説明

癌腫の診断

【課題】悪性症状(例えば癌腫)の検出および治療のための改良型診断マーカーおよび治療用標的を提供する。
【解決手段】可溶性および細胞表面形態のHE4aポリペプチドは、例えば卵巣癌において過剰発現される、HE4aをコードする核酸配列。ならびにこのような被験体からの試料中の可溶性および/または細胞表面形態で天然に存在する分子とのHE4aポリペプチドに特異的な抗体の反応性を検出する方法。HE4aヌクレオチド配列を用いたハイブリダイゼーションスクリーニングにより、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、悪性症状(例えば癌)に、特にある種の癌腫(例えば卵巣癌)を診断するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌は、広範な疾患を包含しており、世界中で4人に約1人が罹患している。癌の悪影響の重症度は顕著であり、医療政策および手法に、ならびに一般的に社会に影響を及ぼす。多くの種類の癌の特質は悪性細胞の急速かつ非調節性増殖であるため、癌へのアプローチ改善に際しての中心となる問題は、早期の検出および診断の必要性である。悪性症状の存在を診断するための正確で、信頼できる判定基準を開発するために、多数の試みがなされてきた。特に、癌細胞により独自に発現されるかまたは悪性症状を有する被験体において顕著に高レベルで存在する腫瘍関連抗原として周知である血清学的に限定された抗原性マーカーの使用に向けて努力がなされてきた。
【0003】
しかしながら腫瘍関連抗原発現の高不均質性、例えば癌抗原の極端な多様性のために、癌診断に有用である付加的な腫瘍マーカーが必要である。癌関連抗原と反応性の多数のモノクローナル抗体が周知である(例えばPapsidero,1985 Semin.Surg.Oncol.1:171,Allum et al.,1986 Surg.Ann.18:41参照)。これらのそしてその他のに記載されたモノクローナル抗体は、種々の異なる癌関連抗原、例えば糖タンパク質、糖脂質およびムチンと結合する(例えばFink et al.,1984 Prog.Clin.Pathol.9:121;米国特許第4,737,579号;米国特許第4,753,894号;米国特許第4,579,827号;米国特許第4,713,352号参照)。多数のこのようなモノクローナル抗体は、所定の細胞系列または組織型から生じるある腫瘍上では制限発現を示すが、他の腫瘍では示さない腫瘍関連抗原を認識する。
【0004】
特定の種類の悪性疾患を同定するために有用であるようである腫瘍関連抗原の例は相対的にほんのわずかである。例えばモノクローナル抗体B72.3は、多数の異なる癌、例えばすべてでないがほとんどの卵巣癌および圧倒的大多数の非小細胞肺癌、結腸癌および乳癌で選択的に発現される高分子量(>10Da)腫瘍関連ムチン抗原と特異的に結合する(例えばJohnston,1987 Acta Cytol.1:537;米国特許第4,612,282号参照)。それにもかかわらず、腫瘍の外科的切除後に細胞関連腫瘍マーカー、例えばB72.3により認識されるムチン抗原は、実質的腫瘍塊の蓄積前の悪性症状の早期検出が好ましい診断スクリーニングに対する限定的有用性を有し得る。
【0005】
侵襲性外科手術が通常は蓄積腫瘍塊の検出後にのみ示される腫瘍関連抗原に関する外科的切除検体をスクリーニングすることによる特定種類の癌の診断に代わるものは、非侵襲性または最小侵襲性手法により被験体から得られる試料中のこのような抗原を検出するための組成物および方法を提供することである。例えば卵巣およびその他の癌腫においては、一般に、容易に得られる生物学的流体(例えば血清または粘膜分泌物)の試料中で検出可能である多数の可溶性腫瘍関連抗原が存在する。このようなマーカーのひとつは、血流中にも流出される癌関連抗原であるCA125であり、この場合それは血清中で検出可能である(例えばBast et al.,1983 N.Eng.J.Med.309:883;Lloyd et al.,1997 Int.J.Canc.71:842)。血清およびその他の生物学的流体中のCA125レベルは、卵巣およびその他の癌腫の診断および/または予後プロフィールを提供しようと努力して、他のマーカー、例えば癌胎児性抗原(CEA)、扁平上皮細胞癌抗原(SCC)、組織ポリペプチド特異的抗原(TPS)、シアリルTNムチン(STN)および胎盤アルカリ性ホスファターゼ(PLAP)のレベルと一緒に測定されてきた(例えばSarandakou et al.,1997 Acta Oncol.36:755;Sarandakou et al.,1998 Eur.J.Gynaecol.Oncol.19:73;Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17 (4B):2945;Kudoh et al.,1999 Gynecol.Obstet.Invest.47:52;Ind et al.,1997 Br.J.Obstet.Gynaecol.104:1024;Bell et al.1998 Br.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Cioffi et al.,1997 Tumori 83:594;Meier et al.1997 Anticanc.Res.17 (4B):2949;Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17 (4B):3019)。
【0006】
しかしながら血清CA125の、単独でのまたはその他の周知の指示薬と組合せた、レベル増大は、悪性疾患の、または特定の悪性疾患(例えば卵巣癌)の限定的診断を提供しない。例えば膣液および血清中のCA125、CEAおよびSCC増大は、子宮頸部癌および生殖路癌と比較して、良性婦人科学的疾患においてもっとも強く炎症と相関する(例えばMoore et al.,1998 Infect.Dis.Obstet.Gynecol.6:182;Sarandakou et al.,1997 Acta Oncol.36:755)。別の実施例として、血清CA125増大は、神経芽細胞腫にも随伴し得る(例えばHirokawa et al.,1998 Surg.Today 28:349)が、CEAおよびSCC増大はとりわけ、結腸直腸癌に随伴し得る(Gebauer et al.,1997 Anticanc.Res.17 (4B):2939)。別のマーカーである分化抗原メソテリン(mesothelin)は正常中皮細胞の表面で発現され、ある種の癌細胞、例えば上皮性卵巣腫瘍および中皮種でも発現される。メソテリンに関する組成物および方法(Chang et al.,1992 Canc.Res.52:181;Chang et al.,1992 Int.J.Canc.50:373;Chang et al.,1992 Int.J.Canc.51:548;Chang et al.,1996 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 93:136;Chowdhury et al.,1998 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95:669;Yamaguchi et al.,1994 J.Biol.Chem.269:805;Kojima et al.,1995 J.Biol.Chem.270:21984)、ならびに構造的に関連するメソテリン関連抗原(MRA;例えばScholler et al.,1999 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 96:11531参照)が当該技術分野で周知であり、例としては、WO00/50900に、ならびに米国特許出願09/513,597号に記載されたような癌の検出および療法における使用が挙げられる。したがって、用いられるべき付加的マーカー、例えば多因子診断スクリーニングに有用なマーカーがぜひとも必要であることは明らかである(例えばSarandakou et al.,1998;Kudoh et al.,1999;Ind et al.,1997参照)。
【0007】
以下でさらに詳細に記載されるように、このような付加的マーカーは、多様な機能を有する小型の酸−および熱安定性分子の異種の群を含み、ヒト精巣上体4−ジスルフィドコアタンパク質または「HE4」を含むタンパク質の「4−ジスルフィドコア」ファミリー内から有用に提供され得た(Kirchhoff et al.,1991 Biol.Reprod.45:350−357;Wang et al.,1999 Gene 229:101;Schummer et al.,1999 Gene 238:375)。4−ジスルフィドコアファミリー成員ポリペプチドのアミノ酸配列中の8つのコアシステイン残基の保存スペーシングは、緊密な、安定した構造へのこれらの分子のフォールディングを指図すると考えられる。4−ジスルフィドコアファミリーの成員の多くは、プロテアーゼ阻害剤である.しかしながらいくつかのファミリー成員、例えばHE4に関しては、機能は未だ限定的に確認されてはいない。4−ジスルフィドコアファミリーのタンパク質のその他の成員としては、Wp−タンパク質、例えばSLP−1、およびps20が挙げられ、そして4−ジスルフィドコアファミリーのタンパク質の付加的成員がいくつかの種から単離されている。これらのタンパク質は、4−ジスルフィドコアにより安定化されるいくつかの特性、例えばそれらのサイズが小さいこと、ならびにそれらの熱−および酸安定性構造を共有する。これらのタンパク質は分泌細胞により作られ、粘膜分泌物、例えば精漿、乳汁、耳下腺および子宮頸部分泌物中に見出される。
【0008】
4−ジスルフィドコアファミリーの原型分子であるWp−タンパク質は乳漿リンタンパク質としても周知であり、クローン化されている(Dandekar et al.,1982 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:3987−3991)。乳漿リンタンパク質は、約1〜2mg/mlで乳汁中で発現されるが、遺伝子が過メチル化される乳癌によっては発現されない。プロテアーゼに対する阻害活性は、乳漿リンタンパク質に関しては見出されていない。しかしながらトランスジェニック動物中の遺伝子の過剰発現は、哺乳動物肺胞細胞の発達を減損し(Burdon et al,1991 Mechanisms Dev.36:67−74)、このことは、乳汁分泌中のこのタンパク質に関する重要な役割を示唆する。別の4−ジスルフィドコアファミリータンパク質である分泌白血球プロテアーゼ阻害剤(SLP−1)はヒト子宮頸部からクローン化されたが、他の粘膜分泌物、例えば精漿および耳下腺分泌液中にも存在する(Heinzel et al,1986 Eur.J.Biochem.160:61−67)。SLP−1は、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼおよびカテプシンGの強力な阻害剤である12kDaの二ドメインタンパク質である。キモトリプシンと複合されたSLP−1の結晶構造が発表されている(Grutter et al,1988 EMBO J.7:345−351)。これらのデータは、SLP−1ドメインが独立して働き、同時に異なるプロテアーゼを阻害することを示し、そしてその2つがキモトリプシンと結合するドメイン中の小(8アミノ酸)活性部位を同定した。
【0009】
エラフィンは、このポリペプチドのアミノ酸配列を確定するためにヒト乾癬皮膚から単離された4−ジスルフィドコアファミリーの単一ドメインタンパク質成員である(Wiedow et al,1990 J.Biol.Chem.265:14791−14795)。エラフィンはエラスターゼの強力な阻害剤であるが、その他のプロテアーゼ、例えばトリプシン、キモトリプシン、カテプシンGまたはプラスミンに対する明らかな阻害活性を示さない。エラフィンのアミノ酸配列は、SLP−1のC末端領域(ドメイン1)と38%の相同性を示す。ps20タンパク質をコードする遺伝子が近年、平滑筋から単離されたが、ps20タンパク質は哺乳動物細胞中への遺伝子のトランスフェクションにより発現された(Larsen et al,1998 J.Biol.Chem.273:4574−4584)。ps20は癌細胞の増殖を抑制することが見出され、そしてps20は、増殖阻害剤としても言及されてきた。しかしながら今までのところこのタンパク質に関しては、直接的機能活性、例えばプロテアーゼの抑制は記載されていない。
【0010】
上記のように、プロテアーゼ阻害活性は、精巣上体上皮細胞で最初に同定されたHE4に関しては同定されていないが、その他の小型酸および熱安定性プロテイナーゼ阻害剤は精漿から特性化されており、精子を結合し、精子と卵の細胞外マトリクスとの相互作用を調節することにより受精能に一役を果たすと考えられた(Fitz et al.,in Proteases and Biological Controls,Reich,E.,Rifkin,D.,Shaw,E.(eds.),1975 Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.737−766;Saling,1989 Oxf.Rev.Reprod.Biol.11:339−388)。HE4 cDNAは、ヒト精巣上体から最初に単離され(Kirchhoff et al.,1991 Biol.Reprod.45:350−357)、HE4 cDNAは後に、卵巣癌から構築されたcDNAライブラリー中で高頻度で検出された(Wang et al.,1999 Gene 229:101;Schummer et al.,1999 Gene 238:375)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の理由のために、明らかに、悪性症状(例えば癌腫)の検出および治療のための改良型診断マーカーおよび治療用標的の必要性が存在する。本発明の組成物および方法は、可溶性形態でおよび/または細胞表面で天然に生じるポリペプチドを検出するためにHE4および/またはHE4関連抗原に特異的な抗体を用いて悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法を提供し、そしてその他の関連利点を提供することにより、従来技術のこれらの限界を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要約
本発明は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングするのに有用な組成物および方法に向けられる。特に本発明は、HE4aとして本明細書中で言及されるHE4ポリペプチドの可溶性および細胞表面形態、または可溶性形態で天然に生ずる、そしてHE4aポリペプチドに特異的である少なくとも1つの抗体と反応性の抗原決定基を有する HE4a分子が被験体からの生物学的試料中に検出され得る、という予期せぬ知見に関する。
【0013】
本発明の一つの局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料(被験体からの少なくとも1つの細胞を含む)を接触させることであって、それにより試料中の可溶性形態で天然に存在するかまたは特定の実施形態では細胞表面分子として存在する、少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する。実施形態によっては、生物学的試料は、血液、血清、漿液、血漿、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液、粘膜分泌物、膣分泌物、腹水、胸水、囲心腔液、腹膜液、腹腔液、培地、ならし培地または灌注液である。
【0014】
ある種の他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドは、配列番号5、7、9または11のうちのいずれか一つに記述されるアミノ酸配列を有するポリペプチドあるいはその断片または誘導体を含む。別の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチド改変体はスプライス改変体である。本発明の特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体を含み、他の実施形態では抗体は親和性精製抗体を含む。特に好ましい実施形態では、抗体はモノクローナル抗体を含む。別の実施形態では、抗体は組換え抗体を含み、別の実施形態では、抗体はキメラ抗体を含む。別の実施形態では、抗体はヒト化抗体を含む。別の実施形態では、抗体は単鎖抗体を含む。
【0015】
本発明の実施形態によっては、抗体と抗原決定基の結合の検出は、放射性核種の検出を包含する。他の実施形態では、抗体と抗原決定基の結合の検出は、蛍光体の検出を包含する。別の実施形態では、抗体と抗原決定基の結合の検出は、アビジン分子とビオチン分子の間の結合事象の検出を包含し、別の実施形態では、抗体と抗原決定基の結合の検出は、ストレプトアビジン分子とビオチン分子の間の結合事象の検出を包含する。特定の実施形態では、抗体と抗原決定基の結合の検出は、酵素反応の産物の分光光度検出を包含する。本発明の実施形態によっては、上記少なくとも1つの抗体は検出可能に標識され、一方ある種の他の実施形態では、上記少なくとも1つの抗体は検出可能に標識されず、抗体と抗原決定基の結合の検出は間接的である。
【0016】
本発明の特定の実施形態によると、悪性症状は腺癌、中皮腫、卵巣癌、膵臓癌あるいは非小細胞肺癌であり得る。
【0017】
本発明の別の局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより(i)試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること(この場合、上記試料は被験体からの細胞を含み、上記分子は上記少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有し、その抗原結合部位は、2H5、3D8または4H4であるモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に抑制する)、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより(i)試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること(この場合、上記試料は被験体からの細胞を含み、上記分子は上記抗体と反応性がある抗原決定基を有し、その抗原結合部位は、モノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する)、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供する。
【0019】
本発明のさらに別の局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、少なくとも1つのHE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより(i)試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること(この場合、上記試料は被験体からの細胞を含み、上記分子は上記少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有し、その抗原結合部位は、2H5、3D8および4H4からなる群から選択されるモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に抑制し)、上記少なくとも1つの抗原は、HE4a抗原に免疫特異的に結合する、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供する。特定の実施形態では、HE4a抗原はモノクローナル抗体3D8、2H5または4H4とも免疫特異的に反応性がある。
【0020】
別の局面に向けると、本発明は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、少なくとも1つのHE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより(i)試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること(この場合、上記試料は被験体からの細胞を含み、上記分子は上記少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有し、その抗原結合部位は、2H5または4H4であるモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に抑制し、上記少なくとも1つの抗原は、HE4a抗原に免疫特異的に結合する)、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供する。特定の実施形態では、メソテリン関連抗原は3D8とも免疫特異的に反応性がある。
【0021】
別の局面に向けると、本発明は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、少なくとも1つの固定された第一の抗体をHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合させ、それにより免疫複合体を形成させるための条件下で、そのために十分な時間、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの固定された第一の抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより試料中の可溶性形態で天然に存在する分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること、上記少なくとも1つの固定された第一の抗体と特異的に結合しない試料の構成成分を除去すること、および上記少なくとも1つの第二の抗体と上記HE4a抗原ポリペプチドの特異的結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、上記免疫複合体をHE4a抗原ポリペプチド少なくとも1つの第二の抗体と接触させること(この場合、上記少なくとも1つの第二の抗体の抗原結合部位はモノクローナル抗体2H5の免疫特異的結合を競合的に抑制しない)、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供する。
