説明

発光層用組成物及び分散型EL素子

【課題】発光輝度が高く、絶縁破壊が起こり難く、薄型化が可能であり、さらに製造工程が簡単な分散型EL素子を提供する。
【解決手段】分散型EL素子の発光層を形成するための発光層用組成物であって、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末及び樹脂成分を含有しかつ形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有することを特徴とする発光層用組成物、及び透明導電層、発光層、誘電体層及び背面電極を有する分散型EL素子において、発光層が前記発光層用組成物により形成される分散型EL素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型EL(Electroluminescence)素子の製造に用いる発光層用組成物及び分散型EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
EL素子はその駆動方法、素子構造によって様々な種類がある。これらのうち交流電圧を印加して発光する素子を一般に無機EL素子と呼ぶ。無機EL素子はその作成方法により、蛍光体粉末と樹脂成分からなる層を発光層とする分散型EL素子と、蛍光体薄膜を発光層とする薄膜型EL素子に大別される。無機EL素子は、面発光をするという特徴から、LCDのバックライト、時計の文字盤、各種照明、表示素子等への利用が進められている。
【0003】
分散型EL素子は、発光層が蛍光体粉末と樹脂成分からなることを特徴としている。分散型EL素子の一般的な構造は、透明電極上に発光層、誘電体層及び背面電極を順次積層した構造である。分散型EL素子の蛍光体粉末としては、硫化亜鉛を母体として、銅等の付活剤及び塩素等の共付活剤が添加された、いわゆるドナー・アクセプタ対(D・Aペア)型の蛍光体粉末が広く知られている。このような分散型EL素子は、印刷やスプレー等の簡便な塗布工程により作成できる点で優れている。
【0004】
特許文献1には、無機蛍光体を含む発光層と、発光層に電圧を印加する一対の電極とを有する分散型EL素子であって、無機蛍光体が平均粒子径の異なる第1の無機蛍光粒子と第2の無機蛍光粒子とを含み、第1の無機蛍光体粒子の平均粒子径と第2の無機蛍光体粒子の平均粒子径の比が2〜8である分散型EL素子に関する発明が開示されている。この発明は比較的高い発光輝度を有しかつ耐候性が高い分散型EL素子を得ることができる点で優れている。
【0005】
一方、薄膜型EL素子の一般的な構造は、特許文献2の発明に開示されているように、電極上に発光層、誘電体層及び電極を順次積層した構造をしており、発光層が蒸着等により形成される薄膜であることを特徴としている。薄膜型EL素子は薄型のEL素子が形成できる点で優れている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−134121号公報
【特許文献2】特開昭53−108293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら近年、無機EL素子に対してさらなる薄型化、高発光輝度化が要求される中、上記した従来の分散型EL素子は、発光層に使用するD・Aペア型蛍光体粉末の平均粒子径が一般的に数10μmであるため、薄型化の要求を満足するものではない。また高発光輝度化に対する要求に対しても、十分に満足するものではない。さらに、分散型EL素子を薄型化するためにD・Aペア型蛍光体粉末を粉砕等により小粒径化した場合、D・Aペア型蛍光体粉末の発光輝度が大きく低下するため、薄型化と高発光輝度化を両立することは非常に困難である。
【0008】
また、上記した従来の薄膜型EL素子は、発光層の作成に蒸着、スパッタリング等の工程が必要なため、製造装置が大掛かりとなる点や大面積のEL素子を作成することが困難である点に課題がある。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発光輝度が高く、薄型化が可能であり、さらに製造工程が簡単な分散型EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、分散型EL素子の発光層を形成するための発光層用組成物に、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末及び樹脂成分を含有しかつ形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有する発光層用組成物を用いることにより本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、分散型EL素子の発光層を形成するための発光層用組成物であって、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末及び樹脂成分を含有しかつ形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有することを特徴とする発光層用組成物に関する。