癌退縮抗原NY−ESO−1およびLAGE−1を含む融合タンパク質
LAGE-1由来の抗原に連結されたNY-ESO-1由来の抗原を含む融合タンパク質であって、担体、融合パートナー、等をさらに含んでよい融合タンパク質を提供する。また、そのような融合タンパク質の製造方法、製剤化方法、および使用方法を提供する。そのようなタンパク質は、一連の癌-抗原-保持細胞に対する免疫応答を誘発するためのワクチン成分として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、概して、癌退縮抗原NY-ESO-1およびLAGE-1の一方または両者由来の抗原を含むポリペプチドおよび構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌精巣(CT)抗原は、その発現が通常は精巣、卵巣または栄養膜細胞中の生殖細胞に限定される腫瘍関連抗原の1クラスである。これらの抗原は、通常、成体の体細胞組織では発現されない。Simpson, et al., Nat. Rev. Cancer, 5(8):615-625 (2005); Scanlan, et al., Immunol. Reviews, 188:22-32 (2002); Scanlan, et al., Canc. Immun., 4:1-15 (2004)を参照のこと。
【0003】
CT抗原の遺伝子調節は癌患者において破壊され、それが多種多様な腫瘍におけるこれらの抗原の異常発現につながる。最初の同定対象のCT抗原であるMAGE-1は、1990年代前半にT細胞エピトープクローニングによって同定された(van der Bruggen et al, 1991 Science 13;254(5038):1643-7; van der Bruggen et al, 1999 Science 254:1643-1647; Traversari, et al, 1992 Immunogenetics, 35(3):145-152; および米国特許第5,342,774号(参照により組み入れられる))。それ以後、血清学的発現クローニング技術(SEREX) (Sahin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(25):11810-11813 (1995)および米国特許第5,698,396号)、酵母表面での組換え抗原発現(RAYS) (Mischo, et al., Canc. Immun., 3:5-16 (2003))およびディファレンシャルmRNA発現解析(Gure, et al., Int. J. Canc., 85(5):726-732 (2000))によっておよそ90種のCT抗原が同定され、そしてその数は今後数年間に増えることが予測される。、癌患者におけるいくつかのCT抗原は、その免疫原性により、腫瘍ワクチンを開発するための理想的な標的となる。
【0004】
NY-ESO-1。癌免疫療法での使用に関して現在注目されている癌精巣抗原がNY-ESO-1である。この抗原は、Ludwig Institute for Cancer ResearchのNew York Branchで90年代後半に食道扁平上皮癌でのSEREXによって最初に同定された(Chen, et al., PNAS USA, 94(5):1914-1918 (1997); および米国特許第5,804,381号(参照により組み入れられる))。
【0005】
タンパク質NY-ESO-1は長さが180アミノ酸であり、以下の3領域からなるものとして説明することができる:
N末端領域 約またはおよそアミノ酸1〜70位
中央領域 約またはおよそアミノ酸71〜134位、および
C末端領域 約またはおよそアミノ酸135〜180位。
【0006】
コラーゲン様領域は、N末端領域の約またはおよそまたは約アミノ酸15〜73位を含む(図1を参照のこと)。
【0007】
タンパク質NY-ESO-1は多種多様な腫瘍において見出されており、そのような腫瘍には、非限定的に、卵巣癌、肺癌、乳癌、前立腺(prostrate)、食道癌、膀胱癌および黒色腫が含まれる。(Nicholaou T, et al, Immunol Cell Biol. 2006 Jun;84(3):303-17およびJungbluth, et al. 2001, Int. J. Canc., 92(6):856-860)。この抗原に対する自発的体液性免疫応答および細胞性免疫応答が、NY-ESO-1陽性腫瘍を有する患者において報告されており、いくつかのHLA (ヒト白血球抗原)クラスIおよびII拘束性ペプチドが同定されている(Jager, et al., 1998 J. Exp. Med., 187(2):265-270; Yamaguchi, et al., 2004 Clin. Canc. Res., 10(3):890-961; およびDavis, et al., 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101(29):10697-10702)。特許文献の例は、米国特許第6,140,050号; 第6,251,603号; 第6,242,052号; 第6,274,145号; 第6,338,947号; 第6,417,165号; 第6,525,177号; 第6,605,711号; 第6,689,742号; 第6,723,832号; 第6,756,044号; および第6,800,730号であり、これらの文献はすべて参照により組み入れられる。
【0008】
臨床試験では、HLA-A2に対する結合モチーフを有する3種の部分オーバーラップNY-ESO-1由来ペプチド(157-167、157-165および155-163)が、転移性NY-ESO-1発現腫瘍を有する12人の患者を治療するためのワクチンにおいて使用されている。この試験では、合成NY-ESO-1ペプチドを安全に投与することができ、潜在的に有益なT細胞応答を生成可能であることが実証された(Jager, et al., 2000 PNAS USA, 97(22):12198-12203)。
【0009】
該タンパク質中の多数のMHC (主要組織適合複合体)クラスIおよびIIエピトープが、異なるグループによって同定されている。例えば図1を参照のこと。これらのエピトープは該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、図1の列挙は網羅的ではない。さらにまた、報告され、かつ/または図1に列挙されている少なくとも1個以上のエピトープは実験によって確認されていない。N末端中のコラーゲン様領域は、本明細書中でA31と称される少なくとも1個のMHCクラスIエピトープを含有する。中央領域は、本明細書中でDR1、DR2、DR4、DR7およびDP4と称される数個のMHCクラス2エピトープを含む。この領域はまた、本明細書中でB35、B51、Cw3およびCw6と称される数個のMHCクラスIエピトープを含有する。C末端は、少なくとも2個のクラスIIエピトープ(DR4およびDP4)および1個のクラスIエピトープ(A2)を含有すると考えられる。
【0010】
LAGE-1。また、別の癌精巣抗原であるLAGE-1が同定されている。2種のLAGE-1転写物であるLAGE-1aおよびLAGE1bが報告されている。LAGE-1bは不完全にスプライシングされ、およそ210アミノ酸残基の推定タンパク質をコードし、LAGE-1a遺伝子産物は180アミノ酸残基を含有する(Sun et al. Cancer Immunol Immunother 2006: 55: 644-652)。
【0011】
LAGE-1およびNY-ESO-1タンパク質のN末端領域は高度に保存され、97%を超える同一性を有すると考えられる。しかしLAGE-1は、中央領域ではNY-ESO-1とは異なり、同一性が62%にすぎない。NY-ESO-1およびLAGE-1aのC末端は高度に保存されている(97%を超える同一性)。しかし、LAGE-1bのC末端は、より長く、保存されておらず、LAGE-1a/NY-ESO-1の同領域との間で50%未満の同一性しか有さないと考えられる。
【0012】
これらのタンパク質に関する一般情報はLICRウェブサイトから入手可能である(www.cancerimmunity.org/CTdatabaseを参照のこと)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、以下のもの:
(i) 以下の(ii)に連結された、NY-ESO-1またはその断片
(ii) LAGE-1またはその断片
を含み、NY-ESO-1および/またはLAGE-1の少なくとも一方がトランケートもしくは部分的にトランケートされているか、またはNY-ESO-1もしくはLAGE-1の1個以上のエピトープを含む断片である、免疫原性融合タンパク質を提供する。また本発明は、以下のもの:
(i) 以下の(ii)に連結された、LAGE-1またはその断片
(ii) NY-ESO-1またはその断片,
を含み、NY-ESO-1および/またはLAGE-1の少なくとも一方がトランケートもしくは部分的にトランケートされているか、またはNY-ESO-1もしくはLAGE-1の1個以上のエピトープを含む断片である、免疫原性融合タンパク質を提供する。ゆえに、NY-ESO-1の1個以上のエピトープを含む、トランケートもしくは部分的にトランケートされたNY-ESO-1、またはその断片を含む、ポリペプチドおよび融合タンパク質も提供される。また、LAGE-1の1個以上のエピトープを含む、トランケートもしくは部分的にトランケートされたLAGE-1、またはその断片を含む、ポリペプチドおよび融合タンパク質が提供される。そのような融合タンパク質およびポリペプチドを含む組成物および方法がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、異なるグループによって同定されたNY-ESO-1タンパク質上の多数のMHC (主要組織適合複合体)クラスIおよびIIエピトープを示す。これらのエピトープは該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、ゆえに図1中の列挙は網羅的ではない。さらにまた、報告され、かつ/または図1に列挙されたエピトープのうち少なくとも1個以上は実験によって確認されていない。NY-ESO-1に関して報告されているアミノ酸配列は本明細書において配列番号49に見出せる。
【図2】図2は、全長NY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Aを示す。この実施形態では、NY-ESO-1のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に、ヒスチジン親和性タグとともに融合して、288アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Aについてのさらなる詳細は表1 (配列番号1; 配列番号3)に記載される。
【図3】図3は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜127)、全長NY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Bを示す。この実施形態では、プロテインDのアミノ酸127位をNY-ESO-1のN末端に融合し、そのC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、398アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Bについてのさらなる詳細はセクション1.6の表1 (配列番号2; 配列番号4)に記載される。
【図4】図4は、部分的にトランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Cを示す。この実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、242アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Cについてのさらなる詳細は表1 (配列番号5; 配列番号7)に記載される。
【図5】図5は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)、部分的にトランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Dを示す。この実施形態では、プロテインDのアミノ酸127位を、部分的にトランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合し、そのC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、352アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。この実施形態についてのさらなる詳細は表1 (配列番号6; 配列番号8)に記載される。
【図6】図6は、トランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Eを示す。この実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、211アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Eについてのさらなる詳細は表1 (配列番号9; 配列番号11)に記載される。
【図7】図7は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)、トランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Fを示す。この実施形態では、プロテインDのアミノ酸127位を、トランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合し、そのC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、321アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Fについてのさらなる詳細は表1 (配列番号10; 配列番号12)に記載される。
【図8】図8は、構築物Eの代替的実施形態、すなわちE'を示す。この実施形態では、トランケートされたLAGE-1のC末端を、トランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合して、212アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。この実施形態、構築物E'についてのさらなる詳細は表1 (配列番号21; 配列番号23)に記載される。
【図9】図9は、トランケートされたNY-ESO-1、トランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aおよびコラーゲン様領域、例えばNY-ESO-1由来のコラーゲン領域を含む融合タンパク質である構築物Gを示す。この実施形態では、例えば、コラーゲン様領域のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合する。次いで、トランケートされたLAGE-1のC末端を、トランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合して、289アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Gについてのさらなる詳細は表1 (配列番号13; 配列番号15)に記載される。
【図10】図10は、部分的にトランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な組換えポリペプチドの模式図を示す。図10〜13で示されるエピトープは、該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、実験によって確認されていない。
【図11】図11は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)および、部分的にトランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な融合タンパク質の模式図を示す。
【図12】図12は、部分的にトランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な組換えポリペプチドの模式図を示す。
【図13】図13は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)および、トランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な融合タンパク質の模式図を示す。
【図14】図14は、トランケートされたLAGE-1aタンパク質内に同定されたいくつかのエピトープを示す模式図である。これらのエピトープは該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、ゆえにその列挙は網羅的ではない。疑いを回避するため、報告され、かつ/または図に列挙されたエピトープは、本明細書中で特に記載されない限り、実験によって確認されているかもしれないし、確認されていないかもしれない(すなわち、それらは予測されたもの等でありうる)。完全長LAGE-1aアミノ酸配列が配列表に配列番号58として記載されている。完全長LAGE-1bアミノ酸配列(LAGE-1bはこの図に記載されていない)は配列表に配列番号71として記載されている。
【図15】図15は、NY-ESO-1およびLAGE-1の両者、ならびに多数のMHC (主要組織適合複合体)クラスIおよびIIエピトープの模式図を示す。これらのエピトープは、該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、ゆえにその列挙は網羅的ではない。その報告および/または列挙された1個以上のエピトープは実験によって確認されていない。
【図16】図16はNY-ESO-1/LAGE-1融合設計の模式図を示す。
【図17】図17は15種の構築物およびその生産レベルを模式的にまとめている。P =プロテインD。C (グレーボックス) = NY-ESO-1コラーゲン様ドメイン。C (白ボックス) =トランケートされたコラーゲン様ドメイン。L =コラーゲン様ドメインを有さないLage 1。N =コラーゲン様ドメインを有さないNY-ESO-1。黒矢印=ポリヒスチジンタグ。(-) =低生産。(+) =ある程度の生産。(++) =高生産。(+++) =最高生産。構築物のうち8種のアミノ酸配列およびそれらをコードするヌクレオチド配列を表4および配列表にまとめる。
【図18】図18は、スクリーニング#1、すなわち融合タンパク質プラスアジュバントを用いた筋肉内免疫化が、移植された腫瘍(B16/NYESO1)での皮下チャレンジに対抗する防御をもたらしたかどうかを決定するためにLVL076、LVL079、LVL78、LVL68、LVL020、LVL26、LVL024、LVL30のそれぞれを評価するためのCB6F1マウスを使用する76日間の試験をまとめる。
【図19】図19は、76日間の試験で使用したコントロールマウスでのB-16-NY-ESO-1腫瘍成長をまとめる。
【図20】図20は、全長NY-ESO-1、LVL030、LVL068、LVL079、またはLVL026で免疫化されたマウスの生存率を示す。
【図21】図21は、ELISA、FACS、およびウエスタンブロットによって評価されたNY-ESO-1特異的免疫応答ならびにELISAおよびFACSによって評価されたLAGE-1a(コラーゲン様ドメインを有さない)特異的免疫応答をまとめる。
【図22】図22は、スクリーニング#2、すなわち選択した融合タンパク質プラスアジュバントを用いた筋肉内免疫化がB16/NY-ESO-1チャレンジおよびB16/LAGE-1aチャレンジに対抗する防御をもたらすかどうかを決定するための105日間の試験の実験設計をまとめる。B16/NY-ESO-1チャレンジを示す。
【図23】図23はスクリーニング#2をまとめており、B16/LAGE-1aチャレンジを示す。
【図24】図24は、B16/NY-ESO-1チャレンジ後の、LVL078、LVL068、全長NY-ESO-1、LVL024、およびLVL076で免疫化されたマウスの生存率を示す。図24を参照のこと。
【図25】図25は、B16/LAGE-1aチャレンジ後の、LVL076、コラーゲン様領域を有さないLAGE-1a、LVL024、全長NY-ESO-1、LVL078、またはLVL068で免疫化されたマウスの生存率を示す。
【図26】図26。カラム1-8は、左から右へ、以下の抗原: (1)バッファー(コントロール); (2)全長NY-ESO-1; (3)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a; (4) LVL068; (5) LVL078; (6) LVL024; (7) LVL076、のうちの1種で免疫化されたマウスでの、起こりうるヒトコラーゲン特異的免疫応答を検出するために行われたELISAの結果を示す。陽性コントロール(カラム8)は抗ヒトコラーゲン1モノクローナル抗体(抗ヒトコラーゲンImAb)を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
