説明

発光素子表示装置

【課題】表示画像が変化しても各画素に表示される輝度・色度は変化しない発光素子表示装置を提供する。
【解決手段】各画素において自発光素子を発光させることにより表示を行う発光素子表示装置は、各画素の階調値を示す情報を含む映像信号が入力され、映像信号の統計値を算出する統計値算出部211と、算出された統計値が、少なくとも最大階調値の輝度について、基準輝度と異なって表示される所定条件を満たす場合に、階調値に対応するデータ電圧を変更するデータ電圧変更部215と、変更されたデータ電圧を生成するデータ電圧生成部216と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子表示装置に関し、自発光体である発光素子に発光させて表示を行う発光素子表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機EL(Electro-luminescent)表示装置」という。)が実用化段階にある。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、更なる薄型化が可能となっている。
【0003】
一方、医療画像表示用ディスプレイの分野では、表示画像の階調特性は,米国放射線学会(ACR)と北米電子機器工業会(NEMA)が開発した、CTやMRI、CRなどで撮影した医用画像のフォーマットと、それらの画像を扱う医用画像機器間の通信プロトコルを定義した標準規格であるDICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)Part 14が標準となっている。このDICOM Part 14は画像データとの整合性をとるために、GSDF(Grayscale Standard Display Function)を規定している。GSDFとは、紙、フィルム、ディスプレイなどの輝度の異なる画像表示においても、低階調の領域から高階調領域まで同じような見え方となるように、人間の識別閾を考慮して作成されたものである。
【0004】
昨今、医療施設では経済的メリット(管理費、フィルム代、保管スペース、情報の共有化)などの観点から表示物のフィルムレス化が必要不可欠となっており、画像表示装置がフィルムからディスプレイへと移行してきている。このように画像診断装置のデジタル化、画像データの拡大、コンピュータや通信技術の発達により、高精細かつ高輝度で表示することと共に、画像診断装置で取得したデータを、コントラストや階調特性もフィルムと同様な画像を表示することが求められている。
【0005】
特許文献1は、静止画と動画とを判定し、これによりガンマ特性の切り替えを行うことについて開示している。特許文献2は、入力された映像信号を集計し、EL素子に流す基準電流倍率を大きくすることについて開示している。特許文献3は、電源ラインにおける電圧降下を補償するために、電圧降下に応じて画像データに補正することについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−350173号公報
【特許文献2】特開2008−165246号公報
【特許文献3】特開2009−216801号公報
【特許文献4】特開2009−300517号公報
【特許文献5】特開2010−002770号公報
【特許文献6】特開2003−005709号公報
【特許文献7】特開2007−148222号公報
【特許文献8】特開2003−330421号公報
【特許文献9】特開2009−104147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機EL表示装置等においては、電源配線抵抗等の影響により、画面表示量(点灯率)に応じて輝度・色度変動が発生する。例えば、画面内の小さなウィンドウ枠のみに白を表示するような白ウィンドウ表示時と、画面全体に白色を表示する全白表示時とでは、表示領域内の抵抗が異なるため、白ウィンドウ表示時には高い輝度による白表示となるが、全白表示時には白ウィンドウ表示時よりも低い輝度の白表示となる。特に、近年のパネルサイズの拡大と共に電源配線抵抗等の影響は大きくなり、より輝度・色度変動が顕在化する。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてされたものであり、表示画像が変化しても各画素に表示される輝度・色度は変化しない発光素子表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光素子表示装置は、各画素において自発光素子を発光させることにより表示を行う発光素子表示装置において、前記各画素の階調値を示す情報を含む映像信号が入力され、前記映像信号の統計値を算出する統計値算出部と、前記算出された前記統計値が、少なくとも最大階調値の輝度について、基準輝度と異なって表示される条件を満たす場合に、前記階調値に対応するデータ電圧を変更するデータ電圧変更部と、前記変更された前記データ電圧を生成するデータ電圧生成部と、を備える、ことを特徴とする発光素子表示装置である。
