説明

発光組成物及び光源装置

【課題】青色域光による励起効率の向上が図られた発光組成物を提供する。
【解決手段】発光組成物を、下記一般式で表される蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が0.82以上0.85以下となる構成とする。
SrxBa2-xSiO4:Eu

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を有する発光組成物と、この発光組成物及び青色光源によって構成される光源装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
下記〔化5〕で表される組成を有する蛍光体は、青色域〜近紫外域の光で励起されて青緑色域〜黄色域の光を発する蛍光体であり、近年では白色LED(Light Emitting Diode)への応用も期待されている。
しかし、この蛍光体については、青色域の光による励起の効率が、近紫外域の光による励起の効率に比べて極端に低いことが指摘されており、励起スペクトルからも、青色域における励起強度が、近紫外域における励起強度に比して、大幅に低下してしまうことが確認されている(例えば特許文献1及び非特許文献1参照)。
〔化5〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
【0003】
一方で、蛍光体は、組成比の選定によって幅広い範囲から所望の発光波長帯を得られるため、例えば有機EL(Electro Luminescence;電界発光)ディスプレイやプラズマディスプレイなどの、所謂FPD(Flat Panel Display)と呼称される薄型の表示装置においても、その利用が検討されている。
これらの表示装置は、通常、バックライトなどの光源装置を有する。そして近年では、所定の波長帯で発光する蛍光体と、蛍光体の励起光源を兼ねるLEDなどの青色光源とを含む構成を有する光源装置が特に注目を集めている。これは、このような構成が、全ての色をLED等の直接駆動型光源によって得る構成に比して駆動回路を簡潔にできることや、近紫外域の光を励起光源として近紫外域用いる構成に比して周辺部材(樹脂やLEDチップ等)の劣化を抑制できることなど、光源装置において多くの利点が生じるためである。
【0004】
したがって、このような光源装置においても、これを構成する蛍光体について、前述した青色域の光による励起の効率向上が強く求められている。
【特許文献1】特開2005−277441号公報
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS Vol.82 No.5, 683 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、前述した〔化5〕で表される組成を有する蛍光体を含みながらも、青色域の光による励起効率向上が図られた発光組成体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光組成物は、下記〔化6〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が、0.82以上0.85以下となることを特徴とする。
〔化6〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化6〕において、(0≦x≦2)である。
【0007】
また、本発明に係る発光組成物は、下記〔化7〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、単体の上記蛍光体における波長440nmでの強度に比して、1.2倍以上1.3倍以下であることを特徴とする。
〔化7〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化7〕において、(0≦x≦2)である。
【0008】
本発明に係る光源装置は、少なくとも、青色光源と、発光組成物とを有し、上記発光組成物が、下記〔化8〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が、0.82以上0.85以下となる構成を有することを特徴とする。
〔化8〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化8〕において、(0≦x≦2)である。
【0009】
また、本発明に係る光源装置は、少なくとも、青色光源と、発光組成物とを有し、上記発光組成物が、下記〔化9〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、単体の上記蛍光体における波長440nmでの強度に比して、1.2倍以上1.3倍以下である構成を有することを特徴とする。
