説明

発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置

【課題】駆動電圧が低い状態であっても高輝度発光が可能であり、且つ長寿命な発光素子を提供することを課題の一とする。
【解決手段】発光素子は、陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、陽極からm(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層とm+1番目のEL層の間には、m番目のEL層と接する第1のドナー性物質を含む第1の層と、第1の層と接する電子輸送性物質及び第2のドナー性物質を含む第2の層と、第2の層及びm+1番目のEL層と接する正孔輸送性物質及びアクセプター性物質を含む第3の層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に発光層を有する発光素子に関する。また、該発光素子を用いた発光装置、並びに該発光装置を用いた電子機器及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物や無機化合物を発光物質として用いた発光素子の開発が盛んである。特に、一対の電極間に発光物質を含む発光層を有する構造のエレクトロルミネッセンス(以下、ELという)素子と呼ばれる発光素子は、薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、EL素子を用いたディスプレイは、コントラストや画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。さらに、EL素子は面状光源であるため、液晶ディスプレイのバックライトや照明等の光源としての応用も考えられている。
【0003】
EL素子は、一対の電極と、一対の電極間に設けられた発光物質を含む発光層とを有する。当該EL素子は、発光層に電流を流すことにより発光物質が励起し、所定の色を発光することができる。EL素子の発光輝度を高める為には、発光層に高電流を流すことが効果的である。しかしながら、EL素子に大電流を流すことによって、消費電力が増大する。また、発光層に大電流を流すことにより、EL素子の劣化を早めることにもなる。
【0004】
そこで、複数の発光層を積層した発光素子が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、複数の発光ユニット(以下、本明細書においてEL層とも表記する)を有し、各発光ユニットが電荷発生層によって仕切られた発光素子を開示している。より具体的には、第1の発光ユニットの電子注入層として機能する金属ドーピング層上に5酸化バナジウムよりなる電荷発生層が設けられ、さらに当該電荷発生層上に第2の発光ユニットが設けられた構造の発光素子を開示している。特許文献1で開示される発光素子は、電流密度が同じ電流を流した際に、1つの発光層を有する発光素子と比較して、高輝度発光することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、高輝度発光が可能な発光素子を提供することを課題の一とする。
【0007】
また、本発明の一態様は、長寿命の発光素子を提供することを課題の一とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、低電圧駆動が可能な発光素子を提供することを課題の一とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、消費電力が低減された発光装置を提供することを課題の一とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、消費電力が低減された電子機器又は照明装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、陽極からm(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層とm+1番目のEL層の間には、m番目のEL層と接する、第1のドナー性物質を含む第1の層と、第1の層と接する、電子輸送性物質及び第2のドナー性物質を含む第2の層と、第2の層及びm+1番目のEL層と接する、正孔輸送性物質及びアクセプター性物質を含む第3の層と、を有する発光素子である。
【0012】
また、本発明の一態様は、陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、陽極からm(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層とm+1番目のEL層の間には、m番目のEL層と接する、第1の電子輸送性物質及び第1のドナー性物質を含む第1の層と、第1の層と接する、第1の電子輸送性物質よりも最低空分子軌道準位が低い第2の電子輸送性物質及び第2のドナー性物質を含む第2の層と、第2の層及びm+1番目のEL層と接する、正孔輸送性物質及びアクセプター性物質を含む第3の層と、を有する発光素子である。
【0013】
また、本発明の一態様は、前述の発光素子を用いて作製された発光装置である。
【0014】
また、本発明の一態様は、前述の発光装置を含む電子機器である。
【0015】
また、本発明の一態様は、前述の発光装置を含む照明装置である。なお、本明細書において照明装置とは、点灯、消灯を制御することが可能な光源であり、情景、視対象物とその周辺をよく見えるように照らす、又は視覚信号によって情報を伝達するなど、光を人間生活に役立たせることを目的とする装置である。
【0016】
なお、本明細書において、第1または第2などとして付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様の発光素子は、複数のEL層を有する。そのため、高輝度発光が可能である。
【0018】
また、本発明の一態様の発光素子は、複数のEL層を有する。そのため、当該発光素子が高輝度発光を行った際の寿命を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一態様の発光素子は、複数のEL層間のキャリアの移動を良好に行うことが可能な構成を有する。そのため、当該発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0020】
また、本発明の一態様の発光装置は、駆動電圧が低減された発光素子を有する。そのため、当該発光装置の消費電力を低減することができる。
【0021】
また、本発明の一態様の電子機器又は照明装置は、消費電力が低減された発光装置を有する。そのため、当該電子機器又は当該照明装置の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1で説明する発光素子の素子構造及びバンド図の一例を示す図。
【図2】実施の形態2で説明する発光素子の素子構造及びバンド図の一例を示す図。
【図3】実施の形態3で説明する発光素子の素子構造及びバンド図の一例を示す図。
【図4】実施の形態4で説明する発光素子の素子構造の一例を示す図。
【図5】実施の形態5で説明する発光素子の素子構造の一例及び発光スペクトルを示す図。
【図6】実施の形態6で説明するアクティブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図7】実施の形態6で説明するパッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図8】実施の形態7で説明する電子機器を示す図。
【図9】実施の形態8で説明する照明装置を示す図。
【図10】実施の形態8で説明する照明装置を示す図。
【図11】実施例1及び2で説明する発光素子の素子構造を示す図。
【図12】実施例1で説明する発光素子の特性を示す図。
【図13】実施例1で説明する発光素子の特性を示す図。
【図14】実施例2で説明する発光素子の特性を示す図。
【図15】実施例2で説明する発光素子の特性を示す図。
【図16】実施例3で説明する発光素子の特性を示す図。
【図17】実施例3で説明する発光素子の特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、発光素子の一態様について図1を用いて説明する。
【0025】
図1(A)に示す発光素子は、一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107を有する。加えて、当該発光素子は、陽極101側から、第1のEL層103と接する電子注入バッファー層104、電子注入バッファー層104と接する電子リレー層105、並びに電子リレー層105及び第2のEL層107と接する電荷発生層106を有する。
【0026】
電子注入バッファー層104は、第1のEL層103に電子を注入する際の注入障壁を緩和し、第1のEL層103への電子注入効率を高めることを目的とした層である。本実施の形態では、電子注入バッファー層104は、ドナー性物質を含んで構成される。
【0027】
電子リレー層105は、電子注入バッファー層104へ電子を速やかに送ることも目的とした層である。本実施の形態では、電子リレー層105は、電子輸送性物質及びドナー性物質を含んで構成される。なお、電子リレー層105に適用される電子輸送性物質は、高い電子輸送性を有することに加えて、そのLUMO(最低空分子軌道:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位が、本実施の形態において後述する第1のEL層103のLUMO準位と電荷発生層106におけるアクセプター性物質のアクセプター準位の間の準位を占めるような物質である。具体的には、電子リレー層105に適用される電子輸送性物質として、LUMO準位が−5.0eV以上の物質を用いるのが好ましい。さらに、電子リレー層105に適用される電子輸送性物質として、LUMO準位が−5.0eV以上−3.0eV以下の物質を用いるのがより好ましい。
【0028】
電荷発生層106は、発光素子のキャリアである正孔及び電子を発生させることを目的とした層である。本実施の形態では、電荷発生層106は、正孔輸送性物質及びアクセプター性物質を含んで構成される。
【0029】
図1(B)に示す図は、図1(A)の素子構造におけるバンド図を表す。図1(B)において、111は陽極101のフェルミ準位、112は陰極102のフェルミ準位、113は第1のEL層103のLUMO準位、114は電子リレー層105におけるドナー性物質のドナー準位、115は電子リレー層105における電子輸送性物質のLUMO準位、116は電荷発生層106におけるアクセプター性物質のアクセプター準位、117は第2のEL層107のLUMO準位を示す。
【0030】
図1(B)において、電荷発生層106で発生した電子は、電子リレー層105における電子輸送性物質のLUMO準位に遷移する。さらに、電子注入バッファー層104を介して第1のEL層103のLUMO準位へと遷移する。その後、第1のEL層103において、陽極101から注入された正孔と、電荷発生層106から注入された電子とが再結合する。これにより、第1のEL層103が発光する。同様に、第2のEL層107においては、電荷発生層106から注入された正孔と、陰極102から注入された電子とが再結合する。これにより、第2のEL層107が発光する。
【0031】
本実施の形態で示した発光素子は、電子輸送性物質及びドナー性物質を含む電子リレー層105を有する。当該ドナー性物質は、電子輸送性物質のLUMO準位を低エネルギー側にシフトする。電子リレー層105には、第1のEL層103のLUMO準位よりも低いLUMO準位を有する電子輸送性物質を用いているため、当初から比較的低い位置に存在したLUMO準位が、ドナー性物質によりさらに低下することになる。これにより、電子リレー層105が電荷発生層106から電子を受容する際の障壁が低減される。また、電子リレー層105が受け取った電子は、電子注入バッファー層104により、大きな注入障壁を生じることなく、速やかに第1のEL層103に注入される。その結果、発光素子の低電圧駆動が可能になる。
【0032】
次に、上述した各物質の具体例について述べる。
【0033】
電子注入バッファー層104及び電子リレー層105に含まれるドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、若しくは希土類金属、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、若しくは希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)を適用することが可能である。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の金属及びこれらの金属の化合物が挙げられる。当該金属又は金属化合物は、電子注入性が高いため好ましい。