【0010】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記最大階調値の前記基準輝度は、全画面を白で表示した場合の一画素の輝度とすることができる。
【0011】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記データ電圧変更部は、全階調範囲を階調値の高い側から高階調域、中階調域及び低階調域と3つに分けたときに、前記高階調域及び前記中階調域について、前記変更前のデータ電圧である基準データ電圧より低いデータ電圧に変更することができる。
【0012】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記統計値は、一画面における全画素の階調値の合計であるAPL(Average Picture Level)とすることができる。
【0013】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記統計値は、等間隔に分割された全階調範囲の各階調範囲に含まれる画素数についてのヒストグラムに基づいて求めることができる。
【0014】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記条件は、一画面における全画素の階調値の合計であるAPLが所定値以下であり、かつ、所定階調域の画素数が所定数以下である、とすることができる。
【0015】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記条件は、前記APLが前記APLの最大値の1/2以下であり、かつ、全階調範囲を階調値の高い側から高階調域、中階調域及び低階調域と3つに分けたときに、前記高階調域の画素の数が全画素数の1/3以上である、とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置について示す図である。
【図2】図1のTFT(Thin Film Transistor)基板について概略的に示す図である。
【図3】図2の画素の回路を概略的に示す図である。
【図4】図3の画素における、各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図5】図2のデータ信号駆動部の内部構成を概略的に示す図である。
【図6】図5のデータ電圧生成部に含まれるラダー回路について示す図である。
【図7】図5のデータ信号駆動部における階調電圧生成のフローチャートである。
【図8】オフセットFとAPLの関係を示すグラフである。
【図9】生成されるヒストグラムの一例について示す図である。
【図10】白ウィンドウ表示の一例について示す図である。
【図11】白ウィンドウ表示と全白表示における各階調における輝度を示すグラフである。
【図12】白ウィンドウ表示と全白表示におけるAPLとγとの関係を示すグラフである。
【図13】ダイナミックレンジが縮小された階調変換関数の例について示すグラフである。
【図14】本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置のTFT基板について概略的に示す図である。
【図15】図14の画素の回路を概略的に示す図である。
【図16】図15の画素における、各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図17】図14のデータ信号駆動部の内部構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態係る有機EL表示装置100について示す図である。この図に示されるように、有機EL表示装置100は、TFT(Thin Film Transistor)基板200及び不図示の封止基板から構成される有機ELパネルを挟むように固定する上フレーム110及び下フレーム120と、表示する情報を生成する回路素子を備える回路基板140と、その回路基板140において生成されたRGBの映像信号をTFT基板200に伝えるフレキシブル基板130と、により構成されている。
【0019】
図2には、図1のTFT基板200が概略的に示されている。TFT基板200は、マトリクス状に配置され、表示の最小単位であり、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3種の有機発光素子のいずれかを有する画素280と、表示する階調値に対応するデータ電圧をデータ信号線250に印加するデータ信号駆動部210と、各画素280に複数配置されたTFTスイッチを制御するための信号を(ゲート)信号線261〜263に出力するゲート駆動部220と、発光素子を発光させる矩形波の掃引信号を掃引信号線270に出力する掃引信号駆動部230と、各画素280に配線された電源線240に接続された電源部241とを備えている。なお、この図においては、図が煩雑にならないよう画素280の数を減らし、簡略化して記載している。
【0020】
