説明

発光性組成物、及びそれを用いた発光素子

【課題】
発光素子の発光層に含有させることで当該発光素子の輝度寿命を向上させることが可能な発光性組成物を提供すること。
【解決手段】
発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、下記式(1)を満たす、発光性組成物。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、前記共役系高分子化合物の発光スペクトルと、前記発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、前記発光性組成物における前記発光性有機化合物及び前記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部としたときの前記発光性有機化合物の含有量を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性組成物、それを含有する液状組成物、薄膜、発光素子、面状光源、照明及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代ディスプレイとして、有機EL素子を用いた有機ELディスプレイが注目されている。この有機EL素子は、発光層、電荷輸送層等の有機層を備える。有機EL素子の有機層には、低分子有機材料からなる場合、高分子有機材料からなる場合、及び、その両方を含有する組成物からなる場合がある。高分子有機材料を主な材料として使用すると、インクジェットやスピンコート等の塗布法を使用した際に均一な膜を形成することが出来るため、大型のディスプレイを作製する場合等に有利である(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−56909号公報
【特許文献2】国際特許公開第99/54385号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の高分子有機材料、特に青色で発光する材料では、発光素子に用いた場合の輝度寿命が十分であるとはいえなかった。
【0005】
そこで、本発明は、発光素子の発光層に含有させることで当該発光素子の輝度寿命を向上させることが可能な発光性組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記発光性組成物を含有する液状組成物及び薄膜、当該薄膜を備える発光素子、並びに、当該発光素子を備える面状光源及び照明を提供することを目的とする。さらに、本発明は、輝度寿命の向上した発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、正孔と電子との再結合で発光する発光層を有する発光素子について検討を行い、電荷輸送並びに電子及び正孔の再結合を担う化合物と、発光を担う化合物とを含有する発光層において、前者の化合物の発光スペクトルと後者の化合物の吸収スペクトルとの重なり積分の大きさが、発光素子の輝度寿命と相関関係にあることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、下記式(1)を満たす、発光性組成物を提供する。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、上記共役系高分子化合物の発光スペクトルと、上記発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、上記発光性組成物における上記発光性有機化合物及び上記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部としたときの上記発光性有機化合物の含有量を示す。なお、上記発光スペクトルは、上記共役系高分子化合物を360nmの光で励起したときに得られる発光スペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものである。]
【0008】
本発明に係る発光性組成物は、電荷輸送並びに電子及び正孔の再結合を担う化合物として共役系高分子化合物を含有し、発光を担う化合物として発光性有機化合物を含有する。
本発明に係る発光性組成物によれば、上記構成を備えることで、共役系高分子化合物において再結合した正孔と電子により形成される励起エネルギーを、発光性有機化合物が効率良く受け取ることができる。そのため、当該発光性組成物を含有する発光層を備える発光素子は、輝度寿命が向上したものとなる。
【0009】
本発明に係る発光性組成物は、上記共役系高分子化合物が、下記式(2)で表される繰返し単位を有することが好ましい。このような発光性組成物は、発光素子の発光層を構成する材料としてより好適であり、該発光性組成物を発光層に含有させることで、発光素子の発光効率を向上させることができ、かつ、輝度寿命を一層向上させることができる。
【化1】


[式中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、x及びyはそれぞれ独立に、0又は1を示す。但し、x+yは0又は1である。]
【0010】
また、本発明に係る発光性組成物は、上記共役系高分子化合物が、下記式(3)で表される繰返し単位を有することが好ましい。このような発光性組成物によれば、発光量子収率が高い発光層を得ることができる。
【化2】


