説明

発光パネルの製造方法及び発光パネルの製造装置

【課題】発光パネルを設計変更することなく、キャリア輸送層の成膜不良を低減する。
【解決手段】ELパネル1の基板10における塗布領域R1に液状体Lを塗布する際に使用するマスク30の枠部32は、基板10の非塗布領域R2よりも広い範囲を有しており、塗布領域R1における凹部13bにキャリア輸送層となる液状体Lを塗布する前後に、その広い枠部32にELパネル1の発光に寄与しない液状体Lをより多く塗布することで、その液状体Lが乾燥する際に蒸発する溶媒の量を増加させて、基板10の周囲の溶媒分子分圧を高めることができ、塗布領域R1に塗布した液状体Lの乾燥を安定させて、その液状体Lの乾燥時間をほぼ一定にすることができるので、液状体Lの乾燥ムラを抑えて、キャリア輸送層(正孔注入層8b、発光層8c)の膜厚ムラを低減し、そのキャリア輸送層の成膜不良を低減することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネルの製造方法及び発光パネルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光パネルとしてのEL(Electro Luminescence)パネルに用いられるEL素子の製造プロセスにおいて、キャリア輸送層を成膜する工程として、ガラス基板上に設けられた透明電極(陽極)を囲むように形成された隔壁間の溝に、ノズルを通じて液体状のEL材料液を流し込んで塗布するノズルプリント方式の技術が知られている。塗布されたEL材料液の溶媒を蒸発させ、乾燥して成膜したキャリア輸送層上に対向電極(陰極)を設けることで画素となるEL素子が製造され、そのEL材料が塗布された塗布領域がELパネルの発光領域となる。
【0003】
このEL材料液を基板上の塗布領域に塗布した場合に、塗布領域の端側では、蒸発した溶媒分子分圧が低いため一般的に速く乾き始めるので、その塗布領域の端側と中心側との乾燥時間が異なることになる。その乾燥時間差に起因し、成膜されたキャリア輸送層に膜厚ムラが生じて成膜不良となることがある。
キャリア輸送層の膜厚ムラはELパネルの発光ムラとなってしまうので、基板における発光領域の外側に発光に関係しないダミー画素を設けて、そのダミー画素に対してもEL材料液を塗布し、ダミー画素から溶媒を蒸発させることで溶媒分子分圧を高めて、発光領域におけるキャリア輸送層の乾燥を均一にする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3628997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の場合、キャリア輸送層の乾燥時間を安定させることはできるものの、発光領域外にダミー画素を設けるために、発光領域の周囲に発光に寄与しない領域を確保しなければならず、ELパネルの設計に制限を与えてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、発光パネルを設計変更することなく、キャリア輸送層の成膜不良を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、
基板の一方の面の中央側となる第一領域と、前記第一領域の周囲となる第二領域と、を有し、前記第一領域に、一の方向に延在する複数の隔壁間で一の方向に延在する凹部にキャリア輸送層が形成される発光パネルの製造方法において、
前記第一領域が露出する開口部と、前記第二領域を覆う枠部とを備えるマスクの前記枠部を前記第二領域に重ねて配し、
前記マスクが配された前記基板に対してノズルを相対的に移動させながら、前記ノズルから前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を流し出し、前記液状体を前記開口部内の前記第一領域における前記隔壁間の凹部に塗布する前と塗布した後の少なくとも一方で、前記枠部の上面における前記開口部の縁に沿う範囲に前記液状体を塗布する塗布工程を備えることを特徴としている。
好ましくは、前記塗布工程の後に、前記マスクを前記基板に配したまま、前記液状体を乾燥させる乾燥工程を備える。
また、好ましくは、前記塗布工程において、
前記ノズルを一の方向の正方向に相対移動させつつ、前記基板の前記第一領域から前記マスクの前記枠部の上面に前記液状体を塗布した後、前記ノズルが前記枠部に対応する位置で、前記ノズルを前記一の方向と交差する方向に相対移動させる際に、前記枠部の上面に前記液状体を塗布し、更に、前記ノズルを前記一の方向の逆方向に相対移動させつつ、前記マスクの前記枠部の上面から前記基板の前記第一領域に前記液状体を塗布する。
【0008】
また、本発明の他の態様は、
基板の一方の面の中央側となる第一領域と、前記第一領域の周囲となる第二領域と、を有し、前記第一領域に、一の方向に延在する複数の隔壁と、その隔壁間で一の方向に延在する凹部に形成されるキャリア輸送層とを備える発光パネルの製造装置であって、
前記第一領域が露出する開口部と、前記第二領域よりも広い範囲を有しその第二領域を覆う枠部とを備えるマスクと、
前記開口部から前記第一領域が露出するように前記マスクが配された前記基板に対して相対的に移動しながら、前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を流し出し、前記液状体を前記開口部内の前記第一領域における前記隔壁間の凹部に塗布する前と塗布した後の少なくとも一方で、前記枠部の上面における前記開口部の縁に沿う範囲に前記液状体を塗布するノズルと、