〔化9〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化9〕において、(0≦x≦2)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発光組成物によれば、上記〔化6〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が、0.82以上0.85以下となることから、後述するように、青色域光による励起効率の向上が図られた発光組成物を提供することができる。
【0011】
また、本発明に係る発光組成物によれば、上記〔化7〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、単体の上記蛍光体における波長440nmでの強度に比して、1.2倍以上1.3倍以下であることから、後述するように、青色域光による励起効率の向上が図られた発光組成物を提供することができる。
【0012】
本発明に係る光源装置によれば、少なくとも、青色光源と、発光組成物とを有し、上記発光組成物が、上記〔化8〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が、0.82以上0.85以下となる構成を有することから、後述するように、青色域光による励起効率の向上が図られた発光組成物によって、優れた発光特性を有する光源装置を構成することができる。
【0013】
また、本発明に係る光源装置によれば、少なくとも、青色光源と、発光組成物とを有し、上記発光組成物が、上記〔化9〕で表される組成を有する蛍光体と、この蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、単体の上記蛍光体における波長440nmでの強度に比して、1.2倍以上1.3倍以下である構成を有することから、後述するように、青色域光による励起効率の向上が図られた発光組成物によって、優れた発光特性を有する光源装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
本発明に係る発光組成物及び光源装置の実施形態を説明する。
本実施形態においては、発光組成物を含む光源装置が、表示装置(例えば薄型ディスプレイ)を構成する場合を例として説明を行う。
【0016】
図1に、本実施形態に係る光源装置を有する表示装置の概略構成図を示す。
本実施形態において、表示装置1は、光源装置2及び光学装置3を有する。
光源装置2の、樹脂による導光部7内には、例えば青色LEDによる青色光源の表面に多数の蛍光体を少なくとも含む樹脂が塗布されて構成される発光体6が設けられている。
本実施形態において、発光体6を構成する蛍光体は、例えば黄色蛍光体や赤色蛍光体となる第1蛍光体と、例えば青緑色蛍光体や緑色蛍光体となる第2蛍光体とを含む。この構成による光源装置2においては、青色光源と第1蛍光体及び第2蛍光体とによって、光源装置2全体の白色色度が規定され、目的とする色に対応する光の出力が可能とされる。
【0017】
また、本実施形態において、光源装置2の、光学装置3に対向する最近接部には、拡散シート9が設けられている。この拡散シート9は、青色光源と第1蛍光体及び第2蛍光体とからの光を、光学装置3側へ面状に均一に導くものである。光源装置2の裏面側には、リフレクタ4が設けられて構成される。また、必要に応じて、リフレクタ4と同様のリフレクタ5が、導光部7の側面にも設けられる。
なお、本実施形態に係る光源装置2において、導光部7を構成する樹脂は、エポキシ、シリコーン、ウレタンのほか、様々な透明樹脂を用いることができる。また、発光体6を構成する青色光源の形状も、サイドエミッタータイプや砲弾タイプなど、様々な種類のものから適宜選択して用いることができる。
【0018】
一方、光学装置3は、光源装置2に近い側から、偏向板10と、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)用のガラス基板11及びその表面のドット状電極12と、液晶層13及びその表裏に被着された配向膜14と、電極15と、電極15上の複数のブラックマトリクス16と、このブラックマトリクス16間に設けられる画素に対応した第1(赤色)カラーフィルタ17a,第2(緑色)カラーフィルタ17b,第3カラーフィルタ17cと、ブラックマトリクス16及びカラーフィルタ17a〜17cとは離れて設けられるガラス基板18と、偏向板19とが、この順に配置されている。
ここで、偏向板10及び19は、特定の方向に振動する光を形成するものである。また、TFTガラス基板11とドット電極12及び電極15は、特定の方向に振動している光のみを透過する液晶層13をスイッチングするために設けられるものであり、配向膜14が併せて設けられることにより、液晶層13内の液晶分子の傾きが一定の方向に揃えられる。また、ブラックマトリクス16が設けられていることにより、各色に対応するカラーフィルタ17a〜17cから出力される光のコントラストの向上が図られている。これらのブラックマトリクス16及びカラーフィルタ17a及び17cは、ガラス基板18に取着される。
【0019】