【0022】
本発明のさらに別の局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、少なくとも1つの固定された第一の抗体をHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合させ、それにより免疫複合体を形成させるための条件下で、そのために十分な時間、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの固定された第一の抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより試料中の可溶性形態で天然に存在する分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること(この場合、上記少なくとも1つの第一の抗体の抗原結合部位はモノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する)、上記少なくとも1つの固定された第一の抗体と特異的に結合しない試料の構成成分を除去すること、および上記少なくとも1つの第二の抗体と上記HE4a抗原ポリペプチドの特異的結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、上記免疫複合体をHE4a抗原ポリペプチド少なくとも1つの第二の抗体と接触させること(この場合、上記少なくとも1つの第二の抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗体2H5の免疫特異的結合を競合的に抑制しない)、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供する。
【0023】
本発明の別の局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、少なくとも1つの固定された第一の抗体をHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合させ、それにより免疫複合体を形成させるための条件下で、そのために十分な時間、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの固定された第一の抗体と被験体からの生物学的試料を接触させることであって、それにより試料中の可溶性形態で天然に存在する分子の生物学的試料中での存在を確定する、接触させること(この場合、上記少なくとも1つの第一の抗体の抗原結合部位はモノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する)、上記少なくとも1つの固定された第一の抗体と特異的に結合しない試料の構成成分を除去すること、および上記少なくとも1つの第二の抗体とHE4a抗原ポリペプチドの特異的結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、上記免疫複合体をHE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの第二の抗体と接触させること(この場合、上記少なくとも1つの第二の抗体の抗原結合部位はモノクローナル抗体2H5の免疫特異的結合を競合的に抑制しない)、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明の方法は、悪性症状の少なくとも1つの可溶性マーカーの試料中の存在を確定すること(上記マーカーはメソテリン関連抗原、癌胎児性抗原、CA125、シアリルTN、扁平上皮細胞癌抗原、組織ポリペプチド抗原あるいは胎盤アルカリ性ホスファターゼである)をさらに包含する。
【0025】
本発明の別の局面は、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法を提供することであって、抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、(i)悪性症状を有する疑いのある一次被験体からの一次生物学的試料、ならびに(ii)悪性症状を有さないことが周知である第二の被験体からの第二の生物学的試料の各々を、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と接触させることであって、それにより(i)試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、および(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の上記一次および第二の生物学的試料の各々における存在を確定する、接触させること(この場合、上記一次および第二の生物学的試料は各々、上記一次および第二の被験体からの細胞をそれぞれ含み、上記分子は、上記少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する)、および一次生物学的試料中の上記抗体と上記抗原決定基の検出可能な結合を、第二の生物学的試料中の上記抗体と上記抗原決定基の検出可能な結合のレベルと比較すること、およびそれから悪性症状の存在を検出することを包含する方法を提供することである。
【0026】
別の局面において、本発明は被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、HE4a抗原ポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体の存在を被験体からの生物学的試料中で検出することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、メソテリン(mesothelin)関連抗原ポリペプチドは、配列番号5、配列番号7、配列番号11または配列番号13のうちのいずれかに記述されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0027】
別の局面に向けると、本発明はHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル免疫グロブリン可変部を含む、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体であって、配列番号5、配列番号7、配列番号11または配列番号13のうちのいずれかに記述されるアミノ酸配列を有する抗体。特定の実施形態では、抗体は融合タンパク質であり、一方ある種の他の実施形態では、抗体は単鎖抗体である。ある種の他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドはグリコシル化ポリペプチドをさらに含む。別の実施形態では、抗体は配列番号11に記述されるHE4a抗原ポリペプチド配列と特異的に結合するが、配列番号9に記述されるポリペプチド配列とは特異的に結合せず、あるいは抗体は配列番号11に記述されるHE4a抗体ポリペプチド配列および配列番号9に記述されるポリペプチド配列と特異的に結合する。特定の実施形態において、抗体はモノクローナル抗体2H5、3D8または4H4である。
【0028】
さらに別の局面において、本発明は被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、試料中での可溶性形態で天然で存在する抗体のHE4aポリペプチドとの結合を検出するための条件下で、そのために十分な時間、被験体からの生物学的試料を検出可能に標識されたHE4aポリペプチドと接触させること、およびそれから悪性症状の存在を検出することを含む。
【0029】
別の局面に目を向けると、本発明は、配列番号5、配列番号7、配列番号11または配列番号13に記述されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであるHE4a抗原ポリペプチドをコードする核酸分子であるか、あるいはHE4a抗原ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードし、または中等度ストリンジェント条件下でHE4a抗原をコードするこのような核酸分子とハイブリダイズすることが可能な核酸分子である単離核酸分子を提供するが、この場合、単離核酸分子は、配列番号9に記述されるヌクレオチド配列からなる核酸分子ではない。特定の実施形態では、本発明は、HE4a抗原ポリペプチドをコードする核酸分子と相補的である少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0030】
他の実施形態では、本発明は、HE4a抗原ポリペプチドに融合されるポリペプチド配列を含む融合タンパク質を提供する。さらなる特定の実施形態では、融合ドメインは、免疫グロブリンあるいはその改変体または断片である。さらなる実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに融合されるポリペプチド配列は、プロテアーゼにより切断される。別の実施形態では、ポリペプチド配列は、リガンドに対する親和性を有する親和性タグポリペプチドである。
【0031】
他の実施形態では、本発明は、上記のようなHE4a抗原ポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結される少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現構築物を提供する。特定の実施形態では、プロモーターは調節されたプロモーターであり、他の特定の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドが第二の核酸配列のポリペプチド産物との融合タンパク質として発現される。さらなる実施形態では、第二の核酸配列のポリペプチド産物は免疫グロブリン定常部である。別の実施形態では、発現構築物は組換えウイルス発現構築物である。他の実施形態によると、本発明は、本明細書中に提供されるような組換え発現構築物を含む宿主細胞を提供する。1つの実施形態では、宿主細胞は原核生物細胞であり、別の実施形態では、宿主細胞は真核生物細胞である。
【0032】
別の局面では、本発明は、本明細書中に提供されるようなHE4a抗原ポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結される少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現構築物を含む宿主細胞を培養することによって、組換えHE4a抗原ポリペプチドを産生する方法を提供する。特定の実施形態では、プロモーターは調節されたプロモーターである。別の実施形態では、本発明は、組換えHE4a抗原ポリペプチドを発現するために、本明細書で提供される組換えウイルス発現構築物に感染された宿主細胞を培養することによって、組換えHE4a抗原ポリペプチドを産生する方法を提供する。
【0033】
別の実施形態では、本発明はまた、試料中のHE4a発現を検出する方法であって、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドあるいはその断片または改変体をコードする核酸配列を含む試料と接触させること、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするHE4aポリペプチドコード核酸の量を試料中で検出して、それから試料中のHE4a発現を検出することによって、試料中のHE4a発現を検出する方法を提供する。別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするHE4aポリペプチドコード核酸の量がポリメラーゼ連鎖反応を用いて確定される。別の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするHE4aポリペプチドコード核酸の量がハイブリダイゼーションアッセイを用いて確定される。別の実施形態では、試料はRNAまたはcDNA調製物を含む。
【0034】
本発明の他の特定の実施形態によれば、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体であって、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル免疫グロブリン可変部を含む抗体を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、悪性症状を治療する方法が提供される。別の実施形態では、本発明は、悪性症状を治療する方法であって、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドまたはその断片を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。さらなる特定の実施形態では、組成物は、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドまたはその断片と特異的に結合可能な抗体の患者における産生を誘導する。また、さらなる他の特定の実施形態では、組成物は、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドまたはその断片を特異的に認識可能なTリンパ球を患者において誘導する。他の特定の実施形態によれば、受胎、避妊、および/または受精能(fertility)を変更する(例えば適切な対照と比較して統計学的に有意の方法で増大または低減する)組成物および方法であって、HE4aポリペプチドあるいはその断片または改変体(例えば融合タンパク質)を投与すること、またはHE4aポリペプチドあるいはその断片または改変体と特異的に結合する免疫グロブリン可変部を含む組成物を投与することを含む、組成物および方法が提供される。ある種の他の実施形態によれば、受胎、避妊および/または受精能を変更する(例えば適切な対照と比較して、統計学的有意の方法で増大または低減する)組成物および方法であって、HE4aポリペプチドあるいはその断片または改変体(例えば融合タンパク質)を投与すること、もしくはHE4aポリペプチドあるいはその断片または改変体と特異的に結合する免疫グロブリン可変部を含む組成物を投与することを含む組成物および方法が提供される。
【0035】
本発明のこれらのおよびその他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば明らかになる。さらに、本発明のある種の局面をより詳細に記述する種々の参照文献が本明細書中に記述されており、したがってそれらのに記載内容は全て、参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】図1は、ヒト試料のパネルにおけるcDNAをコードするHE4aの実時間PCR検出を示す。
【図1B】図1は、ヒト試料のパネルにおけるcDNAをコードするHE4aの実時間PCR検出を示す。
【図2】図2は、発現HE4a融合タンパク質のウエスタンブロット分析を示す。
【図3】図3は、ELISAによる2匹の免疫マウス(1605および1734)からの血清中のHE4a−mIg融合タンパク質と反応性がある抗体の検出を表す。
【図4】図4は、ELISAを用いたハイブリドーマ上清のスクリーニングならびにHE4a特異的ハイブリドーマ抗体の検出の代表的結果を表す。
【図5】図5は、捕獲試薬として固定化HE4a特異的モノクローナル抗体3D8を、検出試薬としてビオチニル化HE4a特異的モノクローナル抗体2H5を用いた二重決定因子サンドイッチELISAによるHE4a−hIgG融合タンパク質の検出を示す。卵巣癌細胞株4007(Δ)からの上清液中の可溶性HE4aの検出も示されている。
【図6】図6は、卵巣癌患者からの連続希釈腹水中のHE4a抗原のサンドイッチELISAによる検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、一部は、HE4に非常によく似ているが、それとは異なる配列を示す、本明細書中に記載されたようなタンパク質の「4−ジスルフィドコア」ファミリーの新規の成員であるHE4aの発見に関する(Kirchhoff et al.,1991 Biol.Reproduct.45:350−357)。本明細書中に示されたように、HE4a(HE4ではない)は、甚だ予期せぬことに、ある種の悪性疾患において、例えば卵巣癌において、ならびに多数のその他のヒト組織中で、ヒト精巣上皮細胞におけるHE4の制限発現パターンとは大いに異なって、過剰発現されることが示されている(Kirchhoff et al.,1991)。本発明は、一部は、被験体中で天然に生じるHE4aポリペプチドとして本明細書中で言及されるある種の遺伝子産物の細胞表面および/または可溶性形態の検出を提供する本明細書に記載された組成物および方法から得られる意外な利点、例えばある種の癌腫(例えば卵巣癌)を有する被験体におけるこのようなポリペプチドのレベル増大にも関する。したがって本発明は、このような細胞表面および/または可溶性HE4aポリペプチドの特異的検出による被験体における悪性症状の検出および診断のための有用な組成物および方法を提供する。
【0038】
以下で詳細に記載されるように、本発明の特定の実施形態は、可溶性および細胞表面形態のHE4aおよびHE4ポリペプチド、例えばHE4およびHE4aポリペプチド抗原および融合タンパク質を含むHE4aポリペプチドに関する。ある種の他の実施形態では、本発明は、HE4aポリペプチドの断片、誘導体および/または類似体に関する。要するに、本発明の特定の実施形態によれば、被験体からの生物学的試料をヒトHE4aポリペプチドに特異的な抗体と接触させることにより、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法を提供する。HE4aポリペプチドおよびHE4a−Ig融合タンパク質の完全アミノ酸および核酸コード配列は、卵巣癌cDNA由来の核酸分子がKirchhoff et al.,(1991)により開示されたようなHE4とは別個の配列を有する発現産物をコードするという意外な観察、ならびにKirchhoff et al.により開示されたようなHE4発現が精巣上皮細胞に限定される一方、本発明の開示によるHE4a発現は卵巣癌において容易に検出可能である、というさらなる予期せぬ観察を含めて、本明細書中に開示されている。
【0039】
本明細書中に記載されているように、当業者がルーチンにそして過度の実験なしで、当該技術分野で周知の方法とともに本発明の教示を用いて、宿主を免疫感作し、HE4aポリペプチド特異的抗体産生に関してスクリーニングし得るよう、HE4aポリペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体が提供される。例えば組換えHE4a発現ベクターおよび宿主細胞(例えば組換えHE4a融合タンパク質)の構築は、本明細書中に記載されており、HE4a特異的抗体を提供する。
【0040】
本明細書中に開示されたHE4aポリペプチドの物理化学的および免疫化学的特性から、そしてここに開示されたHE4aをコードする核酸配列を用いて、当業者は、周知の方法に従って特異的抗体を産生および特性化するために用いられ得る組換えHE4aも調製し得る。HE4aポリペプチドは、適切なプロモーターの制御下で、哺乳動物細胞、酵母、細菌またはその他の細胞中で発現され得る。無細胞翻訳系も、本明細書中に開示されたHE4aポリペプチドDNAコード領域由来のRNAを用いて、このようなタンパク質を産生するために用いられ得る。原核生物および真核生物宿主とともに用いるための適切なクローニングおよび発現ベクターは、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,NY,(1989)によりに記載されている。本発明の好ましい実施形態では、HE4aポリペプチドは哺乳動物細胞中で発現され得る。
【0041】
本発明の核酸は、RNAの形態で、またはDNAの形態であり、このDNAはcDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAを包含する。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得るし、一本鎖である場合には、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。本発明に用いるためのHE4aポリペプチドをコードするコード配列は、配列番号3、4、6、10または12で提供されるコード配列と同一であり得るし、あるいは遺伝暗号の冗長または縮重の結果として、例えば配列番号10および配列番号12のcDNAと同一のHE4aポリペプチドをコードする異なるコード配列であり得る。したがって本発明は、配列番号5、配列番号7、配列番号11または配列番号13のアミノ酸配列を有するHE4a抗原ポリペプチドをコードする単離核酸分子、あるいはこのようなHE4aポリペプチドコード核酸とハイブリダイズすることが可能な核酸分子、またはそれらと相補的な配列を有する核酸分子を提供する。
【0042】
改変体は、ネイティブHE4a抗原ポリペプチドまたはその一部分をコードするポリヌクレオチド配列、例えば配列番号10および配列番号12に記述される核酸配列と、好ましくは少なくとも約70%の同一性、さらに好ましくは少なくとも約80%〜85%の同一性、もっとも好ましくは少なくとも約90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を示す。同一性%は、当業者に周知のコンピューターアルゴリズムを、例えばAlignまたはBLASTアルゴリズム(Altschul,J.Mol.Biol.219:555−565,1991;Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1091510919,1992)(これはNCBIウエブサイト(http://www/ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLAST)で利用可能である)を用いて配列を比較することにより、容易に確定され得る。デフォルトパラメーターが用いられ得る。
【0043】