を備えることを特徴としている。
好ましくは、前記枠部には、前記マスクが前記基板に配される向きに対応して、前記開口部内の前記第一領域に設けられた前記隔壁間の凹部の幅に相当する幅を有し、前記一の方向に延在する溝部が形成されている。
また、好ましくは、前記溝部は、前記凹部のピッチ間隔に対応して、複数並列されて設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリア輸送層の成膜不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ELパネルの画素の配置構成を示す平面図である。
【図2】ELパネルの概略構成を示す平面図である。
【図3】ELパネルの1画素に相当する回路を示した回路図である。
【図4】ELパネルの1画素を示した平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った面の矢視断面図である。
【図6】ELパネルのバンク間に露出する画素電極を示す断面図である。
【図7】マスクを示す平面図(a)と、図7(a)のVII−VIIに沿った枠部の断面図(b)と、図7(a)のVII−VIIに沿った枠部の断面図(c)である。
【図8】基板上にマスクを配し、ノズルを通じて液状体を塗布する塗布工程を示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図で塗布工程を示す説明図である。
【図10】ELパネルのバンク間の画素電極上に形成されたキャリア輸送層を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
図1は、発光パネルであるELパネル1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図であり、図2は、ELパネル1の概略構成を示す平面図である。
【0013】
図1、図2に示すように、ELパネル1には、R(赤),G(緑),B(青)をそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このELパネル1には、複数の走査線2が行方向に沿って互いに略平行となるよう配列され、複数の信号線3が平面視して走査線2と略直交するよう列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。また、隣り合う走査線2の間において電圧供給線4が走査線2に沿って設けられている。そして、これら各走査線2と隣接する二本の信号線3と各電圧供給線4とによって囲われる範囲が、画素Pに相当する。ここでは、R(赤)を発光する複数の画素P,G(緑)を発光する複数の画素P、B(青)を発光する複数の画素Pが、それぞれ信号線3の配列方向に沿って並んで配列され、且つ走査線2の配列方向に沿ってR(赤)を発光する画素P,G(緑)を発光する画素P,B(青)を発光する画素Pの順に配列されている。
また、ELパネル1には、信号線3に沿う方向に延在する隔壁である複数のバンク13が並列されて設けられている。このバンク13によって挟まれた範囲に所定のキャリア輸送層(後述する正孔注入層8b、発光層8c)が設けられて、画素Pの発光領域となる。つまり、このバンク13が、R(赤),G(緑),B(青)の各色毎に画素Pを仕切っている。なお、キャリア輸送層とは、電圧が印加されることによって正孔又は電子を輸送する層である。
【0014】
図3は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル1の1画素に相当する回路を示した回路図である。
【0015】
図3に示すように、ELパネル1には、走査線2と、走査線2と交差する信号線3と、走査線2に沿う電圧供給線4とが設けられており、このELパネル1の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、EL素子8とが設けられている。
【0016】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続され、駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及びEL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素PのEL素子8のカソードは、一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0017】
また、このELパネル1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続され、各電圧供給線4が一定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続され、各信号線3がデータドライバに接続され、これらドライバによってELパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、一定電圧源又はドライバによって所定の電力が供給される。
【0018】
次に、ELパネル1と、その画素Pの回路構造について、図4、図5を用いて説明する。ここで、図4は、ELパネル1の1画素Pに相当する平面図であり、図5は、図4のV−V線に沿った面の矢視断面図である。なお、図4においては、電極及び配線を主に示す。
