説明

発光素子、照明装置および表示装置

【課題】広い波長帯域で良好に光を取り出すことができるとともに、単色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる発光素子ならびにこの発光素子を用いた照明装置および表示装置を提供する。
【解決手段】発光素子は、第1の電極11と第2の電極12との間に挟持された、単色の光を発光する発光層13aを1箇所含む有機層13と、発光層13aから発光された光を反射させ、第2の電極12側から射出させるための、第1の電極11側に設けられた第1の反射界面17と、第2の電極12側に第1の電極11から第2の電極12に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面18、第3の反射界面19および第4の反射界面20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子、照明装置および表示装置に関し、特に、有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)を利用した発光素子ならびにこの発光素子を用いた照明装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子(以下「有機EL素子」という。)は低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目され、盛んに研究開発が行われている。この有機EL素子は、一般に数十〜数百nm程度の厚さの発光層を含む有機層が反射性電極と透光性電極との間に挟持された構造を有している。このような有機EL素子において、発光層で発光された光は、素子構造中で干渉し外部に取り出される。従来、このような干渉を利用して有機EL素子の発光効率を向上させようという試みがなされている。
【0003】
特許文献1においては、発光層から透光性電極の方向に発せられた光と、反射性電極の方向に発せられた光との干渉を利用し、発光位置から反射層までの距離を発光波長の光が共振するように設定することにより発光効率を高めることが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、透光性電極と基板との界面での光の反射も考慮し、発光位置から反射性電極までの距離と、発光位置から透光性電極と基板との界面までの距離との両方を規定している。
【0005】
特許文献3においては、光が透光性電極と反射性電極との間で多重反射することにより起こる干渉を利用し、透光性電極と反射性電極との間の層の厚さを望みの波長の光が共振するように設定することにより発光効率を高めている。
【0006】
特許文献4においては、共振器構造を用いて発光効率を高めた発光素子を組み合わせた表示装置において白色の色度点の視野角特性の向上を図る手法として、有機層の厚さを制御することにより赤(R)緑(G)青(B)3色の減衰のバランスを制御する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記の従来の技術においては、発光効率を高めるために発光された光の干渉を利用する有機EL素子では、取り出される光hの干渉フィルタの帯域幅が狭くなると、発光面を斜め方向から見た場合に光hの波長が大きくシフトし、発光強度が低下するなど、発光特性の視野角依存性が高くなる。
【0008】
これに対し、特許文献5においては、帯域の狭い単色スペクトルを持つ有機発光素子の反射層による発光の位相と射出側に設けられた反射層一層による干渉を中心波長に対して逆位相になるように設定し、視野角による色相変化を抑えることが提案されている。この場合には、一つの素子の発光波長を一つとし、かつ反射界面を一つに限定することによって単色での輝度および視野角特性を維持できているが、色相の変化を抑えるほど十分な帯域はない。また、この帯域を広げようとする場合には、反射率を高くして相殺の度合いを高めることが必要となるが、その際には、効率の著しい低下を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−289358号公報
【特許文献2】特開2000−243573号公報
【特許文献3】国際公開WO01/039554号パンフレット
【特許文献4】特許第3508741号明細書
【特許文献5】特開2006−244713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本開示が解決しようとする課題は、広い波長帯域で良好に光を取り出すことができるとともに、単色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる発光素子を提供することである。
本開示が解決しようとする他の課題は、角度依存性が少なく、配光特性が良好でしかも高い生産性で容易に製造することができる照明装置を提供することである。
本開示が解決しようとするさらに他の課題は、視野角依存性が少なく高画質でしかも高い生産性で容易に製造することができる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光中心と前記第4の反射界面との間の光学距離をL4、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2、L3およびL4が以下の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子である。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
2L4/λ14+φ4/2π=m''+1/2 (5)
λ1−80<λ12<λ1+80 (6)
λ1−150<λ13<λ1+150 (7)
λ1−150<λ14<λ1+150 (8)
ただし、n、m、m’、m'':整数
λ1、λ11、λ12、λ13、λ14の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
φ4:各波長の光が第4の反射界面で反射される際の位相変化
【0012】
また、本開示は、
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光中心と前記第4の反射界面との間の光学距離をL4、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2、L3およびL4が前記の式(1)〜(8)を全て満足する照明装置である。
【0013】
また、本開示は、