また本発明は透明導電層、発光層、誘電体層及び背面電極を有する分散型EL素子において、発光層が前記発光層用組成物により形成される分散型EL素子に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光層用組成物は、分散型EL素子の発光層を形成するための発光層用組成物であって、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末及び樹脂成分を含有しかつ形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有する発光層用組成物であることを特徴としており、そのため該発光層用組成物から形成される発光層を有する本発明の分散型EL素子は、非常に高い発光輝度を有し、絶縁破壊が起こり難く、薄型化が可能であり、さらに簡単な製造工程により得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発光層用組成物は、分散型EL素子の発光層を形成するための発光層用組成物であって、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末及び樹脂成分を含有しかつ形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有することを特徴とする発光層用組成物である。
【0014】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末は、希土類や遷移金属イオン等の発光中心を母体材料中に有する蛍光体粉末であって、発光中心が局在している。局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の発光機構は、該蛍光体粉末を電界中に置いて、電界により加速された高エネルギーの電子が発光中心に衝突した場合に、前記発光中心の基底状態にある電子が励起状態に励起されその後基底状態に緩和することにより発光を生じる発光機構である。
【0015】
これに対し従来の分散型EL素子の発光層に用いられているドナー・アクセプタ対(D・Aペア)型蛍光体粉末は、ドナーとアクセプタの間のエネルギー遷移により発光し、発光中心は非局在である。D・Aペア型蛍光体粉末の発光機構は、A.G.Fischerの論文(A.G.Fischer:J.Electrochem.Soc.,109(1962)1043、A.G.Fischer:J.Electrochem.Soc.,110(1963)733)によると、銅付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu,Cl)を例として以下のような発光機構であると推定されている。銅付活硫化亜鉛蛍光体において硫化亜鉛(ZnS)に添加された銅(Cu)の一部は結晶格子に入ってアクセプタ準位を形成し、また塩素(Cl)等はドナー準位となる不純物準位をそれぞれ形成し、これらの間での遷移が発光中心となる。一方、結晶格子に入りきらなかった残りのCuは針状の硫化銅(CuS)として存在する。蛍光体に電圧を印加すると針状の硫化銅が電子と正孔を放出し、電子がドナーに、正孔がアクセプタにトラップされる。ドナー順位は比較的浅い為、電極の極性が変わるとドナーにトラップされていた電子が飛び出して、アクセプタにトラップされた正孔と再結合し、その際に発光を生じる。
【0016】
上記のとおり局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の発光機構は、従来の分散型EL素子に使用されているD・Aペア型蛍光体粉末の発光機構とは異なる。
【0017】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末としては、例えば、遷移金属及び希土類元素のうち少なくとも1種以上の元素を発光中心として母体材料にドープした局在型発光中心を持つ蛍光体粉末が挙げられる。遷移金属としては、例えば、Mn、Cr等が挙げられる。希土類元素としては、例えば、Ce、Eu、Tb等が挙げられる。母体材料としては、例えば、硫化物系の母体材料、酸化物系の母体材料等が挙げられる。硫化物系の母体材料としては、例えば、ZnS、CaS、SrS、BaS、MgAl、CaAl、SrAl、BaAl、ZnAl、MgGa、CaGa、SrGa、BaGa、ZnGa、MgIn、CaIn、SrIn、BaIn、ZnIn、MgY、CaY、SrY、BaY、ZnY、BaZnS等が挙げられる。酸化物系の母体材料としては、例えば、Ga、CaGa、ZnGa、BeGa、Ge、CaGeO、CaGe、ZnGeO、MgGeO、YGeO、YGeO、YGe、CaO、Y、SnO、ZnSiO、YSiO等が挙げられる。
【0018】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末としては、具体的には例えば、ZnS:Mn、ZnS:Tb、CaS:Eu、CaS:Ce、SrS:Ce、SrS:Cu、BaAl:Eu、BaZnS:Mn、ZnSiO:Mn、ZnGa:Mnなどが挙げられる。
【0019】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の作成方法は特に限定されるものではない。例えば、所定の金属を含有する有機錯体を熱により分解して酸化物系の蛍光体粉末を作成する錯体熱分解法;蛍光体粉末を構成する元素を含んだ燃料の役割を果たす化合物と酸化剤の役割を果たす化合物を出発原料とし、高温の自己伝播反応を利用して蛍光体粉末を作成する燃焼合成法;金属塩を含む溶液を微小液滴とした後に熱処理することにより蛍光体粉末を作成するスプレー熱分解法;所定の粉末原料を混合した後に熱処理することにより蛍光体粉末を作成する固相反応法等が挙げられる。また、共沈法、ゾル―ゲル法、水熱合成法等の液相合成法;蒸発凝縮(PVD)法、気相反応析出(CVD)法等の気相合成法も挙げることができる。