【0019】
図4に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列され、スイッチトランジスタ5の近傍にキャパシタ7が配置され、駆動トランジスタ6の近傍にEL素子8が配置されている。また、走査線2と電圧供給線4の間に、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及びEL素子8が配置されている。
【0020】
駆動トランジスタ6は、図5に示すように、ゲート電極6a、半導体膜6b、チャネル保護膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
また、スイッチトランジスタ5は、以下に詳述する駆動トランジスタ6と同様の薄膜トランジスタであって、ゲート電極5a、半導体膜、チャネル保護膜、不純物半導体膜、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものであるので、その詳細については省略する。
なお、図4、図5に示すように、基板10上の一面にゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11の上に層間絶縁膜12が成膜されている。信号線3は層間絶縁膜11と基板10との間に形成され、走査線2及び電圧供給線4は層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。
【0021】
ゲート電極6aは、基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。このゲート電極6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート電極6aの上に絶縁性の層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11によってゲート電極6aが被覆されている。
層間絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この層間絶縁膜11上であってゲート電極6aに対応する位置に真性な半導体膜6bが形成されており、半導体膜6bが層間絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。
半導体膜6bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなり、この半導体膜6bにチャネルが形成される。また、半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されており、半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gはそれぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜され、チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nm窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0022】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されており、図4に示すように、基板10と層間絶縁膜11との間に一方の電極7aが形成され、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に他方の電極7bが形成され、電極7aと電極7bが誘電体である層間絶縁膜11を挟んで相対している。
【0023】
なお、信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aは、基板10に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、層間絶縁膜11に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0024】
また、層間絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域にコンタクトホール11aが形成され、ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域にコンタクトホール11bが形成され、ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域にコンタクトホール11cが形成されており、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート電極5aと走査線2が電気的に導通し、コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通し、コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともにスイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート電極6aが電気的に導通する。コンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