[式中、R19及びR20はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示す。]
【0011】
また、本発明に係る発光性組成物は、上記共役系高分子化合物の最大の発光強度を示す発光極大が、440nm以下に存在することが好ましい。このような発光性組成物によれば、共役系高分子化合物において正孔と電子とが再結合した際に形成される励起エネルギーを、発光性有機化合物に効率良く受け渡すことができるため、エネルギー効率の良い発光層が提供される。
【0012】
また、本発明に係る発光性組成物は、上記発光性有機化合物が、420〜480nmに最大の発光極大を有する青色発光を示すことが好ましい。このような発光性組成物を含有する発光層を備える発光素子は、フルカラー表示に適した青色画素を得やすく、且つ発光効率が良好となる。
【0013】
また、本発明に係る発光性組成物は、上記青色発光が、青色蛍光発光であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る発光性組成物は、上記発光性有機化合物が、炭化水素芳香環が3個以上環縮合した構造を有することが好ましい。このような発光性有機化合物は、発光効率に優れるため、当該発光性有機化合物を含む発光性組成物によれば、発光効率に優れる発光素子を提供することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る発光性組成物は、上記発光性有機化合物及び前記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部としたときの上記発光性有機化合物の含有量が、0.002〜0.30質量部であることが好ましい。このような発光性組成物によれば、共役系高分子化合物において生じる励起エネルギーを、発光性有機化合物で効率良く受け取ることができる。そのため、当該発光性組成物を発光層に含有させることにより、発光素子の発光効率を向上させることができ、かつ、輝度寿命を一層向上させることができる。
【0016】
本発明はまた、上記発光性組成物と、当該発光性組成物の溶媒又は分散媒と、を含有する液状組成物を提供する。このような液状組成物によれば、上記発光性組成物を含有する薄膜を容易に製造することができる。
【0017】
本発明はまた、上記発光性組成物を含有する薄膜を提供する。このような薄膜は、上記発光性組成物を含有する発光層として好適に用いることができる。
【0018】
本発明はまた、陽極、陰極、及びこれらの間に設けられた上記発光性組成物を含有する層を備える発光素子を提供する。このような発光素子は、発光層として上記発光性組成物を含有する層を備えているため、輝度寿命に優れたものとなる。
【0019】
本発明はまた、上記発光素子を備える面状光源及び照明を提供する。このような面状光源や照明は、輝度寿命に優れる発光素子を用いているため、耐久性及びエネルギー効率に優れたものとなる。
【0020】
本発明はさらに、輝度寿命の向上した発光素子の製造方法であって、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、下記式(1)を満たす発光性組成物を、上記発光素子中の発光層に含有させる、製造方法を提供する。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、上記共役系高分子化合物の発光スペクトルと、上記発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、上記発光性組成物における上記発光性有機化合物及び上記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部としたときの上記発光性有機化合物の含有量を示す。なお、上記発光スペクトルは、上記共役系高分子化合物を360nmの光で励起したときに得られる発光スペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものである。]
【0021】
なお、上記発明は、発光素子の輝度寿命の向上方法であって、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、上記式(1)を満たす発光性組成物を、上記発光素子中の発光層に含有させる方法、と解釈することもできる。
上記発明はまた、輝度寿命に優れる発光素子を得るための発光性組成物の選別方法であって、発光性組成物として、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、上記式(1)を満たす発光性組成物を選別する、方法とも解釈することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発光素子の発光層に含有させることで当該発光素子の輝度寿命を向上させることが可能な発光性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記発光性組成物を含有する液状組成物及び薄膜、当該薄膜を備える発光素子、並びに、当該発光素子を備える面状光源及び照明を提供することができる。さらに、本発明によれば、輝度寿命の向上した発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で得られた、発光性有機化合物(A−3)のグラム吸光係数スペクトル及び共役系高分子化合物(B−1)の発光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1〜17、比較例1〜2及び参考例1で得られたf(g,h)×wに対する輝度寿命を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、メチル基を「Me」、フェニル基を「Ph」とそれぞれ表記する場合がある。
【0025】
<用語の説明>
以下、本明細書において共通して用いられる用語について、必要に応じて具体例を挙げて説明する。
【0026】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0027】
「C〜C」(x、yはx<yを満たす正の整数である)という用語は、この用語の直後に記載された官能基名に該当する部分構造の炭素原子数が、x〜y個であることを表す。すなわち、「C〜C」の直後に記載された有機基が、複数の官能基名を組み合わせて命名された有機基(例えば、C〜Cアルコキシフェニル基)である場合、複数の官能基名のうち「C〜C」の直後に記載された官能基名(例えば、アルコキシ)に該当する部分構造の炭素原子数が、x〜y個であることを示す。例えば、「C〜C12アルキル基」は炭素原子数が1〜12個であるアルキル基を示し、「C〜C12アルコキシフェニル基」は「炭素原子数が1〜12個であるアルコキシ基」を有するフェニル基を示す。
【0028】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基及び環状アルキル基(シクロアルキル基)のいずれであってもよい。アルキル基としては、直鎖状アルキル基及び環状アルキル基が好ましく、非置換のアルキル基及びハロゲン原子等で置換されたアルキル基が好ましい。
【0029】
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、複素環チオ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる(以下、「置換基」と言うときは、特記しない限り、同様のものを例示できる。)。
【0030】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0031】
アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。C〜C12アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基が挙げられる。
【0032】
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、直鎖状アルコキシ基、分岐状アルコキシ基及び環状アルコキシ基(シクロアルコキシ基)のいずれであってもよい。アルコキシ基としては、直鎖状アルコキシ基及び環状アルコキシ基が好ましく、非置換のアルコキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基等で置換されたアルコキシ基が好ましい。
【0033】
置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0034】
アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜12である。C〜C12アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基が挙げられる。
【0035】
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、直鎖状アルキルチオ基、分子鎖状アルキルチオ基及び環状アルキルチオ基(シクロアルキルチオ基)のいずれであってもよい。アルキルチオ基としては、直鎖状アルキルチオ基及び環状アルキルチオ基が好ましく、非置換のアルキルチオ基及びハロゲン原子等で置換されたアルキルチオ基が好ましい。
【0036】
置換基を有していてもよいアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0037】
アルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜12である。C〜C12アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基が挙げられる。
【0038】
アリール基は、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団であり、置換基を有していてもよい。アリール基としては、非置換のアリール基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリール基が好ましい。アリール基としては、縮合環を有するものや、ベンゼン環及び/又は縮合環が2個以上、単結合又は2価の有機基(例えば、ビニレン基等のアルキレン基)を介して結合したもの等が含まれる。アリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜60、より好ましくは6〜48、さらに好ましくは6〜30である。
【0039】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、2−フルオレニル基、ペンタフルオロフェニル基、ビフェニリル基、C〜C12アルコキシビフェニリル基、C〜C12アルキルビフェニリル基が挙げられ、中でも、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基、ビフェニリル基、C〜C12アルコキシビフェニリル基、C〜C12アルキルビフェニリル基が好ましい。
【0040】
〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、イソプロピルオキシフェニル基、ブチルオキシフェニル基、イソブチルオキシフェニル基、tert−ブチルオキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基が挙げられる。
【0041】
〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基が挙げられる。
【0042】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアリールオキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールオキシ基である。アリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6〜60、より好ましくは6〜48、さらに好ましくは6〜30である。
【0043】
置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、中でもC〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0044】
〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブチルオキシフェノキシ基、イソブチルオキシフェノキシ基、tert−ブチルオキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基が挙げられる。
【0045】
〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0046】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアリールチオ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールチオ基である。アリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6〜60、より好ましくは6〜48、さらに好ましくは6〜30である。置換基を有していてもよいアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0047】
アリールアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは、非置換のアリールアルキル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキル基である。アリールアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7〜60、より好ましくは7〜48、さらに好ましくは7〜30である。置換基を有していてもよいアリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基が挙げられる。
【0048】
アリールアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアリールアルコキシ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルコキシ基である。アリールアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは7〜60、より好ましくは7〜48、さらに好ましくは7〜30である。置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0049】
アリールアルキルチオ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアリールアルキルチオ基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキルチオ基である。アリールアルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは7〜60、より好ましくは7〜48、さらに好ましくは7〜30である。置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0050】
アルケニル基は、置換基を有していてもよく、直鎖状アルケニル基、分岐状アルケニル基及び環状アルケニル基のいずれであってもよい。アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜10である。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基が挙げられる。
【0051】
アリールアルケニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアリールアルケニル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルケニル基である。アリールアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは8〜60、より好ましくは8〜48、さらに好ましくは8〜30である。置換基を有していてもよいアリールアルケニル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C〜C12アルケニル基が挙げられ、中でもC〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基が好ましい。C〜C12アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基が挙げられる。
【0052】
アルキニル基は、置換基を有していてもよく、直鎖状アルキニル基、分岐状アルキニル基及び環状アルキニル基のいずれであってもよい。アルキニル基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜10である。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基が挙げられる。
【0053】
アリールアルキニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアリールアルキニル基及びハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基等で置換されたアリールアルキニル基である。アリールアルキニル基の炭素原子数は、好ましくは8〜60、より好ましくは8〜48、さらに好ましくは8〜30である。置換基を有していてもよいアリールアルキニル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C〜C12アルキニル基が挙げられ、中でもC〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基が好ましい。C〜C12アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−オクチニル基が挙げられる。
【0054】
1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団であり、置換基を有していてもよい。1価の複素環基としては、非置換の1価の複素環基及びアルキル基等の置換基で置換された1価の複素環基が好ましい。1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めずに、好ましくは4〜60、より好ましくは4〜30、さらに好ましくは4〜20である。複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素として、炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子、ヒ素原子等のヘテロ原子を含むものを言う。置換基を有していてもよい1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられ、中でもチエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基が好ましい。なお、1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0055】
複素環チオ基は、メルカプト基の水素原子が1価の複素環基で置換された基であり、置換基を有していてもよい。複素環チオ基としては、例えば、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジニルチオ基、ピラジニルチオ基、トリアジニルチオ基等のヘテロアリールチオ基が挙げられる。
【0056】
アミノ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアミノ基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群より選ばれる1又は2個の置換基で置換されたアミノ基(以下、「置換アミノ基」という。)である。該置換基はさらに置換基(以下、有機基の有する置換基が、さらに有する置換基を、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。置換アミノ基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めずに、好ましくは1〜60、より好ましくは2〜48、さらに好ましくは2〜40である。
【0057】
置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ビス(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、C〜C12アルキルフェニルアミノ基、ビス(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジニルアミノ基、ピラジニルアミノ基、トリアジニルアミノ基、フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0058】
シリル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のシリル基並びにアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群より選ばれる1〜3個の置換基で置換されたシリル基(以下、「置換シリル基」という。)である。置換基は二次置換基を有していてもよい。置換シリル基の炭素原子数は、二次置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは1〜60、より好ましくは3〜48、さらに好ましくは3〜40である。
【0059】
置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−イソプロピルシリル基、ジメチル−イソプロピルシリル基、ジエチル−イソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0060】
アシル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアシル基及びハロゲン原子等で置換されたアシル基である。アシル基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18、さらに好ましくは2〜16である。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0061】
アシルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアシルオキシ基及びハロゲン原子等で置換されたアシルオキシ基である。アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18、さらに好ましくは2〜16である。アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0062】
イミン残基は、式:H−N=C<及び式:−N=CH−の少なくとも一方で表される構造を有するイミン化合物から、この構造中の水素原子1個を除いた残基を意味する。このようなイミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン又はアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18、さらに好ましくは2〜16である。
【0063】
イミン残基としては、例えば、式:−CR=N−R又は式:−N=C(R(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を示し、Rは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を示す。但し、Rが2個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、また、2個のRは相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素原子数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。)で表される基が挙げられる。イミン残基の具体例としては、以下の構造式で示される基が挙げられる。
【0064】
【化3】

【0065】
アミド基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアミド基及びハロゲン原子等で置換されたアミド基である。アミド基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18、さらに好ましくは2〜16である。アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0066】
酸イミド基は、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子1個を除いて得られる残基を意味する。酸イミド基の炭素原子数は、好ましくは4〜20、より好ましくは4〜18、さらに好ましくは4〜16である。酸イミド基としては、例えば、以下に示す基が挙げられる。
【0067】
【化4】

