説明

発光素子照明装置

【課題】LED等の発光素子が出力した光の強度がより高く、かつ装置全体のコストが従来装置よりも安価である発光素子照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】LED等の発光素子が固定板に設けられ、この発光素子が出力した光を受ける球レンズが円柱部材を介して固定され、この球レンズで集光された光を入射する凸レンズであって、被照射体に向けて光を照射する凸レンズが設けられ、上記球レンズと上記凸レンズとの間隔が所定の間隔に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を光源とする照明装置である。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードが発生した光によって照明する場合、従来、空隙を有するバルク型レンズを使用する装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4129570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例は、光強度は高いが、装置全体のコストが高いという問題がある。
【0005】
また、上記従来例は、被照射体までの距離に応じて照明光の焦点を合わせることができないという問題がある。
【0006】
さらに、上記従来例では、LEDで発光した光のうちで広角に広がった光を照明光として使用することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、光強度がより高くかつ安価である発光素子照明装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、被照射体までの距離に応じて照明光の焦点を合わせることができる発光素子照明装置を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、LED等の発光素子が発光した光のうちで広角(たとえば100度)に広がった光を照明光として使用することができる発光素子照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発光素子照明装置は、発光素子と、この発光素子が出力した光を受ける球レンズと、この球レンズで集光された光を入射し、被照射体に向けて光を照射する凸レンズとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光素子照明装置において光強度がより高く、かつ球レンズを使用するので、発光素子照明装置全体のコストを低くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1である発光素子照明装置100を示す図である。
【図2】本発明の実施例2である発光素子照明装置200を示す図である。
【図3】本発明の実施例3である発光素子照明装置300を示す図である。
【図4】本発明の実施例4である発光素子照明装置400を示す図である。
【図5】本発明の実施例5である発光素子照明装置500を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1である発光素子照明装置100を示す図である。
【0015】
発光素子照明装置100は、LED10と、LED固定板11と、円柱部材20と、球レンズ30と、集束レンズ40とを有する。
【0016】
LED10は、発光素子の例であり、LED固定板11に固定されている。なお、LED10の代わりに、LD等、他の発光素子を使用するようにしてもよい。
【0017】
円柱部材20は、全体が円柱状であり、透孔21と傾斜面22とを有し、LED固定板11に固定されている。透孔21は、円柱部材20の中央部に設けられ、透孔21内に、LED10が設けられている。傾斜面22は、円柱部材20の図1中、右端部分が円錐台状に刳り抜かれた面である。傾斜面22に、球レンズ30が当接されている。円柱部材20の図1中、左端が、LED固定板11に固定されている。なお、円柱部材20の代わりに、四角柱、六角柱等、円柱以外の柱状部材を設けるようにしてもよい。
【0018】
球レンズ30は、ビーズともいい、LED10が出力した光を受ける真球透明体である。
【0019】
集束レンズ40は、球レンズ30で集光された光を入射し、入射側が凹面であり、出射側が凸面である。
【0020】
次に、発光素子照明装置100の製造方法について説明する。
【0021】
まず、LED10と円柱部材20とを、LED固定板11に固定する。この場合、円柱部材20の透孔21の中心軸に、LED10の発光中心が位置するように、LED10をLED固定板11に固定する。そして、円柱部材20の傾斜面21に球レンズ30を接触させて、円柱部材20に球レンズ30を接着等によって固定する。これによって、球レンズ30の中心を通過する図1中の水平線がLED10の発光中心を通過する。その後に、球レンズ30で集光された光が集束レンズ40の凹面に入射するように、集束レンズ40を固定する。
【0022】
次に、発光素子照明装置100の動作について説明する。
【0023】
LED10で発光した光が、球レンズ30で集光した後に、集束レンズ40によって平行光に変化され、指向性の高い光が出射される。これによって、発光素子照明装置100が出力する光の光強度がより高くなる。
