発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置並びに発光素子
【課題】 発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行う。
【解決手段】 発光素子の素子層構造設計の評価方法は、情報処理装置によって、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する方法であって、発光素子を構成する薄膜のパラメータ、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力ステップ(S01)と、入力されたパラメータに基づく、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップ(S03)と、算出された出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力ステップ(S03)と、を含む。
【解決手段】 発光素子の素子層構造設計の評価方法は、情報処理装置によって、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する方法であって、発光素子を構成する薄膜のパラメータ、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力ステップ(S01)と、入力されたパラメータに基づく、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップ(S03)と、算出された出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力ステップ(S03)と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置並びに発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば無機EL(Electroluminescent)発光素子や有機EL発光素子等のような、薄膜を積層した発光素子においては発光の色純度や光取り出し効率を高める必要がある。そのため、発光素子については共振器構造を導入することで色純度の向上、及び光取り出し効率の向上が計られている。
【0003】
共振器構造を導入した発光素子においては、発光層が放出する光と発光素子構造内のそれらの反射光とが効果的に干渉することが重要であり、構造の設計は重要な課題であった。当初、この素子構造の設計において多層膜界面での多重反射の影響を考慮した設計は行われておらず、設計された素子構造は必ずしも最適な物とは言えなかった(例えば、特許文献1及び2参照)。それに対して、多層膜界面での多重反射を考慮に入れることのできる、電磁波解析の手法である時間領域有限差分法(FDTD法:Finite Difference Time Domain Method)を用いた解析も行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−165154号公報
【特許文献2】特許3703028号公報
【非特許文献1】A.Chutinan,et.al,Org.Elec. vol.6 p3 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、発光素子を2次元あるいは3次元空間において空間メッシュに区切るため、4層以上の多層薄膜からなる発光素子の構造設計に用いるには、計算に用いる空間メッシュの数が膨大となる。従って、この方法を用いて現実的な計算時間で設計を行うことは難しかった。そのため、この方法を用いた設計により得られる最良の共振器構造を有する、4層以上の多層薄膜からなる発光素子は知られていなかった。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことを可能とする発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。更には、当該評価方法で出力される情報に基づく値を特定の範囲にすることにより、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子を提供することを目的とする。なお、ここでいう4層以上の薄膜には、電極となる薄膜は含まれない。即ち、電極となる薄膜を含むこととした場合、発光素子は、5層以上の薄膜を積層した構造を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、発光素子からの出射光に関係する光の干渉がおこるのが発光素子における積層方向に進行する光のみであることを見出した。本願発明者は、その知見に基づき、その方向のみへの光の伝搬をFDTD法で解くことにより、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子についても出射光の評価を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法は、情報処理装置によって、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価方法であって、発光素子を構成する薄膜のパラメータ、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力ステップと、入力ステップにおいて入力されたパラメータに基づく、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び入力ステップにおいて入力された発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップと、スペクトル算出ステップにおいて算出された発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法では、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を用いて、FDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルが算出される。当該方法では、光の伝播が正確に解かれるため多層膜界面での多重反射の影響を考慮することができる。また、本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法では、メッシュの分割(設定)が薄膜の積層方向に対してのみであるので、2次元あるいは3次元のメッシュを設定する従来のFDTD法に比べてメッシュ数が大幅に減る。その結果、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことが可能になる。
【0009】
薄膜のパラメータは、当該薄膜の厚さ及び屈折率を含むことが望ましい。この構成によれば、確実に発光素子からの出射光の評価を行うことができる。
【0010】
本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法は、入力ステップにおいて、複数の発光素子に係る薄膜のパラメータを入力して、スペクトル情報出力ステップにおいて出力される各発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報が、予め設定された所定の条件を満たすか否か判断して、当該条件を満たすと判断された当該出射光のスペクトルを示す情報に係る発光素子の、入力ステップにおいて入力された薄膜のパラメータを出力するパラメータ出力ステップを更に含むことが望ましい。この構成によれば、所望の性能の、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子を設計することができる。
【0011】
予め設定された所定の条件は、当該出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が所定の閾値以上であることが望ましい。この構成によれば、発光素子の設計を適切かつ確実に行うことができる。
【0012】
ところで、本発明は、上記のように発光素子の素子層構造設計の評価方法の発明として記述できる他に、以下のように発光素子の素子層構造設計の評価装置の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0013】
即ち、本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価装置は、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価装置であって、発光素子を構成する薄膜のパラメータ、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力手段と、入力手段により入力されたパラメータに基づく、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び入力手段により入力された発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、スペクトル算出手段によって算出された発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る発光素子は、発光素子の素子層構造設計の評価方法により評価されて出力される情報により示される出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が6.5以上であることを特徴とする。上記の発光素子は、出射光のスペクトルのピークの周波数における強度が十分になるので、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子となり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、メッシュの分割が薄膜の積層方向に対してのみであるので、2次元あるいは3次元のメッシュを設定する従来のFDTD法に比べてメッシュ数が大幅に減る。これにより、本発明によれば、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことが可能になる。更には、当該評価方法で出力される情報に基づく値を特定の範囲にすることにより、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面とともに本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法は、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光(取り出し光)を、評価するものである。具体的には、当該発光素子からの出射光のスペクトルをFDTD法によって算出する。また、上記の発光素子の素子層構造設計の評価方法を用いて、発光素子を設計することとしてもよい。より詳細には後述する。
