説明

発光デバイス

【課題】発光素子6で生成される熱を効率よく放熱することができる発光デバイス1を提供する。
【解決手段】発光デバイス1は、表面に窪み2と裏面に凹部3が形成されたガラス基板4と、ガラス基板4に埋め込まれ、ガラス基板4の側面と窪み2の底面において露出する部位を持つリードフレーム5と、窪み2に収納される発光素子6と、凹部3に充填された熱伝導性材料7と、発光素子6を覆う封止材8とから構成され、発光素子6により生成される熱をリードフレーム5と熱伝導性材料7により外部に放熱できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を用いたパッケージ材料に発光素子を実装した発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスパッケージを使用した電子部品が実用化されている。ガラス材料は、外部から浸入する水分や汚染物質を妨げ、気密性が高い。また、ガラス材料は、半導体素子を形成するシリコン基板と熱膨張係数が近似するので、ガラスパッケージに半導体素子を実装したときの実装面や接合面の信頼性が高い。また、ガラス材料は安価であることから、製品のコスト上昇を抑制することができる。
【0003】
図9は、ガラス材料にLED素子を実装したLED発光装置の断面図である(特許文献1の図1)。ガラス基板51には貫通電極52が形成されている。貫通電極52の上には接続用の電極メタライズ53Bが形成され、電極メタライズ53Bの上には複数のLED素子56Aが実装されている。LED素子56Aの上面と電極メタライズ53Bとはワイヤー57により電気的に接続されている。ガラス基板51の下面には外部と接続用の電極メタライズ53Aが形成されている。電極メタライズ53Aは貫通電極52に電気的に接続されている。従って、LED素子56Aに対して、下面に形成した電極メタライズ53Aから電力を供給することができる。
【0004】
ガラス基板51の上面には、貫通孔58が形成されたSi基板54が、LED素子56Aを囲むように設置されている。Si基板54はガラス基板51の表面に陽極接合されている。Si基板54の内壁面は傾斜し、内壁面の表面には反射膜55が形成されている。LED素子56Aで発光した光は反射膜55により反射して、上方向に指向性のある光として射出される。LED素子56Aは複数個実装されているので、発光の強度を高くすることができる。また、LED素子56Aから生成される熱は、貫通電極52と電極メタライズ53Aを介して外部へ放熱することができる。
【0005】
この従来例では、ガラス基板51の貫通電極52は、ガラス基板51に形成した貫通孔の内壁にCu、Niなどをメッキし、その後、導電性樹脂や半田などを充填して形成されている。また、ガラス基板51の裏面の電極メタライズ53Aは、ガラスの表面にTi層、その上にTi層保護のためのバリア層となるPt層、あるいはNi層、さらに表面酸化を防止するAu層などをスパッタリング法や蒸着法などにより堆積し、フォトプロセスを通してパターニングされている。
【0006】
図10は、ガラス材料にLED発光素子61を埋め込んだ発光装置60の断面図である(特許文献2の図1)。LED発光素子61は面実装によりバンプ62を介してサブマウント63に実装され、サブマウント63は、リード64A、64Bの先端に形成された段差部に接続されている。周囲は封止部材65により覆われており、封止部材65としてガラスを使用することが記載されている。ガラスからなる封止部材65はリード64A、64Bの下部側で薄く、LED発光素子61から発光される光が射出する側は凸状に厚く形成されている。
【0007】
この発光装置60は、LED発光素子61に対して熱膨張率が150%から500%の範囲の透光性ガラス部及び金属部で全体が包囲されている。また、LED発光素子61に対し、給電部材(リード64A、64B)及び封止部材65の熱膨張率が大となるように形成されている。また、LED発光素子61あるいはサブマウント63の部材に対し、給電部材及び封止部材65の熱膨張率が大となるように形成されている。これにより、応力方向が調整されて熱収縮差に起因して生じるクラック等の発生を防止することができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−42781号公報