【0068】
アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いてなる原子団を意味し、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6〜60、より好ましくは6〜48、さらに好ましくは6〜30であり、特に好ましくは6〜18である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。アリーレン基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基等のフェニレン基;2,7−ビフェニリレン基、3,6−ビフェニリレン基等のビフェニリレン基;1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基等のナフタレンジイル基;1,4−アントラセンジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセンジイル基、9,10−アントラセンジイル基等のアントラセンジイル基;2,7−フェナントレンジイル基等のフェナントレンジイル基;1,7−ナフタセンジイル基、2,8−ナフタセンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基等のナフタセンジイル基;2,7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基等のフルオレンジイル基;1,6−ピレンジイル基、1,8−ピレンジイル基、2,7−ピレンジイル基、4,9−ピレンジイル基等のピレンジイル基;3,9−ペリレンジイル基、3,10−ペリレンジイル基等のペリレンジイル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。これらのうち、好ましくは、非置換又は置換基を有しているフェニレン基、非置換又は置換基を有しているフルオレンジイル基である。
【0069】
2価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、置換基を有していてもよい。2価の複素環基としては、非置換の2価の複素環基及びアルキル基等で置換された2価の複素環基が好ましい。2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは4〜60、より好ましくは4〜30であり、さらに好ましくは4〜12である。
【0070】
2価の複素環基としては、例えば、2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;ベンゾ−2,1,3−チアジアゾール−4,7−ジイル基等のベンゾ−2,1,3−チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。これらのうち、好ましくは非置換又は置換基を有しているベンゾ−2,1,3−チアジアゾールジイル基、非置換又は置換基を有しているフェノキサジンジイル基、非置換又は置換基を有しているフェノチアジンジイル基である。なお、2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基が好ましい。
【0071】
<畳み込み積分:f(g,h)の定義>
本実施形態に係るf(g,h)は、共役系高分子化合物の発光スペクトルと、発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトルとを、それぞれ個別に測定して解析することにより求めることができる。ここで、共役系高分子化合物の発光スペクトルは、共役系高分子化合物を360nmで励起したときに得られるスペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものであり、厚さ30〜60nmの共役系高分子化合物からなる薄膜とした場合に、発光スペクトルを測定することによって得ることができる。また、発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトルは、発光性有機化合物を8×10−4質量%の濃度でトルエン溶媒に溶解させ、測定した吸収スペクトルから算出することができる。
【0072】
本実施形態に係るf(g,h)は、共役系高分子化合物の発光スペクトルと、発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトルとの200nm〜800nmの範囲での畳み込み積分を行うことで得られる。畳み込み積分は、200nmから1nm毎に800nmまで、それぞれ発光スペクトルから読み取られる発光強度とグラム吸光スペクトルから読み取られるグラム吸光係数(L/g・cm)との積を計算し、その積を足し合わせた値である。
【0073】
<発光性組成物>
本実施形態に係る発光性組成物は、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、下記式(1)を満たす。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、共役系高分子化合物の発光スペクトルと、発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、発光性組成物における発光性有機化合物及び共役系高分子化合物の総含有量1質量部に対する発光性有機化合物の含有割合を示す。なお、発光スペクトルは、共役系高分子化合物を360nmの光で励起したときに得られる発光スペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものである。]
【0074】
本実施形態に係る発光性組成物は、電荷輸送並びに電子及び正孔の再結合を担う化合物として共役系高分子化合物を含有し、発光を担う化合物として発光性有機化合物を含有する。本実施形態に係る発光性組成物によれば、上記構成を備えることで、共役系高分子化合物において再結合した正孔と電子により形成される励起エネルギーを、発光性有機化合物が効率良く受け取ることができる。そのため、当該発光性組成物を含有する発光層を備える発光素子は、本実施形態に係る発光性組成物以外の発光材料を用いた発光層を備える場合と比較して、輝度寿命が向上する。発光素子の輝度寿命が向上する理由は、必ずしも明らかではないが、前述の仕組みにより共役系高分子化合物が励起状態から化学劣化するのを抑制できているからと考えられる。
【0075】
本実施形態に係る発光性組成物においては、350nm〜500nmの範囲で、共役系高分子化合物の最も短波長側に存在する発光極大が、発光性有機化合物の最も短波長側に存在する発光極大よりも短波長側に存在する。このような共役系高分子化合物と発光性有機化合物とを組合せることにより、共役系高分子化合物において正孔と電子との再結合により形成される励起エネルギーを、発光性有機化合物が効率よく受け取ることができる。
【0076】
共役系高分子化合物及び発光性有機化合物のうち、350nm〜500nmの範囲でいずれかが二峰性の発光スペクトルを有する場合、以下のような態様が好ましい。
(i)発光性有機化合物が二峰性の発光スペクトルを示す場合;
共役系高分子化合物の発光強度が最大となる発光極大が、発光性有機化合物の短波長側の発光極大よりも短波長側に存在する。
(ii)共役系高分子化合物が二峰性の発光スペクトルを示す場合;
共役系高分子化合物の短波長側の発光極大が、発光性有機化合物の最も短波長側の発光極大よりも短波長側に存在する。
【0077】
式(1)における「f(g,h)×w」は、0.12以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましい。このような発光性組成物は、発光素子における発光層に含有させた際に、発光素子の輝度寿命を一層向上させることができる。
【0078】
本実施形態に係る発光性組成物において、共役系高分子化合物と発光性有機化合物との合計含有量を1質量部としたときの発光性有機化合物の含有量は、0.002〜0.3質量部であることが好ましく、0.01〜0.2質量部であることがより好ましく、0.03〜0.1質量部であることがさらに好ましい。すなわち、共役系高分子化合物と発光性有機化合物との合計質量を1としたときの発光性有機化合物の質量組成比が、0.002〜0.3であることが好ましく、0.01〜0.2であることがより好ましく、0.03〜0.1であることがさらに好ましい。発光性有機化合物の含有量が上記の下限値以上であると、共役系高分子化合物において生じる励起エネルギーを、発光性有機化合物により効率良く受け取ることができるとともに、発光素子の発光層に含有させた場合に輝度寿命が一層向上する。一方、発光性有機化合物の含有量が上記の上限値以下であると、濃度消光が生じにくくなり、発光効率が一層向上する。
【0079】
(発光性有機化合物)
本実施形態に係る発光性有機化合物は、420〜480nmに最大の発光極大を有する青色発光を示すものであることが好ましく、440〜470nmに最大の発光極大を有することがより好ましい。最大の発光極大が480nmより長波長側にあると、ディスプレイ等の表示装置に用いる際に色純度を低下してしまう場合がある。また、最大の発光強度が420nmより短波長側にあると、視感度が低いため実質的に発光効率が低下してしまうことがある。
【0080】
発光性有機化合物としては、式(1)を満たすものであれば、蛍光発光を有するものであっても、燐光発光を有するものであってもよい。
【0081】
燐光発光を有する発光性有機化合物としては、中心金属として重金属を含有する錯体が挙げられる。重金属として好ましくは、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウムである。このような発光性有機化合物としては、例えば、下記式(4)で表される錯体が挙げられる。
【0082】
【化5】

【0083】
蛍光発光を有する発光性有機化合物としては、炭化水素芳香環が2個以上環縮合した構造又は複素環構造を有する化合物が好ましく、炭化水素芳香環が2個以上環縮合した構造を有する化合物がより好ましい。
【0084】
炭化水素芳香環が2個以上環縮合した構造としては、例えば、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナンスレン骨格、トリフェニレン骨格、クリセン骨格、フルオランテン骨格、ベンゾフルオランテン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、アントラセン骨格、フェナンスレン骨格、フルオランテン骨格、ベンゾフルオランテン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格であり、より好ましくは、アントラセン骨格、ベンゾフルオランテン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格である。
【0085】
炭化水素芳香環が2個以上環縮合した構造には、一つ又は複数の基が結合していてもよく、当該基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。これら基のうち、好ましくは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基である。
【0086】
発光性有機化合物としては、例えば、下記式(5−1)、(5−2)、(5−3)、(5−4)、(5−5)、(5−6)、(5−7)、(5−8)、(5−9)、(5−10)又は(5−11)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化6】

【0088】
【化7】

【0089】
式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基又はカルボキシル基を示す。複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。最大の発光極大が480nmを超えない範囲において、隣接位の炭素原子に結合した複数のRはそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
【0090】
としては、発光性有機化合物の最大の発光極大が420nm〜480nmの間になるように、適切な基を選択することが好ましい。Rとしては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、スチリル基が好ましく、これらの基は置換基を有していてもよく、例えば、置換基としてはアルキル基及びアルコキシ基が、溶解性向上の観点から好ましい。Rとしては、具体的には、下記式(6−1)、(6−2)、(6−3)、(6−4)、(6−5)、(6−6)、(6−7)、(6−8)、(6−9)、(6−10)、(6−11)又は(6−12)で表される基が挙げられる。これらの基は、置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。
【0091】
【化8】