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光中心と前記第4の反射界面との間の光学距離をL4、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2、L3およびL4が前記の式(1)〜(8)を全て満足する表示装置である。
【0014】
発光層の発光中心とは、その発光層の厚さ方向の発光強度分布のピークが位置する面を意味する。この発光中心は通常、発光層の厚さを二等分する面である。発光層から発光される単色の光は、典型的には、可視光領域の単色の光である。
【0015】
式(1)は、第1の反射界面と発光層の発光中心との間の光学距離を、発光層の発光スペクトルの中心波長の光が、第1の反射界面と発光層の発光中心との間における干渉によって強め合うように設定する式である。式(2)は、この場合の干渉波長の広帯域化のための条件である。式(3)は、発光層の発光中心と第2の反射界面との間の光学距離を、発光層の発光スペクトルの中心波長に対して干渉波長をずらしながら(λ12≠λ1)、強め合う条件を設定する式である。式(6)は、この場合の干渉波長の広帯域化のための条件である。式(4)、(5)は、第3の反射界面による光の反射および第4の反射界面による光の反射が、発光層の発光スペクトルの中心波長に対して干渉波長をずらしながら(λ13≠λ14≠λ1)、弱め合う条件を設定する式である。式(7)、(8)は、この場合の干渉波長の広帯域化のための条件である。式(1)、(3)、(4)、(5)のλ11、λ12、λ13、λ14は、式(2)、(6)、(7)、(8)によってλ1より求められる。
【0016】
n、m、m’、m''は必要に応じて選ばれる。発光素子から取り出すことができる光量を大きくするためにはn≦5とするのが好ましい。n、mは、最も好ましくはn=0かつm=0である。
【0017】
この発光素子では、発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークを可視光領域でほぼ平坦とすることができ、あるいは、全ての発光色の帯域の傾斜を互いにほぼ等しくすることができる。このため、この発光素子は、単色の光に対し、視野角が45度のときの輝度の低下が視野角が0度のときの輝度に対して30%以下、色度ずれΔuv≦0.015とすることができる。
【0018】
典型的には、第2の反射界面は、消衰係数が0ではない厚さ5nm以上の金属薄膜によって構成される。この金属薄膜は可視光の透過が可能な半透明反射層として用いることができる。典型的には、第3の反射界面および第4の反射界面は屈折率差によって構成される。
【0019】
必要に応じて、第1の反射界面、第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面に加えて、発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦性を調整するための第5の反射界面を設けてもよい。また、必要に応じて、第2の反射界面、第3の反射界面、第4の反射界面および第5の反射界面の少なくとも一つを複数の反射界面に分割してもよい。こうすることで、例えば、第2の反射界面による光の反射が強め合う波長帯域を拡大させたり、第3の反射界面による光の反射、第4の反射界面による光の反射および第5の反射界面による光の反射が弱め合う波長帯域を拡大させたりすることができる。これによって、干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦部を広げることができ、視野角特性の向上を図ることができる。
【0020】
この発光素子は上面発光型に構成してもよいし、下面発光型に構成してもよい。上面発光型の発光素子では、基板上に第1の電極、有機層および第2の電極が順次積層される。下面発光型の発光素子では、基板上に第2の電極、有機層および第1の電極が順次積層される。上面発光型の発光素子の基板は不透明であっても透明であってもよく、必要に応じて選ばれる。下面発光型の発光素子の基板は、第2の電極側から射出される光を外部に取り出すために透明とする。
【0021】
発光素子においては、信頼性の向上や採用する構成などの関係で反射層がさらに形成され、それによって反射界面がさらに形成される場合がある。その場合には、光学動作に必要な第4の反射界面、あるいは第5の反射界面、より一般的には最終反射界面までを形成した後、その上に少なくとも厚さ1μm以上の層を形成することによって、以降の干渉の影響をほとんど無視することが可能となる。この際の最終反射界面の外側の材質は、任意のものを使用することが可能で、発光素子の形態に応じて適宜選択される。具体的には、最終反射界面の外側が厚さ1μm以上の透明電極層、透明絶縁層、樹脂層、ガラス層、空気層などのいずれか一つまたは二つ以上によって形成されるが、これに限定されるものではない。
【0022】
照明装置および表示装置は従来公知の構成とすることができ、それらの用途や機能などに応じて適宜構成される。表示装置は、典型的な一つの例では、表示画素毎に対応した表示信号を発光素子に供給するための能動素子(薄膜トランジスタなど)が設けられた駆動基板と、この駆動基板と対向して設けられた封止基板とを有する。発光素子は駆動基板と封止基板との間に配置される。この表示装置は白色表示装置、白黒表示装置、カラー表示装置などのいずれのものであってもよい。カラー表示装置においては、典型的には、駆動基板および封止基板のうちの発光素子の第2の電極側の基板に第2の電極側から射出される光を透過するカラーフィルタが設けられる。
【0023】
また、本開示は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面および第3の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2およびL3が以下の式(1)〜(6)を全て満足する発光素子である。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
λ1−80<λ12<λ1+80 (5)
λ1−150<λ13<λ1+150 (6)
ただし、n、m、m’:整数
λ1、λ11、λ12、λ13の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
【0024】
また、本開示は、
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面および第3の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2およびL3が前記の式(1)〜(6)を全て満足する照明装置である。
【0025】
また、本開示は、
