説明

発光システム

【課題】光透過性が高く、且つ、表面抵抗率が低い可撓性に優れた電極部を有すると共に、10kHz以上の交流電源を使用することができ、システムの製品コストの低廉化をも図る。
【解決手段】支持体12と、該支持体12上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部14と透光性の透明導電膜16とを有する第1電極部22と、該第1電極部22と対向して配された第2電極部28と、第1電極部22及び第2電極部28間に配された発光層26を有する表示部24とを備えた自発光表示装置20を有する発光システム60であって、第1電極部22に取出し電極50が加熱圧着され、該取出し電極50と第2電極部28間に自発光表示装置20を駆動する電源52が接続され、電源52として、10kHz以上の交流電源が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性が高く、且つ、表面抵抗率が低い可撓性に優れた電極部を有する照明装置又は自発光表示装置を具備した発光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子等を有する発光システムは、高誘電体中に蛍光体粒子を分散してなる粒子分散型素子と、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる薄膜型素子等の無機エレクトロルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子に大別される。
【0003】
分散型は、少なくとも一方が光透過性の一対の導電性電極シート間に、フッソ系ゴムあるいはシアノ基を有するポリマーのような高誘電性ポリマー中に蛍光体粉末を含んでなる発光層が設置された素子であり、さらに絶縁破壊を防ぐために高誘電性ポリマー中にチタン酸バリウムのような強誘電体の粉末を含んでなる誘電体層が設置されるのが通常の形態である。用いられる蛍光体粉末は、通常、ZnSを母体とし、これにMn,Cu,Cl,Ce、Au、Ag、Al等のイオンが適量ドーピングされている。粒子サイズは20〜30μmサイズのものが一般的である。
【0004】
粒子分散型素子は、素子構成時に高温プロセスを用いないため、プラスチックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能であること、真空装置を使用しなくても比較的簡便な工程で、低コストで製造が可能であること、また、発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することで素子の発光色の調節が容易であるという特徴を有し、バックライト、表示素子へ応用されている。
【0005】
しかしながら、以下のような問題があった。
【0006】
(1)発光輝度が低く、白色発光が不十分であった。
【0007】
(2)発光寿命が短く、蛍光性染料を併用して擬似白色を形成しても蛍光染料の劣化速度蛍光体粒子の劣化速度等の複数要因から、劣化時にカラーバランスが崩れた。
【0008】
これらの問題から、その多くが、応用範囲が限られており、更なる発光輝度及び発光効率の改良が望まれていた。
【0009】
そこで、上述の問題を解決する素子として、例えば0.25m2以上の大面積を、高輝度発光させ、且つ、長い発光寿命を与えるエレクトロルミネッセンス素子が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2005−197234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1記載のエレクトロルミネッセンス素子は、電源として500Hz以上、5kHz以下の交流電源を使用するようにしている。5kHz程度の交流電源は、汎用品ではなく、専用品となるため、発光システムとした場合に、製品コストが高くなるという問題がある。
【0012】
10kHz以上の交流電源であれば、蛍光灯インバータ等の汎用品が存在し、製造コストを低減することが可能である。
【0013】
しかし、従来のエレクトロルミネッセンス素子では、透明電極の表面抵抗が低いにも関わらず、10kHz以上の交流電源を使用することができない。これは、単に透明電極の表面抵抗を低くするだけでは実現できない問題であることを示唆している。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、光透過性が高く、且つ、表面抵抗率が低い可撓性に優れた電極部を有すると共に、10kHz以上の交流電源を使用することができ、システムの製品コストの低廉化をも図ることができる発光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の課題は本発明を特定する下記の事項及びその好ましい態様により達成された。
【0016】
[1] 第1の本発明に係る発光システムは、支持体と、該支持体上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部と透光性の透明導電膜とを有する電極部と、前記電極部上に積層された発光層を有する表示部とを備え、前記電極部に取出し電極が加熱圧着された照明装置又は自発光表示装置を有し、前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が10オーム/sq以下であることを特徴とする。
【0017】
[2] 第2の本発明に係る発光システムは、支持体と、該支持体上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部と透光性の透明導電膜とを有する第1電極部と、前記第1電極部と対向して配された第2電極部と、前記第1電極部及び前記第2電極部間に配された発光層を有する表示部とを備えた照明装置又は自発光表示装置を有する発光システムであって、前記第1電極部に取出し電極が加熱圧着され、前記取出し電極と前記第2電極部間に前記照明装置又は前記自発光表示装置を駆動する電源が接続され、前記電源として、10kHz以上の交流電源を用いることを特徴とする。
【0018】
[3] 第2の本発明において、前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が10オーム/sq以下であることを特徴とする。
【0019】
[4] 第2の本発明において、前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が5オーム/sq以下であることを特徴とする。
【0020】
[5] 第2の本発明において、前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が1オーム/sq以下であることを特徴とする。
【0021】
[6] 第1及び第2の本発明において、前記透明導電膜は、導電性材料を含むことを特徴とする。
【0022】
[7] 第1及び第2の本発明において、前記導電性材料が、透明導電性有機ポリマー、又は導電性微粒子を含むことを特徴とする。
【0023】
[8] 第1及び第2の本発明において、前記細線構造部は、前記支持体上に少なくとも感光性銀塩含有層を有する感光層を露光し、現像処理することにより形成された導電性金属銀からなることを特徴とする。
【0024】
[9] 第1及び第2の本発明において、前記細線構造部は、前記支持体上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、導電性金属銀部と光透過性部が形成されてなることを特徴とする。
【0025】
[10] 第1及び第2の本発明において、前記細線構造部と前記光透過性部は、前記支持体上に設けられた少なくとも感光性ハロゲン化銀含有層を含む写真構成層の少なくとも1層が導電性材料を含有する層である感光材料を露光・現像することにより形成されていることを特徴とする。
【0026】
[11] 第1及び第2の本発明において、前記細線構造部は、前記支持体上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像した後で、定着する前に少なくとも1度圧密処理を行い、定着終了後にさらに少なくとも1度圧密処理を行って得られることを特徴とする。
【0027】
[12] 第1及び第2の本発明において、前記圧密処理がカレンダーロール装置によって行われることを特徴とする。
【0028】
[13] 第1及び第2の本発明において、前記細線構造部を形成した後に、前記細線構造部と前記導電膜とが貼り合わされてなることを特徴とする。
【0029】
[14] 第1〜第3の本発明において、前記支持体上に前記導電膜を形成したあとに、前記細線構造部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明に係る発光システムによれば、光透過性が高く、且つ、表面抵抗率が低い可撓性に優れた電極部を有すると共に、10kHz以上の交流電源を使用することができ、システムの製品コストの低廉化をも図ることができる。
【0031】
このことから、無機EL、有機EL、電子ペーパー等を利用したフレキシブルディスプレイに容易に適用させることができ、これら無機EL、有機EL、電子ペーパー等の量産化を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の好ましい態様を記載する。
【0033】
先ず、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10は、図1に示すように、透明性の支持体12と、該支持体12上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部14及び透光性の透明導電膜16とを有する。
【0034】
図1の例では、細線構造部14の厚み(高さ)が、導電膜の厚み(高さ)よりも大きい例を示しているが、その他、図2及び図3に示すように、細線構造部14の厚み(高さ)が、透明導電膜16の厚み(高さ)とほぼ同じでもよい。この場合、図2に示すように、細線構造部14の上面を露出させるようにしてもよいし、図3に示すように細線構造部14の上面を透明導電膜16で被覆するようにしてもよい。
【0035】
あるいは、図4に示すように、支持体12上の全面に透明導電膜16を形成し、該透明導電膜16上に細線パターン状の細線構造部14を形成するようにしてもよい。この場合、図5に示すように、厚み(高さ)が細線構造部14の厚み(高さ)よりも大きい保護層18あるいは別の導電膜を形成するようにしてもよい。
【0036】
また、図6に示すように、支持体12上に高抵抗の第1透明導電膜16aと細線パターン状の細線構造部14を形成し、これら第1透明導電膜16aと細線構造部14を含む全面に低抵抗の第2透明導電膜16bあるいは保護層を形成するようにしてもよい。
【0037】
その他、図7に示すように、支持体12上にストライプ状に形成した複数の透明導電膜16を形成し、各透明導電膜16の上面中、幅方向端部の近傍に長手方向に沿って細線構造部14をそれぞれ形成するようにしてもよい。図7に示すように、各透明導電膜16の例えば左側端部(又は右側端部)に細線構造部14を形成するようにしてもよいし、幅方向両端に細線構造部14を形成するようにしてもよい。
【0038】
細線構造部14の細線パターンとしては、例えば図8に示すように、メッシュ状にしてもよいし、あるいは六角形状を多数並べた形状、三角形状を多数並べた形状、多角形状を多数並べた形状、ストライプ状(格子状)等が挙げられる。もちろん、各細線を直線状のほか波線状(サイン曲線等)にしてもよい。
【0039】
そして、この透明導電性フイルム10を利用して自発光表示装置20を構成する場合は、例えば図9に示すように、上述した本実施の形態に係る透明導電性フイルム10を例えば第1電極部22(例えば陽極)として用い、該第1電極部22上に表示部24を配置することで構成することができる。表示部24としては、第1電極部22の上面(細線構造部14を含む上面)上に積層された例えば発光層26(硫化亜鉛等の無機物やジアミン類等の有機物)と、該発光層26上に配置された第2電極部28(例えば陰極)を有する。本実施の形態に係る自発光表示装置は、画像を表示する用途のほか、照明用途、すなわち照明装置にも使用することができることはもちろんである。
【0040】
特に、本実施の形態においては、第1電極部22を構成する細線構造部14の体積抵抗が10-4オーム・cm以下であり、同じく第1電極部22を構成する透明導電膜16の体積抵抗が0.05オーム・cm以上である。
【0041】
また、第1電極部22を構成する細線構造部14の表面抵抗が10オーム/sq以下であり、同じく第1電極部22を構成する透明導電膜16の表面抵抗が100オーム/sq以上である。細線構造部14及び透明導電膜16の表面抵抗は、JIS K6911に記載の測定方法に準じて測定された値である。
【0042】
さらに、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10は、図10A及び図10Bに示すように、第1電極部22の表面(細線構造部14が形成されている面)のうち、一方の端部に近接する部分に取出し電極50が加熱圧着されている。
【0043】