ある種の改変体は、ネイティブ遺伝子と実質的に相同である。このようなポリヌクレオチド改変体は、中等度ストリンジェント条件下で、ネイティブHE4a抗原をコードする天然DNAまたはRNA配列(または相補配列)とハイブリダイズすることが可能である。適切な中等度ストリンジェント条件としては、例えば以下の過程またはそれらの等価物が挙げられる:5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で予備洗浄する過程;50℃〜65℃、5×SSCでの一晩ハイブリダイズする過程;その後、65℃で20分間、0.1%SDSを含有する2×、0.5×および0.2×SSCの各々で2回洗浄する過程。付加的ストリンジェントなに関しては、条件としては、例えば0.1×SSCおよび0.1%SDS中での60℃で15分間の洗浄、あるいはその等価物が挙げられる。何らかの点で特定の目的となる核酸に対して選択的である適度なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を作り出すための慣例として変更され得るパラメーターを、当業者は容易に理解し、そして、このような条件はとりわけ、ハイブリダイゼーションに関与する特定核酸配列、例えばHE4aポリペプチドをコードする配列番号10および配列番号12として本明細書中に開示されたものの一関数であり得ることをさらに理解する。核酸ハイブリダイゼーション条件の選択に関しては、例えばAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing,1995も参照されたい。
【0044】
HE4aポリペプチド、例えば配列番号11のアミノ酸配列を有するヒトHE4aポリペプチド、または本発明に従って用いるための任意のその他のHE4aポリペプチドをコードする核酸としては:HE4aポリペプチドに関するコード配列のみ;HE4aポリペプチドに関するコード配列および付加的コード配列;HE4aポリペプチドに関するコード配列(および任意の付加的コード配列)および非コード配列、例えばイントロンあるいはHE4aポリペプチドに関するコード配列の非コード配列5’および/または3’が挙げられるが、これらに限定されない。これらはさらに、例えば調節されたまたは調節可能なプロモーター、エンハンサー、その他の転写調節配列、リプレッサー結合配列、翻訳調節配列または任意のその他の調節核酸配列であり得る1つまたは複数の調節核酸配列を包含し得るが、これらに限定される必要はない。したがって「HE4aポリペプチドをコードする核酸」という用語は、ポリペプチドに関するコード配列のみ、ならびに付加的コードおよび/または非コード配列(単数または複数)を含む核酸を包含する。
【0045】
本発明はさらに、HE4aポリペプチド、例えば配列番号11の推定アミノ酸配列を有するヒトHE4aポリペプチドの断片、類似体および誘導体をコードする本明細書中に記載された核酸の改変体に関する。HE4aをコードする核酸の改変体は、核酸の天然対立遺伝子改変体または天然に生じない改変体であり得る。当該技術分野で周知であるように、対立遺伝子改変体は、そのいずれかがコード化HE4aポリペプチドの機能を実質的に変更しない1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または付加のうちの少なくとも1つを有し得る核酸配列の代替的形態である。したがって例えば本発明は、配列番号5、7または11で示されるのと同一のHE4aポリペプチドをコードする核酸、ならびにこのような核酸の改変体を包含し、これらの改変体はこれらのポリペプチドのいずれかの断片、誘導体または類似体をコードし得る。
【0046】
HE4aの改変体および誘導体は、HE4aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の突然変異により生成され得る。ネイティブアミノ酸配列の変更は、多数の慣用的方法のいずれかにより成し遂げられ得る。突然変異は、ネイティブ配列の断片への結繋を可能にする制限部位が側面に接する突然改変体配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することにより特定の遺伝子座に導入され得る。結繋後、結果として得られる制限再構築配列は、所望のアミノ酸挿入、置換または欠失を有する類似体をコードする。
【0047】
あるいは、変更遺伝子を提供するためにオリゴヌクレオチド位置特異的突然変異誘発手法が用いられ得るが、この場合、予定コドンは置換、欠失または挿入により変更され得る。このような変更の作製方法の例は、Walder et al.(Gene 42:133,1986);Bauer et al.(Gene 37:73,1985);Craik (BioTechniques,January 1985,12−19);Smith et al.(Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981);Kunkel (Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488,1985);Kunkel et al.(Methods in Enzymol.154:367,1987);および米国特許第4,518,584号および第4,737,462号に開示されている。
【0048】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス作用物質およびHE4aポリペプチドあるいはその改変体または断片をコードする核酸配列に特異的なリボザイムとして使用するための核酸分子の、ならびに遺伝子療法のための標的化送達のためのHE4a遺伝子をコードするDNAオリゴヌクレオチドの同定は、当該技術分野で周知の方法を含む。例えばこのようなオリゴヌクレオチドの望ましい特性、長さおよびその他の特徴が周知である。ある種の好ましい実施形態では、このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書中に提供されるようなHE4aポリペプチドをコードする単離核酸分子と相補的な少なくとも15〜30個の連続ヌクレオチドを含み、ある種の他の好ましい実施形態では、このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書中に提供されるようなHE4aポリペプチドをコードする単離核酸分子と相補的な少なくとも31〜50、51〜75、76〜125個またはそれ以上の連続ヌクレオチドを含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルホン、スルフェート、ケチル、ホスホロジチオネート、ホスホルアミデート、ホスフェートエステルのような結合およびその他のこのような結合を用いることにより、内因性核溶解性酵素による分解に抵抗するよう設計される(例えばAgrwal et al.,Tetrahedron Lett.28:3539−3542 (1987);Miller et al.,J.Am.Chem.Soc.93:6657−6665 (1971);Stec et al.,Tetrehedron Lett.26:2191−2194 (1985);Moody et al.,Nucl.Acids Res.12:4769−4782 (1989);Uznanski et al.,Nucl.Acids Res.(1989);Letsinger et al.,Tetrahedron 40:137−143 (1984);Eckstein,Annu.Rev.Biochem.54:367−402 (1985);Eckstein,Trends Biol.Sci.14:97−100 (1989);Stein In :Oligodeoxynucleotides.Antisense Inhibitors of Gene Expression,Cohen,Ed,Macmillan Press,London,pp.97−117 (1989);Jager et al.,Biochemistry 27:7237−7246 (1988)参照)。
【0049】
アンチセンスヌクレオチドは、配列特異的方法で、核酸、例えばmRNAまたはDNAと結合するオリゴヌクレオチドである。相補的配列を有するmRNAに結合される場合、アンチセンスはmRNAの翻訳を防止する(例えば米国特許第5,168,053号(Altman等);米国特許第5,190,931号(Inouye);米国特許第5,135,917号(Burch);米国特許第5,087,617号(Smith)およびClusel et al.(1993) Nucl.Acids Res.21:3405−3411(これはダンベルアンチセンスオリゴヌクレオチドをに記載する)参照)。三重分子は、二重DNAを結合して、共直線性三重分子を形成し、それにより転写を防止する単一DNA鎖を指す(例えば二重鎖DNA上の標的部位に結合する合成オリゴヌクレオチドの製造方法をに記載する米国特許第5,176,996号(Hogan等)参照)。
【0050】
本発明のこの実施形態によれば、特に有用なアンチセンスヌクレオチドおよび三重分子は、HE4aポリペプチドをコードするmRNAの翻訳の抑制が実行されるよう、HE4aポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAのセンス鎖と相補的であるかまたはそれと結合する分子である。
【0051】
リボザイムは、RNA基質、例えばmRNAを特異的に切断して、細胞性遺伝子発現の特異的抑制または妨害を生じるRNA分子である。RNA鎖の切断および/または結繋に関与するリボザイムには少なくとも5つの周知の種類がある。リボザイムは任意のRNA転写体に標的化されて、このような転写体を触媒的に切断し得る(例えば米国特許第5,272,262号;米国特許第5,144,019号、ならびに米国特許第5,168,053号、第5,180,818号、第5,116,742号および第5,093,246号(Cech等)参照)。本発明の特定の実施形態によれば、任意のこのようなHE4amRNA特異的リボザイムまたはこのようなリボザイムをコードする核酸は、宿主細胞に送達されて、HE4a遺伝子発現の抑制を実行し得る。したがってリボザイム等は、核への導入時に、リボザイムが直接転写されるよう、真核生物プロモーター(例えば真核生物ウイルスプロモーター)に連結されたリボザイムをコードするDNAにより宿主細胞に送達され得る。
【0052】
生物学的活性を必要とされないアミノ酸残基または配列の種々の付加または置換、あるいは末端または内部残基または配列の欠失をコードする等価のDNA構築物も、本発明に包含される。例えば生物学的活性に不可欠であるというわけではないCys残基をコードする配列は、Cys残基を欠失させるかまたは他のアミノ酸で置換させて、復元時に不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するよう変更され得る。その他の等価物は、KEX2プロテアーゼ活性が存在する酵母系における発現を強化するための隣接二塩基性アミノ酸残基の修飾により調製され得る。EP212,914は、タンパク質中のKEX2プロテアーゼプロセシング部位を不活性化するための部位特異的突然変異誘発の使用を開示する。KEX2プロテアーゼプロセシング部位は、残基を欠失、付加または置換して、Arg−Arg、Arg−LysおよびLys−Arg対をこれらの隣接塩基性残基の発生を排除するよう変更することにより、不活性化される。Lys−Lys対合はKEX2切断にかなり低感受性であり、Arg−LysまたはLys−ArgのLys−Lysへの転換は、KEX2部位を不活性化するための保存的な、そして好ましいアプローチを示す。
【0053】
適切なDNA配列(単数または複数)は、種々の手法により、選択宿主細胞に適した多数の周知のベクターのいずれかに挿入され得る。概してDNA配列は、当該技術分野で周知の手法により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(単数または複数)に挿入される。クローニング、DNA単離、増幅および精製のための、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を包含する酵素反応のための標準技法、ならびに種々の分離技法は、周知のものであり、当業者に一般的に用いられる。多数の標準技法は、例えばAusubel et al.(1993 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,Boston,MA);Sambrook et al.(1989 Molecular Cloning,Second Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY);ならびにその他に記載されている。
【0054】
哺乳動物発現系の例としては、Gluzman,Cell 23:175 (1981)によりに記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、ならびに適合性ベクターを発現し得るその他の細胞株、例えばC127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、複製の起点、適切なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体および受容体部位、転写終結配列および5’フランキング非転写化配列を含む。例えばSV40スプライスおよびポリアデニル化部位に由来するDNA配列を用いて、必要な非転写化遺伝因子を提供し得る。宿主細胞中への構築物の導入は、当業者が熟知している種々の方法、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクションまたは電気穿孔(electroporation)(これらに限定されない)により実行され得る(Davis et al.,1986,Basic Methods in Molecular Biology)。
【0055】
本発明はさらに、HE4aポリペプチドに関し、特に悪性症状を検出する方法に関する。好ましい実施形態では、悪性疾患は、HE4aポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する、天然可溶性分子の生物学的試料中での、あるいは細胞表面の存在を細胞を含む試料中での存在を確定することにより、検出される。別の好ましい実施形態では、悪性疾患は、少なくとも1つの天然HE4aポリペプチドの生物学的試料中での存在を確定することにより、検出される。本明細書中に提供されるように、「HE4a抗原ポリペプチド」または「HE4aポリペプチド」は、その任意の断片、誘導体または類似体を含めた配列番号11のアミノ酸配列を有する任意のポリペプチドを包含し、そして配列番号10または配列番号12を含む核酸分子により、あるいは配列番号10または配列番号12の核酸分子とハイブリダイズすることが可能な核酸分子によりコードされる任意のポリペプチド、あるいはその断片、誘導体または類似体も包含する。本発明のある種の好ましい実施形態は、本明細書中に提供されるようなHE4a配列(例えば配列番号10〜13)を対象とする組成物および方法を意図するが、これらは、構造、機能および/または細胞型発現あるいは組織分布あるいはその他(例えば抗体限定検出可能エピトープ、ならびに例えばオリゴヌクレオチド限定ハイブリダイゼーション検出)の差に基づいて、Kirchoff等(例えばBiol.Reproduct.45:350;配列番号8〜9)に開示されたHE4配列を発現的に除外する。
【0056】
本発明のHE4aポリペプチドは非修飾化ポリペプチドであり得るし、あるいは例えばグリコシル化、リン酸化、脂肪アシル化(例えばグリコシルホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼc媒介性加水分解またはその他)、プロテアーゼ切断、脱リン酸化または任意のその他の種類のタンパク質翻訳後修飾(例えば共有的化学結合の形成または切断を包含する修飾)により、翻訳後修飾されたポリペプチドであり得る。
【0057】
「断片」、「誘導体」および「類似体」という用語は、HE4aポリペプチド、HE4a抗原ポリペプチドまたはHE4a融合タンパク質に言及する場合、このようなポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能および/または活性を保有する任意のHE4aポリペプチドを指す。したがって類似体としては、HE4a抗原ポリペプチドアイソフォーム、例えば示差的翻訳後修飾化HE4aポリペプチドまたは改変体(例えばスプライス改変体)が挙げられ得る。当該技術分野で周知であるように、「スプライス改変体」は、RNA転写体の示差的細胞内プロセシングから生じるポリペプチドの改変体または代替的形態を包含する。例えば2つの別個のmRNA種は、互いのスプライス改変体であって、この場合、それらは一mRNA種中の特定のエキソンに対応する配列の全部または一部の封入ならびに他の種からのその非存在によってのみ異なる。当業者が理解するように、その他の構造的関係は、スプライス改変体として一般的にみなされるmRNA種間に存在し得る。HE4aポリペプチドはさらに、プロタンパク質部分を切断して活性HE4aポリペプチドを生成することにより達成され得るプロタンパク質を包含する。
【0058】
HE4aポリペプチドの、またはHE4a抗原ポリペプチドの断片、誘導体および類似体の生物学的機能および/または活性としては、本明細書中に開示されたような、被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法におけるマーカーとしてのこのようなポリペプチドの使用が挙げられるが、これに限定される必要はない。例えば被験体からの試料中で天然で可溶性形態であり、HE4aポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する分子を検出することにより、HE4aポリペプチドの生物学的機能および/または活性を当業者はモニタリングし得る。さらに、特定の実施形態では、本発明のスクリーニングする方法は、天然で可溶性形態であり、そして(i)悪性症状を有する疑いがある一次被験体からの一次生物学的試料、および(ii)悪性症状がないことが周知である第二の被験体からの第二の生物学的試料の各々において、HE4aポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する検出可能分子の相対的定量、レベルおよび/または量を比較することを対象とすることに留意すべきである。したがって生物学的試料中のHE4aポリペプチドの相対的定量的存在は、HE4aポリペプチドの生物学的機能および/または活性であり得るが、このような機能および/または活性は、そのように限定されるべきでない。
【0059】
HE4aポリペプチドの断片、誘導体または類似体は、(i)1つまたは複数のアミノ酸残基が保存または非保存性アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換されるもの;(ii)付加的アミノ酸、例えばHE4aポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製のために用いられ得るアミノ酸がHE4aポリペプチドに融合されるもの;あるいは(iii)短縮HE4aポリペプチドであり得る。このような断片、誘導体および類似体は、本明細書中の教示から、当業者の範囲内であるとみなされる。
【0060】
短縮HE4aポリペプチドは、全長バージョンより短いHE4aポリペプチドを含む任意のHE4aポリペプチド分子であり得る。本発明により提供される短縮分子は短縮生物学的ポリマーを包含し、本発明の好ましい実施形態では、このような短縮分子は、短縮核酸分子または短縮ポリペプチドであり得る。短縮核酸分子は、周知のまたはに記載された核酸分子の全長未満のヌクレオチド配列を有するが、この場合、このような周知のまたはに記載された核酸分子は、当業者がそれを全長分子とみなす限りは、天然、合成または組換え核酸分子であり得る。したがって例えば遺伝子配列に対応する短縮核酸分子は、全長未満の遺伝子を含有し、この場合、遺伝子はコードおよび非コード配列、プロモーター、エンハンサーおよびその他の調節配列、フランキング配列等、ならびに遺伝子の一部として認識されるその他の機能性および非機能性配列を含む。別の例では、mRNA配列に対応する短縮核酸分子は、全長未満のmRNA転写体を含有し、これは種々の翻訳化および非翻訳化領域、ならびにその他の機能性および非機能性配列を含み得る。その他の好ましい実施形態では、短縮分子は、特定タンパク質の全長未満のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0061】
本明細書中で用いる場合、「欠失」は、当業者により理解されるようなその一般的意味を有し、例えば本明細書中で提供される短縮分子の場合のような対応する全長分子と比較して、末端または非末端領域からの配列の1つまたは複数の一部分を欠く分子を指し得る。線状生物学的ポリマー(例えば核酸分子またはポリペプチド)である短縮分子は、分子の末端からの1つまたは複数の欠失、あるいは分子の非末端領域からの欠失を有し得るが、この場合、このような欠失は1〜1500個の連続ヌクレオチドまたはアミノ酸残基、好ましくは1〜500個の連続ヌクレオチドまたはアミノ酸残基、さらに好ましくは1〜300個の連続ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の欠失であり得る。
【0062】
当該技術分野で周知であるように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列およびそれに対する保存アミノ酸置換を、第二のポリペプチドの配列と比較することにより確定される。2つのポリペプチドまたはヌクレオチド配列間の類似性、あるいは同一性%でさえ、当業者に周知のコンピューターアルゴリズム、例えばBLASTアルゴリズム(Altschul,J.Mol.Biol.219:555−565,1991;Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919,1992)(これはNCBIウエブサイト(http://www/ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLAST)で利用可能である)を用いて配列を比較することにより、容易に確定され得る。その他の有用なコンピューターアルゴリズムの例は、AlignおよびFASTAのようなプログラムに用いられるものであり、これらは、例えばInstitut de Genetique Humaine,Montpellier,FranceのGenestreamインターネットウエブサイト(www2.igh.cnrs.fr/home.eng.html)でアクセスされ、デフォルトパラメーターとともに用いられ得る。本発明のポリペプチドの断片または一部は、ペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを産生するために用いられ、したがって断片は、全長ポリペプチドを産生するための中間体として用いられ得る。