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面および第3の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2およびL3が前記の式(1)〜(6)を全て満足する表示装置である。
【0026】
これらの発光素子、照明装置および表示装置は、第1の反射界面、第2の反射界面および第3の反射界面は必須とするが、第4の反射界面は必須としない点で前記の発光素子、照明装置および表示装置と異なる。第4の反射界面は、発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦性を調整するために、必要に応じて設けられる。これらの発光素子、照明装置および表示装置のその他のことは、その性質に反しない限り、前記の発光素子、照明装置および表示装置に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、広い波長帯域で良好に光を取り出すことができるとともに、単色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる発光装置を実現することができる。
【0028】
また、本開示によれば、角度依存性が少ない、配光特性が良好でしかも高い生産性で容易に製造することができる照明装置および視野角依存性の少ない高画質でしかも高い生産性で容易に製造することができる表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施の形態による有機EL素子を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面による干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図3】第1の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面による干渉フィルタならびに第1の反射界面および第2の反射界面の合成干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図4】第1の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面、第2の反射界面および第3の反射界面の合成干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図5】第1の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面、第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面の合成干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図6】第1の実施の形態による有機EL素子の輝度の視野角特性を示す略線図である。
【図7】第1の実施の形態による有機EL素子の色度の視野角特性を示す略線図である。
【図8】λ1=575nmとしたときにλ11を(2)式の範囲内に設計した場合の図5と同様な分光透過率曲線を示す略線図である。
【図9】第1の実施の形態による有機EL素子の分光反射特性を示す略線図である。
【図10】第3の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面、第2の反射界面、第3の反射界面、第4の反射界面および第5の反射界面の合成干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図11】第3の実施の形態による有機EL素子の輝度の視野角特性を示す略線図である。
【図12】第3の実施の形態による有機EL素子の色度の視野角特性を示す略線図である。
【図13】実施例1による上面発光型有機EL素子を示す断面図である。
【図14】実施例2による下面発光型有機EL素子を示す断面図である。
【図15】第4の実施の形態による有機EL照明装置を示す断面図である。
【図16】第5の実施の形態による有機EL表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(有機EL素子)
2.第2の実施の形態(有機EL素子)
3.第3の実施の形態(有機EL素子)
4.第4の実施の形態(有機EL照明装置)
5.第5の実施の形態(有機EL表示装置)
【0031】
〈1.第1の実施の形態〉
[有機EL素子]
図1は第1の実施の形態による有機EL素子を示す。
図1に示すように、この有機EL素子においては、第1の電極11と第2の電極12との間に、単色の光を発光する発光層13aを1箇所含む有機層13が挟持されている。発光層13aの発光中心を符号Oで示す。発光層13aの上下の部分の有機層13には、必要に応じて、従来公知の有機EL素子と同様に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などが設けられる。この場合、第2の電極12は例えば可視光を透過する透明電極であり、この第2の電極12側から光が射出される。発光層13aは、例えば可視光領域の単色の光を発光するものである。発光層13aの発光波長は、この有機EL素子から発光させようとする光の色に応じて適宜選ばれる。有機層13と第2の電極12との間には、第1の電極11から第2の電極12に向かう方向に金属薄膜14、導電性の透明層15および導電性の透明層16が順次設けられている。これらの金属薄膜14、透明層15および透明層16は、発光層13aから発光する光に対して透明である。透明層15および透明層16は、必要に応じて二層以上の層により構成してもよい。第1の電極11、第2の電極12、有機層13、発光層13a、金属薄膜14、透明層15および透明層16は従来公知の材料により構成することができ、必要に応じて選択される。
【0032】
有機層13の屈折率は第1の電極11の屈折率と異なり、これらの屈折率の差により第1の電極11と有機層13との間に第1の反射界面17が形成されている。この第1の反射界面17は、必要に応じて第1の電極11から離れた位置に設けてもよい。この第1の反射界面17は、発光層13aから発光された光を反射させ、第2の電極12側から射出させる役割を有する。金属薄膜14は、消衰係数が0ではない厚さが5nm以上の金属材料により形成されている。この金属薄膜14と有機層13との間に第2の反射界面18が形成されている。透明層15の屈折率は透明層16の屈折率と異なり、これらの屈折率の差により透明層15と透明層16との間に第3の反射界面19が形成されている。また、透明層16の屈折率は第2の電極12の屈折率と異なり、これらの屈折率の差により透明層16と第2の電極12との間に第4の反射界面20が形成されている。