なお、駆動トランジスタ6のゲート電極6aがキャパシタ7の電極7aに一体に連なっており、駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが電圧供給線4に一体に連なっており、駆動トランジスタ6のソース電極6iがキャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0025】
画素電極8aは、層間絶縁膜11を介して基板10上に設けられており、画素Pごとに独立して形成されている。この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。なお、画素電極8aは一部、駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iが接続している。
そして、図4、図5に示すように、層間絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び層間絶縁膜11を覆うように形成されている。
層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されており、この層間絶縁膜12は、平面視して格子状に形成されている。
【0026】
バンク13は、図4、図5に示すように、信号線3に沿う一の方向に延在し、層間絶縁膜12を介してスイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6を覆う位置に並列されて、平面視して縞状に形成されている。
このバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に位置し、対向する側壁13a間に画素電極8aの中央側が露出するようになっている。
そして、バンク13は、後述する正孔注入層8bや発光層8cを湿式法により形成するに際して、正孔注入層8bや発光層8cとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が隣接する画素Pに滲み出ないようにする隔壁として機能する。なお、並列するバンク13において対向する側壁13a間が凹部13bとなり、その凹部13bにおける画素電極8a上に液状体が塗布されるようになる。この凹部13bは、バンク13と同様に一の方向に延在する。
【0027】
EL素子8は、図4、図5に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された化合物膜である発光層8cと、発光層8cの上に形成された第二電極としての対向電極8dとを備えている。対向電極8dは全画素Pに共通の単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
【0028】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなるキャリア輸送層であって、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入する層である。
発光層8cは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する材料を含み、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなるキャリア輸送層であって、対向電極8dから供給される電子と、正孔注入層8bから注入される正孔との再結合に伴い発光する層である。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8cの発光材料が異なる。画素PのR(赤),G(緑),B(青)のパターンは、縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンであってもよく、また、デルタ配列であってもよい。
【0029】
対向電極8dは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
この対向電極8dは全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8cなどの化合物膜とともに後述するバンク13を被覆している。
【0030】
このように、層間絶縁膜12及びバンク13によって発光部位となる発光層8cが画素Pごとに仕切られている。そして、層間絶縁膜12の開口部12a内におけるバンク13の側壁13a間の凹部13bにおいて、キャリア輸送層としての正孔注入層8b及び発光層8cが、画素電極8a上に積層されている(図5参照)。
具体的には、層間絶縁膜12の上に設けられたバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に形成されている。
そして、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた画素電極8a上に、正孔注入層8bとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱し溶媒を蒸発させて、その液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第1のキャリア輸送層である正孔注入層8bとなる。
