説明

発光装置、およびこれを備えた照明器具および液晶表示装置用バックライト

【課題】発光素子からの放射熱および自己発熱による波長変換部材の効率低下を抑制でき、かつ発光装置の表面温度の過度な上昇を抑制できる発光装置、およびこれを備えた照明器具および液晶表示装置用バックライトを提供する。
【解決手段】発光装置1は、発光素子2、基板4、波長変換部材5、および熱伝導性部材8を有する。発光素子2は基板4上に実装されている。波長変換部材5は発光素子2から発せられた光の波長を変換する。熱伝導性部材8は、基板4と離間しているとともに波長変換部材5の周りに当接して、波長変換部材5内の熱の少なくとも一部を散逸させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、およびこれを備えた照明器具および液晶表示装置用バックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明器具や液晶表示装置用バックライトの発光装置として、発光ダイオード(LED:Light-Emitting Diode)から発せられた光を波長変換部材である蛍光体により波長を変換することで白色光を得るものが提案されている。
【0003】
このような発光装置に関し、例えば図5に示す発光装置が提案されている(特許文献1)。この発光装置1は、LEDチップ10と、実装基板20と、色変換部材70と、断熱層90とを備えている。LEDチップ10は発光装置1の外形の一部を成す実装基板20上に実装されており、青色光を放射する。放射された光は、蛍光体(黄色蛍光体)とシリコーンとで構成された、発光装置1の外形の一部を成すドーム状の色変換部材70に入射する。蛍光体は、入射した青色光によりエネルギーが励起されて青色の補色である黄色を発光する。この蛍光体と青色LEDとの組み合わせにより白色光が実現されている。更に、断熱層90は実装基板20と色変換部材70との間に介在して設けられている。これにより、LEDチップ10で発生する熱が実装基板20を介して色変換部材70へと各固体間で伝導されることが防止可能となっている。
【特許文献1】特開2007−243054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示された発光装置では、各構成要素(固体)間での熱伝導については断熱対策が講じられているものの、LEDチップから放射されて色変換部材内に蓄積される熱について何らかの散逸対策は講じられていない。すなわち、LEDチップで発生した熱は電磁波の形態で放射され、この熱はLEDチップを覆う、蛍光体を含む色変換部材に伝達される。ここで、熱源の温度と電磁波スペクトルのピーク波長とは反比例の関係にある。そのため、熱源であるLEDチップ内の温度が上昇すると、伝播する電磁波のスペクトル分布のピーク波長が短くなることで電磁波のエネルギーは増大することになる。増大したエネルギーの電磁波が色変換部材に入射すると、色変換部材内の温度は、LEDチップ内の温度が上昇する前に比べて上昇することになる。しかし、色変換部材は実装基板上にLEDチップを覆うようにドーム状に形成されているため、色変換部材内で発生した熱は、これと実装基板との間に在る断熱層により色変換部材外へ散逸しにくい。そのため、色変換部材で発生した熱はその内部に滞留してしまうことで過度な発熱に繋がる。これによって、色変換部材に含まれる波長変換部材としての蛍光体の効率が低下することで、LEDチップからの青色と蛍光体からの黄色とで本来生成されるべき白色からは逸脱した色に変色してしまうという問題があった。更に、蛍光体は自己発熱することでその効率が低下するという問題もあった。また、色変換部材はその内部に熱が滞留してしまう構成であることで、色変換部材自体が熱源となりLEDチップが搭載されるサブマウント部材や実装基板に熱が放射される。放射された熱によりサブマウント部材や実装基板内の温度が上昇することでそれらの上に搭載されるLEDチップの温度も上昇してしまう。LEDチップの温度上昇によってLEDチップから熱が放射されることで、この放射熱の一部が再度、色変換部材に伝達されることになる。このようにして、発光装置内で熱の負のフィードバック効果が促されてしまう。そのため、発光装置の外形を成す色変換部材や実装基板の表面温度の過度な上昇を引き起こすという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、発光素子からの放射熱および波長変換部材の自己発熱による波長変換部材の効率低下を抑制でき、かつ発光装置の表面温度の過度な上昇を抑制できる発光装置、およびこれを備えた照明器具および液晶表示装置用バックライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の発光装置は、発光素子が実装された基板と、発光素子から発せられた光の波長を変換する波長変換部材と、基板と離間しているとともに波長変換部材の周りに当接して波長変換部材内の熱の少なくとも一部を散逸させる熱伝導性部材と、を有する。