融合タンパク質。本発明の融合タンパク質は癌の治療に有用であり、より具体的には以下の癌: 黒色腫; 乳癌; 前立腺癌; 移行上皮癌を含む膀胱癌; 非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌; 食道癌を含む頭頸部癌; 扁平上皮癌; 消化管の癌腫; 肝癌; 脳腫瘍; 白血病; および種々の肉腫の治療に有用である。
【0016】
LAGE-1およびNY-ESO-1の発現プロファイルに基づいて、本発明の融合タンパク質は推定で37%の乳癌において有効である可能性を有する。本発明の治療はまた、Her2/neu標的療法が適応にならない患者の治療に特に好適である。また本発明の融合タンパク質は、およそ35%の前立腺癌患者、35%の膀胱癌患者、40%の黒色腫患者および35%のNSCLC(非小細胞肺癌)患者において有効であると予測される。一実施形態では、本発明の融合タンパク質によって、より広範囲の患者集団を治療することが可能になる。というのも、NY-ESO-1および/またはLAGE-1(LAGE-1aおよびLAGE-1bを含む)の両者を発現する腫瘍を有する患者に本発明の融合タンパク質を投与することができるからである。
【0017】
また本発明の融合タンパク質は、その個別の成分タンパク質よりも高い免疫原性を示しうるが、その理由は:
1種以上のコラーゲン様ドメインの除去によって、天然内因性コラーゲン構造とのホモロジーによって生じる化合物の潜在的免疫寛容が低減されるか、または
異種融合パートナーの任意の付加によってCD4 T細胞応答をさらに刺激することができるからである。ゆえに、該融合タンパク質は癌抗原、例えばNY-ESO-1もしくはLAGE-1、または両者に対する免疫原性応答の誘発に有用である。
【0018】
本発明で用いられるNY-ESO-1は、全長NY-ESO-1、部分的にトランケートされたNY-ESO-1もしくはトランケートされたNY-ESO-1または、NY-ESO-1に対する免疫応答を引き起こすことが可能な1個以上のエピトープを含むその任意の断片であってよい。本明細書の関連で全長NY-ESO-1タンパク質は、約またはおよそ1〜180アミノ酸で、かつ天然に存在するタンパク質(配列番号49)に対して少なくとも95、96、97、98、99%または100%同一であるタンパク質を意味するものとする。本明細書中で使用される用語「LAGE-1」は、以下の行で記載される、1種以上のLAGE-1ファミリーメンバー、例えばLAGE-1aおよびLAGE 1bを表す。「全長LAGE-1a」タンパク質は、配列番号58に対して95、96、97、98、99%または100%同一のタンパク質を意味するものとする。同様に、「全長LAGE-1b」タンパク質は、天然に存在するタンパク質(配列番号71)に対して95、96、97、98、99%または100%同一のタンパク質を意味するものとする。
【0019】
一実施形態では、同一性は配列の全長にわたる。ゆえに、本発明はまた、保存的置換を有する該融合タンパク質にまでおよぶ。保存的置換は周知であり、概して、配列アライメントコンピュータプログラムのデフォルトスコアリングマトリックスとして設定される。これらのプログラムには、PAM250 (Dayhoft M.O. et al., (1978), 「A model of evolutionary changes in proteins」, 「Atlas of Protein sequence and structure」 5(3) M.O. Dayhoft (ed.), 345-352), National Biomedical Research Foundation, Washington, およびBlosum 62 (Steven Henikoft and Jorja G. Henikoft (1992), および「Amino acid substitution matricies from protein blocks」), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (Biochemistry): 10915-10919が含まれる。
【0020】
一般論として、以下の群内の置換は保存的置換であるが、群間の置換は非保存的であるとみなされる。該群は以下の通りである:
i) アスパラギン酸/アスパラギン/グルタミン酸/グルタミン、
ii) セリン/スレオニン、
iii) リシン/アルギニン、
iv) フェニルアラニン/チロシン/トリプトファン、
v) ロイシン/イソロイシン/バリン/メチオニン、
vi) グリシン/アラニン。
【0021】
本明細書の関連で「部分的にトランケートされた」とは、コラーゲン様領域の大部分が除去されているが、依然として、その領域で見出されるエピトープA31を含むか、またはそれからなるNY-ESO-1またはLAGE-1タンパク質(適宜)を意味するものとする。
【0022】
一実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1および/またはLAGE-1は、アミノ酸44、45、46、47、48、49、50、51または52位〜アミノ酸175、176、177、178、179または180位の一連のアミノ酸または、これらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸48位〜アミノ酸180位またはアミノ酸46〜178位、を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1は約または厳密にアミノ酸48〜180位(またはLAGE-1bの場合は約もしくは厳密にアミノ酸48-210位)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1はNY-ESO-1のアミノ酸48〜180位を含むか、またはそれからなる。
【0023】
一実施形態では、部分的にトランケートされたLAGE-1bは、アミノ酸44、45、46、47、48、49、50、51または52位〜アミノ酸205、206、207、208、209または210位の一連のアミノ酸またはこれらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸48位〜アミノ酸210位またはアミノ酸46〜208位、を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、部分的にトランケートされたLAGE-1bは約または厳密にアミノ酸48〜210位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、部分的にトランケートされたLAGE-1bはLAGE-1bのアミノ酸48〜210位を含むか、またはそれからなる。
【0024】
本明細書の関連で「トランケートされた(トランケート型)」とは、コラーゲン様領域が除去(A31エピトープの除去を含む)されているNY-ESO-1またはLAGE-1タンパク質(適宜)を意味するものとする。一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1および/またはLAGE 1は約または厳密にアミノ酸71-180位(またはLAGE-1bの場合は約もしくは厳密にアミノ酸71-210位)を含むか、またはそれからなる。
【0025】
一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1は、アミノ酸67、68、69、70、71、72、73、74または75位〜アミノ酸175、176、177、178、179または180位の一連のアミノ酸またはこれらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸71位〜アミノ酸180位またはアミノ酸69〜178位、を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1は約または厳密にアミノ酸71〜180位(またはLAGE-1bの場合は約もしくは厳密にアミノ酸71-210位)を含むか、またはそれからなる。
【0026】
一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1はNY-ESO-1またはLAGE-1のアミノ酸71〜180位を含むか、またはそれからなる。
【0027】
一実施形態では、トランケートされたLAGE-1bは、アミノ酸67、68、69、70、71、72、73、74または75位〜アミノ酸205、206、207、208、209または210位の一連のアミノ酸またはこれらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸71位〜アミノ酸210位またはアミノ酸69〜208位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、トランケートされたLAGE-1bは約または厳密にアミノ酸71〜210位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、トランケートされたLAGE-1bはLAGE-1bのアミノ酸71〜210位を含むか、またはそれからなる。
【0028】
「他の断片」は、本発明の融合タンパク質に組み込まれた場合に、本発明の融合タンパク質の所望の特性および利点を有する最終タンパク質を生じさせる断片であるものとする。
【0029】
NY-ESO-1。前記内容にしたがって、コラーゲン領域が部分的にトランケートされているか、または完全にトランケートされている、癌退縮抗原NY-ESO-1由来の抗原を含む改変抗原が提供される。いくつかの実施形態では、コラーゲン領域より大きい領域が除去される。いくつかの実施形態では、改変抗原は遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、改変抗原は組換え抗原である。いくつかの実施形態では、先の文章に記載の抗原を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、典型的なポリペプチドは異種タンパク質、例えばヘモフィルス・インフルエンザ菌B型(Haemophilus influenzae type B)由来のプロテインDまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、上述のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む構築物が提供される。
【0030】
いくつかの実施形態では、コラーゲン様領域を含まないNY-ESO-1またはその断片を含む免疫原性ポリペプチドが提供される。他の実施形態では、NY-ESO-1は部分的にトランケートされているか、またはトランケートされているか、または1個以上のエピトープを含むその任意の断片を含む。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドは保存的置換を有する。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドおよび構築物は癌再発の予防または実質的軽減のための予防薬として有用である。
【0031】
そしていくつかの実施形態では、コラーゲン領域から1個以上のアミノ酸が除去される。より具体的には、いくつかの実施形態で、コラーゲン領域を含む部分、すなわちおおよそで配列番号49のアミノ酸1-73位から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73個のアミノ酸が除去される。コラーゲン領域中の隣接位置または隣接していない位置からアミノ酸を除去してもよい。換言すれば、いくつかの実施形態では、配列番号49の該部分内の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73のいずれかまたはその任意の組み合わせからアミノ酸が除去される。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の一部分が保存されて、得られたポリペプチド内で該部分中の特定のエピトープが保持されることを当業者は理解する。
【0032】
いくつかの実施形態では、NY-ESO-1の中央領域またはC末端領域の断片が利用される。ゆえに、いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号49に記載のアミノ酸配列の1種以上の断片、すなわち、アミノ酸位置74-75、76-80、81-85、86-90、91-95、96-100、101-105、106-110、111-115、116-120、121-125、126-130、131-135、136-140、141-145、146-150、151-155、156-160、161-165、166-170、171-175、176-180のうちの1つ以上、またはその任意の組み合わせを含有する断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、得られたポリペプチド内で特定のエピトープが保持されるようにアミノ酸配列が保存されることを当業者は理解する。
【0033】
LAGE-1。いくつかの実施形態では、コラーゲン領域が部分的にトランケートされているか、または完全にトランケートされている、癌退縮抗原LAGE-1由来の抗原を含む改変抗原が提供される。いくつかの実施形態では、コラーゲン領域より大きい領域が除去される。いくつかの実施形態では、改変抗原は遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、改変抗原は組換え抗原である。いくつかの実施形態では、先の文章に記載の抗原を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、該抗原は癌退縮抗原LAGE-1a由来である。いくつかの実施形態では、該抗原は癌退縮抗原LAGE-1b由来である。他の実施形態では、典型的な融合タンパク質は異種タンパク質、例えばヘモフィルス・インフルエンザ菌B型由来のプロテインDまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、上述のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む構築物が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、コラーゲン様領域を含まないLAGE-1またはその断片を含む免疫原性ポリペプチドが提供される。他の実施形態では、LAGE-1は部分的にトランケートされているか、またはトランケートされているか、または1個以上のエピトープを含むその任意の断片を含む。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドはLAGE-1ポリペプチドとNY-ESO-1のコラーゲン様領域のハイブリッドを含む。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、部分的にトランケートされたLAGE-1またはトランケートされたLAGE-1に連結されたNY-ESO-1コラーゲン領域の一部分または全体を含む。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドは保存的置換を有する。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドおよび構築物は癌再発の予防または実質的軽減のための予防薬として有用である。
【0035】
そして、いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸がコラーゲン領域から除去されるか、またはN末端アミノ酸からさえも除去される。より具体的には、いくつかの実施形態で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73個のアミノ酸が、コラーゲン領域から、またはN末端アミノ酸領域(すなわち配列番号58(LAGE-1a)または配列番号71(LAGE-1b)のおおよそアミノ酸1-73位)からさえも除去される。この領域中の隣接位置または隣接していない位置からアミノ酸を除去してもよい。換言すれば、いくつかの実施形態で、配列番号58(LAGE-1a)または配列番号71(LAGE-1b)内の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73のいずれか、またはその任意の組み合わせから1個以上のアミノ酸が除去される。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の部分が保存されて、得られたポリペプチド内の該部分中の特定のエピトープが保持されることを当業者は理解する。
【0036】
いくつかの実施形態では、LAGE-1の中央領域またはC末端領域の断片が利用される。ゆえに、いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号58(LAGE-1a)または配列番号71(LAGE-1b)に記載のアミノ酸配列の1種以上の断片、すなわちアミノ酸位置74、75、76、77、78、79、80、81-85、86-90、91-95、96-100、101-105、106-110、111-115、116-120、121-125、126-130、131-135、136-140、141-145、146-150、151-155、156-160、161-165、166-170、171-175、176-180のうちの1つ以上、またはその任意の組み合わせを含有する断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、得られたポリペプチド内で特定のエピトープが保持されるようにアミノ酸配列が保存されることを当業者は理解する。
【0037】
一態様では、本発明は全長NY-ESO-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0038】
一態様では、本発明は部分的にトランケートされたNY-ESO-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0039】
一態様では、本発明はトランケートされたNY-ESO-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0040】
一態様では、本発明は全長LAGE-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0041】
一態様では、本発明は部分的にトランケートされたLAGE-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0042】
一態様では、本発明はトランケートされたLAGE-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0043】
一態様では、本発明で用いられるLAGE-1はLAGE-1aである。
【0044】
一態様では、本発明で用いられるLAGE-1はLAGE-1bである。
【0045】
本発明の一態様では、NY-ESO-1のN末端をLAGE-1のC末端に融合させる。
【0046】
本発明の一態様では、NY-ESO-1のC末端をLAGE-1のN末端に融合させる。
【0047】
別の異種抗原、例えばグラム陰性菌のヘモフィルス・インフルエンザ菌Bの表面タンパク質であるプロテインD由来の断片を組み込むことによって、本発明の融合タンパク質の免疫原性をさらに増加させ、かつ/または該タンパク質の生産性をさらに改善することができる。プロテインD由来の免疫学的融合パートナーに関する追加の情報はWO 91/18926から入手することができる。
【0048】
本発明の融合パートナーに含ませるためのタンパク質は化学的にコンジュゲートするか、または組換え融合タンパク質として発現させてよい。一実施形態では、融合タンパク質を組換え融合タンパク質として発現させる。
【0049】
追加の異種融合パートナーはTヘルパーエピトープの提供を支援する(免疫学的融合パートナー)か、または該タンパク質の大量発現を支援する(発現エンハンサー)ものでありうる。一実施形態では、追加の異種融合パートナーは免疫学的融合パートナーおよび発現促進パートナーの両方でありうる。
【0050】
一実施形態では、プロテインDまたはその誘導体は、およそまたは厳密に該タンパク質の最初の1/3、例えばおよそまたは厳密にプロテインDのアミノ酸1〜109位を含む。この実施形態では、天然のプロテインD配列のアミノ酸2-Lysおよび/または3-Thrをアミノ酸2-Aspおよび/または3-Proで置換してよい。別の実施形態では、プロテインDまたはその誘導体は約または厳密にプロテインDのアミノ酸20〜127位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、本発明で使用するためのプロテインDは該タンパク質の分泌配列を含まない。概して、本発明の融合タンパク質中では、プロテインD誘導体は脂質化されていない。
【0051】
一実施形態では、プロテインDは、例えばプロテインD断片のN末端に融合されたアミノ酸Met、AspおよびProをさらに含む(すなわち、該構築物は「MDP − 20-127位プロテインD」を含むか、またはそれからなる)。これらの3種の追加アミノ酸は該タンパク質の安定性を支援し、かつ/またはそのタンパク質発現のレベルを増加させると考えられる。
【0052】
