説明

発光素子用実装基板

【課題】レジスト層、反射板等を別途設けることなく、発光素子から発する光を効率的に反射させ、発光素子の正面側に指向する光の量を多くすることが可能な発光素子用実装基板を提供する。
【解決手段】発光素子用実装基板1は、アルミニウム箔からなる放熱材層11と、放熱材層11の上に接着層12を介在して積層されて固着された樹脂からなる絶縁層13と、絶縁層13の上に接着層14を介在して積層されて固着されたアルミニウム箔からなり、かつ、LED等の発光素子を実装するための外表面を有する回路層15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、実装基板に関し、特定的には、発光ダイオード(LED)等の発光素子を実装するための発光素子用実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁層の片面または両面に回路を形成した実装基板が幅広い分野に利用されている。回路は銅箔、アルミニウム箔、または、ペースト組成物で形成される。形成された回路の上に電子素子が実装される。実装される電子素子としては、抵抗素子、コンデンサ、トランジスタ、各種パワー素子;MPU、CPU等の高密度集積回路;発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード等の発光素子およびこれらのアレイ素子が挙げられる。
【0003】
たとえば、特開2010-114144号公報(以下、「特許文献1」という)に開示されているように、LED実装基板においては、一般的に回路パターンを形成する材料として銅箔が用いられる。また、銅のマイグレーションを防止するために、基板の上に形成された銅箔の回路パターンの上にレジスト層が形成されている。レジスト層には、回路パターンのうち、LED素子を実装するためにリード端子と接続されるパッド部分(LED素子実装部分)と、他の回路に接続される部分とが露出するように開口が設けられている。レジスト層は、実装されたLEDから発した光を反射させるために、明色、特許文献1に開示されているように特に白色に着色されている場合が多い。
【0004】
しかしながら、上記のレジスト層は、LED素子実装部分と他の回路に接続される部分との上に存在してはならない。このため、レジスト層は、フォトリソグラフィー法、シルクスクリーン法等の方法を用いて、基板の上で選択された平面領域に設ける必要がある。LED素子実装部分は一般的に非常に小さい部分であるので、通常はフォトリソグラフィー法を用いてレジスト層が選択的に設けられる。まれにシルクスクリーン法を用いてレジスト層が選択的に設けられる場合もある。いずれの場合でも、非常に精密な方法を用いて、レジスト層を基板の上で選択された平面領域に設ける必要があるために多大なコストがかかるという問題がある。
【0005】
これに対して、たとえば、特開2006-41290号公報(以下、「特許文献2」という)に開示されているように、アルミニウム箔を用いて回路パターンを形成することが考えられる。アルミニウムはマイグレーションを起こさないので、レジスト層を形成する必要がない。また、アルミニウム箔は金属の中でも反射率が高い金属であるので、白色のレジスト層を形成しなくても、実装されたLEDから発した光を良好に反射させることができる。
【0006】
ところで、LED等の発光素子を備えた発光装置では、たとえば、特開2009-147281号公報(以下、「特許文献3」という)に開示されているように、発光素子を樹脂等の封止材で半球状に封止し、その半球状の封止材を保持するために半球状のレンズが装着されている。発光素子は基板に接着されているので、基板とほぼ同一面に存在する。このとき、発光素子から発した光は、半球状の封止材とレンズを通じて外部に出る。照明器具等の機器に発光装置が組み込まれた場合、半球状のレンズの頂点方向に光が出る。
【0007】
しかしながら、基板と発光素子の高さに大きな差がないため、発光素子から出た光のうち、一部が基板に対して鋭角をなす方向で基板に入射する。その結果、発光素子から出た光は、レンズの頂点方向に指向しないので、集光レンズまたは反射板を別途設ける必要がある。
【0008】
したがって、レンズの頂点方向、すなわち、発光素子の正面方向に光を指向させるためには、発光素子を実装する基板の表面にレジスト層等の乱反射させる物質を設ける必要がある、または、アルミニウム箔を用いて回路パターンを形成した場合には発光素子とは別に光を正面方向に指向させるための反射板等を別に設ける必要がある、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-114144号公報
【特許文献2】特開2006-41290号公報