【0018】
図1に本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法による評価対象となる発光素子の例を示す。図1に示すように、発光素子1は、複数の薄膜2〜9が積層した構造を含んでいる。より具体的には、空気層30の上に、電極9、発光層8、PEDOT層7、ITO層6、TiO2層5、SiO2層4、TiO2層3、及び出射媒質としてガラス基板2が順に積層された構造になっている。ここで、電極9は、下から順にAl金属9cとCa層9bとLiF層9aとが積層されたものである。上記の各層のうち薄膜2〜9の厚さは、数十nm〜数百nm程度の厚さである。なお、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法による評価対象となる発光素子は上記の例に限られず、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子であればよい。例えば、上記の発光素子1は、電極9を除くと、7層の薄膜2〜8を含む構成となっているが、4〜6層、あるいは8層以上の薄膜を含む発光素子を対象としてもよい。また、評価対象となる発光素子1には金属部位が含まれていてもよいが、金属部位が含まれるものに限定されるわけではない。
【0019】
図2に、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法が実行される発光素子の素子層構造設計の評価装置10を示す。発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、具体的には、ワークステーションやPC(Personal Computer)等の情報処理装置である。発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアにより構成されており、これらの構成要素が動作することにより後述する発光素子の素子層構造設計の評価装置10としての機能が発揮される。なお、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を情報処理装置に対して実行させるプログラムが発光素子の素子層構造設計の評価装置10において実行されることにより、本方法が行われてもよい。
【0020】
図1に示すように発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、入力部11と、スペクトル算出部12と、ピーク共鳴率算出部13と、出力部14とを備えて構成される。また、発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、外部装置20と接続されており、外部装置20から情報が入力される。
【0021】
入力部11は、発光素子1を構成する薄膜2〜9(及び空気層30)のパラメータ、及び発光層8からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力手段である。これらの情報は、FDTD法による計算に必要なものである。入力される薄膜2〜9のパラメータは、具体的には例えば、各薄膜2〜9の厚さ、及び薄膜2〜9の並び順、及び各薄膜2〜9の材質(複屈折率n(誘電率はn2)等の屈折率と透磁率μ)を示す情報である。発光層7からの発光光のスペクトルを示す情報は、具体的には例えば、発光光の真空中の波長λ、発光場所の振幅A、及び初期位相φを示す情報である。また、入力部11が入力する情報は、FDTD法による計算に用いられる情報も含む。具体的には例えば、空間メッシュ幅Δh、時間刻み幅Δt、初期計算を行う時間Tini及び計算終了時間Tmax等である。
【0022】
また、発光素子1の設計のために、異なる複数のパラメータに基づき複数の発光素子1の評価を行う場合は、入力部11は、当該複数のパラメータを入力する。この場合、複数のパラメータ自体を入力する必要は必ずしもなく、パラメータをどのように変化させるかを示す情報を入力してもよい。例えば、厚さを変化させる薄膜2〜9を示す情報、変化させる幅及び範囲を示す情報を入力してもよい。
【0023】
なお、全ての薄膜2〜9のパラメータを変更する必要はなく、発光素子1の性能に深く係わっている特定の薄膜2〜9のパラメータのみを変化させることとしてもよい。例えば、特定の2層あるいは3層の薄膜2〜9の層厚をそれぞれ独立に変化させることとするのがよい。また、層厚の変化のさせ方も、最初は粗く変化させて、後述するピーク共鳴率が高い部分を細かく変化させることとしてもよい。更に発光素子1の層構造を固定しておいて、複数の薄膜2〜9の屈折率を、層厚の変化と同様の方法で変化させることとしてもよい。
【0024】
これらの情報の入力は、具体的には例えば、ユーザによる操作により外部装置20から入力された情報を受け付けることにより行われる。また、外部装置20から入力されたパラメータを予め発光素子の素子層構造設計の評価装置10に格納させておき、ユーザによる操作をトリガとして、格納されたパラメータを入力することとしてもよい。入力部11は、入力した情報をスペクトル算出部12に出力する。
【0025】
スペクトル算出部12は、入力部11から入力された発光素子1を示すパラメータに基づいて、FDTD法によってMaxwell方程式を解き、当該発光素子1からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出手段である。具体的にはまず、スペクトル算出部12は、入力部11から入力された発光素子1を示すパラメータに基づく、FDTD法による計算を行うための、薄膜2〜9の積層方向(z軸方向)のみにメッシュに分割した発光素子1を示す情報(モデル)を生成する。なお、ここでいうメッシュは、空間的なメッシュ(空間メッシュ)である。なお、発光部位(発光層7)での発光光のスペクトルは発光素子1の構造による干渉を排除したスペクトルであるから、実素子においては、発光素子1の積層方向と垂直な方向に出射するスペクトルと同一である。また、多層構造をなす発光素子1の各層2〜9の厚さは上記のように数十nm〜数百nm程度であるため、ここで設定されるメッシュは、大きくてもせいぜい数nmである。
【0026】
続いて、スペクトル算出部12は、当該生成した情報、及び入力部11から入力された発光層7からの発光光のスペクトルを示す情報を用いて、FDTD法によって、発光素子1からの出射光のスペクトルを算出する。
【0027】
スペクトル算出部12は、発光素子1(を示す情報)に対する上記の演算により、各時刻及び各位置における電場及び磁場、各時刻及び各位置における光のエネルギー、各時刻及び各位置におけるポインティングベクトル、並びに各位置における積算されたポインティングベクトル等を算出する。スペクトル算出部12は、これらの情報に基づいて、発光素子1の出射部(具体的には、例えば、出射媒質としてガラス基板2の先端部)での、出射光のスペクトル(周波数と強度との分布)とを算出する。出射光のスペクトルの算出内容についてはより詳細に後述する。なお、スペクトル算出部12は、FDTD法による計算を行うためのアルゴリズムや既知の数値等の情報を予め記憶しており、それを読み出して演算を行う。スペクトル算出部12は、算出されたスペクトルを示す情報をピーク共鳴率算出部13に出力する。即ち、スペクトル算出部12は、算出されたスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力手段でもある。
【0028】
ピーク共鳴率算出部13は、評価対象となった発光素子1のピーク共鳴率Zを算出する手段である。ピーク共鳴率Zとは、スペクトル算出部12により算出される出射光のスペクトルのピークの周波数における強度Ipの、発光層8からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度I0に対する比の値(Z=Ip/I0)である。即ち、ピーク共鳴率算出部13は、後述するパラメータ出力手段の一機能である。ピーク共鳴率算出部13は、算出したピーク共鳴率Zを示す情報を出力部14に出力する。なお、ピーク共鳴率Zは、その値が大きいほど発光素子1の性能が高いことを示している。
【0029】
出力部14は、スペクトル算出部12により算出されて出力される各発光素子1からの出射光のスペクトルを示す情報が、所定の条件を満たすか否か判断して、当該条件を満たすと判断された当該出射光のスペクトルを示す情報に係る発光素子1の薄膜のパラメータを出力するパラメータ出力手段である。ここで、所定の条件とは、例えば、上記のピーク共鳴率Zが所定の閾値以上であることである。この条件は、予め出力部14に記憶されている。閾値としては、例えば、5.7以上であることが望ましい。また、閾値として6.0や6.2、6.5を用いることもできる。
【0030】
出力される発光素子1の薄膜2〜9のパラメータは、例えば、薄膜2〜9の厚さ等、発光素子1の構造に係るものである。出力部14は、これらのパラメータを必要に応じて入力部11等から取得する。また、その際に併せて、スペクトル算出部12により算出される発光素子1からの出射光のスペクトルを示す情報やピーク共鳴率Zの情報等も出力することとしてもよい。出力部14による出力は、例えば、発光素子の素子層構造設計の評価装置10が備える表示装置等に対して行われ、ユーザはそれを参照して、所定の性能の発光素子1の設計情報を知ることができる。以上が、発光素子の素子層構造設計の評価装置10の構成である。
【0031】
引き続いて、図3〜図6のフローチャートを用いて、上記の発光素子の素子層構造設計の評価装置10による、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を説明する。
【0032】
発光素子の素子層構造設計の評価装置10では、まず、入力部11によって、上述したパラメータ等の発光素子1の評価に必要な情報が入力される(図3のS01、入力ステップ)。本実施形態のうち、発光素子1を構成する薄膜2〜9の厚さを変更した複数の発光素子1に対して評価を行う。