図3には、画素280の回路が概略的に示されている。この図に示されるように、画素280の回路は、自発光体である有機EL素子310と、信号選択信号線261に入力される信号選択信号により駆動され、掃引信号線270及びデータ信号線250のいずれを入力信号線255に接続するかを選択する第1選択スイッチ301及び第2選択スイッチ302と、有機EL素子310を発光させるスイッチとして機能し、有機EL素子310のアノード側が、後述する発光制御スイッチ308を介して、ドレイン側に接続されている駆動TFT306と、第1選択スイッチ301及び第2選択スイッチ302と駆動TFT306のゲート側との間に配置された記憶容量304と、駆動TFT306のドレイン側とゲート側とを結ぶように接続され、リセット信号線263に入力されるリセット信号により動作するリセットスイッチ314と、駆動TFT306のドレイン側にあり、発光制御信号線262に入力される発光制御信号により駆動する発光制御スイッチ308と、有機EL素子310のカソード側に接続された共通電極312と、を備えている。また、駆動TFT306のソース側は電源線240に接続されている。
【0021】
なお、第1選択スイッチ301、駆動TFT306及び発光制御スイッチ308はp型MOSにより形成されているため、ゲート信号がLowでオンとなる。一方、第2選択スイッチ302及びリセットスイッチ314は、n型MOSにより形成されているため、ゲート信号がHighでオンとなる。なお、本実施形態においては、各画素においては0〜255の256階調による表示を行い、「低階調域」、「中階調域」及び「高階調域」の語は、それぞれ256階調を略三等分した0〜85階調、86〜170階調、及び171〜255階調を意味する。
【0022】
図4は、図3の画素280の有機EL素子310の発光時における、各信号の変化を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートには、図4のデータ信号線250、掃引信号線270、信号選択信号線261、リセット信号線263及び発光制御信号線262にそれぞれ印加されるデータ電圧、掃引電圧、信号選択信号、リセット信号及び発光制御信号の各信号の変化の様子が示されている。
【0023】
この図に示されるように、まず、時刻T1において、信号選択信号と発光制御信号とが共にLow(アクティブ)となると、第1選択スイッチ301はオンとなり、第2選択スイッチ302はオフとなるため、入力信号線255にはデータ電圧が入力され、発光制御スイッチ308はオンとなる。次に、時刻T2において、リセット信号がHigh(アクティブ)となり、リセットスイッチ314がオンとなることにより、駆動TFT306のゲートとドレインは導通する。
【0024】
引き続き、時刻T3において、発光制御信号がHigh(ネガティブ)となると、発光制御スイッチ308がオフとなり、駆動TFT306のゲート電圧が上がり、駆動TFT306の閾値電圧となった時点で駆動TFT306は非導通となる。時刻T4において、リセット信号Low(ネガティブ)により、リセットスイッチ314がオフとなり、時刻T5において、データ信号線250にデータ電圧が印加されて、記憶容量304に階調電圧に対応する電圧が蓄えられる。
【0025】
時刻T6において、信号選択信号がHighとなると共に、掃引信号線270に掃引電圧が設定され、発光制御信号がLow(アクティブ)となる。これにより、発光制御スイッチ308がオンとなると共に、入力信号線255は掃引信号線270と接続され、掃引電圧が印加される。この結果、記憶容量304に蓄えられた電圧に対応する電圧が駆動TFT306のゲートに印加され、駆動TFT306のソース側からドレイン側に電流が流れ、有機EL素子310が発光する。
【0026】
図5には、図2のデータ信号駆動部210の内部構成が概略的に示されている。データ信号駆動部210は、入力される各画素のRGBの映像信号から各画素の階調値の合計であるAPL(Average Picture Level)を算出すると共に、全階調範囲0〜255を等間隔に分割し、そのそれぞれの階調範囲に該当する画素数(度数)を数えてヒストグラムを生成するヒストグラム生成・APL算出部(統計値算出部)211と、有機EL表示装置100の外部環境の明るさを検出する外光レベル検出部212と、算出されたAPLに基づいて、後述するオフセットを算出するオフセット算出部214と、算出されたヒストグラム、APL及び検出された外光レベルに基づいて有機EL素子310を発光させる掃引信号の掃引電圧を算出する掃引電圧算出部213と、算出されたヒストグラム、APL、オフセット、及び外光レベル検出部212の出力に基づいて階調値とデータ電圧との関係を変更するデータ電圧変更部215と、算出されたデータ電圧から実際のデータ電圧を生成するデータ電圧生成部216と、データ信号線250にデータ電圧を印加するデータ信号制御部218と、掃引信号線270に掃引電圧を印加する掃引信号制御部217と、を備えている。
【0027】