特に、取出し電極50は、図10Aに示すように、例えばアルミニウム製のフィルムを含む導電性テープ54で構成したり、図10Bに示すように、アルミニウム製のフィルム56と接着剤58の多層構造にて構成することができる。また、第1取出し電極50の形状は、図11に示すように、平面(上面)から見て長方形状とされ、第1電極部22の短辺55aに沿った辺が長辺50bとされ、第1電極部22の長辺22bに沿った辺が短辺50aとされている。なお、この例では、取出し電極50の長辺50bと第1電極部22の短辺22aとが平行となるようにして取出し電極50を第1電極部22の表面に加熱圧着した場合を示しているが、取出し電極50の長辺50bと第1電極部22の短辺22aとが非平行となるようにしてもよい。
【0044】
図10Aに示すように、導電性テープ54にて構成された取出し電極50は、第1電極部22に加熱圧着することで、上下方向に導電性を有する異方性の導電性電極として機能する。
【0045】
図10Bに示すように、取出し電極50をアルミニウム製のフィルム56と接着剤58の多層構造にて構成する場合は、接着剤58として、導電粒子を含んだ異方導電性フィルム(ACF)や異方導電性ペースト(ACP)、導電粒子を含まない非導電性フィルム(NCF)、非導電性ペースト(NCP)等が用いられる。この場合も、第1電極部22に加熱圧着することで、上下方向に導電性を有する異方性の導電性電極として機能する。
【0046】
このように、第1電極部22に平面状の取出し電極50を加熱圧着するようにしたので、第1電極部22と取出し電極50とが面接触で電気的に接続することになり、第1電極部22の細線構造部14と取出し電極50間の電気抵抗を大幅に低減することができる。
【0047】
従って、図10A及び図10Bに示すように、取出し電極50と第2電極部28間に電源52を接続して発光システム60として構成する場合、電源52として、10kHz以上の交流電源を用いることができる。10kHz以上の交流電源であれば、蛍光灯インバータ等の汎用品が存在し、製造コストを低減することが可能となる。
【0048】
さらに、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10は、後述する屈曲試験を行う前の第1電極部22の表面抵抗をR1、屈曲試験を行った後の第1電極部22の表面抵抗をR2としたとき、
R2/R1<18
を満足する。
【0049】
ここで、屈曲試験は、例えば図12に示すように、基台30に対して回転自在に取り付けられた直径φ=4mmのローラ32に長尺のサンプル34(第1電極部22)を引っ掛け、サンプル34の一方の端部34aを28.6(kg/m)のテンションで引っ張りながらローラ32を回転させてサンプル34を屈曲させる工程と、サンプル34の他方の端部34bを同じく28.6(kg/m)のテンションで引っ張りながらローラ32を回転させてサンプル34を屈曲させる工程とを繰り返し行って、サンプル34を100回屈曲させる。
【0050】
上述の条件を満足することによって、本実施の形態に係る自発光表示装置20は、光透過性が高く、且つ、表面抵抗が低く、さらに可撓性に優れた第1電極部22を有することになることから、無機EL、有機EL、電子ペーパー等を利用したフレキシブルディスプレイに容易に適用させることができ、これら無機EL、有機EL、電子ペーパー等の量産化を促進させることができる。
【0051】
また、本発明に係る透明導電性フイルム10によれば、光透過性が高く、且つ、表面抵抗が低く、さらに可撓性に優れるため、大面積のエレクトロルミネッセンス素子の低電圧化、高耐久化、面内輝度均一化や、太陽電池等の電力取り出し効率の改良、さらに電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイの低電圧・低消費電力化のために好ましく用いることができる。
【0052】
特に、後述するが細線構造部14を圧密処理することによって、高い透過率と低い表面抵抗とが両立する透明導電性フイルム10を提供することが可能となる。しかも、このような効果を有する透明導電性フイルム10を低コストで大量に製造することができる。本発明では、透明導電性材料等を導電膜に用いたことによって透明導電性フイルムの量産化を実現することができる。
【0053】
ITO膜の表面抵抗値も十分に低いものではないが、本発明の透明導電性フイルムは、導電膜と細線構造部との協働によって表面抵抗が低く、塗膜も安価であるので、無機EL、太陽電池等に利用することができる。
【0054】
また、EL素子に用いる場合、細線構造部14がITO膜の場合に比べて表面抵抗が低いことから、大サイズにしたときに、輝度が下がらない等の特徴がある。ITO膜の場合に必要となる電極の母線(バスバー)も不必要であることも特徴である。
【0055】
また、電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイにも低抵抗の電極として用いることができ、この場合、低電圧、低消費電力化に貢献することができる。いずれの製品に適用する場合でも、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10は、可撓性が優れているため、ロールトゥロールの生産が可能であり、これらの製品の生産プロセスコストを大幅に削減することができる。
【0056】
その他の好ましい態様としては、以下のとおりである。
【0057】
先ず、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10(第1電極部22)の透明導電膜16は、導電性材料を含むことが好ましい。この場合、導電性材料は、透明導電性有機ポリマー又は導電性微粒子であることが好ましい。導電性微粒子は導電性金属酸化物、導電性金属微粒子又はカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0058】
本実施の形態では、細線構造部14は、支持体12上に少なくとも感光性銀塩含有層を有する感光層を露光し、現像処理することにより形成された導電性金属銀からなるようにしてもよい。この場合、細線構造部14は、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、導電性金属銀部と光透過性部が形成されるようにしてもよい。なお、光透過性部は、実質的に物理現像核を有しないようにしてもよい。また、細線構造部14は、銀を含有し、且つ、Ag/バインダ体積比が1/4以上であることが好ましい。
【0059】
そして、細線構造部14は、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像した後で、定着する前に少なくとも1度圧密処理を行い、定着終了後にさらに少なくとも1度圧密処理を行って得られることが好ましい。この場合、圧密処理は、露光済み感光層に対して現像、水洗、乾燥後に行い、さらに、定着、水洗、乾燥後に行うことが好ましい。圧密処理はカレンダーロール装置によって行うことができる。
【0060】
さらに、細線構造部14は、現像と乾燥の間に物理現像、電解めっき及び無電解めっきの少なくとも1つを行って得ることが好ましい。
【0061】
そして、透明導電性フイルム10(第1電極部22)は、細線構造部14を形成した後に、細線構造部14と透明導電膜16とを貼り合わせて構成してもよい。
【0062】
次に、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10(第1電極部22)の具体的構成例について説明する。
【0063】
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0064】
[支持体]
支持体12は、透光性を有していれば特に制限されないが、透光性が高いことが望ましい。また、透光性を有していれば、発明の目的を妨げない程度に着色していてもよい。本実施の形態において、支持体12の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。
【0065】
従って、支持体12としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。
【0066】
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0067】
本実施の形態においては、透明性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルム(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)であることが好ましい。
【0068】
透明導電性フイルム10は、透明性が要求されるため、支持体12の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルム又はプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本実施の形態では、前記プラスチックフイルム及びプラスチック板として、本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0069】
本実施の形態におけるプラスチックフイルム及びプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
【0070】
また、耐光性の向上のために紫外線吸収剤を練り込んだベースや、バリア層を付与したり、反射防止層やハードコート層を付与したものを用いてもよい。
【0071】
本実施の形態における支持体12としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用導電性フイルムの用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、且つ、端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0072】
[細線構造部]
本実施の形態は、透明導電膜16に加えて、一様な網目状、櫛型あるいはグリッド型等の金属及び/又は合金の細線構造部14を配置し、圧密処理した導電性面を作成して通電性を改善する。
【0073】
金属や合金の細線(金属細線と記す)の材料としては、銅や銀、アルミニウムが好ましく用いられるが、目的によっては、前述の透明導電性材料を用いてもよい。電気伝導性と熱伝導性が高い材料であることが好ましい。また、これらの金属にめっき処理を施してめっき金属としてもよい。金属細線の幅は、任意であるが、0.1μm程度から30μmの間が好ましい。金属細線は、20μmから300μmの間隔のピッチで配置されていることが好ましい。 金属及び/又は合金の細線構造部を配置することで光の透過率が減少するが、減少はできるだけ小さいことが重要で、金属細線の間隔を狭くしすぎたり、金属細線の幅や高さを大きく取りすぎたりすることなく、好ましくは70%以上の光の透過率を確保することが重要である。本実施の形態においては、透明導電性フイルム10の光の透過率が、550nmの光に対して70%以上であることが好ましく、80%であることがより好ましい。さらには、90%以上であることが最も好ましい。
【0074】
本実施の形態の透明導電性フイルム10をEL素子に用いる場合に、輝度を向上させるため、また、白色発光を実現する上で、波長420nm〜650nmの領域の光を70%以上透過することが好ましく、より好ましくは80%以上透過することが好ましい。さらには白色発光を実現する上では、波長380nm〜680nmの領域の光を80%以上透過することがより好ましい。90%以上であることが最も好ましい。透明導電性フイルム10の光の透過率は、分光光度計によって測定することができる。
【0075】
金属及び/又は合金の細線構造部14の高さ(厚み)は、0.1μm以上5μm以下が、好ましい。特に好ましくは、0.1μm以上2μm以下である。さらには0.1μm以上1μm以下が最も好ましい。金属及び/又は合金の細線構造部14と透明導電膜16は、どちらが表面に出ていもよいが、結果として細線構造部14の突起部と開口部の高低差が、5μm以下であることが好ましい。さらには実質的に高低差がないのが最も好ましい。
【0076】
ここで、導電性面の高さは、3次元表面粗さ計(例えば、東京精密社製;SURFCOM575A−3DF)を用いて5mm四方を測定したときの凹凸部の平均振幅を示す。表面粗さ計の分解能の及ばないものについては、STMや電子顕微鏡による測定によって、高さを求める。
【0077】
細線構造部14は、少なくとも一部が黒化処理を施されたものであることが好ましい。黒化処理により形成された黒化層は、防錆効果に加え、反射防止性を付与することができる。細線構造部14に黒化処理により反射防止性を付与することにより、反射率の高い金属が細線パターン化した細線構造部14における光の反射を抑制することができる。
【0078】
黒化処理については、例えば特開2003−188576号公報に開示されており、一般に、導電性金属化合物、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の化合物や合金を使用した電解めっき処理、黒色系の被膜を与えるめっき法、あるいは、電着塗装材料等の電着性イオン性高分子材料を使用する方法により実施することができる。例えば、Co−Cu合金めっきによって形成された黒化層は、金属表面の反射を防止することができ、さらにクロメート処理を施すことにより防錆性を付与することができる。クロメート処理は、クロム酸もしくは重クロム酸塩を主成分とする溶液中に浸漬し、乾燥させて防錆被膜を形成するものである。