【0024】
また、球レンズ30に対する集束レンズ40の位置を変化させることによって、発光素子照明装置100が出力するビームの幅(ビーム角)を調整することができる。
【0025】
上記実施例において、球レンズ30は精度が比較的高いものでも、通常の凸レンズと比較すると、コストが低いので、発光素子照明装置100の全体のコストを下げることができる。
【0026】
また、上記実施例によれば、被照射体までの距離に応じて、球レンズ30と集束レンズ40との距離を調整すれば、照明光の焦点を合わせることができる。
【実施例2】
【0027】
図2は、本発明の実施例2である発光素子照明装置200を示す図である。
【0028】
発光素子照明装置200は、基本的には発光素子照明装置100と同じであるが、発光素子照明装置100にスリ割り保持手段41が設けられている実施例である。
【0029】
スリ割り保持手段41は、全体的には円筒形を有し、スリ割り(3つ割りとも呼ばれる切り込み)が3つ設けられ、球レンズ30を嵌め込むことによって、球レンズ30を保持する手段である。上記スリ割りは、図2中、スリ割り保持手段41の左端に設けられている。また、スリ割り保持手段41の円筒の内周は、集束レンズ40の外周とほぼ同じである。スリ割り保持手段41の内部に集束レンズ40を押し込むと、スリ割り保持手段41の中心軸と集束レンズ40の光軸とが同一になるように、スリ割り保持手段41の内部形状が形成されている。また、スリ割り保持手段41の図2中、左端部分の内径は、球レンズ30の外形よりもやや小さい。
【0030】
次に、発光素子照明装置200における各構成要素を取り付ける場合の動作について説明する。
【0031】
まず、球レンズ30が、図1に示すように、円柱部材30に、接着等によって固定し、スリ割り保持部41の内部に、集束レンズ40を固定する。この状態で、スリ割り保持部41の左端を、球レンズ30に近づけ、スリ割り保持部41の左端部分で球レンズ30を包むように、スリ割り保持具41を、図2中、左に移動する。スリ割り保持部41の左端部分が球レンズ30を包みつつある状態で、スリ割り保持部41の左端部分の内径が球レンズ30の外形よりもやや短いが、スリ割りによって、少し開き、球レンズ30をその中心方向に押さえ付けながら、球レンズ30を挟む。そして、スリ割り保持部41の左端部分が、円柱部材20の図1中、右端部分に当接する。したがって、球レンズ30と集束レンズ40とが、所定の距離関係で互いに固定される。
【実施例3】
【0032】
図3は、本発明の実施例3である発光素子照明装置300を示す図である。
【0033】
発光素子照明装置200は、発光素子照明装置100において、集束レンズ40の代わりに、集束レンズ50を設けた実施例である。集束レンズ50は、その光路中に、光透過材料51、52、53が設けられている。光透過材料51、53の屈折率は互いに同じであるが、光透過材料52の屈折率は、光透過材料51の屈折率とは異なる。光透過材料51が集束レンズ50中に設けられていることによって、収差を補正することができる。
【0034】
なお、光透過材料53の屈折率を、光透過材料51の屈折率と異なるようにしてもよく、この場合、光透過材料51、52が設けられて光透過材料52の屈折率と異なるようにしてもよく、同じようにしてもよい。
【0035】
また、光透過材料51と52との境界面、光透過材料52と53との境界面を、平面としてもよく、所定の曲率を有する曲面としてもよい。曲面にした場合、凸面であっても、凹面であってもよい。
【実施例4】
【0036】
図4は、本発明の実施例4である発光素子照明装置400を示す図である。
【0037】
発光素子照明装置400は、集束レンズ40を光軸方向に移動するレンズ移動手段60を有する実施例である。
【0038】
レンズ移動手段60は、たとえばピエゾ素子であり、このピエゾ素子に、集束レンズ40が固定され、集束レンズ40は、ピエゾ素子の変形量に応じて、光軸方向に移動する。なお、ピエゾ素子は、これに印加する電圧の値に応じて、変形する長さが異なる素子である。したがって、ピエゾ素子に所定の電圧を印加すると、集束レンズ40の位置が変化し、この変化量に応じて、集束レンズ40を出射した光の焦点が異なる。つまり、集束レンズ40を出射した光の焦点を調整することができる。
【0039】
なお、実施例4において、ピエゾ素子の代わりに、超音波モータ、電気モータ等、他の駆動手段を使用するようにしてもよい。
【0040】
また、実施例4において、調光機能を設けるようにしてもよい。
【0041】
レンズ移動手段60によって、光軸上で球レンズ30に対して集束レンズ40を移動すると、LED10で発生した光束の広がりが変化する。すなわち、集束レンズ40を、図4中、右に移動する(球レンズ30から集束レンズ40を遠ざける)と、所定の位置に存在している被照射体における光束は縮小し、逆に、集束レンズ40を、図4中、左に移動する(集束レンズ40を球レンズ30に近づける)と、所定の位置に存在している被照射体における光束は拡大する。
【0042】
ところで、光束が縮小する(照射する面積が狭くなる)に応じて、単位面積当たりの光量が増加し、被照射体を見ている人は、被照射体が明るくなったと感じ、逆に、光束が拡大する(照射する面積が広くなる)に応じて、単位面積当たりの光量が減少し、被照射体を見ている人は、被照射体が暗くなったと感じる。
【0043】
