説明

発光ダイオードの固定構造

【課題】ハーネスとの接続箇所をホルダー位置とは関係なく自由に選択でき、ハーネスをホルダーに直接接続しない発光ダイオードの固定構造を得る。
【解決手段】表面に複数の給電部9が設けられた発光ダイオード2と、前記発光ダイオード2を固定するためのヒートシンク4と、前記発光ダイオード2を前記ヒートシンク4の表面に固定するためのホルダー3と、前記ホルダー3に設けられ、前記給電部9に接触するとともにその一端が接続端子16としてホルダー3から外部へ突出している複数の金属配線体14と、を備える発光ダイオードの固定構造であって、前記ヒートシンク4の表面に、所定の面積を有し且つ複数の回路配線22が形成されたプリント基板21を設け、前記回路配線22の一端に、前記接続端子16の先端部17と接合される端子接合部23を設けるとともに、他端に、ハーネス26と接続されるハーネス接続部24を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードの固定構造、特に車両用ランプ装置に好適な発光ダイオードの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ランプ装置における光源としての発光ダイオードとして、放熱のためにヒートシンクの表面にホルダーによって固定された状態で使用されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、発光ダイオードの表面には複数の給電部が形成されており、ホルダーにはその給電部に接触する複数の金属配線体が設けられている。そして、金属配線体の一端がホルダーから外部へ接続端子として突出しているとともに、その接続端子に外部からハーネスのコネクタが接続され、金属配線体を介して発光ダイオードの給電部へ電力供給できるようになっている。
【特許文献1】特開2004−265626号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ハーネスのコネクタをホルダーの近くまでもっていき、ホルダーから突出した接続端子へコネクタを接続する構造のため、ヒートシンクの種類により、発光ダイオード及びホルダーの位置が異なると、車体側におけるハーネスの長さや経路も変更する必要があり、不便である。また、ホルダーの接続端子に直接コネクタを接続する作業は、作業が面倒であるとともに、無理な力が加わるため、ホルダーや発光ダイオードの破損を招くおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、ハーネスとの接続箇所をホルダー位置とは関係なく自由に選択でき、ハーネスをホルダーに直接接続しない発光ダイオードの固定構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、表面に複数の給電部が設けられた発光ダイオードと、前記発光ダイオードを固定するためのヒートシンクと、前記発光ダイオードを前記ヒートシンクの表面に固定するためのホルダーと、前記ホルダーに設けられ、前記給電部に接触するとともにその一端が接続端子としてホルダーから外部へ突出している複数の金属配線体と、を備える発光ダイオードの固定構造であって、前記ヒートシンクの表面に、所定の面積を有し且つ複数の回路配線が形成されたプリント基板を設け、前記回路配線の一端に、前記接続端子の先端部と接合される端子接合部を設けるとともに、他端に、ハーネスと接続されるハーネス接続部を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発光ダイオードの固定構造において、前記端子接合部は、前記プリント基板の表面に露出しているとともに、前記接続端子の先端部よりも広い面積を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発光ダイオードの固定構造において、前記接続端子の先端部には、半田付け用の半田孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光ダイオードの固定構造において、前記金属配線体にヒートシンク側へ曲げたバネ部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ハーネスが接続されるハーネス接続部を、プリント基板の回路配線を介して、ホルダーから離れた任意の位置に設定することができるため、ヒートシンクの種類により、発光ダイオード及びホルダーの位置が異なっても、当該発光ダイオード及びホルダーの位置に適合した長さ及び経路を有する回路配線を採用することにより、ヒートシンク表面におけるハーネス接続部の位置を同じ位置にすることができる。したがって、異なる種類のヒートシンクや発光ダイオードが採用されても、ハーネス側の構造を変える必要がなく、同じものを共用することができる。また、ハーネスを接続する作業を、ホルダーから離れた位置で行うことができるため、作業が容易であるとともに、ホルダーや発光ダイオードに無理な力が加わらず、それらの破損や変形を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、端子接合部が接続端子の先端部よりも広い面積を有しているため、ホルダーの取付位置に誤差が生じても、その誤差を吸収した状態で接続端子と端子接合部との接合を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、接続端子の先端部に半田孔が形成されているため、接続端子と端子接合部との半田付けを確実に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、金属配線体にヒートシンク側へ曲げたバネ部が形成されているため、発光ダイオードの給電部をバネ部の弾性力で押圧することができる。そのため、発光ダイオードとヒートシンクとを密着させることができ、ヒートシンクによる放熱性能を向上させることができる。また、バネ部の弾性力によって金属配線体と給電部も同様に密着させることができるため、発光ダイオードへの給電性能も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を採用した前照灯の内部構造を示す斜視図、図2は、発光ダイオードの固定構造を示す斜視図、図3は、発光ダイオードの固定構造を示す分解斜視図、図4は、発光ダイオードの固定構造を示す平面図、図5は、図4のSA−SA断面図である。