【0033】
図1には、L1、L2、L3およびL4を該当個所に記入した。この有機EL素子においては、式(1)〜(8)を全て満足するようにL1、L2、L3およびL4が設定されている。
【0034】
L1は、発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1の光が第1の反射界面15と発光層13aの発光中心Oとの間における干渉によって強め合うように設定される。L2は、発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1の光が第2の反射界面18と発光層13aの発光中心Oとの間における干渉によって強め合うように設定される。L3は、発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1の光が第3の反射界面19と発光層13aの発光中心Oとの間における干渉によって弱め合うように設定される。同様に、L4は、発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1の光が第4の反射界面20と発光層13aの発光中心Oとの間における干渉によって弱め合うように設定される。一例として、λ1=575nmである場合におけるこの状態を式で表すと次の通りであり、式(1)〜(4)を満たしている。このとき、発光層13aは0次(式(1)のn=0)の干渉が起きる位置にあることから、広帯域にわたって透過率が高く(後述の図2に示す、発光層13aに対する第1の反射界面(反射界面1と略記)17の干渉フィルタの透過率を参照)、式(2)のように干渉波長を発光スペクトルの中心波長λ1から大きくずらすことも可能である。
【0035】
2L1/λ11+φ1/2π=0 (1)’
ただし、
λ1−150=425<λ11=540<λ1+80=655nm (2)’
【0036】
ここで、φ1は、第1の電極11の複素屈折率N=n゜−jk(n゜:屈折率、k:消衰係数)のn゜、kと、この第1の電極11と接している有機層13の屈折率n0 とを用いて計算することができる(例えば、Principles of Optics, Max Born and Emil Wolf,1974(PERGAMON PRESS) などを参照)。有機層13や透明層15〜17などの屈折率は分光エリプソメトリー測定装置を用いて測定することが可能である。
【0037】
φ1の計算の具体例を以下に示す。第1の電極11がアルミニウム(Al)合金からなるとすると、波長575nm(第1の発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1に対応する)の光に対してn゜=0.908、k=5.927である。有機層13の屈折率n0 =1.75とすると
φ1=tan-1{(2n0 k/(n゜2 +k2 −n0 2 ))}
=tan-1(0.577)
となる。−2π<φ1≦0であることを考慮すると、φ1=−2.618ラジアンと求めることができる。このφ1の値を式(1)’に代入してL1を求めるとL1=101nmとなる。
【0038】
なお、第1の電極11の屈折率n゜が有機層13の屈折率n0 よりも大きいときは、φ1はさらにπラジアンだけシフトし、小さいときはシフト量は0である。
【0039】
このときの発光層13aの第1の反射界面17による干渉フィルタの状態は強め合う条件にあるため、分光透過率曲線は図2に示すようにピーク部分を持ち、光取出しが向上するが、斜め方向からの観察により、干渉フィルタの波長帯域が短波長方向へシフトし、輝度および色相変化が生じる。
【0040】
次に、第2の反射界面18を屈折率n0 =1.75の有機層13と例えば厚さ6.0nmの金属薄膜14との間に形成する。また、第3の反射界面19を透明層15(例えば、屈折率1.8)とこの透明層15と異なる屈折率(例えば、屈折率1.5)の透明層16との間に形成する。また、第4の反射界面19を透明層16とこの透明層16と異なる屈折率(例えば、屈折率1.8)の第2の電極12との間に形成する。屈折率1.8の透明層15および第2の電極12の材料としては、例えば、酸素の組成を選択した酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide: ITO)などを用いることができる。屈折率1.5の透明層15の材料としては、例えば、 を用いることができる。この場合、L2を例えば108nm、L3を例えば180nm、L4を例えば230nmと設定するとすると、第2の反射界面18による反射は強め合う条件(λ11=λ12あるいはλ11≒=λ12)、第3の反射界面19による光の反射および第4の反射界面20による光の反射は、中心波長λ1に対して干渉波長をずらしながら(λ13≠λ14≠λ1)、弱め合う条件である以下の条件
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)’
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)’
2L4/λ14+φ4/2π=m’’+1/2 (5)’
(λ12、λλ13、λ14の単位はnm)
を満たす。φ2、φ3は上述と同様にして計算することができる。
以上により、式(1)〜(8)の条件が全て満足される。
【0041】
図3に、第1の反射界面17および第2の反射界面(反射界面2と略記)18による干渉フィルタの分光透過率曲線を示す。この場合、第1の反射界面17と第2の反射界面18との波長条件が互いに近いため、波長550nm付近では透過率が向上し、増幅効果を発生している。しかしながら、分光透過率曲線のピークは強められるため、緑色の光をバランスよく取り出すことができない。さらに、分光透過率曲線に平坦な部分が得られていないため、視野角特性は輝度および色相とも著しい変化を示す。
【0042】
図4に、第1の反射界面17および第2の反射界面18に加えて第3の反射界面(反射界面3と略記)19の効果を入れた干渉フィルタの分光透過率曲線を示す。図4より、この状態では、まだ分光透過率曲線は完全に平坦とはなっていない。これは、屈折率差による反射界面19だけでは、反射強度は低く、金属薄膜14によって形成された強め合いを十分に相殺することができていないことに起因する。
【0043】