【0020】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末は、上記作成方法に加えて粉砕工程を介して作成されることが、高い発光輝度を得ることができる点から好ましい。粉砕工程を介して作成された局在型発光中心を持つ蛍光体粉末を使用することで高い発光輝度を得ることができる理由については必ずしも明らかではない。上記理由について、発明者らは、粉砕工程を介することにより蛍光体粉末の表面の結晶性等が変化することで蛍光体粉末自体の絶縁性が高くなっており、そのため粉砕工程を介して作成された局在型発光中心を有する蛍光体粉末から形成される発光層は、高い電圧を印加しても絶縁破壊し難いため、高い発光輝度を得ることができるものと推測する。粉砕工程は、湿式粉砕でもよく、また乾式粉砕であってもよいが、湿式粉砕であることが、粉砕と同時に溶剤等に分散することができるため工程短縮の点から好ましい。湿式粉砕の場合、原料粉末に溶剤を混合して湿式粉砕を行ってもよく、また原料粉末に溶剤及び樹脂成分を混合して湿式粉砕を行ってもよい。さらに粉砕助剤を用いてもよい。溶剤は、例えば後述する溶剤等が挙げられる。樹脂成分は例えば後述する樹脂成分等が挙げられる。
【0021】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の平均粒子径は特に限定されるものではない。好ましくは体積基準による50%平均粒子径が0.2〜2.0μm、より好ましくは0.3〜0.7μmである。この範囲の下限値は、発光輝度の点で意義がある。この範囲の上限値は、分散型EL素子を薄型化できる点及び分散型EL素子の駆動電圧を低電圧化できる点で意義がある。ここで、体積基準による50%平均粒子径(以下「平均粒子径」と略すことがある。)とは、レーザードップラー法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(D50)であって、例えばナノトラックUPA−EX250(日機装社製、商品名、レーザードップラー方式粒度分布測定装置)を用いて測定することができる。
【0022】
樹脂成分は、特に限定されるものではない。樹脂成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;シアノエチル化プルラン、シアノエチル化セルロース、シアノエチル化サッカロース、シアノエチル化ポリビニルアルコール、シアノエチル化フェノキシ樹脂等のシアノエチル化樹脂;フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン樹脂等のフッ素化樹脂等が挙げられる。また、樹脂成分として上記樹脂等と反応する硬化剤を配合することもできる。硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、イソシアネート硬化剤、メラミン硬化剤等が挙げられる。硬化剤を配合することは、形成される層を架橋した膜とし、他の層との混層を抑制することができる点から好ましい。
【0023】
本発明の発光層用組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては特に限定されるものではない。例えば、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;エチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0024】
本発明の発光層用組成物は、性能を損なうことのない範囲で、他の成分として、顔料分散剤、表面調整剤等を含有していてもよい。
【0025】
本発明の発光層用組成物は、形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有することを特徴とする。耐電圧は、好ましくは0.25〜0.75MV/cmである。この耐電圧を有することにより、発光層を薄層とした場合において、高い電圧を印加しても絶縁破壊を起こし難く、高い発光輝度を得ることができる。ここで耐電圧とは、試験体が絶縁破壊を生じることなく印加できる電圧の上限値を試験体の膜厚で割った値である。耐電圧は、例えば以下の方法により測定することができる。ITO電極を形成したガラス基材(電極面積:1cm×1cm)上に発光層用組成物を膜厚が3μmとなるように塗布し、乾燥させ、発光層膜を形成する。続いて発光層膜上に、前記ITO電極と同じ位置に重なるように金電極(電極面積:1cm×1cm)を蒸着により形成し、電極面積が1cmとなるコンデンサー状の試験体を作製する。試験体の電極それぞれに端子を当て、ピコアンメーター6487(ケースレイ社製、商品名、電流−電圧測定装置)に接続し、電圧を最大500Vまで1Vずつ上昇させながら、そのときの電流値を読み取る。電圧を上昇させている途中で電流値が2.5mAを越える際の電圧又は金電極が破壊され電流の測定が不能となる際の電圧を絶縁破壊電圧とする。この絶縁破壊電圧を膜厚で割った値が耐電圧である。
【0026】
前記耐電圧は、形成される発光層における前記局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の平均粒子径及び体積濃度、並びに樹脂成分の組成を適宜選択して組合せることにより得ることができる。具体的には例えば、発光層における局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の体積基準による50%平均粒子径を0.2〜2.0μmの範囲より適宜選択することや、発光層における局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の体積濃度を1〜80%の範囲で適宜選択することにより、前記耐電圧の範囲を得ることができる。