【特許文献2】特開2007−306036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LED素子は発光すると同時に発熱する。特許文献1においては裏面側に貫通電極を介して放熱する構造であるが、発光素子数を増加させる、あるいは発光強度を高くすると、発光素子近傍に熱が蓄積し、高温となって発光素子の発光効率が低下する課題があった。また、発光素子の点灯、消灯を繰り返すことにより貫通電極が高温と低温の温度サイクルに晒され、貫通電極とガラスの界面の気密性が低下し、外部から水分等が浸入して発光素子の寿命を低下させる原因となった。
【0010】
また、特許文献2に記載される発光装置では、ガラスを使用した封止部材は凸状に湾曲した形状となることからLED発光素子から射出した光は周囲に拡散して指向性を持たせることができない。
【0011】
本発明は、上記課題を解決し、発光素子により生成された熱が速やかに外部に放熱される構造の発光デバイスを提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発光デバイスは、ガラス基板の表面に窪みが形成され、ガラス基板の裏面に窪みに対応して凹部が形成されている。このガラス基板にはリードフレームが埋め込まれており、リードフレームは、ガラス基板の側面と窪みの底面において露出する部位を持つ。窪みには、発光素子が収納され、露出したリードフレームに電気的に接続されるとともに、封止材によって覆われている。さらに、凹部には熱伝導性材料が充填される。
【0013】
また、リードフレームは、ガラス基板の凹部の底面において露出し、熱伝導性材料は、リードフレームに接触している。
【0014】
また、発光素子は、凹部の底面において露出し、熱伝導性材料は、発光素子に接触している。
【0015】
また、リードフレームは複数形成され、窪みの底面において一方のリードフレームが他方のリードフレームを挟むように配置されている。
【0016】
また、ガラス基板は、窪みを構成する領域において白色又は乳白色を呈する。
【0017】
また、封止材は、金属アルコキシドから形成される。
【0018】
また、ガラス基板とリードフレームの熱膨張係数の差が、4×10-6/K(Kはケルビン)以下である。
【0019】
また、ガラス基板の熱膨張係数は8×10-6/Kから11×10-6/Kであり、リードフレームの熱膨張係数は4×10-6から15×10-6/Kである。
【0020】
また、リードフレームは、材料の異なる金属が接合されたクラッド材からなる。
【0021】
また、リードフレームは金属材料で形成されており、リードフレームとガラス基板との間の接合面には、リードフレームを構成する金属材料の酸化物からなる酸化膜が形成されている。
【0022】
また、リードフレームには、ガラス基板に埋め込まれた領域において貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発光デバイスの構成によれば、発光素子で発生した熱はリードフレームと熱伝導性材料の両方を介して外部に放熱される。そのため、発光素子近傍に蓄熱されることを防止し、発光素子の高温化に伴う発光効率の低下や、部材間の境界面における気密性の低下を防止することができる。また、発光素子はガラス材料の窪みに実装されるので、発光素子から射出される光の指向性を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図3】本発明の第三実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図4】本発明の第四実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図5】本発明の第五実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図6】本発明の第六実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図7】本発明の第七実施形態に係る発光デバイスの説明図である。
【図8】本発明の発光デバイスの製造方法を表すフロー図である。
【図9】従来公知のLED発光装置の断面図である。
【図10】従来公知の発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の発光デバイスは、表面に窪みとこの窪みに対応する裏面に凹部が形成されたガラス基板を備えている。ガラス基板にはリードフレームが埋め込まれている。リードフレームはガラス基板の側面と窪みの底面において露出している。窪みには発光素子が収納され、封止材により覆われている。発光素子は窪みの底面において露出するリードフレームと電気的に接続されている。ガラス基板の裏面の凹部には熱伝導性材料が充填されている。これにより、発光素子で発生した熱はリードフレームと熱伝導性材料の両方を介して外部に放熱されるので、発光素子の高温化を効果的に防止することができる。また、発光素子はガラス基板の窪みに収納されるので射出される光の指向性を制御することができる。