【0063】
「単離される」という用語は、物質がその元の環境(例えばそれが天然に生じる場合には、天然環境)から取り出されることを意味する。例えば生体動物中に存在する天然ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは単離されないが、天然系中の共存物質のいくつかまたは全部から分離される同一ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、単離される。このようなポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、組成物の一部であり得るし、さらにこのような組成物がその天然環境の一部でない場合は単離される。
【0064】
アフィニティー技法は、本発明の方法に従って用いるためにHE4aポリペプチドを単離するという状況において特に有用であり、そして分離を実行するためにHE4aポリペプチドとの特異的結合相互作用を利用する任意の方法を含み得る。例えばHE4aポリペプチドは共有結合オリゴ糖部分を含有し得るため(例えば実施例に記載される図2参照)、アフィニティー技法、例えばレクチンによる炭水化物結合を可能にする条件下での適切な固定化レクチンとのHE4aポリペプチドの結合は、特に有用なアフィニティー技法であり得る。その他の有用なアフィニティー技法としては、HE4aポリペプチドを単離するための免疫学的技法が挙げられるが、この技法は、複合体中に存在する抗原および抗原決定基に関する部位を併有する抗体間の特異的結合相互作用に拠る。免疫学的技法としては、イムノアフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降、固相免疫吸着またはその他のイムノアフィニティー法が挙げられるが、これらに限定される必要はない。これらのおよびその他の有用なアフィニティー技法に関しては、例えばScopes,R.K.,Protein Purification:Principles and Practice,1987,Springer−Verlag NY;Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Boston;およびHermanson,G.T.et al.,Immobilized Affinity Ligand Techniques,1992,Academic Press,Inc.,California(これらのに記載内容は全て、複合体を単離し、特性化するための技法(例えばアフィニティー技法)に関する詳細に関して、参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0065】
本明細書中に記載されているように、本発明は、HE4aに融合されたポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。このようなHE4a融合タンパク質は、付加的コード配列に枠内で融合されたHE4aコード配列を有する核酸によりコードされて、例えばHE4a融合タンパク質の欠失、単離および/または精製(これらに限定されない)を可能にする付加的機能性または非機能性ポリペプチド配列に融合されたHE4aポリペプチド配列の発現を提供する。このようなHE4a融合タンパク質は、タンパク質−タンパク質親和性、金属親和性または電荷親和性ベースのポリペプチド精製により、あるいはHE4aポリペプチドが融合タンパク質から分離可能であるよう、プロテアーゼにより切断可能である融合配列を含有する融合タンパク質の特異的プロテアーゼ切断により、HE4a融合タンパク質の検出、単離および/または精製を可能にし得る。
【0066】
したがってHE4a融合タンパク質は、リガンドとの特異的親和性相互作用によりHE4aの検出および単離を促すためにHE4aに付加されるポリペプチドまたはペプチドを指す親和性タグポリペプチド配列を含み得る。リガンドは、本明細書中に提供されるような特異的結合相互作用により親和性タグが相互作用し得る任意の分子、受容体、対受容体(counterreceptor)、抗体等であり得る。このようなペプチドとしては、例えば米国特許第5,011,912号にならびにHopp et al.,(1988 Bio/Technology 6:1204)に記載されたようなポリ−Hisまたは抗原性同定ペプチド、あるいはXPRESS(登録商標)エピトープタグ(Invitrogen,Carlsbad,CA)が挙げられる。親和性配列は、例えば細菌宿主の場合にはマーカーに融合される成熟ポリペプチドの精製のために提供されるpBAD/His(Invitrogen)またはpQE−9ベクターにより供給されるようなヘキサ−ヒスチジンタグであり得るし、あるいは親和性配列は、哺乳動物宿主、例えばCOS−7細胞が用いられる場合には、ヘマグルチニン(HA)タグであり得る。HAタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質由来の抗体限定エピトープに対応する(Wilson et al.,1984 Cell 37:767)。
【0067】
HE4a融合タンパク質は、特に好ましい実施形態では、そして以下でより詳細に記載されるように、さらに、HE4aの検出、単離および/または局在化を促すためにHE4aに付加される免疫グロブリン定常部ポリペプチドを含み得る。免疫グロブリン定常部ポリペプチドは、好ましくはHE4aポリペプチドのC末端に融合される。非限定的理論によれば、本明細書中に提供されるようなHE4a融合タンパク質中の免疫グロブリン(Ig)定常部ドメインの含入は、例えば特定宿主中で用いられる場合、特定のIg領域の免疫原性/非免疫原性特性(すなわち、「自己」対「非自己」)に関連したもの、あるいは融合タンパク質の単離および/または検出を促すものといった利点を提供し得る。Ig融合タンパク質のこれらのおよびその他の利点は、本発明の開示に基づいて、当業者に理解される。抗体由来ポリペプチドの種々の部分(例えばFcドメイン)に融合された異種ポリペプチドを含む融合タンパク質の一般的調製は、例えばAshkenazi et al.(PNAS USA 88:10535,1991)およびByrn et al.(Nature 344:677,1990)によりに記載されている。HE4a:Fc融合タンパク質をコードする遺伝子融合は、適切な発現ベクター中に挿入される。本発明の特定の実施形態では、HE4a:Fc融合タンパク質は、非常によく似た抗体分子にアセンブルされ、この場合、鎖間ジスルフィド結合がFcポリペプチド間に形成されて、二量体HE4a融合タンパク質を生じる。
【0068】
HE4aをコードする配列に枠内で連結されたDNA配列によりコードされる免疫グロブリンV領域ドメインを含む融合ポリペプチドに基づいて予備選定抗原に対する特異的結合親和性を有するHE4a融合タンパク質も、本明細書中に提供されるようなその改変体および断片を含めて、本発明の範囲内である。免疫グロブリンV領域融合ポリペプチドを有する融合タンパク質の構築のための一般的戦略は、例えばEP0318554;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号および米国特許第5,476,786号に開示されている。
【0069】
本発明の核酸は、所望の親和性特性、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼのような酵素を有するその他のポリペプチドに融合されたHE4aポリペプチドを含む融合タンパク質もコードし得る。別の例としては、HE4a融合タンパク質は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAポリペプチドに融合されたHE4aポリペプチドも含む。プロテインAコード核酸、および免疫グロブリン定常部に対する親和性を有する融合タンパク質の構築におけるそれらの使用は、一般的に、例えば米国特許第5,100,788号に開示されている。HE4a融合タンパク質の構築のためのその他の有用な親和性ポリペプチドとしては、例えばWO89/03422、米国特許第5,489,528号、米国特許第5,672,691号、WO93/24631、米国特許第5,168,049号、米国特許第5,272,254号およびその他に開示されたようなストレプトアビジン融合タンパク質、ならびにアビジン融合タンパク質(例えばEP511,747参照)が挙げられ得る。本明細書中に、そして引用参考文献中に提供されているように、HE4aポリペプチド配列は、全長融合ポリペプチドであり得るとともに代替的にその改変体または断片であり得る融合ポリペプチド配列に融合され得る。
【0070】
本発明は、融合タンパク質を細胞核に向かわせるポリペプチド配列であって、当業者が精通している種々の周知の細胞内タンパク質分類メカニズムのいずれかにより、小胞体(ER)の管腔中に存在し、古典的ER−ゴルジ分泌経路を介して細胞から分泌され(例えばvon Heijne,J.Membrane Biol.115:195−201,1990参照)、形質膜中に組み入れられ、特定の細胞質構成成分(例えば膜貫通細胞表面受容体の細胞質ドメイン)と会合し、または特定の細胞下位置に向けられるポリペプチド配列を含有するHE4a融合タンパク質も意図する(例えばRothman,Nature 372:55−63,1994、Adrani et al.,1998 J.Biol.Chem.273:10317およびそこに引用された参考文献参照)。したがってこれらのおよび関連の実施形態は、予備限定細胞内、膜または細胞外局在化に対して当該ポリペプチドを標的化することを対象とする当該組成物および方法を包含する。
【0071】
本発明は、本発明の核酸を含むベクターおよび構築物に関し、特に上記のような本発明のHE4aポリペプチドをコードする任意の核酸を含む「組換え発現構築物」、本発明のベクターおよび/または構築物で遺伝子操作される宿主細胞、そして組換え技法による本発明のHE4aポリペプチドおよび融合タンパク質、あるいはその断片または改変体の産生にも関する。HE4aタンパク質は、適切なプロモーターの制御下で、哺乳動物細胞、酵母、細菌またはその他の細胞中で発現され得る。無細胞翻訳系も、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてこのようなタンパク質を産生するために用いられ得る。原核生物および真核生物宿主とともに用いるための適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,New York,(1989)によりに記載されている。
【0072】
一般に、組換え発現ベクターは、複製の起点、ならびに宿主細胞の形質転換を可能にする選択可能マーカー、例えば大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子およびビール酵母菌(S.cerevisiae)TRP1遺伝子、ならびに下流構造配列の転写を指図する高発現遺伝子由来のプロモーターを含む。このようなプロモーターは、解糖酵素、例えば、特に、3−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、a−因子、酸性ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質をコードするオペロンに由来し得る。異種構造配列は、翻訳開始および終結配列を用いて、適切な段階でアッセンブルされる。任意に、異種配列は、例えば所望の特徴、例えば発現組換え産物の安定化または簡易精製を付与するN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードし得る。
【0073】
細菌使用のための有用な発現構築物は、機能性プロモーターを用いて作動可能読取り段階に適切な翻訳開始および終結シグナルと一緒に所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を発現ベクター中に挿入することにより、構築される。構築物は、ベクター構築物の保持を保証し、望ましい場合には、宿主内での増幅を提供するために、1つまたは複数の表現型選択可能マーカーおよび複製の起点を含み得る。形質転換のための適切な原核生物宿主としては、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス属、ストレプトミセス属およびブドウ球菌属内の種々の種が挙げられるが、その他も選択物として用いられ得る。任意のその他のプラスミドまたはベクターは、それらが複製可能で、かつ宿主中で生育可能である限り、用いられ得る。
【0074】
細菌使用のための有用な発現ベクターの代表的なしかし非限定例は、選択可能マーカー、および周知のクローニングベクターpBR322(ATCC37017)の遺伝因子(genetic element)を含む市販のプラスミドに由来する複製の細菌起点を含み得る。このような市販ベクターとしては、例えばpKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden)およびGEM1(Promega Biotech,Madison,Wisconsin,USA)が挙げられる。これらのpBR322「主鎖」区分は、適切なプロモーターおよび発現される構造配列と併合される。
【0075】
適切な宿主株の形質転換および適切な細胞密度への宿主株の増殖後、適切な手段(例えば温度シフトまたは化学的誘導)により、本明細書中に提供されるような調節プロモータが誘導され、細胞がさらなる期間、培養される。細胞は、典型的には遠心分離により収穫され、物理的または化学的手段により破壊され、その結果生じた粗製抽出物がさらなる精製のために保持される。タンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、任意の便利な方法により、例えば凍結解凍循環、音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用により破壊され得る。このような方法は、当業者には周知である。
【0076】
したがって例えば本明細書中で提供されるような本発明の核酸は、HE4aポリペプチドを発現するための組換え発現構築物として種々の発現ベクター構築物のいずれかに含まれ得る。このようなベクターおよび構築物としては、染色体、非染色体および合成DNA配列、例えばSV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNA、ウイルスDNA、例えばワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病ウイルスの組合せに由来するベクターが挙げられる。しかしながら任意のその他のベクターは、それが複製可能であり、宿主中で生育可能である限り、組換え発現構築物の調製のために用いられ得る。
【0077】
適切なDNA配列(単数または複数)は、種々の手法によりベクター中に挿入され得る。概してDNA配列は、当該技術分野で周知の手法により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(単数または複数)に挿入される。クローニング、DNA単離、増幅および精製のための、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を包含する酵素反応のための標準技法、ならびに種々の分離技法は、周知のものであり、当業者に一般的に用いられる。多数の標準技法は、例えばAusubel et al.(1993 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,Boston,MA);Sambrook et al.(1989 Molecular Cloning,Second Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY);Maniatis et al.(1982 Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Plainview,NY);ならびにその他に記載されている。
【0078】
発現ベクター中のDNA配列は、少なくとも1つの適切な発現制御配列(例えばプロモーターまたは調節プロモータ)に作動可能に連結されて、mRNA合成を指図する。このような発現制御配列の代表例としては、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ラムダファージPプロモーター、ならびに原核生物細胞または真核生物細胞あるいはそれらのウイルス中の遺伝子の発現を制御することが周知であるその他のプロモーターが挙げられる。プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたはその他のベクターを選択可能マーカーとともに用いて、任意の所望の遺伝子から選択され得る。2つの適切なベクターは、pKK232−8およびpCM7である。特定の命名された細菌プロモーターとしては、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP、Pおよびtrpが挙げられる。真核生物プロモーターとしては、CMV極初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルスからのLTR、ならびにマウスメタロチオネイン−Iが挙げられる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベル内であり、HE4aポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結される少なくとも1つのプロモーターまたは調節プロモータを含むある種の特に好ましい組換え発現構築物の調製の選択が、本明細書中に記載されている。
【0079】
上記のように、特定の実施形態では、ベクターはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクターである。例えばレトロウイルスプラスミドベクターが得られるレトロウイルスとしては、モロニーネズミ白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、レトロウイルス、例えばラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、鳥類白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび哺乳動物腫瘍ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
ウイルスベクターは、1つまたは複数のプロモーターを含む。用いられ得る適切なプロモーターとしては、レトロウイルスLTR、SV40プロモーター、ならびにMiller,et al.,Biotechniques 7:980−990 (1989)に記載されたヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、あるいは任意のその他のプロモーター(例えば細胞プロモーター、例えば真核生物細胞プロモーター、例えばヒストン、polIIIおよびβ−アクチンプロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。用いられ得るその他のウイルスプロモーターとしては、アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーターおよびB19パルボウイルスプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロモーターの選択は、本明細書中に含まれる教示から当業者には明らかであり、上記のような調節プロモータまたはプロモーターの中からであり得る。
【0081】
レトロウイルスプラスミドベクターは、パッケージング細胞株を形質導入して、プロデューサー細胞株を生成するために用いられる。トランスフェクトされ得るパッケージング細胞の例としては、Miller,Human Gene Therapy,1:5−14 (1990)(このに記載内容は全て、参照により本明細書中に援用される)に記載されているようなPE501、PA317、Ψ−2、Ψ−AM、PA12、T19−14X、VT−19−17−H2、ΨCRE、ΨCRIP、GP+E−86、GP+envAm12およびDAN細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、当該技術分野で周知の任意の手段により、パッケージング細胞を形質導入し得る。このような手段としては、電気穿孔、リポソームの使用、ならびにリン酸カルシウム沈降が挙げられるが、これらに限定されない。一代替的方法では、レトロウイルスプラスミドベクターはリポソーム中に封入されるかまたは脂質に結合されて、次に宿主に投与され得る。
【0082】
プロデューサー細胞株は、HE4aポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸配列(単数または複数)を含む感染性レトロウイルスベクター粒子を生成する。このようなレトロウイルスベクター粒子は次に、in vitroまたはin vivoで真核生物細胞を形質導入するために用いられ得る。形質導入化真核生物細胞は、HE4aポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸(単数または複数)を発現する。形質導入され得る真核生物細胞としては、胚性幹細胞、胚性癌腫細胞、ならびに造血性幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、気管支上皮細胞および種々のその他の培養適応細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