【0027】
本発明の分散型EL素子は、透明導電層、発光層、誘電体層及び背面電極を有する分散型EL素子において、発光層が前記発光層用組成物により形成される分散型EL素子である。
【0028】
透明導電層は、通常当該分野で使用されている透明導電層であれば特に限定することなく使用できる。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、酸化錫、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)等からなる薄膜等が挙げられる。
【0029】
発光層の膜厚は特に限定されるものではない。発光層の膜厚は好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.7〜2.5μmである。この範囲の下限値は、絶縁破壊を起こり難くする点で意義がある。またこの範囲の上限値は、駆動電圧の低電圧化の点で意義がある。
【0030】
また発光層は局在型発光中心を持つ蛍光体粉末を体積濃度で1〜80%含有することが好ましく、15〜55%含有することがさらに好ましい。この範囲の下限値は、面発光にムラがなく、高い発光輝度を得る点で意義がある。またこの範囲の上限値は絶縁破壊を起こり難くする点で意義がある。
【0031】
誘電体層は、通常当該分野で使用されている誘電体層を使用することができる。例えば、高誘電体材料の薄膜、樹脂成分からなる層、高誘電体材料及び樹脂成分からなる層等が挙げられる。高誘電体材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO)、オキシ窒化珪素(SiON)、窒化珪素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、酸化イットリウム(Y)、タンタル酸バリウム(BaTa)、酸化タンタル(Ta)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、ニオブ酸鉛(PbNb)等が挙げられる。樹脂成分としては、発光層用組成物の説明において記載した樹脂成分と同様のものを挙げることができる。
【0032】
また、誘電体層は、導電性微粒子及び前記樹脂成分を含有する誘電体層を使用することができる。該誘電体層は、低電圧で高い発光輝度を得る点から好ましい。特に、誘電体層は樹脂成分中に導電性微粒子が分散した構造をしていることが絶縁性の点から好ましい。
【0033】
また、誘電体層は、導電性微粒子及び樹脂成分に加え、高誘電体材料を含有しても良い。
【0034】
導電性微粒子は、従来公知の導電性微粒子を使用することができる。具体的には、インジウム錫酸化物(以下「ITO」と略すことがある)、酸化インジウム、酸化錫、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)等の金属酸化物が好ましい。
【0035】
また、導電性微粒子は表面処理されていることが好ましい。導電性微粒子を表面処理することにより、導電性微粒子を絶縁化することができるため、形成される誘電体層の絶縁性を損なうことなく、誘電体層中の導電性微粒子の含有量を高くすることができる。その結果、高い比誘電率を有する誘電体層を形成することができる。
【0036】
表面処理の方法は特に限定されず従来公知の方法が使用できる。具体的には、例えば、導電性微粒子の表面に、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン等の金属アルコキシドをゾル―ゲル反応により金属酸化物として析出することにより表面処理する方法;導電性微粒子をシランカップリング剤と反応させることにより表面処理する方法;シランカップリング剤を介して樹脂により導電性微粒子を表面処理する方法;導電性微粒子と樹脂を機械的に混合して表面処理する方法;導電性微粒子の表面に珪酸ナトリウム等の珪酸塩、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩等をpHを調整して金属酸化物として析出させることにより表面処理する方法等が挙げられる。
【0037】
導電性微粒子の体積基準による50%平均粒子径は、10nm〜2000nmが好ましく、10nm〜500nmがさらに好ましい。
【0038】
また、導電性微粒子の含有量は、形成される誘電体層の絶縁性及び誘電率の点から、誘電体層中に体積濃度で5〜40%の範囲で含有されることが好ましく、10〜30%の範囲であればさらに好ましい。なお、表面処理された導電性微粒子の含有量においては、表面処理部分を除いた導電性微粒子のみの量を基準に計算する。
【0039】
誘電体層の静電容量密度σは、発光輝度の点から2×10−9F/cm(2nF/cm)以上であることが好ましく、4×10−9F/cm(4nF/cm)以上であればさらに好ましい。ここで、静電容量密度σは、AC5V、周波数1kHzの条件で測定される静電容量の値を電極面積で除した値であり、静電容量の値は、例えば、日置電機社製のLCR HiTester 3532−50を用いて測定することができる。
【0040】
誘電体層の比誘電率は、発光輝度の点から20以上であることが好ましく、25以上であればさらに好ましい。ここで、比誘電率は、前記静電容量密度σ(F/cm)、層の厚さd(m)、及び真空の誘電率e=8.82×10−12(F/m)を下記式(1)に代入することにより算出される値である。