【0092】
上記式(6−1)、(6−2)、(6−3)、(6−4)、(6−5)、(6−6)、(6−7)、(6−8)、(6−9)、(6−10)、(6−11)又は(6−12)で表される基のうち、より具体的には、下記式(7−1)、(7−2)、(7−3)、(7−4)、(7−5)、(7−6)、(7−7)、(7−8)、(7−9)、(7−10)、(7−11)、(7−12)、(7−13)、(7−14)、(7−15)、(7−16)、(7−17)、(7−18)、(7−19)、(7−20)、(7−21)、(7−22)又は(7−23)で表される基が好ましい。
【0093】
【化9】

【0094】
【化10】

【0095】
発光性有機化合物は、式(1)を満足するためには吸収スペクトルの最も長波長側に存在する吸収極大が、長波長側にあることが好ましい。しかし、一般的に発光スペクトルは、吸収スペクトルよりも長波長側に存在するために、吸収極大が長波長になればなるほど最大の発光極大も長波長となる傾向がある。そのため、最大の発光極大が480nm以下であり且つ吸収極大を長波長側に有する化合物が好ましい。このような発光性有機化合物としては、例えば、下記式(8−1)、(8−2)、(8−3)、(8−4)、(8−5)、(8−6)、(8−7)、(8−8)、(8−9)、(8−10)、(8−11)、(8−12)、(8−13)、(8−14)、(8−15)、(8−16)又は(8−17)で表される化合物が挙げられる。
【0096】
【化11】

【0097】
【化12】

【0098】
【化13】

【0099】
【化14】

【0100】
(共役系高分子化合物)
本実施形態に係る共役系高分子化合物は、発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する。共役系高分子化合物としては、主鎖に繰返し単位としてアリーレン基を有し、当該アリーレン基間の50%以上が直接結合又は窒素原子、ビニレン基又はアセチレン基により連結されている共役系高分子化合物が挙げられる。
【0101】
共役系高分子化合物としては、例えば、特開2003−231741号公報、特開2004−059899号公報、特開2004−002654号公報、特開2004−292546号公報、US5708130、国際特許公開WO99/54385号パンフレット、国際特許公開WO00/46321号パンフレット、国際特許公開WO02/077060号パンフレット、「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸 共著、オーム社)111頁、月刊ディスプレイ(vol.9、No.9、2002年)47−51頁、「導電性高分子材料(シーエムシー出版)、導電性高分子の最新応用技術(シーエムシー出版)、導電性高分子の基礎と応用(株式会社アイピーシー、吉野勝美 編著)、導電性ポリマー(高分子学会 編集、吉村進一 著)、高分子EL材料(高分子学会 編集 大西敏博・小川珠美 著)に記載の共役系高分子化合物が挙げられる。
【0102】
共役系高分子化合物は、最大の発光強度を示す発光極大(最大の発光極大)が、440nm以下に存在することが好ましい。また、共役系高分子化合物は、正孔と電子とが再結合した際に形成される励起エネルギーを、発光性有機化合物に効率良く受け渡すことが好ましい。そのため、共役系高分子化合物の最大の発光極大が、発光性有機化合物の最大の発光極大よりも短波長側にあることが好ましい。さらに、充分に電荷バランスが保たれ、化学的安定性に優れ、且つエネルギーを効率良く発光性有機化合物に移すために、共役系高分子化合物が380nm〜440nmの間に発光極大を有することが好ましい。
【0103】
共役系高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が、好ましくは1×10〜1×10であり、より好ましくは1×10〜5×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、好ましくは1×10〜5×10であり、より好ましくは5×10〜1×10である。
【0104】
共役系高分子化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、これらの中間的な構造を有する共重合体(例えば、ブロック性を帯びたランダム共重合体)であってもよい。
【0105】
共役系高分子化合物は、正孔注入・輸送の観点から、正孔輸送性を有することが好ましい。正孔輸送性を有する共役系高分子化合物としては、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等の有機EL素子の正孔輸送材料として用いられる化合物から誘導される単位構造を、繰返し単位として含有する共役系高分子化合物が好ましい。共役系高分子化合物における当該単位構造の含有量は、全繰返し単位の合計質量100質量部に対して3〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。このような共役系高分子化合物によれば、発光性組成物の発光効率が一層向上する。
【0106】
共役系高分子化合物は、下記式(2)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【0107】
【化15】

【0108】
式中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、x及びyはそれぞれ独立に、0又は1を示す。但し、x+yは0又は1である。
【0109】
式(2)において、Ar、Ar、Ar、Arで表される基が置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換アミノ基、アシル基、シアノ基であり、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基である。
【0110】
式(2)のAr、Ar、Ar及びArの定義における「アリーレン基」は、上述のとおり芳香族炭化水素から水素原子2個を除いてなる原子団を意味し、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。このアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6〜60であり、より好ましくは6〜30であり、さらに好ましくは6〜18である。
【0111】
式(2)のAr、Ar、Ar及びArの定義における「アリーレン基」としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、9,10−アントラセンジイル基、2,7−フェナントレンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基、2,7−フルオレンジイル基等が好適である。
【0112】
式(2)のAr、Ar、Ar及びArの定義における「2価の複素環基」は、上述のとおりであり、炭素原子数が好ましくは4〜60であり、より好ましくは4〜20であり、さらに好ましくは4〜9である。当該「2価の複素環基」としては、2,5−チオフェンジイル基、N−メチル−2,5−ピロールジイル基、2,5−フランジイル基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル、3,7−フェノキサジンジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等が好適である。
【0113】
式(2)のAr、Ar、Ar及びArの定義における「アリーレン基」としては、2個の芳香環が単結合で連結した2価の基も挙げられる。このような基としては、下記式(9−1)、(9−2)、(9−3)で表される基が好適である。
【0114】
【化16】

【0115】
式(2)中、Ar及びArはそれぞれ独立に、好ましくは、置換基を有していてもよいアリーレン基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい1,3−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレンジイル基、上記式(9−1)で表される基又は置換基を有していてもよい2,6−ナフタレンジイル基であり、さらに好ましくは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基又は置換基を有していてもよい1,4−ナフタレンジイル基であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基である。
【0116】
式(2)中、Arは、好ましくは、置換基を有していてもよい1,3−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレンジイル基、置換基を有していてもよい2,7−フルオレンジイル基、置換基を有していてもよいベンゾ−2,1,3−チアジアゾール−4,7−ジイル基、置換基を有していてもよい3,7−フェノキサジンジイル基、置換基を有していてもよい上記式(9−1)で表される基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、置換基を有していてもよい1,4−ナフタレンジイル基、置換基を有していてもよい2,7−フルオレンジイル基又は上記式(9−1)で表される基であり、さらに好ましくは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基又は置換基を有していてもよい上記式(9−1)で表される基である。
【0117】
式(2)中、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、好ましくは、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、アルキル基又はアリール基であり、さらに好ましくは、アリール基である。
【0118】
式(2)で表される繰返し単位の好適な例としては、下記式(10−1)、(10−2)、(10−3)又は(10−4)で表される繰返し単位が挙げられる。
【0119】
【化17】

【0120】
式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を示す。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0121】
式(2)で表される繰返し単位のうち、下記式(11)で表される繰返し単位が好ましい。
【0122】
【化18】

【0123】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、C〜C20アルキル基、C〜C20アルコキシ基、炭素原子数7〜26のフェニルアルキル基、炭素原子数7〜26のフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数7〜26のアルキル基置換フェニル基、炭素原子数7〜26のアルコキシ基置換フェニル基、炭素原子数2〜21のアルキルカルボニル基、ホルミル基、炭素原子数2〜21のアルコキシカルボニル基又はカルボキシル基を示す。RとRは、上記の基を表す代わりに、一緒になって、環を形成していてもよい。s及びtはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、uは1又は2であり、vは0〜5の整数である。R、R及びRのうち少なくとも1種が複数存在する場合には、その複数存在する基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0124】
式(11)中のRとRが、一緒になって環を形成する場合、その環としては、例えば、置換基を有していてもよいC〜C14の複素環が挙げられる。複素環としては、例えば、モルホリン環、チオモルホリン環、ピロール環、ピペリジン環、ピペラジン環等が挙げられる。
【0125】
式(11)で表される繰返し単位としては、例えば、下記式(12−1)、(12−2)、(12−2)、(12−3)、(12−4)、(12−5)、(12−6)、(12−7)、(12−8)、(12−9)又は(12−10)で表される基が挙げられる。
【0126】
【化19】