【0034】
電子リレー層105に含まれる電子輸送性物質としては、ペリレン誘導体又は含窒素縮合芳香族化合物等を適用することが可能である。
【0035】
上記ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:HexPTC)等が挙げられる。
【0036】
上記含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。さらに、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層105に含まれる電子輸送性物質として好ましい。また、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を適用することにより、電子リレー層105における電子の受け取りが容易となるため好ましい。
【0037】
その他にも、パーフルオロペンタセン、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を電子リレー層105に含まれる電子輸送性物質として適用することもできる。
【0038】
電荷発生層106に含まれる正孔輸送性物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を適用することが可能である。なお、ここで述べた物質は、主に正孔移動度が1×10−6cm/Vs以上の物質である。
【0039】
上記芳香族アミン化合物の具体例としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス[4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等が挙げられる。
【0040】
上記カルバゾール誘導体の具体例としては、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等が挙げられる。
【0041】
上記芳香族炭化水素の具体例としては、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、当該芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0042】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を正孔輸送性物質として適用することもできる。
【0043】
さらに、上記正孔輸送性物質としては、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを適用することも可能である。
【0044】
なお、上記芳香族炭化水素が蒸着法によって成膜される場合には、蒸着時の蒸着性や、成膜後の膜質の観点から、縮合環を形成している炭素数が14〜42であることがより好ましい。
【0045】
電荷発生層106に含まれるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を適用することが可能である。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、及び酸化レニウム等の金属酸化物が挙げられる。当該金属酸化物は電子受容性が高いため好ましい。さらに、当該アクセプター性物質が酸化モリブデンであることがより好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
【0046】
また、電子注入バッファー層104、電子リレー層105、及び電荷発生層106の作製方法としては、ドライプロセス(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等)、ウェットプロセス(例えば、インクジェット法、スピンコート法、塗布法等)を問わず、種々の方法を適用することが可能である。
【0047】
次に、上述した陽極101及び陰極102の具体例について述べる。
【0048】
陽極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適用することが可能である。具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、シリコン若しくは酸化シリコンを含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等の導電性金属酸化物が挙げられる。
【0049】
当該導電性金属酸化物の薄膜の作製は、スパッタリング法によって行う事が可能である。また、当該導電性金属酸化物は、ゾル−ゲル法などを応用して作製することも可能である。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いたスパッタリング法により形成することが可能である。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いたスパッタリング法により形成することが可能である。
【0050】
この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、及びこれらの窒化物(例えば、窒化チタン等)、並びに酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化タングステン、酸化マンガン、及び酸化チタン等の酸化物を陽極101として適用することが可能である。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PAni/PSS)等の導電性高分子を適用することも可能である。ただし、第1のEL層103の一部として、陽極101と接する電荷発生層を設ける場合には、仕事関数の大小に関わらず様々な導電性物質を陽極101に適用することが可能である。なお、当該電荷発生層として、上述した第1のEL層103と第2のEL層107の間に設けられる電荷発生層106と同一構成を適用することが可能である。
【0051】
陰極102としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下であることが好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適用することが可能である。具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、及びこれらを含む合金(MgAg、AlLi等)、並びにユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することが可能である。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含む合金は、スパッタリング法により形成することも可能である。
【0052】
この他、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属の化合物(例えば、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiOx)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化エルビウム(ErF)など)の薄膜と、アルミニウム等の金属膜とを積層することによって、陰極102を形成することも可能である。但し、第2のEL層107の一部として、陰極102と接する電荷発生層を設ける場合には、仕事関数の大小に関わらず様々な導電性物質を陰極102に適用することが可能である。なお、当該電荷発生層として、上述した第1のEL層103と第2のEL層107の間に設けられる電荷発生層106と同一構成を適用することが可能である。
【0053】
なお、本実施の形態で示す発光素子においては、陽極101及び陰極102のうち、少なくとも一方が発光波長を透過すればよい。透光性は、ITOのような透明電極を用いる、又は電極の膜厚を薄くすることなどにより確保できる。
【0054】
次に、上述した第1のEL層及び第2のEL層の具体例について述べる。
【0055】
第1のEL層103及び第2のEL層107は、少なくとも発光物質を有する発光層を含んで構成されていればよい。つまり、第1のEL層103及び第2のEL層107は、発光層と、発光層以外の層とが積層された構造であっても良い。なお、第1のEL層103に含まれる発光層と、第2のEL層107に含まれる発光層とは、それぞれ異なっていてもよい。また、第1のEL層103および第2のEL層107は、それぞれ独立に、発光層と、発光層以外の層とが積層された積層構造であっても良い。
【0056】
発光層以外の層としては、正孔注入性物質を含む層(正孔注入層)、正孔輸送性物質を含む層(正孔輸送層)、電子輸送性物質を含む層(電子輸送層)、電子注入性物質を含む層(電子注入層)、バイポーラ性(電子輸送性及び正孔輸送性)物質を含む層等が挙げられる。これらは、適宜組み合わせて構成することができる。
【0057】
以下に、第1のEL層103及び第2のEL層107が正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含んで構成される場合の各層を構成する物質の具体例を示す。
【0058】
正孔注入層は、正孔注入性物質を含む層である。当該正孔注入性物質としては、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ルテニウム、酸化タングステン、酸化マンガン等の正孔注入性物質が挙げられる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)及び銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、並びにPEDOT/PSS(略称)等の高分子等を正孔注入性物質として用いることもできる。
【0059】
正孔輸送層は、正孔輸送性物質を含む層である。当該正孔輸送性物質としては、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、及び4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物、並びにPCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、及びCzPA(略称)のカルバゾール誘導体が挙げられる。また、PVK(略称)、PVTPA(略称)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)を当該正孔輸送性物質として適用することも可能である。ここに述べた物質は、主に1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、正孔輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
【0060】
発光層は、発光物質を含む層である。当該発光物質としては、以下に示す蛍光性化合物及び燐光性化合物を適用することが可能である。
【0061】
当該蛍光性化合物としては、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。
【0062】
当該燐光性化合物としては、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))などが挙げられる。
【0063】
なお、発光層は、ホスト材料にこれらの発光物質を分散させた構造とすることが好ましい。ホスト材料としては、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、BSPB(略称)などの芳香族アミン化合物、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)などのカルバゾール誘導体、及びPVK(略称)、PVTPA(略称)、PTPDMA(略称)、Poly−TPD(略称)などの高分子化合物を含む正孔輸送性物質、並びにトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、及びポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを含む電子輸送性物質が挙げられる。
【0064】