一態様では、本発明は、プロテインDのN末端断片(すなわち最初の3分の1) (上記)が本発明の融合タンパク質またはその免疫原性断片のN末端に融合されている融合タンパク質を提供する。より具体的には、プロテインDと本発明の融合タンパク質のN末端の融合は、後者が、切除されているプロテインDのC末端断片に取って代わるように行ってよい。かくしてプロテインDのN末端が融合タンパク質のN末端になる。
【0053】
他の異種融合パートナーまたはその断片を本発明の融合タンパク質に、プロテインDの代わりに、またはそれに加えて含ませることができる。該異種融合パートナーは例えば以下のものである:
・インフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質NS1 (赤血球凝集素)。典型的に、N末端の81アミノ酸を使用するが、Tヘルパーエピトープを含む限り異なる断片を使用してもよい;
・LytA遺伝子によってコードされるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼLytAを合成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来のLytA(Gene, 43 (1986) 265-272ページ)。例えば残基178から始まるC末端に見出される、残基188〜305等のLytA分子の反復部分等である。一実施形態では、異種融合パートナーはCLytAである。別の実施形態では、異種融合パートナーは、WO03/104272に記載のCLytA-P2-CLytAを含む融合タンパク質であるCPCである。アミノ末端にC-LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製はBiotechnology: 10, (1992) 795-798ページに記載されている。
【0054】
本発明の融合タンパク質は、さらに、親和性タグ、例えば1〜10の範囲、例えば6または10個のヒスチジン残基を含むヒスチジン尾部(hisタグとしても知られる)を含んでよい。これらの残基は、例えば、該タンパク質の末端部分、例えばN末端および/またはC末端部分上であってよい。該親和性タグを組み込んで、該タンパク質の精製をさらに改善することができる。
【0055】
本発明の特定の具体的な融合タンパク質は、例えば、図面に記載されるようにして構築することができる。図面に記載の各実施形態は本発明の独立した態様である。本発明の融合タンパク質の構築物についての追加の例を表1-4および配列表に記載する。
【0056】
核酸。本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードする核酸およびポリ核酸、例えばDNAにまでおよぶ。本発明のプロセスは、Maniatis et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989に記載されるような慣用の組換え技術によって実施してよい。特に、プロセスは以下のステップを含んでよい:
i) 宿主細胞中で、融合タンパク質またはその免疫原性誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むDNAポリマーを発現可能な、複製可能または組み込み発現ベクターを調製するステップ;
ii) 宿主細胞を該ベクターで形質転換するステップ;
iii) 該DNAポリマーの発現により該タンパク質の生産が可能になる条件下で該形質転換宿主細胞を培養するステップ; および
iv) 該タンパク質を回収するステップ。
【0057】
用語「形質転換」は宿主細胞内への外来DNAの導入を意味するために本明細書中で使用される。形質転換は、例えばGenetic Engineering; Eds. S.M. Kingsman and A.J. Kingsman; Blackwell Scientific Publications; Oxford, England, 1988に記載されるような慣用の技術を使用して、例えば適切なプラスミドまたはウイルスベクターでの形質転換、トランスフェクションまたは感染によって達成することができる。用語「形質転換された」または「形質転換体」は、以後、目的の外来遺伝子を含有しかつ発現する、得られた宿主細胞に適用される。本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは新規であり、また、本発明の一部分を構成する。
【0058】
複製可能発現ベクターは、本発明にしたがって、宿主細胞と適合するベクターを切断してインタクトのレプリコンを有する線形DNAセグメントを提供し、該線形セグメントを1つ以上のDNA分子(該DNA分子は該線形セグメントと一緒になって所望の生成物、例えば本発明のタンパク質をコードするDNAポリマー、またはその誘導体をコードする)とライゲーション条件下で組み合わせることによって調製することができる。ゆえに、DNAポリマーは、所望のように、該ベクターの構築前に形成させるか、またはその構築中に形成させてよい。
【0059】
ベクターの選択は部分的に宿主細胞によって決まる。宿主細胞は原核生物または真核生物であってよいが、概して大腸菌(E. coli)またはCHO細胞である。好適なベクターには、プラスミド、例えばTMCP14またはpET21またはpET26、pcDNA3、バクテリオファージ、コスミドおよび組換えウイルスが含まれる。発現がバキュロウイルス、酵母またはCHO宿主細胞中でなされる一実施形態では、以下のベクター: pEE14、pPICZA、pPICZB、pPICZC、pDMT-DEST48およびpAcSG2の1つを使用することができる。複製可能発現ベクターの調製は、例えば上で引用されるManiatis et al.に記載の手順によって、DNAの制限切断、重合化およびライゲーションに適切な酵素を用いて慣用法で実行することができる。
【0060】
組換え宿主細胞は、本発明にしたがって、形質転換条件下で本発明の複製可能発現ベクターで宿主細胞を形質転換することによって調製する。好適な形質転換条件は慣用のものであり、例えば上で引用されるManiatis et al.、または「DNA Cloning」 Vol. II, D.M. Glover ed., IRL Press Ltd, 1985に記載されている。形質転換条件の選択は宿主細胞によって決まる。ゆえに、細菌宿主、例えばE. coliは、CaCl2の溶液(Cohen et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 1973, 69, 2110)またはRbCl、MnCl2、酢酸カリウムおよびグリセロールの混合物を含む溶液で処理し、次いで3-[N-モルホリノ]-プロパン-スルホン酸、RbClおよびグリセロールで処理しうる。培養物中の哺乳類細胞は、細胞上にベクターDNAをカルシウム共沈殿させることによって形質転換することができる。本発明はまた、本発明の複製可能発現ベクターで形質転換された宿主細胞におよぶ。
【0061】
該DNAは標準的技術によってコドンを最適化して、該当する宿主の発現をさらに促進することができる。
【0062】
DNAポリマーの発現を可能にする条件下での形質転換宿主細胞の培養は、例えば上で引用されるManiatis et al.および「DNA Cloning」に記載のようにして慣用法で実行される。すなわち、好ましくは細胞に栄養分を供給し、50℃未満の温度で培養する。本発明のタンパク質は原核生物または真核生物、例えば酵母で発現させることができるが、E. coliで発現させることが多い。特定のE. coli株、例えば以下の株を使用することができる:
・AR58: gal E::Tn 10,Δ-8(chlD-pgl),Δ-H1(cro-chlA),N+, およびcI857であるN99由来の潜在性λ溶原菌(参考文献: Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol82,pp.88-92,January 1985 Biochemistry)
・BLR (DE3) Novagen, WI, USA (カタログ番号: 69053-4): 使用されうるBLRはBL21のrecA-誘導体である。概して、例えばカナマイシン耐性またはアンピシリン耐性の選択マーカーを組み入れて、発現系への組換え遺伝子/構築物の組み込み成功の識別を容易にする。
【0063】
生成物は、宿主細胞にしたがって、かつ発現産物の局在(細胞内、または培養培地もしくは細胞ペリプラズムへ分泌)にしたがって、慣用の方法によって回収される。ゆえに、宿主細胞が細菌、例えばE. coliである場合、それを例えば物理的、化学的または酵素的に溶解し、得られたライセートからタンパク質産物を単離することができる。宿主細胞が哺乳類細胞である場合、概して、栄養培地または細胞を含まない抽出物から生成物を単離する。慣用のタンパク質単離技術には、選択的沈殿、吸着クロマトグラフィー、およびモノクローナル抗体アフィニティーカラムを含むアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。
【0064】
本発明のタンパク質は可溶性で液体形態または凍結乾燥形態で提供される。本発明はまた、本発明の融合タンパク質および製薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物、例えばワクチンを提供する。
【0065】
本発明の治療用組成物を投与する場合、製薬的に許容される製剤として投与することができる。そのような製剤は、製薬的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、追加の免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカインならびに場合により他の治療物質を通常通りに含有する。
【0066】
その量は、当然、処置される具体的状態、その状態の重症度、個々の患者パラメータ、例えば年齢、健康状態、サイズおよび体重、治療期間、(同時治療が行われていれば)同時治療の性質、具体的投与経路、ならびに医師の知識および専門的知識内の同様の要因に依存する。これらの要因は当業者に周知であり、単に通常の実験の範囲で対処することができる。概して、個々の成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち信頼できる医学的判断に基づく安全最高用量を使用することが好ましい。しかし、患者は医学的理由、心理学的理由または実質的に任意の他の理由によって低用量または耐容量を要求するかもしれないことは当業者は理解しているであろう。各ヒト用量は1〜1000μgのタンパク質、および好ましくは30〜300μgを含むことが概して予測される。
【0067】
一態様では、本発明の融合タンパク質を投与するために使用される医薬組成物はワクチンである。該ワクチンは場合により1種以上の他の腫瘍関連の抗原、ポリペプチドおよび/またはペプチドを含有してよい。例えば、MAGE、LAGEおよびGAGEファミリーに属するメンバーである。
【0068】
NY-ESO-1/LAGE-1およびMAGEの組み合わせ。本発明の一実施形態では、(a) NY-ESO-1もしくはLAGE-1抗原または本明細書中に記載の融合タンパク質を含む抗原成分および(b) MAGE抗原または融合タンパク質を含む抗原成分を含む組成物が提供される。一実施形態では、該組成物は本明細書中に記載のアジュバントをさらに含んでよい。
【0069】
組み合わせで使用するためのMAGE抗原は全長MAGE抗原を含んでよい。あるいは、該MAGE抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のアミノ酸が該アミノ酸配列から欠失しているか、または置換されているMAGEの免疫原性部分を含んでよい。本発明の一実施形態では、MAGE配列のN末端から2アミノ酸が欠失している。抗原がMAGE-A3またはその免疫原性部分である本発明の一実施形態では、MAGE-A3の配列はMAGE-A3のアミノ酸3〜314位である。
【0070】
本発明の一実施形態では、NY-ESO-1/LAGE-1抗原および/または本明細書中に記載の融合タンパク質、ならびにMAGE-A3抗原を含む融合タンパク質、を含む組成物が提供される。別の実施形態では、MAGE-A3抗原を含む融合タンパク質はMAGE-A3抗原および、プロテインDの最初の約またはおよそまたは約109アミノ酸を含む融合パートナータンパク質(該融合パートナータンパク質では、プロテインDから1個または2個またはそれ以上のアミノ酸が場合により置換されていて、かつ場合により、プロテインDの最初の109アミノ酸に加えてプロテインDのシグナル配列が存在する)を含むか、またはそれからなる。
【0071】
本発明の融合タンパク質は、追加的に、場合により、抗原と融合パートナーまたは融合パートナータンパク質の配列間または(His尾部が存在すれば)抗原とHis尾部間に「リンカー」として1個以上のアミノ酸を含む。該アミノ酸は抗原および/または融合パートナーの配列と無関係であってよい。
【0072】
本明細書中に記載の本発明の融合タンパク質は、追加的に、融合タンパク質配列のN末端にアミノ酸Met-Asp-Proを含んでよい。Metアミノ酸は元のプロテインD配列由来であるか、または無関係の配列由来であってよい。
【0073】
一実施形態では、本発明の組み合わせにおいて使用するためのMAGE-A3およびプロテインDを含む融合タンパク質の配列は配列番号98に示される配列である。配列番号98は、N末端から、以下の特徴を含む:
アミノ酸1-18位 1-Metおよび、プロテインDの天然アミノ酸残基2-Lysおよび3-Thrに代わる置換残基2-Aspおよび3-Proを含むプロテインDのシグナル配列
アミノ酸19-127位 プロテインDのアミノ酸20〜127位を含む
アミノ酸128-129位 クローニング部位を創出するためのアミノ酸(aa)128-129の位置の無関係のアミノ酸Met-Asp
アミノ酸130-441位 MAGE3の断片(MAGE3のアミノ酸3-314位)
アミノ酸442-443位 無関係のアミノ酸Gly-Gly
アミノ酸444-451位 7his尾部。
【0074】
本発明はまた、該ワクチン/組成物の製造方法および上記方法によって取得されたか、または取得可能な融合タンパク質およびワクチン/組成物におよぶ。
【0075】
ワクチン製造は、概して、Vaccine Design (「The subunit and adjuvant approach」(eds. Powell M.F. & Newman M.J). (1995) Plenum Press New York)に記載される。リポソーム中へのカプセル化はFullerton, 米国特許第4,235,877号に記載される。
【0076】
本発明の融合タンパク質は本発明のワクチン製剤中でアジュバント化することができる。好適なアジュバントには、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムが含まれるが、カルシウム、鉄または亜鉛の塩であってもよく、またはアシル化チロシン、またはアシル化糖、またはカチオンもしくはアニオン誘導体化多糖、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。他の公知アジュバントには、CpG含有オリゴヌクレオチドが含まれる。該オリゴヌクレオチドはCpGジヌクレオチドがメチル化されていないことを特徴とする。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えばWO 96/02555に記載されている。
【0077】
本発明の製剤では、アジュバント組成物がTH1型優勢の免疫応答を誘発することが望ましい。一実施形態では、例えばモノホスホリルリピドA、好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)とアルミニウム塩との組み合わせを含むアジュバント系が提供される。CpGオリゴヌクレオチドもTH1応答を誘発することができ、それを含めてもよい。
【0078】
一実施形態では、本明細書中に記載の融合タンパク質と、モノホスホリルリピドAおよびサポニン誘導体の組み合わせ、特にWO 94/00153で開示されるQS21および3D-MPLの組み合わせ、またはWO 96/33739で開示される、QS21がコレステロールでクエンチされている低反応原性組成物(less reactogenic composition)を含むアジュバント組成物とを含む組成物が提供される。使用することができる一製剤は、例えば水中油エマルジョン中に、QS21、3D-MPL &トコフェロールを含む。それはWO 95/17210に記載されている。本発明で使用するための別のアジュバント製剤は、例えば水中油エマルジョン中にまたはリポソーム製剤として、QS21、3D-MPL & CpGまたはその等価物を含んでよい。したがって本発明の一実施形態では、本発明の融合タンパク質および例えば上記のようなアジュバントを含むワクチンが提供される。本発明はまた、本明細書中に記載の融合タンパク質を含むワクチンおよび組成物の製造方法におよぶ。
【0079】
本発明はまた、ワクチン接種のための、本明細書中に記載の核酸、ポリペプチドまたはペプチドの送達を意図する。ポリペプチドおよびペプチドの送達は、当技術分野において周知の標準ワクチン接種プロトコルにしたがって達成することができる。別の実施形態では、核酸の送達は、ex vivo法によって、すなわち、被験体から細胞を取り出し、該細胞を遺伝子操作して癌関連抗原を含めさせ、かつ操作された細胞を被験体に再導入することによって達成することができる。概して、この送達は、遺伝子の機能的コピーを被験体の細胞(群)にin vitroで導入し、かつ該遺伝子操作細胞(群)を被験体に戻すことを含む。遺伝子の機能的コピーは調節エレメントの作動可能な制御下に置き、それにより遺伝子操作細胞(群)での該遺伝子の発現が可能になる。多数のトランスフェクションおよび形質導入技術ならびに適切な発現ベクターは当業者に周知であり、そのうちのいくつかはPCT出願WO 95/00654に記載されている。ベクター、例えばウイルスおよび標的化リポソームを使用するin vivo核酸送達もまた、本発明にしたがって意図される。
【0080】
略語
CO コラーゲン様領域
W/Ocoll コラーゲン様領域(コラーゲン様ドメイン)を含まない
PD1/3 プロテインDの最初の3分の1
融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の典型的な実施形態を表1-3に挙げる。
【0081】
表1. 融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の典型的な実施形態を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表1】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表2. 融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の追加の典型的な実施形態を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表2】
【0094】
【0095】
表3. 融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の追加の典型的な実施形態を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表3】
【0096】
【0097】
【0098】
表4. 実施例で考察される融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表4】
【0099】
配列表から明らかになるように、表4の構築物の多くは先の表に記載の1つ以上の実施形態に類似の設計構造を有する。例えば、LVL068は、配列番号45(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。LVL076は、配列番号25(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。LVL078は、配列番号33(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。LVL079は、配列番号37(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。
【0100】
さらに、表4に記載の融合タンパク質構築物のいくつか、すなわちLVL155、LVL106、LVL156、LVL157、LVL151は、表4に記載の他の融合タンパク質配列、すなわち、それぞれLVL068、LVL030、LVL076、LVL078、LVL024の慣用的な改変によって作製された。そのような改変には、プロテインDとキメラ(chimers)の先頭部分(すなわちNY-ESO-1およびLAGE-1のいずれか由来の部分)の間のアミノ酸残基の除去およびhisタグとキメラ(chimer)の先頭部分の間のアミノ酸の除去が含まれる。ゆえに、表4の融合タンパク質のいくつかは表4の他の融合タンパク質と密接に対応する。これらの融合タンパク質間の対応を表5に記載し、実施例4でより詳細に説明する。
【表5】
【0101】
実施例
【実施例1】
【0102】
実施例1. NY-LA1キメラタンパク質の設計および生産
図17にまとめるように、いくつかのNY-ESO-1/LAGE-1融合タンパク質を設計した。該融合タンパク質には、コラーゲン様ドメインを含むものおよび含まないもの、ならびにプロテインDの末端を含むものおよび含まないものがある。Escherichia coliでの発現のために、設計された構築物のコドンを最適化した。オリゴヌクレオチドおよび/またはPCR産物から合成遺伝子を組み立てた。KpnIおよびSacI制限部位を使用してpGA4主鎖(AmpR)中に該断片をクローニングし、最適化された遺伝子の5'末端および3'末端にNdeIおよびXhoI部位をそれぞれ加えた。
