説明

発光素子の駆動回路、それを用いた発光装置および電子機器

【課題】なるべく小さな輝度でLEDストリングを駆動する。
【解決手段】検出抵抗R1は、LEDストリング6の経路上に設けられる。コントローラ10は、検出抵抗R1の電圧降下VR1が所定の基準電圧VREFと一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号G1を生成する。またコントローラ10は、バースト調光のデューティ比を指示する調光制御信号PWMDIMを受け、それに応じたバースト調光パルスG2を生成する。第1ドライバDR1は、ゲートパルス信号G1にもとづき、駆動電圧VDRVを生成する出力回路102を駆動する。第2ドライバDR2は、バースト調光パルスG2にもとづき、駆動電流IDRVの導通、遮断を切りかえる。デューティ比検出部30は、調光制御信号PWMDIMが指示するデューティ比αに応じて、ゲートパルス信号G1の周波数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の駆動技術に関し、特にその調光技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルのバックライトや照明機器として、LED(発光ダイオード)をはじめとする発光素子を利用した発光装置が利用される。図1は、比較技術に係る発光装置の構成例を示す回路図である。発光装置1003は、LEDストリング6と、スイッチング電源1004と、を備える。
【0003】
LEDストリング6は、直列に接続された複数のLEDを含む。スイッチング電源1004は、入力端子P1に入力された入力電圧Vinを昇圧して、出力端子P2に接続されたLEDストリング6の一端に駆動電圧Voutを供給する。
【0004】
スイッチング電源1004は、出力回路102と、制御IC1100を備える。出力回路102は、インダクタL1、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、出力キャパシタC1を含む。制御IC1100は、スイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を制御することにより、駆動電圧Voutを調節する。
【0005】
LEDストリング6の経路上には、PWM調光用スイッチ(トランジスタ)M2および電流検出用の検出抵抗R1が設けられる。コントローラ1010は、外部からの調光制御信号PWMDIMにもとづき、目標輝度に応じてデューティ比が調節されるパルス幅変調(PWM)されたバースト調光パルスG2を生成する。ドライバDR2は、バースト調光パルスG2にもとづき、PWM調光用スイッチM2をスイッチングする。
【0006】
検出抵抗R1には、LEDストリング6に流れる駆動電流IDRVに比例した電圧降下(検出電圧)VR1が発生する。誤差増幅器EA1は、検出電圧VR1と、基準電圧VREFとの誤差を増幅し、フィードバック電圧VFBを生成する。コントローラ1010は、フィードバック電圧VFBにもとづいてパルス変調されるゲートパルス信号G1を生成する。ドライバDR1は、ゲートパルス信号G1にもとづいてスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0007】
以上の構成により、
DRV=VREF/R1
が成り立つように、フィードバックがかかり、基準電圧VREFに応じた輝度でLEDストリング6を発光させることができる(電流調光)。
【0008】
またPWM調光用スイッチM2のオン、オフのデューティ比に応じて、LEDストリング6の発光時間が制御され、実効的な輝度が調節される(PWM調光あるいはバースト調光)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−261158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液晶パネルのコントラスト比は、LEDストリング6の輝度をダイナミックに制御することによって拡張される。つまり、LEDストリング6の最低輝度がなるべく小さいほど、液晶パネルのコントラスト比を大きくすることができる。
【0011】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、なるべく小さな輝度でLEDストリングを駆動可能な駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、発光素子に駆動電圧および駆動電流を供給する駆動回路に関する。この駆動回路は、発光素子の経路上に設けられた検出抵抗と、検出抵抗の電圧降下が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号を生成するとともに、バースト調光のデューティ比を指示する調光制御信号を受け、それに応じたバースト調光パルスを生成するコントローラと、ゲートパルス信号にもとづき、駆動電圧を生成するスイッチング電源を駆動する第1ドライバと、バースト調光パルスにもとづき、駆動電流の導通、遮断を切りかえる第2ドライバと、調光制御信号が指示するデューティ比に応じて、ゲートパルス信号の周波数を制御するデューティ比検出部と、を備える。