【0026】
また、リードフレームをガラス基板の裏面に形成した凹部の底面において露出するように形成し、熱伝導性材料と直接接触するように形成することができる。熱伝導性材料とリードフレームが直接接触することにより、発光素子で発生した熱を、リードフレームを介して逃がすほかに熱伝導性材料を介して効果的に逃がすことができるようになる。これにより、発光素子の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
また、ガラス基板の凹部の底面において熱伝導性材料が発光素子に直接接触するように形成することができる。熱伝導性材料と発光素子とが直接接触することにより、発光素子で発生した熱の放熱特性を向上させることができる。
【0028】
また、リードフレームを複数形成し、窪みの底面において一方のリードフレームが他方のリードフレームをはさむように配置することができる。発光素子が電力供給を受けて発光し他方のリードフレームが昇温したときに、この他方のリードフレームを挟んでいる一方のリードフレームにも熱が伝達される。その結果、複数のリードフレームにより熱を外部に伝達するので、放熱効果を向上させることができる。以下本発明について実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0029】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る発光デバイス1の説明図である。図1(a)は発光デバイス1の模式的な上面図、(b)は部分XXの模式的な縦断面図、(c)は部分YYの模式的な縦断面図である。
【0030】
図1(b)に示すように、ガラス基板4の表面の中央部にはすり鉢状の窪み2が形成されている。ガラス基板4の厚さ方向の略中央部にはリードフレーム5a、5bが分離して埋め込まれている。リードフレーム5a、5bは、窪み2の底面においてガラス基板4から露出し、ガラス基板4の左辺及び右辺の端面から突出している。図1(a)に示すように、リードフレーム5aは所定幅で窪み2の底面の左側から中央部にかけて延設され、リードフレーム5bは所定幅の二股に分離し、窪み2の底面の右側から中央部に向けてリードフレーム5aを挟むように延設されている。
【0031】
発光素子6は、リードフレーム5aの先端部の上面にボンディング材10を介して実装されている。リードフレーム5aは発光素子6の裏面に形成された図示しない電極と電気的に接続されている。リードフレーム5bは発光素子6の表面に形成された図示しない電極とワイヤー9を介して電気的に接続されている。発光素子6及びワイヤー9は封止材8により封止され、外部から水分や不純物が侵入して発光素子6を劣化させる、あるいは配線を腐食させることを防止している。ガラス基板4の裏面には凹部3が形成されている。凹部3には熱伝導性材料7が充填され、凹部3の底面に露出するリードフレーム5aと接触している。
【0032】
リードフレーム5aと5bを介して発光素子6に電力を供給することができる。発光素子6が発光すると発熱する。発光素子6により発生した熱は、リードフレーム5a及び熱伝導性材料7を介して外部に放熱される。これにより、発光素子6が高温に昇温し発光効率が低下すること、周辺の構成部品、例えばガラス基板4と熱伝導性材料7やリードフレーム5a、5bとの界面が劣化して気密性が低下することを防止することができる。また、窪み2の底面に露出するリードフレーム5aの先端部をリードフレーム5bが挟むように近接して設けられているので、発光素子6により生成された熱はリードフレーム5bに伝達する。つまり、リードフレーム5bも放熱機能を有するので、更に放熱が促進される。
【0033】
発光素子6として例えばLEDを使用することができる。発光素子6は1個だけ設けてもよいし、複数個設けてもよい。ガラス基板4は低融点ガラスや高融点ガラスを使用することができる。ガラス基板4は、白色または乳白色を呈する材料を使用することができる。例えば、ガラス材料に燐酸(P2O5)、アルミナ(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ボロン(B2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)等の酸化物を混入させることにより乳白色とすることができる。この白色や乳白色はLEDから発光した光や熱により変色することがないので、発光デバイス1の信頼性を損なわない。