【0103】
形質転換細菌からプラスミドDNAを精製し、UV分光測定によって濃度を決定した。最終構築物を配列決定によって確認した。NdeIおよびXhoI制限部位を使用して、異なるNY/LAGEキメラ構築物に関して最適化されたコード配列をpET19 (AmpR)のマルチクローニング部位に直接サブクローニングして、NY/LAGEキメラ(chimer)発現プラスミドを得た。pET26へのクローニングでは、N末端ヒスチジン尾部を付加するようにPCRプライマーを設計した。この増幅の結果、異なる構築物のコード領域と同期して6ヒスチジン尾部が付加された。この増幅断片をNdeI/XhoI制限酵素で酵素消化し、その後、異なるNY/LAGEキメラ構築物をpET26 (KanR)のマルチクローニング部位にクローニングして、発現プラスミドを得た。最終構築物を配列決定によって確認した。
【0104】
振とうフラスコでの生産。細菌宿主株の培養および誘導
培養
2.5L振とうフラスコ中で800 mlのLuria-Bertani (LB)ブロス(BD) + 1% (w/v)グルコース(Laboratoire MAT, カタログ番号: GR-0101) + 抗生物質(pET19に関してはカルベニシリン100μg/ml, pET26に関してはカナマイシン40μg/ml)で細菌を培養した。BLR (DE3)細胞に関しては、O.D.600nmが0.8付近になるまで培養物を37℃でインキュベートした。
【0105】
誘導
0.8付近のO.D.600nmで、培養BLR (DE3)を1 mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG; EMD Chemicals Inc., カタログ番号: 5815)で誘導し、16-18時間16℃でインキュベートした。構築物LVL106、151、155および157を用いて特定タンパク質5〜15 mg/800mlを得た。各構築物に関するタンパク質生産を図17にまとめる。
【実施例2】
【0106】
実施例2. 予備精製および安定性の概要
タンパク質の抽出および精製
遠心分離によって細胞を回収し、次いで物理的または化学的手段によってそれを破壊し、目的のポリペプチドを単離するために、得られた粗製抽出物を保持した。
【0107】
精製
発現された組換えタンパク質を塩酸グアニジン溶液で可溶化し、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)樹脂に載せた。次いでタンパク質をカラム上で8Mおよび4M尿素溶液で洗浄した後、イミダゾール濃度を増加させることによって溶出させた。次いで、後の使用のために、最終4M尿素バッファー、pH 7.0中でタンパク質を脱塩した。SDS PAGEおよびウエスタンブロットによって精製物を評価し、タンパク質の純度および同一性を確認した。
【0108】
精製融合タンパク質の安定性試験
安定性アッセイを37℃で実施し、タンパク質をSDS-PAGEによって評価した。予備安定性アッセイでは大きな問題は示されなかった。
【0109】
予備可溶化アッセイ
以下のチャートにまとめるようにタンパク質の溶解度を評価した。
【表6】
【実施例3】
【0110】
実施例3: 融合タンパク質でのIM免疫化
下記のように一連の筋肉内免疫化スクリーニング実験を含むマウスモデルにおいて融合タンパク質を前臨床的に評価した。選択されたマウスモデルはC57BL6マウスとBalb/cマウスの交雑から得られた第一世代であるCB6F1であった。そのマウスはCharles River Laboratories, Inc., 251 Ballardvale Street, Wilmington, MA 01887-1000から市販されている。選択された腫瘍セルラインは癌治療の研究のために市販されている移植可能なマウス黒色腫であるB16 (マウス黒色腫セルライン)であった。
【0111】
スクリーニング#1
実験設計。76日間の試験では、融合タンパク質プラスアジュバントでの筋肉内免疫化が、移植された腫瘍細胞(B16/NYESO1)での皮下チャレンジに対抗する防御をもたらすかどうかを決定するために、CB6F1マウスを使用して、LVL076、LVL079、LVL078、LVL068、LVL020、LVL026、LVL024、LVL030のそれぞれを評価した。具体的には、タンパク質15μgおよびアジュバントを含有する50μL注射でマウスを筋肉内で免疫化した。選択されたアジュバントはAS15であった。AS15は、QS21、3D-MPLおよびCpGを含むリポソームアジュバント製剤である。
【0112】
下記1Aおよび1Bに記載の融合タンパク質を用いて試験を実行した。マウスをそれぞれ15匹マウス/群の群に分けた。以下のように、マウスを0日目に免疫化し、14日目に再び免疫化した。
試験1A
LVL079
LVL026
LVL068
LVL030
試験1B
LVL076
LVL020
LVL078
LVL024
コントロール
抗原バッファー/AS15バッファー
全長NY-ESO-1
コラーゲン様ドメイン(CLD)を有さないLAGE-1a
MAGE A3。
【0113】
28日目に、皮下移植されたB16/NY-ESO-1腫瘍を用いて6匹マウス/群をチャレンジした。0、14、28、および76日目に、NY-ESO-1全長、コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a、およびヒトコラーゲンに対する抗体応答をELISA (IgG1およびIgG2a)によって評価した。28日目に、回収された脾細胞を使用してFACSによって細胞媒介応答を評価した(NY-ESO-1およびLAGE-1aペプチドプールでの再刺激--3種の3プール)。スクリーニング#1の実験設計を図18にまとめる。
【0114】
結果。4つのコントロールのうち、全長NY-ESO-1のみが、バッファーと比較していくらかの保護をもたらした。図19を参照のこと。全長NY-ESO-1またはLVL030のいずれかを投与されたマウスの群のうち、試験の終了時点で各群由来の2匹が腫瘍を有さなかった。LVL068を投与されたマウスのうち、研究の終了時点で4匹が腫瘍を有さなかった。LVL068およびLVL078は、バッファーを投与されたマウスと比較して長期の生存をもたらした。図20を参照のこと。NY-ESO-1特異的免疫応答をELISA、FACS、およびウエスタンブロットによって評価した。LAGE-1a(コラーゲン様ドメインを有さない)特異的免疫応答をELISAおよびFACSによって評価した。図21を参照のこと。これらの結果を以下のチャートにまとめる。
【表7】
【0115】
スクリーニング#2
実験設計。105日間の試験では、融合タンパク質プラスアジュバントでの筋肉内免疫化がB16/NYESO1移植腫瘍細胞(2回の免疫化後)またはB16/LAGE-1a腫瘍細胞(4回の免疫化後)での皮下チャレンジに対抗する防御をもたらすかどうかを決定するために、CB6F1マウスを使用して、LVL076、LVL078、LVL068、およびLVL024のそれぞれを評価した。具体的には、タンパク質15μgおよびAS15アジュバント25μLを含有する50μL注射でマウスを筋肉内で免疫化した。
【0116】
マウスをそれぞれ29匹マウス/群の群に分けた。以下のように、0、14、28、および42日目にマウスを免疫化した:
試験
LVL076
LVL068
LVL078
LVL024
コントロール
抗原バッファー/AS15バッファー
全長NY-ESO-1
コラーゲン様ドメイン(CLD)を有さないLAGE-1a
MAGE A3。
【0117】
28日目に、皮下移植されたB16/NY-ESO-1腫瘍細胞で10匹マウス/群をチャレンジした。56日目に、皮下移植されたB16/LAGE-1A腫瘍細胞で9匹マウス/群をチャレンジした。0、14、28、42、56、84および105日目に、血清を採取し、(i) NY-ESO-1全長, (ii)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a, および(ii)ヒトコラーゲン、に対する抗体応答をELISA (IgG1およびIgG2a)によって評価した。スクリーニング#2の実験設計を図22および23にまとめる。
【0118】
結果
B16-NYESO1腫瘍チャレンジ
LVL078を投与されたマウスのうち、B16-NY-ESO-1チャレンジ後の50日にわたって2匹が腫瘍を有さなかった。全長NY-ESO-1またはLVL024を投与されたマウスのうち、50日にわたって各群由来の2匹が腫瘍を有さず、3匹が生存した。LVL068を投与されたマウスのうち、3匹が腫瘍を有さず、4匹が生存した。LVL076を投与されたマウスのうち、3匹が腫瘍を有さず、5匹が生存してた。図24を参照のこと。
【0119】
B16-LAGE1a腫瘍チャレンジ
LVL076または、コラーゲン様領域を有さないLAGE-1aを投与されたすべてのマウスがチャレンジ後40日目より早期に死滅した。バッファーのみを投与されたマウスのうち、1匹が研究の終了時点まで生存し腫瘍を有さなかった。LVL024を投与されたマウスのうち、研究の終了時点で1匹が腫瘍を有さなかった。全長NY-ESO-1を投与されたマウスのうち、腫瘍を有さないマウスはいなかったが、研究の終了時点で1匹が依然として生存していた。LVL078を投与されたマウスのうち、1匹が腫瘍を有さなかった。LVL068を投与されたマウスのうち、3匹が腫瘍を有さなかった。LVL076を投与されたマウスのうち、研究の終了時点で3匹が腫瘍を有さなかった。図25を参照のこと。これらの結果を以下のチャートにまとめる。
【表8】
【0120】
ヒトコラーゲン特異的免疫応答
NY-ESO-1のコラーゲン様ドメインがヒトコラーゲン特異的免疫応答を刺激するかどうかを調べるために、以下の抗原: (1)バッファー(コントロール); (2)全長NY-ESO-1; (3)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a; (4) LVL068; (5) LVL078; (6) LVL024; (7) LVL076、のうちの1つで免疫したマウスから接種14日後に血清を回収し、プールした。これらの7種の血清プールのそれぞれ、ならびに抗ヒトコラーゲンI mAbを含有する陽性コントロールに関してELISAを行った。該コラーゲン様ドメインはマウス抗ヒトコラーゲンI抗体生産を刺激しなった。図26を参照のこと。コラーゲンIIIおよびコラーゲンVIに関して同様の試験(結果は示していない)を行った。マウス抗ヒトコラーゲンIIIおよびマウス抗ヒトコラーゲンVI抗体生産のいずれも検出されなかった。
【実施例4】
【0121】
実施例4: 洗練化構築物
表4に列挙されるいくつかの構築物に対して、通常のクローニング技術を使用して改変を行った。具体的には、LVL068、LVL030、LVL076、LVL078、LVL024を改変して、LVL155、LVL106、LVL156、LVL157、LVL151を得た。2種類の改変が存在した。第一の改変はプロテインDとキメラ(chimers)の先頭部位の間の5アミノ酸残基の除去であった。例えば、LVL024 (配列番号74; 配列番号75)を用いてこの改変を実行し、LVL151 (配列番号90; 配列番号91)を得た。ゆえに、LVL024はLVL 151と対応する。第二のタイプの改変はhisタグとキメラ(chimer)の先頭部位の間のアミノ酸の除去であった。LVL068 (配列番号80; 配列番号81)を用いてこの改変を実行し、LVL155 (配列番号92; 配列番号93)を得た。ゆえに、LVL068はLVL 151と対応する。改変された各融合タンパク質構築物およびそれに対応する融合タンパク質構築物を本説明の表5に記載する。
【0122】
理解されるように、上記改変は融合タンパク質とそれに対応する改変された融合タンパク質との間で機能的差異を生じさせるものとは予測されない。ゆえに、表5の右側に列挙されている各改変融合タンパク質を、チャートの左側に列挙されるその対応する融合タンパク質と交換可能に利用しうることが予測される。
【実施例5】
【0123】
実施例5.
実験設計。105日間の試験では、B16/NYESO1移植腫瘍細胞(2回の免疫化後)またはB16/LAGE-1a腫瘍細胞(4回の免疫化後)での皮下チャレンジに対抗する、融合タンパク質プラスアジュバントでの筋肉内免疫化を調べるために、CB6F1マウスを使用して、LVL068、LVL030、LVL076、LVL078、LVL024、および改変LVL155、LVL106、LVL156、LVL157、LVL151のそれぞれを評価する。具体的には、タンパク質15μgおよびAS15アジュバント25μLを含有する50μL注射でマウスを筋肉内で免疫化する。
【0124】
マウスをそれぞれ29匹マウス/群の群に分ける。以下のように、0、14、28、および42日目にマウスを免疫化する:
試験
LVL068
LVL030
LVL076
LVL078
LVL024
LVL155
LVL106
LVL156
LVL157
LVL151
コントロール
抗原バッファー/AS15バッファー
全長NY-ESO-1
コラーゲンドメインを有さないLAGE-1a
MAGE A3。
【0125】
28日目に、皮下移植されたB16/NY-ESO-1腫瘍細胞で10匹マウス/群をチャレンジする。56日目に、皮下移植されたB16/LAGE-1A腫瘍細胞で9匹マウス/群をチャレンジする。特異的免疫応答をモニターするために、0、14、28、42、56、84および105日目に、血清を採取し、(i) NY-ESO-1全長, (ii)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a, および(ii)ヒトコラーゲン、に対する抗体応答をELISA(IgG1およびIgG2a)によって測定することができる。
【0126】
先の実施例は限定のためでなく説明のために提供される。
【0127】
本出願中で、冠詞「a」および「an」は、1個または2個以上(すなわち〜少なくとも1個)の該冠詞の文法上の目的語を表すために本明細書中で使用される。一例として、「an element」は1個以上の要素を意味する。本明細書中で使用される用語「およそ」および「約」は、場合により、すべての場合で、出願人の要請があれば、削除可能であるか、または用語「厳密に」と置換可能であるものとする。
【0128】
単位、接頭辞、および記号はそのSI許容形式で示される。特に指定されない限り、それぞれ、核酸は左から右に5'→3'方向で記載され; アミノ酸配列は左から右にアミノ→カルボキシ方向で記載される。数値範囲は該範囲を規定する数字を含む。本明細書中でアミノ酸は、その一般に公知の3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号によって参照される。同様にヌクレオチドは、その一般に許容される1文字コードによって参照される。上で定義される用語は本明細書を全体として参照することよってさらに完全に定義される。
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、概して、癌退縮抗原NY-ESO-1およびLAGE-1の一方または両者由来の抗原を含むポリペプチドおよび構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌精巣(CT)抗原は、その発現が通常は精巣、卵巣または栄養膜細胞中の生殖細胞に限定される腫瘍関連抗原の1クラスである。これらの抗原は、通常、成体の体細胞組織では発現されない。Simpson, et al., Nat. Rev. Cancer, 5(8):615-625 (2005); Scanlan, et al., Immunol. Reviews, 188:22-32 (2002); Scanlan, et al., Canc. Immun., 4:1-15 (2004)を参照のこと。
【0003】
CT抗原の遺伝子調節は癌患者において破壊され、それが多種多様な腫瘍におけるこれらの抗原の異常発現につながる。最初の同定対象のCT抗原であるMAGE-1は、1990年代前半にT細胞エピトープクローニングによって同定された(van der Bruggen et al, 1991 Science 13;254(5038):1643-7; van der Bruggen et al, 1999 Science 254:1643-1647; Traversari, et al, 1992 Immunogenetics, 35(3):145-152; および米国特許第5,342,774号(参照により組み入れられる))。それ以後、血清学的発現クローニング技術(SEREX) (Sahin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92(25):11810-11813 (1995)および米国特許第5,698,396号)、酵母表面での組換え抗原発現(RAYS) (Mischo, et al., Canc. Immun., 3:5-16 (2003))およびディファレンシャルmRNA発現解析(Gure, et al., Int. J. Canc., 85(5):726-732 (2000))によっておよそ90種のCT抗原が同定され、そしてその数は今後数年間に増えることが予測される。、癌患者におけるいくつかのCT抗原は、その免疫原性により、腫瘍ワクチンを開発するための理想的な標的となる。
【0004】
NY-ESO-1。癌免疫療法での使用に関して現在注目されている癌精巣抗原がNY-ESO-1である。この抗原は、Ludwig Institute for Cancer ResearchのNew York Branchで90年代後半に食道扁平上皮癌でのSEREXによって最初に同定された(Chen, et al., PNAS USA, 94(5):1914-1918 (1997); および米国特許第5,804,381号(参照により組み入れられる))。
【0005】
タンパク質NY-ESO-1は長さが180アミノ酸であり、以下の3領域からなるものとして説明することができる:
N末端領域 約またはおよそアミノ酸1〜70位
中央領域 約またはおよそアミノ酸71〜134位、および
C末端領域 約またはおよそアミノ酸135〜180位。
【0006】
コラーゲン様領域は、N末端領域の約またはおよそまたは約アミノ酸15〜73位を含む(図1を参照のこと)。
【0007】
タンパク質NY-ESO-1は多種多様な腫瘍において見出されており、そのような腫瘍には、非限定的に、卵巣癌、肺癌、乳癌、前立腺(prostrate)、食道癌、膀胱癌および黒色腫が含まれる。(Nicholaou T, et al, Immunol Cell Biol. 2006 Jun;84(3):303-17およびJungbluth, et al. 2001, Int. J. Canc., 92(6):856-860)。この抗原に対する自発的体液性免疫応答および細胞性免疫応答が、NY-ESO-1陽性腫瘍を有する患者において報告されており、いくつかのHLA (ヒト白血球抗原)クラスIおよびII拘束性ペプチドが同定されている(Jager, et al., 1998 J. Exp. Med., 187(2):265-270; Yamaguchi, et al., 2004 Clin. Canc. Res., 10(3):890-961; およびDavis, et al., 2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101(29):10697-10702)。特許文献の例は、米国特許第6,140,050号; 第6,251,603号; 第6,242,052号; 第6,274,145号; 第6,338,947号; 第6,417,165号; 第6,525,177号; 第6,605,711号; 第6,689,742号; 第6,723,832号; 第6,756,044号; および第6,800,730号であり、これらの文献はすべて参照により組み入れられる。
【0008】
臨床試験では、HLA-A2に対する結合モチーフを有する3種の部分オーバーラップNY-ESO-1由来ペプチド(157-167、157-165および155-163)が、転移性NY-ESO-1発現腫瘍を有する12人の患者を治療するためのワクチンにおいて使用されている。この試験では、合成NY-ESO-1ペプチドを安全に投与することができ、潜在的に有益なT細胞応答を生成可能であることが実証された(Jager, et al., 2000 PNAS USA, 97(22):12198-12203)。
【0009】
該タンパク質中の多数のMHC (主要組織適合複合体)クラスIおよびIIエピトープが、異なるグループによって同定されている。例えば図1を参照のこと。これらのエピトープは該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、図1の列挙は網羅的ではない。さらにまた、報告され、かつ/または図1に列挙されている少なくとも1個以上のエピトープは実験によって確認されていない。N末端中のコラーゲン様領域は、本明細書中でA31と称される少なくとも1個のMHCクラスIエピトープを含有する。中央領域は、本明細書中でDR1、DR2、DR4、DR7およびDP4と称される数個のMHCクラス2エピトープを含む。この領域はまた、本明細書中でB35、B51、Cw3およびCw6と称される数個のMHCクラスIエピトープを含有する。C末端は、少なくとも2個のクラスIIエピトープ(DR4およびDP4)および1個のクラスIエピトープ(A2)を含有すると考えられる。
