治療方法。
【請求項8】
光増感剤が投与された癌病巣部に所定波長の治療光を照射し一重項酸素を発生させて癌治療を行う光線力学的療法に拠る当該癌治療の進行状況を評価する装置であって、
前記光増感剤を励起し得る波長の励起光を癌病巣部に照射する励起光照射手段と、
前記励起光照射手段による励起光照射に伴い癌病巣部から発生する赤色蛍光および緑色蛍光を検出する検出部と、
前記検出部により検出された赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する評価部と、
を備えることを特徴とする癌治療状況評価装置。
【請求項9】
前記検出部が、赤色蛍光および緑色蛍光に加えて一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光をも検出し、
前記評価部が、前記検出部により検出された赤色蛍光,緑色蛍光および一重項酸素が基底状態の三重項酸素に失活する際に発生する光それぞれの強度の経時変化に基づいて癌治療の進行状況を評価する、
ことを特徴とする請求項8記載の癌治療状況評価装置。
【請求項10】
癌病巣部を照明するための白色光を癌病巣部に照射する白色光照射手段を更に備えることを特徴とする請求項8記載の癌治療状況評価装置。
【請求項11】
前記検出部が、癌病巣部から到達した光を分光する分光器と、この分光器による分光像を撮像する撮像部と、を有することを特徴とする請求項8記載の癌治療状況評価装置。
【請求項12】
前記検出部が、癌病巣部から到達した光を分岐して第1および第2の光を出力する分岐器と、前記分岐器から出力された第1の光のうち赤色蛍光を選択的に透過させる第1光フィルタと、前記第1光フィルタを選択的に透過した赤色蛍光を検出する第1検出器と、前記分岐器から出力された第2の光のうち緑色蛍光を選択的に透過させる第2光フィルタと、前記第2光フィルタを選択的に透過した緑色蛍光を検出する第2検出器と、を有することを特徴とする請求項8記載の癌治療状況評価装置。
【請求項13】
前記励起光照射手段が、励起光を導光して一端から外部へ該励起光を出射する励起用導光部を有し、
前記検出部が、外部から一端に光を入射して導光する検出用導光部を有する、
ことを特徴とする請求項8記載の癌治療状況評価装置。
【請求項14】
前記励起用導光部および前記検出用導光部が前記一端側において束ねられていることを特徴とする請求項13記載の癌治療状況評価装置。
【請求項15】
前記励起用導光部および前記検出用導光部それぞれの前記一端に入出射する光を散乱させる散乱部が設けられていることを特徴とする請求項13記載の癌治療状況評価装置。
【請求項16】
光増感剤が投与された癌病巣部において一重項酸素を発生させ得る波長の治療光を癌病巣部に照射する治療光照射手段と、
この癌治療の過程において癌治療の進行状況を評価する請求項8〜15の何れか1項に記載の癌治療状況評価装置と、
を備えることを特徴とする癌治療装置。
【請求項17】
前記癌治療状況評価装置による評価の際に赤色蛍光および緑色蛍光それぞれの強度が所定値以下となったときに前記治療光照射手段による癌病巣部への治療光の照射を終了させる制御部を更に備えることを特徴とする請求項16記載の癌治療装置。
【請求項18】
前記治療光照射手段が、治療光を癌病巣部に断続的に照射し、
前記検出部が、治療光が癌病巣部に照射されていない期間に赤色蛍光および緑色蛍光を検出する、
ことを特徴とする請求項16記載の癌治療装置。
【請求項19】
前記治療光照射手段が、治療光を癌病巣部に連続的に照射し、
前記検出部が、励起光が癌病巣部に照射されていない期間に光を検出するとともに、励起光が癌病巣部に照射されている期間に光を検出して、これら検出した光の強度の差に基づいて赤色蛍光および緑色蛍光を検出する、
ことを特徴とする請求項16記載の癌治療装置。
【請求項20】
各々の先端が斜めにカットされた複数の細径管と、
前記複数の細径管それぞれの他端を互いに固定する固定締め部と、
前記複数の細径管を内部に収納するチューブと、
前記複数の細径管を前記チューブの軸方向に移動させて、前記複数の細径管それぞれの先端を前記チューブから外部へ繰り出す繰り出し手段と、
を備えることを特徴とする局注器。
【請求項21】
前記複数の細径管それぞれの先端部分が前記チューブから外部へ繰り出されたときに拡がるように剛性が付与されていることを特徴とする請求項20記載の局注器。
【請求項22】
前記チューブがフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項20記載の局注器。
【請求項23】
前記繰り出し手段がラックピニオン機構を有することを特徴とする請求項20記載の局注器。
【請求項24】
金属パイプの先端が斜めにカットされ、その金属パイプの側面に1以上の貫通孔が設けられている、ことを特徴とする注射針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−167046(P2006−167046A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361814(P2004−361814)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(504458943)
【出願人】(504459375)
【出願人】(504459386)
【出願人】(504458965)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】