電子輸送層は、電子輸送性物質を含む層である。当該電子輸送性物質としては、Alq(略称)、Almq(略称)、BeBq(略称)、及びBAlq(略称)などのキノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、並びにZn(BOX)(略称)及びZn(BTZ)(略称)などのオキサゾール系又はチアゾール系配位子を有する金属錯体などが挙げられる。また、金属錯体以外にも、PBD(略称)、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称))、BPhen(略称)、BCP(略称)、PF−Py(略称)、PF−BPy(略称)などを当該電子輸送性物質として適用することも可能である。ここに述べた物質は、主に1×10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
【0065】
電子注入層は、電子注入性物質を含む層である。電子注入性物質としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物が挙げられる。また、電子輸送性物質中にアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はこれらの化合物を含有させたもの(例えば、Alq(略称)中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等)を当該電子注入性物質として適用することも可能である。この様な構造とすることにより、陰極102からの電子注入効率をより高めることができる。
【0066】
第1のEL層103又は第2のEL層107に電荷発生層を設ける場合、電荷発生層は、正孔輸送性物質と、アクセプター性物質とを含む層とする。なお、電荷発生層は、同一膜中に正孔輸送性物質と、アクセプター性物質とを含有する場合だけでなく、正孔輸送性物質を含む層と、アクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。ただし、積層構造の場合には、アクセプター性物質を含む層が、陽極101又は陰極102と接する構造とする。
【0067】
第1のEL層103又は第2のEL層107に電荷発生層を設けることにより、電極を形成する物質の仕事関数を考慮せずに陽極101又は陰極102を形成することが可能になる。なお、第1のEL層103又は第2のEL層107に設けられる電荷発生層は、上述の第1のEL層103と第2のEL層107の間に設けられる電荷発生層106と同様の構成及び物質を適用することが可能である。そのため、ここでは前述の説明を援用することとする。
【0068】
なお、これらの層を適宜組み合わせて積層することにより、第1のEL層103及び第2のEL層107を形成することができる。また、第1のEL層103及び第2のEL層107の形成方法としては、用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)を適宜選択することができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法、又はスピンコート法などを用いることができる。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。
【0069】
以上のような物質を組み合わせることにより、本実施の形態に示す発光素子を作製することが可能である。当該発光素子からは、上述した発光物質からの発光が得られる。そのため、発光層に用いる発光物質の種類を変えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ることもできる。
【0070】
なお、本実施の形態では、2層のEL層が設けられた発光素子について記載しているが、EL層の層数は2層に限定されるものでは無く、2層以上、例えば3層であってもよい。発光素子にn(nは2以上の自然数)層のEL層を設ける場合、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と(m+1)番目のEL層の間に、陽極側から順に電子注入バッファー層、電子リレー層、及び電荷発生層を積層することで、発光素子の駆動電圧を低減させることができる。
【0071】
また、本実施の形態に示した発光素子は、各種基板上に作製することができる。基板としては、例えばガラス、プラスチック、金属板、金属箔などを適用することが可能である。また、発光素子の発光を基板側から取り出す場合は、透光性を有する基板を用いればよい。ただし、基板は、発光素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0072】
なお、本実施の形態に示す内容は、他の実施の形態に示した内容と適宜組み合わせて用いることができる。
【0073】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示した発光素子の一例について示す。具体的には、実施の形態1で示した発光素子が有する電子注入バッファー層104が、ドナー性物質の単層によって構成される場合について、図2(A)、(B)を用いて説明する。
【0074】
本実施の形態で示す発光素子は、図2(A)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれている。加えて、当該発光素子は、陽極101側から、第1のEL層103と接する電子注入バッファー層104、電子注入バッファー層104と接する電子リレー層105、並びに電子リレー層105及び第2のEL層107と接する電荷発生層106を有する。
【0075】
本実施の形態における、陽極101、陰極102、第1のEL層103、電子リレー層105、電荷発生層106、及び第2のEL層107には、実施の形態1で説明した構成及び物質を用いることができる。そのため、ここでは実施の形態1の説明を援用することとする。
【0076】
本実施の形態において、電子注入バッファー層104に用いる物質としては、リチウム(Li)及びセシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ユウロピウム(Eu)及びイッテルビウム(Yb)等の希土類金属、アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、並びに希土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等の電子注入性の高い物質が挙げられる。なお、これらの電子注入性の高い物質は、空気中で安定な物質であるため、生産性が良く、量産に適するため好ましい。
【0077】
本実施の形態で示す発光素子は、電子注入バッファー層104として上記の金属またはその化合物の単層が設けられている。また、電子注入バッファー層104の膜厚は、駆動電圧の上昇を避ける為に非常に薄い膜厚(具体的には、1nm以下)で形成される。ただし、電子輸送層108を形成した後、電子輸送層108上に電子注入バッファー層104を形成する場合には、電子注入バッファー層104を形成する物質の一部は、第1のEL層103の一部である電子輸送層108にも存在しうる。また、膜厚が非常に薄い電子注入バッファー層104は、電子リレー層105と第1のEL層103の一部である電子輸送層108の界面に存在すると換言することもできる。なお、本実施の形態において、第1のEL層103には電子注入バッファー層104と接するように電子輸送層108を形成するのが好ましい。
【0078】
図2(B)に示す図は、図2(A)の素子構造におけるバンド図を表す。図2(B)において、電子リレー層105と第1のEL層103(電子輸送層108)の界面に電子注入バッファー層104を設けることにより、電荷発生層106と第1のEL層103(電子輸送層108)の間の注入障壁を緩和することができる。そのため、電荷発生層106で発生した電子を第1のEL層103へと容易に注入することができる。
【0079】
また、本実施の形態で示す電子注入バッファー層の構造とすることにより、実施の形態3で後述する電子注入バッファー層(電子輸送性物質にドナー性物質を添加して形成される層)に比べて発光素子の駆動電圧を低減させることができる。
【0080】
なお、本実施の形態に示す内容は、他の実施の形態に示した内容と適宜組み合わせて用いることができる。
【0081】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示した発光素子の一例について示す。具体的には、実施の形態1で示した発光素子が有する電子注入バッファー層104が、電子輸送性物質と、ドナー性物質とを含んで構成される場合について、図3(A)、(B)を用いて説明する。
【0082】
本実施の形態で示す発光素子は、図3(A)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれている。加えて、当該発光素子は、陽極101側から、第1のEL層103と接する電子注入バッファー層104、電子注入バッファー層104と接する電子リレー層105、並びに電子リレー層105及び第2のEL層107と接する電荷発生層106を有する。
【0083】
また、電子注入バッファー層104は、電子輸送性物質とドナー性物質を含んでいる。なお、本実施の形態では、電子輸送性物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。これにより、膜質の良い電子注入バッファー層104が得られる。また、反応性の良い電子注入バッファー層104とすることができる。
【0084】
本実施の形態における陽極101、陰極102、第1のEL層103、電子リレー層105、電荷発生層106、及び第2のEL層107には、実施の形態1で説明した構成及び物質を用いることができる。そのため、ここでは実施の形態1の説明を援用することとする。
【0085】
本実施の形態において、電子注入バッファー層104に含まれる電子輸送性物質としては、Alq(略称)、Almq(略称)、BeBq(略称)、BAlq(略称)などキノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、Zn(BOX)(略称)、Zn(BTZ)(略称)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体、PBD(略称)、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称)、BPhen(略称)、BCP(略称)などが挙げられる。なお、ここに述べた物質は、主に1×10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。
【0086】
これ以外にも、PF−Py(略称)、PF−BPy(略称)などの高分子化合物を電子注入バッファー層104に含まれる電子輸送性物質として適用することが可能である。
【0087】
また、本実施の形態において、電子注入バッファー層104に含まれるドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)等が挙げられる。また、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を電子注入バッファー層104に含まれるドナー性物質として適用することも可能である。
【0088】
なお、本実施の形態において、第1のEL層103には、電子注入バッファー層104と接するように電子輸送層108を形成してもよい。電子輸送層108を電子注入バッファー層104と接するように形成した場合、電子注入バッファー層104に用いる電子輸送性物質と、第1のEL層103の一部である電子輸送層108に用いる電子輸送性物質とは、同じ物質であっても、異なる物質であっても良い。
【0089】
本実施の形態で示す発光素子は、図3(A)に示すように第1のEL層103と電子リレー層105の間に、電子輸送性物質と、ドナー性物質とを含む電子注入バッファー層104が設けられることが特徴である。
【0090】
図3(B)に示す図は、図3(A)の素子構造におけるバンド図を表す。電子注入バッファー層104が形成されることにより、電子リレー層105と第1のEL層103(電子輸送層108)の間の注入障壁を緩和することができる。そのため、電荷発生層106で発生した電子を、第1のEL層103へと容易に注入することができる。
【0091】
なお、本実施の形態に示す内容は、他の実施の形態に示した内容と適宜組み合わせて用いることができる。
【0092】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に示した発光素子の一例について示す。具体的には、実施の形態1で示した発光素子が有する電荷発生層106の構成について、図4(A)、(B)を用いて説明する。
【0093】
本実施の形態で示す発光素子は、図4(A)、(B)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれている。加えて、当該発光素子は、陽極101側から、第1のEL層103と接する電子注入バッファー層104、電子注入バッファー層104と接する電子リレー層105、並びに電子リレー層105及び第2のEL層107と接する電荷発生層106を有する。図4(A)、(B)において、陽極101、陰極102、第1のEL層103、電子注入バッファー層104、電子リレー層105、及び第2のEL層107には、実施の形態1乃至3で説明した構成及び物質を用いることができる。そのため、ここでは実施の形態1乃至3の説明を援用することとする。