【0010】
LAGE-1。また、別の癌精巣抗原であるLAGE-1が同定されている。2種のLAGE-1転写物であるLAGE-1aおよびLAGE1bが報告されている。LAGE-1bは不完全にスプライシングされ、およそ210アミノ酸残基の推定タンパク質をコードし、LAGE-1a遺伝子産物は180アミノ酸残基を含有する(Sun et al. Cancer Immunol Immunother 2006: 55: 644-652)。
【0011】
LAGE-1およびNY-ESO-1タンパク質のN末端領域は高度に保存され、97%を超える同一性を有すると考えられる。しかしLAGE-1は、中央領域ではNY-ESO-1とは異なり、同一性が62%にすぎない。NY-ESO-1およびLAGE-1aのC末端は高度に保存されている(97%を超える同一性)。しかし、LAGE-1bのC末端は、より長く、保存されておらず、LAGE-1a/NY-ESO-1の同領域との間で50%未満の同一性しか有さないと考えられる。
【0012】
これらのタンパク質に関する一般情報はLICRウェブサイトから入手可能である(www.cancerimmunity.org/CTdatabaseを参照のこと)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、以下のもの:
(i) 以下の(ii)に連結された、NY-ESO-1またはその断片
(ii) LAGE-1またはその断片
を含み、NY-ESO-1および/またはLAGE-1の少なくとも一方がトランケートもしくは部分的にトランケートされているか、またはNY-ESO-1もしくはLAGE-1の1個以上のエピトープを含む断片である、免疫原性融合タンパク質を提供する。また本発明は、以下のもの:
(i) 以下の(ii)に連結された、LAGE-1またはその断片
(ii) NY-ESO-1またはその断片,
を含み、NY-ESO-1および/またはLAGE-1の少なくとも一方がトランケートもしくは部分的にトランケートされているか、またはNY-ESO-1もしくはLAGE-1の1個以上のエピトープを含む断片である、免疫原性融合タンパク質を提供する。ゆえに、NY-ESO-1の1個以上のエピトープを含む、トランケートもしくは部分的にトランケートされたNY-ESO-1、またはその断片を含む、ポリペプチドおよび融合タンパク質も提供される。また、LAGE-1の1個以上のエピトープを含む、トランケートもしくは部分的にトランケートされたLAGE-1、またはその断片を含む、ポリペプチドおよび融合タンパク質が提供される。そのような融合タンパク質およびポリペプチドを含む組成物および方法がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、異なるグループによって同定されたNY-ESO-1タンパク質上の多数のMHC (主要組織適合複合体)クラスIおよびIIエピトープを示す。これらのエピトープは該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、ゆえに図1中の列挙は網羅的ではない。さらにまた、報告され、かつ/または図1に列挙されたエピトープのうち少なくとも1個以上は実験によって確認されていない。NY-ESO-1に関して報告されているアミノ酸配列は本明細書において配列番号49に見出せる。
【図2】図2は、全長NY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Aを示す。この実施形態では、NY-ESO-1のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に、ヒスチジン親和性タグとともに融合して、288アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Aについてのさらなる詳細は表1 (配列番号1; 配列番号3)に記載される。
【図3】図3は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜127)、全長NY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Bを示す。この実施形態では、プロテインDのアミノ酸127位をNY-ESO-1のN末端に融合し、そのC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、398アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Bについてのさらなる詳細はセクション1.6の表1 (配列番号2; 配列番号4)に記載される。
【図4】図4は、部分的にトランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Cを示す。この実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、242アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Cについてのさらなる詳細は表1 (配列番号5; 配列番号7)に記載される。
【図5】図5は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)、部分的にトランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Dを示す。この実施形態では、プロテインDのアミノ酸127位を、部分的にトランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合し、そのC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、352アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。この実施形態についてのさらなる詳細は表1 (配列番号6; 配列番号8)に記載される。
【図6】図6は、トランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Eを示す。この実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、211アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Eについてのさらなる詳細は表1 (配列番号9; 配列番号11)に記載される。
【図7】図7は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)、トランケートされたNY-ESO-1およびトランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aを含む融合タンパク質である構築物Fを示す。この実施形態では、プロテインDのアミノ酸127位を、トランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合し、そのC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合して、321アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Fについてのさらなる詳細は表1 (配列番号10; 配列番号12)に記載される。
【図8】図8は、構築物Eの代替的実施形態、すなわちE'を示す。この実施形態では、トランケートされたLAGE-1のC末端を、トランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合して、212アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。この実施形態、構築物E'についてのさらなる詳細は表1 (配列番号21; 配列番号23)に記載される。
【図9】図9は、トランケートされたNY-ESO-1、トランケートされたLAGE-1、例えばLAGE-1aおよびコラーゲン様領域、例えばNY-ESO-1由来のコラーゲン領域を含む融合タンパク質である構築物Gを示す。この実施形態では、例えば、コラーゲン様領域のC末端を、トランケートされたLAGE-1のN末端に融合する。次いで、トランケートされたLAGE-1のC末端を、トランケートされたNY-ESO-1のN末端に融合して、289アミノ酸長の融合タンパク質を提供する。構築物Gについてのさらなる詳細は表1 (配列番号13; 配列番号15)に記載される。
【図10】図10は、部分的にトランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な組換えポリペプチドの模式図を示す。図10〜13で示されるエピトープは、該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、実験によって確認されていない。
【図11】図11は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)および、部分的にトランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な融合タンパク質の模式図を示す。
【図12】図12は、部分的にトランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な組換えポリペプチドの模式図を示す。
【図13】図13は、その分泌シグナルを有さないプロテインDの最初の3分の1 (例えばアミノ酸20〜約またはおよそ127)および、トランケートされたコラーゲン様ドメインを有するNY-ESO-1を含む典型的な融合タンパク質の模式図を示す。
【図14】図14は、トランケートされたLAGE-1aタンパク質内に同定されたいくつかのエピトープを示す模式図である。これらのエピトープは該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、ゆえにその列挙は網羅的ではない。疑いを回避するため、報告され、かつ/または図に列挙されたエピトープは、本明細書中で特に記載されない限り、実験によって確認されているかもしれないし、確認されていないかもしれない(すなわち、それらは予測されたもの等でありうる)。完全長LAGE-1aアミノ酸配列が配列表に配列番号58として記載されている。完全長LAGE-1bアミノ酸配列(LAGE-1bはこの図に記載されていない)は配列表に配列番号71として記載されている。
【図15】図15は、NY-ESO-1およびLAGE-1の両者、ならびに多数のMHC (主要組織適合複合体)クラスIおよびIIエピトープの模式図を示す。これらのエピトープは、該タンパク質に関して報告されたエピトープの単なる代表例であり、ゆえにその列挙は網羅的ではない。その報告および/または列挙された1個以上のエピトープは実験によって確認されていない。
【図16】図16はNY-ESO-1/LAGE-1融合設計の模式図を示す。
【図17】図17は15種の構築物およびその生産レベルを模式的にまとめている。P =プロテインD。C (グレーボックス) = NY-ESO-1コラーゲン様ドメイン。C (白ボックス) =トランケートされたコラーゲン様ドメイン。L =コラーゲン様ドメインを有さないLage 1。N =コラーゲン様ドメインを有さないNY-ESO-1。黒矢印=ポリヒスチジンタグ。(-) =低生産。(+) =ある程度の生産。(++) =高生産。(+++) =最高生産。構築物のうち8種のアミノ酸配列およびそれらをコードするヌクレオチド配列を表4および配列表にまとめる。
【図18】図18は、スクリーニング#1、すなわち融合タンパク質プラスアジュバントを用いた筋肉内免疫化が、移植された腫瘍(B16/NYESO1)での皮下チャレンジに対抗する防御をもたらしたかどうかを決定するためにLVL076、LVL079、LVL78、LVL68、LVL020、LVL26、LVL024、LVL30のそれぞれを評価するためのCB6F1マウスを使用する76日間の試験をまとめる。
【図19】図19は、76日間の試験で使用したコントロールマウスでのB-16-NY-ESO-1腫瘍成長をまとめる。
【図20】図20は、全長NY-ESO-1、LVL030、LVL068、LVL079、またはLVL026で免疫化されたマウスの生存率を示す。
【図21】図21は、ELISA、FACS、およびウエスタンブロットによって評価されたNY-ESO-1特異的免疫応答ならびにELISAおよびFACSによって評価されたLAGE-1a(コラーゲン様ドメインを有さない)特異的免疫応答をまとめる。
【図22】図22は、スクリーニング#2、すなわち選択した融合タンパク質プラスアジュバントを用いた筋肉内免疫化がB16/NY-ESO-1チャレンジおよびB16/LAGE-1aチャレンジに対抗する防御をもたらすかどうかを決定するための105日間の試験の実験設計をまとめる。B16/NY-ESO-1チャレンジを示す。
【図23】図23はスクリーニング#2をまとめており、B16/LAGE-1aチャレンジを示す。
【図24】図24は、B16/NY-ESO-1チャレンジ後の、LVL078、LVL068、全長NY-ESO-1、LVL024、およびLVL076で免疫化されたマウスの生存率を示す。図24を参照のこと。
【図25】図25は、B16/LAGE-1aチャレンジ後の、LVL076、コラーゲン様領域を有さないLAGE-1a、LVL024、全長NY-ESO-1、LVL078、またはLVL068で免疫化されたマウスの生存率を示す。
【図26】図26。カラム1-8は、左から右へ、以下の抗原: (1)バッファー(コントロール); (2)全長NY-ESO-1; (3)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a; (4) LVL068; (5) LVL078; (6) LVL024; (7) LVL076、のうちの1種で免疫化されたマウスでの、起こりうるヒトコラーゲン特異的免疫応答を検出するために行われたELISAの結果を示す。陽性コントロール(カラム8)は抗ヒトコラーゲン1モノクローナル抗体(抗ヒトコラーゲンImAb)を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
融合タンパク質。本発明の融合タンパク質は癌の治療に有用であり、より具体的には以下の癌: 黒色腫; 乳癌; 前立腺癌; 移行上皮癌を含む膀胱癌; 非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌; 食道癌を含む頭頸部癌; 扁平上皮癌; 消化管の癌腫; 肝癌; 脳腫瘍; 白血病; および種々の肉腫の治療に有用である。
【0016】
LAGE-1およびNY-ESO-1の発現プロファイルに基づいて、本発明の融合タンパク質は推定で37%の乳癌において有効である可能性を有する。本発明の治療はまた、Her2/neu標的療法が適応にならない患者の治療に特に好適である。また本発明の融合タンパク質は、およそ35%の前立腺癌患者、35%の膀胱癌患者、40%の黒色腫患者および35%のNSCLC(非小細胞肺癌)患者において有効であると予測される。一実施形態では、本発明の融合タンパク質によって、より広範囲の患者集団を治療することが可能になる。というのも、NY-ESO-1および/またはLAGE-1(LAGE-1aおよびLAGE-1bを含む)の両者を発現する腫瘍を有する患者に本発明の融合タンパク質を投与することができるからである。
【0017】
また本発明の融合タンパク質は、その個別の成分タンパク質よりも高い免疫原性を示しうるが、その理由は:
1種以上のコラーゲン様ドメインの除去によって、天然内因性コラーゲン構造とのホモロジーによって生じる化合物の潜在的免疫寛容が低減されるか、または
異種融合パートナーの任意の付加によってCD4 T細胞応答をさらに刺激することができるからである。ゆえに、該融合タンパク質は癌抗原、例えばNY-ESO-1もしくはLAGE-1、または両者に対する免疫原性応答の誘発に有用である。
【0018】
本発明で用いられるNY-ESO-1は、全長NY-ESO-1、部分的にトランケートされたNY-ESO-1もしくはトランケートされたNY-ESO-1または、NY-ESO-1に対する免疫応答を引き起こすことが可能な1個以上のエピトープを含むその任意の断片であってよい。本明細書の関連で全長NY-ESO-1タンパク質は、約またはおよそ1〜180アミノ酸で、かつ天然に存在するタンパク質(配列番号49)に対して少なくとも95、96、97、98、99%または100%同一であるタンパク質を意味するものとする。本明細書中で使用される用語「LAGE-1」は、以下の行で記載される、1種以上のLAGE-1ファミリーメンバー、例えばLAGE-1aおよびLAGE 1bを表す。「全長LAGE-1a」タンパク質は、配列番号58に対して95、96、97、98、99%または100%同一のタンパク質を意味するものとする。同様に、「全長LAGE-1b」タンパク質は、天然に存在するタンパク質(配列番号71)に対して95、96、97、98、99%または100%同一のタンパク質を意味するものとする。
【0019】
一実施形態では、同一性は配列の全長にわたる。ゆえに、本発明はまた、保存的置換を有する該融合タンパク質にまでおよぶ。保存的置換は周知であり、概して、配列アライメントコンピュータプログラムのデフォルトスコアリングマトリックスとして設定される。これらのプログラムには、PAM250 (Dayhoft M.O. et al., (1978), 「A model of evolutionary changes in proteins」, 「Atlas of Protein sequence and structure」 5(3) M.O. Dayhoft (ed.), 345-352), National Biomedical Research Foundation, Washington, およびBlosum 62 (Steven Henikoft and Jorja G. Henikoft (1992), および「Amino acid substitution matricies from protein blocks」), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (Biochemistry): 10915-10919が含まれる。
【0020】
一般論として、以下の群内の置換は保存的置換であるが、群間の置換は非保存的であるとみなされる。該群は以下の通りである:
i) アスパラギン酸/アスパラギン/グルタミン酸/グルタミン、
ii) セリン/スレオニン、
iii) リシン/アルギニン、
iv) フェニルアラニン/チロシン/トリプトファン、
v) ロイシン/イソロイシン/バリン/メチオニン、
vi) グリシン/アラニン。
【0021】
本明細書の関連で「部分的にトランケートされた」とは、コラーゲン様領域の大部分が除去されているが、依然として、その領域で見出されるエピトープA31を含むか、またはそれからなるNY-ESO-1またはLAGE-1タンパク質(適宜)を意味するものとする。
【0022】
一実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1および/またはLAGE-1は、アミノ酸44、45、46、47、48、49、50、51または52位〜アミノ酸175、176、177、178、179または180位の一連のアミノ酸または、これらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸48位〜アミノ酸180位またはアミノ酸46〜178位、を含むかまたはそれからなる。一実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1は約または厳密にアミノ酸48〜180位(またはLAGE-1bの場合は約もしくは厳密にアミノ酸48-210位)を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、部分的にトランケートされたNY-ESO-1はNY-ESO-1のアミノ酸48〜180位を含むか、またはそれからなる。
【0023】
一実施形態では、部分的にトランケートされたLAGE-1bは、アミノ酸44、45、46、47、48、49、50、51または52位〜アミノ酸205、206、207、208、209または210位の一連のアミノ酸またはこれらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸48位〜アミノ酸210位またはアミノ酸46〜208位、を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、部分的にトランケートされたLAGE-1bは約または厳密にアミノ酸48〜210位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、部分的にトランケートされたLAGE-1bはLAGE-1bのアミノ酸48〜210位を含むか、またはそれからなる。
【0024】
本明細書の関連で「トランケートされた(トランケート型)」とは、コラーゲン様領域が除去(A31エピトープの除去を含む)されているNY-ESO-1またはLAGE-1タンパク質(適宜)を意味するものとする。一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1および/またはLAGE 1は約または厳密にアミノ酸71-180位(またはLAGE-1bの場合は約もしくは厳密にアミノ酸71-210位)を含むか、またはそれからなる。