比誘電率=(10,000×σ×d)/e 式(1)
【0041】
誘電体層は透明であってもよくまた不透明であってもよいが、誘電体層が前記透明導電層と前記本発明の発光層の間に積層される場合には、該誘電体層は透明性を有する誘電体層(以下、「透明誘電体層」と略すことがある。)であることが好ましい。透明誘電体層は、高い発光輝度を得ることができる点から、前記導電性微粒子及び前記樹脂成分からなる透明誘電体層であることが好ましい。また、透明誘電体層は、色合いの変化や発光輝度の低下を抑制する点から、発光層が発光する波長範囲における光線透過率が90%以上であることが好ましい。
【0042】
誘電体層の膜厚は特に限定されるものではない。好ましくは0.3〜5.0μmであり、さらに好ましくは0.5〜1.5μmである。この範囲の下限値は、絶縁破壊を起こり難くする点で意義がある。またこの範囲の上限値は、駆動電圧の低電圧化の点で意義がある。
【0043】
背面電極は、通常当該分野で使用されている背面電極であれば特に限定することなく使用できる。例えば、アルミニウムなどの金属シート;金、アルミニウムなどの金属若しくはITOなどの導電性金属酸化物の蒸着膜又は該蒸着膜を積層したプラスチックシート;銀、アルミニウムなどの金属粉末またはITOなどの導電性金属酸化物を樹脂または溶剤中に分散した導電性ペーストの塗布膜等が挙げられる。
【0044】
本発明の分散型EL素子は、透明導電層、本発明の発光層、誘電体層及び背面電極を有する分散型EL素子であればその素子の積層構造は限定されるものではない。本発明の分散型EL素子においては、誘電体層は1層のみであってもよくまた2層であってもよい。本発明の分散型EL素子は、具体的には例えば、(I)透明導電層の上に、透明誘電体層、本発明の発光層、誘電体層及び背面電極を順次積層してなる分散型EL素子(以下、「分散型EL素子(I)」と略すことがある。)、(II)透明導電層の上に、本発明の発光層、誘電体層及び背面電極を順次積層してなる分散型EL素子(以下、「分散型EL素子(II)」と略すことがある。)、(III)透明導電層の上に、透明誘電体層、本発明の発光層及び背面電極を順次積層してなる分散型EL素子(以下、「分散型EL素子(III)」と略すことがある。)等が挙げられる。
【0045】
本発明の分散型EL素子の製造方法は、特に限定されるものではない。上記分散型EL素子(I)を例に挙げると、その製造方法として例えば、透明導電層の上に、透明誘電体層、本発明の発光層、誘電体層及び背面電極を順に積層する製造方法;背面電極の上に、誘電体層、本発明の発光層、透明誘電体層、透明導電層を順に積層する製造方法;透明導電層の上に、透明誘電体層、本発明の発光層までの各層を順に積層したものと背面電極の上に誘電体層を積層したものを張り合わせる製造方法等が挙げられる。
【0046】
特に、分散型EL素子(I)においては、透明導電層の上に透明誘電体層を形成する工程、透明誘電体層の上に本発明の発光層用組成物を塗布・乾燥して発光層を形成する工程、発光層の上に誘電体層を形成する工程、及び誘電体層の上に背面電極を形成する工程をこの順で有する製造方法が、工程が簡単な点及び発光層の視認面側の界面の平滑性の点から好ましい。以下にこの製造方法を詳細に説明する。
【0047】
透明導電層は取り扱いの点から透明基材の上に形成されていることが好ましい。透明基材は、通常当該分野で使用されている透明基材であれば特に限定することなく使用できる。例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル板等が挙げられる。透明導電層を透明基材の上に形成する方法は特に限定されるものではなく公知の方法が使用できる。具体的には、例えば、透明基材の上に透明導電性ペーストを塗布・乾燥して透明導電層を形成する方法、透明基材の上に透明導電薄膜を蒸着により形成する方法等が挙げられる。
【0048】
透明誘電体層は透明導電層の上に形成される。透明誘電体層の形成方法は特に限定されるものではなく公知の方法が使用できる。例えば、誘電体組成物を塗布・乾燥することにより透明誘電体層を形成する方法が、工程が簡単な点から好ましい。誘電体組成物としては、例えば、前記樹脂成分を含有する誘電体組成物や、前記導電性微粒子及び前記樹脂成分を含有する誘電体組成物等が挙げられる。また、誘電体組成物は、性能を損なうことのない範囲で、他の成分として、溶剤、顔料分散剤、表面調整剤等を含有していてもよい。誘電体組成物としては、前記導電性微粒子及び前記樹脂成分を含有する誘電体組成物が、高い発光輝度が得られる点から好ましい。塗布方法は、膜厚が均一であり、かつ平滑な塗面を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。塗布方法は、具体的には、例えばエアスプレー塗装、スピンコート、カーテンコート塗装、ロールコート塗装、スクリーン印刷等を挙げることができる。乾燥条件は、誘電体組成物が溶剤を含有する場合には溶剤を十分に除去する条件、あるいは硬化剤を含有する場合には樹脂と硬化剤が反応する条件であれば、特に限定されるものではなく適宜決定することができる。
【0049】