【0013】
本発明の別の態様もまた、駆動回路である。この駆動回路は、発光素子の経路上に設けられた電流源と、電流源の電圧降下が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号を生成するとともに、バースト調光のデューティ比を指示する調光制御信号を受け、それに応じたバースト調光パルスを生成するコントローラと、ゲートパルス信号にもとづき、駆動電圧を生成するスイッチング電源を駆動する第1ドライバと、バースト調光パルスにもとづき、駆動電流の導通、遮断を切りかえる第2ドライバと、調光制御信号が指示するデューティ比に応じて、ゲートパルス信号の周波数を制御するデューティ比検出部と、を備える。
【0014】
これらの態様によると、バースト調光のデューティ比に応じて、スイッチング電源のスイッチングトランジスタのスイッチング周波数を切りかえることにより、発光素子の輝度を、デューティ比が小さい領域においてもデューティ比に応じて制御できる。
【0015】
デューティ比検出部は、調光制御信号が指示するデューティ比が小さいほど、ゲートパルス信号の周波数と高くしてもよい。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、発光装置である。この装置は、発光素子と、発光素子を駆動する上述のいずれかの態様の駆動回路と、を備える。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、液晶パネルと、液晶パネルのバックライトとして設けられた上述の発光装置と、を備える。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のある態様によれば、回路保護の機能を損なうことなく、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】比較技術に係る発光装置の構成例を示す回路図である。
【図2】図2(a)は、図1の発光装置における、バースト調光パルスのデューティ比と、駆動電流の関係を示す図であり、図2(b)は、図1の発光装置におけるバースト調光パルスとゲートパルス信号を示す波形図である。
【図3】第1の実施の形態に係る発光装置の構成を示す回路図である。
【図4】図4(a)は、図3のデューティ比検出部の第1の構成例を示す回路図であり、図4(b)は、図4(a)のデューティ比検出部の動作を示す波形図である。
【図5】図3のデューティ比検出部の第2の構成例を示す回路図である。
【図6】図6(a)、(b)は、図3の発光装置の動作を示す波形図であり、図6(c)は、図3の発光装置における、バースト調光パルスのデューティ比と駆動電流の関係を示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係る駆動回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0023】
本発明者らは、図1の発光装置1003において最低輝度を下げる技術について検討した。最低輝度を下げるには、2つのアプローチがある。第1は、電流調光によって駆動電流IDRVを小さくすること、第2は、バースト調光のデューティ比を小さくすることである。
【0024】
第1のアプローチにおいて、基準電圧VREFを小さくすると駆動電流IDRVを小さくできる。しかしながら、基準電圧VREFと検出電圧VR1を受ける誤差増幅器EA1の入力電圧範囲には下限があるため、このアプローチには限界がある。
【0025】
そこで第2のアプローチについて検討する。図2(a)は、図1の発光装置1003における、バースト調光パルスG2のデューティ比と、駆動電流IDRVの関係を示す図である。バースト調光パルスG2のデューティ比が、ある下限値β(0.04%)より大きい範囲では、デューティ比に応じて駆動電流IDRVが変化する。ところが、デューティ比が下限値β(0.04%)より小さくなると、駆動電流IDRVが急激に低下する。つまり、下限値βを低下させることができれば、第2のアプローチによって最低輝度をさらに下げることができる。
【0026】
本発明者らは、下限値βが存在する理由および下限値βを小さくする方法について検討した。なお、以下の検討は、本発明者らが独自に行ったものであり、当業者の共通の認識であると考えてはならない。
【0027】