【0025】
一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1は、アミノ酸67、68、69、70、71、72、73、74または75位〜アミノ酸175、176、177、178、179または180位の一連のアミノ酸またはこれらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸71位〜アミノ酸180位またはアミノ酸69〜178位、を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1は約または厳密にアミノ酸71〜180位(またはLAGE-1bの場合は約もしくは厳密にアミノ酸71-210位)を含むか、またはそれからなる。
【0026】
一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、トランケートされたNY-ESO-1またはLAGE-1はNY-ESO-1またはLAGE-1のアミノ酸71〜180位を含むか、またはそれからなる。
【0027】
一実施形態では、トランケートされたLAGE-1bは、アミノ酸67、68、69、70、71、72、73、74または75位〜アミノ酸205、206、207、208、209または210位の一連のアミノ酸またはこれらのアミノ酸の任意の組み合わせ、例えばアミノ酸71位〜アミノ酸210位またはアミノ酸69〜208位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、トランケートされたLAGE-1bは約または厳密にアミノ酸71〜210位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、この関連で用語「約」とは、配列のアミノ酸総数の+/- 10%までのアミノ酸が場合により該配列に付加されているか、または該配列から欠失していることを意味すると解される。一実施形態では、トランケートされたLAGE-1bはLAGE-1bのアミノ酸71〜210位を含むか、またはそれからなる。
【0028】
「他の断片」は、本発明の融合タンパク質に組み込まれた場合に、本発明の融合タンパク質の所望の特性および利点を有する最終タンパク質を生じさせる断片であるものとする。
【0029】
NY-ESO-1。前記内容にしたがって、コラーゲン領域が部分的にトランケートされているか、または完全にトランケートされている、癌退縮抗原NY-ESO-1由来の抗原を含む改変抗原が提供される。いくつかの実施形態では、コラーゲン領域より大きい領域が除去される。いくつかの実施形態では、改変抗原は遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、改変抗原は組換え抗原である。いくつかの実施形態では、先の文章に記載の抗原を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、典型的なポリペプチドは異種タンパク質、例えばヘモフィルス・インフルエンザ菌B型(Haemophilus influenzae type B)由来のプロテインDまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、上述のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む構築物が提供される。
【0030】
いくつかの実施形態では、コラーゲン様領域を含まないNY-ESO-1またはその断片を含む免疫原性ポリペプチドが提供される。他の実施形態では、NY-ESO-1は部分的にトランケートされているか、またはトランケートされているか、または1個以上のエピトープを含むその任意の断片を含む。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドは保存的置換を有する。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドおよび構築物は癌再発の予防または実質的軽減のための予防薬として有用である。
【0031】
そしていくつかの実施形態では、コラーゲン領域から1個以上のアミノ酸が除去される。より具体的には、いくつかの実施形態で、コラーゲン領域を含む部分、すなわちおおよそで配列番号49のアミノ酸1-73位から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73個のアミノ酸が除去される。コラーゲン領域中の隣接位置または隣接していない位置からアミノ酸を除去してもよい。換言すれば、いくつかの実施形態では、配列番号49の該部分内の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73のいずれかまたはその任意の組み合わせからアミノ酸が除去される。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の一部分が保存されて、得られたポリペプチド内で該部分中の特定のエピトープが保持されることを当業者は理解する。
【0032】
いくつかの実施形態では、NY-ESO-1の中央領域またはC末端領域の断片が利用される。ゆえに、いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号49に記載のアミノ酸配列の1種以上の断片、すなわち、アミノ酸位置74-75、76-80、81-85、86-90、91-95、96-100、101-105、106-110、111-115、116-120、121-125、126-130、131-135、136-140、141-145、146-150、151-155、156-160、161-165、166-170、171-175、176-180のうちの1つ以上、またはその任意の組み合わせを含有する断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、得られたポリペプチド内で特定のエピトープが保持されるようにアミノ酸配列が保存されることを当業者は理解する。
【0033】
LAGE-1。いくつかの実施形態では、コラーゲン領域が部分的にトランケートされているか、または完全にトランケートされている、癌退縮抗原LAGE-1由来の抗原を含む改変抗原が提供される。いくつかの実施形態では、コラーゲン領域より大きい領域が除去される。いくつかの実施形態では、改変抗原は遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、改変抗原は組換え抗原である。いくつかの実施形態では、先の文章に記載の抗原を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、該抗原は癌退縮抗原LAGE-1a由来である。いくつかの実施形態では、該抗原は癌退縮抗原LAGE-1b由来である。他の実施形態では、典型的な融合タンパク質は異種タンパク質、例えばヘモフィルス・インフルエンザ菌B型由来のプロテインDまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、上述のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む構築物が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、コラーゲン様領域を含まないLAGE-1またはその断片を含む免疫原性ポリペプチドが提供される。他の実施形態では、LAGE-1は部分的にトランケートされているか、またはトランケートされているか、または1個以上のエピトープを含むその任意の断片を含む。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドはLAGE-1ポリペプチドとNY-ESO-1のコラーゲン様領域のハイブリッドを含む。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、部分的にトランケートされたLAGE-1またはトランケートされたLAGE-1に連結されたNY-ESO-1コラーゲン領域の一部分または全体を含む。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドは保存的置換を有する。いくつかの実施形態では、そのようなポリペプチドおよび構築物は癌再発の予防または実質的軽減のための予防薬として有用である。
【0035】
そして、いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸がコラーゲン領域から除去されるか、またはN末端アミノ酸からさえも除去される。より具体的には、いくつかの実施形態で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73個のアミノ酸が、コラーゲン領域から、またはN末端アミノ酸領域(すなわち配列番号58(LAGE-1a)または配列番号71(LAGE-1b)のおおよそアミノ酸1-73位)からさえも除去される。この領域中の隣接位置または隣接していない位置からアミノ酸を除去してもよい。換言すれば、いくつかの実施形態で、配列番号58(LAGE-1a)または配列番号71(LAGE-1b)内の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、または73のいずれか、またはその任意の組み合わせから1個以上のアミノ酸が除去される。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列の部分が保存されて、得られたポリペプチド内の該部分中の特定のエピトープが保持されることを当業者は理解する。
【0036】
いくつかの実施形態では、LAGE-1の中央領域またはC末端領域の断片が利用される。ゆえに、いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号58(LAGE-1a)または配列番号71(LAGE-1b)に記載のアミノ酸配列の1種以上の断片、すなわちアミノ酸位置74、75、76、77、78、79、80、81-85、86-90、91-95、96-100、101-105、106-110、111-115、116-120、121-125、126-130、131-135、136-140、141-145、146-150、151-155、156-160、161-165、166-170、171-175、176-180のうちの1つ以上、またはその任意の組み合わせを含有する断片を含んでよい。いくつかの実施形態では、得られたポリペプチド内で特定のエピトープが保持されるようにアミノ酸配列が保存されることを当業者は理解する。
【0037】
一態様では、本発明は全長NY-ESO-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0038】
一態様では、本発明は部分的にトランケートされたNY-ESO-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0039】
一態様では、本発明はトランケートされたNY-ESO-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0040】
一態様では、本発明は全長LAGE-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0041】
一態様では、本発明は部分的にトランケートされたLAGE-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0042】
一態様では、本発明はトランケートされたLAGE-1を含む融合タンパク質を提供する。
【0043】
一態様では、本発明で用いられるLAGE-1はLAGE-1aである。
【0044】
一態様では、本発明で用いられるLAGE-1はLAGE-1bである。
【0045】
本発明の一態様では、NY-ESO-1のN末端をLAGE-1のC末端に融合させる。
【0046】
本発明の一態様では、NY-ESO-1のC末端をLAGE-1のN末端に融合させる。
【0047】
別の異種抗原、例えばグラム陰性菌のヘモフィルス・インフルエンザ菌Bの表面タンパク質であるプロテインD由来の断片を組み込むことによって、本発明の融合タンパク質の免疫原性をさらに増加させ、かつ/または該タンパク質の生産性をさらに改善することができる。プロテインD由来の免疫学的融合パートナーに関する追加の情報はWO 91/18926から入手することができる。
【0048】
本発明の融合パートナーに含ませるためのタンパク質は化学的にコンジュゲートするか、または組換え融合タンパク質として発現させてよい。一実施形態では、融合タンパク質を組換え融合タンパク質として発現させる。
【0049】
追加の異種融合パートナーはTヘルパーエピトープの提供を支援する(免疫学的融合パートナー)か、または該タンパク質の大量発現を支援する(発現エンハンサー)ものでありうる。一実施形態では、追加の異種融合パートナーは免疫学的融合パートナーおよび発現促進パートナーの両方でありうる。
【0050】
一実施形態では、プロテインDまたはその誘導体は、およそまたは厳密に該タンパク質の最初の1/3、例えばおよそまたは厳密にプロテインDのアミノ酸1〜109位を含む。この実施形態では、天然のプロテインD配列のアミノ酸2-Lysおよび/または3-Thrをアミノ酸2-Aspおよび/または3-Proで置換してよい。別の実施形態では、プロテインDまたはその誘導体は約または厳密にプロテインDのアミノ酸20〜127位を含むか、またはそれからなる。一実施形態では、本発明で使用するためのプロテインDは該タンパク質の分泌配列を含まない。概して、本発明の融合タンパク質中では、プロテインD誘導体は脂質化されていない。
【0051】
一実施形態では、プロテインDは、例えばプロテインD断片のN末端に融合されたアミノ酸Met、AspおよびProをさらに含む(すなわち、該構築物は「MDP − 20-127位プロテインD」を含むか、またはそれからなる)。これらの3種の追加アミノ酸は該タンパク質の安定性を支援し、かつ/またはそのタンパク質発現のレベルを増加させると考えられる。
【0052】
一態様では、本発明は、プロテインDのN末端断片(すなわち最初の3分の1) (上記)が本発明の融合タンパク質またはその免疫原性断片のN末端に融合されている融合タンパク質を提供する。より具体的には、プロテインDと本発明の融合タンパク質のN末端の融合は、後者が、切除されているプロテインDのC末端断片に取って代わるように行ってよい。かくしてプロテインDのN末端が融合タンパク質のN末端になる。
【0053】
他の異種融合パートナーまたはその断片を本発明の融合タンパク質に、プロテインDの代わりに、またはそれに加えて含ませることができる。該異種融合パートナーは例えば以下のものである:
・インフルエンザウイルス由来の非構造タンパク質NS1 (赤血球凝集素)。典型的に、N末端の81アミノ酸を使用するが、Tヘルパーエピトープを含む限り異なる断片を使用してもよい;
・LytA遺伝子によってコードされるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼLytAを合成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来のLytA(Gene, 43 (1986) 265-272ページ)。例えば残基178から始まるC末端に見出される、残基188〜305等のLytA分子の反復部分等である。一実施形態では、異種融合パートナーはCLytAである。別の実施形態では、異種融合パートナーは、WO03/104272に記載のCLytA-P2-CLytAを含む融合タンパク質であるCPCである。アミノ末端にC-LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製はBiotechnology: 10, (1992) 795-798ページに記載されている。
【0054】
本発明の融合タンパク質は、さらに、親和性タグ、例えば1〜10の範囲、例えば6または10個のヒスチジン残基を含むヒスチジン尾部(hisタグとしても知られる)を含んでよい。これらの残基は、例えば、該タンパク質の末端部分、例えばN末端および/またはC末端部分上であってよい。該親和性タグを組み込んで、該タンパク質の精製をさらに改善することができる。
【0055】
本発明の特定の具体的な融合タンパク質は、例えば、図面に記載されるようにして構築することができる。図面に記載の各実施形態は本発明の独立した態様である。本発明の融合タンパク質の構築物についての追加の例を表1-4および配列表に記載する。
【0056】
核酸。本発明はまた、本発明の融合タンパク質をコードする核酸およびポリ核酸、例えばDNAにまでおよぶ。本発明のプロセスは、Maniatis et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989に記載されるような慣用の組換え技術によって実施してよい。特に、プロセスは以下のステップを含んでよい:
i) 宿主細胞中で、融合タンパク質またはその免疫原性誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むDNAポリマーを発現可能な、複製可能または組み込み発現ベクターを調製するステップ;
ii) 宿主細胞を該ベクターで形質転換するステップ;
iii) 該DNAポリマーの発現により該タンパク質の生産が可能になる条件下で該形質転換宿主細胞を培養するステップ; および
iv) 該タンパク質を回収するステップ。
【0057】
用語「形質転換」は宿主細胞内への外来DNAの導入を意味するために本明細書中で使用される。形質転換は、例えばGenetic Engineering; Eds. S.M. Kingsman and A.J. Kingsman; Blackwell Scientific Publications; Oxford, England, 1988に記載されるような慣用の技術を使用して、例えば適切なプラスミドまたはウイルスベクターでの形質転換、トランスフェクションまたは感染によって達成することができる。用語「形質転換された」または「形質転換体」は、以後、目的の外来遺伝子を含有しかつ発現する、得られた宿主細胞に適用される。本発明の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは新規であり、また、本発明の一部分を構成する。
【0058】
複製可能発現ベクターは、本発明にしたがって、宿主細胞と適合するベクターを切断してインタクトのレプリコンを有する線形DNAセグメントを提供し、該線形セグメントを1つ以上のDNA分子(該DNA分子は該線形セグメントと一緒になって所望の生成物、例えば本発明のタンパク質をコードするDNAポリマー、またはその誘導体をコードする)とライゲーション条件下で組み合わせることによって調製することができる。ゆえに、DNAポリマーは、所望のように、該ベクターの構築前に形成させるか、またはその構築中に形成させてよい。
【0059】
ベクターの選択は部分的に宿主細胞によって決まる。宿主細胞は原核生物または真核生物であってよいが、概して大腸菌(E. coli)またはCHO細胞である。好適なベクターには、プラスミド、例えばTMCP14またはpET21またはpET26、pcDNA3、バクテリオファージ、コスミドおよび組換えウイルスが含まれる。発現がバキュロウイルス、酵母またはCHO宿主細胞中でなされる一実施形態では、以下のベクター: pEE14、pPICZA、pPICZB、pPICZC、pDMT-DEST48およびpAcSG2の1つを使用することができる。複製可能発現ベクターの調製は、例えば上で引用されるManiatis et al.に記載の手順によって、DNAの制限切断、重合化およびライゲーションに適切な酵素を用いて慣用法で実行することができる。
【0060】
組換え宿主細胞は、本発明にしたがって、形質転換条件下で本発明の複製可能発現ベクターで宿主細胞を形質転換することによって調製する。好適な形質転換条件は慣用のものであり、例えば上で引用されるManiatis et al.、または「DNA Cloning」 Vol. II, D.M. Glover ed., IRL Press Ltd, 1985に記載されている。形質転換条件の選択は宿主細胞によって決まる。ゆえに、細菌宿主、例えばE. coliは、CaCl2の溶液(Cohen et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 1973, 69, 2110)またはRbCl、MnCl2、酢酸カリウムおよびグリセロールの混合物を含む溶液で処理し、次いで3-[N-モルホリノ]-プロパン-スルホン酸、RbClおよびグリセロールで処理しうる。培養物中の哺乳類細胞は、細胞上にベクターDNAをカルシウム共沈殿させることによって形質転換することができる。本発明はまた、本発明の複製可能発現ベクターで形質転換された宿主細胞におよぶ。
【0061】
該DNAは標準的技術によってコドンを最適化して、該当する宿主の発現をさらに促進することができる。
【0062】
DNAポリマーの発現を可能にする条件下での形質転換宿主細胞の培養は、例えば上で引用されるManiatis et al.および「DNA Cloning」に記載のようにして慣用法で実行される。すなわち、好ましくは細胞に栄養分を供給し、50℃未満の温度で培養する。本発明のタンパク質は原核生物または真核生物、例えば酵母で発現させることができるが、E. coliで発現させることが多い。特定のE. coli株、例えば以下の株を使用することができる:
・AR58: gal E::Tn 10,Δ-8(chlD-pgl),Δ-H1(cro-chlA),N+, およびcI857であるN99由来の潜在性λ溶原菌(参考文献: Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol82,pp.88-92,January 1985 Biochemistry)
・BLR (DE3) Novagen, WI, USA (カタログ番号: 69053-4): 使用されうるBLRはBL21のrecA-誘導体である。概して、例えばカナマイシン耐性またはアンピシリン耐性の選択マーカーを組み入れて、発現系への組換え遺伝子/構築物の組み込み成功の識別を容易にする。
【0063】
生成物は、宿主細胞にしたがって、かつ発現産物の局在(細胞内、または培養培地もしくは細胞ペリプラズムへ分泌)にしたがって、慣用の方法によって回収される。ゆえに、宿主細胞が細菌、例えばE. coliである場合、それを例えば物理的、化学的または酵素的に溶解し、得られたライセートからタンパク質産物を単離することができる。宿主細胞が哺乳類細胞である場合、概して、栄養培地または細胞を含まない抽出物から生成物を単離する。慣用のタンパク質単離技術には、選択的沈殿、吸着クロマトグラフィー、およびモノクローナル抗体アフィニティーカラムを含むアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。
【0064】
本発明のタンパク質は可溶性で液体形態または凍結乾燥形態で提供される。本発明はまた、本発明の融合タンパク質および製薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物、例えばワクチンを提供する。
【0065】
本発明の治療用組成物を投与する場合、製薬的に許容される製剤として投与することができる。そのような製剤は、製薬的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、追加の免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカインならびに場合により他の治療物質を通常通りに含有する。
【0066】
その量は、当然、処置される具体的状態、その状態の重症度、個々の患者パラメータ、例えば年齢、健康状態、サイズおよび体重、治療期間、(同時治療が行われていれば)同時治療の性質、具体的投与経路、ならびに医師の知識および専門的知識内の同様の要因に依存する。これらの要因は当業者に周知であり、単に通常の実験の範囲で対処することができる。概して、個々の成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち信頼できる医学的判断に基づく安全最高用量を使用することが好ましい。しかし、患者は医学的理由、心理学的理由または実質的に任意の他の理由によって低用量または耐容量を要求するかもしれないことは当業者は理解しているであろう。各ヒト用量は1〜1000μgのタンパク質、および好ましくは30〜300μgを含むことが概して予測される。
【0067】
一態様では、本発明の融合タンパク質を投与するために使用される医薬組成物はワクチンである。該ワクチンは場合により1種以上の他の腫瘍関連の抗原、ポリペプチドおよび/またはペプチドを含有してよい。例えば、MAGE、LAGEおよびGAGEファミリーに属するメンバーである。
【0068】
NY-ESO-1/LAGE-1およびMAGEの組み合わせ。本発明の一実施形態では、(a) NY-ESO-1もしくはLAGE-1抗原または本明細書中に記載の融合タンパク質を含む抗原成分および(b) MAGE抗原または融合タンパク質を含む抗原成分を含む組成物が提供される。一実施形態では、該組成物は本明細書中に記載のアジュバントをさらに含んでよい。
【0069】
組み合わせで使用するためのMAGE抗原は全長MAGE抗原を含んでよい。あるいは、該MAGE抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上のアミノ酸が該アミノ酸配列から欠失しているか、または置換されているMAGEの免疫原性部分を含んでよい。本発明の一実施形態では、MAGE配列のN末端から2アミノ酸が欠失している。抗原がMAGE-A3またはその免疫原性部分である本発明の一実施形態では、MAGE-A3の配列はMAGE-A3のアミノ酸3〜314位である。
【0070】
本発明の一実施形態では、NY-ESO-1/LAGE-1抗原および/または本明細書中に記載の融合タンパク質、ならびにMAGE-A3抗原を含む融合タンパク質、を含む組成物が提供される。別の実施形態では、MAGE-A3抗原を含む融合タンパク質はMAGE-A3抗原および、プロテインDの最初の約またはおよそまたは約109アミノ酸を含む融合パートナータンパク質(該融合パートナータンパク質では、プロテインDから1個または2個またはそれ以上のアミノ酸が場合により置換されていて、かつ場合により、プロテインDの最初の109アミノ酸に加えてプロテインDのシグナル配列が存在する)を含むか、またはそれからなる。
【0071】
本発明の融合タンパク質は、追加的に、場合により、抗原と融合パートナーまたは融合パートナータンパク質の配列間または(His尾部が存在すれば)抗原とHis尾部間に「リンカー」として1個以上のアミノ酸を含む。該アミノ酸は抗原および/または融合パートナーの配列と無関係であってよい。
【0072】
本明細書中に記載の本発明の融合タンパク質は、追加的に、融合タンパク質配列のN末端にアミノ酸Met-Asp-Proを含んでよい。Metアミノ酸は元のプロテインD配列由来であるか、または無関係の配列由来であってよい。
【0073】
一実施形態では、本発明の組み合わせにおいて使用するためのMAGE-A3およびプロテインDを含む融合タンパク質の配列は配列番号98に示される配列である。配列番号98は、N末端から、以下の特徴を含む:
アミノ酸1-18位 1-Metおよび、プロテインDの天然アミノ酸残基2-Lysおよび3-Thrに代わる置換残基2-Aspおよび3-Proを含むプロテインDのシグナル配列
アミノ酸19-127位 プロテインDのアミノ酸20〜127位を含む
アミノ酸128-129位 クローニング部位を創出するためのアミノ酸(aa)128-129の位置の無関係のアミノ酸Met-Asp
アミノ酸130-441位 MAGE3の断片(MAGE3のアミノ酸3-314位)
アミノ酸442-443位 無関係のアミノ酸Gly-Gly
アミノ酸444-451位 7his尾部。
【0074】
本発明はまた、該ワクチン/組成物の製造方法および上記方法によって取得されたか、または取得可能な融合タンパク質およびワクチン/組成物におよぶ。
【0075】
ワクチン製造は、概して、Vaccine Design (「The subunit and adjuvant approach」(eds. Powell M.F. & Newman M.J). (1995) Plenum Press New York)に記載される。リポソーム中へのカプセル化はFullerton, 米国特許第4,235,877号に記載される。
【0076】
本発明の融合タンパク質は本発明のワクチン製剤中でアジュバント化することができる。好適なアジュバントには、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムが含まれるが、カルシウム、鉄または亜鉛の塩であってもよく、またはアシル化チロシン、またはアシル化糖、またはカチオンもしくはアニオン誘導体化多糖、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。他の公知アジュバントには、CpG含有オリゴヌクレオチドが含まれる。該オリゴヌクレオチドはCpGジヌクレオチドがメチル化されていないことを特徴とする。そのようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えばWO 96/02555に記載されている。
【0077】
本発明の製剤では、アジュバント組成物がTH1型優勢の免疫応答を誘発することが望ましい。一実施形態では、例えばモノホスホリルリピドA、好ましくは3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)とアルミニウム塩との組み合わせを含むアジュバント系が提供される。CpGオリゴヌクレオチドもTH1応答を誘発することができ、それを含めてもよい。
【0078】
一実施形態では、本明細書中に記載の融合タンパク質と、モノホスホリルリピドAおよびサポニン誘導体の組み合わせ、特にWO 94/00153で開示されるQS21および3D-MPLの組み合わせ、またはWO 96/33739で開示される、QS21がコレステロールでクエンチされている低反応原性組成物(less reactogenic composition)を含むアジュバント組成物とを含む組成物が提供される。使用することができる一製剤は、例えば水中油エマルジョン中に、QS21、3D-MPL &トコフェロールを含む。それはWO 95/17210に記載されている。本発明で使用するための別のアジュバント製剤は、例えば水中油エマルジョン中にまたはリポソーム製剤として、QS21、3D-MPL & CpGまたはその等価物を含んでよい。したがって本発明の一実施形態では、本発明の融合タンパク質および例えば上記のようなアジュバントを含むワクチンが提供される。本発明はまた、本明細書中に記載の融合タンパク質を含むワクチンおよび組成物の製造方法におよぶ。
【0079】
本発明はまた、ワクチン接種のための、本明細書中に記載の核酸、ポリペプチドまたはペプチドの送達を意図する。ポリペプチドおよびペプチドの送達は、当技術分野において周知の標準ワクチン接種プロトコルにしたがって達成することができる。別の実施形態では、核酸の送達は、ex vivo法によって、すなわち、被験体から細胞を取り出し、該細胞を遺伝子操作して癌関連抗原を含めさせ、かつ操作された細胞を被験体に再導入することによって達成することができる。概して、この送達は、遺伝子の機能的コピーを被験体の細胞(群)にin vitroで導入し、かつ該遺伝子操作細胞(群)を被験体に戻すことを含む。遺伝子の機能的コピーは調節エレメントの作動可能な制御下に置き、それにより遺伝子操作細胞(群)での該遺伝子の発現が可能になる。多数のトランスフェクションおよび形質導入技術ならびに適切な発現ベクターは当業者に周知であり、そのうちのいくつかはPCT出願WO 95/00654に記載されている。ベクター、例えばウイルスおよび標的化リポソームを使用するin vivo核酸送達もまた、本発明にしたがって意図される。
【0080】
略語
CO コラーゲン様領域
W/Ocoll コラーゲン様領域(コラーゲン様ドメイン)を含まない
PD1/3 プロテインDの最初の3分の1
融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の典型的な実施形態を表1-3に挙げる。
【0081】
表1. 融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の典型的な実施形態を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表1】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表2. 融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の追加の典型的な実施形態を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表2】
【0094】
【0095】
表3. 融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列の追加の典型的な実施形態を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表3】
【0096】
【0097】
【0098】
表4. 実施例で考察される融合タンパク質およびそれをコードするヌクレオチド配列を挙げる。各ヌクレオチド配列を対象物によって説明し、固有のヌクレオチド配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。各融合タンパク質を対象物によって説明し、固有のアミノ酸配列識別子(配列番号)によって特定し、配列表に記載する。
【表4】
【0099】
配列表から明らかになるように、表4の構築物の多くは先の表に記載の1つ以上の実施形態に類似の設計構造を有する。例えば、LVL068は、配列番号45(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。LVL076は、配列番号25(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。LVL078は、配列番号33(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。LVL079は、配列番号37(表1)として記載される実施形態と同じ設計構造を共有する。
【0100】
さらに、表4に記載の融合タンパク質構築物のいくつか、すなわちLVL155、LVL106、LVL156、LVL157、LVL151は、表4に記載の他の融合タンパク質配列、すなわち、それぞれLVL068、LVL030、LVL076、LVL078、LVL024の慣用的な改変によって作製された。そのような改変には、プロテインDとキメラ(chimers)の先頭部分(すなわちNY-ESO-1およびLAGE-1のいずれか由来の部分)の間のアミノ酸残基の除去およびhisタグとキメラ(chimer)の先頭部分の間のアミノ酸の除去が含まれる。ゆえに、表4の融合タンパク質のいくつかは表4の他の融合タンパク質と密接に対応する。これらの融合タンパク質間の対応を表5に記載し、実施例4でより詳細に説明する。
【表5】
【0101】
実施例
【実施例1】
【0102】
実施例1. NY-LA1キメラタンパク質の設計および生産
図17にまとめるように、いくつかのNY-ESO-1/LAGE-1融合タンパク質を設計した。該融合タンパク質には、コラーゲン様ドメインを含むものおよび含まないもの、ならびにプロテインDの末端を含むものおよび含まないものがある。Escherichia coliでの発現のために、設計された構築物のコドンを最適化した。オリゴヌクレオチドおよび/またはPCR産物から合成遺伝子を組み立てた。KpnIおよびSacI制限部位を使用してpGA4主鎖(AmpR)中に該断片をクローニングし、最適化された遺伝子の5'末端および3'末端にNdeIおよびXhoI部位をそれぞれ加えた。
【0103】
形質転換細菌からプラスミドDNAを精製し、UV分光測定によって濃度を決定した。最終構築物を配列決定によって確認した。NdeIおよびXhoI制限部位を使用して、異なるNY/LAGEキメラ構築物に関して最適化されたコード配列をpET19 (AmpR)のマルチクローニング部位に直接サブクローニングして、NY/LAGEキメラ(chimer)発現プラスミドを得た。pET26へのクローニングでは、N末端ヒスチジン尾部を付加するようにPCRプライマーを設計した。この増幅の結果、異なる構築物のコード領域と同期して6ヒスチジン尾部が付加された。この増幅断片をNdeI/XhoI制限酵素で酵素消化し、その後、異なるNY/LAGEキメラ構築物をpET26 (KanR)のマルチクローニング部位にクローニングして、発現プラスミドを得た。最終構築物を配列決定によって確認した。
【0104】
振とうフラスコでの生産。細菌宿主株の培養および誘導
培養
2.5L振とうフラスコ中で800 mlのLuria-Bertani (LB)ブロス(BD) + 1% (w/v)グルコース(Laboratoire MAT, カタログ番号: GR-0101) + 抗生物質(pET19に関してはカルベニシリン100μg/ml, pET26に関してはカナマイシン40μg/ml)で細菌を培養した。BLR (DE3)細胞に関しては、O.D.600nmが0.8付近になるまで培養物を37℃でインキュベートした。
【0105】
誘導
0.8付近のO.D.600nmで、培養BLR (DE3)を1 mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG; EMD Chemicals Inc., カタログ番号: 5815)で誘導し、16-18時間16℃でインキュベートした。構築物LVL106、151、155および157を用いて特定タンパク質5〜15 mg/800mlを得た。各構築物に関するタンパク質生産を図17にまとめる。
【実施例2】
【0106】
実施例2. 予備精製および安定性の概要
タンパク質の抽出および精製
遠心分離によって細胞を回収し、次いで物理的または化学的手段によってそれを破壊し、目的のポリペプチドを単離するために、得られた粗製抽出物を保持した。
【0107】
精製
発現された組換えタンパク質を塩酸グアニジン溶液で可溶化し、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)樹脂に載せた。次いでタンパク質をカラム上で8Mおよび4M尿素溶液で洗浄した後、イミダゾール濃度を増加させることによって溶出させた。次いで、後の使用のために、最終4M尿素バッファー、pH 7.0中でタンパク質を脱塩した。SDS PAGEおよびウエスタンブロットによって精製物を評価し、タンパク質の純度および同一性を確認した。
【0108】
精製融合タンパク質の安定性試験
安定性アッセイを37℃で実施し、タンパク質をSDS-PAGEによって評価した。予備安定性アッセイでは大きな問題は示されなかった。
【0109】
予備可溶化アッセイ
以下のチャートにまとめるようにタンパク質の溶解度を評価した。
【表6】
【実施例3】
【0110】
実施例3: 融合タンパク質でのIM免疫化
下記のように一連の筋肉内免疫化スクリーニング実験を含むマウスモデルにおいて融合タンパク質を前臨床的に評価した。選択されたマウスモデルはC57BL6マウスとBalb/cマウスの交雑から得られた第一世代であるCB6F1であった。そのマウスはCharles River Laboratories, Inc., 251 Ballardvale Street, Wilmington, MA 01887-1000から市販されている。選択された腫瘍セルラインは癌治療の研究のために市販されている移植可能なマウス黒色腫であるB16 (マウス黒色腫セルライン)であった。
【0111】
スクリーニング#1
実験設計。76日間の試験では、融合タンパク質プラスアジュバントでの筋肉内免疫化が、移植された腫瘍細胞(B16/NYESO1)での皮下チャレンジに対抗する防御をもたらすかどうかを決定するために、CB6F1マウスを使用して、LVL076、LVL079、LVL078、LVL068、LVL020、LVL026、LVL024、LVL030のそれぞれを評価した。具体的には、タンパク質15μgおよびアジュバントを含有する50μL注射でマウスを筋肉内で免疫化した。選択されたアジュバントはAS15であった。AS15は、QS21、3D-MPLおよびCpGを含むリポソームアジュバント製剤である。
【0112】
下記1Aおよび1Bに記載の融合タンパク質を用いて試験を実行した。マウスをそれぞれ15匹マウス/群の群に分けた。以下のように、マウスを0日目に免疫化し、14日目に再び免疫化した。
試験1A
LVL079
LVL026
LVL068
LVL030
試験1B
LVL076
LVL020
LVL078
LVL024
コントロール
抗原バッファー/AS15バッファー
全長NY-ESO-1
コラーゲン様ドメイン(CLD)を有さないLAGE-1a
MAGE A3。
【0113】
28日目に、皮下移植されたB16/NY-ESO-1腫瘍を用いて6匹マウス/群をチャレンジした。0、14、28、および76日目に、NY-ESO-1全長、コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a、およびヒトコラーゲンに対する抗体応答をELISA (IgG1およびIgG2a)によって評価した。28日目に、回収された脾細胞を使用してFACSによって細胞媒介応答を評価した(NY-ESO-1およびLAGE-1aペプチドプールでの再刺激--3種の3プール)。スクリーニング#1の実験設計を図18にまとめる。
【0114】
結果。4つのコントロールのうち、全長NY-ESO-1のみが、バッファーと比較していくらかの保護をもたらした。図19を参照のこと。全長NY-ESO-1またはLVL030のいずれかを投与されたマウスの群のうち、試験の終了時点で各群由来の2匹が腫瘍を有さなかった。LVL068を投与されたマウスのうち、研究の終了時点で4匹が腫瘍を有さなかった。LVL068およびLVL078は、バッファーを投与されたマウスと比較して長期の生存をもたらした。図20を参照のこと。NY-ESO-1特異的免疫応答をELISA、FACS、およびウエスタンブロットによって評価した。LAGE-1a(コラーゲン様ドメインを有さない)特異的免疫応答をELISAおよびFACSによって評価した。図21を参照のこと。これらの結果を以下のチャートにまとめる。
【表7】
【0115】
スクリーニング#2
実験設計。105日間の試験では、融合タンパク質プラスアジュバントでの筋肉内免疫化がB16/NYESO1移植腫瘍細胞(2回の免疫化後)またはB16/LAGE-1a腫瘍細胞(4回の免疫化後)での皮下チャレンジに対抗する防御をもたらすかどうかを決定するために、CB6F1マウスを使用して、LVL076、LVL078、LVL068、およびLVL024のそれぞれを評価した。具体的には、タンパク質15μgおよびAS15アジュバント25μLを含有する50μL注射でマウスを筋肉内で免疫化した。