続いて、透明誘電体層の上に本発明の発光層用組成物を塗布・乾燥して発光層を形成する。塗布方法は、膜厚が均一であり、かつ平滑な塗面を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。例えばエアスプレー塗装、スピンコート、カーテンコート塗装、ロールコート塗装、スクリーン印刷等をあげることができる。乾燥条件は、発光層用組成物が溶剤を含有する場合には溶剤を十分に除去する条件、あるいは硬化剤を含有する場合には樹脂と硬化剤が反応する条件であれば、特に限定されるものではなく適宜決定することができる。具体的には例えば、発光層用組成物が溶剤を含有している場合には、発光層用組成物を塗布した後、40〜150℃で5〜60分乾燥を行う乾燥条件が挙げられる。
【0050】
続いて、前記において形成した発光層の上に誘電体層を形成する。誘電体層の形成方法は特に限定されるものではない。例えば、誘電体組成物を塗布・乾燥し、誘電体層を形成する方法が挙げられる。誘電体組成物としては、前記樹脂成分を含有する誘電体組成物や、前記導電性微粒子及び前記樹脂成分を含有する誘電体組成物等が挙げられる。塗布方法及び乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば前記透明誘電体層の形成方法と同様の方法を採ることができる。
【0051】
さらに、前記において形成した誘電体層の上に、背面電極を形成する。背面電極の形成方法は、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、金、アルミニウムなどの金属を誘電体層の上に蒸着する方法、アルミニウムなどの金属シートと誘電体層をラミネートにより接合させる方法、又は銀、アルミニウムなどの金属粉末またはITOなどの導電性金属酸化物を樹脂または溶剤中に分散した導電性ペーストを誘電体層の上に塗布した後、乾燥して形成する方法等が挙げられる。
【0052】
また分散型EL素子(II)の場合においては、透明導電層の上に本発明の発光層用組成物を塗布・乾燥して発光層を形成する工程、発光層の上に誘電体層を形成する工程、及び誘電体層の上に背面電極を形成する工程をこの順で有する製造方法が、工程が簡単な点及び発光層の視認面側の界面の平滑性の点から好ましい。該製造方法における各層の形成方法は、分散型EL素子(I)の製造方法において詳述した形成方法と同様の方法を採ることができる。
【0053】
また分散型EL素子(III)の場合においては、透明導電層の上に透明誘電体層を形成する工程、透明誘電体層の上に本発明の発光層用組成物を塗布・乾燥して発光層を形成する工程、発光層の上に背面電極を形成する工程をこの順で有する製造方法が、工程が簡単な点及び発光層の視認面側の界面の平滑性の点から好ましい。該製造方法における各層の形成方法は、分散型EL素子(I)の製造方法において詳述した形成方法と同様の方法を採ることができる。
【0054】
本発明の分散型EL素子は、高い発光輝度を得ることができることから、交流電圧の印加により発光する電界発光型の分散型EL素子として非常に有用である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0056】
製造例1
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の調製
KX−605A(化成オプトニクス社製、商品名、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末、ZnS:Mn、平均粒径5μm)60g及びエタノール140gを混合し、直径0.5mmのYTZボール(ニッカトー社製、商品名)を用いてシェイカーで3時間粉砕を行った後、減圧乾燥を行って局在型発光中心を持つ蛍光体粉末(P−1)を得た。この蛍光体粉末の平均粒子径は0.40μmであった。
【0057】
実施例1
発光層用組成物(L−1)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−S(信越化学工業社製、商品名、シアノエチル化プルラン)を溶解させた固形分20%の樹脂溶液31g、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末(P−1)23.8g及びシクロヘキサノン45.1gを混合し、シェイカーにて2時間分散を行い、発光層用組成物(L−1)を得た。得られた発光層用組成物(L−1)により形成される発光層の耐電圧は0.27MV/cmであった。
【0058】
実施例2
発光層用組成物(L−2)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液56.8g、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末(P−1)18.6g及びシクロヘキサノン24.6gを混合し、シェイカーにて2時間分散を行い、発光層用組成物(L−2)を得た。得られた発光層用組成物(L−2)により形成される発光層の耐電圧は0.35MV/cmであった。
【0059】
実施例3
発光層用組成物(L−3)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液76.7g、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末(P−1)14.7g及びシクロヘキサノン8.7gを混合し、シェイカーにて2時間分散を行い、発光層用組成物(L−3)を得た。得られた発光層用組成物(L−3)により形成される発光層の耐電圧は0.50MV/cmであった。
【0060】
実施例4
発光層用組成物(L−4)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液22.2g、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末(P−1)25.5g及びシクロヘキサノン52.2gを混合し、シェイカーにて2時間分散を行い、発光層用組成物(L−4)を得た。得られた発光層用組成物(L−4)により形成される発光層の耐電圧は0.21MV/cmであった。