【0034】
リードフレーム5a、5bとして、NiFe合金、Cu、Cu合金、或いはコバールを使用することができる。例えば、42%NiFe合金や、45%NiFe合金を使用することができる。ガラス基板4とリードフレーム5の熱膨張係数の差を、4×10-6/K以下とすることが好ましい。熱膨張係数の差を4×10-6/K以下とすれば、発光素子6のオン・オフが繰り返され、熱サイクルにさらされる場合でも、リードフレーム5とガラス基板4との間の接合が維持され、気密性が保持される。例えば、ガラス基板4の熱膨張係数を8×10-6/Kから11×10-6/Kとし、リードフレーム5の熱膨張係数を4×10-6から15×10-6/Kとする。これにより、ガラス基板4との間の熱膨張係数差をあまり大きくしないで、リードフレーム5の利用可能な材料の範囲を拡大させることができる。
【0035】
熱伝導性材料7として、Agペースト、Auペースト、Cuペースト、AuSn合金ペースト、その他の金属、合金または金属と無機物の混合材料を使用することができる。封止材8として、透明な無機材料や合成樹脂材料を使用することができる。例えば金属アルコキシド又は金属アルコキシドから形成されたポリメタロキサンを硬化させたシリコン酸化物とすることができる。ガラス基板4がシリコン酸化物であることから、封止材8もシリコン酸化物を使用することにより接合性が向上し、また熱膨張率の差を小さくすることができる。
【0036】
なお、窪み2の傾斜面に反射膜を形成して発光素子6から射出される光の指向性を向上させるようにしてもよい。反射膜としてAg膜、アルミニウム膜、多層誘電体膜を用いることができる。また、リードフレーム5a、5bの平面形状として、窪み2からガラス基板4の左右の両端に向けて次第に幅が拡大するように形成することができる。また、凹部3の縦断面形状を台形形状とすることができる。高温部から低温部に向けて熱伝導体の断面積が拡大するように構成すれば、放熱効果を向上させることができる。また、ガラス基板4の裏面に裏面電極を形成し、熱伝導性材料7と電気的及び熱的に導通するように構成することができる。この裏面電極は、発光素子6に電力を供給する電極として、また放熱手段として利用することができる。
【0037】
(第二実施形態)
図2は本発明の第二実施形態に係る発光デバイス1の説明図であり、(a)は発光デバイス1の模式的な上面図、(b)は部分XXの模式的な縦断面図、(c)は部分YYの模式的な縦断面図である。第一実施形態と異なる部分は、発光素子6がボンディング材10を介して熱伝導性材料7の上に実装されている点であり、その他の部分は第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0038】
発光素子6の下部のガラス基板4には凹部3が形成され、その凹部3には熱伝導性材料7が充填されている。発光素子6はボンディング材10を介して熱伝導性材料7の上に実装されている。熱伝導性材料7は熱伝導体であると同時に導電体でもあるので、発光素子6と熱伝導性材料7とは電気的に接続される。また、リードフレーム5aと熱伝導性材料7とは、直接接続する又はボンディング材10を介在して接続し、電気的に導通する。従って、発光素子6にリードフレーム5aと5bから電力を供給してもよいし、熱伝導性材料7とリードフレーム5bから電力を供給してもよい。本第二実施形態では、リードフレーム5よりも熱伝導性材料7の熱伝導率が高い場合に有効である。
【0039】
(第三実施形態)
図3は本発明の第三実施形態に係る発光デバイス1の説明図であり、(a)は発光デバイス1の模式的な上面図、(b)は部分XXの模式的な縦断面図である。第一実施形態と異なる部分は、窪み2の底面におけるリードフレーム5の平面的形状である。その他の部分は第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0040】
リードフレーム5a、5bは、ガラス基板4の厚さ方向の中央部に分離して埋め込まれている。リードフレーム5a、5bは、窪み2の底面においてガラス基板4から露出し、ガラス基板4の左辺及び右辺の端面から突出している。窪み2の底面において、リードフレーム5aは所定幅で窪み2の底面の左側から右側まで延設され、リードフレーム5bは所定幅の二股に分離し、窪み2の底面の右側から左側までリードフレーム5aを挟むように延設されている。