【0116】
マウスをそれぞれ29匹マウス/群の群に分けた。以下のように、0、14、28、および42日目にマウスを免疫化した:
試験
LVL076
LVL068
LVL078
LVL024
コントロール
抗原バッファー/AS15バッファー
全長NY-ESO-1
コラーゲン様ドメイン(CLD)を有さないLAGE-1a
MAGE A3。
【0117】
28日目に、皮下移植されたB16/NY-ESO-1腫瘍細胞で10匹マウス/群をチャレンジした。56日目に、皮下移植されたB16/LAGE-1A腫瘍細胞で9匹マウス/群をチャレンジした。0、14、28、42、56、84および105日目に、血清を採取し、(i) NY-ESO-1全長, (ii)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a, および(ii)ヒトコラーゲン、に対する抗体応答をELISA (IgG1およびIgG2a)によって評価した。スクリーニング#2の実験設計を図22および23にまとめる。
【0118】
結果
B16-NYESO1腫瘍チャレンジ
LVL078を投与されたマウスのうち、B16-NY-ESO-1チャレンジ後の50日にわたって2匹が腫瘍を有さなかった。全長NY-ESO-1またはLVL024を投与されたマウスのうち、50日にわたって各群由来の2匹が腫瘍を有さず、3匹が生存した。LVL068を投与されたマウスのうち、3匹が腫瘍を有さず、4匹が生存した。LVL076を投与されたマウスのうち、3匹が腫瘍を有さず、5匹が生存してた。図24を参照のこと。
【0119】
B16-LAGE1a腫瘍チャレンジ
LVL076または、コラーゲン様領域を有さないLAGE-1aを投与されたすべてのマウスがチャレンジ後40日目より早期に死滅した。バッファーのみを投与されたマウスのうち、1匹が研究の終了時点まで生存し腫瘍を有さなかった。LVL024を投与されたマウスのうち、研究の終了時点で1匹が腫瘍を有さなかった。全長NY-ESO-1を投与されたマウスのうち、腫瘍を有さないマウスはいなかったが、研究の終了時点で1匹が依然として生存していた。LVL078を投与されたマウスのうち、1匹が腫瘍を有さなかった。LVL068を投与されたマウスのうち、3匹が腫瘍を有さなかった。LVL076を投与されたマウスのうち、研究の終了時点で3匹が腫瘍を有さなかった。図25を参照のこと。これらの結果を以下のチャートにまとめる。
【表8】
【0120】
ヒトコラーゲン特異的免疫応答
NY-ESO-1のコラーゲン様ドメインがヒトコラーゲン特異的免疫応答を刺激するかどうかを調べるために、以下の抗原: (1)バッファー(コントロール); (2)全長NY-ESO-1; (3)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a; (4) LVL068; (5) LVL078; (6) LVL024; (7) LVL076、のうちの1つで免疫したマウスから接種14日後に血清を回収し、プールした。これらの7種の血清プールのそれぞれ、ならびに抗ヒトコラーゲンI mAbを含有する陽性コントロールに関してELISAを行った。該コラーゲン様ドメインはマウス抗ヒトコラーゲンI抗体生産を刺激しなった。図26を参照のこと。コラーゲンIIIおよびコラーゲンVIに関して同様の試験(結果は示していない)を行った。マウス抗ヒトコラーゲンIIIおよびマウス抗ヒトコラーゲンVI抗体生産のいずれも検出されなかった。
【実施例4】
【0121】
実施例4: 洗練化構築物
表4に列挙されるいくつかの構築物に対して、通常のクローニング技術を使用して改変を行った。具体的には、LVL068、LVL030、LVL076、LVL078、LVL024を改変して、LVL155、LVL106、LVL156、LVL157、LVL151を得た。2種類の改変が存在した。第一の改変はプロテインDとキメラ(chimers)の先頭部位の間の5アミノ酸残基の除去であった。例えば、LVL024 (配列番号74; 配列番号75)を用いてこの改変を実行し、LVL151 (配列番号90; 配列番号91)を得た。ゆえに、LVL024はLVL 151と対応する。第二のタイプの改変はhisタグとキメラ(chimer)の先頭部位の間のアミノ酸の除去であった。LVL068 (配列番号80; 配列番号81)を用いてこの改変を実行し、LVL155 (配列番号92; 配列番号93)を得た。ゆえに、LVL068はLVL 151と対応する。改変された各融合タンパク質構築物およびそれに対応する融合タンパク質構築物を本説明の表5に記載する。
【0122】
理解されるように、上記改変は融合タンパク質とそれに対応する改変された融合タンパク質との間で機能的差異を生じさせるものとは予測されない。ゆえに、表5の右側に列挙されている各改変融合タンパク質を、チャートの左側に列挙されるその対応する融合タンパク質と交換可能に利用しうることが予測される。
【実施例5】
【0123】
実施例5.
実験設計。105日間の試験では、B16/NYESO1移植腫瘍細胞(2回の免疫化後)またはB16/LAGE-1a腫瘍細胞(4回の免疫化後)での皮下チャレンジに対抗する、融合タンパク質プラスアジュバントでの筋肉内免疫化を調べるために、CB6F1マウスを使用して、LVL068、LVL030、LVL076、LVL078、LVL024、および改変LVL155、LVL106、LVL156、LVL157、LVL151のそれぞれを評価する。具体的には、タンパク質15μgおよびAS15アジュバント25μLを含有する50μL注射でマウスを筋肉内で免疫化する。
【0124】
マウスをそれぞれ29匹マウス/群の群に分ける。以下のように、0、14、28、および42日目にマウスを免疫化する:
試験
LVL068
LVL030
LVL076
LVL078
LVL024
LVL155
LVL106
LVL156
LVL157
LVL151
コントロール
抗原バッファー/AS15バッファー
全長NY-ESO-1
コラーゲンドメインを有さないLAGE-1a
MAGE A3。
【0125】
28日目に、皮下移植されたB16/NY-ESO-1腫瘍細胞で10匹マウス/群をチャレンジする。56日目に、皮下移植されたB16/LAGE-1A腫瘍細胞で9匹マウス/群をチャレンジする。特異的免疫応答をモニターするために、0、14、28、42、56、84および105日目に、血清を採取し、(i) NY-ESO-1全長, (ii)コラーゲン様ドメインを有さないLAGE-1a, および(ii)ヒトコラーゲン、に対する抗体応答をELISA(IgG1およびIgG2a)によって測定することができる。
【0126】
先の実施例は限定のためでなく説明のために提供される。
【0127】
本出願中で、冠詞「a」および「an」は、1個または2個以上(すなわち〜少なくとも1個)の該冠詞の文法上の目的語を表すために本明細書中で使用される。一例として、「an element」は1個以上の要素を意味する。本明細書中で使用される用語「およそ」および「約」は、場合により、すべての場合で、出願人の要請があれば、削除可能であるか、または用語「厳密に」と置換可能であるものとする。
【0128】
単位、接頭辞、および記号はそのSI許容形式で示される。特に指定されない限り、それぞれ、核酸は左から右に5'→3'方向で記載され; アミノ酸配列は左から右にアミノ→カルボキシ方向で記載される。数値範囲は該範囲を規定する数字を含む。本明細書中でアミノ酸は、その一般に公知の3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号によって参照される。同様にヌクレオチドは、その一般に許容される1文字コードによって参照される。上で定義される用語は本明細書を全体として参照することよってさらに完全に定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 以下の(b)に連結された、NY-ESO-1またはその断片
(b) LAGE-1またはその断片、
を含み、そのNY-ESO-1および/またはLAGE-1の少なくとも一方が、トランケートもしくは部分的にトランケートされているか、またはNY-ESO-1もしくはLAGE-1の1個以上のエピトープを含む断片である、融合タンパク質。
【請求項2】
NY-ESO-1が、全長NY-ESO-1、部分的にトランケートされたNY-ESO-1もしくはトランケートされたNY-ESO-1、またはNY-ESO-1の1個以上のエピトープを含むその任意の断片から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
LAGE-1が、全長LAGE-1、部分的にトランケートされたLAGE-1もしくはトランケートされたLAGE-1、またはLAGE-1の1個以上のエピトープを含むその任意の断片から選択される、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
NY-ESO-1またはLAGE-1が、天然NY-ESO-1またはLAGE-1と少なくとも95、96、97、98、99%または100%同一である、請求項1〜3のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項5】
LAGE-1がLAGE-1aである、請求項1〜4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項6】
NY-ESO-1のN末端がLAGE-1のC末端に融合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項7】
NY-ESO-1のC末端がLAGE-1のN末端に融合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項8】
融合タンパク質が異種融合パートナーをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項9】
異種融合パートナーがプロテインDまたはその誘導体もしくは断片である、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
プロテインD誘導体がプロテインDの最初のおよそ1/3、例えばプロテインDのアミノ酸20〜127を含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
プロテインD誘導体が脂質化されていない、請求項9または10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
アミノ酸Met、AspおよびProをさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項13】
アミノ酸Met、AspおよびProが、請求項9〜11のいずれかに記載のプロテインD異種融合パートナーのN末端に融合されている、請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
組換え融合タンパク質である、請求項1〜13のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項15】
親和性タグをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項16】
親和性タグが1〜10個の範囲のヒスチジン残基を含むヒスチジン尾部である、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
以下の配列: 配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号15、配列番号16、配列番号19、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、および配列番号97からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項18】
以下の配列: 配列番号81、配列番号85、配列番号93、および配列番号97からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれかに記載の融合タンパク質、請求項19に記載の核酸分子または請求項20に記載のベクターを含む免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項23】
アジュバント、および/または免疫賦活性サイトカインまたはケモカインをさらに含む、請求項22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
融合タンパク質が水中油型または油中水型エマルジョンビヒクル中で提供される、請求項22または23に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項25】
以下のアジュバント: 3D-MPL、QS21またはCpGオリゴヌクレオチドの1種以上を含む、請求項23または24に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項26】
1種以上の他の抗原をさらに含む、請求項22〜26のいずれかに記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項27】
医療において使用するための、請求項22〜26のいずれかに記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項28】
癌、例えば、乳房黒色腫; 乳癌; 前立腺癌; 移行上皮癌を含む膀胱癌; 非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌; 食道癌を含む頭頸部癌; 扁平上皮癌; 消化管癌; 肝癌; 脳腫瘍; 白血病; および種々の肉腫、を治療するための医薬の製造における、請求項1〜18のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項19に記載の核酸分子または請求項20に記載のベクターまたは請求項22〜26のいずれかに記載の組成物もしくはワクチンの使用。
【請求項29】
Her2/neu標的療法が適応にならない患者の治療のための、請求項28に記載の使用。
【請求項1】
(a) 以下の(b)に連結された、NY-ESO-1またはその断片
(b) LAGE-1またはその断片、
を含み、そのNY-ESO-1および/またはLAGE-1の少なくとも一方が、トランケートもしくは部分的にトランケートされているか、またはNY-ESO-1もしくはLAGE-1の1個以上のエピトープを含む断片である、融合タンパク質。
【請求項2】
NY-ESO-1が、全長NY-ESO-1、部分的にトランケートされたNY-ESO-1もしくはトランケートされたNY-ESO-1、またはNY-ESO-1の1個以上のエピトープを含むその任意の断片から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
LAGE-1が、全長LAGE-1、部分的にトランケートされたLAGE-1もしくはトランケートされたLAGE-1、またはLAGE-1の1個以上のエピトープを含むその任意の断片から選択される、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
NY-ESO-1またはLAGE-1が、天然NY-ESO-1またはLAGE-1と少なくとも95、96、97、98、99%または100%同一である、請求項1〜3のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項5】
LAGE-1がLAGE-1aである、請求項1〜4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項6】
NY-ESO-1のN末端がLAGE-1のC末端に融合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項7】
NY-ESO-1のC末端がLAGE-1のN末端に融合されている、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項8】
融合タンパク質が異種融合パートナーをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項9】
異種融合パートナーがプロテインDまたはその誘導体もしくは断片である、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
プロテインD誘導体がプロテインDの最初のおよそ1/3、例えばプロテインDのアミノ酸20〜127を含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
プロテインD誘導体が脂質化されていない、請求項9または10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
アミノ酸Met、AspおよびProをさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項13】
アミノ酸Met、AspおよびProが、請求項9〜11のいずれかに記載のプロテインD異種融合パートナーのN末端に融合されている、請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
組換え融合タンパク質である、請求項1〜13のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項15】
親和性タグをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項16】
親和性タグが1〜10個の範囲のヒスチジン残基を含むヒスチジン尾部である、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
以下の配列: 配列番号3、配列番号4、配列番号7、配列番号8、配列番号11、配列番号12、配列番号15、配列番号16、配列番号19、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、および配列番号97からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項18】
以下の配列: 配列番号81、配列番号85、配列番号93、および配列番号97からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれかに記載の融合タンパク質、請求項19に記載の核酸分子または請求項20に記載のベクターを含む免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項23】
アジュバント、および/または免疫賦活性サイトカインまたはケモカインをさらに含む、請求項22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
融合タンパク質が水中油型または油中水型エマルジョンビヒクル中で提供される、請求項22または23に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項25】
以下のアジュバント: 3D-MPL、QS21またはCpGオリゴヌクレオチドの1種以上を含む、請求項23または24に記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項26】
1種以上の他の抗原をさらに含む、請求項22〜26のいずれかに記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項27】
医療において使用するための、請求項22〜26のいずれかに記載の免疫原性組成物またはワクチン。
【請求項28】
癌、例えば、乳房黒色腫; 乳癌; 前立腺癌; 移行上皮癌を含む膀胱癌; 非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌; 食道癌を含む頭頸部癌; 扁平上皮癌; 消化管癌; 肝癌; 脳腫瘍; 白血病; および種々の肉腫、を治療するための医薬の製造における、請求項1〜18のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項19に記載の核酸分子または請求項20に記載のベクターまたは請求項22〜26のいずれかに記載の組成物もしくはワクチンの使用。
【請求項29】
Her2/neu標的療法が適応にならない患者の治療のための、請求項28に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2010−532656(P2010−532656A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545705(P2009−545705)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/050879
【国際公開番号】WO2008/089074
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/050879
【国際公開番号】WO2008/089074
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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