【0033】
続いて、入力部11からスペクトル算出部12に発光素子1の評価に必要な情報が出力される。その際、入力部11では、薄膜2〜9の厚さ(層厚)を設定する(S02、入力ステップ)。層膜の設定の仕方は、例えば、上述したように複数の層厚を一定量ずつ変化させる方法や乱数により層厚を変化させる方法等を用いることができる。
【0034】
続いて、入力部11から入力された情報に基づいて、スペクトル算出部12によって、発光素子1からの出射光のスペクトルが、FDTD法により算出される(S03、スペクトル算出ステップ)。この際、設定されるメッシュは発光素子1の薄膜2〜8の積層方向(z軸)のみに分割される。即ち、発光素子1において、1次元のメッシュが生成される。即ち、空間の一つの軸(z軸)方向に進む光のみが(一次元)FDTD法によって解かれる。FDTD法については、例えば、宇野亨「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」コロナ社,1998に記載されている方法を用いることができる。
【0035】
ここで、スペクトル算出部12による、FDTD法を用いた出射光のスペクトルの算出を、図4〜図6のフローチャートを用いて、より詳細に説明する。まず、発光素子1の評価に必要な情報が読込まれる(図4のS31、スペクトル算出ステップ)。続いて、真空中の波長が角振動数に変換される(S32、スペクトル算出ステップ)。続いて、入力部11により入力されたパラメータ等で示される発光素子1に、1次元メッシュを生成する(S33、スペクトル算出ステップ)。メッシュは以下のように設定される。
【0036】
上記のように、光の進行方向をz軸とし、空間メッシュ幅をΔh、時間刻み幅をΔtとする。層はz軸方向に並ぶ。FDTD法の時間空間メッシュに切り方により、電場Eと磁場Hとは時間的及び空間的に交互に配置される。これにより、時間に関して、電場はt=0、Δt、…(n−1)Δt、nΔt、(n+1)Δt、…となり、磁場はt=1/2Δt、3/2Δt、…(n−1/2)Δt、(n+1/2)Δt、(n+3/2)Δt、…となる(ここで、nは整数であり時間的なメッシュのインデックスを示す)。また、位置に関して、電場はz=0、Δh、…(m−1)Δh、mΔh、(m+1)Δh、…となり、磁場はt=1/2Δh、3/2Δh、…(m−1/2)Δh、(m+1/2)Δh、(m+3/2)Δh、…となる(ここで、mは整数であり空間的なメッシュのインデックスを示す)。電場と磁場とは、x成分とy成分とでそれぞれ、
【数1】
と表される。続いて、誘電率、透磁率あるいは誘電率のフィッティング関数のメッシュへの割付が行われる(S34、スペクトル算出ステップ)。続いて、時間ステップT=0とし、以下の処理(以下、処理1と呼ぶ)が行われる(図5のS35、スペクトル算出ステップ)。
【0037】
当該処理1を図6のフローチャートを用いて説明する。まず、発光点jにおける電場の励振(発光)が以下の式により求められる(S51、スペクトル算出ステップ)。
【数2】
ここで、ωは発光光の角振動数、φは初期位相、Aは振幅をそれぞれ表す。後述するε(j)を用いた、ε(j)A2がエネルギーにあたる。
【0038】
続いて、電場の時間発展の計算(電場の更新)が行われる(S52、スペクトル算出ステップ)。第n−1時間ステップから第n時間ステップへの(z軸での)位置iの電場の更新は以下の式に従って行われる。
【数3】
ここで、A(i)、Bx(i)、By(i)、φtotDrxn−1(i)、φtotDryn−1(i)、φtotLzxn−1(i)及びφtotLzyn−1(i)は、以下の各場合に応じて、次の式で与えられる。
【0039】
(1)位置iにある物質の誘電率εが、ε=εre+iεim(この式においては、iは虚数単位を表す)で与えられる場合
ωを光の角振動数とすると、
【数4】
となる。
【0040】
(2)位置iにある物質の誘電率εが、光の角振動数をωとして、
【数5】
で与えられる場合(ここで、iを虚数単位として
【数6】
である)
ここで、Drj、LzjはDrude型、Lorenz型の関数である。また、aj、bjは展開係数、ωDrpj、ωLzpjはプラズマ振動数に対応するパラメータ、ωDrtj、ωLztjは衝突振動数に対応するパラメータである。このとき、
【数7】
となる。ここで、ε0は真空中での誘電率である。χDr0j、χLz0j、φDrx,n−1、φDry,n−1、φLzx,n−1、φLzy,n−1は、次式で表される。
【数8】
但し、
【数9】
である。
【0041】
また、
【数10】
である。但し、
【数11】
である。
【0042】
更に、
【数12】
である。ここで、
【数13】
である。
【0043】
ωLzpj<ωLztjでは、
【数14】
である。ここで、
【数15】
である。
【0044】
続いて、メッシュの先頭(j=0)と最後(j=mj)における電場に以下のような境界条件を設定する(Murの一次吸収境界条件)(S53、スペクトル算出ステップ)。
【数16】
ここでν0、νmjは真空中の光速をcとし、先頭のメッシュ(j=0)に割り当てられた屈折率をn0、最後のメッシュ(j=mj)に割り当てられた屈折率をnmjとして、以下の式により求められる。
【数17】
【0045】
続いて、時間ステップT=T+Δt/2とし、磁場の時間発展の計算(電場の更新)が行われる(S54、スペクトル算出ステップ)。第n−1/2時間ステップから第n+1/2時間ステップへの(z軸での)位置i+1/2の磁場の更新は以下の式に従って行われる。
【数18】
ここで、C(i)、Dx(i)、Dy(i)は以下の式で与えられる。透磁率μを、μ=μre+iμim(この式においては、iは虚数単位を表す)とすると、
【数19】
となる。以上が処理1の説明である。
【0046】
引き続いて、T>Tiniを満たすか否かが判断される(図5のS36、スペクトル算出ステップ)。T>Tiniを満たさないと判断された場合、T=T+Δt/2とされて、再度処理1(S35)が行われる。
【0047】
T>Tiniを満たすと判断された場合、T=T+Δt/2とされて、処理1(S37、スペクトル算出ステップ)が行われる。続いて、電場、磁場及びポインティングベクトル等が出力される(S38、スペクトル算出ステップ)。ここで、観測点kでのポインティングベクトルSzは、S=E×Hより、以下の式により算出される。
【数20】
【0048】
引き続いて、T>Tmaxを満たすか否かが判断される(S39、スペクトル算出ステップ)。T>Tmaxを満たさないと判断された場合、T=T+Δt/2とされて、再度処理1(S37)が行われる。T>Tmaxを満たすと判断された場合、ポインティングベクトルの積算値より、平均のポインティングベクトルが求められる(S40、スペクトル算出ステップ)。ここでポインティングベクトルの積算値は以下の式により求められる。
【数21】
【0049】
上記のような演算により導出された値から、発光素子1からの出射光のスペクトルが算出される。算出された出射光のスペクトルを示す情報は、スペクトル算出部12からピーク共鳴率算出部13に出力される(図3におけるS03、スペクトル情報出力ステップ)。
【0050】
続いて、ピーク共鳴率算出部13によって、出射光のスペクトルが算出された発光素子1に対して、ピーク共鳴率Zが計算される(図3におけるS04、パラメータ出力ステップ)。算出されたピーク共鳴率Zは、ピーク共鳴率算出部13から出力部14に出力される。
【0051】
ここで、出射光のスペクトルが算出されるべき、発光素子1の全ての層厚の組み合わせについて、出射光のスペクトルの算出が行われたか判断される(S05)。全ての層厚の組み合わせについて出射光のスペクトルの算出が行われていない場合、入力部11からスペクトル算出部12に、既に算出した層厚の組み合わせとは異なる層厚の組み合わせのパラメータを入力して、再度出射光のスペクトルの算出が行われる(S02〜S05)。
【0052】
一方、全ての層厚の組み合わせについて出射光のスペクトルの算出が行われていた場合、出力部14によって、算出された各ピーク共鳴率Zが予め設定された閾値を超えているか否かが判断される。ピーク共鳴率Zが予め設定された閾値超えていたと判断された場合、出力部14によって当該ピーク共鳴率Zに係る発光素子1のパラメータが出力される(S06、パラメータ出力ステップ)。また、それに併せて、スペクトル算出部12により算出される発光素子1からの出射光のスペクトルを示す情報やピーク共鳴率Zの情報等も出力されてもよい。以上が、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法である。
【0053】
なお、金属部位が発光素子1に含まれていた場合は、その金属の誘電率の分散関係をデバイ型、ドゥルーデ型、ローレンツ型、あるいは有理関数型等の関数1個以上で関数フィッティングを行い、RC法を用いて一次元FDTDシミュレーションに用いてもよい。RC法に関しては上述した「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」記載の方法を好適に用いることができる。
【0054】
発光素子1の非金属部位に関しては、誘電率の数値を直接、一次元FDTDシミュレーションに用いてよいが、金属部位と同様に誘電率分散関係をデバイ型、ドゥルーデ型、ローレンツ型、あるいは有理関数型等の関数1個以上で関数フィッティングしてRC法を用いて一次元FDTDシミュレーションに用いても良い。
【0055】
スペクトルの計算においては、発光波長の異なる単色光に関する計算を種種の発光波長に関して独立に行ってもよいが、種種の発光波長を含んだパルス波、例えばガウス型パルス等を用いて計算をおこなってもよい。
【0056】
上述したように、本実施形態によれば、発光素子1を構成する薄膜の積層方向(z軸方向)のみにメッシュに分割して、FDTD法によって当該発光素子1からの出射光のスペクトルが算出される。当該方法では、光の伝播が正確に解かれるため多層膜界面での多重反射の影響を考慮することができる。
【0057】
また、本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法では、メッシュの分割(設定)が薄膜の積層方向に対してのみであるので、2次元あるいは3次元のメッシュを設定する従来のFDTD法に比べてメッシュ数が大幅に減る。その結果、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことが可能になる。具体的には、従来の方法の1/2乗〜1/3乗程度の時間の時間で計算を行うことができ、一年ほどの計算時間を一週間程に短縮できる。