【0016】
自動車前部の左右両側に配置されている前照灯は複数の灯具ユニットから構成されている。図1は、その1つの灯具ユニット1を示す基本構造である。発光ダイオード2は上向き状態で、ホルダー3により、ヒートシンク4上面の前方位置に固定されている。そして、発光ダイオード2の上部には楕円面を基調としたリフレクタ5が設置されている。発光ダイオード2の発光部8は、このリフレクタ5の第1焦点に合致しており、発光ダイオード2から出射された光Lは、リフレクタ5で前方へ反射される。
【0017】
前方にはプロジェクタレンズ6が配置されており、リフレクタ5で反射された光Lは第2焦点Fを経てからプロジェクタレンズ6に導かれ、そこから車両前方へ照射される。第2焦点F近傍には図示せぬシェードが設けられ、プロジェクタレンズ6から光Lは、そのシェードの形状に応じた配光パターンで車両前方へ照射される。
【0018】
次に、発光ダイオード2の固定構造を説明する。発光ダイオード2は、白色光を出射するもので、車幅方向Aの方が、前後方向Bよりも長い長方形状の本体7の上に、本体7よりも小さい形状の発光部8を有する構造をしている。本体7は熱伝導性を有し、その上面の車幅方向両側には、それぞれカソード及びアノード用の給電部9が形成されている。
【0019】
発光ダイオード2をヒートシンク4に固定するためのホルダー3は、樹脂(絶縁材料)製で、基本的に長方形であり、発光ダイオード2の本体7よりも大きい厚さを有する板部材である。
【0020】
ホルダー3の中央部には開口部10が形成され、車幅方向両側には半円状の固定部11が張り出した状態で形成されている。固定部11には、それぞれ円形の固定孔12が形成されている。そして、ヒートシンク4の表面には、この固定孔12に対応するネジ孔13が形成されている。
【0021】
開口部10は、発光ダイオード2の本体7の外形に合致した長方形状をしている。そして、ホルダー3の開口部10における車幅方向両側には、それぞれ短冊板状の金属配線体14がそれぞれ前後方向に貫通した状態でインサート成形されている。
【0022】
本実施形態では、金属配線体14は、その車幅方向外側半分が、ホルダー3の表面と同一面を有する被覆部29により上側から覆われている。そして、開口部10の車幅方向両側において、金属配線体14の下面はその全幅が露出した状態になっている。
【0023】
また、金属配線体14には、下側に向けて台形状に曲げられたバネ部15が形成されている。本実施形態では、図4に示すように、金属配線体14の下側全幅を開口部10内に露出させることで、バネ部15が開口部10内で自由に変形できるようにしている。そして、このバネ部15の変形による弾性力により、発光ダイオード2の給電部9を押圧することができるようになっている。
【0024】
金属配線体14の後端部は、ホルダー3から外部に接続端子16として突出しており、その先端部17は下側に向けてL形に曲折し、ヒートシンク4の表面と同じレベルになっている。また、先端部17には円形の半田孔18が形成されている。
【0025】
金属配線体14の前端部19は、わずかにホルダー3から前方へ突出している。そして、前端部19付近のホルダー3の内部における金属配線体14には位置決め孔20が形成されている。この位置決め孔20は、金属配線体14をホルダー3にインサート成形する金型(図示せず)にセットする際に使用されるものである。
【0026】
ヒートシンク4の表面の後方側には、後方側の略全面にプリント基板21が設けられている。このプリント基板21は、シート状の絶縁材料で形成されている。そして、本実施形態では、プリント基板21上に張付けられた金属箔(銅など)をパターンエッチング処理することにより回路配線22を形成している。なお、回路配線22はプリント基板21の表面にメッキを施すことにより形成してもよい。本実施形態では、回路配線22は、金属配線体14に対応して一対設けられており、前端には端子接合部23が設けられるとともに、後端には雌形コネクタ状のハーネス接続部24が設けられている。
【0027】
端子接合部23は、接続端子16の先端部17に対応する位置に形成され、先端部17よりも大きい面積を有し、先端部17はその端子接合部23の略中央に位置している。
【0028】
ハーネス接続部24は、回路配線22の後端に実装されたもので、内部には各回路配線22に対応した端子25が設けられている。そしてこのハーネス接続部24には、給電用のハーネス26のコネクタ27を差し込んで接続することができるようになっている。
【0029】
このようなプリント基板21を表面に有するヒートシンク4に対して、ハーネス接続部24を固定する場合には、まず最初に発光ダイオード2をホルダー3の開口部10内に裏面側から挿入する。このとき、開口部10が発光ダイオード2の本体7と合致した形状のため、発光ダイオード2は開口部10内にぴったりとセットされることとなる。ただし、この状態では、発光ダイオード2は、開口部10内に完全に挿入されず、その裏面がホルダー3の裏面より若干突出した状態になっている。
【0030】
次に、ホルダー3の固定孔12と、ヒートシンク4のネジ孔13とを合わせて、上からネジ28を挿入してネジ孔13に締結する。ホルダー3は、ネジ28の締結力によりヒートシンク4の表面側へ押圧されて当接し、固定状態となる。
【0031】
ホルダー3が固定状態になると、開口部10内のバネ部15が発光ダイオード2の給電部9を押圧し、発光ダイオード2の本体7の裏面が、ヒートシンク4の表面に確実に密着するとともに、バネ部15と給電部9との接触状態も確実になる。
【0032】
また、ホルダー3が固定された状態になると、ホルダー3から突出している接続端子16の先端部17が、プリント基板21の端子接合部23の略中央に接した状態となる。したがって、その接続端子16の先端部17を、端子接合部23に対して半田付けする。先端部17には半田孔18が形成されているため、半田付けの作業が容易で且つ確実である。また、端子接合部23が接続端子16の先端部17よりも広い面積を有しているため、接続端子16の先端部17を端子接合部23に半田付けする際にホルダー3の取付位置に誤差が生じても、その誤差を吸収した状態で接続端子16と端子接合部23との接合を行うことができる。