【特許文献3】特開2009-147281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、レジスト層、反射板等を別途設けることなく、発光素子から発する光を効率的に反射させ、発光素子の正面側に指向する光の量を多くすることが可能な発光素子用実装基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従った発光素子用実装基板は、放熱材層と、放熱材層に積層されて固着された絶縁層と、絶縁層に積層されて固着されたアルミニウム箔からなり、かつ、発光素子を実装するための外側表面を有する回路層とを備える。回路層の外側表面が、重合圧延されたアルミニウム箔の重合面を含む。
【0012】
本発明の発光素子用実装基板において、放熱材層が、アルミニウム箔から形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の発光素子用実装基板において、絶縁層が、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフロライド、ポリフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれた1種を含むことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の発光素子用実装基板において、放熱材層、絶縁層、および、回路層は、接着剤で固着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路層の外側表面が、重合圧延されたアルミニウム箔の重合面を含むので、回路層の外側表面に実装される発光素子から発する光を効率的に反射させ、発光素子の正面側に指向する光の量を多くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従った一つの実施の形態としての発光素子用実装基板の概略的な断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一つの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、発光素子用実装基板1は、アルミニウム箔からなる放熱材層11と、放熱材層11の上に接着層12を介在して積層されて固着された樹脂からなる絶縁層13と、絶縁層13の上に接着層14を介在して積層されて固着されたアルミニウム箔からなり、かつ、LED等の発光素子を実装するための外表面を有する回路層15とを備える。
【0019】
(放熱材層)
放熱材層11は、発光素子用実装基板1の回路層15の上に実装されるLED等の発光素子から発生する熱を放散するために設けられる。放熱材層11の下面(絶縁層13に固着される側と反対側の面)を照明器具等の電子機器の支持体、筐体等に沿って積層して固着するように発光素子用実装基板1を配置してもよい。
【0020】
放熱材層11は熱伝導率が高いアルミニウム材(アルミニウム箔またはアルミニウム板)から形成されるのが好ましく、特に高純度(JIS呼称 1000系等の工業的レベルの高純度)のアルミニウム材から形成されるのが好ましい。調質されたアルミニウム材を用いる場合、積層材として扱いやすい硬質(JIS呼称 H18)のアルミニウム材を用いるのが好ましい。発光素子用実装基板1を照明器具等の電子機器の支持体、筐体等に沿って積層する際には、屈曲性が良好なものが求められるので、放熱材層11は適宜調質されたアルミニウム材を用いるのが好ましい。ただし、放熱材層11は、アルミニウム材以外の熱伝導性の良好な材料から形成してもよい。
【0021】
放熱材層11の厚みは、電子機器の軽量性、小型化、薄型化に寄与するとともに、加工を容易にし、安定した放熱性を発揮するためには20μm以上350μm以下が好ましく、さらに好ましくは80μm以上300μm以下、より好ましくは100μm以上250μm以下である。放熱材層11の厚みが20μm未満では、安定した放熱性の効果を得ることができない。放熱材層11の厚みが350μmを超えると、加工が困難になる上、軽量・小型・薄型化の妨げとなる。
【0022】
(絶縁層)
絶縁層13は、樹脂から形成されることが好ましい。絶縁層13は、絶縁性を担保するために絶縁破壊電圧が5kV以上であることが好ましい。さらに、絶縁層13は、熱収縮が少ないことが好ましい。
【0023】
絶縁層13は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフロライド、ポリフッ化ビニリデンまたはテトラフルオロエチレンを含む樹脂フィルムから形成されるのが好ましい。
【0024】
絶縁層13の厚みは、安定した絶縁性と放熱性を発揮するためには10μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは10〜50μmである。絶縁層13の厚みが10μm未満では、安定した絶縁性の効果を得ることができない。絶縁層13の厚みが100μmを超えると、放熱性低下の原因となる。