バースト調光を行う場合、PWM調光用スイッチM2がオフの期間は、フィードバックが遮断され、スイッチングトランジスタM1のスイッチングが停止する。PWM調光用スイッチM2がオンの期間TONには、検出電圧VR1にもとづくフィードバックが有効となり、スイッチングトランジスタM1のデューティ比が調節され、出力電圧Voutが安定化される。したがってバースト調光パルスG2のパルス幅(デューティ比)、つまりオン期間が小さくなると、フィードバックが有効な期間が短くなる。図2(b)は、図1の発光装置1003におけるバースト調光パルスG2とゲートパルス信号G1を示す波形図である。
【0028】
バースト調光パルスG2のパルス幅(オン期間TON)が、ゲートパルス信号G1の周期(スイッチング周期TSW)に近づくと、ゲートパルス信号G1の位相によって、バースト調光パルスG2のオン期間TONに含まれる有効なゲートパルス信号G1の数が変化する。ある位相のゲートパルス信号G1(1)は、オン期間TONに2個のパルスが含まれる。ところが別のゲートパルス信号G1(2)では、ひとつのパルスのみが含まれ、インダクタL1に蓄えられるエネルギーが減少し、出力電圧Voutを目標値に保つことができなくなる。本発明者らは、この現象が、図2(a)に示される特性の要因となると考えた。
【0029】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係る発光装置3の構成を示す回路図である。電子機器2は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電池駆動型の機器であり、発光装置3とLCD(Liquid Crystal Display)パネル5を備える。発光装置3はLCDパネル5のバックライトとして設けられる。
【0030】
発光装置3は、発光素子であるLEDストリング6と、その駆動回路4を備える。
【0031】
LEDストリング6は、直列に接続された複数のLEDを含む。駆動回路4は、昇圧型のDC/DCコンバータを含み、入力端子P1に入力された入力電圧(たとえば電池電圧)Vinを昇圧して、出力端子P2から出力電圧(駆動電圧)Voutを出力する。LEDストリング6の一端(アノード)は、出力端子P2に接続される。
【0032】
駆動回路4は、制御IC100および出力回路102を備える。出力回路102は、インダクタL1、整流ダイオードD1、スイッチングトランジスタM1、出力キャパシタC1を含む。出力回路102のトポロジーは一般的であるため、説明を省略する。
【0033】
制御IC100のスイッチング端子P4は、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続される。制御IC100は、LEDストリング6の点灯に必要な出力電圧Voutが得られ、かつLEDストリング6が目標の輝度で発光するように、フィードバックによりスイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を調節する。なおスイッチングトランジスタM1は制御IC100に内蔵されてもよい。
【0034】
LEDストリング6の経路上には、具体的にはLEDストリング6のカソードと接地端子の間には、PWM調光用スイッチM2が設けられる。PWM調光用スイッチM2のオン、オフ比率(デューティ比)を調節することにより、LEDストリング6の点灯期間と消灯期間の比率が調節され、LEDストリング6の実効的な輝度を調節することができる。これをバースト調光(PWM調光)という。PWMDIM端子には、調光制御信号PWMDIMが入力される。調光制御信号PWMDIMは、バースト調光のデューティ比を指定する信号であり、それ自体がパルス幅変調されたパルス信号である。コントローラ10は、調光制御信号PWMDIMにもとづき、バースト調光パルスG2を生成する。最も簡易には、バースト調光パルスG2は調光制御信号PWMDIMであってもよい。
【0035】
検出抵抗R1は、LEDストリング6の経路上、具体的にはLEDストリング6のカソードと接地端子の間に設けられる。
【0036】
オシレータ12は、可変オシレータである。コントローラ10は、オシレータ12が生成する周期信号S1を利用して、ゲートパルス信号G1を生成する。つまり、ゲートパルス信号G1の周波数は、オシレータ12の発振周波数に応じている。周期信号S1は、パルス信号であってもよいし、のこぎり波や三角波であってもよく、その種類はコントローラ10の構成によって適宜設計される。
【0037】
誤差増幅器EA1は、検出抵抗R1に生ずる電圧降下VR1と基準電圧VREFの誤差を増幅し、誤差電圧VFBを生成する。コントローラ10は誤差電圧VFBおよび周期信号S1を受け、検出抵抗R1の電圧降下VR1が制御電圧VDIMと一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号G1を生成する。ゲートパルス信号G1の周波数は、周期信号S1の周波数に応じている。第1ドライバDR1は、ゲートパルス信号G1にもとづきDC/DCコンバータのスイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0038】