図5に、第1の反射界面17、第2の反射界面18および第3の反射界面19に加えてさらに第4の反射界面(反射界面4と略記)20の効果を入れた干渉フィルタの分光透過率曲線を示す。図5より、緑色の光の領域に、ほぼ平坦な干渉フィルタが形成されていることが分かる。また、この状態での緑色の光の輝度および色度の視野角特性を図6および図7に示す。図6および図7から明らかなように、45度の視野角において0度の視野角における輝度の85%以上を維持しており、色度ずれもΔuv≦0.015が実現されている。
【0044】
図5はλ11=540nmとしたときの計算結果であるが((2)’式参照)、λ11が(2)式の範囲内にあるときは同様な結果が得られる。すなわち、図8に、λ1=575nmとしたときに、λ11を(2)式の範囲内で設計した場合の干渉フィルタの分光透過率曲線を示す。図8に示すように、λ11が(2)式の範囲内にあるときは、緑色の光の領域に、ほぼ平坦な干渉フィルタが形成されていることが分かる。
【0045】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、有機EL素子は、第1の電極11と第2の電極12との間に挟持された有機層13が、単色の光、典型的には可視光領域の単色の光を発光する発光層13aを有し、第1の電極11側に第1の反射界面17が、光が射出される第2の電極12側に第2の反射界面18、第3の反射界面19および第4の反射界面20が形成されている。そして、図1に示す各距離L1、L2、L3およびL4が、式(1)〜(8)を全て満足するように設定されている。この結果、この有機EL素子は、干渉フィルタの透過率が単色の光、例えば緑色の光の波長帯域で高く、この波長帯域で良好に光を取り出すことができる。また、この有機EL素子は、例えば緑色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる。また、この有機EL素子は、透明層15、16の厚さを一定としても、発光層13aの厚さなどの設計により発光色を選択することができる。このため、発光色の異なる有機EL素子を製造する場合、例えば発光層13aの厚さを変えるだけで足りるので、発光色の異なる有機EL素子を高い生産性で容易に製造することができる。また、この有機EL素子は干渉フィルタの透過率が高いので、低消費電力である。
【0046】
第2の反射界面18は光を増幅する位置に形成されているが、この第2の反射界面18に厚さ5nm以上の金属薄膜14が形成されていることにより、マイクロキャビティ(微小共振器)の増幅効果に加えて、金属薄膜14の消衰係数により多重反射の際に吸収が起こることによって外光の反射抑制効果を付与することが可能である。このときの分光反射特性を図9に示す。加えて、この有機EL素子の光の射出側にカラーフィルターを設けると、さらに反射を抑制することが可能となる。この外光反射の抑制効果により、この有機EL素子は外光下でも鮮明な表示を行うことが可能である。
【0047】
〈2.第2の実施の形態〉
[有機EL素子]
第2の実施の形態による有機EL素子においては、第1の実施の形態による有機EL素子における第3の反射界面19および第4の反射界面20をそれぞれ前後二つの反射界面に分けることによって、式(4)、(5)で示される逆位相の干渉条件の波長帯域を広げる。すなわち、例えば、式(4)については、第3の反射界面19を前後にそれぞれΔだけ離れた二つの反射界面に分けると、L3がL3+Δ、L3−Δとなるため、式(4)が成立するλ13の帯域が広がる。式(5)についても同様である。
【0048】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、式(4)、(5)で示される逆位相の干渉条件の波長帯域を広げることができるので、有機EL素子の視野角特性のより一層の向上を図ることができるという利点を得ることができる。
【0049】
〈3.第3の実施の形態〉
[有機EL素子]
有機EL素子に広い視野角範囲が要求される場合には、干渉フィルタの分光透過率曲線に広帯域での平坦性が必要な場合がある。このような場合には、第3の反射界面19および第4の反射界面20による干渉の中心波長を互いに離すことで対応することになるが、それらの中心波長の差が大きくなると、干渉フィルタの分光透過率曲線におけるピークの平坦性が失われ、視野角特性の維持が困難となる。この対策として、第1の実施の形態による有機EL素子における第3の反射界面19および第4の反射界面20に加えて新たな第5の反射界面を設けることにより、視野角特性の改善が可能である。
【0050】
第5の反射界面に対しては、発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1±15nmの範囲で、強め合う条件が存在する。図10の(a)は、第5の反射界面がない第1の実施の形態による有機EL素子を示す。このとき、λ13およびλ14は、50nm以上の差を持たせて広帯域に対応させるため、干渉フィルタの分光透過率曲線は、その中央部に凹みを生じ、視野角が大きくなると凹凸を持つ輝度変動が発生する。
【0051】
これに対し、図10の(b)に示すように、第5の反射界面を設け、この第5の反射界面をこの発光層13aの発光スペクトルの中心波長に対して強め合う条件で設定すると、干渉フィルタの分光透過率曲線のピーク部が広帯域で平坦となることが分かる。
【0052】
第5の反射層を形成したこの第3の実施の形態による有機EL素子における緑色の光の輝度および色度の視野角特性を図11および図12に示す。図11および図12より、この有機EL素子によれば、第1の実施の形態による有機EL素子に比べて輝度および色度の視野角特性がさらに改善されていることが分かる。
【0053】
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、式(4)、(5)で示される逆位相の干渉条件の波長帯域を広げることができるので、有機EL素子の輝度および色度の視野角特性のより一層の向上を図ることができるという利点を得ることができる。
【0054】
〈実施例1〉
実施例1は第1の実施の形態に対応する実施例である。
図13は実施例1による有機EL素子を示す。この有機EL素子は上面発光型の有機EL素子である。図13に示すように、この有機EL素子においては、基板21上に下層から順に第1の電極11、有機層13、金属薄膜14、透明層15、透明層16および第2の電極12が順次積層され、第2の電極12上にパッシベーション膜22が設けられている。有機層13は発光層13aを含む。
【0055】