【0061】
実施例5
発光層用組成物(L−5)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液31g、KX−605Aを23.8g及びシクロヘキサノン45.1gを混合し、直径0.5mmのYTZボールを用いてシェイカーにて3時間粉砕・分散を行い、発光層用組成物(L−5)を得た。この発光層用組成物(L−5)に含まれる局在型発光中心を有する蛍光体粉末の平均粒子径を測定したところ、0.48μmであった。得られた発光層用組成物(L−5)により形成される発光層の耐電圧は0.27MV/cmであった。
【0062】
実施例6
発光層用組成物(L−6)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液31g、KX−605Aを23.8g及びシクロヘキサノン45.1gを混合し、直径1.0mmのYTZボールを用いてシェイカーにて3時間粉砕・分散を行い、発光層用組成物(L−6)を得た。この発光層用組成物(L−6)に含まれる局在型発光中心を有する蛍光体粉末の平均粒子径を測定したところ、0.92μmであった。得られた発光層用組成物(L−6)により形成される発光層の耐電圧は0.25MV/cmであった。
【0063】
実施例7
発光層用組成物(L−7)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液31g、KX−605Aを23.8g及びシクロヘキサノン45.1gを混合し、直径0.5mmのYTZボールを用いてシェイカーにて12時間粉砕・分散を行い、発光層用組成物(L−7)を得た。この発光層用組成物(L−7)に含まれる局在型発光中心を有する蛍光体粉末の平均粒子径を測定したところ、0.15μmであった。得られた発光層用組成物(L−7)により形成される発光層の耐電圧は0.30MV/cmであった。
【0064】
実施例8
発光層用組成物(L−8)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液31g、P1−G1(化成オプトニクス社製、商品名、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末、ZnSiO:Mn)23.8g及びシクロヘキサノン45.1gを混合し、直径0.5mmのYTZボールを用いてシェイカーにて3時間粉砕・分散を行い、発光層用組成物(L−8)を得た。この発光層用組成物(L−8)に含まれる局在型発光中心を有する蛍光体粉末の平均粒子径を測定したところ、0.52μmであった。得られた発光層用組成物(L−8)により形成される発光層の耐電圧は0.26MV/cmであった。
【0065】
実施例9
発光層用組成物(L−9)の製造
シクロヘキサノンにAER ECN−1299(旭化成ケミカルズ社製、商品名、エポキシ樹脂)を溶解させた固形分20%の樹脂溶液31g、KX−605Aを23.8g及びシクロヘキサノン45.1gを混合し、直径0.5mmのYTZボールを用いてシェイカーにて3時間粉砕・分散を行い、発光層用組成物(L−9)を得た。この発光層用組成物(L−9)に含まれる局在型発光中心を有する蛍光体粉末の平均粒子径を測定したところ、0.45μmであった。得られた発光層用組成物(L−9)により形成される発光層の耐電圧は0.30MV/cmであった。
【0066】
比較例1
発光層用組成物(CL−1)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液9.2g、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末(P−1)28.2g及びシクロヘキサノン62.6gを混合し、シェイカーにて2時間分散を行い、発光層用組成物(CL−1)を得た。得られた発光層用組成物(CL−1)により形成される発光層の耐電圧は0.13MV/cmであった。
【0067】
製造例2
表面処理導電性微粒子(a)の製造
NanoTek ITO−R(シーアイ化成社製、商品名、ITO微粒子、平均粒子径30nm)10gを脱イオン水90g中に配合し、硝酸でpH4に調整した後、2時間超音波分散を行った。分散後、分散液を40℃に保持しながら攪拌し、その分散液にテトラエトキシシラン13gをゆっくりと滴下した。滴下終了後、40℃に保持したまま、4時間さらに攪拌し、その後、脱イオン水及びアセトンを用いて洗浄、減圧乾燥を行い、表面処理導電性微粒子(a)を得た。得られた表面処理導電性微粒子(a)について、光電子分光法にて組成分析を行い、ITO微粒子にシリカが表面処理されていることを確認した。
【0068】
製造例3
誘電体組成物(D−1)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液40.5g及び表面処理導電性微粒子(a)6.2gを混合し、シェイカーにて12時間分散を行い、誘電体組成物(D−1)を得た。
【0069】
製造例4
誘電体組成物(D−2)の製造
シクロヘキサノンにシアノレジンCR−Sを溶解させた固形分20%の樹脂溶液を用意し、誘電体組成物(D−2)とした。
【0070】
実施例10
分散型EL素子(EL−1)の製造