【0094】
図4(A)、(B)に示す発光素子において、電荷発生層106は、正孔輸送性物質と、アクセプター性物質とを含む層である。なお、電荷発生層106では、正孔輸送性物質からアクセプター性物質が電子を引き抜くことにより、正孔及び電子が発生する。
【0095】
図4(A)に示す電荷発生層106は、同一膜中に正孔輸送性物質と、アクセプター性物質とを含有させた構造を有する。この場合、正孔輸送性物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率でアクセプター性物質を添加することにより、電荷発生層106におけるキャリアの発生が容易となるため好ましい。
【0096】
図4(A)ではアクセプター性物質が、正孔輸送性物質にドーピングされた構成であるため、電荷発生層106を厚膜化した場合でも駆動電圧の上昇を抑制することができる。よって、発光素子の駆動電圧の上昇を抑制し、且つ光学調整による色純度の向上を実現することができる。また、電荷発生層106を厚膜化することで、発光素子の短絡を防止することができる。
【0097】
一方、図4(B)に示す電荷発生層106は、第2のEL層107と接する正孔輸送性物質を含む層106aと、電子リレー層105と接するアクセプター性物質を含む層106bとが積層された構造を有する。図4(B)に示す発光素子の電荷発生層106において、正孔輸送性物質とアクセプター性物質の間で電子の授受が起こることによって形成される電子移動錯体は、正孔輸送性物質を含む層106aと、アクセプター性物質を含む層106bとの界面にのみ形成される。したがって、図4(B)に示す発光素子は、電荷発生層106の膜厚を厚くした場合にも、可視光の吸収帯が形成されにくいため、好ましい。
【0098】
なお、電荷発生層106に含まれる正孔輸送性物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。
【0099】
上記芳香族アミン化合物の具体例としては、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、DTDPPA(略称)、DPAB(略称)、DNTPD(略称)、DPA3B(略称)等が挙げられる。
【0100】
上記カルバゾール誘導体の具体例としては、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)等が挙げられる。その他、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等が挙げられる。
【0101】
上記芳香族炭化水素の具体例としては、t−BuDNA(略称)、DPPA(略称)、t−BuDBA(略称)、DNA(略称)、DPAnth(略称)、t−BuAnth(略称)、DMNA(略称)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、当該芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、DPVBi(略称)、DPVPA(略称)等が挙げられる。
【0102】
また、PVK(略称)やPVTPA(略称)等の高分子化合物を当該正孔輸送性物質として適用することも可能である。
【0103】
さらに、当該正孔輸送性物質としては、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを適用することも可能である。
【0104】
なお、上記芳香族炭化水素が蒸着法によって成膜される場合には、蒸着時の蒸着性や、成膜後の膜質の観点から、縮合環を形成している炭素数が14〜42であることがより好ましい。
【0105】
電荷発生層106に含まれるアクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、当該アクセプター性物質として、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。さらに、当該アクセプター性物質が酸化モリブデンであることがより好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
【0106】
なお、本実施の形態に示す内容は、他の実施の形態に示した内容と適宜組み合わせて用いることができる。
【0107】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1に示した発光素子の一例について示す。具体的には、実施の形態1で示した発光素子の一例について、図5(A)、(B)を用いて説明する。
【0108】
本実施の形態で示す発光素子は、図5(A)に示すように一対の電極(陽極101、陰極102)間に発光領域を含む第1のEL層103及び第2のEL層107が挟まれている。加えて、当該発光素子は、陽極101側から、第1のEL層103と接する電子注入バッファー層104、電子注入バッファー層104と接する電子リレー層105、並びに電子リレー層105及び第2のEL層107と接する電荷発生層106を有する。
【0109】
本実施の形態における陽極101、陰極102、電子注入バッファー層104、電子リレー層105、及び電荷発生層106には、実施の形態1乃至4で説明した構成及び物質を用いることができる。そのため、ここでは実施の形態1乃至4の説明を援用することとする。
【0110】
本実施の形態において、第1のEL層103は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第1の発光層103aと、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2の発光層103bとを有する。また、第2のEL層107は、青緑色〜緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第3の発光層107aと、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第4の発光層107bとを有する。なお、第1の発光層103aと第2の発光層103bは逆の積層順であっても良い。また、第3の発光層107aと第4の発光層107bは逆の積層順であっても良い。
【0111】
このような発光素子に対し、陽極101側をプラスに、陰極102側をマイナスとしたバイアスを印加すると、陽極101から注入された正孔と、電荷発生層106で発生し、電子リレー層105及び電子注入バッファー層104を介して注入された電子とが第1の発光層103a又は第2の発光層103bにおいて再結合する。これにより、第1の発光330が得られる。さらに、陰極102から注入された電子と、電荷発生層106で発生し、注入された正孔とが第3の発光層107a又は第4の発光層107bにおいて再結合する。これにより、第2の発光340が得られる。
【0112】
図5(B)は、第1の発光330及び第2の発光340の発光スペクトルを模式的に示したものである。第1の発光330は、第1の発光層103a及び第2の発光層103bの両方からの発光を合わせたものである。そのため、青色〜青緑色の波長領域及び黄色〜橙色の波長領域の双方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1のEL層103は、2波長型の白色又は白色に近い色の発光を呈するものである。また、第2の発光340は、第3の発光層107a及び第4の発光層107bの両方からの発光を合わせたものである。そのため、青緑色〜緑色の波長領域及び橙色〜赤色の波長領域の双方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第2のEL層107は、第1のEL層103とは異なる2波長型の白色又は白色に近い色の発光を呈するものである。
【0113】
したがって、本実施の形態における発光素子は、第1の発光330及び第2の発光340が重ね合わさる結果、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする発光が得られる。
【0114】
例えば、第1の発光層103a(青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す)の発光輝度が、経時劣化あるいは電流密度により変化したとしても、発光スペクトル全体に対する第1の発光層103aの寄与は1/4程度であるため、色度のずれは比較的小さくて済む。
【0115】
なお、上述の説明では、第1のEL層103が、青色〜青緑色の波長領域及び黄色〜橙色の波長領域の双方にピークを有する発光スペクトルを示し、第2のEL層107は青緑色〜緑色の波長領域及び橙色〜赤色の波長領域の双方にピークを有する発光スペクトルを示す場合を例に説明したが、それぞれ逆の関係であっても良い。すなわち、第2のEL層107が青色〜青緑色の波長領域及び黄色〜橙色の波長領域の双方にピークを有する発光スペクトルを示し、第1のEL層103が青緑色〜緑色の波長領域及び橙色〜赤色の波長領域の双方にピークを有する発光スペクトルを示す構成であっても良い。また、第1のEL層103及び第2のEL層107はそれぞれ、発光層以外の層が形成された積層構造であっても良い。
【0116】
次に、本実施の形態で示す発光素子のEL層に発光性の有機化合物として用いることのできる物質を説明する。ただし、本実施の形態で示す発光素子に適用できる物質は、これらに限定されるものではない。
【0117】
青色〜青緑色の発光は、例えば、ペリレン、TBP(略称)、9,10−ジフェニルアントラセンなどをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、DPVBi(略称)などのスチリルアリーレン誘導体、又はDNA(略称)及びt−BuDNA(略称)などのアントラセン誘導体などから得ることができる。また、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)等のポリマーを用いても良い。また、青色発光のゲスト材料としては、YGA2S(略称)及びN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)スチルベン−4,4’−ジアミン(略称:PCA2S)などのスチリルアミン誘導体が挙げられる。特に、YGA2S(略称)は、450nm付近にピークを有しており、好ましい。また、ホスト材料としては、アントラセン誘導体が好ましく、t−BuDNA(略称)及びCzPA(略称)が好適である。特に、CzPA(略称)は、電気化学的に安定であるため好ましい。
【0118】
青緑色〜緑色の発光は、例えば、クマリン30、クマリン6などのクマリン系色素、FIrpic(略称)、Ir(ppy)(acac)(略称)などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、BAlq(略称)、Zn(BTZ)(略称)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)クロロガリウム(Ga(mq)Cl)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。また、上述のペリレンやTBP(略称)を5wt%以上の高濃度で適当なホスト材料に分散させることによっても得られる。また、青緑色〜緑色の発光層のゲスト材料としては、アントラセン誘導体が効率の高い発光が得られるため好ましい。例えば、DPABPA(略称)を用いることにより、高効率な青緑色発光が得られる。また、2位にアミノ基が置換されたアントラセン誘導体は高効率な緑色発光が得られるため好ましく、2PCAPA(略称)が特に長寿命であり好適である。これらのホスト材料としてはアントラセン誘導体が好ましく、先に述べたCzPA(略称)が電気化学的に安定であるため好ましい。また、緑色発光と青色発光を組み合わせ、青色から緑色の波長領域に2つのピークを持つ発光素子を作製する場合、青色発光層のホストにCzPA(略称)のような電子輸送性のアントラセン誘導体を用い、緑色発光層のホストにNPB(略称)のようなホール輸送性の芳香族アミン化合物を用いると、青色発光層と緑色発光層との界面で発光が得られるため好ましい。すなわちこの場合、2PCAPA(略称)のような緑色発光材料のホストとしては、NPB(略称)のような芳香族アミン化合物が好ましい。
【0119】