【0058】
また、本実施形態のように、評価対象の発光素子1を構成する薄膜2〜9の、演算に用いかつ変化させうるパラメータとして、薄膜2〜9の厚さ及び屈折率を含むこととすれば、現実的な計算時間で確実に発光素子1からの出射光の評価、及び発光素子1の設計を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態のように、異なるパラメータの複数の発光素子1の評価を行い、その結果を用いることとすれば、所望の性能、即ちピーク共鳴率Zが高い4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子1を設計することができる。更に、本実施形態のように、ピーク共鳴率Zを用いた判断を行うこととすれば、発光素子1の設計を適切かつ確実に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態においては、複数の発光素子1に対して出射光の評価を行い所定の条件を満たすものパラメータをユーザが確認できるように出力することとしているが、発光素子1に対して出射光の評価を行いその評価結果を、(所定の条件によらずに)ユーザが確認できるように出力することとしてもよい。
【0061】
更には、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法により出力されるピーク共鳴率Zが6.5以上の発光素子1は、機能的に好ましい素子構造を有している。このように、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法により出力される情報に基づく値を特定の範囲にすることにより、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子を提供することができる。
【実施例1】
【0062】
上述した実施形態の実施例を以下に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では図1に示し上述した発光素子1を評価対象とした。
【0063】
各層2〜9の層厚は、それぞれ、空気層30を100nm、電極9を構成するAl金属9cを100nm、Ca層9bを5nm、LiF層9aを4nm、ITO層6を150nm、TiO2層5を50nm、SiO2層4を550nm、TiO2層3を130nm、ガラス基板2を100nmとした。
【0064】
評価のための計算に用いたLiF層9aの屈折率分布を図7に、ITO層6の屈折率分布を図8に、PEDOT層7の屈折率分布を図9に、発光層8の屈折率分布を図10に、ガラス基板2の屈折率分布を図11にそれぞれ示す。また、TiO2層3の屈折率は2.3、SiO2層4の屈折率は1.46とした。Ca層9b及びAl金属9cの誘電率分散については、Ca層9bについてはドゥルーデ型モデル15個、Al金属9cについてはドゥルーデ型モデル3個で表現した。ドゥルーデ型モデルは以下の式であらわされる。
【数22】
ここで、εreは誘電率の実部、εimは誘電率の虚部、aj、ωjDrt、ωjDrpはパラメータ、ωはCa層9bあるいはAl金属9cに入射する光の角振動数である。Ca層9b及びAl金属9cのパラメータをそれぞれ図12及び図13に示す。
【0065】
また、発光層8の層厚を20nm〜350nmの範囲で、PEDOT層7の層厚を10nm〜350nmの範囲で、各層10nm刻みで層厚を変化させ、評価を行った。また、各層厚に対して発光波長300nmから800nmまで波長10nmステップで一次元FDTD法により波長毎の取り出し効率を求めた。ここでいう取り出し効率とは、発光層8で単位時間単位面積あたりに発光する光のエネルギー量で、出射媒質であるガラス基板2内での単位時間単位面積あたりのエネルギー流量を割ったものである。発光層8における発光光のスペクトル(入力スペクトル)に取り出し効率を乗ずることにより、ガラス基板2内での出射光のスペクトル(出射スペクトル)を求めた。本実施例に用いた入力スペクトルを図14に示す。取り出し効率を一次元FDTD法で求める際、ガラス基板2と空気層30とは該当する誘電率及び透磁率をもつ吸収端をもつとし(吸収境界とする)、発光位置は発光層8内で、PEDOT層7から1nm離れた部分で幅1nmとした。
【0066】
入力スペクトル及び出射スペクトルより、各層厚に関するピーク共鳴率Zを求めた。求められたピーク共鳴率Zの、PEDOT層7及び発光層8の厚さに応じた値を図15の表に示す。なお、この表に示す値は、ピーク共鳴率Zが高い値を示す部分である。同様の素子構造の最適PEDOT層厚、発光層厚を既存の手法(特許第3703028号)で設計したところ、PEDOT層厚95nm、発光層厚45nmであり、ピーク共鳴率Zは6.34であった。図15の表に示すように、本発明に係る方法によって評価することによって設計した多層膜構造の発光素子は、従来法よりもピーク共鳴率Zの高い発光素子1を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法による評価対象となる発光素子の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価装置の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例で用いられるLiF層の屈折率分布を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例で用いられるITO層の屈折率分布を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例で用いられるPEDOT層の屈折率分布を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例で用いられる発光層の屈折率分布を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例で用いられるガラス基板の屈折率分布を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例で用いられるCa層の誘電率を計算するのに用いられるパラメータの表である。
【図13】本発明の実施例で用いられるAl金属の誘電率を計算するのに用いられるパラメータの表である。
【図14】本発明の実施例で用いられる入力スペクトルを示すグラフである。
【図15】本発明の実施例によって算出されたピーク共鳴率の、発光層及びPEDOT層の層厚の変化に応じた値を示す表である。
【符号の説明】
【0068】
1…発光素子、10…評価装置、11…入力部、12…スペクトル算出部、13…ピーク共鳴率算出部、14…出力部、20…外部装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置並びに発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば無機EL(Electroluminescent)発光素子や有機EL発光素子等のような、薄膜を積層した発光素子においては発光の色純度や光取り出し効率を高める必要がある。そのため、発光素子については共振器構造を導入することで色純度の向上、及び光取り出し効率の向上が計られている。
【0003】
共振器構造を導入した発光素子においては、発光層が放出する光と発光素子構造内のそれらの反射光とが効果的に干渉することが重要であり、構造の設計は重要な課題であった。当初、この素子構造の設計において多層膜界面での多重反射の影響を考慮した設計は行われておらず、設計された素子構造は必ずしも最適な物とは言えなかった(例えば、特許文献1及び2参照)。それに対して、多層膜界面での多重反射を考慮に入れることのできる、電磁波解析の手法である時間領域有限差分法(FDTD法:Finite Difference Time Domain Method)を用いた解析も行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−165154号公報
【特許文献2】特許3703028号公報
【非特許文献1】A.Chutinan,et.al,Org.Elec. vol.6 p3 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、発光素子を2次元あるいは3次元空間において空間メッシュに区切るため、4層以上の多層薄膜からなる発光素子の構造設計に用いるには、計算に用いる空間メッシュの数が膨大となる。従って、この方法を用いて現実的な計算時間で設計を行うことは難しかった。そのため、この方法を用いた設計により得られる最良の共振器構造を有する、4層以上の多層薄膜からなる発光素子は知られていなかった。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことを可能とする発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。更には、当該評価方法で出力される情報に基づく値を特定の範囲にすることにより、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子を提供することを目的とする。なお、ここでいう4層以上の薄膜には、電極となる薄膜は含まれない。即ち、電極となる薄膜を含むこととした場合、発光素子は、5層以上の薄膜を積層した構造を含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、発光素子からの出射光に関係する光の干渉がおこるのが発光素子における積層方向に進行する光のみであることを見出した。本願発明者は、その知見に基づき、その方向のみへの光の伝搬をFDTD法で解くことにより、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子についても出射光の評価を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法は、情報処理装置によって、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価方法であって、発光素子を構成する薄膜のパラメータ、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力ステップと、入力ステップにおいて入力されたパラメータに基づく、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び入力ステップにおいて入力された発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップと、スペクトル算出ステップにおいて算出された発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法では、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を用いて、FDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルが算出される。当該方法では、光の伝播が正確に解かれるため多層膜界面での多重反射の影響を考慮することができる。また、本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法では、メッシュの分割(設定)が薄膜の積層方向に対してのみであるので、2次元あるいは3次元のメッシュを設定する従来のFDTD法に比べてメッシュ数が大幅に減る。その結果、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことが可能になる。