【0079】
本実施の形態において、上記の黒化処理の際に用いる電解液の浴(黒色めっき浴)は、硫酸ニッケル塩を主成分とする黒色めっき浴を使用することができ、さらに、市販の黒色めっき浴も同様に使用することができ、具体的には、例えば、株式会社シミズ製の黒色めっき浴(商品名、ノ−ブロイSNC、Sn−Ni合金系)、日本化学産業株式会社製の黒色めっき浴(商品名、ニッカブラック、Sn−Ni合金系)、株式会社金属化学工業製の黒色めっき浴(商品名、エボニ−クロム85シリ−85シリ−ズ、Cr系)等を使用することができる。また、本実施の形態においては、上記の黒色めっき浴としては、Zn系、Cu系、その他等の種々の黒色めっき浴を使用することができる。また、金属の黒化処理剤として、硫化物系化合物を用いて容易に製造でき、さらにまた、市販品も多種類の処理剤があり、例えば、商品名・コパ−ブラックCuO、同CuS、セレン系のコパ−ブラックNo.65等(アイソレ−ト化学研究所製)、商品名・エボノ−ルCスペシャル(メルテックス株式会社製)等を使用することができる。
【0080】
細線構造部14の製造方法は特に制限されないが、銀塩写真法によって、ハロゲン化銀粒子を所望の細線パターンとなるように化学現像する方法が好ましい。銀塩写真法により得られる金属は、現像銀とよばれるものであり、化学現像によって得られるフィラメント状の金属銀の集合体、又は、フィラメント状の金属銀が互いに結合・融着した金属銀の集合体である。
【0081】
現像銀を得る方法は、一般によく知られている銀塩写真の原理・手法を利用できる。例えば、特開2004-221564号公報に記載の方法等を利用することができる。
【0082】
また、現像銀は、電解めっきのカソードとして用いるのに十分な導電性とすることが可能であるため、現像銀を電解めっきすることが可能である。また、現像銀は無電解めっき触媒として利用することも可能であり、現像銀に無電解めっきを施すことも可能である。従って、他の金属、例えば導電性の高い銅等によりめっき処理を施し、現像銀とめっき金属からなる(不可避不純物を含む)構成としてもよい。また、現像銀は上記のようにめっき処理が可能であるため、黒化処理を容易に施すことができる。
【0083】
細線構造部14の細線パターンの形状は特に制限なく、目的に応じて様々なパターンを選択することができ、上述したように、メッシュ状にしてもよいし、あるいは六角形状を多数並べた形状、三角形状を多数並べた形状、多角形状を多数並べた形状、ストライプ状(格子状)等が挙げられる。もちろん、各細線を直線状のほか波線状(サイン曲線等)にしてもよい。
【0084】
金属細線の厚みは、用途によって適宜変更することができるが、高い導電性を得るためには、0.2μm以上の厚みを有することが好ましい。上限は、上述したように、5μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
【0085】
細線パターンの線幅もまた、用途によって適宜変更することができるが、高い導電性を得るためには、1μm以上の線幅を有することが好ましく、線幅が太すぎるものは、上記と同様目視した場合に認識できてしまい、光を透過する材料にとっては問題であるので、1μm以上30μm以下の線幅の細線パターンであることが好ましい。より好ましくは、2μm以上20μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上18μm以下である。
【0086】
[透明導電膜16]
一方、透明導電膜16は、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートベース等の透明フイルム上に、PEDOT/PSS・ポリアニリン・ポリピロール・ポリチオフェン・ポリイソチアナフテン等の透明導電性有機ポリマー、金属酸化物、金属微粒子、金属ナノロッド・ナノワイヤ等の導電性金属、カーボンナノチューブ等の導電性無機微粒子、又は有機水溶性塩のいずれかを、塗布、印刷等の方法で一様に付着、成膜することで得られる。これらの塗布液は塗布適性向上や膜物性調整のために他の非導電性ポリマーやラテックス等をブレンドして用いてもよい。また、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造を用いてもよい。これら透明導電性材料に関しては、東レリサーチセンター発行「電磁波シールド材料の現状と将来」、特開平9−147639号公報等に記載されている。塗布及び印刷の方法としては、スライドコータ、スロットダイコータ、カーテンコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ等の塗布コータやスクリーン印刷等が用いられる。
【0087】
本実施の形態は、このような透明導電膜16に加えて、一様な網目状、ストライプ状、櫛型あるいはグリッド型等の金属及び/又は合金の細線構造部14を配置した導電性面を作成して通電性を改善している。
【0088】
網目状の金属及び/又は合金の細線構造部14と、透明導電膜16を形成した透明フイルムとを別々に形成して重ねあわせ、本実施の形態に係る透明導電性フイルム10を作製することができる。
【0089】
細線構造部14と透明導電膜16を貼り合わせる以外に、透明フイルム上に形成した網目状の金属及び/又は合金の細線構造部14の上から、さらに透明導電性材料の分散物を蒸着、塗布、印刷等の方法で一様に付着、成膜して、透明導電性フイルム10を作製するようにしてもよい。網目状の金属及び/又は合金の細線構造部14の凸凹が、透明導電性材料の分散物によって緩和され、全体に凹凸の少ない滑らかな構造が得られる。また、透明導電性材料を透明フイルム上に形成し、その上に細線構造部14を設けてもよい。
【0090】
いずれの場合にも、金属及び/又は合金の細線構造部14と透明フイルム、又は透明導電膜16と透明フイルムとの密着性等を向上させるために、有機高分子材料からなる中間層を用いたり、表面処理をしたりすることを好ましく行うことができる。
【0091】
金属及び/又は合金の細線構造部14が直接他の層に触れることがなく、且つ、透明導電性フイルム10の表面の凹凸も低く抑えられるため、例えば、その上に形成される電界発光層や電流注入層との均一な接合を得易く、自発光表示装置20の安定性を確保し易い。
【0092】
また、支持体12上に少なくとも感光性ハロゲン化銀含有層を含む写真構成層を有し、該写真構成層の少なくとも1層が導電性材料を含有する層である感光材料を露光し、現像することにより、金属銀部と光透過部を有する細線構造部14と、導電性材料を含有する透明導電膜16とを形成するようにしてもよい。
【0093】
透明導電膜16は、導電性ポリマーを含有する第1膜と絶縁性ポリマーを主成分とする第2膜とを積層した構成とすることも可能である。透明導電膜16を導電性ポリマーと絶縁性ポリマーの混合物を含有するものとした構成でもよい。これらの構成は、高価な導電性ポリマーの使用量を削減することができ、低価格化を実現することができる。ここで、導電性ポリマーと絶縁性ポリマーの混合物を含有する場合、例えば、導電性ポリマー10%その他のバインダ90%でブレンドして使用する形態等が考えられる。導電性ポリマーの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。
【0094】
透明導電膜16を導電性ポリマーと絶縁性ポリマーの混合物を含有する場合は、導電性ポリマーは均一に分布していても、空間的に不均一な分布をしていてもよいが、不均一な分布の場合には透明導電膜16の表面に近いほど導電性ポリマーの含有率が高くなることが好ましい。なお、上述した第1膜(導電性ポリマーを主成分)と第2膜(絶縁性ポリマーを主成分)の積層構造の場合、より低価格な構成とするためには、第2膜の層厚が、第1膜の層厚よりも大きい構成とすることが好ましい。
【0095】
導電性ポリマーとしては、透光性及び導電性の高いものが好ましく、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類等の電子伝導性導電性ポリマーが好ましい。
【0096】
電子伝導性ポリマーとしては、当該技術分野で既知のポリマー、例えばポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等である。その詳細は、例えば“Advances in Synthetic Metals”,ed.P.Bernier,S.Lefrant,and G.Bidan,Elsevier,1999;“Intrinsically Conducting Polymers:An Emerging Technology”,Kluwer(1993);“Conducting Polymer Fundamentals and Applications,A Practical Approach”,P.Chandrasekhar,Kluwer,1999;及び“Handbook of Organic Conducting Molecules and Polymers”,Ed.Walwa,Vol.1−4,Marcel Dekker Inc.(1997)のような教本に見ることができる。なお、今後開発される新規な電子伝導性ポリマーも、電子伝導性ポリマーである限り同様に用いることができるということは、当業者なら容易に想到し得る。また、これらの電子伝導性ポリマーは単独で用いてもよいし、ポリマーブレンドのように複数種のポリマーを混合して用いてもよい。
【0097】
絶縁性ポリマーとしては、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられ、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0098】
また、透明導電膜16は、導電性金属酸化物粒子やバインダ等を含んでいてもよい。導電性金属酸化物としては、酸化スズ、アンチモンがドープされたSnO2、インジウムとスズの酸化物(ITO)、酸化亜鉛、フッ素がドープされた酸化スズ、ガリウムがドープされた酸化亜鉛等が用いられる。
【0099】
バインダとしては、アクリル樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられ、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましく、アクリル樹脂が特に好ましい。
【0100】
透明導電膜16は、耐水性や耐溶剤性等が向上されることから、架橋されていることが好ましく、導電性ポリマー自体に架橋反応性を有しない場合は、バインダに架橋反応性を有していることが好ましく、架橋剤に対して架橋反応が可能であるような官能基を有していることが好ましい。架橋剤については後記する。
【0101】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミド及びメタクリロニトリルのいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。これらの中では、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体が好ましい。例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のいずれかのモノマーの単独重合体又はこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体を挙げることができる。上記アクリル樹脂は、上記組成を主成分とし、後記する架橋剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。架橋剤としてカルボジイミド化合物を使用する場合は、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマーであることが好ましい。以下のバインダの例においては、架橋剤と反応可能な態様の例示は、架橋剤としてカルボジイミド化合物を使用する場合について示すが他の架橋剤を用いる場合は架橋剤の種類に応じた官能基を有することが好ましい。
【0102】
ビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくはエチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を挙げることができる。これらの中で、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリオレフィン、エチレン/ブタジエン共重合体及びエチレン/酢酸ビニル系共重合体(好ましくは、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体)が好ましい。上記ビニル樹脂は、カルボジイミド化合物との架橋反応が可能なように、ポリビニルアルコール、酸変性ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル及びポリ酢酸ビニルでは、例えば、ビニルアルコール単位をポリマー中に残すことにより水酸基を有するポリマーとし、他のポリマーについては、例えば、メチロール基、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基のいずれかの基を有するモノマーを一部使用することにより架橋可能なポリマーとすることが好ましい。