【0007】
更に、本発明の一態様の照明器具は、上述の発光装置を備えている。
【0008】
また、本発明の一態様の液晶表示装置用バックライトは、上述の発光装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱伝導性部材は基板と離間しているとともに波長変換部材の周りに当接している。これにより、波長変換部材内で生じる熱の少なくとも一部は、波長変換部材と当接する熱伝導性部材に伝導される。更に、熱伝導性部材は基板と離間しているため、波長変換部材から熱伝導性部材に伝導された熱は基板には伝導されない。ゆえに、熱伝導性部材に伝わった熱の一部は発光装置外へ散逸されることになる。よって、波長変換部材内に熱が滞留してしまうことが改善される。そのため、発光素子から放射される熱による波長変換部材の効率低下および波長変換部材の自己発熱による波長変換部材の効率低下を抑制できる。更に、波長変換部材、熱伝導性部材および基板のこの構成により波長変換部材内に熱が滞留してしまうことが改善されることで、波長変換部材自体が熱源になることを抑制できる。ゆえに、発光装置内での熱の負のフィードバック効果を軽減することができる。そのため、発光装置の表面温度の過度な上昇を抑制できる。従って、発光素子からの放射熱および波長変換部材の自己発熱による波長変換部材の効率低下を抑制でき、かつ発光装置の表面温度の過度な上昇を抑制できる発光装置、およびこれを備えた照明器具および液晶表示装置用バックライトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。本発明の実施形態に係る発光装置は、照明器具や液晶表示装置用バックライトの光源として利用されるものである。
(第1の実施形態)
図1に本発明の第1の実施形態に係る発光装置の上面図および断面図を示す。発光装置1は、発光素子2、サブマウント部材3、基板4、波長変換部材5、光反射部材6、断熱部材7、および熱伝導性部材8を備えている。
【0011】
発光素子2は、サブマウント部材3を介して基板4上に実装されている。また、発光素子2は青色発光ダイオードを用いることが好適である。サブマウント部材3は、発光素子2内部で生じる熱応力を緩和する手段として機能する。基板4は金属材料でできていることが好ましいが、これに限らず導電性を発揮する樹脂材料でできていてもよい。
【0012】
波長変換部材5は、発光素子2から発せられた光の波長を変換する機能を有する。波長変換部材5は蛍光体であることが好適であるが、これに限定されるものではなく、発光素子2から発せられた光の波長を変換する機能を有する構成であればよい。また、波長変換部材5には透光性材料としてのシリコーンが混合されている。なお、図1において波長変換部材5は正方形状に示されているが、この形状に限定されるものではない。すなわち、波長変換部材5が発光素子2から発せられた光の波長を変換して透過させる機能を有する構成であれば、任意の形状に変更できる。
【0013】
光反射部材6は、基板4上に発光素子2を取り囲んで設けられ、発光素子2から発せられた光を波長変換部材5に向けて反射させる。この反射光が波長変換部材5へ入射し、更に波長変換部材5によって波長が変換されることで黄色光が得られる。更に、この黄色光と、発光素子2から発せられて波長変換部材5を透過する青色光とで所望の白色光が実現される。
【0014】
断熱部材7は、光反射部材6と波長変換部材5との間に光反射部材6と波長変換部材5の双方に接して設けられている。これにより、発光素子2からの放射熱の一部は光反射部材6に伝達されるが、光反射部材6に接して設けられた断熱部材7に遮られることで波長変換部材5に伝導されにくくなる。そのため、高温になった発光素子2から放射された熱が光反射部材6を介して波長変換部材5へ伝達される量を低減できる。一方、発光素子2からサブマウント部材3および基板4を介して光反射部材6に各固体間で伝導される熱に関しても、光反射部材6に接して設けられた断熱部材7によって遮られる。ゆえに、断熱部材7からこれと接する波長変換部材5に熱が伝導されにくくなる。そのため、発光素子2で生じる熱が各固体間で伝導されて波長変換部材5へ伝達される量を低減できる。従って、波長変換部材5への熱伝達量の低減により、発光装置1全体の高温化を従来に比べて抑制することが可能となる。なお、図1に示す断熱部材7は中央部を含む領域が開口した円環状の単一の部材であるが、この形態に限定されるものではない。すなわち、断熱部材7は、波長変換部材5と当接する任意の平面形状の複数の領域で構成されていてもよい。