【0009】
薄膜のパラメータは、当該薄膜の厚さ及び屈折率を含むことが望ましい。この構成によれば、確実に発光素子からの出射光の評価を行うことができる。
【0010】
本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法は、入力ステップにおいて、複数の発光素子に係る薄膜のパラメータを入力して、スペクトル情報出力ステップにおいて出力される各発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報が、予め設定された所定の条件を満たすか否か判断して、当該条件を満たすと判断された当該出射光のスペクトルを示す情報に係る発光素子の、入力ステップにおいて入力された薄膜のパラメータを出力するパラメータ出力ステップを更に含むことが望ましい。この構成によれば、所望の性能の、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子を設計することができる。
【0011】
予め設定された所定の条件は、当該出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が所定の閾値以上であることが望ましい。この構成によれば、発光素子の設計を適切かつ確実に行うことができる。
【0012】
ところで、本発明は、上記のように発光素子の素子層構造設計の評価方法の発明として記述できる他に、以下のように発光素子の素子層構造設計の評価装置の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0013】
即ち、本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価装置は、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価装置であって、発光素子を構成する薄膜のパラメータ、及び発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力手段と、入力手段により入力されたパラメータに基づく、薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び入力手段により入力された発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、スペクトル算出手段によって算出された発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る発光素子は、発光素子の素子層構造設計の評価方法により評価されて出力される情報により示される出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が6.5以上であることを特徴とする。上記の発光素子は、出射光のスペクトルのピークの周波数における強度が十分になるので、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子となり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、メッシュの分割が薄膜の積層方向に対してのみであるので、2次元あるいは3次元のメッシュを設定する従来のFDTD法に比べてメッシュ数が大幅に減る。これにより、本発明によれば、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことが可能になる。更には、当該評価方法で出力される情報に基づく値を特定の範囲にすることにより、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面とともに本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法及び評価装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0017】
本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法は、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光(取り出し光)を、評価するものである。具体的には、当該発光素子からの出射光のスペクトルをFDTD法によって算出する。また、上記の発光素子の素子層構造設計の評価方法を用いて、発光素子を設計することとしてもよい。より詳細には後述する。
【0018】
図1に本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法による評価対象となる発光素子の例を示す。図1に示すように、発光素子1は、複数の薄膜2〜9が積層した構造を含んでいる。より具体的には、空気層30の上に、電極9、発光層8、PEDOT層7、ITO層6、TiO2層5、SiO2層4、TiO2層3、及び出射媒質としてガラス基板2が順に積層された構造になっている。ここで、電極9は、下から順にAl金属9cとCa層9bとLiF層9aとが積層されたものである。上記の各層のうち薄膜2〜9の厚さは、数十nm〜数百nm程度の厚さである。なお、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法による評価対象となる発光素子は上記の例に限られず、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子であればよい。例えば、上記の発光素子1は、電極9を除くと、7層の薄膜2〜8を含む構成となっているが、4〜6層、あるいは8層以上の薄膜を含む発光素子を対象としてもよい。また、評価対象となる発光素子1には金属部位が含まれていてもよいが、金属部位が含まれるものに限定されるわけではない。
【0019】
図2に、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法が実行される発光素子の素子層構造設計の評価装置10を示す。発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、具体的には、ワークステーションやPC(Personal Computer)等の情報処理装置である。発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアにより構成されており、これらの構成要素が動作することにより後述する発光素子の素子層構造設計の評価装置10としての機能が発揮される。なお、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を情報処理装置に対して実行させるプログラムが発光素子の素子層構造設計の評価装置10において実行されることにより、本方法が行われてもよい。
【0020】
図1に示すように発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、入力部11と、スペクトル算出部12と、ピーク共鳴率算出部13と、出力部14とを備えて構成される。また、発光素子の素子層構造設計の評価装置10は、外部装置20と接続されており、外部装置20から情報が入力される。
【0021】
入力部11は、発光素子1を構成する薄膜2〜9(及び空気層30)のパラメータ、及び発光層8からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力手段である。これらの情報は、FDTD法による計算に必要なものである。入力される薄膜2〜9のパラメータは、具体的には例えば、各薄膜2〜9の厚さ、及び薄膜2〜9の並び順、及び各薄膜2〜9の材質(複屈折率n(誘電率はn2)等の屈折率と透磁率μ)を示す情報である。発光層7からの発光光のスペクトルを示す情報は、具体的には例えば、発光光の真空中の波長λ、発光場所の振幅A、及び初期位相φを示す情報である。また、入力部11が入力する情報は、FDTD法による計算に用いられる情報も含む。具体的には例えば、空間メッシュ幅Δh、時間刻み幅Δt、初期計算を行う時間Tini及び計算終了時間Tmax等である。
【0022】
また、発光素子1の設計のために、異なる複数のパラメータに基づき複数の発光素子1の評価を行う場合は、入力部11は、当該複数のパラメータを入力する。この場合、複数のパラメータ自体を入力する必要は必ずしもなく、パラメータをどのように変化させるかを示す情報を入力してもよい。例えば、厚さを変化させる薄膜2〜9を示す情報、変化させる幅及び範囲を示す情報を入力してもよい。
【0023】
なお、全ての薄膜2〜9のパラメータを変更する必要はなく、発光素子1の性能に深く係わっている特定の薄膜2〜9のパラメータのみを変化させることとしてもよい。例えば、特定の2層あるいは3層の薄膜2〜9の層厚をそれぞれ独立に変化させることとするのがよい。また、層厚の変化のさせ方も、最初は粗く変化させて、後述するピーク共鳴率が高い部分を細かく変化させることとしてもよい。更に発光素子1の層構造を固定しておいて、複数の薄膜2〜9の屈折率を、層厚の変化と同様の方法で変化させることとしてもよい。