デューティ比検出部30は、調光制御信号PWMDIMを受け、そのデューティ比を検出する。そして、検出したデューティ比に応じてオシレータ12の発振周波数を制御する。デューティ比が大きいときには、オシレータ12の発振周波数を低くし、デューティ比が小さくなると、オシレータ12の発振周波数を高くする。
【0039】
たとえばデューティ比検出部30は、検出したデューティ比αが所定のしきい値THより高いとき、オシレータ12の周波数を第1の値fにする。デューティ比αが所定のしきい値THより低くなると、デューティ比検出部30はオシレータ12の周波数を、第1の値fより高い第2の値fにする。このしきい値THは、図2に示される下限値βより少し高い値に設定することが望ましい。
【0040】
以上が駆動回路4の構成である。続いてデューティ比検出部30の構成例を説明する。図4(a)は、図3のデューティ比検出部30の第1の構成例を示す回路図である。デューティ比検出部30は、キャパシタC2、ヒステリシスコンパレータ32、第1電流源34、第2電流源36、スイッチ38を備える。
【0041】
キャパシタC2の一端は接地される。第1電流源34は、第1電流IC1を生成し、キャパシタC2を充電する。第2電流源36は、第2電流IC2を生成し、キャパシタC2を放電する。スイッチ38は、第2電流IC2を遮断、導通するためのスイッチであり、調光制御信号PWMDIMに応じてオン、オフが制御される。第2電流IC2を、定数Kを用いて、
C2=K×IC1 …(1)
と表す。
【0042】
ヒステリシスコンパレータ32は、キャパシタC2に生ずる電圧Vを、所定のしきい値電圧VTHと比較する。しきい値電圧VTHは、上のしきい値THに応じて定められる。ヒステリシスコンパレータ32のしきい値電圧VTHは、その出力がローレベルのとき、第1の値VTH1、その出力がハイレベルのとき、第1の値VTH1より低い第2の値VTH2をとるものとする。一例として、
TH1=VDD×2/3
TH2=VDD×1/3
とする。コンパレータ32の出力OUTは、調光制御信号PWMDIMのデューティ比αと、しきい値との比較結果を示す。ヒステリシスコンパレータを用いることにより、調光制御信号PWMDIMのデューティ比αがしきい値TH付近をとるときに、ゲートパルス信号G1の周波数が振動するのを防止できる。
【0043】
図4(b)は、図4(a)のデューティ比検出部30の動作を示す波形図である。調光制御信号PWMDIMがローレベルの期間、スイッチ38はオフし、キャパシタC2は第1電流Ic1により充電される。その結果、キャパシタC2の電圧Vは、傾き(IC1/C2)で増加する。調光制御信号PWMDIMのデューティ比がα、周期がTであるとき、オフ期間TOFF、オン期間TONはそれぞれ、
OFF=T×(1−α) …(2a)
ON=T×α …(2b)
となる。したがって、1回のオフ期間TOFFでのキャパシタC2の電圧Vの増加量は、
ΔVUP=IC1/C2×T×(1−α) …(3)
となる。
【0044】
調光制御信号PWMDIMがハイレベルの期間、スイッチ38はオンし、キャパシタC2は、第2電流Ic2と第1電流Ic1の差分電流(IC2−IC1)=(K−1)・IC1により放電される。その結果、キャパシタC2の電圧Vは、傾き(K−1)・IC1)/C2で減少する。したがって、1回のオン期間TONでのキャパシタC2の電圧Vの減少量は、
ΔVDN=(K−1)・IC1/C2×T×α …(4)
となる。
【0045】
式(3)、(4)から、1周期あたりの電圧Vの変動量は、
ΔV=ΔVUP−ΔVDN=IC1×T/C2×(1−K・α)
となる。したがってK×α=1のときにΔV=0となり、電圧Vはあるレベルでバランスする。α<1/Kのとき、電圧Vは増大し、α>1/Kのとき電圧Vは低下する。つまりデューティ比検出部30が調光制御信号PWMDIMのデューティ比αと比較するしきい値THは、1/Kとなる。たとえばK=20とすると、デューティ比αが5%より高いか低いかが判定される。
【0046】
デューティ比αがしきい値TH=1/Kより高い状態が持続すると、電圧V=0を維持する。電圧V=0Vの状態から、デューティ比αがしきい値1/Kより低くなる際に、電圧Vが、0Vからしきい値電圧VTH1まで上昇するまでに必要なサイクル数Nは、式(5)で与えられる。
N=VTH1/ΔV=VTH1/{IC1×T/C2×(1−K・α)}
=2/3・VDD/{IC1×T/C2×(1−K・α)} …(5)
【0047】
たとえばK=20、α=0のときに、N=5となるように、各パラメータを決定する。つまり、
5=2/3×VDD/{IC1×T/C2}
DD/{IC1×T/C2}=15/2 …(6)
が成り立つ。式(6)を式(5)に代入すると、式(7)を得る。