組換えHE4a発現構築物を調製するためにウイルスベクターが用いられる本発明の実施形態の別の例として、好ましい一実施形態では、HE4aポリペプチドまたは融合タンパク質の発現を指図する組換えウイルス構築物により形質導入される宿主細胞は、ウイルス出芽中にウイルス粒子により組み入れられる宿主細胞膜の一部に由来する発現されたHE4aポリペプチドまたは融合タンパク質を含有するウイルス粒子を産生し得る。別の好ましい実施形態では、HE4aコード核酸配列は、例えばBaculovirus Expression Protocols,Methods in Molecular Biology Vol.39,C.D.Richardson,Editor,Human Press,Totowa,NJ,1995;Piwnica−Worms,「Expression of Proteins in Insect Cells Using Baculoviral Vectors」Section II in Chapter 16 in:Short Protocols in Molecular Biology,2nd Ed.,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,New York,New York,1992,pages 16−32 to 16−48に記載されているように、バキュロウイルスシャトルベクター中でクローン化され、これは次に、バキュロウイルスで組換えられて、組換えバキュロウイルス発現構築物を生じ、Sf9宿主細胞を感染させるために用いられ得る。
【0084】
別の局面では、本発明は、上記の組換えHE4a発現構築物を含有する宿主細胞に関する。宿主細胞は通常、例えばクローニングベクター、シャトルベクターまたは発現構築物であり得る本発明のベクターおよび/または発現構築物を用いて遺伝子工学処理される(形質導入、形質転換、またはトランスフェクトされる)。ベクターまたは構築物は、例えばプラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態であり得る。工学処理宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、または特定の遺伝子、例えばHE4aポリペプチドまたはHE4a融合タンパク質をコードする遺伝子を増幅するのに適しているように修飾された慣用的栄養培地中で培養され得る。発現のために選択された特定の宿主細胞のための培養条件、例えば温度、pH等は、当業者には容易に明らかになる。
【0085】
宿主細胞は、高等真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞または下等真核生物細胞、例えば酵母細胞であり得るか、あるいは宿主細胞は、原核生物細胞、例えば細菌細胞であり得る。本発明の適切な宿主細胞の代表例としては、細菌細胞、例えば大腸菌、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);真菌細胞、例えば酵母;昆虫細胞、例えばショウジョウバエ(Drosophila)S2およびヨトウ類(SpodopteraSf9);動物細胞、例えばCHO、COSまたは293細胞;アデノウイルス;植物細胞、あるいはin vitro propagationにすでに適合されたかまたはde novoでそのように確立された任意の適切な細胞が挙げられるが、これらに限定されない。適切な宿主の選択は、本明細書中の教示から当業者の範囲内であるとみなされる。
【0086】
種々の哺乳動物細胞培養系も組換えタンパク質を発現するために用いられ得る。したがって本発明は、一部は、HE4aをコードする核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現構築物を含む宿主細胞を培養することによる、組換えHE4aポリペプチドの産生方法に向けられる。特定の実施形態では、プロモーターは、本明細書中に提供されるような調節プロモーター、例えばテトラサイクリン抑制性プロモーターであり得る。特定の実施形態では、組換え発現構築物は、本明細書中に提供されるような組換えウイルス発現構築物である。哺乳動物発現系の例としては、Gluzman,Cell 23:175 (1981)によりに記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、ならびに適合性ベクターを発現可能なその他の細胞株、例えばC127、3T3、CHO、HeLaおよびBHK細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、例えばMRA発現構築物の調製に関して本明細書中に記載されているように、複製の起点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを、ならびに任意に必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体および受容体部位、転写終結配列および5’フランキング非転写化配列も含む。SV40スプライス由来のDNA配列およびポリアデニル化部位を用いて、必要な非転写化遺伝要素を提供し得る。宿主細胞中への構築物の導入は、当業者が熟知している種々の方法、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクションまたは電気穿孔(これらに限定されない)により実行され得る(Davis et al.,1986 Basic Methods in Molecular Biology)。
【0087】
発現された組換えHE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)またはそれから得られる融合タンパク質は、無傷宿主細胞;無傷細胞小器官、例えば細胞膜、細胞内小胞またはその他の細胞小器官;あるいは破壊細胞調製物、例えば細胞ホモジネートまたは溶解物、単一膜および多重膜小胞またはその他の調製物(これらに限定されない)の形態で、免疫原として有用であり得る。あるいは、発現された組換えメソテリン関連抗原ポリペプチド(またはメソテリンポリペプチド)または融合タンパク質は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈降、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(例えばイムノアフィニティークロマトグラフィー)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた方法により、組換え細胞培養から回収され、精製され得る。タンパク質リォールディング過程は、必要な場合、成熟タンパク質の立体配置を完成する場合に用いられ得る。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、最終精製過程のために用いられ得る。発現された組換えHE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)または融合タンパク質は、当業者により容易に実施され得るルーチン抗体スクリーニングのためのいくつかのアッセイ立体配置のいずれかにおける標的抗原としても有用であり得る。
【0088】
したがって本発明の方法に用いられる特異的抗体の産生のための免疫原であるHE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)は、天然精製産物、または化学合成手法の産物であってもよく、あるいは原核生物宿主から、または好ましくは真核生物宿主から組換え技法により産生されてもよい。組換え産生手法に用いられる宿主によっては、本発明のポリペプチドはグリコシル化されるか、またはそうでなければ、当該技術分野で周知であるように、そして本明細書中に提供されるように、翻訳後修飾され得る。
【0089】
本発明によれば、可溶性ヒトHE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)は、被験体または生物学的供給源からの生物学的試料中で検出され得る。生物学的試料は、被験体または生物学的供給源から、血液試料、生検検体、組織外植片、器官培養、生物学的流体または任意のその他の組織または細胞調製物を得ることにより提供され得る。被験体または生物学的供給源は、ヒトまたは非ヒト動物、一次細胞培養または培養適応細胞株、例えば染色体的組込みまたはエピソーム性組換え核酸配列、不死化または不死化可能細胞株、体細胞ハイブリッド細胞株、分化または分化可能細胞株、形質転換細胞株等を含有し得る遺伝子工学処理細胞株(これらに限定されない)であり得る。本発明のある種の好ましい実施形態では、被験体または生物学的供給源は、悪性症状を有する疑いがあるかまたは有する危険性があり得るが、この悪性症状は、ある種のさらに好ましい実施形態では、卵巣癌、例えば卵巣癌腫であり、本発明のある種のその他の好ましい実施形態では、被験体または生物学的供給源は、このような疾患の危険性または存在を有さないことが周知であり得る。
【0090】
ある種の好ましい実施形態では、生物学的試料は、被験体または生物学的供給源からの少なくとも1つの細胞を含み、ある種のその他の好ましい実施形態では、生物学的試料は、可溶性ヒトメソテリン関連抗原ポリペプチドを含有する生物学的流体である。生物学的流体は、典型的には生理学的温度で液体であり、被験体または生物学的供給源中に存在し、それから引き抜かれ、それから発現されるかまたはそうでなければ抽出され得る天然に存在する流体を含み得る。特定の組織、器官または局在化領域由来のある種の生物学的流体、ならびにある種のその他の生物学的流体は、被験体または生物学的供給源中により全体的または系統的に置かれ得る。生物学的流体の例としては、血液、血清および漿液、血漿、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液、分泌組織および器官の粘膜分泌物、膣分泌物、腹水、例えば非固形腫瘍に関連したもの、胸水、囲心腔液、腹膜液、腹腔またはその他の体腔液等が挙げられる。生物学的流体としては、被験体または生物学的供給源と接触する溶液、例えば細胞および器官培地(例えば細胞または器官ならし培地)、灌注液等も挙げられる。ある種の非常に好ましい実施形態では、生物学的試料は血清であり、他の非常に好ましい実施形体では、生物学的試料は血漿である。その他の好ましい実施形態では、生物学的試料は無細胞溶液である。
【0091】
ある種のその他の好ましい実施形態では、生物学的試料は無傷細胞を含み、ある種のその他の好ましい実施形態では、生物学的試料は、配列番号11または13に記述されるアミノ酸配列を有するHE4a抗原ポリペプチドあるいはその断片または改変体をコードする核酸配列を含有する細胞抽出物を含む。
【0092】
試料中の「可溶性形態で天然に存在する分子」とは、可溶性タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、またはそれらの誘導体;脂質、脂肪酸等、またはそれらの誘導体;炭水化物、糖等、またはそれらの誘導体、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン、ピリミジンまたは関連分子、あるいはそれらの誘導体等;あるいはそれらの任意の組合せ、例えば糖タンパク質、糖脂質、リポタンパク質、プロテオリピド、あるいは本明細書中に提供されるような生物学的試料の可溶性または無細胞構成分である任意のその他の生物学的分子であり得る。「可溶性形態で天然に存在する分子」とはさらに、溶液中に存在するかまたは生物学的試料、例えば本明細書中に提供されるような生物学的流体中に存在する、そして無傷細胞の表面に結合されない分子を指す。例えば可溶性形態で天然に存在する分子としては、溶質;高分子複合体の構成成分;細胞から脱粒され、分泌され、または輸送される物質;コロイド;マイクロ粒子またはナノ粒子あるいはその他の微小懸濁粒子等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
被験体における悪性症状の存在は、被験体における異形成細胞、癌性細胞および/または形質転換細胞の存在、例えば新性細胞、腫瘍細胞、非接触阻害化細胞または癌遺伝子的形質転換細胞等を指す。例証として、本発明の状況においては、悪性症状は、このようなポリペプチドのレベル増大が被験体からの生物学的試料中で検出可能であるような方法で、HE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)を分泌し、脱粒し、輸出し、または放出することができる癌細胞の被験体中での存在をさらに指し得るが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、例えばこのような癌細胞は、悪性上皮細胞、例えば癌腫細胞であり、特に好ましい実施形態では、このような癌細胞は、例えば胸腔、囲心腔、腹膜、腹腔およびその他の体腔を裏打ちすることが判明している扁平上皮細胞または中皮細胞の形質転換化改変体である悪性中皮腫細胞である。
【0094】
本発明の最も好ましい実施形態では、その存在が悪性症状の存在を意味する腫瘍細胞は、卵巣癌細胞、例えば原発性および転移性卵巣癌細胞である。原発性および転移性腫瘍からのヒト卵巣癌細胞株の確立および特性化である(例えばOVCAR−3、Amer.Type Culture Collection,Manassas,VA;Yuan et al.,1997 Gynecol.Oncol.66:378)と同様に、悪性疾患を卵巣癌と分類するための判定基準は、当該技術分野で周知である(例えばBell et al.1998 Br.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Meier et al.,1997 Anticancer Res.17 (4B):3019);Meier et al.1997 Anticancer Res.17 (4B):2949;Cioffi et al.,1997 Tumori 83:594;およびそれらに引用された参考文献参照)。その他の実施形態では、悪性症状は、中皮腫、膵臓癌、非小細胞肺癌または別の形態の癌、例えば種々の癌腫(例えば扁平上皮細胞癌および腺癌)のいずれか、ならびに例えば肉腫および血液学的悪性疾患(例えば白血病、リンパ腫、骨髄腫等)であり得る。これらのおよびその他の悪性症状の分類は当業者に周知であり、本発明の開示は、過度の実験を伴わずに、このような悪性症状におけるHE4aポリペプチドの存在を確定する。
【0095】
本明細書中に提供されるように、被験体における悪性症状の存在に関するスクリーニング方法は、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体またはHE4aポリペプチドに特異的な抗体の使用を特徴づけ得る。
【0096】
HE4a抗原ポリペプチド(またはHE4aポリペプチド)に特異的である抗体は、モノクローナル抗体として、またはポリクローナル抗血清として容易に生成され、あるいは当該技術分野で周知の方法を用いて望ましい特性を有するよう設計される遺伝子工学処理化免疫グロブリン(Ig)として産生され得る。例えば限定ではなく例証として、抗体は、組換えIgG、免疫グロブリン由来配列を有するキメラ融合タンパク質、または本発明のヒトHE4aポリペプチドの検出のためにすべて用いられ得る「ヒト化」抗体(例えば米国特許第5,693,762号、第5,585,089号、第4,816,567号、第5,225,539号、第5,530,101号およびそれらに引用された参考文献参照)を包含し得る。このような抗体は、本明細書中に提供されるように、例えば以下に記載されるようにHE4aポリペプチドを用いた免疫感作により、調製され得る。例えば本明細書中に提供されるように、免疫原として用いるためにこれらのポリペプチドを当業者がルーチンに調製し得るよう、HE4aポリペプチドをコードする核酸配列が開示される。例えばモノクローナル抗体、例えば以下でさらに詳細に記載される2H5、3D8および4H4は、本発明によるある種の方法を実施するために用いられ得る。
【0097】
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらの断片、例えばF(ab’)およびFab断片、ならびにHE4aポリペプチドを特異的に結合する分子である任意の天然に存在するかまたは組換え的に産生される結合相手を包含する。抗体は、それらが約10−1以上の、好ましくは約10−1以上の、さらに好ましくは約10−1以上の、さらにより好ましくは約10−1以上のKでHE4aポリペプチドを結合する場合、「免疫特異的」であるまたは特異的に結合すると定義される。結合相手または抗体の親和性は、慣用的技法を用いて、例えばScatchard et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660 (1949)によりに記載された技法を用いて、容易に確定され得る。HE4aポリペプチドの結合相手としてのその他のタンパク質の確定は、他のタンパク質またはポリペプチドと特異的に相互作用するタンパク質を同定し、得るための多数の周知の方法のいずれか、例えば米国特許第5,283,173号および米国特許第5,468,614号または等価物に記載されたような酵母二ハイブリッドスクリーニング系を用いて、実施され得る。本発明は、HE4aポリペプチドと特異的に結合する結合相手および抗体を調製するための、HE4aポリペプチド、ならびにHE4aポリペプチドのアミノ酸配列を基礎にしたポリペプチドの使用も包含する。
【0098】
抗体は一般に、当業者に周知の種々の技法のいずれかにより調製され得る(例えばHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988参照)。このような一技法では、好ましくは1つまたは複数の追加免疫感作を組み入れる予定スケジュールに従って、HE4aポリペプチドを含む免疫原、例えばその表面にHE4aポリペプチドを有する細胞または単離HE4aポリペプチドが、最初に適切な動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジおよびヤギ)に注射され、動物は定期的に血を抜き取られる。次に、HE4aポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体が、例えば適切な固体支持体に結合されたポリペプチドを用いて、アフィニティークロマトグラフィーにより、このような抗血清から精製され得る。
【0099】
HE4aポリペプチドまたはそれらの改変体に特異的なモノクローナル抗体は、例えばKohler and Milstein (1976 Eur.J.Immunol.6:511−519)の技法およびその改良技法を用いて、調製され得る。要するにこれらの方法は、所望の特異性(すなわち当該メソテリンポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生可能な不死細胞株の調製を包含する。このような細胞株は、例えば、上記のように免疫感作された動物から得られる脾臓細胞から産生され得る。脾臓細胞は次に、例えば、骨髄腫細胞融合相手、好ましくは免疫感作動物と同系であるものとの融合により免疫感作される。例えば脾臓細胞および骨髄腫細胞は、膜融合促進剤、例えばポリエチレングリコールまたは非イオン性洗剤と2〜3分間併合され、次に、ハイブリッド細胞の増殖を支持するが骨髄腫細胞の増殖は支持しない選択培地上で低密度でプレート化され得る。好ましい選択技法は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を用いる。十分な時間の後、通常は約1〜2週間後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一コロニーが選択され、ポリペプチドに対する結合活性に関して試験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが好ましい。HE4aポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体を生じるハイブリドーマが、本発明により意図される。
【0100】
モノクローナル抗体は、増殖中のハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。さらに、収量を増強するために、種々の技法、例えば適切な脊椎動物宿主(例えばマウス)の腹膜腔中へのハイブリドーマ細胞株の注射が用いられ得る。次にモノクローナル抗体が腹水または血液から採取され得る。慣用的技法により、例えばクロマトグラフィー、ゲル濾過、沈降および抽出により、夾雑物が抗体から除去される。例えば抗体は、標準技法を用いて固定化プロテインGまたはプロテインA上でのクロマトグラフィーにより、精製され得る。
【0101】
特定の実施形態内では、抗体の抗原結合断片の使用が選択され得る。このような断片としては、標準技法を用いて(例えばFabおよびFc断片を産生するためのパパインを用いた消化により)調製され得るFab断片が挙げられる。FabおよびFc断片は、標準技法を用いて、アフィニティークロマトグラフィーにより(例えば固定化プロテインAカラム上で)分離され得る(例えばWeir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Boston参照)。
【0102】
種々のエフェクタータンパク質をコードする配列にインフレームで連結されるDNA配列によりコードされる免疫グロブリンV領域ドメインにより、予備選定抗原に対する特異的結合親和性を有する多機能性融合タンパク質は、例えばEP−B1−0318554、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号および米国特許第5,476,786号に開示されているように、当該技術分野で周知である。このようなエフェクタータンパク質は、当業者が熟知している種々の技法、限定はされないが例えばビオチン模倣配列(例えばLuo et al.,1998 J.Biotechnol.65:225およびそこに引用された参考文献参照)、検出可能標識部分を用いた直接共有的修飾、特異的標識レポーター分子との非共有結合、検出可能基質の酵素的修飾、あるいは固相支持体上での免疫感作(共有的または非共有的)のいずれかにより融合タンパク質の結合を検出するために用いられ得るポリペプチドドメインを包含する。
【0103】