基板21は、例えば、透明ガラス基板や半導体基板(例えば、シリコン基板)などで構成され、フレキシブルなものであってもよい。第1の電極11は、反射層を兼ねたアノード電極として用いられるもので、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、白金(Pt)、金(Au)、クロム(Cr)、タングステン(W)などの光反射材料で構成されている。この第1の電極11は、厚さが100〜300nmの範囲に設定されていることが好ましい。第1の電極12は透明電極としてもよく、この場合は、基板20との間に第1の反射界面17を形成する目的で、例えばPt、Au、Cr、Wなどの光反射材料からなる反射層を設けるのが好ましい。
【0056】
有機層13は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層13a、電子輸送層および電子注入層が下層から順次積層された構造を有する。正孔注入層は、例えばヘキサアザトリフェニレン(HAT)などで構成される。正孔輸送層は、例えばα−NPD〔N,N'-di(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl-〔1,1'-biphenyl 〕- 4,4'-diamine〕で構成される。発光層13aは、赤、緑または青の発光色を有する発光材料からなる。赤の発光色を有する発光材料としては、例えば、ホスト材料としてのルブレンにピロメテンホウ素錯体をドーピングしたものを用いることができる。緑の発光色を有する発光材料としては、例えば、Alq3(トリスキノリノールアルミニウム錯体)を用いることができる。青の発光色を有する発光材料は、例えば次のようにして形成される。具体的には、ホスト材料としてADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)を蒸着し、膜厚20nmの膜を形成する。その際、ADNにジアミノクリセン誘導体をドーパント材料として相対膜厚比で5%ドーピングすることによりこの膜を青色発光層として用いることができる。電子輸送層は、例えばBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)などで構成される。電子注入層は、例えばフッ化リチウム(LiF)などで構成される。
【0057】
有機層13を構成する各層の厚さは、正孔注入層が1〜20nm、正孔輸送層が15〜100nm、発光層13aが5〜50nm、電子注入層および電子輸送層は15〜200nmの範囲に設定されることが好ましい。有機層13およびこれを構成する各層の厚さは、その光学的膜厚が前記の動作を可能とするような値に設定される。
【0058】
第2の反射界面18は、有機層13上に金属薄膜14を形成して形成する。第3の反射界面19は、透明層15と透明層16との屈折率差を利用して形成する。また、第4の反射界面20は、透明層16と第2の電極12との屈折率差を利用して形成する。これらの透明層15、16は1層の層からなる必要はなく、必要とされる平坦な波長帯域および視野角特性に応じて、屈折率が異なる2層以上の透明層の積層構造としてもよい。
【0059】
光が取り出される第2の電極12は、一般的に透明電極材料として用いられているITOやインジウムと亜鉛の酸化物などで構成され、カソード電極として用いられる。この第2の電極12の厚さは例えば30〜3000nmの範囲とする。
【0060】
パッシベーション膜22は透明誘電体で構成される。この透明誘電体は、必ずしも第2の電極12を構成する材料と同程度の屈折率とする必要はなく、第2の電極12により透明層16を兼用する場合には、この第2の電極12とパッシベーション膜21との界面をそれらの屈折率差を用いて第4の反射界面20として機能させることも可能である。このような透明誘電体としては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )、窒化シリコン(SiN)などを用いることができる。パッシベーション膜22の厚さは例えば500〜10000nmである。
【0061】
金属薄膜14は、例えば、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)あるいはそれらの合金などの金属材料により構成され、好適には、厚さ5nm以上に設定される。この金属薄膜14を反射層として用いることにより、通常の干渉よりも強度の高い増幅効果を付与することが可能である。また、この金属薄膜14により形成される第2の反射界面18により、広い波長帯域、高透過率を両立させることができる。
【0062】
〈実施例2〉
実施例2は第1の実施の形態に対応する実施例である。
図14は実施例2による有機EL素子を示す。この有機EL素子は下面発光型有機EL素子である。図14に示すように、この有機EL素子においては、透明な基板21上に下層から順にパッシベーション膜22、第2の電極12、透明層16、透明層15、金属薄膜14、有機層13および第1の電極11が順次積層されている。この場合、第2の電極12側から射出される光は基板21を透過して外部に取り出される。その他のことは実施例1と同様である。
【0063】
〈4.第4の実施の形態〉
[有機EL照明装置]
図15は第4の実施の形態による有機EL照明装置を示す。
図15に示すように、この有機EL照明装置においては、透明な基板30上に第1〜第3の実施の形態のいずれかによる第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3が搭載されている。この場合、これらの第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3は第2の電極12側を下にして基板30上に搭載されている。このため、第2の電極12側から射出される光は基板30を透過して外部に取り出される。これらの第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3を間に挟んで基板30と対向するように封止基板31が設けられており、この封止基板31および基板30の外周部が封止材32により封止されている。この有機EL照明装置の平面形状は必要に応じて選択されるが、例えば正方形または長方形である。図15においては、一組の第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3だけが示されているが、必要に応じて、複数組みを基板30上に所望の配置で搭載してもよい。この有機EL照明装置の第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3以外の構成の詳細および上記以外の構成は従来公知の有機EL照明装置と同様である。
【0064】