N=5/(1−20・α) …(7)
【0048】
したがって、
α=1%のとき、N=6.25
α=2%のとき、N=8.33
α=3%のとき、N=8.33
α=4%のとき、N=12.5
α=5%のとき、N=25
【0049】
デューティ比がαが大きくなると検出周期Nは増大するが、液晶パネルのディスプレイのコントラスト制御には十分な速度を実現できる。
【0050】
反対に、デューティ比αがしきい値1/Kより低い状態が持続すると、電圧Vは電源電圧VDDと等しくなる。この状態から、デューティ比αがしきい値1/Kより高くなる際に、電圧Vが、電源電圧VDDからしきい値電圧VTH2(=VDD/3)まで低下するまでのサイクル数Nは、式(8)で与えられる。
N=(VDD−VTH2)/ΔV
=2/3・VDD/{IC1×T/C2×(1−K・α)} …(8)
α=1のとき、式(8)に式(6)を代入すると、
N=200/19
となる。
【0051】
調光制御信号PWMDIMの周波数が、可変であり、その周期の最大値をTPMAXとするとき、式(6)から、
C1/C2=2/15×VDD/TPMAX
となるように、電流IC1および容量C2を決めればよい。これにより、全周波数においてデューティ比の検出が可能となる。たとえば調光制御信号PWMDIMの周波数が100Hz〜500Hzの範囲を取り得る場合、その周期の最大値はTPMAX=10msとなる。
【0052】
図5は、図3のデューティ比検出部30の第2の構成例を示す回路図である。このデューティ比検出部30bは、図4(a)のデューティ比検出部30aと等価的な処理を、デジタル信号処理で実現する。
【0053】
デューティ比検出部30bは、フリップフロップ40、カウンタ42、デジタルコンパレータ44を備える。フリップフロップ40は、調光制御信号PWMDIMを、クロック信号CLKのポジティブエッジのタイミングでラッチする。なおフリップフロップ40は省略してもよい。カウンタ42は、ラッチされた信号S2がハイレベルのとき、カウント値CNTを(K−1)減少させ(カウントダウン)、信号S2がローレベルのとき、カウント値CNTを1増加させる(カウントアップ)。
【0054】
カウンタ42は、図4(a)の第1電流源34、第2電流源36、キャパシタC2に相当し、カウントダウンは、図4(a)の放電に、カウントダウンは図4(a)の充電に、カウント値CNTは、図4(a)の電圧Vに相当する。クロック信号CLKの周波数は、調光制御信号PWMDIMの周波数よりも十分に高く設定され、調光制御信号PWMDIMの周波数が100Hz〜500Hzであるとき、クロック信号CLKの周波数は100kHz程度に設定される。
【0055】
デジタルコンパレータ44は、図4(a)のヒステリシスコンパレータ32に相当する。デジタルコンパレータ44は、カウント値CNTがTHより大きくなると、その出力OUTをアサート(ハイレベル)とし、カウント値CNTがTHより小さくなると、その出力OUTをネゲート(ローレベル)とする。デジタルコンパレータ44の出力OUTは、調光制御信号PWMDIMのデューティ比αと、しきい値THとの比較結果を示す。
【0056】
たとえばデジタルコンパレータ44はカウント値CNTの上限がMAX=1500とすると、TH=2/3×MAX=1000、TH=1/3×MAX=500としてもよい。上限値MAXは、VDDに相当する。
【0057】
図5のデューティ比検出部30bによれば、図4(a)のデューティ比検出部30aと同様に、調光制御信号PWMDIMのデューティ比αを、しきい値THと比較することができる。
【0058】
以上が駆動回路4の構成である。続いてその動作を説明する。
図3に戻る。発光装置3が正常に動作するとき、駆動電流IDRVは、
DRV=VREF/R1
に安定化される(電流調光)。
【0059】
そして、この駆動電流IDRVがLEDストリング6に流れる時間比率が、調光制御信号PWMDIMによって制御され、駆動電流IDRVの平均値、つまりLEDストリング6の実効的な輝度が調節される(バースト調光)。バースト調光パルスG2のデューティ比をαとするとき、駆動電流IDRVの平均値IDRV_AVEは、
DRV_AVE=VREF/R1×α
で与えられる。
【0060】
図6(a)、(b)は、図3の発光装置3の動作を示す波形図である。図6(a)は、調光制御信号PWMDIMが指定するデューティ比αが、所定のしきい値より大きい場合を示す。このとき、ゲートパルス信号G1の周波数は、第1の値fとなる。調光制御信号PWMDIMのデューティ比がしきい値より高いときには、ゲートパルス信号G1の周波数が低くなり、制御IC100の消費電力を小さく抑えられる。
【0061】