【0103】
ウレタン樹脂としては、ポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)、ポリヒドロキシ化合物と多塩基酸との反応により得られる脂肪族ポリエステル系ポリオール、ポリエーテルポリオール(例、ポリ(オキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(オキシエチレン−プロピレンエーテル)ポリオール)、ポリカーボネート系ポリオール、及びポリエチレンテレフタレートポリオールのいずれか一種、あるいはこれらの混合物とポリイソシアネートから誘導されるポリウレタンを挙げることができる。上記ポリウレタン樹脂では、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの反応後、未反応として残った水酸基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。
【0104】
エステル樹脂としては、一般にポリヒドロキシ化合物(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と多塩基酸との反応により得られるポリマーが使用される。上記エステル樹脂では、例えば、ポリオールと多塩基酸との反応終了後、未反応として残った水酸基、カルボキシル基をカルボジイミド化合物との架橋反応が可能な官能基として利用することができる。もちろん、水酸基等の官能基を有する第三成分を添加してもよい。
【0105】
上記したように、透明導電膜16は架橋されていることが好ましい。その場合、透明導電膜16は、架橋剤により架橋されていてもよいし、感光性に影響のない手段によって架橋剤の添加なしに、単に、光照射により誘起される光化学反応を利用して架橋されていてもよい。架橋剤としては、ビニルスルホン類(例えば1,3−ビスビニルスルホニルプロパン)、アルデヒド類(例えばグリオキサール)、塩化ピリミジン類(例えば2,4,6−トリクロロピリミジン)、塩化トリアジン類(例えば塩化シアヌル)、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0106】
エポキシ化合物としては、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピルオキシ)ブタン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジクリシジル−5−(γ−アセトキシ−β−オキシプロピル)イソシヌレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、ジグリセロ−ルポリグルシジルエーテル、1,3,5−トリグリシジル(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリセロールエーテル類及びトリメチロ−ルプロパンポリグリシジルエーテル類等のエポキシ化合物が好ましく、その具体的な市販品としては、例えばデナコールEX−521やEX−614B(ナガセ化成工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
また、感光特性に影響を与えない添加量の範囲では、他の架橋性化合物との併用も可能であり、例えばC.E.K.Meers及びT.H.James著「The Theory of the Photographic Process」第3版(1966年)、米国特許第3316095号、同第3232764号、同第3288775号、同第2732303号、同第3635718号、同第3232763号、同第2732316号、同第2586168号、同第3103437号、同第3017280号、同第2983611号、同第2725294号、同第2725295号、同第3100704号、同第3091537号、同第3321313号、同第3543292号及び同第3125449号、並びに英国特許第994869号及び同第1167207号の各明細書等に記載されている硬化剤等があげられる。
【0108】
これらの硬化剤の代表的な例としては、2個以上(好ましくは3個以上)のメチロール基及びアルコキシメチル基の少なくとも一方を含有するメラミン化合物又はそれらの縮重合体であるメラミン樹脂あるいはメラミン・ユリア樹脂、さらにはムコクロル酸、ムコブロム酸、ムコフェノキシクロル酸、ムコフェノキシプロム酸、ホルムアルデヒド、グリオキザール、モノメチルギリオキザール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−5−メチル−1,4−ジオキサンサクシンアルデヒド、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン及びグルタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物及びその誘導体;ジビニルスルホン−N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセトアミド)、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、メチレンビスマレイミド、5−アセチル−1,3−ジアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3,5−トリアクリロイル−ヘサヒドロ−s−トリアジン及び1,3,5−トリビニルスルホニル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル系化合物;2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、2,4−ジクロロ−6−(4−スルホアニリノ)−s−トリアジンナトリウム塩、2,4−ジクロロ−6−(2−スルホエチルアミノ)−s−トリアジン及びN,N’−ビス(2−クロロエチルカルバミル)ピペラジン等の活性ハロゲン系化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)メチルプロピルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、2,4,6−トリエチレン−s−トリアジン、1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素及びビス−β−エチレンイミノエチルチオエーテル等のエチレンイミン系化合物;1,2−ジ(メタンスルホンオキシ)エタン、1,4−ジ(メタンスルホンオキシ)ブタン及び1,5−ジ(メタンスルホンオキシ)ペンタン等のメタンスルホン酸エステル系化合物;ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−ジシクロヘキシル−3−(3−トリメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド化合物;2,5−ジメチルイソオキサゾール等のイソオキサゾール系化合物;クロム明ばん及び酢酸クロム等の無機系化合物;N−カルボエトキシ−2−イソプロポキシ−1,2−ジヒドロキノリン及びN−(1−モルホリノカルボキシ)−4−メチルピリジウムクロリド等の脱水縮合型ペプチド試薬;N,N’−アジポイルジオキシジサクシンイミド及びN,N’−テレフタロイルジオキシジサクシンイミド等の活性エステル系化合物:トルエン−2,4−ジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類;及びポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン反応物等のエピクロルヒドリン系化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
カルボジイミド化合物としては、分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物を使用することが好ましい。
【0110】
ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。ここで分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物の合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能であるが、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。
【0111】
合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。
【0112】
具体的には、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。
【0113】
また、カルボジイミド系化合物の具体的な市販品としては、例えば、カルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡社製)等が入手可能である。
【0114】
架橋剤としてカルボジイミド系化合物を用いる場合は、バインダに対して1〜200質量%、より好ましくは5〜100質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0115】
透明導電膜16の形成方法としては、スパッタリング等の各種物理的方法、一般によく知られた塗布方法、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法等の各種の塗布法等を利用することができる。
【0116】
これらの方法により透明導電膜16を形成する場合は、(A)細線パターンの凹部を埋めて、細線構造部14の表面と透明導電膜16の表面とが例えば平滑な表面を形成するように透明導電膜16の設置量を調整する方法、(B)研磨によって細線構造部14の表面と透明導電膜16の表面とが平滑な表面を形成するように調整する方法、(C)細線構造部14の表面に、透明導電膜16の材料が付着することを防止する表面処理を施した後に透明導電膜16を形成する方法が好ましく用いられる。
【0117】
(C)の方法では、透明導電膜16の材料の塗布液が一般的に高極性であるか、あるいは親水的であるために、細線構造部14の表面は低極性あるいは疎水的であることが望ましく、具体的には細線構造部14の表面にアルキルチオール類に代表される疎水性金属表面処理剤を用いて表面処理を施されることが好ましい。この処理剤は後処理にて除去することがさらに好ましい。
【0118】
透明導電膜16は、必要に応じて、別途、機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層又はアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、近赤外線を吸収する化合物や金属からなる近赤外線吸収層、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋等の汚れを除去し易い機能を有した防汚層、傷のつき難いハードコート層、衝撃吸収機能を有する層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能を有する層等を設けることができる。これらの機能層は、透明導電膜16の表面に設けてもよいし、支持体12の裏面に設けてもよい。
【0119】
次に、支持体12上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、導電性金属銀部と光透過性部を形成することによって、細線構造部14を構成する場合について説明する。
【0120】
[乳剤層(銀塩含有感光層)]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料は、支持体12上に、光センサとして銀塩乳剤を含む乳剤層(銀塩含有感光層)を有する。銀塩含有感光層は、銀塩とバインダのほか、溶媒や染料等の添加剤を含有することができる。
【0121】
また好ましくは、乳剤層は、実質的に最上層に配置されている。ここで、「乳剤層が実質的に最上層である」とは、乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、乳剤層の上に設けられた層の総膜厚が0.5μm以下であることを意味する。乳剤層の上に設けられた層の総膜厚は、好ましくは0.2μm以下である。
【0122】
以下、乳剤層に含まれる各成分について説明する。
【0123】
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれていてもよい。該染料は、フィルタ染料として若しくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料としては、特開平9−179243号公報記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される染料が挙げられ、具体的には同公報記載の化合物F1〜F34が好ましい。また、特開平7−152112号公報記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号公報記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号公報記載の(IV−2)〜(IV−7)等も好ましく用いられる。