【0127】
共役系化合物は、下記式(13)で表される繰返し単位をさらに含有することが好ましい。
−Ar− (13)
[式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基又は式(2)で表される基以外の置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。]
【0128】
式(13)のArの定義における「アリーレン基」は、上述のとおり、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いてなる原子団を意味し、独立したベンゼン環又は縮合環を持つものを含む。このアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6〜60であり、より好ましくは6〜30であり、さらに好ましくは6〜18である。
【0129】
式(13)のArの定義におけるアリーレン基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、5,12−ナフタセニレン基、2,7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基、2,6−キノリンジイル基、1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基、5,8−キノキサリンジイル基等が挙げられ、好ましくは、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−フルオレンジイル基、2,6−キノリンジイル基、1,4−イソキノリンジイル基又は5,8−キノキサリンジイル基であり、より好ましくは、1,4−フェニレン基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−フルオレンジイル基又は5,8−キノキサリンジイル基であり、さらに好ましくは、1,4−フェニレン基又は2,7−フルオレンジイル基であり、特に好ましくは2,7−フルオレンジイル基である。
【0130】
式(13)中のArの定義における「2価の複素環基」としては、4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等が挙げられ、好ましくは、4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基である。
【0131】
Arは、アリーレン基であることが好ましい。
【0132】
式(13)で表される繰返し単位としては、下記式(14−1)、(14−2)又は(14−3)で表される繰返し単位が挙げられる。
【0133】
【化20】

【0134】
式中、Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を示し、これらの基に含まれる水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。fは0〜4の整数を示す。fが2以上であるとき、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0135】
は、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、置換アミノ基、アシル基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、置換アミノ基、アシル基又は1価の複素環基であり、さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基であり、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。fは、好ましくは0〜2の整数である。
【0136】
【化21】

【0137】
式中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基を示し、g及びhはそれぞれ独立に0〜3の整数を示す。gが2以上であるとき、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、hが2以上であるとき、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは、−C(R)(R10)−、−C(R11)(R12)−C(R13)(R14)−、又は、−C(R15)=C(R16)−を表す。R、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。R及びRはそれぞれ独立に、好ましくは、アルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、アルキル基又はアリール基である。
【0138】
【化22】

【0139】
式中、R17及びR18はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を示す。これらの基に含まれる水素原子の一部又は全部は、フッ素原子で置換されていてもよい。R17及びR18はそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換アミノ基、アシル基又は1価の複素環基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基又は1価の複素環基であり、さらに好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくは、水素原子である。
【0140】
式(14−2)で表される繰返し単位のうち、下記式(3)で表される繰返し単位が好ましい。
【0141】
【化23】

【0142】
式中、R19及びR20はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示す。好ましくは、R19及びR20はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0143】
式(3)で表される繰返し単位としては、下記式(15−1)、(15−2)、(15−3)、(15−4)、(15−5)、(15−6)、(15−7)又は(15−8)で表される繰返し単位が挙げられる。
【0144】
【化24】

【0145】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、上記発光性組成物と、低分子化合物及び/又は非共役高分子からなる電荷輸送材料とを含有する。電荷輸送材料は、正孔輸送材料と電子輸送材料とに分類される。本実施形態に係る組成物は、正孔輸送材料及び電子輸送材料のうちいずれか一方を含有するものであってもよく、両方を含有するものであってもよい。
【0146】
正孔輸送材料としては、例えば、有機EL素子の正孔輸送材料として公知のものを用いることができ、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体及び8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体等が挙げられる。
【0147】
電荷輸送材料を構成し得る低分子化合物としては、低分子有機EL素子に用いられるホスト化合物や、電荷注入輸送化合物として用いられる化合物が挙げられ、具体的には、例えば、「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸共著、オーム社)107頁、月刊ティスプレイ(vol.9、No.9、2003年、26−30頁)、特開2004−244400号公報、特開2004−277377号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0148】
より具体的には、電荷輸送材料の低分子化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
【0149】
【化25】