さらに、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた正孔注入層8b上に、発光層8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱し溶媒を蒸発させて、その液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第2のキャリア輸送層である発光層8cとなる。
なお、この発光層8cとバンク13を被覆するように対向電極8dが設けられている(図5参照)。
【0031】
そして、このELパネル1においては、画素電極8a、基板10及び層間絶縁膜11が透明であり、発光層8cから発した光が画素電極8a、層間絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となってもよい。この場合、対向電極8dを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8cから発した光が対向電極8dを透過して出射するようにする。
【0032】
このELパネル1は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加されると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなるので、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。
このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の輝度を維持するようになっている。
【0033】
次に、ELパネル1の製造方法について説明する。
【0034】
基板10上にゲートメタル層をスパッタリングで堆積させ、フォトリソグラフィーによりパターニングして信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aを形成する。次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11を堆積する。層間絶縁膜11には、ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を形成する。
次いで、半導体膜6b(5b)となるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜6d(5d)となる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積後、フォトリソグラフィーによってチャネル保護膜6d(5d)をパターン形成し、不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)となる不純物層を堆積した後、フォトリソグラフィーによって不純物層及び半導体層を連続してパターニングして不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)、半導体膜6b(5b)を形成する。
そして、フォトリソグラフィーによってコンタクトホール11a〜11cを形成する。次いで、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。この工程は省略されてもよい。
スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース、ドレインメタル層を堆積して適宜パターニングして、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。こうしてスイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6が形成される。その後、ITO膜を堆積してからパターニングして画素電極8aを形成する。
そして、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うように、気相成長法により絶縁膜を成膜し、その絶縁膜をフォトリソグラフィーでパターニングすることで画素電極8aの中央部が露出する開口部12aを有する層間絶縁膜12を形成する。この開口部12aとともに、図示しない走査線2の外部接続端子、ELパネル1の一辺に位置するデータドライバに接続するための各信号線3の外部接続端子及び電圧供給線4の外部接続端子をそれぞれ開口する複数のコンタクトホールを形成する。
次いで、ポリイミド等の感光性樹脂を堆積後に露光して、画素電極8a上に側壁13aが位置する縞状のバンク13を形成する。なお、このバンク13は、上記外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を露出している。
【0035】
そして、図6(図1、図2、図4)に示すように、複数の画素電極8aを画素Pごとに開放する格子状の層間絶縁膜12と、縞状のバンク13間の凹部13bに、画素電極8aが露出している。
なお、図1に示すELパネル1において、基板10の一方の面の中央側で、並設されたバンク13に挟まれて複数の画素Pが升目状に並んでいる領域が、第一領域としての発光領域R1であり、その発光領域R1の周囲を囲う領域が、第二領域としての非発光領域R2である。
