説明

発光素子の調光制御回路

【課題】発光素子の調光を行うための制御回路を提供する。
【解決手段】交流電源を全波整流する整流部30と、発光素子に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子38と、整流部30において整流された電圧に応じた導通角でスイッチング素子38のスイッチングを制御するスイッチング制御部42と、導通角が所定角以下である場合にスイッチング制御部42によるスイッチング素子38のスイッチング制御を停止させる発振制御部44と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の調光を行う調光制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、白熱電球を照明として用いる場合に発光強度(明るさ)を調光するために、交流電源の導通角を制御して、白熱電球に流れる電流の平均値を低下させることによって発光強度を制御するシステムが用いられている。また、省エネルギー等の観点から白熱電球に代わって発光ダイオード(LED)を照明用の発光素子として利用することが望まれている。LEDを照明に用いる場合、既にインフラとして用いられている白熱電球用の調光システムが流用されている。
【0003】
図4は、従来の照明システムの制御回路100を示す。制御回路100は、整流部10、整流用コンデンサ12、チョークコイル14、回生用ダイオード16、スイッチング素子18、基準電圧発生部20及びスイッチング制御部22を含んで構成される。
【0004】
整流部10にAC電源を供給すると、AC電源が全波整流される。全波整流された電圧は整流用コンデンサ12によって平滑化され、LED102のアノード端子へ駆動電圧として供給される。LED102のカソードは、チョークコイル14、スイッチング素子18及び抵抗素子R1の直列接続を介して接地される。抵抗R1の端子電圧はスイッチング電圧Vsとしてスイッチング制御部22のセンシング端子CSに入力される。一方、基準電圧発生部20は、抵抗R2、ツェナーダイオードZD及び抵抗R3の直列接続からなり、整流部10で整流された電圧が分圧されてスイッチング基準電圧Vsrefとしてスイッチング制御部22のリミッタ設定端子REF_INに入力される。スイッチング制御部22では、スイッチング電圧Vsとスイッチング基準電圧Vsrefとを比較し、比較結果に基づいてスイッチング素子18のスイッチングが制御される。これにより、チョークコイル14、スイッチング素子18及び抵抗素子R1を介してLED102へ電流が流されてLED102を発光させる。ここで、スイッチング電圧Vsがスイッチング基準電圧Vsrefより小さい場合にはスイッチング素子18をオンにしてLED102へ電流を流し、スイッチング電圧Vsがスイッチング基準電圧Vsrefより大きくなった場合にはスイッチング素子18をオフにしてLED102への電流を遮断する。このようにして、LED102に流れる電流を制御し、LED102の平均的な発光強度を制御することができる。また、スイッチング素子18がオフになった際に、チョークコイル14に蓄えられているエネルギーをLED102へ回生させる回生用ダイオード16がLED102及びチョークコイル14に並列に設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の制御回路100では、整流後の脈流電圧を分圧してスイッチング基準電圧Vsrefを生成している。そのため、特に導通角が小さいときに発生するスイッチング基準電圧Vsrefが微少となる。それにより、図5に示すように、導通角が小さい領域においてスイッチング素子18の発振が不安定となり、発光素子(LED102)の発光がちらつく等の不具合を生ずるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、発光素子の調光制御回路であって、交流電源を全波整流する整流部と、発光素子に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、前記整流部において整流された電圧に応じた導通角で前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御部と、前記導通角が所定角以下である場合に前記スイッチング制御部による前記スイッチング素子のスイッチング制御を停止させると発振制御部と、を備えることを特徴とする発光素子の調光制御回路である。
【0007】
ここで、前記発振制御部は、前記整流部において整流された電圧に応じた比較電圧と一定の基準電圧とを比較し、前記比較電圧が前記基準電圧以下のときに前記スイッチング素子のスイッチングを停止させ、前記比較電圧が前記基準電圧より大きいときに前記スイッチング素子のスイッチングを行うオペアンプを備えることが好適である。
【0008】