【0041】
発光素子6は、ボンディング材10を介してリードフレーム5aの露出面に実装されている。発光素子6の裏面に形成された図示しない電極とリードフレーム5aとはボンディング材10を介して電気的に接続されている。発光素子6の上面に形成される図示しない電極とリードフレーム5bとはワイヤー9により電気的に接続されている。
【0042】
リードフレーム5aと5bから電力が供給されると発光素子6は発光し、同時に発熱する。リードフレーム5bはリードフレーム5aを窪み2の底辺において挟むように近接して設けられている。そのため、発光素子6により生成された熱は、リードフレーム5a、裏面側に形成した熱伝導性材料7に加えて、リードフレーム5bにも伝達し、放熱される。そのために、発光素子6により生成された熱の放熱性が更に向上する。
【0043】
(第四実施形態)
図4は、本発明の第四実施形態に係る発光デバイス1の説明図であり、(a)は発光デバイス1の模式的な上面図、(b)は模式的な縦断面図である。第一実施形態と異なる部分は、窪み2の下部のリードフレーム5a、5bの平面的形状であり、その他の部分は第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0044】
リードフレーム5aは、窪み2の底面の左側から中央部まで延設されている。リードフレーム5bは、窪み2の底面の右側からリードフレーム5aの先端部分まで近接するように延設されている。発光素子6はリードフレーム5aの延設部の上面にボンディング材10を介して実装され、発光素子6の裏面に形成された図示しない電極と電気的に接続される。発光素子6の上面に形成された図示しない電極とリードフレーム5bとはワイヤー9により電気的に接続されている。リードフレーム5a、5bをこのように配置することにより、窪み2の底面の配線密度を向上させることができ、例えば1つの窪み2に複数の発光素子6を高密度に実装することができる。
【0045】
なお、上記第一から第四実施形態において発光素子6の上面の電極とリードフレーム5bとをワイヤー9により電気的に接続しているが、発光素子6の電極が発光素子6の裏面に集約的に形成される場合は、リードフレーム5a、5bの上に発光素子6を、ボンディング材10を介して面実装により設置することができる。この場合、リードフレーム5a及び熱伝導性材料7の他に、リードフレーム5bも放熱手段として機能する。
【0046】
(第五実施形態)
図5は、本発明の第五実施形態に係る発光デバイス1の説明図であり、(a)は発光デバイス1の模式的な縦断面図、(b)は模式的な上面図である。第一実施形態と異なる部分は、リードフレーム5の平面形状及び配置であり、その他の部分は第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0047】
ガラス基板4は四角形の平面形状を有している。リードフレーム5a、5b、5cはガラス基板4の厚さ方向のほぼ中央部に埋め込まれている。リードフレーム5a、5bは互いに分離している。リードフレーム5aは、ガラス基板4の左辺の端面から突出し、窪み2の底面の左周辺部まで延設されている。リードフレーム5bは、ガラス基板4の右辺の端面から突出し、窪み2の底面の右周辺部まで延設されている。リードフレーム5cは、ガラス基板4の上辺及び下辺の端面から突出し、窪み2の底面において所定幅で横断している。
【0048】
各リードフレーム5a、5b、5cがガラス基板4に埋め込まれている領域には貫通孔11a、11b、11cが形成されている。この貫通孔11を介してガラス基板4のガラス材料が連絡するので、リードフレーム5a、5b、5cとガラス材料との間の密着性が向上する。
【0049】
発光素子6は窪み2の底面の中央部においてリードフレーム5cの上面にボンディング材10を介して実装されている。発光素子6の裏面には図示しない電極が形成され、ボンディング材10を介してリードフレーム5cに電気的に接続されている。発光素子6の上面に形成された図示しない電極とリードフレーム5a、5bとはワイヤー9により電気的に接続されている。従って、発光素子6はリードフレーム5a、5bとリードフレーム5cから電力の供給を受けて発光する。
【0050】