本発明に用いるための単鎖抗体は、ファージディスプレイのような方法によっても生成され、選択され得る(例えば米国特許第5,223,409号;Schlebusch et al.,1997 Hybridoma 16:47;およびそれらに引用された参考文献参照)。要するにこの方法では、DNA配列は、線維状ファージ、例えばM13の遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIに挿入される。多重クローニング部位を有するいくつかのベクターが、挿入のために開発されている(McLafferty et al.,Gene 128:29−36,1993;Scott and Smith,Science 249:386−390,1990;Smith and Scott,Methods Enzymol.217:228−257,1993)。挿入DNA配列は無作為に生成されるか、またはHE4aポリペプチドとの結合のための周知の結合ドメインの改変体であり得る。単鎖抗体は、この方法を用いて容易に生成され得る。一般に挿入物は、6〜20アミノ酸をコードする。挿入配列によりコードされるペプチドは、バクテリオファージの表面に表示される。HE4aポリペプチドに関する結合ドメインを発現するバクテリオファージは、固定化HE4aポリペプチド、例えば当該技術分野で周知の方法および本明細書中に開示されるような核酸コード配列を用いて調製される組換えポリペプチドと結合することにより選択される。非結合ファージは、典型的には10mMのトリス、1mMのEDTAを含有し、塩を有さないかまたは低塩濃度を有する洗浄液により除去される。結合ファージは、例えば塩を含有する緩衝剤で溶離される。NaCl濃度は、すべてのファージが溶離されるまで、段階的に増大される。典型的には、高親和性で結合するファージは、より高い塩濃度により放出される。溶離ファージは、細菌宿主中で増殖される。さらに数回の選択を実施して、高親和性で結合する多少のファージに関して選択し得る。次に、結合ファージ中の挿入物のDNA配列が決定される。一旦、結合ペプチドの予測アミノ酸配列が分かれば、HE4aポリペプチドに特異的な抗体として本明細書中で用いるのに十分なペプチドは、組換え手段により、または合成的に作製され得る。組換え手段は、抗体が融合タンパク質として産生される場合に用いられる。ペプチドは、親和性または結合を最大にするために、2つ以上の類似のまたは類似でないペプチドのタンデムアレイとしても生成され得る。
【0104】
HE4aポリペプチドに特異的な抗体と反応性がある抗原決定基を検出するためには、検出試薬は典型的には抗体であり、これは本明細書中に記載されたように調製され得る。試料中のポリペプチドを検出するための抗体を用いるために当業者に周知の種々のアッセイフォーマットが存在し、例としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光測定法、免疫沈降法、平衡透析、免疫拡散法およびその他の技法が挙げられるが、これらに限定されない(例えばHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988;Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Boston参照)。例えばアッセイは、ウエスタンブロットフォーマットで実施され得るが、この場合、生物学的試料からのタンパク質調製物はゲル電気泳動に付され、適切な膜に移されて、抗体と反応させられる。次に、当該技術分野で周知であり、かつ以下に記載されるような適切な検出試薬を用いて、膜上の抗体の存在が検出され得る。
【0105】
別の実施形態では、アッセイは、標的HE4aポリペプチドと結合し、それを残りの試料から除去するために固体支持体上に固定された抗体の使用を包含する。結合HE4aポリペプチドは次に、別個のHE4aポリペプチド抗原決定基と反応性の第二の抗体、例えば検出可能レポーター部分を含有する試薬を用いて検出され得る。非限定的な例として、この実施形態によると、固定化抗体、ならびに別個の抗原決定基を認識する第二の抗体は、モノクローナル抗体2H5、3D8および4H4から選択される本明細書中に記載されるモノクローナル抗体のうちの任意の2つであり得る。あるいは、HE4aポリペプチドが検出可能レポーター部分で標識されて、固定化抗体と試料とのインキュベーション後に固定化HE4aポリペプチドに特異的な固定化抗体と結合させられる、競合アッセイが利用され得る。試料の構成成分が標識ポリペプチドと抗体との結合を阻害する程度は、試料と固定化抗体との反応性を示し、その結果、試料中のHE4aのレベルを示す。
【0106】
抗体が結合され得る固体支持体は、当業者に周知の任意の材料、例えばマイクロタイタープレート中の試験ウエル、ニトロセルロースフィルターまたは別の適切な膜であり得る。あるいは支持体は、ビーズまたは円板、例えばガラス、ファイバーグラス、ラテックスまたはプラスチック、例えばポリスチレンまたはポリ塩化ビニルであり得る。抗体は、特許および科学文献中に詳細に記載されている当業者に周知の種々の技法を用いて、固体支持体上に固定され得る。
【0107】
ある種の好ましい実施形態では、試料中のHE4a抗原ポリペプチドの検出のためのアッセイは、二抗体サンドイッチアッセイである。このアッセイは、試料中に天然に存在し、抗体と反応性がある抗原決定基を有する可溶性分子が固定化抗体に結合されて(例えば室温で30分間のインキュベーション時間で一般的に十分である)、抗原−抗体複合体または免疫複合体を形成するように、まず、固体支持体に、一般的には微小滴定プレートのウエルに固定されたHE4aポリペプチド特異的抗体(例えば2H5、3D8または4H4等のモノクローナル抗体)を、生物学的試料と接触させることにより実施され得る。次に、試料の非結合構成成分が、固定化免疫複合体から除去される。次に、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な第二抗体が付加されるが、この場合、第二の抗体の抗原結合部位は、固定化第一抗体の抗原結合部位とHE4aポリペプチド(例えば固体支持体上に固定されたモノクローナル抗体と同一でない2H5、3D8または4H4のようなモノクローナル抗体)との結合を競合的に阻害しない。第二の抗体は、直接検出され得るよう、本明細書中に提供されるように検出可能に標識され得る。あるいは第二の抗体は、検出可能に標識された第二の(または「第二段階」)抗抗体の使用により、または本明細書中に提供されるような特異的検出試薬の使用により、間接的に検出され得る。イムノアッセイに精通した者は、二抗体サンドイッチイムノアッセイにおいて特定抗原(例えばメソテリン(mesotheline)ポリペプチド)を免疫学的に検出するための多数の試薬および立体配置が存在することを理解するので、本発明の方法は、いかなる特定の検出手法にも限定されない。
【0108】
上述の二抗体サンドイッチアッセイを用いる本発明のある種の好ましい実施形体では、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な一次固定化抗体はポリクローナル抗体であり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な第二の抗体はポリクローナル抗体である。本発明のある種のその他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な一次固定化抗体はモノクローナル抗体であり、統一のため、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な第二の抗体はポリクローナル抗体である。本発明のある種のその他の実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な一次固定化抗体はポリクローナル抗体であり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な第二の抗体はモノクローナル抗体である。本発明のある種のその他の非常に好ましい実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な一次固定化抗体はモノクローナル抗体であり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な第二の抗体はモノクローナル抗体である。例えばこれらの実施形態では、これらのモノクローナル抗体の任意の対方式の組合せが用いられ得るよう、本明細書中に提供されるようなモノクローナル抗体2H5、3D8および4H4は、HE4aポリペプチド上の別個の、非競合的抗原決定基(例えばエピトープ)を認識する、ということに留意すべきである。本発明のその他の好ましい実施形態では、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な一次固定化抗体および/またはHE4a抗原ポリペプチドに特異的な第二の抗体は、当該技術分野で周知であり、かつ本明細書中で言及される、例えば限定ではなく例証として、Fab断片、F(ab’)断片、免疫グロブリンV領域融合タンパク質または単鎖抗体と呼ばれる抗体の種類のいずれかであり得る。本発明は、本明細書中に開示され、特許請求された方法におけるその他の抗体形態、断片、誘導体等の使用を包含すると、当業者は理解する。
【0109】
ある種の特に好ましい実施形態では、第二の抗体は、検出可能レポーター部分または標識、例えば酵素、染料、放射性核種、発光基、蛍光基またはビオチン等を含有し得る。次に、固体支持体に結合されたままの第二の抗体の量が、特異的検出可能レポーター部分または標識に適した方法を用いて確定される。放射性基に関しては、シンチレーション計数またはオートラジオグラフ法が一般に適している。抗体−酵素接合体は、種々のカップリング技法を用いて調製され得る(概説に関しては、例えばScouten ,W.H.,Methods in Enzymology 135:30−65,1987参照)。分光分析法は、染料(例えば酵素反応の比色分析産物)、発光基および蛍光基を検出するために用いられ得る。ビオチンは、異なるレポーター基(一般的に放射性基または蛍光基または酵素)に結合されたアビジンまたはストレプトアビジンを用いて検出され得る。酵素レポーター基は一般に、基質の付加(一般に特定時間の)と、その後の分光分析、分光光度分析または反応産物のその他の分析により検出され得る。標準および標準付加は、周知の技法を用いて、試料中のメソテリンポリペプチドのレベルを確定するために用いられ得る。
【0110】
別の実施形態では、本発明は、生物学的供給源または被験体からの生物学的試料中の免疫特異的反応性抗体の検出により悪性症状の存在に関してスクリーニングするための、本明細書中に提供されるようなHE4a抗原ポリペプチドの使用を意図する。この実施形態によれば、HE4a抗原ポリペプチド(あるいはその断片または改変体、例えば本明細書中に提供されるような短縮HE4a抗原ポリペプチド)は検出可能に標識され、生物学的試料と接触されて、試料中の天然で可溶性形態の抗体のHE4a抗原ポリペプチドとの結合が検出される。例えばHE4a抗原ポリペプチドは、周知の方法、例えば容易に検出可能な(例えば放射性標識された)アミノ酸のin vitro翻訳中の取り込みと呼応して、本明細書中に開示された配列を用いることにより、あるいはその他の検出可能レポーター部分、例えば上記のものを用いることにより、生合成的に標識され得る。理論に結び付けて考えたくはないが、本発明のこの実施形態は、ある種のHE4aポリペプチド、例えば本明細書中に開示されたHE4a融合ポリペプチドが、特に免疫原性であるために特異的かつ検出可能な抗体を生じるポリペプチドを提供し得る、ということを意図する。例えばこの理論によれば、ある種のHE4a融合ポリペプチドは、強烈な免疫応答を引き起こす「非自己」抗原を示し得るが、一方、融合ドメインを欠くHE4aポリペプチドは、体液性または細胞媒介性免疫を容易に引き出さない、より類似する「自己」抗原として、免疫系により見られ得る。
【0111】
上記のように、本発明は、一部は、可溶性形態のHE4a抗原ポリペプチドが被験体中に天然に存在し、例えばある種の癌腫を有する被験体においてこのような可溶性HE4aポリペプチドのレベルが増大する、という意外な知見に関する。
【0112】
本発明による悪性症状の存在に関するスクリーニング方法は、被験体からの生物学的試料中の2つ以上の腫瘍関連マーカーの検出により、さらに強化され得る。したがって、特定の実施形態では、本発明は、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体との天然に存在する可溶性試料構成成分の反応性を検出するほかに、当該技術分野で周知の、そして本明細書中に提供されるような確立された方法を用いた悪性症状の少なくとも1つの付加的な可溶性マーカーの検出も包含するスクリーニング方法を提供する。上記のように、容易に得られる生物学的流体の試料中に検出可能であるいくつかの可溶性腫瘍関連抗原が一般的に存在する。例えば本発明の特定の実施形態は、Scholler et al.(1999 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:11531)に記載され、そして米国特許出願09/523,597号にもに記載されているような新規の可溶性メソテリン関連抗原(MRA)ポリペプチドのようなポリペプチドを含むヒトメソテリンポリペプチドに関する。
【0113】
本明細書中に提供されるように、「メソテリンポリペプチド」は、以下のペプチド:
EVEKTACPSGKKAREIDES(配列番号14)
を含むアミノ酸配列を有し、そしてさらに、MAb K−1(Chang et al.,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:136;MAb K−1は、例えばSignet Laboratories,Inc.,Dedham,MAから入手可能である)の、あるいはU.S.A.N.09/513,597に提供されたようなモノクローナル抗体OV569、4H3、3G3または1A6の免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合部位を有する少なくとも1つの抗体と反応性がある少なくとも1つの抗原決定基を有する可溶性ポリペプチドである。
【0114】
したがって、本発明により用いるためのこれらの付加的な可溶性腫瘍関連抗原としては、メソテリンおよびメソテリン関連抗原、CEA、CA125、シアリルTN、SCC、TPSおよびPLAPが挙げられるが、これらに限定されず、例えば、Bast et al.,1983 N.Eng.J.Med.309:883;Lioyd et al.,1997 Int.J.Canc.71:842;Sarandakou et al.,1997 Acta Oncol.36:755;Sarandakou et al.,1998 Eur.J.Gynaecol.Oncol.19:73;Meier et al.,1997 Anticanc Res.17(4B):2945;Kudoh et al.,1999 Gynecol.Obstet.Invest.47:52;Ind et al.,1997 Br.J.Obstet.Gynaecol.104:1024;Bell et al.1998 Br.J.Obstet.Gynaecol.105:1136;Cioffi et al.,1997 Tumori 83:594;Meier et al.1997 Anticanc.Res.17(4B):2949 Meier et al.,1997 Anticanc.Res.17(4B):30119を参照、そしてさらに、生物学的試料中のそれらの存在が本明細書中に提供されるような少なくとも1つの悪性症状の存在と相関し得る任意の周知のマーカーが挙げられ得る。
【0115】
あるいは、HE4aポリペプチドをコードする核酸配列は、標準ハイブリダイゼーションおよび/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を用いて検出され得る。本明細書中に提供されるHE4a cDNA配列に基づいて、適切なプローブおよびプライマーが当業者により設計され得る。アッセイは一般に、生物学的供給源、例えば真核生物細胞、細菌,ウイルス、このような生物体から調製される抽出物、ならびに生体内に見出される流体から得られる種々の試料のいずれかを用いて実施され得る。
【0116】
以下の実施例は例証として提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0117】
(実施例1:ヒト試料中のHE4a発現の実時間PCR検出)
ワシントン大学(University of Washington)、スウェーデン病院(Swedish Hospital)およびフレッド・ハッチンソン癌リサーチセンター(Fred Hutchinson Cancer Research Center)(すべてワシントン州シアトル所在)により認可された手法に従って、158例のヒト組織生検または生検からのRNA試料を得た。正常組織(副腎、骨髄、脳、結腸、子宮内膜、胃、心臓、腎臓、肝臓、肺、肺、乳腺、骨格筋、骨格筋、子宮筋層、末梢神経、末梢血リンパ球調製物、唾液腺、皮膚、小腸、脊髄、脾臓、脾臓、気管、胸腺、子宮、末梢血リンパ球培養および40例の正常卵巣)からの、良性卵巣病変(13例の漿液性嚢腺腫)からの、境界悪性疾患の2例の卵巣腫瘍からの、3例のI期粘液性卵巣癌腫からの、3例のI期漿液性卵巣癌腫からの、37例のIII期漿液性卵巣癌種からの、7例のIV期漿液性卵巣癌腫からの試料、転移性卵巣癌種からの組織の6例の試料、および卵巣癌を有する女性からの2例の卵管が含まれた。組織試料はすべて、治療前の女性から採取し、各腫瘍の一部は、直ちに液体窒素中に入れて、残りの検体はルーチン組織学検査に付した。組織病理学的検査で80%より多い腫瘍細胞からなることが判明した、そして壊死を伴わない試料のみを、ハイブリダイゼーションおよび実時間PCR実験に用いた。卵巣表面上皮培養(OSE、B.Karlan,Cedars Sinai Hospital,Los Aangeles,CAから入手)からのRNA、ならびに3例の付加的OSE試料(R.Hernandez,University of Washington,Seattle,WA)も含まれた。全151例(非悪性組織94例および癌57例)を、下記のようにHE4aを含めた当該遺伝子の過剰発現の実時間定量的PCR確証のために保存した。
【0118】
実時間定量的PCRを、以下のように実施した。HE4実時間PCRプライマーは、以下の:
AGCAGAGAAGACTGGCGTGT(フォワード)(配列番号15)
および
GAAAGGGAGAAGCTGTGGTCA(リバース)(配列番号16)
であった。
【0119】
これらのプライマーは、427塩基長(bp)のPCR産物を生じた。メーカーに特定されたようにオリゴ−dTプライマーおよびSuperscriptII逆転写酵素(Life Technologies,Inc.,Bethesda,MD)を用いて、総RNAを逆転写した。ABI7700機(PE Biosystems,Foster City,CA)およびSYBR−Greenプロトコールを用いて、実時間定量的PCRを実施した。白血球cDNA調製物の2倍連続希釈の5つの複製物を、標準(S31iii125、これは、従来の実験では、正常および悪性組織において普遍的に発現されることが実証された。Schummer et al.,1999 Gene1999参照)の増幅のための鋳型として役立てた。
【0120】
GenBank寄託番号:U61734、フォワードプライマー:CGACGCTTCTTCAAGGCCAA(配列番号17)
リバースプライマー:ATGGAAGCCCAAGCTGCTGA(配列番号18)。
【0121】
負の対照は、酵素を用いずに逆転写された卵巣癌腫からの総RNAからなり、そして一ウエルは、いかなる鋳型も伴わずにPCRの全構成成分を含有した。全行程を二重反復試験で実施した。単一PCR帯域の存在に関して、各行程をアガロースゲル上で分析し、人工帯域を排除した。各96ウエルプレートに関する結果を、PCR機のメーカーにより提供されたソフトウエア(シーケンスデテクター(Sequence Detector)(登録商標))を用いて分析した。この分析は、標準に対する該核酸配列(HE4a)の発現レベルの確定を可能にした。
【0122】
発現値は、図1に示したように、内部標準に対して任意の単位で示したが、測定の標準単位でのmRNA分子の絶対量を反映しなかった。平均HE4a発現レベルの振幅およびこれらの値とその他の周知の遺伝子(注目すべきは高発現遺伝子としてのβアクチン)の比較に基づいて、図1は、HE4aをコードする転写体が中等度〜高度の相対レベルで発現されたことを示す。
【0123】
(実施例2:HE4aをコードする核酸配列のクローニングおよび発現)
高生産量HE4a cDNAクローンからのHE4a融合構築物cDNAの増幅:Kirchoff等(1991)により最初に発表されたHE4に関するcDNA配列(配列番号8)を、GenBank寄託番号X63187に寄託し、本明細書中に記載されるようなHE4aをコードするcDNA(配列番号10)をクローン化するためのオリゴヌクレオチドプライマー設計の基礎を提供した。高生産量cDNAアレイを用いて示差的発現された遺伝子産物として同定され、単離されたHE4aに関するcDNAを、pSPORT中で840塩基対断片としてクローン化した。このcDNAをPCR反応において鋳型として用いて、本実施例に記載したような合成融合タンパク質遺伝子を作製するのに適した形態でHE4aを増幅した。
【0124】
HE4コード配列(配列番号8)の一部は、推定分泌シグナルペプチドをコードすると思われた。したがってこのネイティブリーダーペプチドを最初の構築物に用いて、できるだけ多くの分子の構造を保存した。さらに、HE4aは相対的に小さく、配列はいかなる異常な構造的特徴、例えば膜貫通ドメインまたは細胞質ターゲッティング配列も含有しなかったため、ヒトIgG1 Fcドメインに融合された完全HE4a遺伝子産物を組入れた融合タンパク質を設計した。クローニングに適した制限部位をコードするプライマーを設計し、最終構築物のためのタンパク質ドメインの必要な枠内融合を作製した。5’プライマー(配列番号1またはHE4−5’)は39−merで、これはHindIII部位、最初のATGに隣接する発現を改良するためのKozak配列、ならびに前に公表されたHE4配列を基礎にしたHE4aリーダーペプチドの一部を包含した。3’プライマー(配列番号2またはHE4−3’−1)は36−merで、これはヒトIg尾部cDNAへの融合のための枠内BamHI部位を含み、HE4コード配列の3’末端はSTOPコドン直前で切頭された。これら2つのプライマーを50pmolで、そして1 ngのHE4/pSPORTプラスミドを鋳型として用いて、PCR増幅反応を実施した。50μlの反応物は、2.5単位(0.5ml)のExTaqDNAポリメラーゼ(TaKaRa Shuzo Biomedical,Otsu,Shiga,Japan)、希釈緩衝液およびヌクレオチドも、パッケージ挿入使用説明書にしたがって含入した。94℃で30秒、60℃で30秒および72℃で30秒の増幅プロフィールで、反応物を30回増幅した。全長HE4に関する予測サイズ(約400塩基対)のPCR産物を得た。
【0125】