【0124】
このほか、本実施の形態に使用することができる染料としては、現像又は定着の処理時に脱色させる固体微粒子分散状の染料としては、特開平3−138640号公報記載のシアニン染料、ピリリウム染料及びアミニウム染料が挙げられる。また、処理時に脱色しない染料として、特開平9−96891号公報記載のカルボキシル基を有するシアニン染料、特開平8−245902号公報記載の酸性基を含まないシアニン染料及び同8−333519号公報記載のレーキ型シアニン染料、特開平1−266536号公報記載のシアニン染料、特開平3−136038号公報記載のホロポーラ型シアニン染料、特開昭62−299959号公報記載のピリリウム染料、特開平7−253639号公報記載のポリマー型シアニン染料、特開平2−282244号公報記載のオキソノール染料の固体微粒子分散物、特開昭63−131135号公報記載の光散乱粒子、特開平9−5913号公報記載のYb3+化合物及び特開平7−113072号公報記載のITO粉末等が挙げられる。また、特開平9−179243号公報記載の一般式(F1)、一般式(F2)で表される染料で、具体的には同公報記載の化合物F35〜F112も用いることができる。
【0125】
また、上記染料としては、水溶性染料を含有することができる。このような水溶性染料としては、オキソノール染料、ベンジリデン染料、メロシアニン染料、シアニン染料及びアゾ染料が挙げられる。中でも本発明においては、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料及びベンジリデン染料が有用である。本発明に用い得る水溶性染料の具体例としては、英国特許第584,609号明細書、同第1,177,429号明細書、特開昭48−85130号公報、同49−99620号公報、同49−114420号公報、同52−20822号公報、同59−154439号公報、同59−208548号公報、米国特許第2,274,782号明細書、同第2,533,472号明細書、同第2,956,879号明細書、同第3,148,187号明細書、同第3,177,078号明細書、同第3,247,127号明細書、同第3,540,887号明細書、同第3,575,704号明細書、同第3,653,905号明細書、同第3,718,427号明細書に記載されたものが挙げられる。
【0126】
上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止等の効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0127】
<銀塩>
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0128】
本実施の形態で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0129】
本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0130】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらに臭化銀や塩化銀を主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0131】
なお、ここで、「臭化銀を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。この臭化銀を主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0132】
なお、ハロゲン化銀乳剤における沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1.5モル%を超えない範囲であることが好ましい。沃化銀含有率を1.5モル%を超えない範囲とすることにより、カブリを防止し、圧力性を改善することができる。より好ましい沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1モル%以下である。
【0133】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。
【0134】
なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0135】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状等)、八面体状、14面体状等、様々な形状であることができ、立方体、14面体が好ましい。
【0136】
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていてもよい。また、粒子内部あるいは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していてもよい。
【0137】
本実施の形態における乳剤層の形成に用いられるハロゲン化銀乳剤は単分散乳剤が好ましく、{(粒子サイズの標準偏差)/(平均粒子サイズ)}×100で表される変動係数が20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0138】
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズの異なる複数種類のハロゲン化銀乳剤を混合してもよい。
【0139】
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラスト及び低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよく、配位子として例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等や、こうした擬ハロゲン、アンモニアのほか、アミン類(メチルアミン、エチレンジアミン等)、ヘテロ環化合物(イミダゾール、チアゾール、5−メチルチアゾール、メルカプトイミダゾール等)、尿素、チオ尿素等の、有機分子を挙げることができる。
【0140】
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0141】
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3Rh2Br9等が挙げられる。
【0142】
これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0143】
その他、本実施の形態では、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
【0144】
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加する等の方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
【0145】
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解めっきの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0146】
本実施の形態において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0147】
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0148】
本実施の形態では、一般のハロゲン化銀写真感光材料と同様に化学増感を施しても、施さなくてもよい。化学増感の方法としては、例えば特開2000−275770号公報の段落[0078]以降に引用されている、写真感光材料の感度増感作用のあるカルコゲナイト化合物あるいは貴金属化合物からなる化学増感剤をハロゲン化銀乳剤に添加することによって行われる。本実施の形態の感光材料に用いる銀塩乳剤としては、このような化学増感を行わない乳剤、すなわち、未化学増感乳剤を好ましく用いることができる。本実施の形態において好ましい未化学増感乳剤の調製方法としては、カルコゲナイトあるいは貴金属化合物からなる化学増感剤の添加量を、これらが添加されたことによる感度上昇が0.1以内になる量以下の量にとどめることが好ましい。カルコゲナイトあるいは貴金属化合物の添加量の具体的な量に制限はないが、本実施の形態における未化学増感乳剤の好ましい調製方法として、これら化学増感化合物の総添加量をハロゲン化銀1モルあたり5×10-7モル以下にすることが好ましい。
【0149】
<水溶性バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダが用いられる。本実施の形態において上記バインダとしては、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性バインダが用いられる。かかる水溶性バインダとしては、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0150】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0151】
また、ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他アミノ基、カルボキシル基を修飾したゼラチン(フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができる。
【0152】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダの含有量は、Ag/バインダ体積比率が1/4以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。
【0153】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0154】
本実施の形態の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0155】
<帯電防止剤>
本実施の形態に係る感光材料は帯電防止剤を含有することが好ましく、乳剤層と反対側の支持体面上にコーティングするのが望ましい。
【0156】
帯電防止層としては、表面抵抗率が25℃25%RHの雰囲気下で1012オーム/sq以下の導電性物質含有層を好ましく用いることができる。本実施の形態に好ましい帯電防止剤として、下記の導電性物質を好ましく用いることができる。
【0157】
例えば特開平2−18542号公報の第2頁左下欄第13行から同公報第3頁右上欄第7行に記載の導電性物質を用いることができる。具体的には、同公報第2頁右下欄第2行から同頁右下欄第10行に記載の金属酸化物、及び同公報に記載の化合物P−1〜P−7の導電性高分子化合物、米国特許第5575957号明細書、特開平10−142738号公報の段落[0043]〜[0045]、特開平11−223901号公報の段落[0013]〜[0019]に記載の針状の金属酸化物等を用いることができる。
【0158】
本実施の形態で用いられる導電性金属酸化物粒子は、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaO及びMoO3並びにこれらの複合酸化物、そして、これらの金属酸化物に、さらに異種原子を含む金属酸化物の粒子を挙げることができる。金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、及びMgOが好ましく、さらに、SnO2、ZnO、In23及びTiO2が好ましく、SnO2が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、及びSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素等の異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物又は複合酸化物に充分な導電性を付与することができにくくなり、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため適さない。従って、本実施の形態では、導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物又は複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0159】
上記異種原子を少量含む導電性金属酸化物微粒子としては、アンチモンがドープされたSnO2粒子が好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnO2粒子が好ましい。
【0160】
本実施の形態に用いる導電性金属酸化物の形状については特に制限はなく、粒状、針状等が挙げられる。また、その大きさは、球換算径で表した平均粒径が0.5〜25μmである。
【0161】