【0150】
【化26】

【0151】
【化27】

【0152】
【化28】

【0153】
電荷輸送材料の高分子有機化合物としては、非共役系高分子化合物が挙げられる。非共役系高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0154】
<液状組成物>
本実施形態に係る液状組成物は、上記発光性組成物と、当該発光性組成物の溶媒又は分散媒と、を含有する。液状組成物に用いられる溶媒又は分散剤としては、液状組成物中の成分を均一に溶解又は分散し得て、且つ安定なものを選択して使用する。このような溶媒としては、例えば、塩素系溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等)、多価アルコール及びその誘導体(エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、アミド系溶媒(N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等)が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0155】
液状組成物をインクジェット法に適用する場合には、液状組成物の吐出性及びその再現性を良好にするために、液状組成物に公知の添加剤を添加してもよい。公知の添加剤としては、ノズルからの蒸発を押さえるための高沸点の溶媒(アニソール、ビシクロヘキシルベンゼン等)等が挙げられる。そして、このような公知の添加剤を含有する液状組成物は、25℃における粘度が1〜100mPa・sであることが好ましい。
【0156】
<発光素子>
本実施形態に係る発光素子は、陽極、陰極、及びこれらの間に設けられた上記発光性組成物を含有する層を備える。ここで、上記発光性組成物を含有する層は、少なくとも発光層として機能する。
【0157】
本実施形態に係る発光素子は、好適には、陽極と陰極とからなる一対の電極を備え、該電極間(陰極と陽極の間)に少なくとも一層の発光層を含む一(単層型)又は複数(多層型)の薄膜層が挟持されているものである。薄膜層の少なくとも1層は、上記発光性組成物を含有する。
【0158】
発光層における発光性組成物の含有量は、発光層全体の質量に対して、好ましくは10〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%である。本実施形態に係る発光素子は、発光層が、上記発光性組成物を発光材料として含有することが好ましい。
【0159】
発光素子が単層型である場合には、薄膜が発光層であり、この発光層が発光性組成物を含有する。また、発光素子が多層型である場合には、例えば、以下の層構成をとる。
(a)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/電子注入層(電子輸送層)/陰極
【0160】
発光素子の陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給するものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができる。具体的には、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン類、ポリチオフェン類(PEDOT等)、ポリピロール等の有機導電性材料、これらとITOとの積層物等が挙げられる。
【0161】
発光素子の陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給するものである。
陰極の材料としては、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を用いることができる。陰極の材料の具体例としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等)並びにそのフッ化物及び酸化物、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウム等)並びにそのフッ化物及び酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、合金及び混合金属類(ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等)、希土類金属(イッテルビウム等)、インジウムが挙げられる。
【0162】
発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。これらの層の材料には、公知の材料を選択して使用でき、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、これらを含む重合体が挙げられる。その他にも、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。これらの材料は1成分単独であっても複数の成分が併用されていてもよい。また、正孔注入層及び正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0163】
発光素子の電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであればよい。公知の材料を選択して使用でき、具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体が挙げられる。また、電子注入層及び電子輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0164】
本実施形態に係る発光素子において、電子注入層、電子輸送層の材料としては、絶縁体又は半導体の無機化合物も使用することもできる。電子注入層、電子輸送層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属化合物を使用できる。好ましいアルカリ金属カルコゲニドの具体例としては、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、CaSeが挙げられる。また、電子注入層、電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等が挙げられる。これら酸化物、窒化物及び酸化窒化物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0165】
本実施形態に係る発光素子においては、陰極と接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物が好ましい。
【0166】
発光素子の発光層は、電圧印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有するものである。発光素子の発光層は、上記発光性組成物を含有することが好ましい。発光層中の発光性組成物は、発光層全体の質量に対して、好ましくは10〜100質量%であり、より好ましくは50〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%である。本実施形態に係る発光素子は、発光層が、上記発光性組成物を発光材料として含有することが好ましい。
【0167】
発光素子では、上記各層の形成方法としては、公知の方法を使用できる。具体的には、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法(キャスティング法、スピンコート法、バーコート方、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等)等が挙げられる。
これらの中では、製造プロセスを簡略化できる点で、塗布で成膜することが好ましい。塗布法では、発光性組成物を溶媒に溶解させて塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布し、乾燥させることによって形成することができる。該塗布液中には、バインダーとして樹脂を含有させてもよく、該樹脂は溶媒に溶解状態とすることも、分散状態とすることもできる。樹脂としては、非共役系高分子化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、共役系高分子化合物(例えば、ポリオレフィン系高分子)を使用することができる。より具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂から目的に応じて選択できる。溶液は目的に応じて、酸化防止剤、粘度調整剤等を含有してもよい。
【0168】
発光素子の各層の好ましい厚さは、材料の種類や層構成によって異なり、一般的には厚さが薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり発光効率が悪くなるため、通常、1nm〜1μmが好ましい。
【0169】
発光素子の用途としては、面状光源、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッド等が挙げられる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動技術、駆動回路等を用い、セグンメント型、ドットマトリクス型等の構成を選択することができる。
【0170】
<発光素子の製造方法>
本実施形態に係る発光素子の製造方法は、輝度寿命の向上した発光素子の製造方法であって、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、下記式(1)を満たす発光性組成物を、上記発光素子中の発光層に含有させることを特徴とする。このような製造方法によれば、輝度寿命が向上した発光素子を製造することができる。なお、本実施形態に係る発光素子の製造方法における、発光性有機化合物及び共役系高分子化合物としては、上記と同様のものを使用することができる。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、共役系高分子化合物の発光スペクトルと、発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、発光性組成物における発光性有機化合物及び共役系高分子化合物の総含有量1質量部に対する発光性有機化合物の含有割合を示す。なお、発光スペクトルは、共役系高分子化合物を360nmの光で励起したときに得られる発光スペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものである。]
【0171】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、発光素子の製造方法として説明したが、本発明は、発光素子の輝度寿命の向上方法であって、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、上記式(1)を満たす発光性組成物を、上記発光素子中の発光層に含有させることを特徴とする、方法と解釈することもできる。
【0172】
また、本発明は、輝度寿命に優れる発光素子を得るための発光性組成物の選別方法であって、発光性組成物として、発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、上記式(1)を満たす発光性組成物を選別する、方法とも解釈することもできる。
【実施例】
【0173】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0174】
(数平均分子量及び重量平均分子量)
実施例において、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、島津製作所製、商品名:LC−10Avp)により求めた。測定する高分子化合物は、約0.5質量%の濃度になるようテトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)に溶解させ、GPCに30μL注入した。GPCの移動相にはTHFを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0175】
(NMR測定)
実施例において、NMR測定は、以下の条件で行った。
装置 : 核磁気共鳴装置、INOVA300(商品名)、バリアン社製
測定溶媒 : 重水素化クロロホルム
サンプル濃度 : 約1質量%
測定温度 : 25℃
【0176】
(高速液体クロマトグラフィー)
実施例において、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という。)は、以下の条件で行った。
装置 : LC−20A(商品名)、島津製作所製
カラム : Kaseisorb LC ODS−AM 4.6mmI.D.×100mm、東京化成製
移動相 : 0.1質量%酢酸含有水/0.1質量%酢酸含有アセトニトリル
検出器 : UV検出器、検出波長254nm
【0177】
(発光スペクトル測定)
実施例において、発光性有機化合物、及び共役系高分子化合物の発光スペクトルは、以下の条件で行った。
装置 : 分光蛍光光度計、FP−6500型、日本分光社製
測定溶媒 : トルエン
サンプル濃度 : 発光性有機化合物の場合には、0.8×10−3質量%のトルエン溶液、共役系高分子化合物は1.2質量%のトルエン溶液を用いて薄膜を作製した。
測定温度 : 25℃
【0178】
(グラム吸光スペクトル測定)
実施例において、発光性有機化合物のグラム発光スペクトルは、以下の条件で行った。
装置 : 紫外可視分光光度計、Cary 5E、バリアン社製
測定溶媒 : トルエン
サンプル濃度 : 8×10−4質量%
測定温度 : 25℃
【0179】
(ガスクロマトグラフィー)
実施例において、ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」という。)は、以下の条件で行った。
装置 :Agilent Technology社 6890N ネットワーク GC
カラム:BPX5 0.25mmI.D.×30m、SGE Analytical Science製
移動相:ヘリウム
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
【0180】
<発光性有機化合物の合成>
(合成例A−1)発光性有機化合物(A−1)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−1)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−1)」という。)を合成した。
【0181】
【化29】

【0182】
すなわち、100mLの3つ口フラスコに、2,6−ジ−tert−ブチル−9,10−ジブロモアントラセン(上記式(a−1)で表される化合物)0.97g(2.16mmol)、上記式(a−2)で表される化合物3.97g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液4.78g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン19.5mL、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)27mgを加え、105℃で2時間加熱した。その後、放冷して得られた溶液を、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。ろ液を分液し、有機層を水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製することによって、黄色固体として発光性有機化合物(A−1)1.7gを得た。
TLC−MS(DART、positive) : [M+H] 1371.8
【0183】
(合成例A−2)発光性有機化合物(A−2)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−2)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−2)」という。)を合成した。
【0184】
【化30】

【0185】
すなわち、500mLの3つ口フラスコに、2,6−ジ−tert−ブチル−9,10−ジブロモアントラセン(上記式(a−1)で表される化合物)1.21g(2.70mmol)、2−アントラセンボロン酸(上記式(a−3)で表される化合物)1.26g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液5.96g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン300mL、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)160mgを加え、105℃で7時間加熱した。その後、放冷すると、固体が析出した。この固体を、ろ取し、更にトルエンで再結晶することによって、黄色固体として発光性有機化合物(A−2)1.1gを得た。
TLC−MS(DART、positive) : [M+H] 643.3
【0186】
(合成例A−3)発光性有機化合物(A−3)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−3)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−3)」という。)を合成した。
【0187】
【化31】

【0188】
すなわち、100mLの3つ口フラスコに、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン(上記式(a−4)で表される化合物)0.38g(0.79mmol)、上記式(a−2)で表される化合物0.57g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液4.39g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン11.5mL、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)27mgを加え、105℃で2時間加熱した。その後、放冷して得られた溶液を、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。ろ液を分液し、有機層を水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製することによって、黄色固体として発光性有機化合物(A−3)0.60gを得た。
LC−MS(APPI、positive): [M+H] 945.5
【0189】
(合成例A−6)発光性有機化合物(A−6)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−6)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−6)」という。)を合成した。
【0190】
【化32】

【0191】
すなわち、100mLの3つ口フラスコに、化合物(a−10)0.20g(0.36mmol)、フェニルボロン酸0.21g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液1.56g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン2mL、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)2mgを加え、105℃に加熱しながら8時間攪拌した。得られた溶液を、室温まで冷却した後、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。ろ液を分液し、有機層を水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製することによって、黄色固体として発光性有機化合物(A−6)67mgを得た。
TLC−MS(DART、positive) : [M+H] 557.2
【0192】
(合成例A−7)発光性有機化合物(A−7)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−7)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−7)」という。)を合成した。
【0193】
【化33】

【0194】
すなわち、50mLの3つ口フラスコに、化合物(a−11)0.37g(0.70mmol)、化合物(a−12)0.90g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液1.55g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン15mL、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)25mgを加え、105℃で8時間攪拌した。得られた溶液を、室温まで冷却した後、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。ろ液を分液し、有機層を水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製することにより黄色固体として発光性有機化合物(A−7)を0.45g得た。
【0195】
(合成例A−8)発光性有機化合物(A−8)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−8)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−8)」という。)を合成した。
【0196】
【化34】

【0197】
すなわち、100mLの3つ口フラスコに、化合物(a−13)を0.20g(0.28mmol)、化合物(a−14)を0.45g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液1.46g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン3mL、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)17mgを加え、105℃で11時間攪拌した。得られた溶液を、室温まで冷却した後、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。ろ液を分液し、有機層を水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製することによって、黄色固体として発光性有機化合物(A−8)を0.21g得た。
LC−MS(APPI、positive):[M+H] 1525.5
【0198】
(合成例A−9)発光性有機化合物(A−9)の合成
以下の反応スキームに示すとおり、下記式(A−9)で表される発光性有機化合物(以下、「発光性有機化合物(A−9)」という。)を合成した。
【0199】
【化35】