【0024】
これらの情報の入力は、具体的には例えば、ユーザによる操作により外部装置20から入力された情報を受け付けることにより行われる。また、外部装置20から入力されたパラメータを予め発光素子の素子層構造設計の評価装置10に格納させておき、ユーザによる操作をトリガとして、格納されたパラメータを入力することとしてもよい。入力部11は、入力した情報をスペクトル算出部12に出力する。
【0025】
スペクトル算出部12は、入力部11から入力された発光素子1を示すパラメータに基づいて、FDTD法によってMaxwell方程式を解き、当該発光素子1からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出手段である。具体的にはまず、スペクトル算出部12は、入力部11から入力された発光素子1を示すパラメータに基づく、FDTD法による計算を行うための、薄膜2〜9の積層方向(z軸方向)のみにメッシュに分割した発光素子1を示す情報(モデル)を生成する。なお、ここでいうメッシュは、空間的なメッシュ(空間メッシュ)である。なお、発光部位(発光層7)での発光光のスペクトルは発光素子1の構造による干渉を排除したスペクトルであるから、実素子においては、発光素子1の積層方向と垂直な方向に出射するスペクトルと同一である。また、多層構造をなす発光素子1の各層2〜9の厚さは上記のように数十nm〜数百nm程度であるため、ここで設定されるメッシュは、大きくてもせいぜい数nmである。
【0026】
続いて、スペクトル算出部12は、当該生成した情報、及び入力部11から入力された発光層7からの発光光のスペクトルを示す情報を用いて、FDTD法によって、発光素子1からの出射光のスペクトルを算出する。
【0027】
スペクトル算出部12は、発光素子1(を示す情報)に対する上記の演算により、各時刻及び各位置における電場及び磁場、各時刻及び各位置における光のエネルギー、各時刻及び各位置におけるポインティングベクトル、並びに各位置における積算されたポインティングベクトル等を算出する。スペクトル算出部12は、これらの情報に基づいて、発光素子1の出射部(具体的には、例えば、出射媒質としてガラス基板2の先端部)での、出射光のスペクトル(周波数と強度との分布)とを算出する。出射光のスペクトルの算出内容についてはより詳細に後述する。なお、スペクトル算出部12は、FDTD法による計算を行うためのアルゴリズムや既知の数値等の情報を予め記憶しており、それを読み出して演算を行う。スペクトル算出部12は、算出されたスペクトルを示す情報をピーク共鳴率算出部13に出力する。即ち、スペクトル算出部12は、算出されたスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力手段でもある。
【0028】
ピーク共鳴率算出部13は、評価対象となった発光素子1のピーク共鳴率Zを算出する手段である。ピーク共鳴率Zとは、スペクトル算出部12により算出される出射光のスペクトルのピークの周波数における強度Ipの、発光層8からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度I0に対する比の値(Z=Ip/I0)である。即ち、ピーク共鳴率算出部13は、後述するパラメータ出力手段の一機能である。ピーク共鳴率算出部13は、算出したピーク共鳴率Zを示す情報を出力部14に出力する。なお、ピーク共鳴率Zは、その値が大きいほど発光素子1の性能が高いことを示している。
【0029】
出力部14は、スペクトル算出部12により算出されて出力される各発光素子1からの出射光のスペクトルを示す情報が、所定の条件を満たすか否か判断して、当該条件を満たすと判断された当該出射光のスペクトルを示す情報に係る発光素子1の薄膜のパラメータを出力するパラメータ出力手段である。ここで、所定の条件とは、例えば、上記のピーク共鳴率Zが所定の閾値以上であることである。この条件は、予め出力部14に記憶されている。閾値としては、例えば、5.7以上であることが望ましい。また、閾値として6.0や6.2、6.5を用いることもできる。
【0030】
出力される発光素子1の薄膜2〜9のパラメータは、例えば、薄膜2〜9の厚さ等、発光素子1の構造に係るものである。出力部14は、これらのパラメータを必要に応じて入力部11等から取得する。また、その際に併せて、スペクトル算出部12により算出される発光素子1からの出射光のスペクトルを示す情報やピーク共鳴率Zの情報等も出力することとしてもよい。出力部14による出力は、例えば、発光素子の素子層構造設計の評価装置10が備える表示装置等に対して行われ、ユーザはそれを参照して、所定の性能の発光素子1の設計情報を知ることができる。以上が、発光素子の素子層構造設計の評価装置10の構成である。
【0031】
引き続いて、図3〜図6のフローチャートを用いて、上記の発光素子の素子層構造設計の評価装置10による、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を説明する。
【0032】
発光素子の素子層構造設計の評価装置10では、まず、入力部11によって、上述したパラメータ等の発光素子1の評価に必要な情報が入力される(図3のS01、入力ステップ)。本実施形態のうち、発光素子1を構成する薄膜2〜9の厚さを変更した複数の発光素子1に対して評価を行う。
【0033】
続いて、入力部11からスペクトル算出部12に発光素子1の評価に必要な情報が出力される。その際、入力部11では、薄膜2〜9の厚さ(層厚)を設定する(S02、入力ステップ)。層膜の設定の仕方は、例えば、上述したように複数の層厚を一定量ずつ変化させる方法や乱数により層厚を変化させる方法等を用いることができる。
【0034】
続いて、入力部11から入力された情報に基づいて、スペクトル算出部12によって、発光素子1からの出射光のスペクトルが、FDTD法により算出される(S03、スペクトル算出ステップ)。この際、設定されるメッシュは発光素子1の薄膜2〜8の積層方向(z軸)のみに分割される。即ち、発光素子1において、1次元のメッシュが生成される。即ち、空間の一つの軸(z軸)方向に進む光のみが(一次元)FDTD法によって解かれる。FDTD法については、例えば、宇野亨「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」コロナ社,1998に記載されている方法を用いることができる。
【0035】
ここで、スペクトル算出部12による、FDTD法を用いた出射光のスペクトルの算出を、図4〜図6のフローチャートを用いて、より詳細に説明する。まず、発光素子1の評価に必要な情報が読込まれる(図4のS31、スペクトル算出ステップ)。続いて、真空中の波長が角振動数に変換される(S32、スペクトル算出ステップ)。続いて、入力部11により入力されたパラメータ等で示される発光素子1に、1次元メッシュを生成する(S33、スペクトル算出ステップ)。メッシュは以下のように設定される。
【0036】
上記のように、光の進行方向をz軸とし、空間メッシュ幅をΔh、時間刻み幅をΔtとする。層はz軸方向に並ぶ。FDTD法の時間空間メッシュに切り方により、電場Eと磁場Hとは時間的及び空間的に交互に配置される。これにより、時間に関して、電場はt=0、Δt、…(n−1)Δt、nΔt、(n+1)Δt、…となり、磁場はt=1/2Δt、3/2Δt、…(n−1/2)Δt、(n+1/2)Δt、(n+3/2)Δt、…となる(ここで、nは整数であり時間的なメッシュのインデックスを示す)。また、位置に関して、電場はz=0、Δh、…(m−1)Δh、mΔh、(m+1)Δh、…となり、磁場はt=1/2Δh、3/2Δh、…(m−1/2)Δh、(m+1/2)Δh、(m+3/2)Δh、…となる(ここで、mは整数であり空間的なメッシュのインデックスを示す)。電場と磁場とは、x成分とy成分とでそれぞれ、
【数1】
と表される。続いて、誘電率、透磁率あるいは誘電率のフィッティング関数のメッシュへの割付が行われる(S34、スペクトル算出ステップ)。続いて、時間ステップT=0とし、以下の処理(以下、処理1と呼ぶ)が行われる(図5のS35、スペクトル算出ステップ)。
【0037】
当該処理1を図6のフローチャートを用いて説明する。まず、発光点jにおける電場の励振(発光)が以下の式により求められる(S51、スペクトル算出ステップ)。
【数2】
ここで、ωは発光光の角振動数、φは初期位相、Aは振幅をそれぞれ表す。後述するε(j)を用いた、ε(j)A2がエネルギーにあたる。
【0038】
続いて、電場の時間発展の計算(電場の更新)が行われる(S52、スペクトル算出ステップ)。第n−1時間ステップから第n時間ステップへの(z軸での)位置iの電場の更新は以下の式に従って行われる。
【数3】
ここで、A(i)、Bx(i)、By(i)、φtotDrxn−1(i)、φtotDryn−1(i)、φtotLzxn−1(i)及びφtotLzyn−1(i)は、以下の各場合に応じて、次の式で与えられる。
【0039】
(1)位置iにある物質の誘電率εが、ε=εre+iεim(この式においては、iは虚数単位を表す)で与えられる場合
ωを光の角振動数とすると、
【数4】
となる。
【0040】
(2)位置iにある物質の誘電率εが、光の角振動数をωとして、
【数5】
で与えられる場合(ここで、iを虚数単位として
【数6】
である)
ここで、Drj、LzjはDrude型、Lorenz型の関数である。また、aj、bjは展開係数、ωDrpj、ωLzpjはプラズマ振動数に対応するパラメータ、ωDrtj、ωLztjは衝突振動数に対応するパラメータである。このとき、
【数7】
となる。ここで、ε0は真空中での誘電率である。χDr0j、χLz0j、φDrx,n−1、φDry,n−1、φLzx,n−1、φLzy,n−1は、次式で表される。
【数8】
但し、
【数9】
である。
【0041】
また、
【数10】
である。但し、
【数11】
である。
【0042】
更に、
【数12】
である。ここで、
【数13】
である。
【0043】
ωLzpj<ωLztjでは、
【数14】
である。ここで、
【数15】
である。
【0044】
続いて、メッシュの先頭(j=0)と最後(j=mj)における電場に以下のような境界条件を設定する(Murの一次吸収境界条件)(S53、スペクトル算出ステップ)。
【数16】