黄色〜橙色の発光は、例えば、ルブレン、DCM1(略称)、DCM2(略称)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(Ir(thp)(acac))、ビス(2−フェニルキノリナト)アセチルアセトナトイリジウム(Ir(pq)(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。特に、ゲスト材料としてルブレンのようなテトラセン誘導体が、高効率かつ化学的に安定であるため好ましい。この場合のホスト材料としては、NPB(略称)のような芳香族アミン化合物が好ましい。他のホスト材料としては、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(略称:Znq)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq)などの金属錯体を用いることができる。また、ポリ(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。
【0120】
橙色〜赤色の発光は、例えば、BisDCM(略称)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[2−(ジュロリジン−9−イル)エチニル]−4H−ピランDCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、Ir(thp)(acac)(略称)などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。Znq(略称)やZnsq(略称)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のポリマーを用いても良い。赤色発光を示すゲスト材料としては、BisDCM(略称)、DCM2(略称)、DCJTI(略称)、BisDCJTM(略称)のような4H−ピラン誘導体が高効率であり、好ましい。特に、DCJTI(略称)、BisDCJTM(略称)は、620nm付近に発光ピークを有するため好ましい。
【0121】
なお、上記の構成において、適当なホスト材料としては、発光性の有機化合物よりも発光色が短波長のものであるか、またはエネルギーギャップの大きいものであればよい。具体的には、実施の形態1で示した例に代表される正孔輸送材料や電子輸送材料から適宜選択することができる。また、CBP(略称)、TCTA(略称)、TCPB(略称)などを使用しても良い。
【0122】
本実施の形態で示した発光素子は、第1のEL層の発光スペクトル及び第2のEL層の発光スペクトルが重ね合わさる結果、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域を幅広くカバーする白色発光が得られる。
【0123】
なお、各積層の膜厚を調節し、意図的に光を僅かに干渉させることで、突出した鋭いピークの発生を抑え、台形の発光スペクトルとなるようにして、連続的なスペクトルを有する自然光に近づけてもよい。また、各積層の膜厚を調節し、意図的に光を僅かに干渉させることで、発光スペクトルのピークの位置も変化させることもできる。発光スペクトルに現れる複数のピーク強度をほぼ同じになるように各積層の膜厚を調節し、さらに、互いのピークの間隔を狭くすることによってより台形に近い発光スペクトルを有する白色発光を得ることができる。
【0124】
なお、本実施の形態においては、複数層の発光層のそれぞれにおいて、互いに補色となる発光色を重ね合わせることによって白色発光が得られるEL層を示した。以下において、補色の関係によって白色発光を呈するEL層の具体的な構成を説明する。
【0125】
本実施の形態で示す発光素子に設けられたEL層は、例えば、正孔輸送性物質及び第1の発光物質を含む第1の層と、正孔輸送性物質及び第2の発光物質を含む第2の層と、電子輸送性物質及び第2の発光物質を含む第3の層と、が陽極101から順に積層された構成とすることができる。
【0126】
本実施の形態で示す発光素子のEL層において、白色発光を得るためには、第1の発光物質と第2の発光物質の両方が発光する必要がある。したがって、EL層内でのキャリアの輸送性を調節するためには、正孔輸送性物質及び電子輸送性物質は、いずれもホスト材料とすることが好ましい。なお、EL層に用いることのできる正孔輸送性物質又は電子輸送性物質としては、実施の形態1で例示した物質を適宜用いることができる。
【0127】
また、第1の発光物質及び第2の発光物質は、それぞれの発光色が補色の関係となる物質を選択して用いることができる。補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。青色、黄色、青緑色、赤色に発光する物質としては、例えば、先に列挙した発光物質の中から適宜選択すればよい。なお、第2の発光物質の発光波長を第1の発光物質の発光波長よりも短波長とすることで、第2の発光物質の励起エネルギーの一部を第1の発光物質にエネルギー移動させ、第1の発光物質を発光させることができる。したがって、本実施の形態の発光素子においては、第2の発光物質の発光ピーク波長が、第1の発光物質の発光ピーク波長よりも短波長であることが好ましい。
【0128】
本実施の形態で示す発光素子の構成は、第1の発光物質からの発光と第2の発光物質からの発光の両方が得られ、且つ第1の発光物質と第2の発光物質の発光色が互いに補色の関係であるため白色発光が得られる。また、本実施の形態で示す発光素子の構成とすることで、長寿命な発光素子とすることができる。
【0129】
なお、本実施の形態に示す内容は、他の実施の形態に示した内容と適宜組み合わせて用いることができる。
【0130】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至5で示した発光素子を含む発光装置の一態様について、図6を用いて説明する。図6は、当該発光装置の断面図である。
【0131】
図6において、本実施の形態の発光装置は、基板10と、基板10上に設けられた発光素子12及びトランジスタ11とを有する。発光素子12は、第1の電極13と第2の電極14の間に有機化合物を含む層15を有する。有機化合物を含む層15は、n(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と(m+1)番目のEL層の間には、m番目のEL層と接する電子注入バッファー層と、電子注入バッファー層と接する電子リレー層と、電子リレー層及び(m+1)番目のEL層と接する電荷発生層とを有する。また、それぞれのEL層は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、又は電子注入層を適宜設ける構成とする。すなわち、発光素子12は、実施の形態1乃至実施の形態5で示した発光素子である。トランジスタ11のドレイン領域と第1の電極13は、第1層間絶縁膜16a、16b、16cを貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。
【0132】
なお、図6に示したトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。また、ボトムゲート型の場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、又はチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
【0133】
また、トランジスタ11を構成する半導体層の材料としては、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)等の元素周期表における第14族元素、ガリウムヒ素及びインジウムリン等の化合物、並びに酸化亜鉛及び酸化スズ等の酸化物など半導体特性を示す物質であればどのような材料を用いてもよい。加えて、当該半導体層は、結晶質構造、非晶質構造のどちらの構造であってもよい。
【0134】
さらに、半導体特性を示す酸化物(酸化物半導体)としては、インジウム、ガリウム、アルミニウム、亜鉛及びスズから選んだ元素の複合酸化物を用いることができる。例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IZO:Indium Zinc Oxide)、並びに酸化インジウム、酸化ガリウム、及び酸化亜鉛からなる酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)をその例に挙げることができる。また、結晶質構造の半導体層の具体例としては、単結晶半導体、多結晶半導体、若しくは微結晶半導体が挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
【0135】
なお、本明細書において微結晶半導体とは、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体層が得られる。
【0136】
なお、半導体層が非晶質構造の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11及びその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置であることが好ましい。当該発光装置の作製工程が簡略化されるためである。また、酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IZO)、酸化インジウムと酸化ガリウムと酸化亜鉛からなる酸化物(IGZO)などはN型の半導体である。そのため、これらの酸化物を半導体層に適用したトランジスタはNチャネル型となる。なお、当該発光装置は、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよい。
【0137】
さらに、第1層間絶縁膜16a〜16cは、図6(A)、(C)に示すように多層でもよいし、単層でもよい。なお、第1層間絶縁膜16aは酸化シリコンや窒化シリコンのような無機物から成り、第1層間絶縁膜16bは、アクリル、シロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基)、塗布成膜可能な酸化シリコン等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、第1層間絶縁膜16cは、アルゴン(Ar)を含む窒化シリコン膜である。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16a〜16cは、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、無機膜と有機膜のどちらか一方を用いて形成されたものでもよい。
【0138】
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また、隔壁層18は、アクリル、シロキサン、酸化シリコン等を用いて形成することが可能である。なお、隔壁層18は、無機膜と有機膜のどちらか一方で形成されたものでもよいし、両方を用いて形成されたものでもよい。
【0139】
なお、図6(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16a〜16cのみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図6(B)のように、第1層間絶縁膜16a〜16cの他、第2層間絶縁膜19a、19bが設けられた構成であってもよい。図6(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は、第2層間絶縁膜19a、19bを貫通し、配線17と電気的に接続している。
【0140】
第2層間絶縁膜19a、19bは、第1層間絶縁膜16a〜16cと同様に、多層でもよいし、単層でもよい。第2層間絶縁膜19aは、アクリル、シロキサン、塗布成膜可能な酸化シリコン等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、第2層間絶縁膜19bは、アルゴン(Ar)を含む窒化シリコン膜である。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19a、19bは、無機物または有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のどちらか一方を用いて形成されたものでもよい。
【0141】
発光素子12において、第1の電極13及び第2の電極14がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図6(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13が反射率の高い材料で構成される、又は反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14が反射率の高い材料で構成される、又は反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