【0015】
熱伝導性部材8は、基板4と離間しているとともに波長変換部材5の周りに当接して、波長変換部材5内の熱の少なくとも一部を散逸させる。図1に示す熱伝導性部材8の形状は矩形状であるが、この形状に限定されず、熱伝導性部材8が熱伝導性を発揮する構成であれば任意の平面形状に変更できる。これにより、波長変換部材5内で生じる熱の少なくとも一部は、波長変換部材5と当接する熱伝導性部材8に伝導される。更に、熱伝導性部材8は基板4と離間しているため、波長変換部材5から熱伝導性部材8に伝導された熱は基板4には伝導されない。ゆえに、熱伝導性部材8に伝わった熱の一部は発光装置1外へ散逸されることになる。よって、波長変換部材5内に熱が滞留してしまうことが改善される。そのため、発光素子2から放射される熱による波長変換部材5の効率低下および波長変換部材5の自己発熱による効率低下を抑制できる。また、従来の発光装置(図5参照)においては、波長変換部材を含む色変換部材70はその内部に熱が滞留してしまう構成であることで、色変換部材70自体が熱源となりLEDチップ10が搭載されるサブマウント部材30や実装基板20に熱が放射される。放射された熱によりサブマウント部材30や実装基板20内の温度が上昇することでそれらの上に搭載されるLEDチップ10の温度も上昇してしまう。LEDチップ10の温度上昇によってLEDチップ10から熱が放射されることで、この放射熱の一部が再度、色変換部材70に伝達されることになる。このようにして、発光装置1内で熱の負のフィードバック効果が促されてしまう。そのため、発光装置1の外形を成す色変換部材70や実装基板20の表面温度の過度な上昇を引き起こすという問題があった。しかしながら、本発明の発光装置1では、波長変換部材5内で生じる熱の少なくとも一部は、波長変換部材5と当接する熱伝導性部材8に伝導される。更に、熱伝導性部材8は基板4と離間しているため、波長変換部材5から熱伝導性部材8に伝導された熱は基板4には伝導されない。波長変換部材5、熱伝導性部材8および基板4のこの構成により波長変換部材5内に熱が滞留してしまうことが改善されることで、波長変換部材5自体が熱源になることを抑制できる。ゆえに、発光装置1内での熱の負のフィードバック効果を軽減することができる。そのため、発光装置1の表面温度の過度な上昇を抑制できる。従って、発光素子2からの放射熱と波長変換部材5の自己発熱とによる波長変換部材5の効率低下を抑制でき、かつ発光装置1の表面温度の過度な上昇を抑制できる。
【0016】
なお、本実施形態の発光装置1に発光素子2で生じた熱の少なくとも一部を放熱する放熱部材9を適用することも可能である(図4(a)参照)。放熱部材9は、基板4上の、発光素子2が設けられた面の反対の面に設けられている。これにより、発光素子2からサブマウント部材3および基板4を介して各固体間で伝導される熱は、基板4上の、発光素子2が配置された面の反対の面に設けられた放熱部材9によって発光装置1外へ放散されることが可能となる。なお、放熱部材9の形状は図4(b)に示す円筒状だけに限定されるものではなく、放熱機能を有する構成であれば任意の立体的形状に変更可能である。また、放熱部材9は本実施形態のみに適用されるものではなく、以下の各実施形態に適用できる。
(第2の実施形態)
図2に本発明の第2の実施形態に係る発光装置の断面図を示す。本実施形態の説明においては、第1の実施形態との相違点である基板4、光反射部材6、断熱部材7および波長変換部材5の間の配置を主に述べることにする。
【0017】
光反射部材6は、波長変換部材5に接して発光素子2の周囲に設けられ、発光素子2から発せられた光を波長変換部材5に向けて反射させる。断熱部材7は、光反射部材6と基板4との間に、光反射部材6と基板4の双方に接して設けられている。この構成により、発光素子2からの放射熱の一部は断熱部材7に伝達される。しかし、断熱部材7によって熱が遮られることでそれに接して配された光反射部材6には熱伝導されにくくなる。ゆえに、光反射部材6に接して配された波長変換部材5にも熱伝導されにくくなる。そのため、高温になった発光素子2から放射された熱が光反射部材6を介して波長変換部材5へ伝達される量を低減できる。一方、発光素子2からサブマウント部材3および基板4を介して断熱部材7に各固体間で伝導される熱に関しても、断熱部材7により遮られることで、断熱部材7に接して配された光反射部材6には伝導されにくくなる。ゆえに、光反射部材6に接して配された波長変換部材5にも熱伝導されにくくなる。そのため、発光素子2で生じる熱が各固体間で伝導されて波長変換部材5へ伝達される量を低減できる。従って、波長変換部材5への熱伝達量の低減により、発光装置1全体の高温化を従来に比べて抑制することが可能となる。