これらの断片を制限消化し、精製して、ヒトIgG1挿入物をすでに含有する適切に消化された哺乳動物発現プラスミドに結繋した。結繋産物をDH5α細菌細胞中で形質転換させて、形質転換体をHE4−hIgG1融合遺伝子挿入物の存在に関してスクリーニングした。次に、ABI Prism310(PE Biosystems)シーケンサーでBigDyeターミネーターサイクルシーケンシングキット(PE Biosystems,Foster City,CA)を用いて、いくつかの単離物からのプラスミドDNAをシーケンシングした。さらに、これらの単離物からのプラスミドDNAをまた、に記載されたように(Hayden et al.,1994 Ther.Immunol.1:3)COS7細胞のDEAE−デキストラン一過性トランスフェクションにより、トランスフェクトした。培養上清を72時間後に採取し、プロテインA−アガロースを用いた免疫沈降、還元性SDS−PAGE電気泳動およびウエスタンブロッティングによりスクリーニングした(図2)。ヤギ抗ヒトIgG接合体を1:5000で用いて、その後ECL現像を用いて、ウエスタンブロットをプローブした。
【0126】
配列分析からの結果は、得られたHE4aコード配列(配列番号10)および推定アミノ酸配列(配列番号11)は、公表済みHE4コード(配列番号8)および翻訳化(配列番号9)配列とはいくつかの位置で異なる、ということを示した。したがって配列は、正常ヒト精巣上体からおよびいくつかの腫瘍細胞株から得られるcDNAから、および原発性腫瘍RNAから得て、そして配列番号10に記述されるようなHE4aコード配列および配列番号11に記述される推定コード化アミノ酸配列を確証した。
【0127】
腫瘍細胞株からのHE4cDNAのクローニング:メーカーの使用説明書に従って、Trizol(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を用いて、いくつかの卵巣腫瘍細胞株、例えば4007およびOVCAR3(例えばHellstrom et al.,2001 Canc.Res.61:2420参照)から、RNAを調製した。メーカーの指示に従って1〜3μgのRNA、無作為六量体およびSuperscriptII逆転写酵素(Life Technologies)を用いて、cDNAを調製した。1μgのcDNA、2.5単位(0.5ml)のExTaqDNAポリメラーゼ(TaKaRa Shuzo Biomedical,Otsu,Shiga,Japan)、希釈緩衝液およびヌクレオチドを、パッケージ挿入使用説明書にしたがって含入する50μlの反応液中の無作為プライム化cDNAならびにHE4−5’およびHE4−3’−1特異的プライマーから、HE4cDNAをPCR増幅した。94℃で30秒、60℃で30秒および72℃で30秒の増幅プロフィールで、反応物を30回増幅した。腫瘍由来cDNAからのHE4のPCR増幅のために、HE4−5’およびHE4−3’−1オリゴヌクレオチドを再び用いた。全長HE4に関する予測サイズのPCR産物を得て、配列分析のために、断片をpT−AdvanTAgeベクター(Clontech,Palo Alto,CA)中でクローン化した。挿入物を有するクローンを上記と同様にシーケンシングし、腫瘍RNA試料からのPCR断片は、上記の元のクローンと同一のHE4a配列をコードすることが判明した。これらのHE4a配列は、HE4に関する公表済み配列とは異なっていた(Kirchhoff et al.,1991)。同様に、HE4aコード配列は、正常精巣上体(配列番号10)から、ならびに原発性腫瘍組織cDNA(配列番号12)から得られ、したがって上記の新規HE4a配列と適合したが、しかしKirchhoff et al.(1991)のHE4配列(配列番号8)とは異なった。
【0128】
HE4Ig融合タンパク質の産生:上記のpCDNA3の誘導体である哺乳動物発現ベクターpD18の多クローニング部位に、HindIII−XbaI断片として、HE4−hIgG1 cDNA構築物(配列番号7)を挿入した(Hayden et al.,1996 Tissue Antigens 48:242)。構築物を、上記(Hayden et al.,1994 Ther.Immunol.1:3)のようにDEAE−デキストラン一過性トランスフェクションにより、最初にトランスフェクトした。いくつかの単離物からのプラスミドDNAを調製し、COS7細胞を一過性トランスフェクトするために用いた。培養上清を72時間後に採取し、プロテインA−アガロースを用いた免疫沈降、還元性SDS−PAGE電気泳動およびウエスタンブロッティングによりスクリーニングした(図2)。
【0129】
CHO−DG44細胞(Urlaub et al.1986 Somat.Cell.Mol.Genet.12:55)を用いて、高レベルの当該融合タンパク質を発現する安定株を構築した。pD18ベクター中で高コピー電気穿孔により(Hayden et al.,1996 Tissue Antigens 48:242;Barsoum,1990 DNA Cell Biol.9:293)、ならびに組換えインスリン(Life Technologies,Gaithersburg,MD)、ピルビン酸ナトリウム(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)、グルタミン(Irvine Scientific)、MEMのための2×非必須アミノ酸(Irvine Scientific)および100nMのメトトレキセート(Sigma,St Louis,MO)を含有するエクセル302CHO培地(JRH Biosciences,Denver,PA)中での限定希釈によるメトトレキセート耐性クローンの選択により、HE4Igを発現する安定CHO株を作製した。次に耐性クローンからの培養上清をIgGサンドイッチELISAによりアッセイして、高産生株に関してスクリーニングした。消耗上清を大規模培養から採取し、2mlプロテインA−アガロース(Repligen,Cambridge,MA)カラム上でのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより、HE4Igを精製した。融合タンパク質を0.1Mクエン酸塩緩衝液(pH2.7)中の0.8ml分画としてカラムから溶離し、100μlの1Mトリスベース(pH10.5)を用いて中和した。溶離分画を280nmでの吸光度に関してアッセイし、融合タンパク質を含有する分画をプールして、7リットルのPBS(pH7.4)中で一晩透析し、0.2μmの注射器フィルターユニット(Millipore,Bedford,MA)を通して濾過滅菌した。
【0130】
安定トランスフェクト体を用いて、BALB/cマウスの感作のために十分なタンパク質を産生した。マウスを最初に10μgの精製HE4−hIgG1融合タンパク質を用いて、4週間間隔で腹腔内(IP)注射した。この免疫感作プロトコールを用いた初回注射および2回の追加免疫後、10μgのタンパク質+TiterMax金アジュバントIPを、次にさらに2回の追加免疫のSCをマウスに注射した後、脾臓を摘出した。感作マウスからの脾臓細胞を骨髄腫相手P3−X63−Ag8−653と融合することにより、ハイブリドーマを作製した。
【0131】
HE4Ig融合タンパク質のウエスタン分析:10%Tris/BisNOVEXゲル(Invitrogen,San Diego,CA)上でのSDS−PAGE電気泳動により、タンパク質試料を分解し、半乾燥ブロッティングによりPVDF膜(Millipore)上に移した。PBS/0.25%NP−40またはTBS−T(50mMのトリスHCl、pH7.6、0.15MのNaClおよび0.05%のTween−20)中の5%脱脂乾燥乳(Carnation)中で、4℃で一晩インキュベートすることにより、膜を遮断して、非特異的抗体結合を防止した。膜を、HRP−ヤギ抗ヒトIgG(1/10,000)とともに、またはTBS−T中のHRP−ストレプトアビジン(1:5000)(Caltag)とともに、室温または4℃で1時間、静かに撹拌しながらインキュベートした。TBSTで2回すすぎ、4回洗浄後、ECL(登録商標)(Amersham,Little Chalfont,UK)試薬中で60秒間、膜をインキュベートし、帯域の可視化のためにオートラジオグラフィーフィルムに曝露した(図2)。培養上清から、または精製試料のプロテインA溶離液から融合タンパク質試料を採取し、50μlのプロテインAアガロース(Repligen,Cambridge,MA)を用いてプロテインAを沈降させた。免疫沈降物を洗浄し、緩衝剤を投入したSDS−PAGE還元試料中に再懸濁して、沸騰させ、次に10%Tris/BisNOVEXゲル(Invitrogen,San Diego,CA)上でのSDS−PAGE電気泳動により分解し、半乾燥ブロッティングによりPVDF膜(Millipore)上に移した。PBS/0.25%NP−40またはTBS−T(50mMのトリスHCl、pH7.6、0.15MのNaClおよび0.05%のTween−20)中の5%脱脂乾燥乳(Carnation)中で、4℃で1時間から一晩インキュベートすることにより、膜を遮断して、非特異的抗体結合を防止した。膜を、HRP−ヤギ抗ヒトIgG(1/10,000)とともにインキュベートし、TBS−T中で洗浄して、ECL(登録商標)(Amersham,Little Chalfont,UK)試薬中で60秒間、曝露した。次にECL−ブロットを、帯域の可視化のためにオートラジオグラフィーフィルムに曝露した。図2のレーン1は、CTLA4−hIgG1トランスフェクト化COS7細胞の上清からの免疫沈降試料を含有し、レーン3およびレーン4はHE4−hIgG1融合タンパク質培養上清を含有し、レーン5は偽トランスフェクト化COS上清を含有した。HE4−hIgG1融合タンパク質は、還元ゲルまたはウエスタンブロット上で約48kDaの見かけのMrで走行し、予測アミノ酸配列に基づいて予測された39kDaより大きかったが、これは、分子がグリコシル化されたことを示唆する。
【0132】
HE4−mIgG2a融合タンパク質の構築および発現:HE4−hIgG1融合遺伝子と同様の構築物を作製したが、しかしヒトIgG Fc断片の代わりにネズミIgG2aドメインを用いた。マウスの免疫感作がヒトIg尾部融合ドメインの免疫原性により影響を受けないよう、代替尾を用いた。mIgG2a尾部の既存のcDNAクローンは、上記のHE4aクローンに関して枠外にあり、したがってmIgG2aカセットをこのようなプラスミドから再増幅して、枠内融合ドメインを作製した。用いたフォワードセンスプライマーは、
mIgG2aBAMIF:
5’−gttgtcggatccgagcccagagggcccacaatcaag3’(配列番号19)
であり、一方、リバースアンチセンスプライマーを以下のように命名した:
mIgG2a3’Xba+S:
5’−gttgtttctagattatcatttacccggagtccgggagaagctc−3’(配列番号20)
用いた鋳型は、ネズミIgG2a Fcドメインに融合されるが、コドンスペーシングに関する枠害の融合接合部に制限部位を有さないネズミCTLA4を含有した。HE4との融合遺伝子が完全HE4−mIgG2a融合タンパク質の発現を生じるよう、新規のオリゴヌクレオチドは、フレームシフトを作製し、BamHI部位でのリーディングフレームを変更する。ヒト融合遺伝子に関してに記載したのと同様に、PCR産物を増幅し、サブクローニングして、プロセシングした。HE4−ヒトIgG1融合タンパク質に関して上記したのと同様に、分子をpD18哺乳動物発現ベクター中でサブクローニングし、安定CHOクローンを生成し、癒合タンパク質を発現させた。
【0133】
(実施例3:HE4aに特異的なモノクローナル抗体)
抗HE4aMabの生成:最初の実験で、上記と同様に調製したHE4a−hIgG融合タンパク質を用いて、アジュバントを用いた場合と用いない場合とで、数匹のBALB/cマウスを免疫感作した。これらのマウスにおいて高抗体力価が観察されたが、hIgG尾を有する対照融合タンパク質(CTLA4−hIg融合)に対して同様に高い力価が観察されたため、抗体はHE4aに特異的でなかった。したがって、HE4a−mIgG融合タンパク質を免疫感作のために用いた。図3は、メーカーの使用説明書に従ってHE4a−mIgG+アジュバント(TiterMax(商品名)、CytRx Corp.,Norcross,GA)で各々2回免疫感作された(尾部に皮下投与された)2匹のBALB/cマウス(1605および1734)におけるHE4aに対して高力価(high titered)抗体をもたらした2つの免疫感作からの結果を示す。高いHE4a特異的抗体力価を示すマウスからの脾臓細胞を用いて標準方法により、HE4a特異的ハイブリドーマを調製した。図4は、マウス1605(その血清データを図3に示す)からの脾臓細胞を用いて作製されたハイブリドーマの、ELISAによる初回試験を示す。3つのウエルは、HE4a−hIgに対して高反応性を示した。その後、限定希釈によるクローニング後に、3つのハイブリドーマ2H5、3D8および4H4をこれらのウエルから単離した。ハイブリドーマ2H5および3D8は、競合アッセイにより異なるエピトープを確認することが判明した。
【0134】
腫瘍診断のためのELISAの構築および適用:上記で言及した2つのMAb2H5および3D8を用いて、血清およびその他の流体中のメソテリン/MPFおよび関連抗原を測定するELISA(Scholler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11531,1999)の作製に用いたのと同様のアプローチを用いて、二重決定因子(「サンドイッチ」)ELISAを構築した。図5は、DMEM培地中で希釈されたHE4a−hIgGを用いて調製された標準曲線の一例を示す。図に示したように、1ngのレベルのHE4a−hIgGで、シグナルを検出した。図5は、卵巣癌腫株(4007)からの非希釈培地が検出可能シグナルを示した、ということも示す。図6は、卵巣癌を診断された患者(OV50で示す)からの腹水が、試験した最高希釈(1:1280)で依然として検出可能であったHE4a抗原を含有した、ということを示す。
【0135】
用いた2つの抗体の最適量を確定することにより、初回HE4aELISAを改良した。これらの抗体の1つである2H5をビオチニル化し、他方の抗体3D8を、試験プレートの底に結合させることにより固定した。アッセイのための2つのモノクローナル抗体のそれぞれの用量は、2.5および100μg/mlであった。異なるMabおよび直前に記載した使用中のMabの用量を除いて、アッセイ方法は、メソテリン/MPFおよび関連分子に関してに記載したものと同一であった(Scholler et al.,1999 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,11531)。
【0136】
卵巣癌を有する患者からのならびに種々の対照からの血清の予備試験は、HE4aタンパク質が、卵巣癌を有する患者、例えば早期疾患を有する患者の有意の分画で増大されるが、バックグラウンドが非常に低い対照血清中では増大されないことを示した。上記のサンドイッチELISAアッセイおよび約400名の患者からのコード化血清試料(Swedish Hospital,Seattle,WAにより提供された)を用いた試験では、卵巣癌と診断された患者からの全試料が、HE4aELISAにより陽性であると正しくスコアされ、これはさらに擬陽性と予測されることはなかった。したがって、理論に結び付けて考えたくはないが、血清およびその他の体液中のHE4aタンパク質に関するアッセイは、それにより卵巣癌に関する既存の診断アッセイ(例えばCA125)に対する臨床的に有益な補足物を提供し得ることが意図される。さらに、ELISAは卵巣癌の診断を補助するその能力に関して今まで調べられてきたが、HE4aコード抗原を過剰発現する任意の腫瘍にも同様に適用可能であるはずである。同一のELISAまたはその変法は、将来的な試験がこのようなものを同定する場合には、HE4関連分子の試験にも適用可能であるはずである。
【0137】
細胞表面でのHE4タンパク質の発現:卵巣癌細胞株を負の対照としてのB細胞株とともに用いて、フローサイトメトリーを用いて実施した試験は、HE4aコード抗原がいくつかの卵巣癌の間で、細胞表面で発現される、ということを示した。用いた細胞株および用いたフローサイトメトリー技法は、以前に記載されている(Hellstrom et al.,2001 Cancer Res.61,2420)。例えば、OVCAR3細胞の93%が陽性であり、同様に卵巣癌株4010からの細胞の71%および卵巣癌株HE50OVからの細胞の38%が陽性であったが、一方、試験した別の10例の卵巣癌株からは20%未満の細胞が陽性であった。このことは、非限定理論によると、細胞表面のHE4a抗原は、HE4a特異的抗体媒介性および/またはHE4a特異的T細胞媒介性療法といったような免疫療法戦略のための標的を提供する、ということを示唆する。
【0138】
(実施例4:HE4aエピトープを標的化する予防的および治療的ワクチン)
上記の組成物および方法を用いて、ある種の腫瘍(特に悪性卵巣腫瘍)中でのHE4aコード核酸配列の増幅および/またはHE4a過剰発現の検出を実施し、HE4a発現レベルを正常組織中のレベルと比較する。腫瘍中のHE4a特異的モノクローナル抗体規定エピトープの出現増大は、癌療法における適用可能性を有する予防的または防止的ワクチンに対する標的として用いられるHE4aエピトープの同定を提供する。このようなワクチンはまた、受精能(特定の実施形態では、四−ジスルフィドコアファミリーの成員、例えばSlp−1によるプロテアーゼ阻害に関する周知のアッセイを用いたHE4aプロテアーゼ阻害またはプロテアーゼ強化活性の実証により反映され得る)を有用に変更し得る(例えば適切な対照と比較して、統計学的に有意の方法で増大または低減する)。ワクチン製造のための多様なアプローチが確認されており、多数の概論に記載されている(例えば、Hellstrom and Hellstrom,In Handbook in Experimental Pharmacology,vol."Vaccines",Springer,Heidelberg,p.463,1999による)。これらの例としては、タンパク質、融合タンパク質およびペプチド、DNAプラスミド、組換えウイルス、抗イディオタイプ抗体、ペプチドエピトープでin vitroでパルス処理された樹状細胞、ならびに抗イディオタイプ抗体の使用が挙げられるが、これらに限定されない。ワクチンは、単独で、またはアジュバントおよび/またはリンホカイン、例えばGMCSFと組合せて、用いられ得る。非限定的な理論によれば、T細胞は細胞表面のMHC分子の状況で存在するエピトープを認識するが、循環抗原または免疫複合体と反応しないため、上記のような循環可溶性HE4aタンパク質の検出は、T細胞媒介性免疫を誘導するワクチンの使用を妨害するとは予測されない。
【0139】
上記から、説明のために本発明の特定の実施形態を本明細書中に記載してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更が成され得る、と理解される。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0140】
本明細書中では、「含む(comprise)」とは、「包含する、または〜からなる」ことを意味し、そして「〜を含む(comprising)」とは「〜を包含する、または〜からなる」ことを意味する。
【0141】
特定の形態で、または開示された機能、あるいは開示された結果を得るための方法または過程を実施するための手段に関して表された上記の説明または添付の特許請求の範囲あるいは添付の図面に示された特質は、適宜、別個に、またはこのような特質の任意の組合せで、その多様な形態で本発明を実現するために利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程:
抗体と抗原決定基との結合を検出するために十分な条件下でかつそのために十分な時間にわたり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料とを接触させて、該試料中において可溶性形態で天然に存在し、かつ、該少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する分子の、該生物学的試料中での存在を確定する工程、および
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む方法。
【請求項2】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
抗体と抗原決定基との結合を検出するために十分な条件下でかつそのために十分な時間にわたり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と被験体からの細胞を含む生物学的試料を接触させて、該少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する細胞表面分子の前記生物学的試料中での存在を確定する工程、および
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む方法。
【請求項3】
前記生物学的試料は、血液、血清、漿液、血漿、リンパ、尿、脳脊髄液、唾液、粘膜分泌物、膣分泌物、腹水、胸水、囲心腔液、腹膜液、腹腔液、培地、ならし培地および灌注液からなる群から選択される、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的試料は血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的試料は血漿である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料は腹水および胸水からなる群から選択される、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的試料は膣分泌物である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
HE4a抗原が配列番号11に記述される配列を有するポリペプチドあるいはその断片または誘導体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