ここでν0、νmjは真空中の光速をcとし、先頭のメッシュ(j=0)に割り当てられた屈折率をn0、最後のメッシュ(j=mj)に割り当てられた屈折率をnmjとして、以下の式により求められる。
【数17】
【0045】
続いて、時間ステップT=T+Δt/2とし、磁場の時間発展の計算(電場の更新)が行われる(S54、スペクトル算出ステップ)。第n−1/2時間ステップから第n+1/2時間ステップへの(z軸での)位置i+1/2の磁場の更新は以下の式に従って行われる。
【数18】
ここで、C(i)、Dx(i)、Dy(i)は以下の式で与えられる。透磁率μを、μ=μre+iμim(この式においては、iは虚数単位を表す)とすると、
【数19】
となる。以上が処理1の説明である。
【0046】
引き続いて、T>Tiniを満たすか否かが判断される(図5のS36、スペクトル算出ステップ)。T>Tiniを満たさないと判断された場合、T=T+Δt/2とされて、再度処理1(S35)が行われる。
【0047】
T>Tiniを満たすと判断された場合、T=T+Δt/2とされて、処理1(S37、スペクトル算出ステップ)が行われる。続いて、電場、磁場及びポインティングベクトル等が出力される(S38、スペクトル算出ステップ)。ここで、観測点kでのポインティングベクトルSzは、S=E×Hより、以下の式により算出される。
【数20】
【0048】
引き続いて、T>Tmaxを満たすか否かが判断される(S39、スペクトル算出ステップ)。T>Tmaxを満たさないと判断された場合、T=T+Δt/2とされて、再度処理1(S37)が行われる。T>Tmaxを満たすと判断された場合、ポインティングベクトルの積算値より、平均のポインティングベクトルが求められる(S40、スペクトル算出ステップ)。ここでポインティングベクトルの積算値は以下の式により求められる。
【数21】
【0049】
上記のような演算により導出された値から、発光素子1からの出射光のスペクトルが算出される。算出された出射光のスペクトルを示す情報は、スペクトル算出部12からピーク共鳴率算出部13に出力される(図3におけるS03、スペクトル情報出力ステップ)。
【0050】
続いて、ピーク共鳴率算出部13によって、出射光のスペクトルが算出された発光素子1に対して、ピーク共鳴率Zが計算される(図3におけるS04、パラメータ出力ステップ)。算出されたピーク共鳴率Zは、ピーク共鳴率算出部13から出力部14に出力される。
【0051】
ここで、出射光のスペクトルが算出されるべき、発光素子1の全ての層厚の組み合わせについて、出射光のスペクトルの算出が行われたか判断される(S05)。全ての層厚の組み合わせについて出射光のスペクトルの算出が行われていない場合、入力部11からスペクトル算出部12に、既に算出した層厚の組み合わせとは異なる層厚の組み合わせのパラメータを入力して、再度出射光のスペクトルの算出が行われる(S02〜S05)。
【0052】
一方、全ての層厚の組み合わせについて出射光のスペクトルの算出が行われていた場合、出力部14によって、算出された各ピーク共鳴率Zが予め設定された閾値を超えているか否かが判断される。ピーク共鳴率Zが予め設定された閾値超えていたと判断された場合、出力部14によって当該ピーク共鳴率Zに係る発光素子1のパラメータが出力される(S06、パラメータ出力ステップ)。また、それに併せて、スペクトル算出部12により算出される発光素子1からの出射光のスペクトルを示す情報やピーク共鳴率Zの情報等も出力されてもよい。以上が、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法である。
【0053】
なお、金属部位が発光素子1に含まれていた場合は、その金属の誘電率の分散関係をデバイ型、ドゥルーデ型、ローレンツ型、あるいは有理関数型等の関数1個以上で関数フィッティングを行い、RC法を用いて一次元FDTDシミュレーションに用いてもよい。RC法に関しては上述した「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」記載の方法を好適に用いることができる。
【0054】
発光素子1の非金属部位に関しては、誘電率の数値を直接、一次元FDTDシミュレーションに用いてよいが、金属部位と同様に誘電率分散関係をデバイ型、ドゥルーデ型、ローレンツ型、あるいは有理関数型等の関数1個以上で関数フィッティングしてRC法を用いて一次元FDTDシミュレーションに用いても良い。
【0055】
スペクトルの計算においては、発光波長の異なる単色光に関する計算を種種の発光波長に関して独立に行ってもよいが、種種の発光波長を含んだパルス波、例えばガウス型パルス等を用いて計算をおこなってもよい。
【0056】
上述したように、本実施形態によれば、発光素子1を構成する薄膜の積層方向(z軸方向)のみにメッシュに分割して、FDTD法によって当該発光素子1からの出射光のスペクトルが算出される。当該方法では、光の伝播が正確に解かれるため多層膜界面での多重反射の影響を考慮することができる。
【0057】
また、本発明に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法では、メッシュの分割(設定)が薄膜の積層方向に対してのみであるので、2次元あるいは3次元のメッシュを設定する従来のFDTD法に比べてメッシュ数が大幅に減る。その結果、4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光の評価を、従来の方法と比較して短い計算時間で行うことが可能になる。具体的には、従来の方法の1/2乗〜1/3乗程度の時間の時間で計算を行うことができ、一年ほどの計算時間を一週間程に短縮できる。
【0058】
また、本実施形態のように、評価対象の発光素子1を構成する薄膜2〜9の、演算に用いかつ変化させうるパラメータとして、薄膜2〜9の厚さ及び屈折率を含むこととすれば、現実的な計算時間で確実に発光素子1からの出射光の評価、及び発光素子1の設計を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態のように、異なるパラメータの複数の発光素子1の評価を行い、その結果を用いることとすれば、所望の性能、即ちピーク共鳴率Zが高い4層以上の多層の薄膜を積層した構造を含む発光素子1を設計することができる。更に、本実施形態のように、ピーク共鳴率Zを用いた判断を行うこととすれば、発光素子1の設計を適切かつ確実に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態においては、複数の発光素子1に対して出射光の評価を行い所定の条件を満たすものパラメータをユーザが確認できるように出力することとしているが、発光素子1に対して出射光の評価を行いその評価結果を、(所定の条件によらずに)ユーザが確認できるように出力することとしてもよい。
【0061】
更には、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法により出力されるピーク共鳴率Zが6.5以上の発光素子1は、機能的に好ましい素子構造を有している。このように、本実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法により出力される情報に基づく値を特定の範囲にすることにより、機能的に好ましい素子構造を有する発光素子を提供することができる。
【実施例1】
【0062】
上述した実施形態の実施例を以下に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では図1に示し上述した発光素子1を評価対象とした。
【0063】
各層2〜9の層厚は、それぞれ、空気層30を100nm、電極9を構成するAl金属9cを100nm、Ca層9bを5nm、LiF層9aを4nm、ITO層6を150nm、TiO2層5を50nm、SiO2層4を550nm、TiO2層3を130nm、ガラス基板2を100nmとした。
【0064】
評価のための計算に用いたLiF層9aの屈折率分布を図7に、ITO層6の屈折率分布を図8に、PEDOT層7の屈折率分布を図9に、発光層8の屈折率分布を図10に、ガラス基板2の屈折率分布を図11にそれぞれ示す。また、TiO2層3の屈折率は2.3、SiO2層4の屈折率は1.46とした。Ca層9b及びAl金属9cの誘電率分散については、Ca層9bについてはドゥルーデ型モデル15個、Al金属9cについてはドゥルーデ型モデル3個で表現した。ドゥルーデ型モデルは以下の式であらわされる。
【数22】
ここで、εreは誘電率の実部、εimは誘電率の虚部、aj、ωjDrt、ωjDrpはパラメータ、ωはCa層9bあるいはAl金属9cに入射する光の角振動数である。Ca層9b及びAl金属9cのパラメータをそれぞれ図12及び図13に示す。
【0065】
また、発光層8の層厚を20nm〜350nmの範囲で、PEDOT層7の層厚を10nm〜350nmの範囲で、各層10nm刻みで層厚を変化させ、評価を行った。また、各層厚に対して発光波長300nmから800nmまで波長10nmステップで一次元FDTD法により波長毎の取り出し効率を求めた。ここでいう取り出し効率とは、発光層8で単位時間単位面積あたりに発光する光のエネルギー量で、出射媒質であるガラス基板2内での単位時間単位面積あたりのエネルギー流量を割ったものである。発光層8における発光光のスペクトル(入力スペクトル)に取り出し効率を乗ずることにより、ガラス基板2内での出射光のスペクトル(出射スペクトル)を求めた。本実施例に用いた入力スペクトルを図14に示す。取り出し効率を一次元FDTD法で求める際、ガラス基板2と空気層30とは該当する誘電率及び透磁率をもつ吸収端をもつとし(吸収境界とする)、発光位置は発光層8内で、PEDOT層7から1nm離れた部分で幅1nmとした。
【0066】