ITO膜による透明導電層を形成したガラス基材(3cm×3cm)のITO膜面上に、誘電体組成物(D−1)をスピンコートにより塗布し、140℃のホットプレート上で乾燥を行い、膜厚1.0μmの透明誘電体層を形成した。続いて、透明誘電体層上に発光層用組成物(L−1)をスピンコートにより塗布し、140℃のホットプレート上で乾燥を行い、膜厚1.0μmの発光層を形成した。続いて、誘電体組成物(D−1)をスピンコートにより塗布し、140℃のホットプレート上で乾燥を行い、膜厚1.0μmの誘電体層を形成した。さらに誘電体層上に金を蒸着し、分散型EL素子(EL−1)を製造した。得られた分散型EL素子(EL−1)の発光層、透明誘電体層及び誘電体層の特性並びに分散型EL素子(EL−1)の発光輝度について表1に示した。
【0071】
実施例11〜23、比較例2
分散型EL素子(EL−2)〜(EL−14)及び(CEL−1)の製造
実施例10において、誘電体組成物及び発光層用組成物を表1に記載のものに変えた以外は、同様の方法により分散型EL素子(EL−2)〜(EL−14)及び(CEL−1)を製造した。なお、各々の分散型EL素子において透明誘電体層と誘電体層は同一の誘電体組成物を使用した。得られた分散型EL素子の発光層、透明誘電体層及び誘電体層の特性並びに分散型EL素子の発光輝度について表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
評価試験
上記した発光層の耐電圧、誘電体層の静電容量及び比誘電率、並びに分散型EL素子の発光輝度は、下記試験方法により測定した。
【0074】
発光層の耐電圧の測定
ITO電極を形成したガラス基材(電極面積:1cm×1cm)上に実施例1〜9の各発光層用組成物をスピンコーターで膜厚が3μmとなるように塗布し、140℃、30分の条件で乾燥を行い、発光層膜を形成した。続いて発光層膜上に、前記ITO電極と同じ位置に重なるように金電極(電極面積:1cm×1cm)を蒸着により形成し、電極面積が1cmとなるコンデンサー状の試験体を作製した。試験体の電極それぞれに端子を当て、ピコアンメーター6487(ケースレイ社製、商品名、電流−電圧測定装置)に接続し、電圧を最大500Vまで1Vずつ上昇させながら、そのときの電流値を読み取った。電圧を上昇させている途中で電流値が2.5mAを越える際の電圧又は金電極が破壊され電流の測定が不能となる際の電圧を絶縁破壊電圧とした。この絶縁破壊電圧を膜厚で割って耐電圧を求めた。
【0075】
誘電体層の静電容量密度及び比誘電率の算出
・静電容量測定用試料の作成
ITO電極を形成したガラス基材(電極面積:1cm×1cm)上に、製造例3及び製造例4の各誘電体組成物をスピンコーターにより塗布し、140℃のホットプレート上で乾燥を行い、膜厚1μmの誘電体層を形成した。続いて、ITO電極と対になるように誘電体層上に金を蒸着し(電極面積:1cm×1cm)、静電容量測定用試料を作成した。
・静電容量の測定及び静電容量密度の算出
上記で作成した静電容量測定用試料について、AC5V、周波数1kHzの条件で静電容量を測定した。測定には、日置電機社製のLCR HiTester 3532−50を用いた。さらに、静電容量の値を電極面積で除して静電容量密度σを算出した。
・比誘電率の算出
先に求めた静電容量密度σの値と誘電体層の厚さd(m)から各試料の比誘電率を下記式(1)にて算出した。
比誘電率=(10,000×σ×d)/e 式(1)
真空の誘電率e=8.82×10−12(F/m)
【0076】
分散型EL素子の発光輝度測定
実施例11〜23の各分散型EL素子に周波数1kHzの交流実効電圧を印加し、100V、125V、150V、200V、250Vにおける初期発光輝度を測定した。発光輝度の測定は、コニカミノルタ社製の輝度計LS−110を用い、分散型EL素子の発光面の中心から垂直方向に5cm離れた位置で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型EL素子の発光層を形成するための発光層用組成物であって、局在型発光中心を持つ蛍光体粉末及び樹脂成分を含有しかつ形成される発光層が0.15MV/cm以上の耐電圧を有することを特徴とする発光層用組成物。
【請求項2】
局在型発光中心を持つ蛍光体粉末の体積基準による50%平均粒子径が0.2〜2.0μmである請求項1記載の発光層用組成物。
【請求項3】
透明導電層、発光層、誘電体層及び背面電極を有する分散型EL素子において、発光層が請求項1又は2に記載の発光層用組成物により形成される分散型EL素子。
【請求項4】
発光層の膜厚が0.3〜3.0μmである請求項3記載の分散型EL素子。
【請求項5】
発光層が局在型発光中心を持つ蛍光体粉末を体積濃度で1〜80%含有する請求項3又は4に記載の分散型EL素子。
【請求項6】
誘電体層が導電性微粒子及び樹脂成分を含有する請求項3〜5のいずれか1項に記載の分散型EL素子。
【請求項7】
導電性微粒子が金属酸化物からなる請求項6記載の分散型EL素子。
【請求項8】
導電性微粒子が表面処理されてなる請求項6又は7に記載の分散型EL素子。
【請求項9】
誘電体層が導電性微粒子を体積濃度で5〜40%含有する請求項6〜8のいずれか1項に記載の分散型EL素子。
【請求項10】
誘電体層の比誘電率が20以上である請求項3〜9のいずれか1項に記載の分散型EL素子。

【公開番号】特開2009−140624(P2009−140624A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312992(P2007−312992)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】