また、この発光領域R1は、キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体Lが塗布される塗布領域R1であり、非発光領域R2は、その液状体Lが塗布されない非塗布領域R2である。
【0036】
そして、図7〜図9に示すように、バンク13が形成された基板10の上面側に所定のマスク30を配置し、そのマスク30を介して基板10の塗布領域R1におけるバンク13間の凹部13bの画素電極8a上に、正孔注入層8bや発光層8cとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体Lをノズル40を通じて塗布し、その液状体Lを乾燥させることによって、キャリア輸送層である正孔注入層8bや発光層8cを成膜する。
具体的には、マスク30は、図7(a)、図8に示すように、基板10の塗布領域R1が露出する開口部31と、基板10の非塗布領域R2よりも広い範囲を有し、その非塗布領域R2を覆う枠部32とを備えている。
このマスク30における塗布開始側となる枠部32(図7中、左側の枠部32)と、塗布終了側となる枠部32(図7中、右側の枠部32)には、その枠部32の上面における開口部31の縁に沿う範囲に、一の方向(図7中、上下方向)に延在する溝部33が形成されている。この溝部33は、マスク30が基板10に配される向きに対応して、開口部31内の塗布領域R1に設けられたバンク13間で一の方向に延在する凹部13bと同じ方向となるように、一の方向に延在するように形成されている。特に、溝部33は、凹部13bの幅に相当する幅を有し、その凹部13bのピッチ間隔に対応して、各枠部32に複数(図中、左右にそれぞれ3つ)並列されて設けられている。つまり、マスク30が基板10に配された状態を平面視した際に、開口部31内の塗布領域R1で一の方向に延在する凹部13bと、枠部32の上面に形成された一の方向に延在する溝部33とが、同じ方向に沿い同じピッチ間隔で並列するようになる。
【0037】
なお、マスク30の枠部32に設けられる溝部33は、図7(b)に示すように、枠部32の上面側を掘り込む加工を施して、凹部13bと同じピッチ間隔で、凹部13bと同じ幅の溝を形成するように設けることができる。
また、溝部33は、図7(c)に示すように、枠部32の上面側にバンク13と同じピッチ間隔で枠上凸部34を形成することによって、その枠上凸部34間に設けることができる。この枠上凸部34は、例えば、基板10の塗布領域R1に形成するバンク13と同様の手法により、バンク13と同じ材料で枠部32の上面側に形成することができる。
【0038】
そして、図8に示すように、このマスク30の開口部31を塗布領域R1に合わせ、枠部32を非塗布領域R2に重ねて配し、非塗布領域R2に液状体Lが付着してしまわないようにマスク30で覆った状態で、相対的に移動するノズル40を通じて基板10上の塗布領域R1に選択的に液状体Lを塗布して、キャリア輸送層である正孔注入層8bや発光層8cを成膜する。
なお、図8においては、1つのノズル40が各画素列を互い違いに相対移動して液状体Lを塗布するように簡略的に図示しているが、実際はR(赤),G(緑),B(青)の各色の画素列が順に並んでいるので、各色用の3つのノズル40が3列毎に、各色の液状体Lを塗布するようになっている。
【0039】
そして、基板10の塗布領域R1にキャリア輸送層となる材料が含有される液状体Lを塗布する場合、マスク30が配された基板10が載置されているステージSと、ノズル40の少なくとも一方を相対的に移動させながら、ノズル40から所定の液状体Lを流し出し、その液状体Lをマスク30の開口部31内の塗布領域R1と、マスク30の枠部32の上面とに亘って連続的に塗布するノズルプリント方式による塗布工程が実行される。
ここで、この塗布工程に用いる発光パネル製造装置100は、図9に示すように、ノズル40と、そのノズル40を移動させる図示しないノズル移動機構と、基板10の上面側に配されるマスク30と、そのマスク30が配された基板10が載置されるステージSを移動させる図示しないステージ移動機構等により構成されている。
【0040】
そして、図示しないステージ移動機構によって基板10が載置されたステージSを一の方向に移動させることで、ノズル40を一の方向の正方向と逆方向に相対移動させ、また、図示しないノズル移動機構によってノズル40を一の方向と交差する方向に相対移動させつつ、そのノズル40から液状体Lを流し出して凹部13bの画素電極8a上に液状体Lを塗布するようになっている。
具体的には、塗布工程において、ノズル40を一の方向の正方向(例えば、図8中の上下方向)に相対移動させつつ、基板10の塗布領域R1の凹部13bからマスク30の枠部32の上面に液状体Lを塗布し、次いで、ノズル40が枠部32の上方に対応する位置で、ノズル40を一の方向と交差する方向(例えば、図7中の左右方向)に相対移動させた後に、ノズル40を一の方向の逆方向(例えば、図7中の上下方向)に相対移動させつつ、マスク30の枠部32の上面から基板10の塗布領域R1の凹部13bに液状体Lを塗布することを繰り返して、塗布領域R1の全画素電極8a上に、キャリア輸送層となる所定の液状体Lを塗布する。
【0041】
特に、この塗布工程において、液状体Lを開口部31内の塗布領域R1における凹部13bに塗布する前に、マスク30における塗布開始側となる枠部32の上面に形成されている溝部33に液状体Lを塗布し、また、液状体Lを開口部31内の塗布領域R1における凹部13bに塗布した後に、マスク30における塗布終了側となる枠部32の上面に形成されている溝部33に液状体Lを塗布するようになっている。