そこで、LED10(光源)から被照射体までの距離を一定にした場合、被照射体を照射する光束の面積に応じて、LED10の発光量を変化させるように制御する(調光する)。つまり、LED10(光源)から被照射体までの距離を一定にした場合、被照射体を照射する光束の面積と比例して、LED10の発光量を変化させるように制御する(調光する)。光束の面積がたとえば2倍になれば、LED10の発光量を2倍にする。このようにすれば、被照射体の単位面積当たりの明るさが変化しないので、被照射体を照射する面積が変化しても、被照射体の明るさが変化していないと、人が認識する。
【0044】
なお、LED10(光源)から被照射体までの距離を一定にした場合、被照射体を照射する光束の面積と、集束レンズ40の移動量との関係を予め測定し、この測定結果に応じて、LED10の発光量を制御する。
【実施例5】
【0045】
図5は、本発明の実施例5である発光素子照明装置500を示す図である。
【0046】
発光素子照明装置500は、発光素子照明装置500の外部に設けられているリモートコントローラ(無線送信手段)80からの制御信号によって、レンズ移動手段60を制御する実施例である。
【0047】
発光素子照明装置500は、発光素子照明装置400に、無線受信手段70と、制御手段71とを有する装置である。
【0048】
無線受信手段70は、リモートコントローラ80が無線送信した制御信号を受信する手段である。
【0049】
制御手段71は、無線手段70が受信した制御信号に基づいて、レンズ移動手段60を制御する手段である。また、制御手段71は、レンズ移動手段60を介して、集束レンズ40を複数段階に移動させる手段である。たとえば、舞台の最前列の役者、最後列の役者、中間位置の役者のそれぞれに焦点を当てるために、集束レンズ40を移動させる。または、舞台全体を照明するように集束レンズ40を移動させる。
【0050】
なお、発光素子照明装置500は、光の照射方向を固定した状態で、その焦点距離を制御する装置であるが、光の照射方向を制御するアクチュエータを発光素子照明装置500に取り付ければ、左右方向、上下方向の照射方向を制御することができ、しかも、制御された照射方向における光の焦点位置をも制御することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…発光素子照明装置、
10…LED、
20…円柱部材、
30…球レンズ、
40、50…集束レンズ、
60…レンズ移動手段、
70…無線受信手段、
71…制御手段、
80…リモートコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と;
上記発光素子が出力した光を受ける球レンズと;
上記球レンズで集光された光を入射し、被照射体に向けて光を照射する凸レンズと;
を有することを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記球レンズと上記発光素子との間に柱状の台が設けられ、
上記台は、
上記柱状の柱の中心軸を含む中空部と;
上記凸レンズ側の端部に、円錐台状に刳り抜かれている刳り抜き部と;
を有することを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記凸レンズに、上記凸レンズの屈折率と異なる屈折率を具備する材料が挿入されていることを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記凸レンズを光軸方向に移動するレンズ移動手段を有することを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項5】
請求項4において、
上記レンズ移動手段は、ピエゾ素子または超音波モータであることを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項6】
請求項4において、
上記発光素子から被照射体までの距離を一定にした場合、被照射体を照射する光束の面積に応じて、上記発光素子による発光量を変化させるように制御する制御手段を有することを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項7】
請求項1において、
上記凸レンズを収容するとともに、上記球レンズを包むスリ割りを具備するスリ割り保持手段を有することを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項8】
請求項4において、
上記発光素子照明装置の外部からの無線信号を受信する無線受信手段と;
上記無線手段が受信した無線信号に基づいて、上記レンズ移動手段を制御する制御手段と;
を有することを特徴とする発光素子照明装置。
【請求項9】
請求項8において、
上記制御手段は、上記凸レンズを複数段階で移動させる手段であることを特徴とする発光素子照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−227058(P2012−227058A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95290(P2011−95290)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501193218)株式会社 清原光学 (16)
【出願人】(511101128)株式会社 セプロ (1)
【Fターム(参考)】