また、導電性を得るためには、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩等)、蒸着金属層、米国特許第2861056号明細書及び同第3206312号明細書に記載のようなイオン性ポリマー又は米国特許第3428451号明細書に記載のような不溶性無機塩を使用することもできる。
【0162】
このような導電性金属酸化物粒子を含有する帯電防止層は、バック面の下塗り層、乳剤層の下塗り層等として設けることが好ましい。その添加量は両面合計で0.01〜1.0g/m2であることが好ましい。
【0163】
また、感光材料の体積抵抗率は25℃25%RHの雰囲気下で1.0×107〜1.0×1012オーム・cmであることが好ましい。
【0164】
本実施の形態において、前記導電性物質のほかに、特開平2−18542号公報第4頁右上欄第2行から第4頁右下欄第下から3行、特開平3−39948号公報第12頁左下欄第6行から同公報第13頁右下欄第5行に記載の含フッ素界面活性剤を併用することによって、さらに良好な帯電防止性を得ることができる。
【0165】
<その他の添加剤>
本実施の形態における感光材料に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限はなく、例えば下記公報等に記載されたものを好ましく用いることができる。ただし、本実施の形態では、硬膜剤を使用しないことが望ましい。硬膜剤を使用した場合、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理を行うと、抵抗が上がり、導電率が下がってしまうためである。
【0166】
1)造核促進剤
上記造核促進剤としては、特開平6−82943号公報に記載の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物や、特開平2−103536号公報第9頁右上欄第13行から同第16頁左上欄第10行の一般式(II−m)〜(II−p)及び化合物例II−1〜II−22、並びに、特開平1−179939号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0167】
2)分光増感色素
上記分光増感色素としては、特開平2−12236号公報第8頁左下欄第13行から同右下欄第4行、同2−103536号公報第16頁右下欄第3行から同第17頁左下欄第20行、さらに特開平1−112235号、同2−124560号、同3−7928号、及び同5−11389号各公報に記載の分光増感色素が挙げられる。
【0168】
3)界面活性剤
上記界面活性剤としては、特開平2−12236号公報第9頁右上欄第7行から同右下欄第7行、及び特開平2−18542号公報第2頁左下欄第13行から同第4頁右下欄第18行に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0169】
4)カブリ防止剤
上記カブリ防止剤としては、特開平2−103536号公報第17頁右下欄第19行から同第18頁右上欄第4行及び同右下欄第1行から第5行、さらに特開平1−237538号公報に記載のチオスルフィン酸化合物が挙げられる。
【0170】
5)ポリマーラテックス
上記ポリマーラテックスとしては、特開平2−103536号公報第18頁左下欄第12行から同第20行に記載のものが挙げられる。
【0171】
6)酸基を有する化合物
上記酸基を有する化合物としては、特開平2−103536号公報第18頁右下欄第6行から同第19頁左上欄第1行に記載の化合物が挙げられる。
【0172】
7)黒ポツ防止剤
上記黒ポツ防止剤とは、未露光部に点状の現像銀が発生することを抑制する化合物であり、例えば、米国特許第4956257号明細書及び特開平1−118832号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0173】
8)レドックス化合物
レドックス化合物としては、特開平2−301743号公報の一般式(I)で表される化合物(特に化合物例1ないし50)、同3−174143号公報第3頁ないし第20頁に記載の一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)、化合物例1ないし75、さらに特開平5−257239号、同4−278939号各公報に記載の化合物が挙げられる。
【0174】
9)モノメチン化合物
上記モノメチン化合物としては、特開平2−287532号公報の一般式(II)の化合物(特に化合物例II−1ないしII−26)が挙げられる。
【0175】
10)ジヒドロキシベンゼン類
特開平3−39948号公報第11頁左上欄から第12頁左下欄の記載、及び欧州特許出願公開第452772A号明細書に記載の化合物が挙げられる。
【0176】
[その他の層構成]
乳剤層の上に保護層を設けてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0177】
(細線構造部の形成方法)
上記の感光材料を用いて細線構造部を形成する方法について説明する。なお、本実施の形態によって得られる透明導電性フイルム10は、パターン露光によって細線構造部14が支持体12上に形成されたものだけでなく、面露光によって金属が形成されたものであってもよい。また、透明導電性フイルム10を例えばプリント基板として用いる場合には、金属銀部と絶縁性部を形成してもよい。
【0178】
本実施の形態における細線構造部14の形成方法には、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの態様が含まれる。
【0179】
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0180】
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0181】
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0182】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0183】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面が小さい球形である。
【0184】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0185】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0186】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Process,4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。また、例えば、特開2004−184693号公報、同2004−334077号公報、同2005−010752号公報、特願2004−244080号明細書、同2004−085655号明細書等に記載の技術を参照することもできる。
【0187】
[露光]
本実施の形態の製造方法では、支持体12上に設けられた銀塩含有感光層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0188】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。陰極線管露光装置は、レーザを用いた装置に比べて、簡便で、且つ、コンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。発光体としては、例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色あるいは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0189】
また、本実施の形態の製造方法では、露光を種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶とを組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザ、半導体レーザあるいは固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特に、コンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザを用いて行うことが好ましい。
【0190】
レーザ光源としては、具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザ(2001年3月 第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザ(発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザ、波長約685nmの赤色半導体レーザ(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザ(日立タイプNo.HL6501MG)等が好ましく用いられる。
【0191】
銀塩含有層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティ露光、縮小投影露光、反射投影露光等の露光方式を用いることができる。
【0192】
[現像処理]
本実施の形態の製造方法では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が施される。上記現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる(いずれも商品名)。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社製のD85(商品名)等を用いることができる。
【0193】
本実施の形態の透明導電性フイルム10の製造方法では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部にパターン状の金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。なお、本実施の形態では、現像温度、定着温度及び水洗温度は35℃以下で行うことが好ましい。
【0194】
本実施の形態の製造方法における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本実施の形態の製造方法において定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0195】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有させることができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0196】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得易いため好ましい。
【0197】
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0198】
[酸化処理]
本実施の形態の製造方法では、現像処理後の金属銀部は、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0199】
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後に行うことができる。
【0200】
本実施の形態では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により金属銀部の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0201】
[還元処理]
現像処理後に還元水溶液に浸漬することで、好ましい導電性の高いフイルムを得ることができる。
【0202】
還元水溶液としては、亜硫酸ナトリム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液のpHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0203】
[平滑化処理]
本実施の形態の製造方法では、現像処理済みの細線構造部14に平滑化処理を施すことが好ましい。これによって細線構造部14の導電性が顕著に増大する。さらに、細線構造部14の金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、高い導電性と高い透光性とを同時に有する透明導電性フイルム10が得られる。
【0204】
細線構造部14を形成した後、細線構造部14における金属粒子同士の結合部分を増加させるためにも、平滑化処理することが好ましい。特に、細線構造部14が形成された支持体12を温水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる前に、平滑化処理をすることが好ましい。
【0205】
平滑化処理は、例えばカレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