【0033】
そして、接続端子16と端子接合部23との接合が終了した後に、回路配線22の後端にあるハーネス接続部24にハーネス26のコネクタ27を差し込んで接続する。これにより、ハーネス接続部24から回路配線22及び金属配線体14を介して発光ダイオード2の給電部9に給電することができ、発光ダイオード2の発光部8を発光させることができる。
【0034】
以上の本実施形態によれば、ハーネス26のコネクタ27が接続されるハーネス接続部24を、プリント基板21の回路配線22を介して、ホルダー3から離れた任意の位置に設定することができるため、例えば異なる車体で別の種類のヒートシンクを用いることで、発光ダイオード2及びホルダー3の位置が異なるようになったとしても、発光ダイオード2及びホルダー3の位置に適合した長さ及び経路を有する別の回路配線を採用すれば、そのヒートシンク表面におけるハーネス接続部24の位置を、本実施形態と同じ位置にすることができる。
【0035】
したがって、異なる種類のヒートシンクや発光ダイオードが採用されたとしても、車体側におけるハーネス26の構造を変える必要がなく、同じものを共用することができる。また、ハーネス26を接続する作業を、ホルダー3から離れた位置で行うことができるため、作業が容易であるとともに、ホルダー3に無理な力が加わらないため、ホルダー3や発光ダイオード2が破損するのを抑制することができる。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、開口部10内に発光ダイオード2をセットした状態のホルダー3を、ヒートシンク4に固定するだけで、発光ダイオード2の給電部9が開口部10内の金属配線体14によりヒートシンク4側へ押圧されるため、発光ダイオード2とヒートシンク4とを密着させることができ、ヒートシンク4よる放熱性能を向上させることができる。
【0037】
特に、金属配線体14にヒートシンク4側へ曲げたバネ部15が形成されているため、発光ダイオード2の給電部9をバネ部15の弾性力で押圧することができる。さらに、バネ部15の弾性力で押圧することで、給電部9に対する経時的な押圧力の低下を抑制することができる。しかも、バネ部15が台形状に曲げられているため、給電部9との密着面積を大きくすることができ、確実な給電を行うことができるようになる。
【0038】
さらに、バネ部15の弾性力により、金属配線体14と給電部9も同様に密着させることができるため、発光ダイオード2への給電性能も向上させることができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、接続端子と端子接合部との接合は半田付けにより行われているが、接続端子と端子接合部との接合はこれに限定されるものではなく様々な方法で接合することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、一対(2本)の給電部9、金属配線体14、回路配線22を例にしたが、3本以上のものでもよい。
【0042】
さらに、上記実施形態では、ハーネス接続部24とハーネス26とがコネクタ接続により接続されているが、ターミナルロック端子による接続でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を採用した前照灯の内部構造を示す斜視図。
【図2】本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を示す斜視図。
【図3】本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を示す分解斜視図。
【図4】本実施形態にかかる発光ダイオードの固定構造を示す平面図。
【図5】図4のSA−SA断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 灯具ユニット
2 発光ダイオード
3 ホルダー
4 ヒートシンク
9 給電部
14 金属配線体
15 バネ部
16 接続端子
17 先端部
18 半田孔
21 プリント基板
22 回路配線
23 端子接合部
24 ハーネス接続部
26 ハーネス
A 車幅方向
B 前後方向
L 光
F 第2焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の給電部が設けられた発光ダイオードと、前記発光ダイオードを固定するためのヒートシンクと、前記発光ダイオードを前記ヒートシンクの表面に固定するためのホルダーと、前記ホルダーに設けられ、前記給電部に接触するとともにその一端が接続端子としてホルダーから外部へ突出している複数の金属配線体と、を備える発光ダイオードの固定構造であって、
前記ヒートシンクの表面に、所定の面積を有し且つ複数の回路配線が形成されたプリント基板を設け、
前記回路配線の一端に、前記接続端子の先端部と接合される端子接合部を設けるとともに、他端に、ハーネスと接続されるハーネス接続部を設けたことを特徴とする発光ダイオードの固定構造。
【請求項2】
前記端子接合部は、前記プリント基板の表面に露出しているとともに、前記接続端子の先端部よりも広い面積を有していることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードの固定構造。
【請求項3】
前記接続端子の先端部には、半田付け用の半田孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光ダイオードの固定構造。
【請求項4】
前記金属配線体にヒートシンク側へ曲げたバネ部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光ダイオードの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−186796(P2008−186796A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22002(P2007−22002)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】