図6は、図5のデータ電圧生成部216に含まれるラダー回路219について示す図である。ラダー回路219は、256階調のそれぞれに対応する電圧を生成する回路であり、基準電圧発生回路221から出力された電圧は、可変抵抗であるラダー抵抗222に入力され、ラダー抵抗222からバッファアンプ223を介して256階調の電圧が出力される。この可変抵抗であるラダー抵抗222の抵抗値を変更することにより、階調値−データ電圧特性を所望のγカーブ等に合わせるように変更することができる。
【0028】
図7には、図5のデータ信号駆動部210における階調電圧生成のフローチャートが示されている。このフローチャートでは、まず、ステップS11において、映像信号を受信したヒストグラム生成・APL算出部211が、ヒストグラムを生成すると共に、APLを算出する。次に、ステップS12において、オフセット算出部214が、算出されたAPLからオフセットFを算出する。ここで、オフセットFとAPLには、図8のグラフに示されるような関係があり、ステップS13において、データ電圧変更部215は、オフセットFの値が1より小さい場合と1以上の場合とにより処理を分ける。オフセットFの値が1より小さい場合には、ステップS15に移り、階調値−データ電圧特性のダイナミックレンジを維持したまま、ステップS16に移行する。一方、オフセットFの値が1以上の場合には、ステップS14に移り、オフセットFに対応する量だけ、中階調域及び高階調域の階調値−データ電圧特性のダイナミックレンジを縮小し、ステップS16に移行する。引き続きステップS16において、データ電圧変更部215が、変更したダイナミックレンジを使用し、ヒストグラム及び外光レベル等を考慮して、階調値に対応するデータ電圧が表された階調変換関数を決定し、ステップS17において、データ電圧生成部216が、変更された階調値に対応するデータ電圧を生成する。
【0029】
ヒストグラムは、例えば、図9に示されるように、低階調域と高階調域の度数が高く、中階調域が比較的少ない場合には、例えば、図10の画面を示す図に示されるように、黒画面501に小さな白ウィンドウ502が表示されているような画面状態を表している。このような画面の各階調における輝度は、図11の各階調における輝度を示すグラフにおける点線で示されるように、中階調域及び高階調域での輝度が、実線で示される画面全体を白表示した全白表示の場合に比べて大きくなる傾向にある。また、図12に示されるように、白ウィンドウ表示の場合には、APLが大きくなるにつれて、階調値−データ電圧特性をγカーブで表した場合のγの値も大きくなる傾向にある。ここで、図11のグラフに示されるような中階調域及び高階調域の輝度の違いは、白ウィンドウ表示に限られず、比較的低階調域の画素が多い画面で高階調域が存在する画面には特に顕著に表れる。
【0030】
したがって、このような中階調域及び高階調域における高くなりすぎた輝度を全白表示時の輝度に近づけるために、APLの値及びヒストグラムの結果を考慮して、図7のステップS16で示された階調変換関数が決定される。
【0031】
ダイナミックレンジが縮小された階調変換関数の例が、図13のグラフに示されている。点線がダイナミックレンジに変更がない場合の白ウィンドウ表示時の階調値−データ電圧特性であり、実線が変更されたダイナミックレンジにおける階調値−データ電圧特性である。このグラフに示されるように、中階調域及び高階調域でのみ、その階調値に対応するデータ電圧が変更されるようにしている。
【0032】
ここで、階調値に対応するデータ電圧の変更は、図6で示されたラダー回路219のラダー抵抗222の抵抗値を変更することにより、階調値−データ電圧特性のカーブを変更する方法の他、階調値そのものを予め保存されたルックアップテーブル等を用いて変更することにより、階調値−データ電圧特性のカーブに合わせ込む方法、図4で説明した、掃引信号のLow(アクティブ)である期間や電位を変更して、画面全体の輝度制御を行う方法やこれらを組合わせた方法等を用いることができる。
【0033】
従って、第1実施形態によれば、有機EL表示装置は、表示画像が変化しても各画素に表示される輝度・色度を変化させずに表示することができる。
【0034】
[第2実施形態]
図14には、本発明の第2実施形態に係るTFT基板800が概略的に示されている。ここで、このTFT基板800が収容される有機EL表示装置は、図1に示された、第1実施形態の有機EL表示装置100の構成と同様であるため説明を省略する。
【0035】
図14に示されるように、TFT基板800は、マトリクス状に配置され、表示の最小単位であり、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3種の有機発光素子のいずれかを有する画素880と、表示する階調値に対応するデータ電圧をデータ信号線850に印加するデータ信号駆動部810と、各画素880に複数配置されたTFTスイッチ等を制御するための信号を(ゲート)信号線822〜823に出力するゲート駆動部820と、掃引信号線870及びデータ信号線850のいずれを入力信号線855に接続するかを、信号選択信号線821の信号により選択する第1選択スイッチ824及び第2選択スイッチ826と、発光素子を発光させる矩形波の掃引信号を掃引信号線870に出力する掃引信号駆動部830と、各画素880に配線された電源線840に接続された電源部841とを備えている。なお、第1実施形態の図2と同様に、この図においても図が煩雑にならないよう画素880の数を減らし、簡略化して記載している。