【0142】
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するように有機化合物を含む層15が積層されたものであってもよいし、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加したときに動作するように有機化合物を含む層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、第1の電極13が陽極であり、第2の電極14が陰極であり、且つトランジスタ11はNチャネル型トランジスタである。後者の場合、第1の電極13が陰極であり、第2の電極14が陽極であり、且つトランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
【0143】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を発光素子と同一基板上に設けずに発光素子を駆動させるパッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。図7(A)には実施の形態1乃至実施の形態5で示した発光素子を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図を示す。また、図7(B)は、図7(A)の破線X−Yにおける断面図である。
【0144】
図7において、基板951上の電極952と電極956の間には発光素子955が設けられている。発光素子955は、実施の形態1乃至5で示した発光素子である。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有するのが好ましい。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置に実施の形態1乃至5で示した発光素子を適用することによって、低消費電力の発光装置を得ることができる。
【0145】
本実施の形態で示した発光装置は、実施の形態1乃至5で一例を示した発光素子を用いているため、高輝度発光且つ低電圧駆動が可能な発光装置である。また、当該発光装置は、消費電力が低い発光装置である。
【0146】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態6で一例を示した発光装置を含む電子機器について説明する。
【0147】
本実施の形態の電子機器として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示部を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図8に示す。
【0148】
図8(A)は、携帯情報端末機器800の一例を示している。携帯情報端末機器800は、コンピュータを内蔵しており、様々なデータ処理を行うことが可能である。このような携帯情報端末機器800としては、PDA(Personal Digital Assistance)が挙げられる。
【0149】
携帯情報端末機器800は、筐体801及び筐体803の2つの筐体で構成されている。筐体801と筐体803は、連結部807で折りたたみ可能に連結されている。筐体801には表示部802が組み込まれており、筐体803はキーボード805を備えている。もちろん、携帯情報端末機器800の構成は上述のものに限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。表示部802は、実施の形態1乃至5で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部802も同様の特徴を有するため、この携帯情報端末機器は低消費電力化が図られている。
【0150】
図8(B)は、本実施の形態に係るデジタルビデオカメラ810の一例を示している。デジタルビデオカメラ810は、筐体811に表示部812が組み込まれ、その他に各種操作部が設けられている。なお、デジタルビデオカメラ810の構成は特に限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
【0151】
デジタルビデオカメラ810において、表示部812は、実施の形態1乃至5で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、駆動電圧が低く、高輝度で消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部812も同様の特徴を有するため、このデジタルビデオカメラ810は低消費電力化が図られている。
【0152】
図8(C)は、本実施の形態に係る携帯電話機820の一例を示している。携帯電話機820は、筐体821および筐体822の2つの筐体で構成されており、連結部823により折りたたみ可能に連結されている。筐体822には表示部824が組み込まれており、筐体821には操作キー825が設けられている。なお、携帯電話機820の構成は特に限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
【0153】
携帯電話機820において、表示部824は、実施の形態1乃至5で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部824も同様の特徴を有するため、この携帯電話は低消費電力化が図られている。また、携帯電話機などに設けられたディスプレイのバックライトとして、上記実施の形態で示した発光素子を用いても構わない。
【0154】
図8(D)は、携帯可能なコンピュータ830の一例を示している。コンピュータ830は、開閉可能に連結された筐体831と筐体834を備えている。筐体831には表示部832が組み込まれ、筐体834はキーボード833などを備えている。なお、コンピュータ830の構成は特に限定されず、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
【0155】
コンピュータ830において、表示部832は、実施の形態1乃至5で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部832も同様の特徴を有するため、このコンピュータは低消費電力化が図られている。
【0156】
図8(E)は、テレビジョン840の一例を示している。テレビジョン840は、筐体841に表示部842が組み込まれている。表示部842により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド843により筐体841を支持した構成を示している。
【0157】
テレビジョン840の操作は、筐体841が備える操作スイッチ(図示しない)や、別体のリモコン操作機850により行うことができる。リモコン操作機850が備える操作キー851により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部842に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機850に、該リモコン操作機850から出力する情報を表示する表示部852を設ける構成としてもよい。
【0158】
なお、テレビジョン840は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0159】
テレビジョン840において、表示部842、表示部852の少なくとも一方は、実施の形態1乃至5で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部も同様の特徴を有する。
【0160】
以上の様に、発光装置の適用範囲は極めて広く、当該発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。また、実施の形態1乃至実施の形態5で示した発光素子を有する発光装置を用いることにより、高輝度の発光を呈し、低消費電力な表示部を有する電子機器を提供することが可能となる。
【0161】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態6で一例を示した発光装置を含む照明装置について説明する。
【0162】
図9は、室内の照明装置を示す図である。図9に示す卓上照明装置900は、照明部901を有する。照明部901には、実施の形態1乃至5に示した発光素子が適用されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される照明部901も同様の特徴を有するため、この卓上照明装置900は低消費電力化が図られている。また、当該発光素子は、大面積化が可能であるため、天井用照明装置910の照明部911として適用することも可能である。さらに、当該発光素子は、フレキシブル化が可能であるため、ロール型照明装置920の照明部921に適用することも可能である。
【0163】
図10(A)は、信号機を示す図である。信号機1000は、青の照明部1001、黄色の照明部1002、赤の照明部1003を有する。信号機1000は、青、黄、赤に対応する各照明部の少なくとも一つに実施の形態1乃至5に示した発光素子を有する。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される青、黄、赤に対応する各照明部も同様の特徴を有するため、この信号機は低消費電力化が図られている。
【0164】
図10(B)は、避難口誘導灯を示す図である。避難口誘導灯1010は、照明部と、蛍光部が設けられた蛍光板とを組み合わせて構成することができる。また、特定の色を発光する照明部と、図面のような形状の透過部が設けられた遮光板とを組み合わせて構成することもできる。避難口誘導灯1010の照明部には、実施の形態1乃至5に示した発光素子が適用されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される照明部も同様の特徴を有するため、この非常口誘導灯は低消費電力化が図られている。
【0165】
図10(C)は、街灯を示す図である。街灯は、支持体1021と、照明部1022とを有する。照明部1022には、実施の形態1乃至5に示した発光素子が適用されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される照明部も同様の特徴を有するため、この街灯は低消費電力化が図られている。
【0166】
なお、図10(C)に示すように、電柱1023の送電線1024を介して街灯に電源電圧を供給することができる。ただし、電源電圧の供給方法は、これに限定されない。例えば、光電変換装置を支持体1021に設け、光電変換装置により得られた電圧を電源電圧として利用することもできる。
【0167】
また、照明装置を携帯用照明に適用した例について図10(D)及び図10(E)に示す。図10(D)は、装着型ライトの構成を示す図であり、図10(E)は手持ち型ライトの構成を示す図である。
【0168】
図10(D)は、装着用ライトを示す図である。装着用ライトは、装着部1031と、照明部1032とを有する。また、照明部1032は装着部1031に固定されている。照明部1032には、実施の形態1乃至5に示した発光素子が適用されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される照明部も同様の特徴を有するため、この装着用ライトは低消費電力化が図られている。
【0169】
なお、図10(D)に示す装着型ライトの構成に限定されず、例えば装着部1031をリング状にした平紐やゴム紐のベルトにし、該ベルトに照明部1032を固定し、該ベルトを頭部に直接巻きつける構成とすることもできる。
【0170】
図10(E)は、手持ち型ライトを示す図である。手持ち型ライトは、筐体1041と、照明部1042と、スイッチ1043とを有する。照明部1042には、実施の形態1乃至5に示した発光素子が適用されている。当該発光素子は、高輝度で駆動電圧が低く、消費電力が小さいという特徴を有している。その発光素子で構成される照明部1042も同様の特徴を有するため、この手持ち型ライトは低消費電力化が図られている。
【0171】
なお、スイッチ1043は、照明部1042の発光または非発光を制御する機能を有する。また、スイッチ1043に発光時の照明部1042の輝度を調節する機能を付与することもできる。
【0172】
以上の様に、発光装置の適用範囲は極めて広く、当該発光装置をあらゆる分野の照明装置に適用することが可能である。また、実施の形態1乃至実施の形態5で示した発光素子を有する照明装置を用いることにより、高輝度の発光を呈し、低消費電力な表示部を有する照明装置を提供することが可能となる。
【実施例1】