HE4a抗原ポリペプチドがスプライス改変体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記HE4a抗原は配列番号5に記述される配列を有するポリペプチドあるいはその断片または誘導体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記HE4a抗原ポリペプチドはスプライス改変体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記HE4a抗原ポリペプチドはHE4a抗原改変体あるいはその断片または誘導体である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記抗体はポリクローナル抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記抗体は親和性精製抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記抗体はモノクローナル抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は組換え抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記抗体はキメラ抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記抗体はヒト化抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記抗体は単鎖抗体を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記抗体と抗原決定基の結合の検出は放射性核種の検出を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記抗体と抗原決定基の結合の検出は蛍光体(fluorophore)の検出を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項22】
抗体と抗原決定基の結合の検出がアビジン分子とビオチン分子の間の結合事象の検出を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記抗体と抗原決定基の結合の検出はストレプトアビジン分子とビオチン分子の間の結合事象の検出を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体と抗原決定基の結合の検出は酵素反応の生成物の分光光度検出を含む、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの抗体は検出可能に標識される、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの抗体は検出可能に標識されず、抗体と抗原決定基の結合の検出が間接的である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記悪性症状は、腺癌、中皮腫、卵巣癌、膵臓癌および非小細胞肺癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程:
抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料を接触させて(i)該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の該生物学的試料中での存在を確定する工程であって、該試料は被験体からの細胞を含み、該分子は該少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有し、該抗体の抗原結合部位は、2H5、3D8および4H4からなる群から選択されるモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に抑制する、工程、および
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項29】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程:
抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料を接触させて(i)該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の該生物学的試料中での存在を確定する工程であって、該試料は被験体からの細胞を含み、該分子は該抗体と反応性がある抗原決定基を有し、該抗体の抗原結合部位は、モノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する、工程、および
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項30】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、少なくとも1つのHE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体と被験体からの生物学的試料を接触させて(i)該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の該生物学的試料中での存在を確定する工程であって、該試料は被験体からの細胞を含み、該分子は該抗体と反応性がある抗原決定基を有し、ここで、該少なくとも1つの抗原は、HE4a抗原に免疫特異的に結合する、工程
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項31】
前記HE4a抗原は、3D8、2H5および4H4からなる群から選択されるモノクローナル抗体とも免疫特異的に反応性がある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
抗体と前記抗原決定基との結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、少なくとも1つのHE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と被験体からの生物学的試料を接触させて(i)該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、ならびに(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の該生物学的試料中での存在を確定する、接触させる工程であって、該試料は被験体からの細胞を含み、該分子は該少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有し、その抗原結合部位は、2H5、および4H4からなる群から選択されるモノクローナル抗体の免疫特異的結合を競合的に抑制し、ここで、該少なくとも1つの抗原は、HE4a抗原に免疫特異的に結合する、工程、ならびに
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項33】
前記HE4抗原はモノクローナル抗体3D8と免疫特異的に反応性がある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
少なくとも1つの固定された第一の抗体をHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合させて、免疫複合体を形成するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、該HE4a抗原ポリペプチドに特異的な該少なくとも1つの固定された第一抗体と被験体からの生物学的試料とを接触させて、該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子の該生物学的試料中での存在を確定する工程であって、該少なくとも1つの第一の抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する、工程、
該少なくとも1つの固定された第一の抗体と特異的に結合しない試料の構成成分を除去する工程、および
該少なくとも1つの第二の抗体と該HE4a抗原ポリペプチドとの特異的結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、該免疫複合体をHE4a抗原ポリペプチド少なくとも1つの第二の抗体と接触させる工程であって、該少なくとも1つの第二の抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体2H5の免疫特異的結合を競合的に抑制しない、工程、および、悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項35】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
少なくとも1つの固定された第一の抗体をHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合させて、それにより免疫複合体を形成するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの固定された第一の抗体と被験体からの生物学的試料を接触させて、該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子の該生物学的試料中での存在を確定する工程であって、該少なくとも1つの第一の抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する、工程、
前記少なくとも1つの固定された第一の抗体と特異的に結合しない試料の構成成分を除去する工程;ならびに
該少なくとも1つの第二の抗体と該HE4a抗原ポリペプチドの特異的結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、該免疫複合体をHE4a抗原ポリペプチドに少なくとも1つの第二の抗体と接触させる工程であって、該少なくとも1つの第二の抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体2H5の免疫特異的結合を競合的に抑制しない、工程、および、
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項36】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
少なくとも1つの固定された第一の抗体をメソテリン関連抗原ポリペプチドと特異的に結合させることにより免疫複合体を形成するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの固定された第一の抗体と被験体からの生物学的試料を接触させて、該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子の該生物学的試料中での存在を確定する工程であって、該少なくとも1つの第一の抗体の抗原結合部位がモノクローナル抗体3D8の免疫特異的結合を競合的に抑制する、工程、
該少なくとも1つの固定された第一の抗体と特異的に結合しない試料の構成成分を除去する工程;ならびに
該少なくとも1つの第二の抗体と該HE4a抗原ポリペプチドの特異的結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、該免疫複合体をHE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの第二の抗体と接触させる工程であって、該少なくとも1つの第二の抗体の抗原結合部位はモノクローナル抗体4H4の免疫特異的結合を競合的に抑制しない、工程、および
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項37】
中皮種関連抗原、癌胎児性抗原、CA125、シアリルTN、扁平上皮細胞癌抗原、組織ポリペプチド抗原および胎盤アルカリ性ホスファターゼからなる群から選択される悪性症状の少なくとも1つの可溶性マーカーの前記試料中の存在を確定する工程をさらに含む、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
抗体と抗原決定基との結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、(i)悪性症状を有する疑いのある一次被験体からの一次生物学的試料、ならびに(ii)悪性症状を有さないことが周知である第二の被験体からの第二の生物学的試料の各々を、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な少なくとも1つの抗体と接触させて、(i)該試料中の可溶性形態で天然に存在する分子、および(ii)細胞表面分子からなる群から選択される分子の該第一および第二の生物学的試料の各々における存在を確定する工程であって、該第一および第二の生物学的試料は各々、該第一および第二の被験体からの細胞をそれぞれ含み、該分子は、該少なくとも1つの抗体と反応性がある抗原決定基を有する、工程、
第一の生物学的試料中の該抗体と該抗原決定基の検出可能な結合を、第二の生物学的試料中の該抗体と該抗原決定基の検出可能な結合のレベルと比較する工程、および
それから悪性症状の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項39】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程:
HE4a抗原ポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体の存在を被験体からの生物学的試料中で検出する工程
を含む、方法。
【請求項40】
前記HE4a抗原ポリペプチドは、配列番号5、配列番号7、配列番号11および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
HE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル免疫グロブリン可変部を含むHE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体であって、
前記HE4a抗原ポリペプチドは、配列番号5、配列番号7、配列番号11および配列番号13からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、抗体。
【請求項42】
融合タンパク質である、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
単鎖抗体である、請求項41に記載の抗体。
【請求項44】
HE4a抗原ポリペプチドがグリコシル化される、請求項41に記載の抗体。
【請求項45】
(i)配列番号11に記述されるHE4a抗原ポリペプチド配列と特異的に結合するが、配列番号9に記述されるポリペプチド配列とは特異的に結合しない抗体、(ii)配列番号9に記述されるポリペプチド配列と特異的に結合し、そして配列番号11に記述されるHE4aポリペプチド配列と特異的に結合する抗体からなる群から選択される、請求項41に記載の抗体。
【請求項46】
モノクローナル抗体2H5、3D8および4H4からなる群から選択される、請求項41に記載の抗体。
【請求項47】
被験体における悪性症状の存在に関してスクリーニングする方法であって、以下の:
該試料中の可溶性形態である天然の抗体の該HE4aポリペプチドとの結合を検出するための条件下でかつそのために十分な時間にわたり、被験体からの生物学的試料を検出可能に標識されたHE4aポリペプチドと接触させる工程、および
悪性症状の存在を検出する工程
を含む方法。
【請求項48】
(a)HE4a抗原ポリペプチドおよび少なくとも1つの融合ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが配列番号5に記述されるアミノ酸配列、配列番号7に記述されるアミノ酸配列、配列番号11に記述されるアミノ酸配列および配列番号13に記述されるアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、融合タンパク質をコードする核酸分子、ならびに
(b)中等度のストリンジェント条件下で該(a)の核酸分子とハイブリダイズすることが可能な、そしてHE4aポリペプチドをコードする核酸分子
からなる群から選択される単離核酸分子であって、配列番号9に記述されるヌクレオチド配列からなる核酸分子ではない、単離核酸分子。
【請求項49】
請求項48に記載の核酸分子と相補的な少なくとも15連続ヌクレオチドを含む、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項50】
融合ドメインに融合されるHE4aポリペプチド配列を含む、融合タンパク質。
【請求項51】
前記融合ドメインは免疫グロブリンあるいはその改変体または断片である、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項52】
前記HE4aポリペプチドに融合されるポリペプチド配列はプロテアーゼにより切断可能である、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項53】
前記ポリペプチド配列はリガンドに対する親和性を有する親和性タグポリペプチドである、請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項54】
請求項48に記載の核酸に作動可能に連結される少なくとも1つのプロモーターを含む、組換え発現構築物。
【請求項55】
前記プロモーターは調節されるプロモーターである、請求項54に記載の発現構築物。
【請求項56】
前記HE4aポリペプチドは第二の核酸配列のポリペプチド産物との融合タンパク質として発現される、請求項54に記載の発現構築物。
【請求項57】
前記第二の核酸配列のポリペプチド産物は免疫グロブリン定常部である、請求項56に記載の発現構築物。
【請求項58】
組換えウイルス発現構築物である、請求項54に記載の組換え発現構築物。
【請求項59】
請求項54〜58のいずれか一項に記載の組換え発現構築物を含む、宿主細胞。
【請求項60】
原核生物細胞である、請求項59に記載の宿主細胞。
【請求項61】
真核生物細胞である、請求項59に記載の宿主細胞。
【請求項62】
組換えHE4aポリペプチドを産生する方法であって、以下の:
請求項48に記載の核酸配列に作動可能に連結される少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現構築物を含む宿主細胞を培養する工程
を含む方法。
【請求項63】
前記プロモーターは調節されるプロモーターである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
組換えHE4aポリペプチドを産生する方法であって、
請求項58に記載の組換えウイルス発現構築物に感染された宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
【請求項65】
試料中のHE4a発現を検出する方法であって、以下の:
(a)請求項49に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドあるいはその断片または改変体をコードする核酸配列を含む試料と接触させる工程、および
(b)前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするHE4aポリペプチドコード核酸の量を試料中で検出し、それから前記試料中のHE4a発現を検出する工程を含む、方法。
【請求項66】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするHE4aポリペプチドコード核酸の量は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて確定される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするHE4aポリペプチドコード核酸の量は、ハイブリダイゼーションアッセイを用いて確定される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記試料はRNAまたはcDNA調製物を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
悪性症状の治療方法であって、HE4a抗原ポリペプチドに特異的な抗体であって、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4a抗原ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル免疫グロブリン可変部を含む抗体を含む組成物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項70】
悪性症状を治療する方法であって、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドを含む組成物またはその断片を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項71】
前記組成物は、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドまたはその断片と特異的に結合することが可能な抗体の患者における産生を誘導する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記組成物は、配列番号11に記述されるアミノ酸配列を有するHE4aポリペプチドまたはその断片を特異的に認識可能なTリンパ球を患者において誘導する、請求項70に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161317(P2012−161317A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56979(P2012−56979)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【分割の表示】特願2009−104717(P2009−104717)の分割
【原出願日】平成14年8月29日(2002.8.29)
【出願人】(501199036)パシフィック ノースウエスト リサーチ インスティテュート (4)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】