【0025】
(回路層)
回路層15は、発光素子用実装基板1の上に実装される発光素子を配線するための回路をエッチング等により形成するために設けられる。回路層15は、ポリエチレンテレフタレートを含むフィルムからなる絶縁層13の上に接着層14を介在して回路層15としてのアルミニウム箔を積層することにより構成されるのが好ましい。
【0026】
回路層15の厚みは、エッチングにより容易に回路を形成し、絶縁層13の上に密着するように積層するためには5μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは10〜70μmである。回路層15の厚みが5μm未満では、きれいに(シワ等が生じないように)絶縁層13の上に密着して積層することが困難になる。回路層15の厚みが100μmを超えると、エッチングによる精密な回路形成が困難になる。
【0027】
回路層15の材料としては、光を良好に反射する物質であるアルミニウム箔を用いる。アルミニウム箔の材質としては、上記の放熱材層11に用いられるアルミニウム材と同等のものを用いることができる。アルミニウムはマイグレーションを起こさないため、回路層15の上にレジスト層を設ける必要がない。
【0028】
さらに、そのアルミニウム箔の表面において光をある程度、乱反射させるために表面粗度の大きなアルミニウム箔を用いる必要がある。アルミニウム箔の表面を粗くするために、電解エッチング、サンドブラスト等の方法を用いてもよいが、最も良い方法として、アルミニウム箔の製造工程中で表面を粗くする方法を採用する。アルミニウム箔の製造工程において、たとえば、アルミニウム箔を圧延するロールの表面を粗化させ、その表面をアルミニウム箔に転写させながら圧延することにより、アルミニウム箔の表面を粗くすることができる。
【0029】
しかしながら、この方法の場合、圧延方向に垂直な方向にはアルミニウム箔の表面を粗くすることができるが、圧延方向に平行な方向ではアルミニウム箔の表面を粗くすることができない。
【0030】
そこで、数回行われるアルミニウム箔圧延の最終圧延工程で2枚のアルミニウム箔を同時に圧延する重合圧延により、アルミニウム箔同士が触れ合っている表面(以下、「マット面」という)を回路層15の外側表面に利用することが考えられる。重合圧延工程時にアルミニウム箔同士が触れ合っている面は、圧延による塑性変形時に圧延ロールに拘束されないため、自由に変形する。これにより、マット面においては、圧延方向に垂直な方向でも平行な方向でもアルミニウム箔の表面を粗くすることができる。
【0031】
したがって、本発明の発光素子用実装基板1では、回路層15の外側表面が、重合圧延されたアルミニウム箔の重合面を含む。その結果、アルミニウム箔のマット面をLED等の発光素子の実装面に用いることにより、回路層15の外側表面に実装される発光素子から発する光を効率的に多く反射させ、かつ、発光素子の正面側に指向する光の量を多くすることが比較的低コストで可能になる。
【0032】
(接着層)
接着層12、14は、耐熱性を担保するために汎用のエポキシ系接着剤から形成されるのが好ましい。導電性フィラーは放熱性を高めるが、絶縁性を低下させるので、接着層12、14には導電性フィラーを含ませない。
【0033】
接着層12、14のそれぞれの厚みは、良好な密着性を発揮し、放熱の妨げにならないようにするために3μ以上30μm以下であるのが好ましい。接着層12、14のそれぞれの厚みが3μm未満では、密着不足または密着ムラが起こりやすいので、放熱性低下の原因となる。接着層12、14のそれぞれの厚みが30μmを超えると、放熱材層11と絶縁層13、絶縁層13と回路層15の間が断熱されやすくなるので、放熱性低下の原因となる。
【0034】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は一例であり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
図1に示す発光素子用実装基板1の実施例と比較例の試料を作製した。
【0036】
(実施例1)
東洋アルミニウム株式会社製の厚みが50μmで材質がJIS 1N30のアルミニウム箔を重合圧延によって圧延したものを回路層15の材料として用いた。このアルミニウム箔は重合圧延によって片面に光沢があり、反対側のもう一方の面はマット調である。光沢面の粗度Raが0.04μm、マット面の粗度Raが0.25μmであった。
【0037】
上記のアルミニウム箔の光沢面の上に、絶縁層13の材料として東洋紡績株式会社製の厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(型番:E5200)を、接着層14を介在させて積層した。DIC株式会社製の接着剤(型番:LX500)10質量部とDIC株式会社製の接着剤(型番:KW75)1質量部とを混合したものを適宜酢酸エチルで希釈し、ミヤバーにて接着層14を形成した。その後、余分な酢酸エチルをドライヤーにて乾燥させて、接着層14の厚みを10μmに調整した。