【0173】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子について、図11を用いて説明する。本実施例並びに実施例2及び3で用いた物質の化学式を以下に示す。
【0174】
【化1】

【0175】
以下に、本実施例の発光素子1乃至4及び比較発光素子5の作製方法を示す。
【0176】
まず、発光素子1について説明する(図11(A)参照)。基板2100上に、酸化シリコンを含むインジウム錫酸化物をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極2101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0177】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極2101が形成された基板2100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2101上に、正孔輸送性物質であるNPB(略称)と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む、第1の電荷発生層2103aを形成した。その膜厚は50nmとし、NPB(略称)と酸化モリブデン(VI)の比率は、質量比で4:1(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0178】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電荷発生層2103a上にNPB(略称)を10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2103bを形成した。
【0179】
さらに、CzPA(略称)と、2PCAPA(略称)とを共蒸着することにより、正孔輸送層2103b上に30nmの膜厚の発光層2103cを形成した。ここで、CzPA(略称)と2PCAPA(略称)の質量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。なお、CzPA(略称)は電子輸送性物質であり、ゲスト材料である2PCAPA(略称)は緑色の発光を示す物質である。
【0180】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2103c上にAlq(略称)を10nmの膜厚となるように成膜し、電子輸送層2103dを形成した。これによって、第1の電荷発生層2103a、正孔輸送層2103b、発光層2103c、及び電子輸送層2103dを含む第1のEL層2103を形成した。
【0181】
次いで、BPhen(略称)と、リチウム(Li)とを共蒸着することにより、電子輸送層2103d上に20nmの膜厚の電子注入バッファー層2104を形成した。ここで、BPhen(略称)とリチウム(Li)の質量比は、1:0.02(=BPhen:Li)となるように調整した。
【0182】
次いで、PTCBI(略称)と、リチウム(Li)とを共蒸着することにより、電子注入バッファー層2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。ここで、PTCBI(略称)とリチウム(Li)の質量比は、1:0.02(=PTCBI:Li)となるように調整した。なお、PTCBI(略称)のLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定の結果から−4.0eV程度である。
【0183】
次に、電子リレー層2105上に、正孔輸送性物質であるNPB(略称)と、アクセプター性物質である酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、第2の電荷発生層2106を形成した。その膜厚は60nmとし、NPB(略称)と酸化モリブデン(VI)の比率は、質量比で4:1(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0184】
次いで、第2の電荷発生層2106上に、第2のEL層2107を作製した。その作製方法は、まず、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第2の電荷発生層2106上にNPB(略称)を10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2107aを形成した。
【0185】
その後、CzPA(略称)と、2PCAPA(略称)とを共蒸着することにより、正孔輸送層2107a上に30nmの膜厚の発光層2107bを形成した。ここで、CzPA(略称)と2PCAPA(略称)の質量比は、1:0.05(=CzPA:2PCAPA)となるように調節した。つまり、第2のEL層2107に含まれる発光層2107bは、第1のEL層2103に含まれる発光層2103cと同一構成である。
【0186】
次いで、発光層2107b上に、Alq(略称)を膜厚10nm、次いでBPhen(略称)を20nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2107cを形成した。電子輸送層2107c上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで蒸着することにより電子注入層2107dを形成した。これによって、正孔輸送層2107a、発光層2107b、電子輸送層2107c、電子注入層2107dを含む第2のEL層2107を形成した。
【0187】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107d上にアルミニウム(Al)を200nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2102を形成することで、発光素子1を作製した。
【0188】
次に、発光素子2について説明する。発光素子2は、電子リレー層2105以外は、発光素子1と同様に作製した。そのため、ここでは電子リレー層2105以外の発光素子2の構成及び作製方法については、前述の説明を援用することとする。発光素子2が有する電子リレー層2105は、電子輸送性物質であるPPDN(略称)と、ドナー性物質であるリチウム(Li)とを共蒸着することにより、電子注入バッファー層2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。ここで、PPDN(略称)とリチウム(Li)の質量比は、1:0.02(=PPDN:Li)となるように調整した。なお、PPDN(略称)のLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定の結果から−3.83eV程度である。
【0189】
次に、発光素子3について説明する。発光素子3は、電子リレー層2105以外は、発光素子1と同様に作製した。そのため、ここでは電子リレー層2105以外の発光素子3の構成及び作製方法については、前述の説明を援用することとする。発光素子3が有する電子リレー層2105は、電子輸送性物質であるPTCBI(略称)と、ドナー性物質である酸化リチウム(LiO)とを共蒸着することにより、電子注入バッファー層2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。ここで、PTCBI(略称)と酸化リチウム(LiO)の質量比は、1:0.02(=PTCBI:LiO)となるように調整した。
【0190】
次に、発光素子4について説明する。発光素子4は、電子リレー層2105以外は、発光素子1と同様に作製した。そのため、ここでは電子リレー層2105以外の発光素子4の構成及び作製方法については、前述の説明を援用することとする。発光素子4が有する電子リレー層2105は、電子輸送性物質であるPPDN(略称)と、ドナー性物質である酸化リチウム(LiO)とを共蒸着することにより、電子注入バッファー層2104上に、3nmの膜厚の電子リレー層2105を形成した。ここで、PPDN(略称)と酸化リチウム(LiO)の質量比は、1:0.02(=PPDN:LiO)となるように調整した。
【0191】
次に、比較発光素子5について説明する(図11(B)参照)。比較発光素子5は、発光素子1乃至4から電子リレー層2105を削除した構造であり、その他の層については、発光素子1乃至4と同様の作製方法にて形成した。つまり、比較発光素子5においては、電子注入バッファー層2104を形成した後、電子注入バッファー層2104上に、第2の電荷発生層2106を形成した。以上により、本実施例の比較発光素子5を得た。
【0192】
以下の表1に発光素子1乃至4及び比較発光素子5の素子構造を示す。
【0193】
【表1】

【0194】
以上により得られた発光素子1乃至4及び比較発光素子5を窒素雰囲気のグローブボックス内において、各発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は、室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0195】
発光素子1乃至4及び比較発光素子5の電圧―輝度特性を図12に示す。図12において、横軸は印加した電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表している。また、発光素子1乃至4及び比較発光素子5の電圧−電流密度特性を図13に示す。図13において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流密度(mA/cm)を表す。また、各発光素子の輝度が1000cd/m付近である時の電圧を以下の表2に示す。
【0196】
【表2】

【0197】
図12より、電子リレー層が設けられた発光素子1乃至4は、比較発光素子5に比べて、高い輝度が得られることがわかる。また、図13より、電子リレー層が設けられた発光素子1乃至4は、比較発光素子5に比べて、高い電流密度を有することが分かる。
【0198】
以上により、本実施例の発光素子1乃至4が、発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また、表2より、発光素子1乃至4は、比較発光素子5と比べて、低電圧で駆動可能な発光素子であることが確認できた。
【実施例2】
【0199】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子について、図11を用いて説明する。なお、本実施例で示す発光素子及び比較発光素子において、実施例1で述べた発光素子と共通する部分については、前述の説明を援用することとする。
【0200】
以下に、本実施例の発光素子6乃至9及び比較発光素子10の作製方法を示す。
【0201】
まず、発光素子6について説明する(図11(A)参照)。本実施例の発光素子6は、電子注入バッファー層2104以外は、実施例1で示した発光素子1と同様に作製した。そのため、ここでは電子注入バッファー層2104以外の発光素子6の構成及び作製方法については、実施例1の説明を援用することとする。本実施例の発光素子6においては、電子輸送性物質であるBPhen(略称)と、ドナー性物質である酸化リチウム(LiO)とを共蒸着することにより、電子輸送層2103d上に20nmの膜厚の電子注入バッファー層2104を形成した。ここで、BPhen(略称)と酸化リチウム(LiO)の質量比は、1:0.02(=BPhen:LiO)となるように調整した。
【0202】
次いで、発光素子7について説明する。本実施例の発光素子7は、電子注入バッファー層2104以外は、実施例1で示した発光素子2と同様に作製した。そのため、ここでは電子注入バッファー層2104以外の発光素子7の構成及び作製方法については、実施例1の説明を援用することとする。本実施例の発光素子7においては、電子輸送性物質であるBPhen(略称)と、ドナー性物質である酸化リチウム(LiO)とを共蒸着することにより、電子輸送層2103d上に20nmの膜厚の電子注入バッファー層2104を形成した。ここで、BPhen(略称)と酸化リチウム(LiO)の質量比は、1:0.02(=BPhen:LiO)となるように調整した。
【0203】
次いで、発光素子8について説明する。本実施例の発光素子8は、電子注入バッファー層2104以外は、実施例1で示した発光素子3と同様に作製した。そのため、ここでは電子注入バッファー層2104以外の発光素子8の構成及び作製方法については、実施例1の説明を援用することとする。本実施例の発光素子8においては、電子輸送性物質であるBPhen(略称)と、ドナー性物質である酸化リチウム(LiO)とを共蒸着することにより、電子輸送層2103d上に20nmの膜厚の電子注入バッファー層2104を形成した。ここで、BPhen(略称)と酸化リチウム(LiO)の質量比は、1:0.02(=BPhen:LiO)となるように調整した。