(第3の実施形態)
図3に本発明の第3の実施形態に係る発光装置の断面図を示す。本実施形態の説明においては、第1の実施形態との相違点である、基板4、断熱部材7および波長変換部材5の間の配置を主に述べることにする。
【0018】
断熱部材7は、基板4と波長変換部材5との間に、基板4と波長変換部材5の双方に接して、発光素子を取り囲んで設けられている。この構成により、発光素子2からの放射熱の一部は断熱部材7に伝達される。しかし、断熱部材7によって熱が遮られることでそれに接して配された波長変換部材5には熱伝達されにくくなる。そのため、高温になった発光素子2から放射された熱が断熱部材7を介して波長変換部材5へ伝達される量を低減できる。一方、発光素子2からサブマウント部材3および基板4を介して断熱部材7に各固体間で伝導される熱に関しても、断熱部材7により遮られることで、断熱部材7に接して配された波長変換部材5には伝達されにくくなる。そのため、発光素子2で生じる熱が各固体間で伝導されて波長変換部材5へ伝達される量を低減できる。従って、波長変換部材5への熱伝達量の低減により、発光装置1全体の高温化を従来に比べて抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る発光装置の上面図である。(b)は、本発明の第1の実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る発光装置に放熱部材を適用した断面図である。(b)は、放熱部材の斜視図である。
【図5】従来の発光装置の一形態を示す概略断面図および要部概略平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 発光装置
2 発光素子
3 サブマウント部材
4 基板
5 波長変換部材
6 光反射部材
7 断熱部材
8 熱伝導性部材
9 放熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子が実装された基板と、
前記発光素子から発せられた光の波長を変換する波長変換部材と、
前記基板と離間しているとともに前記波長変換部材の周りに当接して、該波長変換部材内の熱の少なくとも一部を散逸させる熱伝導性部材と、
を有する、
発光装置。
【請求項2】
前記基板上に前記発光素子を取り囲んで設けられ、該発光素子から発せられた光を前記波長変換部材に向けて反射させる光反射部材と、
前記光反射部材と前記波長変換部材との間に、該光反射部材と該波長変換部材の双方に接して設けられた断熱部材と、
を有する、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記波長変換部材に接して前記発光素子の周囲に設けられ、該発光素子から発せられた光を該波長変換部材に向けて反射させる光反射部材と、
前記光反射部材と前記基板との間に、該光反射部材と該基板の双方に接して設けられた断熱部材と、
を有する、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板と前記波長変換部材との間に、該基板と該波長変換部材の双方に接して、前記発光素子を取り囲んで設けられた断熱部材を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子で生じた熱の少なくとも一部を放熱する放熱部材を有し、
前記放熱部材は、前記基板上の、前記発光素子が設けられた面の反対の面に設けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置を備えた照明器具。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置を備えた液晶表示装置用バックライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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