入力スペクトル及び出射スペクトルより、各層厚に関するピーク共鳴率Zを求めた。求められたピーク共鳴率Zの、PEDOT層7及び発光層8の厚さに応じた値を図15の表に示す。なお、この表に示す値は、ピーク共鳴率Zが高い値を示す部分である。同様の素子構造の最適PEDOT層厚、発光層厚を既存の手法(特許第3703028号)で設計したところ、PEDOT層厚95nm、発光層厚45nmであり、ピーク共鳴率Zは6.34であった。図15の表に示すように、本発明に係る方法によって評価することによって設計した多層膜構造の発光素子は、従来法よりもピーク共鳴率Zの高い発光素子1を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法による評価対象となる発光素子の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価装置の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る発光素子の素子層構造設計の評価方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例で用いられるLiF層の屈折率分布を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例で用いられるITO層の屈折率分布を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例で用いられるPEDOT層の屈折率分布を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例で用いられる発光層の屈折率分布を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例で用いられるガラス基板の屈折率分布を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例で用いられるCa層の誘電率を計算するのに用いられるパラメータの表である。
【図13】本発明の実施例で用いられるAl金属の誘電率を計算するのに用いられるパラメータの表である。
【図14】本発明の実施例で用いられる入力スペクトルを示すグラフである。
【図15】本発明の実施例によって算出されたピーク共鳴率の、発光層及びPEDOT層の層厚の変化に応じた値を示す表である。
【符号の説明】
【0068】
1…発光素子、10…評価装置、11…入力部、12…スペクトル算出部、13…ピーク共鳴率算出部、14…出力部、20…外部装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置によって、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価方法であって、
前記発光素子を構成する前記薄膜のパラメータ、及び前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおいて入力されたパラメータに基づく、前記薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した前記発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び前記入力ステップにおいて入力された前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップと、
前記スペクトル算出ステップにおいて算出された前記発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力ステップと、
を含む発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項2】
前記薄膜のパラメータは、当該薄膜の厚さ及び屈折率を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項3】
前記入力ステップにおいて、複数の発光素子に係る前記薄膜のパラメータを入力して、
前記スペクトル情報出力ステップにおいて出力される各発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報が、予め設定された所定の条件を満たすか否か判断して、当該条件を満たすと判断された当該出射光のスペクトルを示す情報に係る発光素子の、前記入力ステップにおいて入力された前記薄膜のパラメータを出力するパラメータ出力ステップを更に含む請求項1に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項4】
前記予め設定された所定の条件は、当該出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、前記発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が所定の閾値以上であることを特徴とする請求項3に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項5】
発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価装置であって、
前記発光素子を構成する前記薄膜のパラメータ、及び前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力手段と、
前記入力手段により入力されたパラメータに基づく、前記薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した前記発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び前記入力手段により入力された前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、
前記スペクトル算出手段によって算出された前記発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力手段と、
を備える発光素子の素子層構造設計の評価装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法により評価されて出力される情報により示される前記出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、前記発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が6.5以上である発光素子。
【請求項1】
情報処理装置によって、発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価方法であって、
前記発光素子を構成する前記薄膜のパラメータ、及び前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおいて入力されたパラメータに基づく、前記薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した前記発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び前記入力ステップにおいて入力された前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出ステップと、
前記スペクトル算出ステップにおいて算出された前記発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力ステップと、
を含む発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項2】
前記薄膜のパラメータは、当該薄膜の厚さ及び屈折率を含むことを特徴とする請求項1に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項3】
前記入力ステップにおいて、複数の発光素子に係る前記薄膜のパラメータを入力して、
前記スペクトル情報出力ステップにおいて出力される各発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報が、予め設定された所定の条件を満たすか否か判断して、当該条件を満たすと判断された当該出射光のスペクトルを示す情報に係る発光素子の、前記入力ステップにおいて入力された前記薄膜のパラメータを出力するパラメータ出力ステップを更に含む請求項1に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項4】
前記予め設定された所定の条件は、当該出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、前記発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が所定の閾値以上であることを特徴とする請求項3に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法。
【請求項5】
発光層を含む4層以上の薄膜を積層した構造を含む発光素子からの出射光を評価する発光素子の素子層構造設計の評価装置であって、
前記発光素子を構成する前記薄膜のパラメータ、及び前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を入力する入力手段と、
前記入力手段により入力されたパラメータに基づく、前記薄膜の積層方向のみにメッシュに分割した前記発光素子を示す情報を生成して、当該生成した情報、及び前記入力手段により入力された前記発光層からの発光光のスペクトルを示す情報を用いてFDTD法によって当該発光素子からの出射光のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、
前記スペクトル算出手段によって算出された前記発光素子からの出射光のスペクトルを示す情報を出力するスペクトル情報出力手段と、
を備える発光素子の素子層構造設計の評価装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の発光素子の素子層構造設計の評価方法により評価されて出力される情報により示される前記出射光のスペクトルのピークの周波数における強度の、前記発光層からの発光光のスペクトルのピークの周波数における強度に対する比の値が6.5以上である発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−26697(P2009−26697A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191086(P2007−191086)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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