この第4の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態のいずれかによる第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第3の有機EL素子D3を用いている。このため、角度依存性が少ない、言い換えれば照明方向による強度や色の変化が極めて少ない、良好な配光特性を有する面光源となる有機EL照明装置を実現することができる。また、発光層13aの設計により第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3の発光色を選択することにより、白色発光のほか、種々の発光色を得ることができる。このため、演色性に優れた有機EL照明装置を実現することができる。また、この有機EL照明装置は高い生産性で容易に製造することができる。
【0065】
〈5.第5の実施の形態〉
[有機EL表示装置]
図16は第5の実施の形態による有機EL表示装置を示す。この有機EL表示装置はアクティブマトリクス型である。
図16に示すように、この有機EL表示装置においては、駆動基板40と封止基板41とが互いに対向して設けられ、これらの駆動基板40および封止基板41の外周部が封止材42により封止されている。駆動基板40においては、例えば透明ガラス基板上に第1〜第3の実施の形態のいずれかによる第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第3の有機EL素子D3からなる画素が二次元アレイ状に形成されている。駆動基板40上には、各画素毎に画素駆動用の能動素子としての薄膜トランジスタが形成されている。駆動基板40上にはさらに、各画素の薄膜トランジスタを駆動するための走査線、電流供給線およびデータ線が縦横に形成されている。各画素の薄膜トランジスタには表示画素毎に対応した表示信号が供給され、この表示信号に応じて画素が駆動され、画像が表示される。この有機EL表示装置の第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3以外の構成の詳細および上記以外の構成は従来公知の有機EL表示装置と同様である。
【0066】
この有機EL表示装置は、白黒の表示装置だけでなく、カラー表示装置としても用いることができる。この有機EL表示装置をカラー表示装置として用いる場合には、駆動基板40側、具体的には例えば第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第1の有機EL素子D3の第2の電極12と駆動基板40との間にRGBのカラーフィルタが設けられる。
【0067】
この第5の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態のいずれかによる第1の有機EL素子D1、第2の有機EL素子D2および第3の有機EL素子D3を用いている。このため、輝度および色相の視野角による変動が極めて少ない高画質の有機EL表示装置を実現することができる。また、この有機EL表示装置は高い生産性で容易に製造することができる。
【0068】
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
11…第1の電極、12…第2の電極、13…有機層、13a…発光層、14…金属薄膜、15…透明層、16…透明層、17…第1の反射界面、18…第2の反射界面、19…第3の反射界面、20…第4の反射界面、21…基板、22…パッシベーション膜、30…基板、31……封止基板、32…封止材、40…駆動基板、41…封止基板、42…封止材、O…発光位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光中心と前記第4の反射界面との間の光学距離をL4、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2、L3およびL4が以下の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
2L4/λ14+φ4/2π=m''+1/2 (5)
λ1−80<λ12<λ1+80 (6)
λ1−150<λ13<λ1+150 (7)
λ1−150<λ14<λ1+150 (8)
ただし、n、m、m’、m'':整数
λ1、λ11、λ12、λ13、λ14の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
φ4:各波長の光が第4の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項2】
前記発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークが可視光領域でほぼ平坦または傾斜が互いにほぼ等しい請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
視野角が45度のときの輝度の低下が視野角が0度のときの輝度に対して30%以下、色度ずれΔuv≦0.015である請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第2の反射界面は消衰係数が0ではない厚さ5nm以上の金属薄膜によって構成され、前記第3の反射界面および前記第4の反射界面は屈折率差によって構成されている請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦性を調整するための第5の反射界面をさらに有する請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第2の反射界面、前記第3の反射界面、前記第4の反射界面および前記第5の反射界面の少なくとも一つが複数の反射界面に分割されている請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
n=0かつm=0である請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
基板上に前記第1の電極、前記有機層および前記第2の電極が順次積層されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第2の電極側に設けられた最終反射界面の外側が厚さ1μm以上の透明電極層、透明絶縁層、樹脂層、ガラス層または空気層によって形成されている請求項8に記載の発光素子。
【請求項10】
基板上に前記第2の電極、前記有機層および前記第1の電極が順次積層されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