【0038】
次に、接着層14が形成されていないポリエチレンテレフタレートフィルムの反対側の面の上に、放熱材層11の材料として東洋アルミニウム株式会社製の厚みが150μmで材質がJIS 1N30のアルミニウム箔を、上記と同様にして接着層12を介在させて積層した。
【0039】
その後、厚みが50μmのアルミニウム箔のマット面の上で、フォトリソグラフィー法により、レジストの露光・現像処理を行い、得られたレジストパターン層をマスクとして用いてアルミニウム箔をエッチングで選択的に除去して、回路層15を形成した。
【0040】
(実施例2)
回路層15の材料として、厚みが50μmで材質がJIS8079のアルミニウム箔を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子用実装基板1を作製した。
【0041】
(比較例1)
回路層15の材料として、重合圧延を行わず、両面が光沢面であるアルミニウム箔を用い、レジストの露光・現像処理を光沢面の上で行ったこと以外は、実施例1と同様にして発光素子用実装基板1を作製した。
【0042】
(比較例2)
回路層15の材料として、重合圧延を行わず、表面粗度Raが0.25μmの圧延ロールを用いて圧延したアルミニウム箔を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子用実装基板1を作製した。
【0043】
以上のようにして作製された実施例1、2と比較例1、2の発光素子用実装基板1における回路層15の実装面の粗度Ra[μm]を、アルミニウム箔の圧延方向と圧延方向に垂直な方向とにおいて測定した。粗度Raの測定は、JIS B0601:‘82に準拠して行った。その結果を以下の表1に示す。
【0044】
また、実施例1、2と比較例1、2の発光素子用実装基板1における回路層15の実装面における乱反射率L値と正反射率L値とを、アルミニウム箔の圧延方向と圧延方向に垂直な方向とにおいて測定した。L値の測定は、株式会社村上色彩研究所製の変角分光測色システム(GCMS)(型番:GSP-2)を用いて行った。その結果を以下の表1に示す。表1において、(*1)は、発光素子用実装基板1の実装面に対して10°の角度をなして入射される光が実装面に対して45°の角度をなして反射する光の量を、発光素子用実装基板1の実装面の代わりに標準白色板を用いた場合の反射光の量を100としたときの相対値として示す。(*2)は、発光素子用実装基板1の実装面に対して10°の角度をなして入射される光が実装面に対して10°の角度をなして反射する光の量を、発光素子用実装基板1の実装面の代わりに標準白色板を用いた場合の反射光の量を100としたときの相対値として示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から、実施例1、2の発光素子用実装基板1は、比較例1、2の発光素子用実装基板1に比べて、乱反射率L値が高い値を示したことがわかる。したがって、実施例1、2の発光素子用実装基板1では、回路層15の外側表面が、重合圧延されたアルミニウム箔の重合面を含むので、回路層15の外側表面に実装される発光素子から発する光を効率的に反射させ、発光素子の正面側に指向する光の量を多くすることが可能になることがわかる。
【0047】
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1:発光素子用実装基板、11:放熱材層、12,14:接着層、13:絶縁層、15:回路層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱材層と、
前記放熱材層に積層されて固着された絶縁層と、
前記絶縁層に積層されて固着されたアルミニウム箔からなり、かつ、発光素子を実装するための外側表面を有する回路層と、を備え、
前記回路層の外側表面が、重合圧延されたアルミニウム箔の重合面を含む、発光素子用実装基板。
【請求項2】
前記放熱材層が、アルミニウム箔から形成されている、請求項1に記載の発光素子用実装基板。
【請求項3】
前記絶縁層が、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルフロライド、ポリフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれた1種を含む、請求項1または請求項2に記載の発光素子用実装基板。
【請求項4】
前記放熱材層、前記絶縁層、および、前記回路層は、接着剤で固着されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発光素子用実装基板。


【図1】
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