また、前記スイッチング制御部は、制御端子に入力された電圧に応じて、前記スイッチング素子をパルス幅変調可能であり、前記発振制御部は、前記制御端子に入力する電圧を制御して前記導通角が前記所定角以下である場合に前記スイッチング素子のスイッチング制御を停止させることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導通角が小さいときにおける発光素子の調光におけるちらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における発光素子の制御回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における発光素子の制御回路の作用を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における発光素子の制御回路の別例の構成を示す図である。
【図4】従来のLEDの発光の制御回路の構成を示す図である。
【図5】従来の発光素子の制御回路の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態における発光素子の制御回路200は、図1に示すように、整流部30、平滑用コンデンサ32、チョークコイル34、回生用ダイオード36、スイッチング素子38、基準電圧発生部40、スイッチング制御部42及び発振制御部44を含んで構成される。
【0012】
制御回路200は、発光素子の発光の制御を行う。例えば、照明用の発光ダイオード(LED)102に接続され、LED102への電流の制御を行う。また、制御回路200は、白熱電球の調光システムに用いられる交流電源の導通角を制御する調光回路に接続されて使用される。調光回路は、制御回路200の整流部30に接続される。すなわち、調光回路は、交流電源を受けて、調光ボリューム等の調整信号に応じて交流電源の導通角を調整して調整交流電圧Vinを制御回路200に入力する。
【0013】
整流部30は、整流ブリッジ回路30aを含んで構成される。整流部30は、調整交流電圧Vinを受けて、調整交流電圧Vinを全波整流して全波整流電圧Srecとして出力する。整流部30には、図1に示すように、保護用のフューズ30bやノイズ除去のためのフィルタ30cを設けてもよい。
【0014】
整流部30の後段には、ダイオードD1を介してLED102のアノード端子が接続される。LED102のアノード端子には平滑用コンデンサ32を接続してもよい。また、LED102のカソード端子は、チョークコイル34、スイッチング素子38及び電圧検出用抵抗R1を介して接地される。LED102には、全波整流電圧Srecを平滑用コンデンサ32で平滑化した電圧Sdrvが印加される。
【0015】
チョークコイル34は、LED102及びスイッチング素子38を流れる電流を断続したものにするために設けられる。チョークコイル34には、発振制御部44への電源電圧も供給できるようにフォワード巻線を設けてもよい。
【0016】
回生用ダイオード36は、フライホイールダイオードであり、LED102及びチョークコイル34に並列に接続される。回生用ダイオード36は、スイッチング素子38が遮断されたときにチョークコイル34に蓄えられているエネルギーをLED102へ回生する。
【0017】
スイッチング素子38は、LED102への電流を供給・遮断するために設けられる。スイッチング素子38は、LED102の消費電力に応じた容量を有する素子とし、例えば、大電力パワー電界効果トランジスタ(MOSFET)等が用いられる。スイッチング素子38は、スイッチング制御部42の制御信号Vcntによってスイッチング制御される。
【0018】
基準電圧発生部40は、抵抗R2、ツェナーダイオードZD及び抵抗R3の直列接続からなり、整流部30で整流された電圧が分圧されてスイッチング基準電圧Vsrefとしてスイッチング制御部42のリミッタ設定端子REF_INに入力される。
【0019】
スイッチング制御部42では、スイッチング電圧Vsとスイッチング基準電圧Vsrefとを比較し、比較結果に基づいてスイッチング素子38のスイッチングが制御される。これにより、チョークコイル34、スイッチング素子38及び抵抗素子R1を介してLED102へ電流が流されてLED102を発光させる。ここで、スイッチング電圧Vsがスイッチング基準電圧Vsrefより小さい場合にはスイッチング素子38をオンにしてLED102へ電流を流し、スイッチング電圧Vsがスイッチング基準電圧Vsrefより大きくなった場合にはスイッチング素子38をオフにしてLED102への電流を遮断する。
【0020】
このようにして、LED102に流れる電流を制御し、LED102の平均的な発光強度を制御することができる。また、スイッチング素子38がオフになった際に、回生用ダイオード36によってチョークコイル34に蓄えられているエネルギーがLED102へ回生される。
【0021】
なお、スイッチング制御部42は、電源の供給と共に、定電圧端子REF_OUTから一定の基準電圧Vrefを出力する。
【0022】