前記第2の電極側に設けられた最終反射界面の外側が厚さ1μm以上の透明電極層、透明絶縁層、樹脂層、ガラス層または空気層によって形成されている請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光中心と前記第4の反射界面との間の光学距離をL4、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2、L3およびL4が以下の式(1)〜(8)を全て満足する照明装置。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
2L4/λ14+φ4/2π=m''+1/2 (5)
λ1−80<λ12<λ1+80 (6)
λ1−150<λ13<λ1+150 (7)
λ1−150<λ14<λ1+150 (8)
ただし、n、m、m’、m'':整数
λ1、λ11、λ12、λ13、λ14の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
φ4:各波長の光が第4の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項13】
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面、第3の反射界面および第4の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光中心と前記第4の反射界面との間の光学距離をL4、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2、L3およびL4が以下の式(1)〜(8)を全て満足する表示装置。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
2L4/λ14+φ4/2π=m''+1/2 (5)
λ1−80<λ12<λ1+80 (6)
λ1−150<λ13<λ1+150 (7)
λ1−150<λ14<λ1+150 (8)
ただし、n、m、m’、m'':整数
λ1、λ11、λ12、λ13、λ14の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
φ4:各波長の光が第4の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項14】
表示画素毎に対応した表示信号を前記発光素子に供給するための能動素子が設けられた駆動基板と、この駆動基板と対向して設けられた封止基板とを有し、前記発光素子が前記駆動基板と前記封止基板との間に配置されている請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記駆動基板および前記封止基板のうちの前記発光素子の前記第2の電極側の基板に前記第2の電極側から射出される光を透過するカラーフィルタが設けられている請求項14に記載の表示装置。
【請求項16】
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面および第3の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2およびL3が以下の式(1)〜(6)を全て満足する発光素子。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
λ1−80<λ12<λ1+80 (5)
λ1−150<λ13<λ1+150 (6)
ただし、n、m、m’:整数
λ1、λ11、λ12、λ13の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項17】
前記発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークが可視光領域でほぼ平坦または傾斜が互いにほぼ等しい請求項16に記載の発光素子。
【請求項18】
視野角が45度のときの輝度の低下が視野角が0度のときの輝度に対して30%以下、色度ずれΔuv≦0.015である請求項17に記載の発光素子。
【請求項19】
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面および第3の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2およびL3が以下の式(1)〜(6)を全て満足する照明装置。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
λ1−80<λ12<λ1+80 (5)
λ1−150<λ13<λ1+150 (6)
ただし、n、m、m’:整数
λ1、λ11、λ12、λ13の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項20】
互いに異なる単色の光を発光する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色の光を発光する発光層を1箇所含む有機層と、
前記発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次設けられた第2の反射界面および第3の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記発光層の発光中心との間の光学距離をL1、前記発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL2、前記発光中心と前記第3の反射界面との間の光学距離をL3、前記発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1としたとき、L1、L2およびL3が以下の式(1)〜(6)を全て満足する表示装置。
2L1/λ11+φ1/2π=n(ただし、n≧0) (1)
λ1−150<λ11<λ1+80 (2)
2L2/λ12+φ2/2π=m (3)
2L3/λ13+φ3/2π=m’+1/2 (4)
λ1−80<λ12<λ1+80 (5)
λ1−150<λ13<λ1+150 (6)
ただし、n、m、m’:整数
λ1、λ11、λ12、λ13の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
φ3:各波長の光が第3の反射界面で反射される際の位相変化

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−195226(P2012−195226A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59666(P2011−59666)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】