【0200】
すなわち、500mLの3つ口フラスコに、2,6−ジ−tert−ブチル−9,10−ジブロモアントラセン1.21g(2.70mmol)、2−アントラセンボロン酸1.26g、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液5.96g(20質量%水溶液)を入れた後、フラスコ内の気体を窒素で置換した。そこに、トルエン300mL、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)160mgを加え、105℃で7時間加熱した。その後、放冷すると、固体が析出した。この固体を、ろ取し、更にトルエンで再結晶することによって、黄色固体として発光性有機化合物(A−9)を1.1g得た。
TLC−MS(DART、positive):[M+H] 643.3
【0201】
<共役系高分子化合物の合成>
(合成例B−1)共役系高分子化合物(B−1)の合成
200mLセパラブルフラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル(下記式(b−1)で表される化合物)3.182g(6.0mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(下記式(b−2)で表される化合物)2.632g(4.8mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルアニリン(下記式(b−3)で表される化合物)0.551g(1.2mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ社製)0.78gとトルエン60mLを加えた。窒素雰囲気下、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド4.3mgを加え95℃に加熱した。
【0202】
【化36】

【0203】
こうして得られた溶液に、17.5質量%炭酸ナトリウム水溶液16.5mLを滴下しながら105℃に加熱した後、3時間攪拌した。次にフェニルホウ酸0.732g、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(PdCl(PPh)4.2mgとトルエン60mLを加え、105℃で18時間攪拌した。水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物3.65g、イオン交換水36mLを加え、85℃で2時間攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水78mL(2回)、3質量%酢酸水溶液78mL(2回)、イオン交換水78mL(2回)の順番で洗浄した。
【0204】
有機層をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムにその溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後、乾燥させ、ポリマー(以下、「共役系高分子化合物(B−1)」という。)を3.23g得た。共役系高分子化合物(B−1)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.3×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.1×10であった。
【0205】
共役系高分子化合物(B−1)は、下記式(b−4)で表される繰返し単位と、下記式(b−5)で表される繰返し単位とを、90:10のモル比で有する重合体である。
【0206】
【化37】

【0207】
(合成例B−2)共役系高分子化合物(B−2)の合成
アルゴン雰囲気下、下記式:
【化38】


で表される化合物(0.987g、1.20mmol)と、
下記式:
【化39】


で表される化合物(1.082g、1.68mmol)と、
下記式:
【化40】


で表される化合物(3.284g、4.27mmol)と、
下記式:
【化41】


で表される化合物(3.107g、4.80mmol)と、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)(4.21mg)と、トルエン(145ml)とを混合し、105℃に加熱した。反応液に20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(22ml)を滴下し、3時間30分還流させた。反応後、そこに、フェニルホウ酸(74mg)、20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(22ml)を加え、さらに17時間還流させた。次いで、そこに、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。冷却後、有機層を、水(78ml)で2回、3質量%酢酸水溶液(78ml)で2回、水(78ml)で2回洗浄し、得られた溶液をメタノール(1000mL)に滴下、濾取することで沈殿物を得た。該沈殿物をトルエン(188ml)に溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを順番に通すことにより精製した。得られた溶液をメタノール(1000ml)に滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物を濾取し、乾燥させることにより、高分子化合物(以下、「共役系高分子化合物(B−2)」という。)を4.50g得た。共役系高分子化合物(B−2)のポリスチレン換算の数平均分子量は9.38×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.70×10であった。
【0208】
共役系高分子化合物(B−2)は、仕込み原料から求めた理論値では、下記式:
【化42】


で表される構成単位と、下記式:
【化43】


で表される構成単位と、下記式:
【化44】


で表される構成単位と、下記式:
【化45】


で表される構成単位とが、10:14:36:40のモル比で構成されてなるランダム共重合体である。
【0209】
<正孔輸送性高分子化合物の合成>
(合成例C−1)正孔輸送性高分子化合物(C−1)の合成
ジムロートを接続したフラスコに、下記式(c−1)で表される化合物5.25g(9.9mmol)、下記式(c−2)で表される化合物4.55g(9.9mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:アリコート(Aliquat)336、アルドリッチ社製)0.91g、及びトルエン69mlを加えてモノマー溶液を得た。窒素雰囲気下、モノマー溶液を加熱し、80℃で、酢酸パラジウム2mg、及びトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン15mgを加えた。得られたモノマー溶液に、17.5質量%炭酸ナトリウム水溶液9.8gを注加した後、110℃で19時間攪拌した。次に、そこへ、トルエン1.6mlに溶解させたフェニルホウ酸121mgを加え、105℃で1時間攪拌した。
【0210】
【化46】

【0211】
有機層を水層と分離した後、有機層にトルエン300mlを加えた。有機層を3質量%酢酸水溶液40ml(2回)、イオン交換水100ml(1回)の順番で洗浄し、水層と分離した。有機層にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物0.44g、トルエン12mlを加え、65℃で、4時間攪拌した。
【0212】
得られた反応生成物のトルエン溶液を、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに通液し、得られた溶液をメタノール1400mlに滴下したところ、沈殿物が生じたので、この沈殿物を濾過し、乾燥させ、固体を得た。この固体をトルエン400mlに溶解させ、メタノール1400mlに滴下したところ、沈殿物が生じたので、この沈殿物を濾過し、乾燥させ、重合体(以下、「正孔輸送性高分子化合物(C−1)」と言う。)を6.33g得た。正孔輸送性高分子化合物(C−1)のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.8×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.2×10であった。
【0213】
正孔輸送性高分子化合物(C−1)は、下記式(c−3)で表される繰返し単位と、下記式(c−4)で表される繰返し単位とを、1:1のモル比で有する重合体であると推測される。
【0214】
【化47】