【0206】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の下限値は、好ましくは1960N/cm(200kg/cm)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kg/cm)以上である。線圧力の上限値は、好ましくは6860N/cm(700kgf/cm)以下である。ここで、線圧力とは、圧密処理されるフイルム試料1cmあたりにかかる力とする。
【0207】
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は、10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュ状パターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲である。
【0208】
以上述べたように、本実施の形態の製造方法によって、高い導電性を有する透明導電性フイルム10を簡便で低コストで製造することができる。本実施の形態では、銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料を用いた透明導電性フイルム10の製造方法において、好ましくは線圧力1960N/cm(200kgf/cm)以上という高い線圧で平滑化処理を行うことで、透明導電性フイルム10の表面抵抗を十分に低減できる。このような高い線圧で平滑化処理を行う場合、金属銀部が細線状(特に、線幅が25μm以下)に形成されていると、その金属銀部の線幅が広がり所望のパターンを形成することが難しくなると考えられる。しかし、平滑化処理の対象が銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料である場合には、線幅の広がりが小さく、所望のパターンの金属銀部を形成することができる。すなわち、所望のパターンで、均一な形状の金属銀部を形成することができることから不良品の発生を抑制でき、透明導電性フイルム10の生産性をさらに向上させることができる。上記線圧力で平滑化処理を行う場合、前記平滑化処理をカレンダーロールで行うことが好ましく、一対の金属ロール、又は、金属ロールと樹脂ロールとの組み合わせで行われる。このとき、ロール間の面圧力は600kgf/cm2以上に設定することが好ましく、800kgf/cm2以上に設定することがより好ましく、900kgf/cm2以上に設定することがさらに好ましい。またこのときの上限値は、2000kgf/cm2以下に設定することが好ましい。
【0209】
[めっき処理]
本実施の形態においては、上記平滑化処理を行えばよいが、金属銀部に対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、さらに表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。また、めっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0210】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明と下記公報に開示の技術とを組み合わせて使用することができる。
【0211】
特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228480号公報、特開2006−228836号公報、特開2006−267627号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、特開2006−286410号公報、特開2006−283133号公報、特開2006−283137号公報。
【0212】
(温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理)
本実施の形態の製造方法では、支持体12上に細線構造部14を形成した後、該細線構造部14が形成された支持体12を40℃以上の温水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。上述のとおり、透明導電性フイルム10の導電性が向上する理由についてはまだ定かではないが、本実施の形態では、少なくとも一部の水溶性バインダが除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
【0213】
支持体12を浸漬させる温水の温度は好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃〜100℃である。特に好ましくは約80℃〜100℃であり、導電性の向上が顕著である。また、支持体12に接触させる水蒸気の温度は、1気圧で100℃以上140℃以下が好ましい。温水のpHは2〜13が好ましく、2〜9がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。40℃以上の温水ないしはそれ以上の温度の加熱水への浸漬時間又は蒸気への接触時間は、使用する水溶性バインダの種類によって異なるが、支持体12のサイズが60cm×1mの場合、約10秒〜約5分程度が好ましく、約1分〜約5分がさらに好ましい。
【0214】
本実施の形態の製造方法においては、線幅、開口率、Ag含有量を特定したメッシュ状の金属銀部を、露光・現像処理によって直接支持体12上に形成するため、十分な表面抵抗を有することから、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施してあらためて導電性を付与する必要がない。このため、簡易な工程で透明導電性フイルム10を製造することができる。
【0215】
本実施の形態の方法によって製造された透明導電性フイルム10は、低抵抗で、透光性も高いため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、有機EL、無機EL、太陽電池、タッチパネル、プリント回路基板等に広く応用することができる。
【0216】
<電圧と周波数>
通常、分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hzから400Hzの交流電源あるいは500Hz以上5kHz以下の交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧並びに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.25m2以上の大面積素子の場合、素子の容量成分が増大し、素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなったりするため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が十分に行われない状態になり易い。特に、0.25m2以上の素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、しばしば駆動周波数の増大に対して印加電圧の低下がおこり、低輝度化が起こることがしばしば起こる。
【0217】
これに対し、本実施の形態の第1電極部22を用いたエレクトロルミネッセンス素子は、0.25m2以上の大サイズでも高い周波数の駆動が可能で、高輝度化することができる。この場合、10kHz以上の交流電源での駆動が可能であることから、蛍光灯インバータ等の汎用品を使用することができ、製造コストを低減することが可能となる。
【実施例1】
【0218】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0219】
[実施例]
1.細線構造部14を担持した支持体12の作製
(乳剤の調製)
・1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液:
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液:
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005% KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001% NaCl 20%水溶液) 7ml
【0220】
ここで、3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005% KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001% NaCl 20%水溶液)は、粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl 20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0221】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0222】
・4液:
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液:
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0223】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pHは3.6±0.2の範囲であった)。
【0224】
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0225】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た(最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×103kg/m3、粘度=60mPa・sとなった。)。
【0226】
(塗布試料の作製)
上記乳剤に増感色素(sd−1)5.7×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10-4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10-4モル/モルAgを加え、よく混合した。
【0227】
次いで、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10-2モル/モルAg、クエン酸3.0×10-4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩を90mg/m2、ゼラチンに対して15wt%の粒径10μmのコロイダルシリカ、水性ラテックス(aqL−6)を50mg/m2、ポリエチルアクリレートラテックスを100mg/m2、メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(重量比88:5:7)を100mg/m2、コアシェル型ラテックス(コア:スチレン/ブタジエン共重合体(重量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(重量比84/16)、コア/シェル比=50/50)を100mg/m2、ゼラチンに対し4wt%の化合物(Cpd−7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。このようにして調製した乳剤層塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)上にAg10.5g/m2、ゼラチン0.94g/m2になるように塗布し、その後乾燥させた。PETにはあらかじめ塗布面を親水化処理したものを用いた。
【0228】
【化1】

【0229】
得られた塗布試料は、乳剤層のAg/バインダ体積比率が1/0.7であり、本発明に好ましく用いられるAg/バインダ体積比率1/4以上に該当している。
【0230】
(露光・現像処理)
次いで、乾燥させた塗布膜にライン/スペース=10μm/300μmの現像銀像を与え得る格子状のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスした。
【0231】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
【0232】
ハイドロキノン 0.037モル/L
N−メチルアミノフェノール 0.016モル/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140モル/L
水酸化ナトリウム 0.360モル/L
臭化ナトリウム 0.031モル/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187モル/L
【0233】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
【0234】
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
【0235】
上記処理剤を用いて露光、現像済み感材を、現像25℃、20秒、定着25℃で20秒、水洗:流水(5L/min)の20秒で処理し、且つ、現像、水洗、乾燥、圧密処理、定着、水洗、乾燥、圧密処理の順に行った。圧密処理は金属ロールを装備したカレンダーロール装置を用い、線圧3920N/cm(400kgf/cm)をかけてローラ間に試料を通して行った。
【0236】