【0036】
図15は、画素880内の回路を概略的に示す図である。この図に示されるように、画素880は、自発光体である有機EL素子910と、有機EL素子910を駆動するスイッチとして機能し、有機EL素子910のアノード側が、後述する発光制御スイッチ908を介して、ドレイン側に接続されている駆動TFT906と、駆動TFT906のゲート側に配置された記憶容量901と、駆動TFT906のドレイン側とゲート側を結ぶように接続され、リセット信号線823に印加されたリセット信号により駆動するリセットスイッチ914と、駆動TFT906のドレイン側にあり、発光制御信号により駆動する発光制御スイッチ908と、有機EL素子910のカソード側に接続された共通電極912と、を備えている。また、駆動TFT906のソース側は電源線840に接続されている。
【0037】
なお、第1実施形態と異なり、発光制御スイッチ908はn型MOSにより形成されているため、発光制御スイッチ908のゲートはHighでオンとなる。
【0038】
図16には、図15の画素880の有機EL素子910の発光時における、制御される信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。第2実施形態では、発光制御スイッチ908がn型MOSで形成されているため、このタイミングチャートでは、発光制御信号のLowとHighが、第1実施形態の発光制御信号とは逆となっている。この他の点については図5で示される第1実施形態のタイミングチャートと同じであり、同様の動作であるため、説明を省略する。
【0039】
図17には、図14のデータ信号駆動部810の内部構成が概略的に示されている。データ信号駆動部810は、入力される各画素のRGBの映像信号から各画素の階調値の合計であるAPLを算出すると共に、全階調範囲0〜255を等間隔に分割し、そのそれぞれの階調範囲に該当する画素数(度数)を数えてヒストグラムを生成するヒストグラム生成・APL算出部(統計値算出部)811と、算出されたAPL及びヒストグラムに基づいて、階調値とデータ電圧との関係を変更するかどうかを判定する判定部814と、算出されたヒストグラム、APL及び判定結果に基づいて有機EL素子910を発光させる掃引信号の掃引電圧を算出する掃引電圧算出部813と、算出されたヒストグラム、APL及び判定結果に基づいて階調値とデータ電圧との関係を変更するデータ電圧変更部815と、算出されたデータ電圧から実際のデータ電圧を生成するデータ電圧生成部816と、データ信号線850にデータ電圧を印加するデータ信号制御部818と、掃引信号線870に掃引電圧を印加する掃引信号制御部817と、を備えている。
【0040】
本実施形態では、第1実施形態と異なり判定部814を用いている。判定部814の階調値とデータ電圧との関係を変更するかどうかの判定基準として、APLが比較的小さい場合で、高階調値の画素が所定の度数以上存在することを検出することとしている。特に、本実施形態では、APLが、取り得るAPLの最大値の1/2以下であり、かつ、高階調域の画素の数が全画素数の1/3以上である場合としている。このような検出の仕方を用いることにより、白ウィンドウ表示等を検出することができる。
【0041】
ここで、階調値−データ電圧特性の変換は、第1実施形態と同様に、図6で示されたラダー回路219のラダー抵抗222の抵抗値を変更することにより、階調値−データ電圧特性のカーブを変更する方法の他、階調値そのものを予め保存されたルックアップテーブル等を用いて変換することにより、階調値−データ電圧特性のカーブに合わせ込む方法、図4で説明した、掃引信号のLow(アクティブ)である期間や電位を変更して、画面全体の輝度制御を行う方法やこれらを組合わせた方法等を用いることができる。
【0042】
従って、第2実施形態によれば、有機EL表示装置は、表示画像が変化しても各画素に表示される輝度・色度は変化させずに表示することができる。
【0043】
なお、上述の実施形態では、画面の階調電圧の統計量としてAPLを用いることとしたが、定性的に同じ傾向を示す各画素の階調値の平均値であってもよいし、γ補正後の階調値の合計である、いわゆるALL(Average Luminance Level)を統計量として用いることとしてもよい。また、ヒストグラムのみを用いることとしてもよいし、APL又はALLのみを用いることとしてもよい。
【0044】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態においては、図2〜3及び図14〜15のような回路を用いることとしたが、このような回路構成に限られず、自発光素子を用いた他の表示装置にも適用することができる。