図6(b)は、調光制御信号PWMDIMが指定するデューティ比αが、所定のしきい値より小さい場合を示す。このとき、ゲートパルス信号G1の周波数は第2の値fとなる。これにより、バースト調光パルスG2の短いオン期間TONの中に、ゲートパルス信号G1が複数含まれることになり、検出電圧VR1にもとづくフィードバックにより調節されるゲートパルス信号G1のデューティ比に応じて、出力電圧Voutを適切な値に安定化できる。
【0062】
図6(c)は、図3の発光装置3における、バースト調光パルスG2のデューティ比と、駆動電流IDRV_AVEの関係を示す図である。実線(I)は図3の平均駆動電流を、一点鎖線(II)は図1の平均駆動電流を示す。このように、バースト調光パルスG2のデューティ比が小さい領域において、ゲートパルス信号G1の周波数を高めることにより、従来よりもデューティ比が小さい範囲(β’〜β)において、平均駆動電流IDRV_AVEを、調光制御信号PWMDIMが指定するデューティ比に応じて変化させることができる。つまり、従来よりも小さな輝度でLEDストリング6を駆動できる。
【0063】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係る駆動回路4aの構成を示す回路図である。駆動回路4aは、複数のLEDストリング6_1〜6_mを駆動可能に構成され、制御IC100a、出力回路102に加えて、電流ドライバ8を備える。
【0064】
電流ドライバ8は、LEDストリング6ごとに設けられた電流源CSを備える。各電流源CSは、トランジスタM3、検出抵抗R1、誤差増幅器EA2を含む。トランジスタM3および検出抵抗R1は、対応するLEDストリング6の経路上に直列に設けられる。誤差増幅器EA2は、検出抵抗R1の電圧降下VR1が制御電圧VDIMと一致するように、トランジスタM3の制御端子の電圧を調節する。各電流源CSによって、対応するLEDストリング6に流れる駆動電流IDRVが、IDRV=VDIM/R1に安定化される。
【0065】
誤差増幅器EA1は、トランジスタM3および検出抵抗R1の電圧降下の合計、言い換えれば、LEDストリング6のカソードの電位と、所定の基準電圧VREFとの誤差に応じたフィードバック電圧VFBを生成する。誤差増幅器EA1には、複数の反転入力端子が設けられ、それぞれには、複数のLEDストリング6のカソード電圧が入力される。誤差増幅器EA1は、複数のカソード電圧のうち、最も低い電圧と、基準電圧VREFの誤差を増幅する。コントローラ10はフィードバック電圧VFBを受け、最も低いカソード電圧が、基準電圧VREFと一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号G1を生成する。
【0066】
オシレータ12およびデューティ比検出部30の動作は、図3の駆動回路4と同様である。
【0067】
以上が駆動回路4aの構成である。この駆動回路4aは、図3の駆動回路4と同様に、従来よりも小さな輝度でLEDストリング6を駆動できる。
【0068】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセス、それらの組み合わせには、さまざまな変形例が存在しうる。以下、こうした変形例について説明する。
【0069】
実施の形態では、ゲートパルス信号G1の周波数を離散的な2値f、fで切りかえる場合を説明したが、本発明はそれに限定されず、3値以上で切りかえてもよいし、連続的な値で変化させてもよい。
【0070】
実施の形態では、調光制御信号PWMDIMがパルス信号である場合を説明したが、本発明はそれに限定されない。たとえば調光制御信号PWMDIMは、その電圧レベルが、バースト調光パルスG2のデューティ比を指示するアナログ電圧であってもよい。この場合、デューティ比検出部30は、調光制御信号PWMDIMの電圧レベルを、しきい値に相当する電圧VTH1、VTH2と比較するアナログの電圧コンパレータで構成できる。
【0071】
実施の形態ではインダクタを用いた非絶縁型のスイッチング電源を説明したが、本発明はトランスを用いた絶縁型のスイッチング電源にも適用可能である。
【0072】
実施の形態では、発光装置3のアプリケーションとして電子機器を説明したが、用途は特に限定されず、照明などにも利用できる。
【0073】
また、本実施の形態において、ハイレベル、ローレベルの論理信号の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【0074】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0075】