【0204】
次いで、発光素子9について説明する。本実施例の発光素子9は、電子注入バッファー層2104以外は、実施例1で示した発光素子4と同様に作製した。そのため、ここでは電子注入バッファー層2104以外の発光素子9の構成及び作製方法については、実施例1の説明を援用することとする。本実施例の発光素子9においては、電子輸送性物質であるBPhen(略称)と、ドナー性物質である酸化リチウム(LiO)とを共蒸着することにより、電子輸送層2103d上に20nmの膜厚の電子注入バッファー層2104を形成した。ここで、BPhen(略称)と酸化リチウム(LiO)の質量比は、1:0.02(=BPhen:LiO)となるように調整した。
【0205】
次に、比較発光素子10について説明する(図11(B)参照)。比較発光素子10は、発光素子6乃至9から電子リレー層2105を削除した構造であり、その他の層については、発光素子6乃至9と同様の作製方法にて形成した。つまり、比較発光素子10においては、電子注入バッファー層2104を形成した後、電子注入バッファー層2104上に、第2の電荷発生層2106を形成した。以上により、本実施例の比較発光素子10を得た。
【0206】
以下の表3に発光素子6乃至9及び比較発光素子10の素子構造を示す。
【0207】
【表3】

【0208】
以上により得られた発光素子6乃至9及び比較発光素子10を窒素雰囲気のグローブボックス内において、各発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は、室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0209】
発光素子6乃至9及び比較発光素子10の電圧―輝度特性を図14に示す。図14において、横軸は印加した電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m)を表している。また、発光素子6乃至9及び比較発光素子10の電圧−電流密度特性を図15に示す。図15において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流密度(mA/cm)を表す。また、各発光素子の輝度が1000cd/m付近である時の電圧を以下の表4に示す。
【0210】
【表4】

【0211】
図14より、電子リレー層が設けられた発光素子6乃至9は、比較発光素子10に比べて、高い輝度が得られることがわかる。また、図15より、電子リレー層が設けられた発光素子6乃至9は、比較発光素子10に比べて、高い電流密度を有することが分かる。
【0212】
以上により、本実施例の発光素子6乃至9が、発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また、発光素子6乃至9は、低電圧で駆動可能な発光素子であることが確認できた。
【実施例3】
【0213】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子について、図11を用いて説明する。なお、本実施例で示す発光素子及び比較発光素子において、実施例1で述べた発光素子と共通する部分については、前述の説明を援用することとする。
【0214】
以下に、本実施例の発光素子11及び比較発光素子12の作製方法を示す。
【0215】
まず、発光素子11について説明する(図11(A)参照)。本実施例の発光素子11は、第1のEL層2103の電子輸送層2103d及び電子注入バッファー層2104以外は、実施例1で示した発光素子1と同様に作製した。そのため、ここでは電子輸送層2103d及び電子注入バッファー層2104以外の発光素子11の構成及び作製方法については、実施例1の説明を援用することとする。本実施例の発光素子11においては、発光層2103c上に、Alq(略称)を膜厚10nm、次いでBPhen(略称)を20nm蒸着して積層することにより、電子輸送層2103dを形成した。さらに、電子輸送層2103d上に、酸化リチウム(LiO)を0.1nm蒸着することにより、電子注入バッファー層2104を形成した。以上により、本実施例の発光素子11を得た。
【0216】
次に、比較発光素子12について説明する(図11(B)参照)。本実施例の比較発光素子12は、発光素子11から電子リレー層2105を削除した構造であり、その他の層については、発光素子11と同様の作製方法にて形成した。比較発光素子12においては、電子注入バッファー層2104を形成した後、電子注入バッファー層2104上に、第2の電荷発生層2106を形成した。以上により、本実施例の比較発光素子12を得た。
【0217】
以下の表5に発光素子11及び比較発光素子12の素子構造を示す。
【0218】
【表5】

【0219】
以上により得られた発光素子11及び比較発光素子12を窒素雰囲気のグローブボックス内において、各発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は、室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0220】
発光素子11及び比較発光素子12の電圧―輝度特性を図16に示す。図16において、横軸は印加した電圧(V)、縦軸は輝度(cd/m)を表している。また、発光素子11及び比較発光素子12の電圧−電流密度特性を図17に示す。図17において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流密度(mA/cm)を表す。また、各発光素子の輝度が1000cd/m付近である時の電圧を以下の表6に示す。
【0221】
【表6】

【0222】
図16より、電子リレー層が設けられた発光素子11は、比較発光素子12に比べて、高い輝度が得られることがわかる。また、図17より、電子リレー層が設けられた発光素子11は、比較発光素子12に比べて、高い電流密度を有することが分かる。
【0223】
以上により、本実施例の発光素子11が、発光素子として特性が得られ、十分機能することが確認できた。また、発光素子11は、低電圧で駆動可能な発光素子であることが確認できた。
【符号の説明】
【0224】
10 基板
11 トランジスタ
12 発光素子
13 電極
14 電極
15 有機化合物を含む層
16a 層間絶縁膜
16b 層間絶縁膜
16c 層間絶縁膜
17 配線
18 隔壁層
19a 層間絶縁膜
19b 層間絶縁膜
101 陽極
102 陰極
103 EL層
103a 第1の発光層
103b 第2の発光層
104 電子注入バッファー層
105 電子リレー層
106 電荷発生層
106a 正孔輸送性物質を含む層
106b アクセプター性物質を含む層
107 EL層
107a 第3の発光層
107b 第4の発光層
108 電子輸送層
111 陽極のフェルミ準位
112 陰極のフェルミ準位
113 第1のEL層のLUMO準位
114 電子リレー層におけるドナー性物質のドナー準位
115 電子リレー層における電子輸送性物質のLUMO準位
116 電荷発生層におけるアクセプター性物質のアクセプター準位
117 第2のEL層のLUMO準位
330 第1の発光
340 第2の発光
800 携帯情報端末機器
801 筐体
802 表示部
803 筐体
805 キーボード
807 連結部
810 デジタルビデオカメラ
811 筐体
812 表示部
820 携帯電話機
821 筐体
822 筐体
823 連結部
824 表示部
825 操作キー
830 コンピュータ
831 筐体
832 表示部
833 キーボード
834 筐体
840 テレビジョン
841 筐体
842 表示部
843 スタンド
850 リモコン操作機
851 操作キー
852 表示部
900 卓上照明装置
901 照明部
910 天井用照明装置
911 照明部
920 ロール型照明装置
921 照明部
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光素子
956 電極
1000 信号機
1001 照明部
1002 照明部
1003 照明部
1010 避難口誘導灯
1021 支持体
1022 照明部
1023 電柱
1024 送電線
1031 装着部
1032 照明部
1041 筐体
1042 照明部
1043 スイッチ
2100 基板
2101 電極
2102 電極
2103 EL層
2103a 電荷発生層
2103b 正孔輸送層
2103c 発光層
2103d 電子輸送層
2104 電子注入バッファー層
2105 電子リレー層
2106 電荷発生層
2107 EL層
2107a 正孔輸送層
2107b 発光層
2107c 電子輸送層
2107d 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、
前記陽極からm(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層とm+1番目のEL層の間には、
前記m番目のEL層と接する、第1のドナー性物質を含む第1の層と、
前記第1の層と接する、電子輸送性物質及び第2のドナー性物質を含む第2の層と、
前記第2の層及び前記m+1番目のEL層と接する、正孔輸送性物質及びアクセプター性物質を含む第3の層と、を有する発光素子。
【請求項2】
陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層のEL層を有し、
前記陽極からm(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層とm+1番目のEL層の間には、
前記m番目のEL層と接する、第1の電子輸送性物質及び第1のドナー性物質を含む第1の層と、
前記第1の層と接する、前記第1の電子輸送性物質よりも最低空分子軌道準位が低い第2の電子輸送性物質及び第2のドナー性物質を含む第2の層と、
前記第2の層及び前記m+1番目のEL層と接する、正孔輸送性物質及びアクセプター性物質を含む第3の層と、を有する発光素子。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の層が、前記第1の電子輸送性物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率で前記第1のドナー性物質を添加した層である発光素子。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記第1のドナー性物質及び前記第2のドナー性物質が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、または希土類金属化合物である発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記第3の層が、前記正孔輸送性物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率で前記アクセプター性物質を添加した層である発光素子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記第3の層が、前記m+1番目のEL層と接する正孔輸送性物質を含む層と、前記第2の層と接するアクセプター性物質を含む層とが積層された層である発光素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記第2の電子輸送性物質のLUMO準位が−5.0eV以上である発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記第2の電子輸送性物質は、ペリレン誘導体又は含窒素縮合芳香族化合物である発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記アクセプター性物質は、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物である発光素子。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記アクセプター性物質は、酸化モリブデンである発光素子。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光素子を用いて作製された発光装置。
【請求項12】
請求項11に記載の発光装置を含む電子機器。
【請求項13】
請求項11に記載の発光装置を含む照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−9199(P2011−9199A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118073(P2010−118073)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】