そして、本実施形態に係る光源装置2においては、更に、前述した第1蛍光体及び第2蛍光体の少なくとも一方が、〔化10〕で表される組成を有する蛍光体にマグネシウム塩を添加された発光組成物を構成しているものとする。この発光組成物は、本発明に係る発光組成物の一実施の形態である。
この構成により、後述するように、例えば発光組成物の励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が0.82以上0.85以下となって、近紫外域の光による励起よりも青色域の光による励起に対する励起効率の向上が図られる。或いは、例えば発光組成物の励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、発光組成物を構成する蛍光体単体における波長440nmでの強度に比して1.2倍以上1.3倍以下となって、青色域の光による励起効率の向上が図られる。
〔化10〕
SrxBa2-xSiO4:Eu (0≦x≦2)
【0020】
このような、青色域の光による励起効率の向上が図られた発光組成物によれば、この発光組成物の主たる成分である蛍光体が単体ではなし得なかった、優れた発光特性を得ることが可能となる。
また、特に、本実施形態におけるように、表示装置1などの内部で光源装置2を構成するにあたっては、全ての色をLED等の直接駆動型光源によって得る構成の回避による駆動回路の簡潔化や、近紫外域の光を励起光として用いる構成の回避による周辺部材(樹脂やLEDチップ等)の劣化抑制などに加えて、優れた発光特性を有する発光組成物により、光源装置2の光学特性向上が図られる。
【0021】
続いて、本実施形態に係る発光組成物の、作製方法の一例について説明する。
本実施形態において、最終的に得る蛍光体を構成するストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)の原料として、それぞれ、炭酸ストロンチウム(SrCO)、炭酸バリウム(BaCO)を使用した。なお、これらに代えて、硫酸塩、硫化物、塩化物などを用いることもでき、何ら問題ない。
ユーロピウム(Eu)の原料としては、酸化ユーロピウム(Eu)を用いた。なお、これに代えて硫酸塩、硫化物、塩化物などを用いることもでき、何ら問題ない。
ケイ素(Si)の原料としては、二酸化ケイ素(SiO)を使用したが、これに限られない。
【0022】
これらの原料を、〔化11〕で表される組成の範囲内で、所定の化学両論比となる原料比で順次混合して調合物を作製した。Euは、1mol%〜9mol%となるように順次加えた。
なお、最終的に得た発光組成物は、Eu濃度を2mol%〜5mol%とした場合に、最終的に得る発光組成物の特性(発光強度)が特に良好であった。これは、Euが蛍光体において発光中心として働くため、少なすぎると発光強度が低下し、また多すぎると濃度消光という現象により発光強度が低下することによると考えられる。
〔化11〕
SrxBa2-xSiO4:Eu (0≦x≦2)
【0023】
その後、全重量を20gとして容積500mlのポリ容器に移し、エタノール200mlと5mmφアルミナボール100gを加え、3時間回転ボールミル(攪拌)を行った。ボールミル後、ろ過し、最終的な試料の前駆体となる濾過残渣を50℃の空気雰囲気中で2時間乾燥させた。乾燥後、アルミナ製乳鉢で粉砕し、中間体として得た。
【0024】
その後、この中間体を石英管の中に配置し、4%の水素ガスを含む窒素ガスを10〜1000ml/minの流量で石英管の中に流し込み、1000℃〜1400℃で焼成して、最終的に得る発光組成物の主たる成分となる蛍光体を調製した。
なお、窒素ガス及び水素ガスの必要流量は、焼成対象である中間体の量によって異なり、例えば焼成量が数5g程度であれば500ml/min程度で十分と考えられるが、確実に焼成を行うため、より多くの量を流しても良い。なお、焼成温度は1200℃が最適であった。
【0025】
その後、蛍光体に所定の添加物(マグネシウム塩)を添加することにより、本実施形態に係る発光組成物を作製した。
【0026】
<第1実施例>
本発明の第1実施例について説明する。
本実施例においては、前述した発光組成物、つまり〔化10〕で表される組成の範囲内で所定の化学両論比を有する蛍光体と、この蛍光体に対する添加物となるマグネシウム塩とを有する発光組成物について、励起スペクトルの測定による検討を行った。そして、この励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値の検出と、この励起スペクトルに関する波長440nmでの強度の、その発光組成物を構成する蛍光体と同じ化学量論比を有する蛍光体単体の波長440nmでの強度に対する比較を行った。
なお、励起スペクトルの測定は、中心波長440nmの単色励起光で励起したときの発光ピークが波長524nmであることを確認した後、単色の励起光を300nmから500nmまで波長シフトさせて照射し、波長524nmにおける発光スペクトルの強度(波長524nmでの発光強度)を測定してプロットすることにより行った。このプロットしたものを、励起スペクトルとして得た。