2…電子機器、3…発光装置、4…駆動回路、5…LCDパネル、6…LEDストリング、8…電流ドライバ、10…コントローラ、100…制御IC、102…出力回路、EA1…誤差増幅器、DR1…第1ドライバ、DR2…第2ドライバ、R1…検出抵抗、M2…PWM調光用スイッチ、12…オシレータ、30…デューティ比検出部、C2…キャパシタ、32…コンパレータ、34…第1電流源、36…第2電流源、38…スイッチ、40…フリップフロップ、42…カウンタ、44…デジタルコンパレータ、L1…インダクタ、C1…出力キャパシタ、D1…整流ダイオード、M1…スイッチングトランジスタ、G1…ゲートパルス信号、G2…バースト調光パルス、S1…周期信号、PWMDIM…調光制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子に駆動電圧および駆動電流を供給する駆動回路であって、
前記発光素子の経路上に設けられた検出抵抗と、
前記検出抵抗の電圧降下が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号を生成するとともに、バースト調光のデューティ比を指示する調光制御信号を受け、それに応じたバースト調光パルスを生成するコントローラと、
前記ゲートパルス信号にもとづき、前記駆動電圧を生成するスイッチング電源を駆動する第1ドライバと、
前記バースト調光パルスにもとづき、前記駆動電流の導通、遮断を切りかえる第2ドライバと、
前記調光制御信号が指示するデューティ比に応じて、前記ゲートパルス信号の周波数を制御するデューティ比検出部と、
を備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
発光素子に駆動電圧および駆動電流を供給する駆動回路であって、
前記発光素子の経路上に設けられた電流源と、
前記電流源の電圧降下が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節される、ゲートパルス信号を生成するとともに、バースト調光のデューティ比を指示する調光制御信号を受け、それに応じたバースト調光パルスを生成するコントローラと、
前記ゲートパルス信号にもとづき、前記駆動電圧を生成するスイッチング電源を駆動する第1ドライバと、
前記バースト調光パルスにもとづき、前記駆動電流の導通、遮断を切りかえる第2ドライバと、
前記調光制御信号が指示するデューティ比に応じて、前記ゲートパルス信号の周波数を制御するデューティ比検出部と、
を備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項3】
前記デューティ比検出部は、前記デューティ比が小さいほど、前記ゲートパルス信号の周波数と高くすることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記調光制御信号は、その周波数およびデューティ比が、前記バースト調光の周波数およびデューティ比を指示するようにパルス変調されており、
前記デューティ比検出部は、
一端の電位が固定されたキャパシタと、
前記キャパシタを充電する第1電流源と、
前記調光制御信号に応じてオン、オフが切りかえ可能に構成され、オン状態において前記第1電流源のK倍(Kは1より大きい実数)の電流を生成し、前記キャパシタを放電する第2電流源と、
前記キャパシタに生ずる電圧を、所定のしきい値電圧と比較するコンパレータと、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項5】
前記コンパレータは、ヒステリシスコンパレータであることを特徴とする請求項4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記調光制御信号は、その周波数およびデューティ比が、前記バースト調光の周波数およびデューティ比を指示するようにパルス変調されており、
前記デューティ比検出部は、
所定のクロック信号のエッジのタイミングごとに、前記調光制御信号がハイレベルのときに、そのカウント値を第1の方向に第1の値だけ変化させ、前記調光制御信号がローレベルのときに、前記カウント値を第2の方向に第2の値だけ変化させるカウンタと、
前記カウント値を所定のしきい値と比較するデジタルコンパレータと、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項7】
前記デジタルコンパレータは、ヒステリシスコンパレータであることを特徴とする請求項6に記載の駆動回路。
【請求項8】
発光素子と、
前記発光素子を駆動する請求項1から7のいずれかに記載の駆動回路と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
液晶パネルと、
前記液晶パネルのバックライトとして設けられた請求項8に記載の発光装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−124003(P2012−124003A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273461(P2010−273461)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】