ここで、基板10に配されたマスク30において、枠部32に形成されている溝部33は、開口部31内の塗布領域R1で一の方向に延在する凹部13bと、同じ方向に沿い同じピッチ間隔で並設されているので、その溝部33はマスク30上の仮想の凹部とすることができる。つまり、マスク30の枠部32にもバンク13の凹部13bがあるように、ノズル40を相対移動させることで、その溝部33に凹部13bと同様に液状体Lを塗布することができる。なお、マスク30の枠部32に塗布された液状体Lは溝部33に収まるようになっているので、液状体Lが枠部32から流出して開口部31内に流れ込んでしまうようなことはほとんどない。
【0042】
このように、塗布領域R1に液状体Lを塗布する前と塗布した後の少なくとも一方で、マスク30の枠部32の上面における開口部31の縁に沿う範囲の溝部33に液状体Lを塗布して、ELパネル1の発光に寄与しない液状体Lの溶媒を蒸発させることで、ELパネル1の周囲の溶媒分子分圧を高めることが可能になる。
また、塗布工程中、ノズル40が枠部32の上方に対応する位置で、ノズル40を一の方向と交差する方向(例えば、図7中の左右方向)に相対移動させる際に、その枠部32の上面にも液状体Lを塗布することで、溝部33が形成されていない枠部32側の開口部31の縁でもELパネル1の発光に寄与しない液状体Lの溶媒を蒸発させることが可能になる。
【0043】
そして、相対的に移動するノズル40によって、塗布領域R1の凹部13bと、マスク30の枠部32における開口部31の縁に沿った範囲に液状体Lを塗布した後、そのマスク30を基板10に配したまま、塗布された液状体Lの溶媒を蒸発させて乾燥させる乾燥工程を実行する。
このように、塗布領域R1の全周囲を囲う、開口部31の全周の縁に液状体Lを塗布することで、より広い範囲からELパネル1の発光に寄与しない液状体Lの溶媒を蒸発させて乾燥させることができ、基板10周囲の溶媒分子分圧をより高めることができる。
そして、基板10周囲の溶媒分子分圧を高めることで、塗布領域R1に塗布した液状体Lの乾燥を安定させ、塗布領域R1における端側や中心側などの範囲毎に乾燥速度がばらつかないようにして、塗布領域R1の全域における液状体Lの乾燥時間をほぼ一定にすることができる。
【0044】
こうして塗布領域R1に塗布された液状体Lが乾燥されて、化合物膜が成膜されることで、凹部13bの画素電極8a上に、正孔注入層8bや発光層8cが形成される。
つまり、画素電極8a上に正孔注入層8bとなる液状体Lを塗布し乾燥させた後に、発光層8cとなる液状体Lをさらに塗布し乾燥することで、図10に示すように、正孔注入層8bと発光層8cが成膜されてなる2層のキャリア輸送層を形成することができる。
なお、液状体Lが乾燥して化合物膜となることで、その容積は、例えば、10分の1になるので、正孔注入層8b用の液状体Lを乾燥させて正孔注入層8bを成膜した後、マスク30の溝部33は十分な窪みを有しているため、そのマスク30を外すことなく続けて使用し、発光層8c用の液状体Lの塗布を行うことができる。
【0045】
そして、基板10の上面側からマスク30を外した後、バンク13の上及び発光層8cの上に対向電極8dを一面に成膜する。
この対向電極8dを成膜して形成することで、図5に示すように、EL素子8、ELパネル1が製造される。
【0046】
以上のように、基板10における塗布領域R1に液状体Lを塗布する際に使用するマスク30の枠部32は、基板10の非塗布領域R2よりも広い範囲を有しているので、塗布領域R1における凹部13bにキャリア輸送層となる液状体Lを塗布する前後のタイミングで、その広い枠部32にELパネル1の発光に寄与しない液状体Lをより多く塗布することで、その液状体Lが乾燥する際に蒸発する溶媒の量を増加させて、基板10の周囲の溶媒分子分圧を高めることができる。
そして、基板10周囲の溶媒分子分圧を高めることで、塗布領域R1に塗布した液状体Lの乾燥を安定させて、塗布領域R1の全域における液状体Lの乾燥時間をほぼ一定にすることができるので、液状体Lの乾燥ムラを抑えて、キャリア輸送層(正孔注入層8b、発光層8c)の膜厚ムラを低減し、そのキャリア輸送層の成膜不良を低減することができる。
特に、ELパネル1の発光に寄与しない液状体Lをマスク30に広く取った枠部32に塗布して乾燥させるようにしたので、従来技術のように、ダミー画素を設けるためにELパネルの設計変更をすることなく、キャリア輸送層の成膜不良を低減することができる。
【0047】
また、基板10に配されたマスク30において、マスク30の枠部32に設けられた溝部33は、そのマスク30上の仮想の凹部とすることができ、塗布領域R1のバンク13の凹部13bに対する液状体Lの塗布と同様の処理を枠部32の溝部33に施すことで、容易に液状体Lを枠部32の溝部33に塗布することができる。
そして、枠部32の溝部33に塗布された液状体Lは、その溝部33の窪みから流出しにくくなっているので、枠部32の溝部33から流出した液状体Lが開口部31内に流れ込んで、キャリア輸送層の成膜不良を引き起こしてしまうことはない。