【0045】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態において特に記載していないが、有機EL層に使用される発光材料は低分子であっても、高分子であってもよいし、有機ELパネルの光の取り出し方向は、ボトムエミッション方式及びトップエミッション方式のいずれであってもよい。また、有機EL素子以外の自発光体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
100 表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、130 フレキシブル基板、140 回路基板、200 TFT基板、210 データ信号駆動部、211 ヒストグラム生成・APL算出部、212 外光レベル検出部、213 掃引電圧算出部、214 オフセット算出部、215 データ電圧変更部、216 データ電圧生成部、217 掃引信号制御部、218 データ信号制御部、219 ラダー回路、220 ゲート駆動部、221 基準電圧発生回路、222 ラダー抵抗、223 バッファアンプ、230 掃引信号駆動部、240 電源線、241 電源部、250 データ信号線、255 入力信号線、261 信号選択信号線、262 発光制御信号線、263 リセット信号線、270 掃引信号線、280 画素、301 第1選択スイッチ、302 第2選択スイッチ、304 記憶容量、306 駆動TFT、308 発光制御スイッチ、310 有機EL素子、312 共通電極、314 リセットスイッチ、501 黒画面、502 白ウィンドウ、800 TFT基板、810 データ信号駆動部、811 ヒストグラム生成・APL算出部、813 掃引電圧算出部、814 判定部、815 データ電圧変更部、816 データ電圧生成部、817 掃引信号制御部、818 データ信号制御部、820 ゲート駆動部、821 信号選択信号線、822 ゲート信号線、823 リセット信号線、824 第1選択スイッチ、826 第2選択スイッチ、830 掃引信号駆動部、840 電源線、841 電源部、850 データ信号線、855 入力信号線、870 掃引信号線、880 画素、901 記憶容量、906 駆動TFT、908 発光制御スイッチ、910 有機EL素子、912 共通電極、914 リセットスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素において自発光素子を発光させることにより表示を行う発光素子表示装置において、
前記各画素の階調値を示す情報を含む映像信号が入力され、前記映像信号の統計値を算出する統計値算出部と、
前記算出された前記統計値が、少なくとも最大階調値の輝度について、基準輝度と異なって表示される条件を満たす場合に、前記階調値に対応するデータ電圧を変更するデータ電圧変更部と、
前記変更された前記データ電圧を生成するデータ電圧生成部と、を備える、ことを特徴とする発光素子表示装置。
【請求項2】
前記最大階調値の前記基準輝度は、全画面を白で表示した場合の一画素の輝度である、ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子表示装置。
【請求項3】
前記データ電圧変更部は、全階調範囲を階調値の高い側から高階調域、中階調域及び低階調域と3つに分けたときに、前記高階調域及び前記中階調域について、前記変更前のデータ電圧である基準データ電圧より低いデータ電圧に変更する、ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子表示装置。
【請求項4】
前記統計値は、一画面における全画素の階調値の合計であるAPL(Average Picture Level)である、ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子表示装置。
【請求項5】
前記統計値は、等間隔に分割された全階調範囲の各階調範囲に含まれる画素数についてのヒストグラムに基づいて求められる、ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子表示装置。
【請求項6】
前記条件は、一画面における全画素の階調値の合計であるAPLが所定値以下であり、かつ、所定階調域の画素数が所定数以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子表示装置。
【請求項7】
前記条件は、前記APLが前記APLの最大値の1/2以下であり、かつ、全階調範囲を階調値の高い側から高階調域、中階調域及び低階調域と3つに分けたときに、前記高階調域の画素の数が全画素数の1/3以上である、ことを特徴とする請求項6に記載の発光素子表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−98340(P2012−98340A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243583(P2010−243583)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】