上述のように形成された細線構造部の表面抵抗は1オーム/sqであった。なお、細線構造部14の表面抵抗は、JIS K6911に記載の測定方法に準じて測定された値である。
【0237】
2.透明導電膜16の塗設
上記のようにして形成された細線構造部14の上に下記導電性ポリマーからなる透明導電膜16をバーコータによって塗布して、実施例に係る透明導電性フイルムを作製した。導電性ポリマーは、ティーエーケミカル株式会社(TA Chemical Co.)の導電性ポリマーBaytron PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。乾燥は室温にて自然乾燥で行った。
【0238】
その後、透明導電性フィルムの端部表面に、取出し電極としての導電性テープを加熱圧着した。
【0239】
[比較例1〜3]
細線構造部14のないPETベースに実施例と同様の膜厚になるようにITOフィルムをスパッタ製膜して比較例1〜3に係る透明導電性フィルムを作製した。このうち、比較例1は、ITOフィルムの表面抵抗が20オーム/sqであり、比較例2は、ITOフィルムの表面抵抗が80オーム/sqであり、比較例3は、ITOフィルムの表面抵抗が300オーム/sqである。
【0240】
その後、各ITOフィルムの端部表面に、銀ペーストによる取出し電極を形成した。
【0241】
3.エレクトロルミネセンス素子の作製
上記のように作製された透明導電性フイルム(実施例、比較例1〜3)を下記のように無機分散型EL(エレクトロルミネッセンス)素子に組み込み、発光テストを行った。
【0242】
平均粒子サイズが0.03μmの顔料を含む反射絶縁層と蛍光体粒子が50〜60μmの発光層を背面電極となるアルミシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて110℃で1時間乾燥した。
【0243】
その後、透明導電性フイルムを蛍光体層、背面電極の誘電体層面上に重ね、熱圧着して、EL素子を作製した。EL素子を2枚のナイロン6からなる吸水性シートと2枚の防湿フイルムと挟んで熱圧着した。EL素子のサイズは、870mm×25mmであった。
【0244】
4.評価
(第1評価)
図13に示すように、実施例及び比較例1〜3について、それぞれ取出し電極50と背面電極(第2電極部28)間にピーク電圧100V、周波数1kHzの交流電源52を接続して駆動した際に、取出し電極50からの距離を変化させて輝度の測定を行った。測定点は、取出し電極50からの最短距離が0cm、10cm、20cm、30cm、40cm、50cm、60cm、70cm、80cmとした。評価結果を図14に示す。この評価結果から、比較例1は、周波数1kHzでは輝度がほぼ一定となっているが、比較例2及び3は、取出し電極50からの最短距離が長くなるにつれて輝度が低下し、輝度ムラが生じていることがわかる。一方、実施例は、取出し電極50からの最短距離に関係なく、輝度がほぼ一定(150cd/m2)であり、輝度ムラがほとんどないことがわかる。
【0245】
(第2評価)
今度は、実施例及び比較例1についてのみ、取出し電極50と背面電極間にピーク電圧100Vの交流電源52を接続し、周波数を1kHz、2kHz、5kHz及び10kHzで駆動した際の輝度を測定した。評価結果を図15に示す。この評価結果から、比較例1は、周波数1kHzでは輝度がほぼ一定となっていたが、周波数2kHz以上では、取出し電極50からの最短距離が長くなるにつれて輝度が低下し、特に、周波数10kHzでは、最短距離0cm〜40cmにわたって輝度が大幅に低下しており、輝度ムラが生じていることがわかる。一方、実施例は、周波数の大小に関わらず、輝度がほぼ一定であり、輝度ムラがほとんどないことがわかる。
【0246】
(第3評価)
ちなみに、実施例及び比較例1〜3について、それぞれ取出し電極50と背面電極間にピーク電圧100V、周波数2kHzの交流電源52を接続して駆動したこと以外は、上述した第1評価と同様にして輝度を測定した。この評価結果から、比較例1〜3は、取出し電極50からの最短距離が長くなるにつれて輝度が低下し、特に、最短距離0cm〜20cmにわたって輝度が大幅に低下し、輝度ムラが生じていた。一方、実施例は、取出し電極50からの最短距離に関係なく、輝度がほぼ一定(250cd/m2)であり、輝度ムラはほとんどなかった。
【0247】
(第4評価)
同様に、実施例及び比較例1〜3について、それぞれ取出し電極50と背面電極間にピーク電圧100V、周波数5kHzの交流電源52を接続して駆動したこと以外は、第1評価と同様にして輝度を測定した。この評価結果から、比較例1〜3は、取出し電極50からの最短距離が長くなるにつれて輝度が低下し、特に、最短距離0cm〜30cmにわたって輝度が大幅に低下し、輝度ムラが生じていた。一方、実施例は、取出し電極50からの最短距離に関係なく、輝度がほぼ一定(350〜380cd/m2)であり、輝度ムラはほとんどなかった。
【0248】
(第5評価)
同様に、実施例及び比較例1〜3について、それぞれ取出し電極50と背面電極間にピーク電圧100V、周波数10kHzの交流電源を接続して駆動したこと以外は、第1評価と同様にして輝度を測定した。この評価結果から、比較例1〜3は、取出し電極50からの最短距離が長くなるにつれて輝度が低下し、特に、最短距離0cm〜40cmにわたって輝度が大幅に低下し、輝度ムラが生じていた。しかも、表面抵抗が低い比較例1であっても、最短距離0cmでは800cd/m2であるにも関わらず、最短距離40cmでは100cd/m2まで低下した。一方、実施例は、取出し電極50からの最短距離に関係なく、輝度がほぼ一定(520〜550cd/m2)であり、輝度ムラはほとんどなかった。
【0249】
(第6評価)
そして、実施例及び比較例1について、今度は、取出し電極50と背面電極間にピーク電圧50Vの交流電源52を接続し、上述した第2評価と同様に、周波数を1kHz、2kHz、5kHz及び10kHzで駆動した際の輝度を測定した。この評価結果から、比較例1は、周波数1kHzでは輝度がほぼ一定となっていたが、周波数2kHz以上では、取出し電極50からの最短距離が長くなるにつれて輝度が低下し、特に、周波数10kHzでは、最短距離0cm〜40cmにわたって輝度が大幅に低下し、輝度ムラが生じていた。一方、実施例は、周波数の大小に関わらず、輝度がほぼ一定であり、輝度ムラはほとんどなかった。
【0250】
なお、本発明に係る発光システムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの構成を一部省略して示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの他の構成を一部省略して示す断面図である。
【図3】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの他の構成を一部省略して示す断面図である。
【図4】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの他の構成を一部省略して示す断面図である。
【図5】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの他の構成を一部省略して示す断面図である。
【図6】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの他の構成を一部省略して示す断面図である。
【図7】本実施の形態に係る透明導電性フイルムの他の構成を一部省略して示す斜視図である。
【図8】細線構造部のパターンの一例を示す説明図である。
【図9】本実施の形態に係る自発光表示装置の構成を一部省略して示す断面図である。
【図10】図10A及び図10Bは本実施の形態に係る自発光表示装置を備えた発光システムにおいて、取出し電極の部分を示す拡大断面図である。
【図11】第1電極部に加熱圧着される取出し電極の圧着位置並びに平面形状の一例を示す説明図である。
【図12】屈曲試験を説明するための図である。
【図13】取出し電極からの最短距離に応じた輝度の変化を測定するための実験例を示す説明図である。
【図14】実施例及び比較例1〜3を、ピーク電圧100V、周波数1kHzで駆動したときの取出し電極からの距離に応じた輝度の変化を測定した結果(第1評価)を示す特性図である。
【図15】実施例及び比較例1を、ピーク電圧100V、周波数1kHz、2kHz、5kHz及び10kHzで駆動したときの取出し電極からの距離に応じた輝度の変化を測定した結果(第2評価)を示す特性図である。
【符号の説明】
【0252】
10…透明導電性フイルム
12…支持体
14…細線構造部
16…透明導電膜
20…自発光表示装置
22…第1電極部
50…取出し電極
52…交流電源
54…導電性テープ
56…アルミニウム製のフィルム
58…接着剤
60…発光システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部と透光性の透明導電膜とを有する電極部と、前記電極部上に積層された発光層を有する表示部とを備え、前記電極部に取出し電極が加熱圧着された照明装置又は自発光表示装置を有し、
前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が10オーム/sq以下であることを特徴とする発光システム。
【請求項2】
支持体と、該支持体上に設けられ、且つ、導電性金属からなる細線構造部と透光性の透明導電膜とを有する第1電極部と、前記第1電極部と対向して配された第2電極部と、前記第1電極部及び前記第2電極部間に配された発光層を有する表示部とを備えた照明装置又は自発光表示装置を有する発光システムであって、
前記第1電極部に取出し電極が加熱圧着され、
前記取出し電極と前記第2電極部間に前記照明装置又は前記自発光表示装置を駆動する電源が接続され、
前記電源として、10kHz以上の交流電源を用いることを特徴とする発光システム。
【請求項3】
請求項2記載の発光システムにおいて、
前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が10オーム/sq以下であることを特徴とする発光システム。
【請求項4】
請求項2記載の発光システムにおいて、
前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が5オーム/sq以下であることを特徴とする発光システム。
【請求項5】
請求項2記載の発光システムにおいて、
前記電極部の前記細線構造部の表面抵抗が1オーム/sq以下であることを特徴とする発光システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光システムにおいて、
前記透明導電膜は、導電性材料を含むことを特徴とする発光システム。
【請求項7】
請求項6記載の発光システムにおいて、
前記導電性材料が、透明導電性有機ポリマー、又は導電性微粒子を含むことを特徴とする発光システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光システムにおいて、
前記細線構造部は、前記支持体上に少なくとも感光性銀塩含有層を有する感光層を露光し、現像処理することにより形成された導電性金属銀からなることを特徴とする発光システム。
【請求項9】
請求項8記載の発光システムにおいて、
前記細線構造部は、前記支持体上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光・現像することにより、導電性金属銀部と光透過性部が形成されてなることを特徴とする発光システム。
【請求項10】
請求項9記載の発光システムにおいて、
前記細線構造部と前記光透過性部は、前記支持体上に設けられた少なくとも感光性ハロゲン化銀含有層を含む写真構成層の少なくとも1層が導電性材料を含有する層である感光材料を露光・現像することにより形成されていることを特徴とする発光システム。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の発光システムにおいて、
前記細線構造部は、前記支持体上に感光性銀塩含有層を有する感光材料を露光し、現像定着した後に少なくとも1度圧密処理を行って得られることを特徴とする発光システム。
【請求項12】
請求項11記載の発光システムにおいて、
前記圧密処理がカレンダーロール装置によって行われることを特徴とする発光システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の発光システムにおいて、
前記細線構造部を形成した後に、前記細線構造部と前記導電膜とが貼り合わされてなることを特徴とする発光システム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の発光システムにおいて、
前記支持体上に前記導電膜を形成したあとに、前記細線構造部を形成することを特徴とする発光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−259479(P2009−259479A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104717(P2008−104717)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】