リードフレーム5cの発光素子6が実装された上面と反対側の裏面は、ガラス基板4の裏面に形成された凹部3に露出し、その凹部3に充填された熱伝導性材料7と接触する。従って、発光素子6により生成された熱は、リードフレーム5cと熱伝導性材料7を介して外部に放熱される。リードフレーム5cは、基板の上辺と下辺の2つの端面から突出する。発光素子6で生成された熱は、リードフレーム5cの上辺側、下辺側及び熱伝導性材料7の経路を経て外部に放熱されるので、放熱効率がより向上する。なお、ガラス基板4の各端面から突出するリードフレーム5a、5b、5cを、第一から第四実施形態のように幅広の形状にすれば、放熱機能を更に向上させることができる。
【0051】
(第六実施形態)
図6は、本発明の第六実施形態に係る発光デバイス1の模式的な縦断面図である。本第六実施形態においては、リードフレーム5a、5bとガラス基板4との間に酸化膜12が形成されている点が他の実施形態と異なる。
【0052】
リードフレーム5a、5bはガラス基板4の厚さ方向の中央部に埋め込まれている。ガラス基板4の表面には窪み2が形成され、この窪み2の底面においてリードフレーム5a、5bがガラス基板4から露出している。発光素子6は窪み2の底面のほぼ中央部においてリードフレーム5aの上面にボンディング材10を介して実装されている。発光素子6の裏面には図示しない電極が形成され、ボンディング材10を介してリードフレーム5aに電気的に接続されている。発光素子6の上面に形成された図示しない電極と、窪み2の底面に露出するリードフレーム5bとはワイヤー9により電気的に接続されている。
【0053】
ガラス基板4の裏面には凹部3が形成され、熱伝導性材料7が充填されている。熱伝導性材料7とリードフレーム5aの裏面とは接触し、電気的及び熱的に接続される。窪み2には封止材8が充填され、外部から水分等が浸入し、発光素子6やワイヤー9が腐食・劣化することを防止している。その他、ガラス基板4やリードフレーム5の材料、それらの熱膨張係数、熱伝導性材料7や封止材8の材料等については第一実施形態においてすでに説明したことと同様なので、記載を省略する。
【0054】
このように、リードフレーム5a、5bとガラス基板4の間の酸化膜12を形成することにより、ガラス基板4のガラス材料とリードフレーム5の材料との接合性、密着性が向上し、信頼性の高い発光デバイス1を形成することができる。更に、発光素子6の下部に凹部3を形成し熱伝導性材料7を充填したことにより、発光素子6において生成される熱をリードフレーム5aの他に熱伝導性材料7を介して放熱することができるので、発光素子6の温度上昇を抑えることができる。
【0055】
(第七実施形態)
図7は本発明の第七実施形態に係る発光デバイス1の模式的な縦断面図である。第六実施形態と異なる点は、リードフレーム5a、5bとしてクラッド材を使用している点であり、その他の構成は第六実施形態と同様なので説明を省略する。
【0056】
リードフレーム5a、5bとして2種類以上の異なる金属を張り合わせたクラッド材を使用することができる。例えば、一層目(5a1、5b1)をCuとし、二層目(5a2、5b2)をNiFe合金とし、三層目(5a3、5b3)をCuとする。また、更に三層目にNiFe合金を貼り合わせることもできる。これにより熱膨張係数はガラス基板4に近く、例えば熱膨張係数の差を4×10-6/K以下とすることができる。また、抵抗が小さく、かつ熱伝導性を高くすることができる。その結果、発光素子6に供給する際に電圧降下を低減し、発光素子6で発生した熱を効率よく放熱することができる。更に、リードフレーム5a、5bの一層目をNiFe合金、二層目をCuとすれば、リードフレーム5に対する半田付けが容易となる。
【0057】
なお、第六実施形態及び第七実施形態において、ガラス基板4の側端面から露出するリードフレーム5a、5bは、ガラス基板4の側面に沿って折り曲げられ、ガラス基板4の側面に接合しているが、これに代えて、側端面からリードフレーム5a、5bを突出するように構成してもよい。
【0058】
図8は、本発明に係る発光デバイス1の製造方法の一例を示すフロー図である。図8(a)は、リードフレーム5を厚さ方向の略中央部に埋め込み、表面に窪み2を裏面に凹部3を形成したガラス基板4の縦断面図である。ガラス材料を600℃〜900℃に加熱して軟化又は溶融し、成型法によりリードフレーム5を埋め込むと同時に窪み2及び凹部3を形成する。図8(b)は、ガラス基板4の凹部3に熱伝導性材料7を充填したガラス基板4の縦断面図である。熱伝導性材料7はガラスフィラーを含むAgである。ガラス基板4の裏面からガラスフィラーを0.1%〜20%含むAgペーストを印刷する。次に、温度400℃〜800℃に加熱して焼結した。なお、熱伝導性材料7としてAgの他にAu、CuやAuSn合金ペースト等を使用することができる。