【0027】
本実施例における検討では、発光組成物を構成する添加物として、塩化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、フッ化バリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、シュウ酸、燐酸カリウム、ホウ酸、塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウムを用いた。
本実施例に係る発光組成物の作製は、具体的には、蛍光体100molに対し、各添加物を5mol〜50molの範囲で5molずつ変化させて添加し、ボールミルまたは乳鉢で混合することによって行い、目的とする各発光組成物を作製した。なお、各添加物の添加量は、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)、及び誘導結合プラズマ発光分析(ICP)などによって確認した。
〔化12〕
SrxBa2-xSiO4:Eu (0≦x≦2)
【0028】
〔表1〕に、各添加物による発光組成物についての、励起スペクトルに関する(波長360nmでの強度/波長440nmでの強度)の値、及び波長440nmでの発光強度(無添加の蛍光体単体の発光強度を100とした場合の比率)を示す。
なお、この検出及び比較は、各添加物による発光組成物ごとに、〔化12〕について、x=0.5,1.0,1.5,2.0の4種類ずつ行ったが、同様の傾向がみられたため、代表的な例として、x=1.0とした場合の結果を〔表1〕に示してある。
【0029】
【表1】

【0030】
〔表1〕の結果より、まず、添加物を含むすべての発光組成物において、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)が、無添加の場合(蛍光体単体)に比べて向上している。すなわち、近紫外域の光による励起効率の低下とは対照的に、青色域の光による励起の効率が向上していることがわかる。
しかしながら、波長440nmでの発光強度については、殆どの添加物において、無添加の場合(蛍光体単体)に比して低くなってしまうことも確認できた。
【0031】
これに対し、マグネシウム系添加物(マグネシウム塩)については、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値の向上のみならず、発光強度の上昇をも併せて生じるという、特異的かつ多面的な性質向上を確認することができた。なお、この測定においては、マグネシウム系添加物による発光組成物の、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値は、具体的には0.82以上0.85以下であることが確認できた。
【0032】
ここで、波長440nmでの励起スペクトル強度が、マグネシウム塩の添加によって、蛍光体単体の場合に比べて1.2倍以上もの向上をみせている。蛍光体では、通常、例えば焼成の温度や時間を選定することなどによって発光強度の向上が図られるが、この選定によって最適値を見出しても、発光強度の上昇幅は選定前に比べて5%程度にとどまることが知られている。蛍光体におけるこのような事情によれば、本発明に係る発光組成物が示した、単体の場合に比べての1.2倍以上もの発光強度は、蛍光体によって諸々の装置を構成する上で、特に有用なものであると考えられる。また、安定的ではないため〔表1〕には記載していないものの、一部のマグネシウム塩においては、1.3倍よりも更に大きく向上する結果が得られた。
なお、このマグネシウム系添加物による発光組成物において、青色域での励起強度自体が必ずしも近紫外域での励起強度を上回るものでないにも関らず、優れた発光特性を得られているのは、添加物によって、〔化12〕で表される組成を有する蛍光体のバンド構造が変化しているためと考えられる。
【0033】
これらのマグネシウム系添加物による発光組成物の中で、最も発光特性の高い結果が得られた塩化マグネシウムを含む発光組成物に関する、塩化マグネシウムの添加量と相対発光強度の測定結果を、図2に示す。
前述の〔表1〕の結果からは、いずれのマグネシウム系添加物による場合も、添加量は(蛍光体100molに対して)30molの場合が、少なくとも10mol及び50molの場合に比べて更に好適であることや、特に塩化マグネシウムによる場合に良好な特性を得られることが確認できたが、例えば塩化マグネシウムによる場合には、図2に示すように、塩化マグネシウムの添加量が(蛍光体100molに対して)40mol以下であれば、無添加つまり蛍光体単体の構成による場合に比して充分に高い発光強度を示すことも明らかとなった。
【0034】
また、塩化マグネシウム(添加量30mol)を含む発光組成物の励起スペクトルを、図3に示す。スペクトルの測定は、〔化12〕におけるx=0,1,2の3種類の場合について行ったが、同様な傾向を示したため、図3には一例としてx=0.5の場合の結果を示している。