なお、マスク30の溝部33に塗布された液状体Lが乾燥して化合物膜になると、その容積は、例えば、10分の1になるので、化合物膜が成膜されてもマスク30の溝部33が十分な窪みを有している間は、そのマスク30を続けて使用することができ、例えば、正孔注入層8bを5回、発光層8cを5回塗布する、計10回の液状体Lの塗布を繰り返し行うことができる。つまり、液状体Lを1回塗布する度に、マスク30を交換することなく、塗布工程、乾燥工程を実施することができるので、それら工程を比較的速やかに実施することができる。そして、計10回の液状体Lの塗布を行った後、そのマスク30を所定の溶剤で洗浄することで、マスク30のリサイクルユースが可能になる。
【0048】
なお、以上の実施の形態においては、枠部32に溝部33を形成し、その溝部33に液状体Lを塗布したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、粘性の高い液状体Lを用いる場合や、枠部32上で液状体Lが塗布される部分と開口部31の間に十分な距離が設けられている場合などで、枠部32から開口部31内に液状体Lが流れ込むことがない場合には、溝部が不要となることもある。
【0049】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 ELパネル(発光パネル)
8 EL素子
8a 画素電極
8b 正孔注入層(キャリア輸送層)
8c 発光層(キャリア輸送層)
8d 対向電極
10 基板
13 バンク(隔壁)
13a 側壁
13b 凹部
30 マスク
31 開口部
32 枠部
33 溝部
34 枠上凸部
40 ノズル
100 発光パネル製造装置
L 液状体
P 画素
R1 塗布領域、発光領域(第一領域)
R2 非塗布領域、非発光領域(第二領域)
S ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面の中央側となる第一領域と、前記第一領域の周囲となる第二領域と、を有し、前記第一領域に、一の方向に延在する複数の隔壁間で一の方向に延在する凹部にキャリア輸送層が形成される発光パネルの製造方法において、
前記第一領域が露出する開口部と、前記第二領域を覆う枠部とを備えるマスクの前記枠部を前記第二領域に重ねて配し、
前記マスクが配された前記基板に対してノズルを相対的に移動させながら、前記ノズルから前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を流し出し、前記液状体を前記開口部内の前記第一領域における前記隔壁間の凹部に塗布する前と塗布した後の少なくとも一方で、前記枠部の上面における前記開口部の縁に沿う範囲に前記液状体を塗布する塗布工程を備えることを特徴とする発光パネルの製造方法。
【請求項2】
前記塗布工程の後に、前記マスクを前記基板に配したまま、前記液状体を乾燥させる乾燥工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の発光パネルの製造方法。
【請求項3】
前記塗布工程において、
前記ノズルを一の方向の正方向に相対移動させつつ、前記基板の前記第一領域から前記マスクの前記枠部の上面に前記液状体を塗布した後、前記ノズルが前記枠部に対応する位置で、前記ノズルを前記一の方向と交差する方向に相対移動させる際に、前記枠部の上面に前記液状体を塗布し、更に、前記ノズルを前記一の方向の逆方向に相対移動させつつ、前記マスクの前記枠部の上面から前記基板の前記第一領域に前記液状体を塗布することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光パネルの製造方法。
【請求項4】
基板の一方の面の中央側となる第一領域と、前記第一領域の周囲となる第二領域と、を有し、前記第一領域に、一の方向に延在する複数の隔壁と、その隔壁間で一の方向に延在する凹部に形成されるキャリア輸送層とを備える発光パネルの製造装置であって、
前記第一領域が露出する開口部と、前記第二領域よりも広い範囲を有しその第二領域を覆う枠部とを備えるマスクと、
前記開口部から前記第一領域が露出するように前記マスクが配された前記基板に対して相対的に移動しながら、前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を流し出し、前記液状体を前記開口部内の前記第一領域における前記隔壁間の凹部に塗布する前と塗布した後の少なくとも一方で、前記枠部の上面における前記開口部の縁に沿う範囲に前記液状体を塗布するノズルと、
を備えることを特徴とする発光パネルの製造装置。
【請求項5】
前記枠部には、前記マスクが前記基板に配される向きに対応して、前記開口部内の前記第一領域に設けられた前記隔壁間の凹部の幅に相当する幅を有し、前記一の方向に延在する溝部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の発光パネルの製造装置。
【請求項6】
前記溝部は、前記凹部のピッチ間隔に対応して、複数並列されて設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発光パネルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14360(P2011−14360A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156933(P2009−156933)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】