【0215】
<有機EL素子の作製>
(実施例1)
スパッタ法により45nmの厚さでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、商品名:AI4083)を用いてスピンコートにより65nmの厚さで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥させた。
【0216】
次に、正孔輸送性高分子化合物(C−1)を0.7質量%のキシレン溶液の状態でスピンコートして、約20nmの厚さに成膜した。その後、ホットプレート上で180℃、60分間加熱した。
【0217】
次に、キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−3)の溶液とを、質量比で97:3となるように混合して、発光性組成物1を調製した。発光性組成物1の畳み込み積分f(g,h)は4.747であり、f(g,h)×wは0.142であった。図1に、トルエン溶液中に8×10−4質量%で溶解させた発光性有機化合物(A−3)のグラム吸光係数スペクトル及び、薄膜での共役系高分子化合物(B−1)の、最大の発光極大を1に規格化した発光スペクトルを示す。
【0218】
発光性組成物1をスピンコートにより2400rpmの回転速度で成膜した。厚さは約60nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で10分間乾燥させた後、陰極としてフッ化ナトリウムを約3nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、有機EL素子を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0219】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、この素子から発光性有機化合物(A−3)に由来する450nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、4.8Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.65cd/Aであった。
【0220】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は58.5時間後に半減した。
【0221】
(実施例2)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−3)の溶液とを、質量比で95:5となるように混合して、発光性組成物2を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物2の畳み込み積分f(g,h)は4.747であり、f(g,h)×wは0.237であった。
【0222】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、発光性有機化合物(A−3)に由来する450nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.0Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.39cd/Aであった。
【0223】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は82.65時間後に半減した。
【0224】
(実施例3)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−6)の溶液とを、質量比で97:3となるように混合して、発光性組成物3を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物3の畳み込み積分f(g,h)は7.719であり、f(g,h)×wは0.232であった。
【0225】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、発光性有機化合物(A−6)に由来する445nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.1Vから発光が開始し、5.5Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.33cd/Aであった。
【0226】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は76.3時間後に半減した。
【0227】
(実施例4)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−6)の溶液とを、質量比で99:1となるように混合して、発光性組成物4を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物4の畳み込み積分f(g,h)は7.719であり、f(g,h)×wは0.0772であった。
【0228】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、445nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.3Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.49cd/Aであった。
【0229】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は16.7時間後に半減した。
【0230】
(実施例5)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−7)の溶液とを、質量比で97:3となるように混合して、発光性組成物5を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物5の畳み込み積分f(g,h)は8.733であり、f(g,h)×wは0.262であった。
【0231】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、4.8Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.97cd/Aであった。
【0232】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は194.0時間後に半減した。
【0233】
(実施例6)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−7)の溶液とを、質量比で95:5となるように混合して、発光性組成物6を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物6の畳み込み積分f(g,h)は8.740であり、f(g,h)×wは0.437であった。
【0234】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.74cd/Aであった。
【0235】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は354.4時間後に半減した。
【0236】
(実施例7)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−7)の溶液とを、質量比で98:2となるように混合して、発光性組成物7を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物7の畳み込み積分f(g,h)は8.738であり、f(g,h)×wは0.175であった。
【0237】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.74cd/Aであった。
【0238】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は111.0時間後に半減した。
【0239】
(実施例8)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−7)の溶液とを、質量比で70:30となるように混合して、発光性組成物8を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物8の畳み込み積分f(g,h)は8.738であり、f(g,h)×wは2.621であった。
【0240】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、450nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、6.3Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は0.72cd/Aであった。
【0241】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は797.24時間後に半減した。
【0242】
(実施例9)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−8)の溶液とを、質量比で99:1となるように混合して、発光性組成物9を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物9の畳み込み積分f(g,h)は13.240であり、f(g,h)×wは0.132であった。
【0243】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.9Vから発光が開始し、4.5Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は3.45cd/Aであった。
【0244】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は120.58時間後に半減した。
【0245】
(実施例10)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−8)の溶液とを、質量比で97:3となるように混合して、発光性組成物10を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物10を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物10の畳み込み積分f(g,h)は13.240であり、f(g,h)×wは0.397であった。
【0246】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.8Vから発光が開始し、4.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は4.35cd/Aであった。
【0247】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は477.9時間後に半減した。
【0248】
(実施例11)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−9)の溶液とを、質量比で97:3となるように混合して、発光性組成物11を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物11の畳み込み積分f(g,h)は2.467であり、f(g,h)×wは0.0740であった。
【0249】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は0.95cd/Aであった。
【0250】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は15.33時間後に半減した。
【0251】
(実施例12)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−9)の溶液とを、質量比で98:2となるように混合して、発光性組成物12を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物12を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物12の畳み込み積分f(g,h)は2.467であり、f(g,h)×wは0.0493であった。
【0252】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、460nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.02cd/Aであった。
【0253】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は16.0時間後に半減した。
【0254】
(実施例13)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−6)の溶液とを、質量比で60:40となるように混合して、発光性組成物13を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物13を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物13の畳み込み積分f(g,h)は7.719であり、f(g,h)×wは3.088であった。
【0255】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、475nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.9Vから発光が開始し、6.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は0.88cd/Aであった。
【0256】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は231.3時間後に半減した。
【0257】
(実施例14)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−3)の溶液とを、質量比で80:20となるように混合して、発光性組成物14を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物14を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物14の畳み込み積分f(g,h)は4.747であり、f(g,h)×wは0.949であった。
【0258】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、450nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.7Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.03cd/Aであった。
【0259】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は324.1時間後に半減した。
【0260】
(実施例15)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−3)の溶液とを、質量比で90:10となるように混合して、発光性組成物15を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物15を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物15の畳み込み積分f(g,h)は4.747であり、f(g,h)×wは0.475であった。
【0261】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、450nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.4Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.34cd/Aであった。
【0262】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は187.8時間後に半減した。
【0263】
(実施例16)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−2)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−3)の溶液とを、質量比で95:5となるように混合して、発光性組成物16を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物16を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物16の畳み込み積分f(g,h)は2.970であり、f(g,h)×wは0.149であった。
【0264】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、445nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は2.7Vから発光が開始し、4.6Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は2.88cd/Aであった。
【0265】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は382.2時間後に半減した。
【0266】
(実施例17)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−2)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−7)の溶液とを、質量比で95:5となるように混合して、発光性組成物17を調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物17を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物17の畳み込み積分f(g,h)は6.346であり、f(g,h)×wは0.317であった。
【0267】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、455nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.0Vから発光が開始し、5.2Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は2.91cd/Aであった。
【0268】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は255.2時間後に半減した。
【0269】
(比較例1)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−1)の溶液とを、質量比で97:3となるように混合して、発光性組成物Aを調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物Aを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物Aの畳み込み積分f(g,h)は0.300であり、f(g,h)×wは0.009であった。
【0270】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、440nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.05Vから発光が開始し、5.8Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は0.76cd/Aであった。
【0271】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は3.1時間後に半減した。
【0272】
(比較例2)
キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液と、1.2質量%の濃度でキシレン溶媒中に溶解させた発光性有機化合物(A−2)の溶液とを、質量比で99:1となるように混合して、発光性組成物Bを調製した。発光性組成物1にかえて発光性組成物Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。発光性組成物Bの畳み込み積分f(g,h)は2.467であり、f(g,h)×wは0.0247であった。
【0273】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、440nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.05Vから発光が開始し、5.3Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は0.95cd/Aであった。
【0274】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は7.5時間後に半減した。
【0275】
(参考例1)
発光性組成物1にかえて、キシレン溶媒中に1.2質量%の濃度で溶解させた共役系高分子化合物(B−1)の溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。共役系高分子化合物(B−1)のみの畳み込み積分f(g,h)は0であり、f(g,h)×wは0であった。
【0276】
得られた有機EL素子に電圧を印加したところ、440nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は3.2Vから発光が開始し、6.0Vで1000cd/mの発光を示し、最大発光効率は1.18cd/Aであった。
【0277】
上記で得られた有機EL素子を初期輝度が100cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。その結果、輝度は3.3時間後に半減した。
【0278】
図2は、実施例1〜17、比較例1〜2及び参考例1で得られたf(g,h)×wに対する輝度寿命を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光性有機化合物と、
当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、
を含有し、下記式(1)を満たす、発光性組成物。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、前記共役系高分子化合物の発光スペクトルと、前記発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、前記発光性組成物における前記発光性有機化合物及び前記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部としたときの前記発光性有機化合物の含有量を示す。なお、前記発光スペクトルは、前記共役系高分子化合物を360nmの光で励起したときに得られる発光スペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものである。]
【請求項2】
前記共役系高分子化合物が、下記式(2)で表される繰返し単位を有する、請求項1に記載の発光性組成物。
【化1】


[式中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示し、x及びyはそれぞれ独立に、0又は1を示す。但し、x+yは0又は1である。]
【請求項3】
前記共役系高分子化合物が、下記式(3)で表される繰返し単位を有する、請求項1又は2に記載の発光性組成物。
【化2】


[式中、R19及びR20はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を示す。]
【請求項4】
前記共役系高分子化合物の最大の発光強度を示す発光極大が、440nm以下に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光性組成物。
【請求項5】
前記発光性有機化合物が、420〜480nmに最大の発光極大を有する青色発光を示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光性組成物。
【請求項6】
前記青色発光が、青色蛍光発光である、請求項5に記載の発光性組成物。
【請求項7】
前記発光性有機化合物が、炭化水素芳香環が3個以上環縮合した構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光性組成物。
【請求項8】
前記発光性有機化合物及び前記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部としたときの前記発光性有機化合物の含有量が、0.002〜0.30質量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光性組成物と、当該発光性組成物の溶媒又は分散媒と、を含有する、液状組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光性組成物を含有する、薄膜。
【請求項11】
陽極、陰極、及びこれらの間に設けられた請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光性組成物を含有する層を備える、発光素子。
【請求項12】
請求項11に記載の発光素子を備える、面状光源。
【請求項13】
請求項11に記載の発光素子を備える、照明。
【請求項14】
輝度寿命の向上した発光素子の製造方法であって、
発光性有機化合物と、当該発光性有機化合物の350nm〜500nmにおける発光極大より、短波長側に発光極大を有する共役系高分子化合物と、を含有し、下記式(1)を満たす発光性組成物を、
前記発光素子中の発光層に含有させる、製造方法。
f(g,h)×w≧0.04 (1)
[式中、f(g,h)は、前記共役系高分子化合物の発光スペクトルと、前記発光性有機化合物のグラム吸光係数スペクトル(L/g・cm)との200nm〜800nmの範囲、1nm毎での畳み込み積分を示し、wは、前記発光性組成物における前記発光性有機化合物及び前記共役系高分子化合物の合計含有量を1質量部したときの前記発光性有機化合物の含有量を示す。なお、前記発光スペクトルは、前記共役系高分子化合物を360nmの光で励起したときに得られる発光スペクトルを、350nm〜500nmにおける最大の発光強度を1として規格化したものである。]

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−174059(P2011−174059A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15468(P2011−15468)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】