〔化12〕で表される組成を有する蛍光体単体のスペクトル(図中破線a)に比して、本実施例に係る発光組成物の一例としての、塩化マグネシウムを含む発光組成物のスペクトル(図中実線a´)は、近紫外線域(例えば波長360nm)での発光強度(PL intensity)が低下し、一方で青色域(例えば波長440nm)での発光強度が大きく向上していることが確認できる。
なお、この傾向は、他のマグネシウム系添加物(炭酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,フッ化マグネシウム)においても同様であった。
【0035】
また、〔化12〕で表される組成を有する蛍光体とマグネシウム塩(添加量30mol)とによる発光組成物の発光スペクトルを、図4に示す。スペクトルの測定は、〔化12〕におけるx=0,1,2の3種類の場合について行ったが、同様な傾向を示したため、図4には一例としてx=0.5の場合の結果を示している。
〔化12〕で表される組成を有する蛍光体単体の発光スペクトル(図中破線b)は、一般に白色光の発光が可能な光源装置で用いられるYAG:Ce蛍光体の発光スペクトル(図中鎖線b´)に比して発光強度の低いものであったが、本実施例に係る、〔化12〕で表される組成を有する蛍光体とマグネシウム塩(添加量30mol)とによる発光組成物の発光スペクトル(図中実線b´´)は、より高い発光強度を示すことが確認できた。
なお、この傾向は、他のマグネシウム系添加物(炭酸マグネシウム,硫酸マグネシウム,フッ化マグネシウム)においても同様であった。
【0036】
<第2実施例>
本発明の第2実施例について説明する。
本実施例では、前述した光源装置の構成により近い形で、発光組成物の特性について検討を行った。
【0037】
まず、〔化13〕で表される組成を有する蛍光体とマグネシウム塩(添加量30mol)とによる発光組成物を樹脂に混合し、この混合体を青色LEDの上にポッティングして発光特性を評価した。なお、本実施例では、〔化13〕においてx=2の蛍光体を調製し、塩化マグネシウムの添加の有無による光度の差異について検討を行った。
ここで光度は、光の強さとして、点光源から発する光の単位立体角あたりの光束を意味する。
検討の結果、塩化マグネシウムを添加した場合の光度は、添加していない場合に比べて32%向上することが確認できた。
〔化13〕
SrxBa2-xSiO4:Eu (0≦x≦2)
【0038】
また、発光中心波長が〔化13〕で表される組成を有する蛍光体に比して長波長側に存在する第2の蛍光体として、青色域励起光で励起可能な〔化14〕で表される組成を有する赤色蛍光体 (ピーク波長658nm)を用意し、これらの両蛍光体を混合した上でマグネシウム系添加物を加えて発光特性を検討したところ、3000Kの色温度が得られることが確認できた。
なお、赤色蛍光体の混合比を増大させることにより、3000K以下の色温度が得られる光源装置を構成することもできると考えられる。
〔化14〕
CaS:Eu
【0039】
以上、本発明に係る発光組成物及び光源装置の実施形態及び実施例を説明したが、この実施の形態の説明で挙げた使用材料及びその量、処理時間及び重量などの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法形状及び配置関係も概略的なものである。すなわち、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0040】
例えば、本実施形態に係る光源装置においては、演色性の向上を図るために〔化10〕で表される組成を有する蛍光体の、x値が互いに異なる2種類以上の蛍光体を混合して蛍光体塗布部を構成することもできる。
また、前述の実施形態では、光源装置内の青色光源としてLEDを用いる場合を例として説明したが、他の発光体を青色光源として用いる構成とすることもできる。
また、例えば、前述の実施形態では、光源装置の例として、導光部の樹脂の劣化を抑制できる好ましい構成として青色光源のみを有する例を説明したが、本発明に係る光源装置は、これに限られず、例えば紫外光光源と青色光源とを両方有し、かつこれらの両光源によって蛍光体が励起される構成をとることも可能であるなど、本発明は種々の変更及び変形をなされうる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る発光組成物を有する光源装置の一例と、この一例の光源装置により構成される表示装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る発光組成物の一例における、添加物(マグネシウム塩)の量と、相対発光強度との測定結果を示す模式図である。
【図3】本発明に係る発光組成物の一例の説明に供する、励起スペクトル図である。