【0059】
図8(c)は、発光素子6を窪み2の底面に露出するリードフレーム5の上に実装したガラス基板4の縦断面図である。ボンディング材10を介して発光素子6をリードフレーム5の上に実装する。更に、ワイヤー9を発光素子6の上面に形成した図示しない電極とリードフレーム5bとの間に接続する。図8(d)は、窪み2に封止材8を充填したガラス基板4の縦断面図である。透明樹脂を窪み2に塗布して焼成する。また、封止材8は、金属アルコキシド又は金属アルコキシドから形成されたポリメタロキサンを硬化させたシリコン酸化物とすることができる。具体的には、ディスペンサ等を用いて金属アルコキシド溶液を窪み2に充填する。これを室温から約60℃において重合してシリコン酸化物の湿潤ゲルを形成し、温度約100℃又は100℃以上において乾燥、焼成を行い、シリコン酸化物を形成する。あるいは、ポリメタロキサンを充填して、上記と同様に重合及び焼成してシリコン酸化物を形成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 発光デバイス
2 窪み
3 凹部
4 ガラス基板
5 リードフレーム
6 発光素子
7 熱伝導性材料
8 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に窪みと、前記窪みに対応する裏面に凹部が形成されたガラス基板と、
前記ガラス基板に埋め込まれるとともに、前記ガラス基板の側面と前記窪みの底面において露出する部位を持つリードフレームと、
前記窪みに収納され、前記露出したリードフレームに電気的に接続された発光素子と、
前記凹部に充填された熱伝導性材料と、
前記発光素子を覆う封止材と、を備えた発光デバイス。
【請求項2】
前記リードフレームは、前記ガラス基板の凹部の底面において露出し、
前記熱伝導性材料は、前記リードフレームに接触していることを特徴とする請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記発光素子は、前記凹部の底面において露出し、
前記熱伝導性材料は、前記発光素子に接触していることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記リードフレームは複数形成され、前記窪みの底面において一方のリードフレームが他方のリードフレームを挟むように配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記ガラス基板は、前記窪みを構成する領域において白色又は乳白色を呈することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記封止材は、金属アルコキシドから形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記ガラス基板と前記リードフレームの熱膨張係数の差が、4×10-6/K(Kはケルビン)以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記ガラス基板の熱膨張係数は8×10-6/Kから11×10-6/Kであり、前記リードフレームの熱膨張係数は4×10-6から15×10-6/Kであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記リードフレームは、材料の異なる金属が接合されたクラッド材からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記リードフレームは金属材料で形成されており、前記リードフレームと前記ガラス基板との間の接合面には、前記リードフレームを構成する金属材料の酸化物からなる酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記リードフレームには、前記ガラス基板に埋め込まれた領域において貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−44608(P2011−44608A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192477(P2009−192477)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】