発振制御部44は、抵抗R4,R5及びオペアンプ44aを含んで構成される。抵抗R4及びR5は、全波整流電圧Srecを分圧し、抵抗R5の端子電圧を比較電圧Vcmpとしてオペアンプ44aの反転入力端子(−)へ入力する。ここで、抵抗R5の両端にコンデンサを設けて、比較電圧Vcmpを平滑化してもよい。また、オペアンプ44aの非反転入力端子(+)には、スイッチング制御部42の定電圧端子REF_OUTから出力された基準電圧Vrefが入力される。オペアンプ44aは、比較電圧Vcmpと基準電圧Vrefとを比較し、その大小関係に応じてスイッチング制御部42のパルス幅変調端子PWMDに入力される制御電圧Vpmwを制御する。
【0023】
スイッチング制御部42は、パルス幅変調端子PWMDに入力される制御電圧VpmwがPWMオフ電圧以上であれば制御信号Vcntの出力を停止し、PWMオン電圧未満であれば制御信号Vcntを出力するパルス幅変調モードを備える。ここで、発振制御部44のオペアンプ44aは、比較電圧Vcmpが基準電圧Vrefよりも小さいときには、制御電圧VpmwとしてPWMオフ電圧以上の電圧を出力し、比較電圧Vcmpが基準電圧Vref以上であるときには、制御電圧VpmwとしてPWMオン電圧未満の電圧を出力するように調整される。すなわち、比較電圧Vcmpが基準電圧Vrefよりも小さいときにはスイッチング制御部42からの制御信号Vcntが停止され、比較電圧Vcmpが基準電圧Vref以上であるときには制御信号Vcntが出力される。
【0024】
ここで、抵抗R4,R5からなる分圧回路では、スイッチング素子38の発振が不安定になる基準導通角θref以下において比較電圧Vcmpが基準電圧Vrefより小さくなるように抵抗値を調整する。これにより、図2の実線に示すように、スイッチング素子38の発振が不安定になる領域である導通角が基準導通角θref以下においてスイッチング素子38のスイッチング制御が停止され、発光素子(LED102)に流れる電流Iが0となる。なお、図2において、従来の制御回路100を用いた場合の発光素子(LED102)に流れる電流Iを破線で示している。したがって、発光素子(LED102)の発光のちらつきを抑制することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、発光素子(LED102)が非絶縁型回路に組み込まれる構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、発光素子(LED102)がトランス50を介して、2次巻線側に接続される絶縁型回路の構成としても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 整流部、12 整流用コンデンサ、14 チョークコイル、16 回生用ダイオード、18 スイッチング素子、20 基準電圧発生部、22 スイッチング制御部、30 整流部、30a 整流ブリッジ回路、30b フューズ、30c フィルタ、32 平滑用コンデンサ、34 チョークコイル、36 回生用ダイオード、38 スイッチング素子、40 基準電圧発生部、42 スイッチング制御部、44 発振制御部、44a オペアンプ、100,200 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の調光制御回路であって、
交流電源を全波整流する整流部と、
発光素子に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、
前記整流部において整流された電圧に応じた導通角で前記スイッチング素子のスイッチングを制御するスイッチング制御部と、
前記導通角が所定角以下である場合に前記スイッチング制御部による前記スイッチング素子のスイッチング制御を停止させると発振制御部と、
を備えることを特徴とする発光素子の調光制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載の発光素子の調光制御回路であって、
前記発振制御部は、前記整流部において整流された電圧に応じた比較電圧と一定の基準電圧とを比較し、前記比較電圧が前記基準電圧以下のときに前記スイッチング素子のスイッチングを停止させ、前記比較電圧が前記基準電圧より大きいときに前記スイッチング素子のスイッチングを行うオペアンプを備えることを特徴とする発光素子の調光制御回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光素子の調光制御回路であって、
前記スイッチング制御部は、制御端子に入力された電圧に応じて、前記スイッチング素子をパルス幅変調可能であり、
前記発振制御部は、前記制御端子に入力する電圧を制御して前記導通角が前記所定角以下である場合に前記スイッチング素子のスイッチング制御を停止させることを特徴とする発光素子の調光制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51074(P2013−51074A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187454(P2011−187454)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(300057230)セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (119)
【Fターム(参考)】