【図4】本発明に係る発光組成物の一例の説明に供する、発光スペクトル図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・表示装置、2・・・光源装置、3・・・光学装置、4・・・リフレクタ、5・・・リフレクタ、6・・・発光体、7・・・導光部、9・・・拡散シート、10・・・偏向板、11・・・TFTガラス基板、12・・・ドット電極、13・・・液晶層、14・・・配向膜、15・・・電極、16・・・ブラックマトリクス、17a・・・第1カラーフィルタ、17b・・・第2カラーフィルタ、17c・・・第3カラーフィルタ、18・・・ガラス基板、19・・・偏向板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記〔化1〕で表される組成を有する蛍光体と、該蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、
励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が、0.82以上0.85以下となる
ことを特徴とする発光組成物。
〔化1〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化1〕において、(0≦x≦2)である。
【請求項2】
上記〔化1〕において、Euの濃度が1mol%以上9mol%以下とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物。
【請求項3】
上記マグネシウム塩の添加量が、上記蛍光体100molに対して40mol以下の割合である
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物。
【請求項4】
上記マグネシウム塩として、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウムのうち、少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の発光組成物。
【請求項5】
下記〔化2〕で表される組成を有する蛍光体と、該蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、
励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、単体の上記蛍光体における波長440nmでの強度に比して、1.2倍以上1.3倍以下である
ことを特徴とする発光組成物。
〔化2〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化2〕において、(0≦x≦2)である。
【請求項6】
上記〔化2〕において、Euの濃度が1mol%以上9mol%以下とされた
ことを特徴とする請求項5に記載の発光組成物。
【請求項7】
上記マグネシウム塩の添加量が、上記蛍光体100molに対して40mol以下の割合である
ことを特徴とする請求項5に記載の発光組成物。
【請求項8】
上記マグネシウム塩として、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウムのうち、少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の発光組成物。
【請求項9】
少なくとも、青色光源と、発光組成物とを有し、
上記発光組成物が、下記〔化3〕で表される組成を有する蛍光体と、該蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する(波長440nmでの強度/波長360nmでの強度)の値が、0.82以上0.85以下となる構成を有する
ことを特徴とする光源装置。
〔化3〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化3〕において、(0≦x≦2)である。
【請求項10】
上記青色光源によって励起され、かつ発光中心波長が上記蛍光体に比して長波長側に存在する第2の蛍光体を有する
ことを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
少なくとも、青色光源と、発光組成物とを有し、
上記発光組成物が、下記〔化4〕で表される組成を有する蛍光体と、該蛍光体に添加されるマグネシウム塩とを有し、励起スペクトルに関する、波長440nmでの強度が、単体の上記蛍光体における波長440nmでの強度に比して、1.2倍以上1.3倍以下である構成を有する
ことを特徴とする光源装置。
〔化4〕
SrxBa2-xSiO4:Eu
なお、〔化4〕において、(0≦x≦2)である。
【請求項12】
上記青色光源によって励起され、かつ発光中心波長が上記蛍光体に比して長波長側に存在する第2の蛍光体を有する
ことを特徴とする請求項11に記載の光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−238814(P2007−238814A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64615(P2006−64615)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】